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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商標その他

平成24(ワ)25506  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成26年12月4日  東京地方裁判所

 あの極真空手の商標「極真」についての紛争です。額はたいしたことありませんが、顧客吸引力が大きいと認定されました。
 被告が原告極真会館を退館した平成22年4月から被告標章の使用を中止した平成25年4月までの間に,被告道場での空手の教授によって得た被告の利益が500万円を下らないことについては,当事者間に争いがない。 しかしながら,空手の教授は,指導者の直接的対面的指導が必須であるという性質上,立地条件が重要な要素となる役務であり,また,周辺における他の空手道場の存否や教授方法等によっても売上げが左右されるというべきであるから,商標法38条2項の適用に当たっては,被告の利益のうちの一部のみが本件各商標に起因するものとして原告の損害となると考えられる。本件についてこれを見るに,証拠(乙4ないし13,19ないし21,34の1ないし35)及び弁論の全趣旨によれば,被告道場の周辺には原告らの道場は存在しないこと,かつ,極真を名乗り需要者から極真空手を実践していると認識されている会派は原告らの他に複数存在するところ,そのうちの一派で原告らとの関係で本件各商標の違法使用者とは認められない可能性を十\分に有するC派の極真空手道場が原告道場付近に複数存在することが認められるから,空手の教授という役務における立地条件の重要性に鑑みると,被告標章に誘引された被告道場の入門生についても,本件商標権侵害行為がなければ原告らの道場を選択したはずであるとの推定を覆す事情があるというべきである。そして,このような事情は,原告らとC派との間に訴訟等が係属しておらず,緩やかな協力関係にある(甲31)としても異なるものではない。そうであるから,本件各商標は,直接打撃制の武道空手を特徴とするBの創始した極真空手を想起さ せ,空手の教授を受けようとする需要者に対する顧客誘引力が大きいと考えることができるとしても,商標法38条2項の適用に当たっては,本件各商標の誘引力によって被告が得た利益については,その大部分は原告の損害と見ることができない事情があると言わざるを得ない。 そこで,以上の事情を総合考慮すると,被告の利益のうちの5%が原告Aの損害と認めるのが相当であり,そうであるから,25万円が原告Aが受けた損害の額になる。 イ 空手の興行の企画,運営又は開催に係る侵害行為により受けた利益 証拠(乙22)及び弁論の全趣旨によれば,第一回大会及び第二回大会の参加料はいずれも一人当たり7000円であると認められ,第一回大会につき130万2000円,第二回大会につき156万8000円の参加料収入があったと認められる。大会運営に係る経費については,別紙大会の経費額一覧記載のとおり,第一回大会が113万2303円,第二回大会が79万2775円とするのが相当と認める。そうすると,第一回大会開催による被告の利益は16万9697円であり,第二回大会開催による被告の利益は77万5225円である。 被告は,被告が開催した空手大会の参加者は被告道場の道場生及び友好道場の道場生のみで,一般参加者は存在しないから,被告標章の寄与率は全く存在しないか著しく低いなどと主張するが,被告は,被告標章を使用して入門生を誘引し,これに応じて入門した者や友好道場の道場生に対して被告標章を使用して大会への参加を誘引したものであり,空手大会開催に際して極真空手大会と銘打つことは大きな顧客誘引力を有すると考えられるから,被告標章の寄与がないとはいえない。 もっとも,商標法38条2項の適用に当たっては,前記アと同様の事情を考慮すべきであり,一般参加者が存在しなかったと認められること(甲9,24)をも考慮すると,被告の利益のうちの5%を原告Aの損害と認 めるのが相当であり,そうであるから,第一回大会につき8480円,第二回大会につき3万8760円の合計4万7240円が原告Aの損害の額になる。

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平成25(ワ)27442  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成26年11月14日  東京地方裁判所

 被告の使用形態は、商標的使用であると認定されました。
 前記(2)のとおり,被告商品においては,30cm四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ,証拠〈略〉によれば,被告標章は,そのデザインの中において,他の文字列から分離して表記されており,その「SHIPS」の文字列は,全て大文字で,かつ,「ANCHOR」の文字列とともに,他の文字列よりもやや大きい文字サイズであり,さらに,他の\n 文字列がいずれも文又は句を構成しているのに対して,この「SHIPS」及び「ANCHOR」はそれぞれ一単語のみで独立して用いられていることが認められる。そして,「ANCHOR」の文字列は,それが意味するところの「錨」のマークの上に配置され,同マークの下の「Anchors can either be temporary or permanent.」の英文を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されているのに対して,被告標章は,それが意味するところの「船」ではなく,「錨」のマークの下に配置され,同マークの上の「SINCE1981」の文字列を含めて,一つの固まりとして一体的に表\示されている。 このような被告商品における被告標章の配置,文字の大きさ及び表示態様からすれば,被告標章は,被告商品のデザインの中で,十\分に独立して認識可能な標章として表\示されているということができる。 このことに加えて,被告標章が,一般に企業や団体の創業年又はブランドの設立年などを表す際に用いられる「SINCE」の表\記を伴い,上記のとおり「SINCE1981」の文字列と一体的に表示されていること,及び,前記(1)のとおり,「SHIPS」の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると,被告商品において被告標章は,その需要者に対して,商品の自他を識別し,出所を表示する態様で用いられていると認めることができる。\nしたがって,被告標章は,被告商品において,商標として使用されていると認めるのが相当である。
(4) 被告らの主張について
ア この点に関して被告らは,被告商品において被告標章は装飾的・意匠的な図柄の一部をなしているにすぎず,商標的使用に当たらないと主張する。 しかし,仮に被告標章が被告商品のデザインの一部であるといえるとしても,そのことによって,直ちに商標としての使用が否定されるものではなく,装飾的・意匠的な図柄の一部をなしている標章であっても,その標 章に装飾的・意匠的な図柄を超える強い識別力が認められるときは,装飾的・意匠的図柄であると同時に自他識別機能・出所表\示機能を有する商標としての役割を果たす場合があるというべきである。そして,被告商品のデザインにおいては,約30cm四方の一単位に,被告標章以外にも複数のマークや文字が表\示されており,赤色で表示された「ANCHOR」の文字が目立つ態様であることは否めないが,それらの中においても被告標章が十\分に独立した標章として認識されて,被告商品において自他識別・出所表示の機能\を果たしていると認められることは前記(3)のとおりであるから,被告らの上記主張は採用することができない。 また,被告らは,被告標章が錨マークと一体となって分離不能な「単位表\示部」を形成しているから,単独で取り出すことができないと主張する。 この点,確かに被告標章は,錨マークのすぐ下に記載されているから,同マーク及びそのすぐ上に記載された「SHINCE1981」の表示も合わせて,一つの固まりとして一体的に配置されているといえる。しかし,錨マークは,「錨」の形をした図形であり,一方,被告標章である「SHIPS」の文字列は「船」を意味する英単語であるから,一つの固まりの中でも,それぞれが異なる観念を持つものとして,独立して認識し得ることは明らかである。\nしたがって,被告標章が錨マークと分離不能であるとの被告らの主張は採用できない。\n

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平成25(ネ)10101  役務標章差止請求控訴事件  商標権  民事訴訟  平成26年11月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

  旅館業について、「ふふ」と「「雲風々ufufu」は混同生ずることはないとした1審判断が維持されました。1審(東京地裁H24年(ワ)27475号)はアップされていません。  本件商標は,「ふふ」の平仮名2字を横書きに書してなる商標であり,本件商標から「フフ」の称呼が生じる。 本件商標を構成する「ふふ」の語は,造語であり,特定の観念を生ずるものとは認められない。控訴人は,この点に関し,日常生活において,「ふふっと笑う」,「ふふっと微笑む」などの言い方が広く行われているように,「ふふ」は,「女性のたおやかな笑顔と笑う仕草」をイメージあるいは連想させ,そのような観念が生じる旨主張する。しかしながら,「ふふ」と「ふふっ」とでは,語尾の「っ」の有無により外観が及び称呼が異なるものである上,日常生活において,「ふふと笑う」,「ふふと微笑む」などの言い方を通常しないから,「ふふっ」とから笑顔や笑う仕草をイメージあるいは想起させるとしても,そのことは,「ふふ」の平仮名2字が単独で使用された場合に当てはまるものとはいえない。\n

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平成26(ワ)770  商標権侵害差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成26年8月28日  東京地方裁判所

 錠剤に刻印した表示が商標的使用か否かが争われました。裁判所は商標的使用でなく、「有効成分の説明的表\示である」と判断しました。
 以上によれば,被告標章は,被告商品の有効成分であるピタバスタチンカルシウムの略称として被告商品(錠剤)に表示されているものであって,その具体的表\示態様は,本件商標権の使用許諾を受けているキョーリンリメディオ株式会社のそれと何ら異なるものではない。そうすると,被告商品の主たる取引者,需要者である医師や薬剤師等の医療関係者は,被告商品に接する際,その販売名に付された会社名(屋号等)「明治」に加えて,被告商品のパッケージであるPTPシートに付された「明治」との表示や被告商品に併せて表\示されている「明治」や「MS」の表示によってその出所を識別し,錠剤に表\示された被告標章は,被告商品の出所を表示するものではなく,有効成分の説明的表\示であると認識すると考えられる。 (3) 原告は,ピタバは,取引者,需要者,とりわけ患者において,ピタバスタチンあるいはピタバスタチンカルシウムと認識されているとはいえないところ,とりわけ一包化調剤として被告商品を交付された患者は,パッケージであるPTPシート等の表示を認識せず,錠剤の表\示に基づいて薬剤の出所を識別する旨主張し,インターネット質問サイトの事例(甲15の1ないし4)からも錠剤の表示が出所識別機能\を有することは明らかだとする。しかしながら,原告の主張のとおり解するとしても,そもそも患者が錠剤の表示に基づいてその出所を識別し当該薬剤の処方を受ける事例は極めて限られていると考えられるし,患者は,医師,薬剤師から被告商品を処方される際に受ける説明等を踏まえて被告標章に接するところ,被告商品には被告標章の他に「明治」や「MS」の表\示があること,被告商品は,長期間にわたり反復継続的に購入,服用される薬剤であることも考え合わせれば,患者においても被告標章をもって被告商品の出所の表示であると認識しているとは認め難く,むしろ有効成分の説明的表\示であると認識するのが一般的であると考えられる。原告の主張は,採用することができない。

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平成25(ワ)7840  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成26年8月28日  大阪地方裁判所

商標「melonkuma」はメロン熊とは非類似と判断されました。ただ本件は原告商標の不使用という事情もあり、一般的にこの判断手法が妥当するとはいえないと思われます。
 以下,被告各標章のうち「メロン熊」又は「メロンくま」と原告商標を対比する。 原告商標は,9文字のローマ字からなる外観を有するのに対し,被告各標章の「メロン熊」の部分は,片仮名3文字と漢字1文字の合計4文字よりなる外観を,被告各標章の「メロンくま」の部分は,片仮名3文字と平仮名2文字の合計5文字よりなる外観を有し,両者は外観において類似しない。 原告商標も被告各標章も称呼は同じ「メロンクマ」である。 観念について検討するに,原告商標は,ローマ字(小文字)で「melonkuma」と一連一体に表記されるため,この表\記に接した者は,そのような外国語の単語があるのではないかと考えるが,これに適応する単語がないため,直ちには特定の観念を生じない。もっとも,そのまま発音することにより,果物のメロンと動物の熊という2つの観念が想起される。しかし,本件キャラクターが出現するまでに,被告以外の第三者が,果物のメロンと動物の熊を組み合わせた存在を,具体的なイメージとして考案したと認めるに足りる証拠はなく,原告商標のみからは,メロンと熊を結合させた,ひとつのものとしての観念を想起させることはないといえる。 被告各標章のうち「メロン熊」又は「メロンくま」については,「メロン」と「熊」(「くま」)が片仮名と漢字(平仮名)で書き分けられているため,直ちに果物のメロンと動物の熊という2つの観念を想起することができ,さらに,前記1(1)から,メロンの中に顔を突っ込んだ,メロンと熊がひとつに結合された本件キャラクターを観念することができる。
・・・
原告商標の出願は,平成19年6月にされてはいるが,その後,原告商標の商標権者及び通常実施権者はもちろん,被告以外の第三者が,上記標章の著名性の獲得に至るまでに,果物のメロンと動物の熊を組み合わせた存在を,具体的なイメージとして考案したと認めるに足りる証拠はなく,また,現在までに,被告以外にそのような存在を使用した商品が流通したことを認めるに足りる証拠もない。実際,原告商標については,特許庁において,不使用を理由とする取消審判がされている。 そうすると,原告商標から,「メロン」と「熊」がひとつに結合したものを観念することができたとしても,むしろ本件キャラクターを想起させてしまうことになる。
エ まとめ
以上によると,原告商標と被告各標章は,称呼こそ類似するが,需要者たる一般消費者において,その出所を誤認混同するおそれは極めて低いというべきである。 (4) 原告の権利行使が権利濫用であること 以上述べたところからすると,もともと被告各標章には特段の自他識別能力がある一方,原告商標は,登録後,少なくとも,流通におかれた商品に使用されてはおらず,原告商標自体,原告の信用を化体するものでもなく,何らの顧客誘因力も有しているともいえない。そして,原告商標と被告各標章との間で出所を誤認混同するおそれは極めて低い。それにもかかわらず,原告は,原告商標権に基づき損害賠償請求をするものであるが,このような行為は,本件キャラクターが周知性,著名性を獲得し,強い顧客吸引力を得たことを奇貨として,本件の権利行使をするものというべきである。 また,前記1で認定した原告商標の登録取消審決に至る経過をみると,本件訴訟の提起自体が,上記審判に対する対抗手段として行われた疑いが強いというべきである。

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平成25(ネ)10114等  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成26年7月14日  知的財産高等裁判所

 商標権侵害について、無償提供した個数については、商標法38条1項の損害賠償額決定判断対象から除外して損害を認定しました。1審の判断と同じです。
 証拠(乙21,22)によると,被告は,上記販売数量3717個のうち,少なくとも254個については無償で提供したことが認められる。 このように商品を無償提供することにより,当該商品を有償で取得しようとする需要者の購入を阻害する場合がある一方,そのような購入の意欲を有していない者に対して商品が頒布される場合もあると想定される。そうすると,侵害者により無償提供された侵害品が権利者による同種商品の販売に全く影響を及ぼさないとはいえない一方,その個数全部を権利者が販売することができたと推測することも相当でないから,上記無償配布分の一定程度は,原告が「販売することができないとする事情」として商標法38条1項本文による損害額から減じるのが相当である。ウ 以上を総合すると,被告が譲渡した商品について,原告が「販売することができなかった事情」として,被告製品の譲渡数量(無償提供分含む)全体の15%を減額するのが相当である。

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◆原審はこちらです

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平成26(ワ)12788 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成26年06月26日 大阪地方裁判所

 ウェブサイトの名称としての使用が、商標的使用ではないと判断されました。
 上記(1)及び(2)で認定したところを前提に,本件ウェブサイトにおける被告標章の使用態様について検討すると,まず,本件ウェブサイト1には,被告が,障害者のための居宅介護事業等を行っている旨の記載はあるものの,当該事業の具体的内容についての記載や料金の開示等は一切なく,同事業を利用するよう勧誘する文言も,同事業の利用を申し込むための手順や方法等も開示されていない。全体として,本件ウェブサイト1は,営利を目的としない特定非営利活動法人である被告において,その事業内容等を,障害者への対応等についての啓発活動等を含め,社会全般に広く紹介することを目的としたウェブサイトであると評価することができる。また,被告標章の実際の使用態様としても,トップページの最も目立つ場所に,「特定非営利活動法人 ライフサポートネットワーク いけだ」と大きく記載した上で,本件ウェブサイト内の相互リンクのためのバナー,リンクテキスト,イラストないし記述的文章の中で,被告の名称全体を記載する代わりの略語として,「ライサポいけだ」と記載しているにすぎない。以上によれば,本件ウェブサイト1において,被告標章が,被告の提供する役務の出所を識別するものとして使用されているということはできず,被告標章の使用は,商標法2条3項8号が定める商標としての使用にはあたらないというべきである。同様に,本件ウェブサイト2についても,その内容は,被告の職員等が日記風に周囲の出来事を読者に伝達するものであって,被告の役務の広告とは認められない上,本件ウェブサイト1と同様に,被告標章は,「ライフサポートネットワークいけだのブログ」のタイトルを示した上で,記述的な文章の中で,被告を示す略語として使用されるにすぎないものにすぎず,これらについても,被告の提供する役務の出所を識別させるものとして使用されているとはいえない。結局,本件ウェブサイトに使用された被告標章は,いずれも商標として使用されているとは認められないものである。
(4) 被告標章の類似性(争点(1))について 前記(3)の商標的使用の有無(争点(2))の点とは別に,被告標章が原告商標に類似するかについても検討する。この点について,原告は,被告標章のうち,地名である「いけだ」の部分に識別力はなく,「ライサポ」が要部であるから原告商標と類似する旨主張する。しかしながら,この主張は採用できない。すなわち,原告商標と被告標章の類似の有無については,被告標章の現実的な使用態様を前提に,誤認混同のおそれを判断すべきところ,被告標章の使用態様については,前記(1)及び(2)で認定したとおりであり,本件ウェブサイトを閲覧する者は,いずれも目立つよう大書された,被告の正式名称である「特定非営利活動法人ライフサポートネットワークいけだ」,あるいはブログのタイトルである「ライフサポートネットワークいけだのブログ」をまず認識し,その後に,バナー,イラスト,記述的文章の中に,被告標章である「ライサポいけだ」が使用されていることを認識するものと考えられる。そうすると,本件ウェブサイトを閲覧する者は,被告の正式名称またはブログのタイトルから,本件ウェブサイトを管理運営しているのは,池田市に本拠を置く,生活(ライフ)を支援(サポート)することを目的とする団体である旨の観念を抱いた後に,被告標章に接することになるから,被告標章が被告の正式名称の略語であることは容易に認識され,被告標章についても,同様に,池田市に本拠を置く,生活を支援することを目的とする団体であるとの観念を抱くものと考えられる。すなわち,被告標章の現実的な利用形態に照らすと,本件ウェブサイトを閲覧し被告標章に接する者は,被告標章を一体として認識し,「ライサポ」のみを抽出して捉えることはなく,上記のとおり,池田市に本拠を置く,生活を支援することを目的とする団体である旨の観念を抱くと考えられるから,単に「ライサポ」の文字からなる原告商標との間に誤認混同のおそれはなく,両者は類似しないというべきである。

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平成24(ワ)13709 損害賠償等請求事件 商標権 民事訴訟 平成26年03月27日 大阪地方裁判所 

 商標権侵害について、38条1項侵害の損害額についても、寄与度減額30%が適用されると認定されました。
 被告は,被告商品を識別する際に最も重要な商標は,「PANAVAC」の文字商標であるから,本件商標1及び同2の寄与度は極めて小さく,損害額の算定に当たっては大幅な寄与度減額がされるべき旨主張する。この点,被告商品における「PANAVAC」の文字標章は,その外観,位置,大きさなどに加え,登録商標を意味する「(R)」が付されていることから,商標的に使用されているといえる。そして,「PANAVAC」は,日本国内における被告商品の需要者にとって,特定の観念を生じさせるものではなく,相応の識別力を有していること,原告も原告商品の宣伝広告において,商品名を「プロシュテルピュアアンドフリー」とし,「PANAVAC」の片仮名表記を含めていたこと(枝番を含めて甲11)も考慮すれば,一定の寄与度減額をすべき必要性は否定できない。しかし,「PANAVAC」の商標が,日本の需要者の間で広く認知されていたことを認めるに足りる証拠はなく,その需要喚起の程度は定かではない。一方,別紙正面視商品写真のとおり,被告商品において,正面中央に最も大きく,目立つ態様で商標的に使用されているのは,「PANAVAC」の文字標章ではなく,被告標章2である。また,原告は,平成14年以降,合計7種類の外国産ノンアルコールビールを継続的に販売しているが(そのうちの標章を付したものは原告商品を含めた2種類である。),いずれの商品にも本件商標1を構成する「PANAVAC」又は「プライム セレクト」の文字商標を付しており(枝番を含めて甲6〜10,26),本件商標1は,被告商品の需要者の間で相応の認知度を有していたといえる。このような事情に照らせば,被告商品において,「PANAVAC」の文字標章が商標的に使用されていることを理由に大幅な減額をすべきではなく,30%の減額が相当である。
(カ)小括
以上より,被告が本件商標権1及び同2の侵害品である被告商品の販売によって得た利益は,売上げの542万4666円から,仕入額152万1307円及びその他の費用108万8421円を控除した281万4938円であり,同額からその30%に当たる84万4481円(1円未満切捨て)の寄与度減額をした197万0457円が,商標法38条2項により算定される原告の損害額である。
イ 商標法38条1項
原告は,被告商品の競合品である原告商品の単位数量当たり利益は19.09円であり,これに被告商品の販売数量である12万3120缶(=24缶×5130カートン)を乗じた235万0360円が,商標法38条1項によって算定される損害額である旨主張する。しかし,前記ア(ウ)で検討したところによれば,商標法38条1項による算定においても,30%の寄与度減額は避けがたいため,原告商品の単位数量当たりの利益について原告の上記主張を前提にしても,原告の損害額は164万5252円となる。 ウ 小括
以上によれば,原告商品の単位数量当たりの利益に関する原告の主張の採否にかかわらず,商標法38条2項によって算定された197万0457円の方が,同条1項の算定額よりも高くなるため,197万0457円をもって,被告による被告商品の販売によって生じた損害額と認められる。
(2)値下げによる損害
原告は,被告商品の販売による前記(1)の損害のほか,被告が原告の得意先であるはまゆう物産に対し,被告商品を1缶15円から20円,さらには10円での取引を働きかけたため,平成24年2月16日,当時,原告商品の販売単価が平均56円であるにもかかわらず,はまゆう物産に対しては,20円まで値下げして計6400カートンを販売せざる得なくなったとし,同値下げ分も商標権侵害によって原告が被った損害である旨主張する。しかし,被告がはまゆう物産に対してそのような働きかけをしたとの主張に沿う証拠は,はまゆう物産の代表取締役からその旨聞いたという原告代表\者の陳述書(甲26)があるにとどまる。しかも,前記(1)で検討したところによれば,被告は被告商品12万3120缶(=24缶×5130カートン)につき,260万9728円(=仕入額152万1307円及びその他の費用108万8421円)の費用を負担しており,1缶当たりの費用は約21円であるところ,はまゆう物産に対し,当初からその費用を下回る単価での取引を働きかけたとは考えにくい。また,仮に原告の主張するような事実関係があったとしても,原告は,はまゆう物産との取引があったとする平成24年2月16日の前後を通じ,他の業者に対しては,平均して50円程度の単価で原告商品の販売を継続しており(甲23),原告商品の市場価格そのものが下がったわけではないし,また,直ちに原告商品を売り切らなければならないような特別な事情も認められないのであるから,被告の行為と原告が単価20円で原告商品を販売したこととの因果関係を認めることはできず,はまゆう物産が大口の取引先であることがこの判断を左右するものではない。

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平成24(ワ)24872 損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟 平成26年01月31日 東京地方裁判所

 商標権侵害について、使用料相当額の損害として8000万円を超える損害が認められました。
 被告は,原告が本件商標を使用していない以上,本件商標には原告の信用と結合した顧客吸引力は存在し得ないから,本件商標権には何らの財産的価値はない旨主張する。しかしながら,商標の使用の有無と顧客吸引力の有無とは必ずしも直結するものではない。そして,被告は,それ以外の顧客吸引力を否定する事情を主張しないし,本件証拠をみても本件商標の顧客吸引力を否定するような事情は見当たらないから,本件商標権に財産的価値がないとはいえない。
イ また,被告は,被告の売上は,被告の宣伝広告活動や販売促進活動等によるものというべきであって,被告標章の使用がこれに特に寄与したということはできない旨主張する。しかしながら,被告は,平成24年3月6日,原告から本件商標権侵害を指摘する警告書を送付された(甲8の1及び2)にもかかわらず,その後も被告標章を使用している。また,被告は,被告の売上と宣伝広告活動等との関係について立証しないし,その他被告標章の使用が被告の売上に寄与していないことを認めるに足りる証拠もない。
ウ さらに,被告は,登録商標に類似する標章を第三者がその製造販売する商品につき商標として使用した場合であっても,当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず,登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品売上に全く寄与していないことが明らかなときは,得べかりし利益としての使用許諾料相当額の損害も生じていないと主張する。しかしながら,上記のとおり,本件商標の顧客吸引力を否定する事情は見当たらないから,本件商標について使用許諾料相当額の損害も生じていないとはいえない。
エ 以上のとおり,本件では,本件商標の顧客吸引力を否定する事情等は認められないし,その他原告の損害の発生を否定する事情も認められないから,被告の本件商標権侵害により,原告には少なくとも使用許諾料相当額の損害が生じたというべきである。
・・・
そこで,本件商標の使用料率を検討するに,証拠(甲23の添付資料)に照らすと,その使用料率は1.5%を下回ることはないと認めるのが相当であるから,その使用許諾料相当額は8070万7677円(=53億8051万1839円×0.015)となる。

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平成25(ワ)3255 商標権移転登録手続請求事件 商標権 民事訴訟 平成26年01月28日 東京地方裁判所

 商標譲渡契約は未成立として、移転請求が却下されました。
 原告は本件委任契約が成立したと解すべき根拠として前記(1)1)〜6)の各点を挙げるところ,これに沿う証拠としてはCとの間で本件委任契約を締結した旨のAの陳述(甲325)があるが,他方,原告及びAとCの間には本件各商標権の取扱いについて約定した甲234契約が存在するので,上記陳述及び同契約が本件委任契約の存在を裏付けるものといえるか(原告の主張6))についてまず検討することとする。Aは,本件委任契約の成立に関して,昭和46年6月中旬ころ,Cに対し,原告において本件各商標につき商標権を取得したいが名義を借りてよいか尋ねたところ,Cは,元鍵以外はAに任せるから自由に使っていいよと回答し,Cが,同人名義で本件出願をし,登録後の維持管理をすることを承諾した旨陳述する。しかし,上記陳述内容を裏付ける客観的な証拠は何ら存在しない上,これにより明らかになっているのはCが出願人となって本件各商標の商標登録出願をすること及び原告が本件各商標を自由に使用することができることのみであり,これによって本件委任契約の内容(原告の主張によるとすれば委任終了後は原告又はAへの移転登録をすること)について合意されたと認めることは困難である。むしろ,甲234契約においては,本件各商標権はCに帰属し,後藤製作所,A及び原告に対して本件各商標権の通常使用権を設定する旨の明文の定めがある一方,本件委任契約の存在を裏付けるような条項は存在しない。すなわち,原告が主張するように本件各商標権が実質的に原告又はAに帰属するというのであれば,Cは本件各商標権を第三者に譲渡し,又は使用許諾することができないなどといった条項が設けられてしかるべきであるのに,そのような条項は存在しないのである。甲234契約の各項を前記認定の事実関係に照らして解釈すると,Cが出願した商標及び意匠につき,(ア) 本件各商標及び類似各商標についてはCが保有し続け,原告及びAに通常使用権を許諾するものとし,(イ) その余の商標及び意匠についてはCがAに譲渡すると分類されたのは,後藤製作所がキーブランク及びキーマシンを製造し,原告がこれを購入して合鍵等を販売するとの前記(2)ウの合意の下,Cが,上記(イ)のキーブランク及びキーマシンを指定商品としない商標及びこれらと異なる物品に係る意匠や,「フキ」の称呼を生じない商標は譲り渡してよいが,上記(ア)のキーブランク又はキーマシンを指定商品とする商標であって「フキ」の称呼を生じるものは譲渡しないとの意思を有していたものと推認することができる。

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平成24(ワ)12386 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成26年01月21日 大阪地方裁判所

 登録商標「DNA」が、「横浜DeNAベイスターズ」とは非類似と認定されました。
 原告は,被告標章2の要部は「DeNA」の部分にあり,その要部と原告商標を対比すべきであると主張するが,以下に述べるとおり,被告標章2は一体として評価すべきものであり,「DeNA」の部分のみを要部として取り出すことはできない。ア 被告標章2は,その文字の大きさ等に違いはなく,外観において,特定の部分を抽出すべきとする点は見いだせない。イ 称呼,観念の点からみると,まず,被告標章2のうち「ベイスターズ」の部分は,造語であって特定の意味を有しないから,それ自体,高い識別力を有する。加えて,報道等においてプロ野球球団(チーム)を表現する場合,チームの愛称だけで表\現する場合(例えば,「北海道日本ハムファイターズ」を「ファイターズ」と表現する場合)や,オーナー企業の名称,通称等で表\現する場合(例えば「埼玉西武ライオンズ」を「西武」と表現する場合)がみられるほか,本拠地名で表\現する場合(例えば「広島東洋カープ」を「広島」と表現する場合)があることは,公知の事実である。これを本件球団についてみると,前記2で認定したとおり,本件球団については,「横浜ベイスターズ」がその名称として長年にわたり使用された後,オーナー企業を示すものとして「DeNA」が挿入されたのであるから,被告商品の需要者であるプロ野球に関心のある者が被告標章2に接した場合,文字のとおりに「よこはまディーエヌエーベイスターズ」と読む場合と,愛称から「ベイスターズ」,本拠地を加えて「横浜ベイスターズ」,オーナー企業の名称から「ディーエヌエー」と様々に略する場合とが考えられるが,そのいずれの場合であっても,横浜に本拠地を有するプロ野球チームである本件球団が観念されると解される。
ウ 以上によると,被告標章2を構成する「横浜」,「DeNA」,「ベイスターズ」については,それぞれが一定の識別力を有するというべきであり,「DeNA」のみが商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできないから,「DeNA」のみを要部として抽出し,この部分だけを原告の商標と比較して類否を判断すべき場合には当たらず,原告の主張は採用できない。\n

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平成24(ワ)8071 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月16日 大阪地方裁判所

 使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為について、特許はすでに消尽しているかが争われました。裁判所は、新たな生産行為として侵害と認定しました。また、商標権についても侵害認定をしました。損害額は102条2項(侵害者の利益を損害と推定する)で認定されました。
 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許される。特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされた場合において,当該加工等が特許製品の新たな製造に当たるとして特許権者がその特許製品につき特許権を行使することが許されるといえるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断すべきである(最高裁判所平成19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁)。
(2)検討
まず,特許製品の属性についてみると,原告製品及び被告製品の分包紙が消耗部材であるのと比較すれば,芯管の耐用期間が相当長いことは明らかである。他方で,分包紙を費消した後は,新たに分包紙を巻き直すことがない限り,製品として使用することができないものであるから,分包紙を費消した時点で製品としての効用をいったんは喪失するものであるといえる。また,証拠(甲10)によれば,原告製品は,病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳密に衛生管理された自社工場内で製造されていることが認められる。同様に,証拠(甲12〜14,乙5)によれば,被告製品も,被告が製造委託した工場において高い品質管理の下で製造されていることが認められる。これらのことからすれば,顧客にとって,原告製品(被告製品)は上記製品に占める分包紙の部分の価値が高いものであること,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することはできないため,顧客にとって,分包紙を費消した後の芯管自体には価値がないことも認められる。そうすると,特許製品の属性としては,分包紙の部分の価値が高く,分包紙を費消した後の芯管自体は無価値なものであり,分包紙が費消された時点で製品としての本来の効用を終えるものということができる。芯管の部分が同一であったとしても,分包紙の部分が異なる製品については,社会的,経済的見地からみて,同一性を有する製品であるとはいいがたいものというべきである。被告製品の製造において行われる加工及び部材の交換の態様及び取引の実情の観点からみても,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品の主要な部材を交換し,いったん製品としての本来の効用を終えた製品について新たに製品化する行為であって,かつ,顧客(製品の使用者)には実施することのできない行為であるといえる。以上によれば,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品としての本来の効用を終えた原告製品について,製品の主要な部材を交換し,新たに製品化する行為であって,そのような行為を顧客(製品の使用者)が実施することもできない上,そのようにして製品化された被告製品は,社会的,経済的見地からみて,原告製品と同一性を有するともいいがたい。これらのことからすると,被告製品は,加工前の原告製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認めるのが相当である。被告製品を製品化する行為が本件特許発明の実施(生産)に当たる旨の原告の主張には理由がある。
4 争点3(原告が被告製品につき本件各商標権を行使することの可否)に対する判断 前記3のとおり,原告製品及び被告製品は,いずれも病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳重な品質管理の下で,芯管に分包紙を巻き付けて製造されるものである。顧客にとって,上記製品に占める分包紙の部分の品質は最大の関心事であることが窺える(なお,前記のとおり,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することもできない。)。そうすると,分包紙及びその加工の主体が異なる場合には,品質において同一性のある商品であるとはいいがたいから,このような原告製品との同一性を欠く被告製品について本件各登録商標を付して販売する被告の行為は,原告の本件各商標権(専用使用権)を侵害するものというべきである。実質的にみても,購入者の認識にかかわらず,被告製品の出所が原告ではない以上,これに本件各登録商標を付したまま販売する行為は,その出所表示機能\を害するものである。また,被告製品については原告が責任を負うことができないにもかかわらず,これに本件登録商標が付されていると,その品質表示機能\をも害することになる。これらのことからすると,原告は被告製品につき本件各商標権を行使することができるものと解するのが相当である。

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