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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作物

平成26(ワ)22400  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年11月30日  東京地方裁判所

 英単語の語呂合わせについて、著作物性なしと判断されました。問題となった表現は、beard「ビヤーッ、どっとはえる( )」。というものです。
 このことからすると,確かに,原告書籍に接する読者は,原告語呂合わせ中の括 弧付きの空欄部分に,同語呂合わせの下部に記載されている当該英単語の日本語訳 を適宜読み込んで認識するものといえ,当該括弧付きの空欄部分は,当該英単語の 日本語訳を読み込むことが予定されていることは明らかである。\nしかしながら,上記のとおり,原告は,「原告語呂合わせ」として主張する具体 的表現を別紙語呂合わせ対照表\の「原告書籍」欄各記載の英単語の語呂合わせ,す なわち,英単語の語呂合わせ内に括弧付きの空欄部分を含む表現として特定するに\nとどまり(上記画像の赤枠部分参照),例えば括弧付きの空欄部分を含む語呂合わ せと当該英単語の日本語訳との組み合わせがまとまりのある著作物であるなどとの 主張はしていない(当然,被告において,原告が捨象した部分も含めて具体的表現\nを対比すべきとの反論は行われていない。)のであるから(知財高裁平成24年(ネ) 第10027号同年8月8日判決・判時2165号42頁参照),被告語呂合わせ と対照して共通部分を認定すべき原告語呂合わせの具体的表現は,括弧付きの空欄\n部分を含むものというほかなく,当該括弧付きの空欄部分に,対象となった英単語 の日本語訳を読み込んだものを具体的表現とすべきではない。
イ なお,原告語呂合わせと被告語呂合わせとは,フォント,コンマ,色,強調 点の有無,読み仮名の有無の点で相違する部分があるが,これらの点は,上記に認 定した原告書籍と被告書籍の具体的体裁の下では,共通部分の認定に直ちに影響す るものとは認め難いので,ひとまず,これらの点を捨象して,原告語呂合わせと被 告語呂合わせの共通部分を認定することとする。 (3) 個別の語呂合わせについての検討
[1] 原告語呂合わせ1及び被告語呂合わせ1について
原告語呂合わせ1と被告語呂合わせ1とは,「びあー」様の記述に続けて「,どっと」と記述する点において共通している。 しかしながら,上記共通部分はごく短い上,共に「beard」という英単語とよく似た発音を有する語句を主要な構成要素とするものであるが,特定の英単語を語呂合わせにしようとすること自体はアイデアであって著作権法上の保護を受け得ないところ,同アイデアを表\現する上では,当該英単語とよく似た発音を有し,かつ,当該英単語の日本語訳と意味が通じる日本語の語句を選択した上,この語句と,当該英単語の日本語訳とをつなげることが不可欠な要素となり,これらの要素は,特定の英単語を語呂合わせにしようというアイデアを表現する上で不可欠な表\現上の制約であるというべきである。そして,「beard」の発音をカタカナ読みして「ビアード」とし,これと日本語訳(あごひげ)とを「どっと」というありふれた語句を付加してつなげることは,誰が行っても必然的に同一の表現になるものではないとしても,上記表\現上の制約により相当程度限定された選択肢の中でされた表現の域を出るものではなく,かかる意味においてありふれた表\現と言わざるを得ないから,思想又は感情を創作的に表現したものと認めることは困難である。\nしたがって,原告語呂合わせ1と被告語呂合わせ1とは,表現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから,被告語呂合わせ1は,原告語呂合わせ1を複製又は翻案したものには当たらない。\n
・・・
なお,本件では,被告書籍を執筆したBが原告語呂合わせに依拠して被告語呂合わせを作成したことは,優に認められるところ(甲1ないし5,弁論の全趣旨),Bにおいて,著作権等の侵害を否定しつつも,被告から同人に支払われる印税の半分を原告及びアクティブ・ブレイン協会に支払う旨の申し出をし,合意書の案まで作成していたという経緯が存在する(甲6,7,弁論の全趣旨)。しかるに,被告は,被告書籍の発行に先立って,被告書籍が原告書籍と類似しているとして,訴訟など何らかの措置をとる可能\性があることを示唆する手紙を原告から受領した後(乙11,14),単に被告書籍の発行を中止しなかったにとどまらず,Bが原告との間で合意書を取り交わした場合には,Bに法的手段をとることを辞さない構えであること等を通知したのであって(甲8,乙13,14),原告がかような被告の対応を心外に感じ,法的手続をとるに至ったことにも無理からぬところがあると思われるが,著作権法に基づく原告の請求を認めることが困難であることは,上述したとおりである。\n 515/085515

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平成27(ネ)10049  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年11月10日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審と同様に、知財高裁は本件のキャッチフレーズについては創作性なしと判断しました。
 控訴人は,創作性の問題の本質は長さの点になく,創作者の何らかの個性 が現れていれば足りるし,短い表現であっても,選択の幅が狭いとはいえない以上,\n控訴人キャッチフレーズ2について,著作物性が肯定されるべきである,控訴人キ ャッチフレーズ2は,五七調の利用や人物を主語としない表現という意味で,需要\n者に強く印象を与えるものであり,従業員が試行錯誤して完成させた,他の英会話 教材の宣伝文句にはない,独自のものである旨主張する。 しかしながら,許容される表現の長さによって,個性の表\れと評価できる部分の 分量は異なるし,選択できる表現の幅もまた異なることは自明である。特に,広告\nにおけるキャッチフレーズのように,商品や業務等を的確に宣伝することが大前提 となる上,紙面,画面の制約等から簡潔な表現が求められ,必然的に字数制限を伴\nう場合は,そのような大前提や制限がない場合と比較すると,一般的に,個性の表\nれと評価できる部分の分量は少なくなるし,その表現の幅は小さなものとならざる\nを得ない。さらに,その具体的な字数制限が,控訴人キャッチフレーズ2のように, 20字前後であれば,その表現の幅はかなり小さなものとなる。そして,アイデア\nや事実を保護する必要性がないことからすると,他の表現の選択肢が残されている\nからといって,常に創作性が肯定されるべきではない。すなわち,キャッチフレー ズのような宣伝広告文言の著作物性の判断においては,個性の有無を問題にすると しても,他の表現の選択肢がそれほど多くなく,個性が表\れる余地が小さい場合に は,創作性が否定される場合があるというべきである。 本件において,控訴人商品は,リスニングを中心にすえた英会話教材中,集中し て聞き入るという方法ではなく,聞き流す方法を採用した教材であり,控訴人キャ ッチフレーズ2は,控訴人商品を英会話教材として利用した場合に,自然に流暢に 英語を話すことができるようになるという効果があることを謳ったものであるが, その使用方法や効果自体は,事実であるし,消費者に印象を与えるための五七調風 の語調の利用や,商品を主語とした表現の採用自体は,アイデアにすぎない。また,\n劇的に学習効果が現れる印象を与えるための「ある日突然」という語句の組合せの 利用や,ダイナミックな印象を与えるための「飛び出した」という語句の利用に関 しても,上記アイデアを表現する上で一定の副詞や動詞を使用することは不可欠で\nあるから,他の表現の選択肢はそれほど多くないといわざるを得ない。現に,同様\nのアイデアを表現する上で,控訴人自身が過去に採用したキャッチフレーズにおい\nて,「・・・英語が口から飛び出す!」,「ある日突然,・・・(英語が話せてびっくり した!)」,「ある日突然,・・・(自然と英語が口をついて出てくる!)」,「ある日突 然,英語が口から飛び出して」,「・・・突然,英語が口から飛び出す」(いずれも甲 5)という控訴人キャッチフレーズ2と共通する部分が存在する。また,キャッチ フレーズではないが,控訴人キャッチフレーズ2の公表後に発表\された英会話の上 達方法に関するウェブサイトにおいて,無意識に自然と流暢に英語を話せるように なるという劇的な効果を説明するために,「ある日突然に,・・・口から飛び出る」 (乙15),「ある日突然,・・・英語のフレーズが口から飛び出してきます。」(乙1 7),「ある日突然「するっと英語が話せる」ようになった」(乙18)といった語句 が使用され,控訴人キャッチフレーズ2と同じ副詞や動詞が選択されているのであ って,これらは,控訴人商品と同様の学習効果を表現する上で,他の表\現の選択肢 が限られていることをうかがわせるものである。このような意味において,控訴人 キャッチフレーズ2における語句の選択は,ありふれたものということができる。 したがって,控訴人キャッチフレーズ2に著作物性が認められないとした原判決 の判断に,誤りはないというべきである。

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平成25(ワ)1074  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年9月24日  大阪地方裁判所

 ピクトグラムについて著作物性が認められました。ただし、一部変更したものは複製・翻案ではないと判断されました。認められたのは修正費用の22万円です。
 本件ピクトグラムは,実在する施設をグラフィックデザインの技法で描き,これを,四隅を丸めた四角で囲い,下部に施設名を記載したものである。本件ピクトグラムは,これが掲載された観光案内図等を見る者に視覚的に対象施設を認識させることを目的に制作され,実際にも相当数の観光案内図等に記載されて実用に供されているものであるから,いわゆる応用美術の範囲に属するものであるといえる。 応用美術の著作物性については,種々の見解があるが,実用性を兼ねた美的創作物においても,「美術工芸品」は著作物に含むと定められており(著作権法2条2項),印刷用書体についても一定の場合には著作物性が肯定されていること(最高裁判所平成12年9月7日判決・民集54巻7号2481頁参照)からすれば,それが実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えている場合には,美術の著作物として保護の対象となると解するのが相当である。
イ 本件ピクトグラムについてこれをみると(侵害が問題となっている別紙1の19個に限る。),ピクトグラムというものが,指し示す対象の形状を使用して,その概念を理解させる記号(サインシンボル)である(甲15)以上,その実用的目的から,客観的に存在する対象施設の外観に依拠した図柄となることは必然であり,その意味で,創作性の幅は限定されるものである。しかし,それぞれの施設の特徴を拾い上げどこを強調するのか,そのためにもどの角度からみた施設を描くのか,また,どの程度,どのように簡略化して描くのか,どこにどのような色を配するか等の美的表現において,実用的機能\を離れた創作性の幅は十分に認められる。このような図柄としての美的表\現において制作者の思想,個性が表現された結果,それ自体が実用的機能\を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている場合には,その著作物性を肯定し得るものといえる。 この観点からすると,それぞれの本件ピクトグラムは,以下のとおり,その美的表現において,制作者であるP1の個性が表\現されており,その結果,実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているといえるから,それぞれの本件ピクトグラムは著作物であると認められる(弁論の全趣旨)
・・・・
天保山運河の形状については,別紙4案内図では,港区は八幡屋3丁目と海岸通り3丁目を結ぶ浮島橋の取付部(八幡屋側)の凸部,及び福崎3丁目と海岸通り4丁目を結ぶ新福崎橋が表記されているが,本件地図デザインにおいては,いずれの表\記もなく,すっきりした直線となっている点で異なっている。
エ 判断
以上の事実関係を前提に別紙4案内図が本件地図デザインの複製あるいは翻案かについて検討する。
別紙4案内図は,上記イ(ア)及び(ウ)のとおり,本件地図デザインと,咲州の北側の形状,第二寝屋川から南方向に記載された二本の川の形状において共通し,この点は,被告大阪市が別紙4案内図を作成する際に参考したとする公社図面及び大阪市全図や昭和62年の全体案内図と異なっている。しかし,上記の二本の川の形状についても,一部については上記地図と似ているほか,同イ(イ)及び(エ)のとおり,別紙4案内図と 本件地図デザインとは,淀川や木津川の川筋は似ているものの,これは他の公社地図及び大阪市全図においてもほぼ同様であり,地形的に存在する川筋を客観的に記載したためにすぎず,これを形状において共通すると評価することはできない。むしろ,その余の点については,両者は異なっている。さらに,別紙4案内図は,前記ウの点で,本件地図デザインとは異なっており,かえって公社地図あるいは大阪市全図と似通っている。 このように,原告が主張する共通点のうち,別紙4案内図が本件地図デザインの特徴と共通する部分は咲州及びごく一部の川の形状についてのみであるところ,他に多数の点で相違していること,本件地図デザインが全体的に直線的な線ですっきりと描かれているのに対し,別紙4案内図がある程度地理的な曲線を簡略にせず描いていることからすれば,本件地図デザインの表現において認められるP1の個性が,別紙4案内図においてこれを感得することはできないと言わざるを得ない。\nそうすると,仮に,原告が指摘するように,ジェネシスが別紙4案内図を作成するにあたり,本件地図デザインの一部を参考にした事実があったとしても,別紙4案内図が,本件地図デザインの複製又は翻案ということはできないから,原告の本件地図デザインの著作権及び著作権侵害に基づく請求は理由がない。

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平成26(ワ)26770  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年7月16日  東京地方裁判所

 資格試験の予備校が発行しているテキストについて、著作権侵害か否かが争われました。東京地裁は、複製や翻案ではないと判断しました。
 原告表現1は,原告書籍1に掲載された平成8年一級建築士本試験の製図問題(設計課題「景勝地に建つ研修所」)中の図面であり,原告書籍1には次の1)ないし3)の点を除いて上記問題がそのまま掲載されている(甲1,18の3,乙1)。 原告は,原告表現1と上記問題の図面とは,1)湖を表す部分,2)等高線の描き方,3)方角表示が異なっており,これらの点については原告が独自の表\現をしたものであるから,原告表現1には創作性が認められると主張する。\nそこで判断するに,1)の湖を表す部分が,上記問題の図面ではまだら状の模様であったのを,一部を切り欠いた横線とし,切り欠き部分が斜め方向に連なるような模様としている点,2)の等高線の描き方が,線の曲がり方が同図面より緩やかになっている点,3)の方角表示が同図面より細い矢印を用いている点で原告表\現1は同図面と異なっているが(別紙侵害部分対照表1参照),これらのうち水面を横線で表\示することはありふれた表現方法であると解される。また,等高線の曲がり方の相違は僅かなものであるし(同上),方角表\示を矢印で表現することは,矢印の太さにかかわらずありふれたことであり,その表\現に作成者の個性が表れているとみることは困難である。これに加え,原告書籍1は過去の本試験問題を掲載したものであり,事柄の性質上,図面を含めて問題を忠実に再現することが求められることを考慮すると,上記の各相違点を総合しても,原告表\現1につき著作権法上保護すべき創作性を認めることはできない。したがって,被告表現1が原告表\現1を機械的に複写したものであるとしても,原告の著作権を侵害することはないと解すべきである。

◆判決本文

◆表現対比資料1

◆表現対比資料2

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平成26(ネ)10130  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年5月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 マンションの設計図が著作権侵害かが争われました。知財高裁は、著作物性無しとした原審を維持しました。
 控訴人図面は,本件建物の設計図面であるから,著作権法10条1項 に例示される著作物中の「地図又は学術的な性質を有する図面,図表,模型その\n他の図形の著作物」(著作権法10条1項6号)にいう「学術的な性質を有する 図面」に該当するものと解されるところ,建築物の設計図は,設計士としての専 門的知識に基づき,依頼者からの様々な要望,及び,立地その他の環境的条件と 法的規制等の条件を総合的に勘案して決定される設計事項をベースとして作成さ れるものであり,その創作性は,作図上の表現方法やその具体的な表\現内容に作 成者の個性が発揮されている場合に認められると解すべきである。もっとも,そ の作図上の表現方法や建築物の具体的な表\現内容が,実用的,機能的で,ありふ\nれたものであったり,選択の余地がほとんどないような場合には,創作的な表現\nとはいえないというべきである。 (2) これを本件についてみると,まず,作図上の表現方法については,一般\nに建築設計図面は,建物の建築を施工する工務店等が設計者の意図したとおり施 工できるように建物の具体的な構造を通常の製図法によって表\現したものであっ て,建築に関する基本的な知識を有する施工担当者であれば誰でも理解できる共 通のルールに従って表現されているのが通常であり,作図上の表\現方法の選択の 幅はほとんどないといわざるを得ない。そして,控訴人図面をみても,その表現方\n法自体は,そのような通常の基本設計図の表記法に従って作成された平面的な図\n面であるから,表現方法における個性の発揮があるとは認められず,この点に創作\n性があるとはいえない。 もっとも,上記住民の希望に沿った建物の全体形状,寸法及び敷地における建 物配置並びに建物内部の住戸配置,既存杭を前提とした場合の合理的な位置の選 択の幅は狭いとはいえ,各部屋や通路等の具体的な形状や組合せ等も含めた具体 的な設計については,その限定的な範囲で設計者による個性が発揮される余地は 残されているといえるから,控訴人の一級建築士としての専門的知識及び技術に 基づいてこれらが具体的に表現された控訴人図面全体については,これに作成者\nの個性が発揮されていると解することができ,創作性が認められる。ただし,以 上に説示したところからすれば,本件においては設計者による選択の幅が限定さ れている状況下において作成者の個性が発揮されているだけであるから,その創 作性は,その具体的に表現された図面について極めて限定的な範囲で認められる\nにすぎず,その著作物性を肯定するとしても,そのデッドコピーのような場合に 限って,これを保護し得るものであると解される。
・・・
以上のとおり,控訴人図面と被控訴人図面とを比較すると,建物の全体 形状に所以する各階全体の構造や,Aと基本的に同様の配置とすることに所以す\nる内部の各部屋の概略的な配置は類似するものの,各部屋や通路等の具体的な形 状及び組合せは異なる点が多くあり,もともと控訴人図面の各部屋や通路の具体 的な形状及び組合せも,通常のマンションにおいてみられるありふれた形状や組 合せと大きく相違するものではないことを考慮すれば,控訴人図面及び被控訴人 図面が実質的に同一であるということはできない。そうすると,控訴人図面と被 控訴人図面とが,その基本となる設計与条件において共通する点があるとしても, 具体的に表現された図面としては異なるものであるといわざるを得ず,被控訴人\n図面が控訴人図面の複製権又は翻案権を侵害しているとは認められない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成25年(ワ)2728

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平成26(ワ)7527  著作権確認等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年3月27日  東京地方裁判所

 別の文献を要約した部分について、著作物性有りと認定されました。「被告Bは,被告Aを指導教授として研究を行っていた」とあるので、学生とその指導教官および学校法人が訴えられたんですね。著作権を学会に譲渡するという学会規定も問題を複雑にしています。
 別紙著作物対照表のとおり,被告表\現1と原告表現1のうちそれぞれ「の基本原則として」以下の部分の記述は,接続詞の「次に」が「さらに」となっている点で異なる以外は,誤字(「地域姓」)を含めて,全く同一の文章といえるものであるから,被告表\現1が原告表現1に依拠して,その記述を複製したものであることは明らかである。この点に関して被告らは,原告表\現1は丁1文献を要約して引用したものにすぎず,創作性がないと主張する。しかし,著作権法2条1項1号所定の「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表\れたものであれば足りるというべきであるところ,証拠(略)によれば,原告表現1は,9頁にわたる丁1文献を,「再送信同意の基本原則」,「具体的な技術要件」,「再送信同意の手続き」の3部に分けて簡潔に要約したものであり,各部において丁1文献の該当項の冒頭部分を中心に抜き出してはいるものの,必ずしも冒頭部分をそのまま抜き出したものでないことが認められるから,そこには選択の範囲,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表\現等の点において原告なりの工夫がされていると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるのであり,表\現上の創作性がないということはできない。そして,被告表現1は,原告表\現1との共通部分において,単に素材となる事実が同一であるというだけでなく,具体的表現を含めた記述のデッドコピーというべきものであるから,原告表\現1の複製に当たると認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成26(ネ)10063  著作権侵害行為差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成27年4月14日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 応用美術について著作物でないとした地裁の判断に対して、知財高裁は「著作物である」と認めました。ただ、創作性のある部分が類似していないとして、著作権侵害ではないと判断されました。
 d 以上によれば,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は,1)「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,「部材Aの内側」に形成された「溝 に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」て いる点,2)「部材A」が,「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて 直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において, 作成者である控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されており,「創作的」な\n表現というべきである。\nしたがって,控訴人製品は,前記の点において著作物性が認められ,「美術の著作 物」に該当する。
(ウ)a 被控訴人は,応用美術の著作物性が肯定されるためには,著作権 法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能を\n離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えてい ることを要する旨主張する。
(a) しかしながら,前述したとおり,応用美術には様々なものがあり, 表現態様も多様であるから,明文の規定なく,応用美術に一律に適用すべきものと\nして,「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定することは,相当とは いえない。 また,特に,実用品自体が応用美術である場合,当該表現物につき,実用的な機\n能に係る部分とそれ以外の部分とを分けることは,相当に困難を伴うことが多いも\nのと解されるところ,上記両部分を区別できないものについては,常に著作物性を 認めないと考えることは,実用品自体が応用美術であるものの大半について著作物 性を否定することにつながる可能性があり,相当とはいえない。\n加えて,「美的」という概念は,多分に主観的な評価に係るものであり,何をも って「美」ととらえるかについては個人差も大きく,客観的観察をしてもなお一定 の共通した認識を形成することが困難な場合が多いから,判断基準になじみにくい ものといえる。
(b)被控訴人は,前記主張の根拠として,1)著作権法及び意匠法の重 複適用は相当ではないこと,2)応用美術とされる商品に著作権法を適用することに ついては,それによって,当該商品の分野の生産的側面及び利用的側面において弊 害を招く可能性を考慮して判断すべきであり,この点に鑑みると,純粋美術が,何\nらの制約を受けることなく美を表現するために制作されるのに対し,応用美術は,\n実用目的又は産業上の利用目的という制約の下で制作されることから,著作権法上 保護されることによって当該応用美術の利用,流通に係る支障が生じることを甘受 してもなお,著作権法を適用する必要性が高いものに限り,著作物性を認めるべき である旨を述べる。
i  確かに,応用美術に関しては,現行著作権法の制定過程におい ても,意匠法との関係が重要な論点になり,両法の重複適用による弊害のおそれが 指摘されるなどし,特に,美術工芸品以外の応用美術を著作権法により保護するこ とについては反対意見もあり,著作権法と意匠法との調整,すみ分けの必要性を前 提とした議論が進められていたものと推認できる(甲90,甲91,甲93,甲9 4)。 しかしながら,現行著作権法の成立に際し,衆議院及び参議院の各文教委員会附 帯決議において,それぞれ「三 今後の新しい課題の検討にあたっては,時代の進 展に伴う変化に即応して,(中略)応用美術の保護等についても積極的に検討を加 えるべきである。」,「三 (中略)応用美術の保護問題,(中略)について,早 急に検討を加え速やかに制度の改善を図ること。」と記載され(甲92),応用美 術の保護の問題は,今後検討すべき課題の1つに掲げられていたことに鑑みると, 上記成立当時,応用美術に関する著作権法及び意匠法の適用に関する問題も,以後 の検討にゆだねられたものと推認できる。 そして,著作権法と意匠法とは,趣旨,目的を異にするものであり(著作権法1 条,意匠法1条),いずれか一方のみが排他的又は優先的に適用され,他方の適用 を不可能又は劣後とするという関係は,明文上認められず,そのように解し得る合\n理的根拠も見出し難い。 加えて,著作権が,その創作時に発生して,何らの手続等を要しないのに対し(著 作権法51条1項),意匠権は,設定の登録により発生し(意匠法20条1項), 権利の取得にはより困難を伴うものではあるが,反面,意匠権は,他人が当該意匠 に依拠することなく独自に同一又は類似の意匠を実施した場合であっても,その権 利侵害を追及し得るという点において,著作権よりも強い保護を与えられていると みることができる。これらの点に鑑みると,一定範囲の物品に限定して両法の重複 適用を認めることによって,意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが一律 に失われるといった弊害が生じることも,考え難い。 以上によれば,応用美術につき,意匠法によって保護され得ることを根拠として, 著作物としての認定を格別厳格にすべき合理的理由は,見出し難いというべきであ る。 かえって,応用美術につき,著作物としての認定を格別厳格にすれば,他の表現\n物であれば個性の発揮という観点から著作物性を肯定し得るものにつき,著作権法 によって保護されないという事態を招くおそれもあり得るものと考えられる。
ii また,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目 的とするものであるから,当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能\nを実現する必要があるので,その表現については,同機能\を発揮し得る範囲内のも のでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が課されるこ\nとから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は, 通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課 されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保\n護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。 以上に鑑みると,応用美術につき,他の表現物と同様に,表\現に作成者の何らか の個性が発揮されていれば,創作性があるものとして著作物性を認めても,一般社 会における利用,流通に関し,実用目的又は産業上の利用目的の実現を妨げるほど の制約が生じる事態を招くことまでは,考え難い。
・・・・
ア 前述したとおり,控訴人製品は,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態 的特徴につき,1)「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,「部材Aの内側」 に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ 込んで固定し」ている点並びに2)「部材A」が,「部材B」前方の斜めに切断された 端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を 成している点において著作物性が認められる。 このことから,控訴人オプスヴィック社の著作権及び控訴人ストッケ社の独占的 利用権の侵害の有無を判断するに当たっては,控訴人製品において著作物性が認め られる前記の点につき,控訴人製品と被控訴人製品との類否を検討すべきである。 イ(ア) 前記のとおり,控訴人製品は,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形 態的特徴につき,1)「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,2)「部材Aの内 側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「は め込んで固定し」ている点に著作物性が認められるところ,被控訴人製品は,いず れも4本脚であるから,上記1の点に関して,控訴人製品と相違することは明らか といえる。 他方,被控訴人製品は,4本ある脚部のうち前方の2本,すなわち,控訴人製品 における「左右一対の部材A」に相当する部材の「内側に床面と平行な溝が複数形 成され,その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)をはめ込んで固定」 しており,上記2)の点に関しては,控訴人製品と共通している。また,被控訴人製 品3,4及び6は,「部材A」と「部材B」との結合態様において,控訴人製品との 類似性が認められる。 しかしながら,脚部の本数に係る前記相違は,椅子の基本的構造に関わる大きな\n相違といえ,その余の点に係る共通点を凌駕するものというべきである。 以上によれば,被控訴人製品は,控訴人製品の著作物性が認められる部分と類似 しているとはいえない。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25年(ワ)第8040号

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平成26(ワ)21237  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年3月20日  東京地方裁判所

 17文字程度のキャッチフレーズが著作物でないと判断されました。
 著作物といえるためには,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要である(著作権法2条1項柱書き)。「創作的に表\現したもの」というためには,当該作品が,厳密な意味で,独創性の発揮されたものであることまでは求められないが,作成者の何らかの個性が表現されたものであることが必要である。文章表\現による作品において,ごく短かく,又は表現に制約があって,他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡でありふれたものである場合には,作成者の個性が現れていないものとして,創作的に表\現したものということはできない。
イ 原告キャッチフレーズ1は,「音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/英語がどんどん好きになる」というものであり,17文字の第1文と12文字の第2文からなるものであるが,いずれもありふれた言葉の組合せであり,それぞれの文章を単独で見ても,2文の組合せとしてみても,平凡かつありふれた表現というほかなく,作成者の思想・感情を創作的に表\現したものとは認められない。
ウ 原告キャッチフレーズ2は,「ある日突然,英語が口から飛び出した!」というもの,原告キャッチフレーズ3は,「ある日突然,英語が口から飛び出した」というものであるが,17文字(原告キャッチフレーズ3)あるいはそれに感嘆符を加えた18文字(原告キャッチフレーズ2)のごく短い文章であり,表現としても平凡かつありふれた表\現というべきであって,作成者の思想・感情を創作的に表現したものとは認められない。\n(2) 以上によれば,原告キャッチフレーズには著作物性が認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の著作権に基づく請求は認められない。

◆判決本文

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平成24(ワ)33981  不正競争  民事訴訟 平成27年2月27日  東京地方裁判所

 長嶋氏関連の取材メモやインタビューに基づく原稿について、著作権侵害は認めましたが、営業秘密については否定されました。
 ここで,「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表\れたものであれば足りるというべきであるが,文章自体がごく短く又は表現の選択の幅に制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,作者の個性が表\れたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。\n他方,インタビューを素材としこれを文章としたものであっても,取り上げる素材の選択,配列や具体的な用語の選択,言い回しその他の表現方法に幅があり,かつその選択された具体的表\現が平凡かつありふれた表現ではなく,そこに作者の個性が表\れていたり,作成者の評価,批評等の思想,感情が表現されていれば,創作性のある表\現として著作物に該当するということができる。 以上の観点から検討するに,本件送信原稿1ないし6(甲46の1ないし6)は,Dの付した別紙第一目録記載1ないし6の表題に内容が要約されているとおり,これらはいずれも長嶋氏の生い立ちからプロ野球選手として活躍し,選手としての引退後も読売ジャイアンツの監督として活動した時期について,本件送信原稿8(甲46の8)は「長嶋21世紀の巨人」との表\題に示されるとおり,将来にわたる読売ジャイアンツの展望等について,それぞれインタビューを受けた長嶋氏の返答を素材とし,これを一連の文章としたものである。また,本件送信原稿7(甲46の7)には「長嶋王さん語る」との表題が付されているが,読売ジャイアンツの同僚選手であった王貞治氏が長嶋氏について語っている部分,監督としての両氏についてのほか,王貞治氏自身について天覧試合での出来事やホームラン一般に関してインタ\nビューを受けた際の王貞治氏の返答を素材とし,これを一連の文章としたものである。これらは,前記1(2)で一部認定した公表済みの同旨の文章と対比しても,また文章自体からしても,インタビューに対する応答をそのまま筆記したものではなく,用語の選択,表\現や,文章としてのまとめ方等にそれなりの創意工夫があるものと認められるから,著作物性が認められるというべきである。 また,本件送信原稿12ないし14及び同16(甲46の12なしい14及び同16)については,長嶋氏がメジャーリーグのボンズ選手,柔道家の井上康生氏との対談や,長嶋氏が五輪についてインタビューを受けた内容,長嶋氏が折りにふれ取材記者等に語った内容を文章に表現したものであり,これらについても同様に,前記1(3)で一部認定した公表済みの同旨の文章と対比しても,また文章自体からしても,インタビューに対する応答をそのまま筆記したものではなく,用語の選択,表\現や,文章としてのまとめ方等にそれなりの創意工夫があるものと認められるから,これらについても著作物性が認められるというべきである。 以上によれば,本件送信原稿1ないし8,同12ないし14及び同16については,いずれも著作物性が認められる。
・・・・
不競法2条6項にいう「公然と知られていない」とは,当該情報が刊行物に記載されていない等,保有者の管理下以外では一般に入手することができない状態にあることをいうものと解される。 これを本件についてみると,前記1(2)で認定したとおり,原告は,本件営業秘密とされる内容と同一であるとするDのメモにつき,特段の秘密保持に関する契約等も締結することなく,日本経済新聞社に「私の履歴書」として連載することを予定して提供している。そして,原告が本件営業秘密であると主張する内容の一部につき,これとほぼ同旨の内容が日本経済新聞の「私の履歴書」に連載され,これは「野球は人生そのものだ」として単行本化もされているほか,前記1(3)で認定したとおり,東京読売新聞を含む全国紙の報道により公知となっている内容も存するものである。 そして,原告は,長嶋氏関連原稿は,いずれも原告の営業秘密に該当するものとして記事編集機に保存されたものであるとするところ,前記1(2),(3)で認定したとおり,記事編集機に保存された内容には既に公知となったものも多数含まれていることからすると,記事編集機に保存された内容の全てが非公知であるとは認められないこととなる。 これらを踏まえれば,本件営業秘密のうちの川上氏関連原稿に係る部分に ついても,平成25年10月31日にその一部が新聞記事として公表されるまでの分について非公知であるとの立証がないことに帰するほか,川上氏関連原稿につき,川上氏に対する取材を全く行っていないDにおいて,なぜ本件送信原稿15(甲46の15)の10行の文章を付加することができたのかについても合理的な説明がされていないことからしても,川上氏関連原稿の非公知性については原告による立証がされたものとは認め難い。\n以上の検討によれば,本件営業秘密が不競法2条6項所定の秘密管理性及び有用性を有するか否かはともかく,少なくとも非公知であるとの立証はないというべきである。

◆判決本文

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平成25(ワ)8146  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成27年1月29日  東京地方裁判所

 イラストについて著作物性が認められました。どんなイラストなのか興味ありますがでてないのでわからないですね。
 本件目録記載の本件諸イラストは,いずれも,オリジナルのキャラクターを使用して,日常生活の様々な状況等を,年齢や性別等が分かるように書き分けて表現したものであるから,創作性があり,著作物であると認められる。\n被告は,物体を擬人化するというアイデアの範疇を超えないとの主張をするが,本件諸イラストには上記のような工夫が凝らされており,本件諸イラストに用いられているのと類似のキャラクターが存在するという証拠もないから,被告の主張を採用することはできない。

◆判決本文

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平成25(ワ)9673  書籍出版差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成26年12月19日  東京地方裁判所

 歴史教科書の記述が翻案であるとは認定されませんでした。
 したがって,例えば,ある歴史教科書の一単元において選択された複数の事項の組合せが,他の歴史教科書の同じ単元において選択された事項の組合せと異なる場合であっても,当該歴史教科書で取り上げられた個々の事項が,いずれも他の歴史教科書にも記載されているような一般的な歴史上の事実又は歴史認識にすぎないときは,通常,それらの事項の組合せは,歴史教科書に記載され得る一般的な事項の中から,著者が適宜選択をした結果であるといえ,そこに著者独自の創意工夫が表れているということはできないから,その組合せの相違をもって歴史教科書の個性であるということはできないと解される。\nまた,ある歴史教科書に,他の歴史教科書には記載のない事項が取り上げられて記載されている場合でも,その事項が歴史文献等に記載されている一般的な歴史上の事実又は歴史認識にすぎないときは,それを当該歴史教科書の中の関連する単元で取り上げ,一般的に歴史教科書に記載される歴史的事項に関連して,その説明のために,又はそれを敷衍するものとして,付加して記述することは,歴史学習のための教科書としては通常のことであるから,当該歴史教科書にそのような他の歴史教科書に記載のない事項があるというだけでは,そこに歴史教科書としての個性が表れていると解することはできないというべきである。
エ 原告は「表現の順序(論理構\成)」の創作性を主張するところ,事項の選択において取り上げられた複数の事柄をどのような順序で配列して記載するかという点には,著者の創意や工夫が発揮されることがあるから,一般論としては,そこに何らかの表現上の創作性を認める余地はあるということができる。\nもっとも,前記(2)のような歴史教科書の性質上,一つの単元で取り上げることが可能な事項の数は限られており,しかも,それらの事項は,系統的に配列されて,生徒が理解しやすいように記述されることが求められて\n いるといえるから,特に歴史教科書においては,ある単元において取り上げられた複数の歴史的事実をどのような順序で配列するかについての選択の幅は限られており,そこに著者の個性が表れていると認められる場合は少ないものといわざるを得ない。\nこの点,例えば,歴史的事実を単に時系列に沿って配列するような場合は,そこに著者の創意や工夫があるということはできない。また,複数の関連する事項を,通常の歴史教科書において考慮されるような,歴史的な因果関係,相互の関連性,歴史学習における重要性などの観点に従って,生徒の読みやすさや理解のしやすさに配慮しつつ,論理的な文章として,適宜,配列して表現したにすぎないような場合も,それは歴史教科書としてありふれた配列というべきであるから,仮にその配列がたまたま他の歴史教科書の配列と異なっているとしても,そこに著者の個性が表\れているということはできない。それゆえ,そのような場合は,その配列の差異をもって,著作権法によって保護される著作物としての創作性を基礎付けることはできないというべきである。
オ 表現の視点に当たるアイデア,制作意図・編集方針又は歴史観などは,前記イのとおり,それ自体は表\現ではなく,著作権法によって保護されるものではないのであるから,仮にその表現の視点が独自のものといい得るとしても,その表\現の視点に基づいて記述された具体的な表現内容が,単に著者のアイデア,制作意図・編集方針又は歴史観などをそのまま文章にして記述したにすぎない場合や,その表\現の視点に基づけば,誰が書いてもそのような文章としてしか表現できず,あるいは,その文章表\現が平凡なものにとどまるときは,その文章は,表現の視点という著作権法で保護されない点において独自性があるというにすぎず,その具体的な表\現内容において,著作権で保護されるべき表現上の創作性を有するものということはできない。\n また,歴史教科書において取り上げられ,その表現の素材とされている歴史上の事実又は歴史認識も,前記ウのとおり,それ自体は著作権法で保護されるべき表\現には当たらないのであるから,上記と同様に,仮に取り上げられた歴史上の事実あるいは歴史認識がそれ自体として独自性を有するものであるとしても,そのような事実あるいは認識を,ありふれた構文や一般的な言い回しで,生徒が理解しやすいような文章として記述したというだけでは,その具体的な表\現内容において創作性があるというということはできない。 したがって,二つの歴史教科書が,その具体的な記述の内容において共通する部分があるとしても,その共通部分が上記のように表現上の創作性が認められないものである場合には,それを翻案の根拠とすることはできないというべきである。\n

◆判決本文

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