復元江戸図を江戸東京重ね地図について、著作物性が争われました。裁判所は、一部について著作物性を認め、差止及び60万円の損害賠償を認めました。
Yらが行った作業のうち隣接するグリッド間等の補正(上記(2)ウ(イ)a)について創作的な表現を付加したと認められないことは,本件江戸図につき前述したところと同様である。一方,地名その他の情報及び地番等の記載(同b及びc)については,地図に掲載すべき情報を独自の基準で選択した上で,その配置,文字の色,大きさ等にそれなりの工夫をして地図面上に記載したものであり,著作権の発生根拠となる創作的な表\現行為に当たるということができる。そして,Yらの行為については本件江戸図と同様に職務著作が成立すると認められるから,原告に著作権が発生すると解される。
◆判決本文
2014.10. 9
プログラムの著作物について、本件テンプレートはデータベースの著作物とは認められないと判断されました。
証拠(甲1,2,6,7,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件テンプレートは,販売,購買,在庫,会計及び現金出納の5つの主要プロセスについて,サブプロセスを含めると82の標準的な業務フローが登録されており,各プロセスには関連する勘定科目が定義され,364個の標準的,典型的なリスクがアサーションの定義とともに登録されていて,被告製品を購入したユーザーがこれをサンプルテンプレートとして利用することで必要な情報をデータベースに随時登録し,プロセス記述書,RCM等として引き出すことにより,内部統制に関する情報を容易に利用することが可能となるものであると認められる。しかしながら,本件テンプレートの実体や存在形式は判然としないし,具体的にどのような情報がいかなる体系で構\成されているのかについては,本件全証拠によってもその詳細が判然としないから,仮に本件テンプレートがデータベースに該当するものであるとしても,その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものであるとは認め難い。\nしたがって,本件テンプレートがデータベースの著作物であると認めることはできないから,これを前提とした原告の請求は理由がない。
◆判決本文
2014.09. 9
時計修理の規約について著作物性が認められました。
規約であることから,当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく,その規約の表現に全体として作成者の個性が表\れているような特別な場合には,当該規約全体について,これを創作的な表現と認め,著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。\nこれを本件についてみるに,原告規約文言は,疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点(例えば,腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言4と同7,浸水の場合には有償修理となることを重ねて規定した箇所が見られる原告規約文言5の1の部分と同54,修理に当たっては時計の誤差を日差±15秒以内を基準とするが,±15秒以内にならない場合もあり,その場合も責任を負わないことについて重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言17と同44など)において,原告の個性が表れていると認められ,その限りで特徴的な表\現がされているというべきであるから,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号),すなわち著作物と認めるのが相当というべきである。\nそして,被告規約文言全体についてみると,見出しの項目,各項目に掲げられた表現,記載順序などは,すべて原告規約文言と同一であるか,実質的に同一であると認められる(表\現上異なる点として,原告規約文言の「当社」が被告規約文言では「当店」にすべて置き換えられている点,助詞の使い方の違い,記載順序を一部入れ替えている箇所(別紙4の番号5,38),表現をまとめている箇所(同別紙の番号36),「千年堂オリジナル超音波洗浄」「千年堂オリジナルクリーニング」を「銀座櫻風堂オリジナル超音波洗浄」「銀座櫻風堂オリジナルクリーニング」としている箇所(同別紙の番号50,52)などがあるが,これらは,極めて些細な相違点にすぎず,全体として実質的に同一と解するのが相当である。また,原告規約文言と被告規約文言の相違点が上記のとおりであることは,被告が,原告規約文言に依拠して,被告規約文言を作成したことを強く推認させる事情というべきである。)。\nしたがって,被告は,被告規約文言を作成したことにより,原告規約文言を複製したものというべきである。
◆判決本文
2014.09. 3
既製服などをコーディネートした衣服及びアクセサリーの選択及び組み合わせ方は、著作物性があるかについて、無しとした1審が維持されました。
もっとも,本件ファッションショーにおいて用いられた衣服やアクセサリーは,主として,大量生産されるファストファッションのブランドのものであり(甲1ないし13,丙1,弁論の全趣旨),これらは,その性質上,実用に供される目的で製作されたものであることが明らかである。そして,控訴人らも,本件ファッションショーにつき,シティとリゾートのパーティースタイル(都会的な女性のドレスアップコーディネートと,リゾートラグジュアリーパーティースタイル)をコンセプトとしたものであるなどと主張しており,本件ファッションショーが上記の各場面における実用を想定したファッションに関するショーであることがうかがえることに照らすと,上記の化粧,髪型,衣服及びアクセサリーを組み合わせたものである前記イ記載の・・は,美的創作物に該当するとしても,芸術作品等と同様の展示等を目的としたものではなく,あくまで,実用に供されることを目的としたものであると認められる。そして,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)が美術の著作物に該当するかどうかについては,著作権法上,美術工芸品が美術の著作物に含まれることは明らかである(著作権法2条2項)ものの,美術工芸品等の鑑賞を目的とするもの以外の応用美術に関しては,著作権法上,明文の規定が存在せず,著作物として保護されるか否かが著作権法の文言上明らかではない。この点は専ら解釈に委ねられるものと解されるところ,応用美術に関するこれまでの多数の下級審裁判例の存在とタイプフェイスに関する最高裁の判例(決・民集54巻7号2481頁)によれば,まず,上記著作権法2条2項は,単なる例示規定であると解すべきであり,そして,一品制作の美術工芸品と量産される美術工芸品との間に客観的に見た場合の差異は存しないのであるから,著作権法2条1項1号の定義規定からすれば,量産される美術工芸品であっても,全体が美的鑑賞目的のために制作されるものであれば,美術の著作物として保護されると解すべきである。また,著作権法2条1項1号の上記定義規定からすれば,実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構\成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては,上記2条1項1号に含まれることが明らかな「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることができるのであるから,当該部分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきであると解すべきである。他方,実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構\成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては,上記2条1項1号に含まれる「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることはできないのであるから,これは同号における著作物として保護されないと解すべきである。\n
◆判決本文
◆原審はこちら。東京地裁平成24年(ワ)第16694号
かなり前の事件ですが、あげておきます。動物のぬいぐるみと小物入れを組み合わせた「プチホルダー」という名称のシリーズ商品について、不競法2条1項3号の商品形態模倣であるとは認められましたが、善意かつ無重過失として損害賠償は否定されました。著作物かについても争われましたが著作物性なしと判断されました。
前記認定に係る事実によれば,被告における商品の仕入れは,商品の仕入れを担当する部門に所属するバイヤーが,仕入先が行う多数の企画提案の中から,特定の商品の企画提案を採用し,その販売数量や価格等を決定して行うというものであり,また,被告商品の仕入れを担当する部門が1年間に取り扱う商品数だけでも約12万点に及び,仕入先が被告に対して行う企画提案の数も極めて多数に及ぶものと推測されることからすると,被告は,被告商品の仕入れを行うに当たり,被告商品の企画や生産の過程に関与することはなく,被告商品の選定やその販売数量及び価格等の決定のみを行っていたものと認められる。また,上記の膨大な数量の商品すべてについて,その開発過程を確認するとともに,形態が実質的に同一である同種商品がないかどうかを調査することは,著しく困難であるということができる。一方,原告商品は,これまでの販売金額が合計19万0487円,販売数量も合計330個にとどまり,その宣伝,広告も,原告ベストエバージャパンのウェブページや商品カタログに写真が掲載されている程度であって,一般に広く認知された商品とは認められないことからすると,被告は,被告商品を平成化成から購入するに当たり,取引上要求される通常の注意を払ったとしても,原告商品の存在を知り,被告商品が原告商品の形態を模倣した事実を認識することはできなかったものというべきである。以上によれば,被告は,被告商品の購入時にそれが原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らなかったことにつき重大な過失はなかったものと認められる。
・・・
これらの規定は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により著作物として保護されるのは,純粋美術の領域に属するものや美術工芸品であり,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されているものは,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を備えている場合に限り,著作権法による保護の対象になるという趣旨であると解するのが相当である。原告商品は,小物入れにプードルのぬいぐるみを組み合わせたもので,小物入れの機能\を備えた実用品であることは明らかである。そして,原告が主張する,ペットとしてのかわいらしさや癒し等の点は,プードルのぬいぐるみ自体から当然に生じる感情というべきであり,原告商品において表現されているプードルの顔の表\情や手足の格好等の点に,純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美術性を認めることは困難である。また,東京ギフトショーにおいて審査員特別賞を受賞した事実が,原告商品の美術性を基礎付けるに足るものでないことは明らかである。したがって,原告商品は,著作権法によって保護される著作物に当たらない。
◆判決本文
デザインチェアーについて著作権による保護、および不競法の周知営業表示による保護、いずれも否定されました。
原告製品は工業的に大量に生産され,幼児用の椅子として実用に供されるものであるから(弁論の全趣旨),そのデザインはいわゆる応用美術の範囲に属するものである。そうすると,原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能\を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である。本件についてこれをみると,原告製品は,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,幼児の成長に合わせて,部材G(座面)及び部材F(足置き台)の固定位置を,左右一対の部材Aの内側に床面と平行に形成された溝で調整することができるように設計された椅子であって,その形態を特徴付ける部材A及び部材Bの形状等の構成(なお,原告製品の形態的特徴については後記2参照)も,このような実用的な機能\を離れて見た場合に,美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えているとは認め難い。したがって,そのデザインは著作権法の保護を受ける著作物に当たらないと解される。また,応用美術に関し,ベルヌ条約2条7項,7条4項は,著作物としての保護の条件等を同盟国の法令の定めに委ねているから,著作権法の解釈上,上記の解釈以上の保護が同条約により与えられるものではない。よって,原告らの著作権又はその独占的利用権の侵害に基づく請求は理由がない。
2 争点(2)(不競法2条1項1号の不正競争行為該当性)について
(1) 争点(2)ア(周知性のある商品等表示該当性)について
ア 不競法2条1項1号は,商品等表示として商品の形態を例示していないところ,それは,商品の形態は,一次的には商品の機能\・効用の発揮や美観の向上等の見地から選択されるものであって,商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないことによるものと解される。そうすると,商品の形態であっても,それが他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有している場合には,二次的に商品の出所を表\示する機能を有することもあり,それが,長期間継続的かつ独占的に使用されたり,短期間であっても強力に宣伝広告されたりした結果,出所識別機能\を獲得した場合には,周知性のある商品等表示に当たるものと解される。イ この見地から,まず,原告製品が他の同種製品と識別し得る顕著な形態的特徴を有するか否かについて検討する。
・・・
これに対し,原告製品は,部材Aが部材B前方の斜めに切断された端面でのみ結合されており,座面から部材Aに伝えられる力が,上記端面のみにかかり,視覚的に不安定さを感じさせる構成となっている。それだけに,原告製品の形態は,必要最小限の部材以外の部材は使用しないという,シンプル,スタイリッシュかつシャープな印象を与えるものである。このように,原告製品の第1の形態的特徴が視覚的にシンプルな印象を与えることは,別紙4「原告製品についての宣伝広告等」の「原告製品の特徴に関する記載内容」欄のとおり,原告製品を紹介する記事においても多く言及されているところであり,原告製品の重要な形態的特徴ということができる。一方,証拠(乙12,13,15)及び弁論の全趣旨によれば,座面を4本の脚で支えるのではなく,左右一対の略L字状ないしそれに近い形状をした側面の部材をもって座面を支え,その上方に背もたれを設けた椅子が市販等されていたことが認められる。ただし,これらの椅子は,原告製品ほどシンプルな印象を与えるものではなく,また,側面の部材に床面と平行な溝を形成したものでもない。そうすると,第1の形態的特徴及び第2の形態的特徴のいずれか一方ないしそれに近い形態的特徴を備えた椅子は他に存在するものの,これら双方を兼ね備えたものが原告製品以外に存在すると認めることはできない。
(ウ) 以上によれば,原告製品は,第1の形態的特徴と第2の形態的特徴とを組み合せた点において,従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有しているから,原告製品の形態が需要者の間に広く認識されているものであれば(なお,被告は周知性について争うものの,具体的な反論はしていない。),その形態は不競法2条1項1号にいう周知性のある商品等表示に当たり,同号所定の不正競争行為の成立を認める余地があるので,以下,被告製品の形態が原告製品の形態に類似するか否かについて検討する。\n
◆問題のデザインチェアーです
◆判決本文
指令の表現の組合せ,表\現順序等について,具体的にどのような表現上の創作性を有しているのか、を主張立証しなかったため、プログラムの著作物について、法上の著作物ではないと判断されました。原告は代理人無しの本人訴訟です。
著作権法上保護される「著作物」というためには,思想又は感情を創作的に表現したものであることを要する(著作権法2条1項1号)ところ,プログラムは,「電子計算機を機能\させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法(同法10条3項)に制約を受けながら,コンピュータに対する指令をどのように表\現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表\現順序とするかなどについて,保護されるべき作成者の個性(創作性)が表れることになる。以上によれば,プログラムに創作性があるというためには,指令の表\現自体,その指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,プログラム作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性が表れていることを要するものと解される。(2) 原告は,原告各プログラムについて,BSS−PACKシステムを構成する各部分の働きをコントロールしてシステム全体を稼動させる特別なプログラムであって,定型性のない原告の創作プログラムであり,極めて画期的なものであると主張するが,原告の主張からは,指令の表\現自体,指令の表現の組合せ,表\現順序等について,具体的にどのような表現上の創作性が表\れているのかが明らかではないし,本件全証拠によっても,原告各プログラムに表現上の創作性があると認めることはできない。(3) したがって,原告各プログラムが「著作物」に当たるということはできない。
◆判決本文
2014.02. 6
1審同様、ワインの図柄について著作物性が否定されました。
控訴人は,本件図柄が被控訴人からの依頼で作成したものであることを否定するととともに(乙5・2頁),広告看板用の図柄であることを否定するが(甲228),本件図柄は芸術作品としてではなく,あくまでも広告業におけるマーケティングの一環として作成されたものであるし(乙5・1,2頁),芸術作品として展示や販売に供されたというように,広告看板以外の目的に使用されたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件図柄は,あくまでも広告看板用のものであり,実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,これが純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である。このような観点から見ると,本件図柄のグラスの形状には,通常のワイングラスと比べて足の長さが短いといった特徴も認められるものの,それ以外にグラスとしての個性的な表現は見出せない。また,ワイナリーの広告としてワイングラス自体が用いられること自体は珍しいものではない上に,図柄が看板の大部分を占めている点も,ワイナリーの広告としてありふれた表\現にすぎない。そして,本件図柄を全体的に観察すると,上記ワイングラスの大きさや形状に加えて,被控訴人の商号及びワイナリーや工場の見学の勧誘文言が目立つような文字の配置と配色がなされていることが特徴的であるが,これも,一般的な道路看板に用いられているようなありふれた青系統の色と補色に近い黄色ないし白色のコントラストがなされているにとどまる。そうすると,本件図柄には色彩選択の点や文字のアーチ状の配置など控訴人なりの感性に基づく一定の工夫が看取されるとはいえ,見る者にとっては宣伝広告の領域を超えるものではなく,純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを肯定することは困難である。控訴人が著作物性の根拠として強調する点は,宣伝広告の効果を向上させるための工夫とも共通するものであって,必ずしも芸術性を高めるものではない。また,控訴人が主張するように,現代における芸術分野の区分の流動化が認められるとしても,本件図柄はあくまでも広告看板用に作成されたものであって,応用美術の範囲に属することに変わりはないというべきであるから,上記で判示した著作物性を認める判断基準が変わるわけではなく,本件図柄の著作物性を否定した上記判断を左右するものではない。さらに,控訴人主張のとおり,ペンチという道具を単純化してその一部を平面的にデフォルメして構図化したデザイン(甲221)や四角いキャンバスを二つの三角形に分けてそれぞれ単色で色づけしたデザイン(甲222)のように,一見ありふれた表\現方法が用いられているものが芸術作品として取り扱われている例があるとしても,これらは,いずれも美術作品として一点限りで制作されるのであって,広告のために複数が作成される商業的作品とは相違する上,作成時期も本件図柄と違っていずれも昭和40年代の作品で美術史的な位置付けも異なり,あくまでも純粋に審美性を追求する見地からシンプルな配色やデザインがあえて使用されたとも評価できる。そうすると,遠方から確認しやすく,一般消費者である通行人や通行車両の注意を惹き,広告対象物への興味をわき上がらせる形態が一次的に要求される広告看板用の本件図柄とは,その配色や構図の目的や意味合いは自ずと異なり,著作物性の前提となる作成者の創作性の反映や見る者に対する審美的要素への働きかけの有無や程度も当然に異なってくるというべきである。したがって,上記のような美術作品の存在は,本件図柄につき純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを否定した上記判断を左右するものではない。よって,本件図柄には著作物性は認められないというべきであり,その帰属について判断する必要もない。\n
◆判決本文
◆関連事件はこちらです。平成25年(ネ)第10057号