飲食店におけるオーダ管理、および売り上げ管理をおこなうプログラムについて、「原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されている指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式を採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されている」として、著作物性が否定されました。
プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこ\nれに対する指令を組み合せたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号\nの2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュー
ターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組合せ,
どのような表現順序とするかなどについて,著作権法により保護されるべき作成者\nの個性が表れることになる。\nしたがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,
かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性
が表れていることを要するといわなければならない(前掲知財高裁平成24年1月\n25日判決)。
(2) 原告プログラムのソースコードの創作性について\n
ア 原告プログラムのソースコードのうち創作性が認められ得る部分\n前記1のとおり,原告プログラムは,原告が作成していたレジアプリケーション
ソフトを基に,原告と被告が協議しつつ,原告がソ\ースコードを書くことにより完
成したものであって,顧客の携帯電話端末を注文端末として使用することができる
点や,店舗において入力した情報を店舗(クライアント)側ではなくサーバー側プ
ログラムを介してデータベースに保持し,主要な演算処理を行う点等について,従
来の飲食店において使用されていた注文システムとは異なる新規なものであったと
一応推測することができる。また,原告の書いた原告プログラムのソースコード(甲\n3)は,印刷すると1万頁を超える分量であって,相応に複雑なものであると推測
できる(原告本人)。
そして,6)データベースにおける正規化されたデータの格納方法や,注文テーブ
ル及び注文明細テーブルに全てのアプリケーションからの注文情報を集約するため
の記述(甲18)等に,原告の創作性が認められる可能性もある。\n
イ コンピュータに対する指令の創作性について
前記(1)のとおり,プログラムの著作物性が認められるためには,プログラムによ
り特定の機能を実現するための指令の表\現,表現の組合せ,表\現順序等に選択の幅
があり,ありふれた表現ではないことを主張立証することが必要であって,これら\nの主張立証がなされなければ,プログラムにより実現される機能自体は新規なもの\nであったり,複雑なものであったとしても,直ちに,当該プログラムをもって作成
者の個性の発現と認めることはできないといわざるを得ない。
コンピュータに対する指令(命令文)の記述の仕方の中には,コンピュータに特
定の単純な処理をさせるための定型の指令,その定型の指令の組合せ及びその中で
の細かい変形,コンピュータに複雑な処理をさせるための上記定型の指令の比較的
複雑な組合せ等があるところ,単純な定型の指令や,特定の処理をさせるために定
型の指令を組合せた記述方法等は,一般書籍やインターネット上の記載に見出すこ
とができ,また,ある程度のプログラミングの知識と経験を有する者であれば,特
定の処理をさせるための表現形式として相当程度似通った記述をすることが多くな\nるものと考えられる(乙12,被告代表者)。\nそうすると,ソースコードに創作性が認められるというためには,上記のような,\n定型の指令やありふれた指令の組合せを超えた,独創性のあるプログラム全体の構\n造や処理手順,構成を備える部分があることが必要であり,原告は,原告プログラ\nムの具体的記述の中のどの部分に,これが認められるかを主張立証する必要がある。
ウ 本件における主張立証
被告は,原告プログラムについて,1)レジ,2)キッチンモニター及び3)マスタメ
ンテナンスの各プログラムのソースコードは,汎用性のあるソ\ースコードであり創
作性が認められないと主張し,被告代表者の陳述書(乙12)において,上記1)〜
3)の各プログラムのソースコード(甲4〜6)の大部分について,指令の表\現に選
択の幅がなく,一般書籍(乙6)やインターネット上にも記載のあるありふれたも
のであることを指摘する。また,被告は,原告プログラムのうち他の構成について\nも,指令の組合せがありふれたものであると主張する。
これに対し,原告は,4)スタッフオーダー等によって入力された情報を,5)サー
バー側プログラムを経由して飲食店用に最適化された6)データベースにおいて一括
管理し,レジやキッチンに出力する機能が一体となる点に創作性が認められる旨主\n張するが,これは,プログラムにより実現される機能が新規なもの,複雑なもので\nあることをいうにとどまり,それだけでプログラムに創作性が認められることには
ならないことは前述のとおりであるところ,原告は,具体的にどの指令の組合せに
選択の幅があり,いかなる記述がプログラム制作者である原告の個性の発現である
のかを,具体的に主張立証しない。
むしろ,乙6,12によれば,原告が開示した原告プログラムの1)レジ,2)キッ
チンモニター及び3)マスタメンテナンスのソースコード(甲4〜6)に表\れる指令
の組合せのうちの多くは,原告プログラムの作成日以前から一般的に使用されてい
る指令であり,変数や条件等の文字列の場所が決まっているため独創的な表現形式\nを採る余地のないものであって,インターネット上に使用例が公開されているもの
も多いことが認められる。
エ まとめ
前記認定したところによれば,原告は,平成23年3月の時点で,一定のレ
ジアプリケーションを完成していたが,これは「でんちゅ〜」そのものではなく,
「でんちゅ〜」を事業化しようとする被告代表者と協議しながら,「でんちゅ〜」\nのプログラムを開発したこと,平成24年12月までの原告と被告との法的関係は
不明であるが,「でんちゅ〜」の事業化の主体は被告であり,原告は,被告の依頼
又は内容に関するおおまかな指示を受けてプログラムの開発を行ったこと,「でん
ちゅ〜」は平成23年に飲食店に試験導入され,平成24年以降本格導入されたこ
と,原告は,少なくとも同年12月から平成27年7月の退社までの2年半余り,
被告の被用者として被告の指示を受け,前記導入の結果を踏まえ,「でんちゅ〜」
の改良,修正等に従事したこと,以上の事実が認められる。
上記事実の中で,平成24年5月22日の時点における原告プログラムの構\n成が,ありふれた指令を組み合わせたものであるには止まらず,原告の個性の発現
としての著作物性を有していたと認めるに足りるものであることの立証がなされて
いないことは,既に述べたところから明らかである。
また,平成23年の導入以降,「でんちゅ〜」については,段階的に改良や
修正が施され,原告自身も,少なくとも2年半余り被告の従業員としてその開発,
修正に従事しており,前記認定のとおり,原告プログラムと被告プログラムには相
当程度の差異が認められるのであるから,仮に原告プログラムの一部に,原告の個
性の発現としての創作性が認められる部分が存したとしても,その部分と同一又は
類似の内容が被告プログラムに存すると認めるに足りる証拠はなく,結局のところ,
平成24年5月22日時点の原告プログラムの著作権に基づいて,現在頒布されて
いる被告プログラムに対し,権利を行使し得る理由はないといわざるを得ない。
◆判決本文
漏れてましたのでアップしました。ソフトウェアのソ\ースコードを流用したことが、不正競争行為に該当すると判断されました。問題となったのは、原告ソフトウェアについて、原告外部の技術者としてその開発,制作に携わり,その後,被告から委託を受け,被告ソ\フトウェアの実際の開発,制作を担当したBの行為です。前訴で著作権侵害を争いましたが、1審、2審とも著作権を侵害しないと判断されています。損害認定については、原告の利益*被告の譲渡数量をベースとして95%の滅失事由があると認定されました。
本件鑑定で用いられたソースコードの分析の手法及びその鑑定結果の概要\nは以下のとおりである。(鑑定の結果〔4頁ないし12頁,17頁,24頁ない
し27頁〕)
ア 本件鑑定においては,原告の意見等も踏まえ,本件ソースコードのうち1\n14種類のソースファイルが鑑定対象とされ,本件ソ\ースコードのうち一つ
または複数のソースコードに対して被告ソ\フトウェアの複数のソースコー\nドを比較すべき場合があることから,300組のソースコードのペアについ\nて,一致点の有無等が判断された。
イ 前記の300組のソースコードのペアについて,類似性や共通性を判断す\nるため,8種類のコードクローン検出(コードクローンとはソースコード中に相互に一致又は類似したコード断片をいう。)を実施した。\n8種類のコードクローン検出の方法の概要は,1)識別子とリテラルのオー
バーラップ係数を用いて名前の包含度合いを確認する,2)識別子とリテラル
のコサイン係数を用いて名前の一致度合いを確認する,3)識別子とリテラル
の部分文字列のオーバーラップ係数を用いて名前の文字並びの包含度合い
を確認する,4)識別子とリテラルの部分文字列のコサイン係数を用いて名前
の文字並びの一致度合いを確認する,5)コメントの部分文字列のオーバーラ
ップ係数を用いてコメントの文字並びの包含度合いを確認する,6)コメント
の文字列のコサイン係数を用いてコメントの文字並びの一致度合いを確認
する,7)キーワードや記号の系列にSmith−Watermanアルゴリ
ズムを適用してソースコードの文字並びの一致度合いを確認する,8)前記ア
ルゴリズムをソースコードの長さで正規化してソ\ースコードの構造の一致\n度合いを確認するというものであった。
ウ 前記イの8種類のコードクローン検出を実施し,1種類以上の方法で類似
性についての一定の閾値を超えたものを要注意コード・ペアとして取り扱っ
た。この要注意コード・ペアは,300組中57組存在した。
エ 前記ウの結果を参考にしつつ,鑑定人が300組全てのソースコードのペ\nアについて目視確認を行い,共通性や類似性が疑われるソースコードのペア\nを選んだ。その結果,原告ソフトウェアのソ\ースファイルと被告ソフトウェアのソ\ースファイルには,1)「GlobalSettings.h」と「S
ourceDefault.h」(順に,原告ソフトウェアのソ\ースファイル
と被告ソフトウェアのソ\ースファイル。以下,同じ。),2)「GlobalS
ettings.cpp」と「SourceDefault.cpp」,3)「S
STDB.cpp」と「Mdb.cpp」,4)「AutoLocker.h」
と「SafeLocker.h」,5)「AutoLocker.cpp」と「S
afeLocker.cpp」につき,共通性や類似性が疑われる箇所が発見された(類似箇所1ないし5)。
・・・・
鑑定人は,類似箇所1ないし4について原告と被告のソースコードが不自\n然に類似・共通する箇所が存在すると判断し,類似箇所5については原告と
被告のソースコードに類似性や共通性が見られるがその理由が不自然であ\nるとまではいえないと判断した。
・・・
キ 鑑定人は,類似箇所1ないし5について,原告ソフトウェアを参照せずに\n被告らが独自に作成することが可能であるか否かにつき,以下のとおり判断\nした。
類似箇所1について
原告ソフトウェアのソ\ースコードの一部がサンプルで公開されていた
などといった外部要因がないことを前提とすれば,原告ソフトウェアと被\n告ソフトウェアの開発者は必ず同一人物である。被告ソ\フトウェアを開発
する際に原告ソフトウェアを参照した可能\性が高いが,参照せずに開発す
ることが全く不可能であるとまでは言い切れない。\nもっとも,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの開発者が同一人物で
あり,その人物の記憶を手掛かりとしても,原告ソフトウェアのソ\ースコ
ードを参照せずに類似箇所1で見られるような細かい特徴まで一致させ
ることは難しいと考えることが自然である。
・・・
類似箇所1ないし3について,本件ソースコードの被告\nらによる使用等があったと認められる。そして,Bが,原告ソフトウェアの開\n発に携わった者の一人であり,被告ソフトウェアについて実際の開発,制作を\n担当したこと(前提事実 )及び弁論の全趣旨から,Bは,被告ソフトウェア\nの開発の際,本件ソースコードの類似箇所1ないし3に対応する部分を使用し\nて被告ソフトウェアを制作等し,もって,類似箇所1ないし3を被告フェイス\nに対して開示し,また,被告フェイスにおいてそれを取得して使用したと認め
られる。
類似箇所4について
前記1(1)によれば,類似箇所4については,被告ソフトウェアのデータベー\nスで用いられている52件のフィールドの名前が原告ソフトウェアのデータ\nベースで用いられているものと同じであると指摘されており,被告らもTem
plate.mdbの複製について認めていることに照らせば,類似箇所4に
ついては,類似箇所1ないし3についてと同様の理由から,Bから被告フェイ
スに対する開示及び被告フェイスによるその使用があったと認められる。
・・・
イ 原告ソフトウェアが開発されるに至った経緯や原告ソ\フトウェアの開発
の際のBの勤務の形態等に照らしても,原告ソフトウェアの開発,制作は原\n告の指示に基づきされたといえるものであり,本件ソースコードは原告が保\n有すると認められる。そして,原告ソフトウェアの開発,制作に携わった者\nの一人であるBは,類似箇所1ないし3が本件ソースコードの一部であるこ\nとや,販売用ソフトウェアのソ\ースコードという本件ソースコードの性質や\nその開発等の経緯等から,それが原告が保有する営業秘密であることを認識
できたといえる。
これらを考慮すると,Bが原告ソフトウェアと販売上も競合する被告ソ\フ
トウェアを開発,制作するに当たって類似箇所1ないし3を使用したことは原告から示された営業秘密を,図利加害目的をもって被告フェイスに開示し
たものと認めることが相当である(不競法2条1項7号)。
被告フェイスは,被告ソフトウェアが原告ソ\フトウェアと同種の製品であ
り,字幕データファイル等について互換性を有するという特徴を有するもの
であることや,上記のような機能を有する被告ソ\フトウェアの開発を具体的
に行うBが原告ソフトウェアの開発に携わった者の一人であったことは認\n識していたと認められる。これらのことから,被告フェイスは,被告ソフト\nウェアの具体的な開発を委託したBによる被告ソフトウェアの開発過程等\nにおいて違法行為が行われないよう特に注意を払うべき立場にあった。不競
法2条1項8号にいう重過失とは,取引上要求される注意義務を尽くせば容易に不正開示行為等が判明するにもかかわらずその義務に違反した場合を
いうところ,被告フェイスにおいて,前記の事情に照らせば,前記の注意義
務を尽くせば被告ソフトウェアの開発過程等においてBの不正開示行為が\n介在したことが容易に判明したといえ,被告フェイスは,少なくとも重過失
により,原告の営業秘密である類似箇所1ないし3をBから取得し,それら
を被告ソフトウェアに用いて販売したと認めるのが相当である(不競法2条\n1項8号)。
Aについて,被告ソフトウェアの開発,制作に当たって,具体的な本件ソ\
ースコードを被告フェイスに開示した事実を認めるには足りないし,その他,
Aにおいて,不正競争行為となる事実を認めるに足りる証拠はない。したが
って,Aについて,不正競争行為は認められない。
イ 被告らは,類似箇所1ないし3が被告ソフトウェアのソ\ースコードと一致
ないし類似するに至った原因は,Bが,原告ソフトウェアを開発するに際し\nてライブラリの選択等のために独自に自らのパソコンで作成し,そのパソ\コ
ンに残っていた簡易な評価プログラムやそのプログラムに含まれる変数定
義部分を被告ソフトウェアの開発の際にも参照したことにあり,そのような\n行為は非難されるべきものではないなどと主張する。しかしながら,同事実関係を裏付ける証拠はない。また,前記の評価プロ
グラムは,それが作成,使用されたとしても,その評価の対象となる本件ソ\nースコードの存在を前提として作成,使用されたものと考えられ,変数定義
部分が前記評価プログラムの作成又は使用によってBのパソコンに残って\nいたとしても,それが本件ソースコードの一部である以上,前記に述べたと\nころと同様の理由により,原告から示された営業秘密であるとするのが相当
であり,また,Bにおいて,そのことを認識することができたといえる。こ
れらに照らせば,被告らの主張は,Bにおいて類似箇所1ないし3を被告ソ\nフトウェアの開発の際に使用する行為が不競法2条1項7号にいう不正競
争に該当するなどの前記結論を左右するものではない。
・・・
前記(1)アのとおり,被告ソフトウェアの販売数は,主として業務用として\n利用されるドングル版が●(省略)●
ここで,オンライン版とスクール版の前記個数については同一顧客によっ
て更新された回数が含まれているところ,オンライン版とスクール版につい
ては,価格(更新の価格も含む。)がドングル版に比較して相当安価に設定さ
れていて,同一顧客による同内容のソフトウェアの継続利用とその更新を前\n提としている部分があると認められる。このことに原告ソフトウェアの価格\nから推測されるその利用方法を考慮すると,本件においては,オンライン版
とスクール版については,不競法5条1項にいう「譲渡数量」としては,同
一顧客に対する販売を1個とすることが相当であるというべきである。
したがって,不競法5条1項における被告ソフトウェアの譲渡数量は,ド\nングル版が●(省略)●であると認めるのが相当である。
イ 原告ソフトウェアの単位数量当たりの利益の額\n
前記 ウのとおり,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの価格は,基本編集機能\を搭載したもので28万円である。また,前記 オのとお
り,主として教育用に利用される原告ソフトウェアの価格は,割引を考慮し\nない場合は2万4800円である。
そして,平成21年から平成23年までの間及び平成27年について,減
価償却費や人件費を控除して算出された原告商品の利益率は,最も利益率が
低い期間の利益率においても53.2パーセントを超えること(甲38の2,
甲133)及び弁論の全趣旨から,原告ソフトウェアの限界利益の利益率は,\n少なくとも40パーセントであると認められる。
以上によれば,主として業務用に利用される原告ソフトウェアの前記利益\nの額は11万2000円(28万円×0.4),主として教育用に利用される
原告ソフトウェアの前記利益の額は9920円(2万4800円×0.4)\nであると認められる。
これに対し,原告は,原告ソフトウェアの価格は90万7200円である\nと主張する。しかしながら,前記
廉価版である「SSTG1 Lite」を14万2000円で販売している。
また,90万7200円という金額は高等機能オプションやデータのインポ\nート/エクスポートオプション等の大部分を搭載した場合における金額で
あるところ,前記 のとおり,原告ソフトウェアを利用する顧客の中には\n個人の顧客もかなりの割合で存在しており,そのような個人の顧客が基本編
集機能に加えてそれらのオプションを搭載したものを購入しているか否か\nは証拠上明らかではなく,むしろ,証拠(乙5,42)によれば個人の顧客
の97パーセントは基本編集機能のみを購入していることがうかがわれる。\nしたがって,原告の前記主張は採用できない。
ウ 小括
前記ア及びイによれば,以下の計算式のとおり,主として業務用に利用さ
れるソフトウェアの関係では2654万4000円が原告の損害額と推定\nされ,主として教育用に利用されるソフトウェアの関係では1123万93\n60円が原告の損害額と推定される(合計3778万3360円)。
(計算式)
●(省略)●
エ 推定覆滅事由についての検討
前記3のとおり,被告ソフトウェアに関連し,原告の営業秘密である類似\n箇所1ないし3についてB及び被告フェイスの不正競争行為が認められる。
ここで,類似箇所1ないし3はいずれも変数定義部分等であり,ソフトウェ\nアの動作に不可欠な有用な部分ではあるが,ソフトウェアの画面表\示,イン
ターフェイスや動作といったソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制
御に直接的に関係する部分ではなく,また,類似箇所1ないし3の内容に照
らし,それらが被告ソフトウェアに対して他のソ\フトウェアでは一般的とは
いえない特別の動作をもたらすものであるとは認められない。他方,前記1
とおり,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのソースコードは,類似\n箇所1ないし5以外に類似している箇所があるとは認められず,ソフトウェアの利用者に関係する機能\等の制御に直接的に関係する部分については原
告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの間に共通する部分は存在していない
ともいえる。
これらを考慮すると,被告らの不正競争行為が被告ソフトウェアの利用者\nに関係する機能を同種のソ\フトウェアに関する機能と大きく異なるものに\nしたとは直ちにはいえず,被告ソフトウェアの売上げは,基本的には,被告\nソフトウェアの不正競争行為ではない行為により作成された機能\に基づく
商品としての価値や被告フェイスの営業努力等によって実現されていたと
するのが相当である。
以上によれば,被告ソフトウェアの譲渡数量のうちの相当程度の数量の原\n告ソフトウェアについて,原告が販売することができなかった事情があると\n認めるのが相当であり,以上のほか,本件にあらわれた一切の事情を総合的
に勘案すれば前記ウの推定は95パーセントの限度で覆滅し,被告フェイス
及びBによる不正競争によって原告に生じた損害は,前記ウ記載の損害の5
パーセントであると認めるのが相当である。また,弁護士費用としては,10万円をもって相当と認める。
なお,被告らは,「おこ助」と称する字幕ソフトウェアがシェアを拡大して\nおり,原告ソフトウェアとの競合品が存在していることが推定覆滅事由に該\n当するなど主張するが,前記「おこ助」の販売台数や機能等の詳細は明らか\nでなく,むしろ,証拠(乙38,39)によれば前記「おこ助」は主として
聴覚障がい者向けの字幕制作のためのソフトウェアであることがうかがわ\nれることに照らせば,前記「おこ助」が原告ソフトウェアの競合品であるこ\nとを理由とした被告らの前記主張は認められない。
◆判決本文
前訴はこちらです。
◆平成25(ワ)181
◆平成27(ネ)10102