2016.04. 1
プログラムが利用するテンプレートデータについて、著作物に該当しないとした1審判断が維持されました。
プログラムの著作物の複製権又は翻案権を侵害したといえるためには,既存のプ
ログラムの具体的表現中の創作性を有する部分について,これに依拠し,この内容\n及び形式を覚知させるに足りるものを再製するか,又は,その表現上の本質的な特\n徴の同一性を維持しつつ,これに修正,増減,変更等を加えて,新たな思想を創作
的に表現し,新たな表\現に接する者が従来の表現の本質的な特徴を直接感得するこ\nとのできるものを創作したといえることが必要であり,単にプログラムが実現する
機能や処理内容が共通するだけでは,複製又は翻案とはならない。\n本件においては,控訴人プログラム及び被控訴人プログラムのいずれについても,
極めてわずかな部分を除いては,適式にソースコードが開示されておらず,それぞ\nれのプログラムの具体的表現は不明というほかなく,控訴人プログラムの創作性の\nある具体的表現内容やこれに対応する被控訴人プログラムの具体的表\現内容も不明
である。もっとも,控訴人プログラムのソースコードは,約19万行と認められるから(弁論の全趣旨),その全部に創作性がないことは考えにくく,仮に,被控訴人\nプログラムが,控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコー
ドの全部又は大多数をコピーして作成されたものといえる事情があるならば,被控
訴人プログラムは,控訴人プログラムを複製又は翻案したものと推認することがで
きる。
以下,この観点から,控訴人の指摘する点に沿って検討を加える。
(2) 控訴人の主張について
1) 被控訴人が控訴人プログラムのTemplate.mdbを複製したことは,当事者間に争いがない。
しかしながら,被控訴人がTemplate.mdbを複製したのは,専ら旧SSTとの互換性を確保するためであると認められるところ,上記のとおり,Template.mdbに格納するデータはTemplate.mdb以外のプログラムが処理をするものであり,当該データを定義するコードを除いて,Template.mdbを複製したからその余のプログラムも複製されたと推認される関係にはない。また,Template.mdbに格納するデータは,前記1(1)のとおり,作成された文字情報や各種設定情報であるから,これを定義するコードの表現に選択の幅はないか,ほぼないと認められるから,このコード自体に創作性を認めることも困難である。たがって,Template.mdbが複製されているとしても,そのことは,被控訴人プログラムが控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数をコピーしたことを推認させる事情とはいえない。
2) 控訴人プログラムには,xlsx形式(Excel2007)で出力された字幕ファイルであっても,その拡張子に「xls」(Excel2003)が付されてしまう事象が生じていたところ,平成25年にリリースされた本件プログラムでも同様の事象が生じていたたことが認められる(甲36,37,157,159)。上記事象の原因が,控訴人が主張するように,この事象に関係するコードがExcel2007が頒布開始された平成19年(2007年)より前に作成されたことによるのか,被控訴人が主張するように開発環境にExcel2007がなかったことによるのか,
あるいは,単なるバグであるのか(平成25年にリリースされた製品でもそれ以前
に販売されたソフトウェアに対応する必要性はある。),いずれとも確定し難い。し\nたがって,上記事象が,控訴人プログラムのソースコードと被控訴人プログラムの\nソースコードとの特異な一致ということもできない。\nしたがって,上記事象があるとしても,そのことは,被控訴人プログラムが控訴
人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数
をコピーしたことを推認させる事情とはいえない。
3) 控訴人は,本件プログラムには,字幕ウィンドウのハコ全体に対する表示属\n性の設定がハコ内に入力される字幕すべてに適用されないという,控訴人プログラ
ムと同様のバグがあると主張する。しかしながら,テキストを全選択して属性設定をしても,その選択範囲よりも前の部分に新たに挿入した文字にその属性が反映されないのは,プログラムとして普通のことである。しかるに,そもそも本件プログラムにはハコ全体に対する表示属性設定機能\がないとの被控訴人の主張や,被控訴人プログラムのマニュアルにおける「全て個別設定になります。」との記載(甲23添付の別紙マニュアルの37頁)にかんがみると,控訴人提出の証拠(甲43〜46)によって示されているのは単なるテキストの全選択にすぎないものと認めるほかなく,本件プログラムに控訴人プログラムと同様のバグがあることを認めるには足りない。
◆判決本文
◆1審判決はこちち。平成25(ワ)18110