被告は、ロゴ化された商標「Robot Shop」を用いてオンライン販売をしていました。商標「Robot Shop」(標準文字)の商標権者が、侵害訴訟を提起しました。1審は、差止と約1500万円の損害賠償を認めました。大阪高裁もほぼ同様です。
これに対し、一審被告は、一審原告の損害賠償額の推定の覆滅割合につ
いて、一審被告の出資者の創始したカナダ法人が長年にわたり被告標章を使
い続けてきたこと、一審原告は本件商標以外にも自己の社名を用いた別の商
標を用いていること等からすると、上記の覆滅割合は90%を優に超えると
いうべきである旨主張するが、一審被告の指摘する上記の事情は、上記認定
の覆滅割合の判断を左右するものであるとはいえない。
他方、一審原告は、1)ウェブサイトに「RobotShop」などと表示\nしてロボット関連商品をインターネット上で販売している会社は、一審原告
と一審被告の他には2社しかない、また、2)一審原告の販売商品である「S
ota」というロボットは、日本経済新聞で取り上げられるなど著名であ
り、本件商標は「Sota」の販売元のものとして知名度があるから、本件
商標の自他商品識別力は相当程度強いとして、一審原告の損害賠償額の推定
の覆滅割合は45%にとどまるなどと主張する。
しかし、上記1)の主張を踏まえても、ウェブサイトに「RobotSho
p」などと表示してロボット関連商品をインターネット上で販売している会\n社は、一審原告と一審被告の他にも複数あるというのであり、また、上記2)
の主張のとおり本件商標に一定の知名度があるとしても、本件商標そのもの
は、「ロボットの店」などの意味で理解され得る一般的な語であることに照
らすと、それ自体の自他商品識別力が強いとはいえない。
したがって、一審原告の主張を踏まえても、一審原告の損害賠償額の推定
の覆滅割合を90%と認めるのが相当であるとの上記判断は左右されな
い。
・・・
上記イ認定の限界利益額1億1306万8476円に10%(100%−90%)を乗じた額として計算された・・・
◆判決本文
1審はこちら
◆令和2年(ワ)7918
35類のいわゆる「総合小売等役務」を指定した商標権の取消審決に対する審決取消訴訟です。裁判所は、不使用とした審決を維持しました。
以上の点を踏まえ、「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括し
て取り扱う」という指定役務の名称の文言をも考慮すると、「衣料品・飲食料品及び
生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる
顧客に対する便益の提供」とは、衣料品・飲食料品・生活用品の各商品を一事業所
において扱っている場合であって、その取扱い規模がそれぞれ相当程度あり、かつ、
継続的に行われている場合をいうものと解するのが相当であり、典型的には、百貨
店や総合スーパーが提供する役務が挙げられるものと解される。他方で、「一括して
取り扱っている」とはいい難い場合、具体的には、「衣料品、飲食料品及び生活用品
に係る」各種商品のうちの一部の商品しか小売等の取扱いの対象にしていない場合
や、「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る」各種商品に属する商品を取扱いの対象
とする業態を行っている場合であったとしても、一部の商品の取扱量が僅少であり、
全体としてみると特定の商品等を主として取り扱っているとみられる場合や一部の
商品が各種商品の小売等に付随して取り扱われているすぎない場合などは含まれな
いものというべきである。
なお、国際分類を構成する類別表\\注釈において示された商品又は役務についての
説明には特段の記載はないが、特許庁の類似商品・役務審査基準においても、「衣料
品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務
において行われる顧客に対する便益の提供」は「35K01」と定められる一方、
「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
は「35K02」、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する
便益の提供」は「35K03」、「家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客
に対する便益の提供」は「35K06」とそれぞれ定められ、例えば「35K03」
などの同一コード内の小売等役務同士は互いに類似するものと推定される一方、「3
5K01」と「35K02」といった同じ35類であっても異なるコードの小売等
役務同士は類似しないものと推定されているところである。
・・・
エ 上記ウの各事実によると、原告店舗はパリの日用品店をアレンジしたライフ
スタイルショップであり、ファッション、ファッショション小物やキッチン用品な
ど衣料品や生活用品を中心とした商品を取り扱っており、これらの商品が店舗の売
上げに占める割合が相当程度多いものと認められるのに対し、前記ウ(イ)〜(エ)による
と、飲食料品の販売数や売上金額は衣料品や生活用品に比して小規模である。これ
に加え、証拠(乙13の1〜16)からうかがわれる本件要証期間及びその前後の
原告店舗における商品の展示方法をも考慮すると、本件要証期間における飲食料品
の販売については、コーヒーカップやマグカップのような食器類などと合わせて販
売されているものであって、生活用品の小売等に付随して取り扱われているものに
すぎず、原告店舗において、衣料品、飲食料品及び生活用品の各商品を「一括して
取り扱っている」と評価することはできず、その他これを認めるに足りる証拠はな
い。
また、前記ウ(エ)及び(オ)の各事実によると、原告店舗の売上金額が1か月間で10
0万円程度あったことが認められるものの、同(オ)については、取り扱っている食品
の内容に加え、前記ウ(カ)のバレンタイン前の期間の販売であったとの事実も考慮す
ると、バレンタインの贈物のために一時的に売上げが増加しているものといえるこ
と、前記ウ(エ)については、正月に向けて一時的に売上げが増加したものといえる
ことからすると、原告店舗につき、一事業所において、衣料品・飲食料品及び生活
用品に係る各商品の取扱い規模がそれぞれ相当程度あり、継続的に行われていると
認めることはできず、その他これを認めるに足りる証拠はない。
(3) 以上によると、本件要証期間において、原告店舗は、「衣料品、飲食料品及び
生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる
顧客に対する便益の提供」を行っていたものとはいえない。
したがって、本件要証期間において、原告が、「衣料品・飲食料品及び生活用品に
係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対す
る便益の提供」を行っているとは認めることができない旨を判断した本件審決に誤
りがあるとはいえない。
2 原告の主張について
(1) 原告は、本件商標を使用しそれによって業務上の使用が現に蓄積されている
以上、「飲食料品が総売上高に占める割合」によって商標法50条1項に係る商標の
使用・不使用を判断することは、同項の制度趣旨から逸脱しており、同項の不使用
取消審判において、商標登録要件の基準にすぎない「衣料品、飲食料品及び生活用
品の売上げがいずれも総売上高の10%〜70%程度の範囲内にあることが目安と
される」との基準を採用し、それによって不使用取消しの審決をした本件審決は違
法であると主張する。
しかしながら、原告の上記主張のうち、原告が本件商標を使用しそれによって業
務上の信用が現に蓄積されているかは、指定役務である「衣料品・飲食料品及び生
活用品に係る各種商品を一括して取扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客
に対する便益の提供」について登録商標を使用しているかどうかの判断に直接の影
響を与えるものとはいえない上に、前記1(2)ウの原告店舗の商品販売状況等に照
らすと、本件商標の指定役務中の第35類「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る
各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便
益の提供」について本件商標の使用による信用が蓄積されているとも認め難く、こ
の点に関する原告の主張は採用できない。
◆判決本文