2018.10.30
平成28(ワ)6539 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成30年10月18日 大阪地方裁判所
ゴミ箱について、意匠権侵害、著作権侵害、不競法違反、不法行為などを主張しました。裁判所は、意匠権侵害については認め(被告自認)、差止・損害賠償を認めました。ただ、その他に請求は棄却しました。
被告ごみ箱の意匠は本件意匠に類似する(争いがない)から,被告ごみ箱を販売
する行為については,本件意匠権を侵害する行為である。
・・・
被告ごみ箱の形態が原告ごみ箱のそれと実質的に同一であり(争いがない),こ
の形態同一性は依拠の事実も推認させるところ,この推認を覆す事情は認められな
いから,被告ごみ箱は原告ごみ箱の形態を模倣した商品であると認められる。した
がって,被告が平成27年1月31日までに被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ
箱販売1)については,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たる。
他方,被告が同年2月1日以降に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2及
び3)については,原告ごみ箱が最初に販売された日から3年が経過しており,同
号所定の不正競争行為に当たらない(同法19条1項5号イ)。
上記(1)イのとおり,被告が平成27年2月1日から同年6月14日まで
の間に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2)については,不正競争行為
に当たらないし,本件意匠権侵害について過失があったとは認められないところ,
原告は,被告ごみ箱販売2については公正な自由競争秩序を著しく害するものであ
るから,一般不法行為を構成すると主張する。\nしかし,現行法上,創作されたデザインの利用に関しては,著作権法,
意匠法及び不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律がその排他的な使用権等の
及ぶ範囲,限界を明確にしていることに鑑みると,創作されたデザインの利用行為
は,各法律が規律の対象とする創作物の利用による利益とは異なる法的に保護され
た利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではない\nと解するのが相当である。
したがって,原告の主張が,被告が原告ごみ箱の商品形態を模倣した被告ごみ箱
を販売したことが不法行為を構成するという趣旨であれば,不正競争防止法で保護\nされた利益と同様の保護利益が侵害された旨を主張しているにすぎないから,採用
することはできない。
ウ また,これと異なり,原告の主張が,被告が被告ごみ箱を販売すること
によって原告の原告ごみ箱に係る営業が妨害され,その営業上の利益が侵害された
という趣旨であれば,上記の知的財産権関係の各法律が規律の対象とする創作物の
利用による利益とは異なる法的に保護された利益を主張するものであるということ
ができる。しかし,我が国では憲法上営業の自由が保障され,各人が自由競争原理
の下で営業活動を行うことが保障されていることからすると,他人の営業上の行為
によって自己の営業上の利益が害されたことをもって,直ちに不法行為上違法と評
価するのは相当ではなく,他人の行為が,殊更に相手方に損害を与えることのみを
目的としてなされた場合のように,自由競争の範囲を逸脱し,営業の自由を濫用し
たものといえるような特段の事情が認められる場合に限り,違法性を有するとして
不法行為の成立が認められると解するのが相当である。
そして,本件では,原告の主張を前提としても上記特段の事情があるとは認めら
れない。
・・・
被告は,上記(1)アのとおり,平成27年10月8日頃,原告から,被告ごみ箱を
輸入,販売する行為が本件意匠権を侵害するとの指摘を受けたことから,同月22
日付けで,被告に対し,被告ごみ箱を販売する行為は本件意匠権を侵害する可能性\nがあると判断して直ちに販売を中止した旨回答した(甲5)だけでなく,現に販売
を中止し,本件訴訟においても被告ごみ箱を販売する行為が本件意匠権を侵害する
ことになることを争っていない(弁論の全趣旨)。したがって,被告がさらに被告
ごみ箱を輸入するおそれは認められず,また,被告は中国の業者から被告ごみ箱を
輸入して販売しているにすぎない(乙19)から,被告ごみ箱を自ら製造するおそ
れも認められない。
しかし,被告は,被告ごみ箱を平成26年7月に合計3024個輸入し(乙1
6),それを平成27年10月22日の販売中止までに合計774個販売した(乙
10)と認められるから,多数の在庫を保有していると推認されるところ,被告が
それら在庫を廃棄したことをうかがわせる証拠はない。そうすると,被告は,現在
も被告ごみ箱の在庫を保有していると考えざるを得ず,そうである以上,被告が被
告ごみ箱を販売するおそれを否定することはできない。したがって,被告ごみ箱の
差止請求については,その販売及び広告宣伝の差止めを求める限度で理由がある。
・・・
a 被告の過失ある本件意匠権侵害行為の期間は,被告ごみ箱販売1に
係る平成27年6月15日から同年10月21日までと認められるところ,被告ご
み箱の単位数量当たりの仕入原価が205.543円であることは当事者間に争い
がなく,この期間の被告による被告ごみ箱の合計販売数量は前記のとおり666個
と認められる。そして,被告がこの期間に被告ごみ箱を666個販売して得た売上
高が16万0380円であること(乙11)に照らせば,被告ごみ箱の販売の単位
数量当たりの売上高は240.811円(小数点第4位以下四捨五入)である。した
がって,被告が被告ごみ箱を666個販売して得た利益は,2万3488円(1円
未満四捨五入)であると認められる。
(240.811−205.543)×666≒23,488
そうすると,2万3488円が意匠権者である原告の受けた損害の額と推定され
るところ,上記推定を覆滅する事由に関する主張,立証はないから,原告の損害額
は,2万3488円であると認められる。
b これに対し,原告は,被告の平成27年7月及び同年10月におけ
るインテリア計画メガマックス千葉NT店に対する販売については,販売額が仕入
原価を下回っており,独占禁止法第2条第9項に基づく不公正な取引方法第6項に
規定する不当廉売に当たるから,被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算
定するに当たっては,上記販売における売上額に基づくべきではなく,平成26年
8月における販売の売上額に基づくべきである(これに従えば,単位数量当たりの
売上高は540円となる。)と主張する。
しかし,販売額が仕入原価を下回るからといって直ちに独占禁止法が禁止する不
当廉売に当たるわけではない上,意匠法39条2項は,侵害者が実際に得た利益の
額をもって意匠権者の損害の額と推定する規定であるから,侵害者が原価以下で販
売した場合でも,それが実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視し得るといった事情
のない限り,実際の販売額に基づいて侵害者の利益を算定すべきものである(意匠
権者がそれにとどまらない損害額の賠償を求めるためには,同条1項による損害額
を主張立証する道が用意されている。)。そして,上記で原告が指摘するインテリ
ア計画メガマックス千葉NT店に対する販売のうち平成27年7月のものについて
は,被告が原告から通知書(甲4)を受領する前の時期であるから,通常の取引行
為によるものと見るべきであり,その販売単価と同年10月の販売単価は同額であ
る(甲10)から,それらの販売を実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視すること
はできない。
また,原告が被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算定するに当たって
基礎とすべきであるという平成26年10月における被告の販売(被告ごみ箱販売
1における販売)については,上記(1)イのとおり,被告が不法行為(本件意匠権侵
害)に基づく損害賠償責任を負うものではない。
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2018.10. 4
平成27(ワ)2570 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年9月20日 大阪地方裁判所
フラダンスの振り付けについて、一部については創作性が認められました。
これらのフラダンスの特徴からすると,特定の楽曲の振付けにおいて,
各歌詞に対応する箇所で,当該歌詞から想定されるハンドモーションがとられてい
るにすぎない場合には,既定のハンドモーションを歌詞に合わせて当てはめたにす
ぎないから,その箇所の振付けを作者の個性の表れと認めることはできない。\nまた,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであることからする\nと,ある歌詞部分の振付けについて,既定のハンドモーションどおりの動作がとら
れていない場合や,決まったハンドモーションがない場合であっても,同じ楽曲又
は他の楽曲での同様の歌詞部分について他の振付けでとられている動作と同じもの
である場合には,同様の歌詞の表現として同様の振付けがされた例が他にあるので\nあるから,当該歌詞の表現として同様の動作をとることについて,作者の個性が表\
れていると認めることはできない。
さらに,ある歌詞部分の振付けが,既定のハンドモーションや他の類例と差異が
あるものであっても,それらとの差異が動作の細かな部分や目立たない部分での差
異にすぎない場合には,観衆から見た踊りの印象への影響が小さい上,他の振付け
との境界も明確でないから,そのような差異をもって作者の個性の表れと認めるこ\nとは相当でない。また,既定のハンドモーションや他の類例との差異が,例えば動
作を行うのが片手か両手かとか,左右いずれの手で行うかなど,ありふれた変更に
すぎない場合にも,それを作者の個性の表れと認めることはできない。\nもっとも,一つの歌詞に対応するハンドモーションや類例の動作が複数存する場
合には,その中から特定の動作を選択して振付けを作ることになり,歌詞部分ごと
にそのような選択が累積した結果,踊り全体のハンドモーションの組合せが,他の
類例に見られないものとなる場合もあり得る。そして,フラダンスの作者は,前後
のつながりや身体動作のメリハリ,流麗さ等の舞踊的効果を考慮して,各動作の組
合せを工夫すると考えられる。しかし,その場合であっても,それらのハンドモー
ションが既存の限られたものと同一であるか又は有意な差異がなく,その意味でそ
れらの限られた中から選択されたにすぎないと評価し得る場合には,その選択の組
合せを作者の個性の表れと認めることはできないし,配列についても,歌詞の順に\nよるのであるから,同様に作者の個性の表れと認めることはできない。\n
エ 他方,上記で述べたのと異なり,ある歌詞に対応する振付けの動作が,
歌詞から想定される既定のハンドモーションでも,他の類例に見られるものでも,
それらと有意な差異がないものでもない場合には,その動作は,当該歌詞部分の振
付けの動作として,当該振付けに独自のものであるか又は既存の動作に有意なアレ
ンジを加えたものいうことができるから,作者の個性が表れていると認めるのが相\n当である。
もっとも,そのような動作も,フラダンス一般の振付けの動作として,さらには
舞踊一般の振付けの動作として見れば,ありふれたものである場合もあり得る。そ
して,被告は,そのような場合にはその動作はありふれたものであると主張する。
しかし,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであることからする\nと,たとえ動作自体はありふれたものであったとしても,それを当該歌詞の箇所に
振り付けることが他に見られないのであれば,当該歌詞の表現として作者の個性が\n表れていると認めるのが相当であり,このように解しても,特定の楽曲の特定の歌\n詞を離れて動作自体に作者の個性を認めるものではないから,個性の発現と認める
範囲が不当に拡がることはないと考えられる。
オ ところで,フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものである\nことからすると,歌詞に動作を振り付けるに当たっては,歌詞の意味を解釈するこ
とが前提になり,普通は言葉の通常の意味に従って解釈すると思われるが,作者に
よっては,歌詞に言葉の通常の意味を離れた独自の解釈を施した上で振付けの動作
を作ることもあり得る。そして,原告は,その場合には解釈の独自性自体に作者の
個性を認めるべきであると主張する趣旨のように思われる。しかし,著作権法は具
体的な表現の創作性を保護するものであるから,解釈が独自であっても,その結果\nとしての具体的な振付けの動作が上記ウで述べたようなものである場合には,やは
りその振付けの動作を作者の個性の表れと認めることはできない。\n他方,被告は,たとえ歌詞の解釈が独自であり,そのために振付けの動作が他と
異なるものとなっているとしても,当該解釈の下では当該振付けとすることがあり
ふれている場合には,当該振付けを著作権法の保護の対象とすることは結局楽曲の
歌詞の解釈を保護の対象とすることにほかならず許されないと主張する。しかし,
歌詞の解釈が独自であり,そのために振付けの動作が他と異なるものとなっている
場合には,そのような振付けの動作に至る契機が他の作者には存しないのであるか
ら,当該歌詞部分に当該動作を振り付けたことについて,作者の個性が表れている\nと認めるのが相当である。そして,このように解しても,個性の表れと認めるのは\n飽くまで具体的表現である振付けの動作であって,同様の解釈の下に他の動作を振\nり付けることは妨げられないのであるから,解釈自体を独占させることにはならな
い。
これに対し,歌詞の解釈が言葉の通常の意味からは外れるものの,同様の解釈の
下に動作を振り付けている例が他に見られる場合には,そのような解釈の下に動作
を振り付ける契機は他の作者にもあったのであるから,当該解釈の下では当該振付
けとすることがありふれている場合には,当該歌詞部分に当該動作を振り付けたこ
とについて,作者の個性が表れていると認めることはできない。\n
カ 以上のハンドモーションに対し,ステップについては,上記のとおり典
型的なものが存在しており,入門書でも,覚えたら自由に組み合わせて自分のスタ
イルを作ることができるとされているとおり,これによって歌詞を表現するもので\nもないから,曲想や舞踊的効果を考慮して適宜選択して組み合わせるものと考えら
れ,その選択の幅もさして広いものではない。そうすると,ステップについては,
基本的にありふれた選択と組合せにすぎないというべきであり,そこに作者の個性
が表れていると認めることはできない。しかし,ステップが既存のものと顕著に異\nなる新規なものである場合には,ステップ自体の表現に作者の個性が表\れていると
認めるべきである(なお,ステップが何らかの点で既存のものと差異があるという
だけで作者の個性を認めると,僅かに異なるだけで個性が認められるステップが乱
立することになり,フラダンスの上演に支障を生じかねないから,ステップ自体に
作者の個性を認めるためには,既存のものと顕著に異なることを要すると解するの
が相当である。)。また,ハンドモーションにステップを組み合わせることにより,
歌詞の表現を顕著に増幅したり,舞踊的効果を顕著に高めたりしていると認められ\nる場合には,ハンドモーションとステップを一体のものとして,当該振付けの動作
に作者の個性が表れていると認めるのが相当である。\n
キ 以上のようにして,特定の歌詞部分の振付けの動作に作者の個性が表れ\nているとしても,それらの歌詞部分の長さは長くても数秒間程度のものにすぎず,
そのような一瞬の動作のみで舞踊が成立するものではないから,被告が主張すると
おり,特定の歌詞部分の振付けの動作に個別に舞踊の著作物性を認めることはでき
ない。しかし,楽曲の振付けとしてのフラダンスは,そのような作者の個性が表れ\nている部分やそうとは認められない部分が相俟った一連の流れとして成立するもの
であるから,そのようなひとまとまりとしての動作の流れを対象とする場合には,
舞踊として成立するものであり,その中で,作者の個性が表れている部分が一定程\n度にわたる場合には,そのひとまとまりの流れの全体について舞踊の著作物性を認
めるのが相当である。そして,本件では,原告は,楽曲に対する振付けの全体とし
ての著作物性を主張しているから,以上のことを振付け全体を対象として検討すべ
きである。
そしてまた,このような見地からすれば,フラダンスに舞踊の著作物性が認めら
れる場合に,その侵害が認められるためには,侵害対象とされたひとまとまりの上
演内容に,作者の個性が認められる特定の歌詞対応部分の振付けの動作が含まれる
ことが必要なことは当然であるが,それだけでは足りず,作者の個性が表れている\nとはいえない部分も含めて,当該ひとまとまりの上演内容について,当該フラダン
スの一連の流れの動作たる舞踊としての特徴が感得されることを要すると解するの
が相当である。
・・・
本件振付け6では,大きく分けて,1)両手の掌を下に返して右肘を
少し曲げ,そのまま両腕を下ろしながら胸の高さまで持って行き,胸の前で体に沿
うように両腕を交差させて両手の掌を内側に向け,一連の動作は右に270度ター
ンするステップの中で行われる,2)次に,ターンにより左斜め後ろを向いたまま,
両腕を伸ばしきるまで下ろしながら左斜め後ろへ左足右足を交互に2歩ずつ前進す
る,という2つのパートからなる動作をしている。
まず,1)の動作についてみると,原告は,右回りに回転しながら両腕を下ろし胸
の前で交差させることで,暗い夜が続き,暗く寒くなっていることを表していると\n主張する。この点,甲25の他の振付け及び乙12の他の振付けはいずれも,手の
動きについては本件振付け6と同様の動きをしているものの,その際にターンする
ものはない。ターンは通常のステップの一種ではある(乙5のスピンターン)が,
「夜」や「寒い」といった静的な歌詞からターンすることはが通常想定されない上,
両腕を降ろしながらターンすることによって体全体の躍動感を高めていることから,
なお有意な差異があるというべきである。
これに対し,被告は,手の動作が既存の
ハンドモーションであり,足の動作が既存のステップであり,これらを組み合わせ
た動作はありふれたものであると主張するが,上記のとおり採用できない。
次に,2)の動作について見ると,原告は,聴衆と反対(後ろ)に向かって歩いて
いくことで彼が孤独であることを表し,両腕を下ろすことで抱きしめる者がおらず\n一人で寒い夜を過ごしていることを表していると主張する。そして,この動作は,\nここでの歌詞から想定されるものでない上,これと同様の動作を行っている類例は
認められないから,本件振付け6独自のものであると認められる。これに対し,被
告は,このような動作があらゆる舞踊においてありふれた動作であることを指摘す
るが,こうした被告の主張が採用できないことは,上記(1)エのとおりである。
c したがって,ここの歌詞に対応する振付けは,原告の個性が表現さ\nれていると評価できる。
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2018.07.12
平成28(ワ)32742 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年6月19日 東京地方裁判所(47部)
いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ
る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら
制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に
撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光\n線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな\nらざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,
撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写\n真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採
用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外
観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ
の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ
り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい\nった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰\nが撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表\nれないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め
られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」
の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ
とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻\nが花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な
っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の\n経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると\nいえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。
これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり,
旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故
一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲
章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア\nン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2
はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択,
表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表\現には筆者の個性が表れ\nているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ
ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に\nは幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表\れて
いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告
の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再
製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と
は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現\nに修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が\n既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作\n成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に
依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\
現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接\n感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ
る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷
判決・民集55巻4号837頁参照)。
被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品
対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制\n作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同
一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体
として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。\nよって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし
7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害
する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保
持権を侵害する。
これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有
するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり,
制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は
採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額
に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争
うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作
品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認
められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日
に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A
が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含\nめて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は
実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には,
故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの
と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力\nがあると認められる。
これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず,
販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く\nと主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告
作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も
指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を
含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする
ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説
明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる
(甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞
を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用
目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後
記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認
められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か
ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示
に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集
の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に
より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす
る事情があると主張する。
そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい
てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は
一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層
に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ
ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ
とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考
えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については,
原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で
ある。
◆判決本文
問題となった著作物は以下です。
◆別紙1
◆別紙2
◆別紙3
◆別紙4
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2018.07. 6
平成29(ネ)10103等 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成30年6月20日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ラダー図による表記したプログラムについて創作性無しと判断されました。
ア 著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,\n作成者の何らかの個性が表れている必要があり,表\現方法がありふれている場合な
ど,作成者の個性が何ら表れていない場合は,「創作的に表\現したもの」というこ
とはできないと解するのが相当である。
ラダー図は,電機の配線図を模式化したシーケンス図をさらに模式化したもので
あるから,ラダー図は配線図に対応し,配線図が決まれば,ラダー図の内容も決ま
ることとなり(乙ロ1),したがって,その表現方法の制約は大きい。ラダー図に\nおいては,接点等の順番やリレー回路の使用の仕方を変更することにより,理論的
には,同一の内容のものを無数の方法により表現できるが,作成者自身にとってそ\nの内容を把握しやすいものとし,また,作成者以外の者もその内容を容易に把握で
きるようにするには,ラダー図全体を簡潔なものとし,また,接点等の順番やリレ
ー回路の使用方法について一定の規則性を持たせる必要があり,実際のラダー図の
作成においては,ラダー図がいたずらに冗長なものとならないようにし,また,接
点等の順番やリレー回路の使用方法も規則性を持たせているのが通常である(乙ロ
1,3)。
イ 控訴人プログラム1)は,控訴人19年車両の車両制御を行うためのラダ
ー図であるが,共通ブロックの各ブロックは,いずれも,各接点や回路等の記号を
規則に従って使用して,当該命令に係る条件と出力とを簡潔に記載しているもので
あり,また,接点の順番やリレー回路の使用方法も一般的なものであると考えられ
る。
すなわち,例えば,ブロックY09は,リモコンモード,タッチパネルモード及
びメンテナンスモードという三つのモードのモジュールを開始する条件を規定した
ブロックであるところ,同ブロックでは,一つのスイッチに上記三つのモードが対
応し,モードごとの動作を実行するため,上記各モードに応じて二つの接点からな
るAND回路を設け,スイッチに係るa接点と各AND回路をAND回路で接続し
ているが,このような回路の描き方は一般的であると考えられる。また,同ブロッ
クでは,上段にリモコンモード,中段にタッチパネルモード,下段にメンテナンス
モードを記載しているが,控訴人プログラム1)の他のブロック(Y11,Y23,
Y24,Y25,Y26)の記載から明らかなように,控訴人プログラム1)では,
リモコンモード(RM),タッチパネルモード(TP),メンテナンスモード(M
M)の順番で記載されている(なお,これらにリモコンオンリーモード(RO)が
加わる場合は,同モードが一番先に記載される。)から,ブロックY09において
も,それらの順番と同じ順番にしたものであり,また,メンテナンスモードを最後
に配置した点も,同モードがメンテナンス時に使用される特殊なモードであること
を考慮すると,一般的なものであると評価できる。さらに,「これだけ!シーケン
ス制御」との題名の書籍に,「動作条件は一番左側」と記載されている(乙ロ3)
ように,ラダー図においては,通常,動作条件となる接点は左側に記載されるもの
と認められるところ,ブロックY09の上記各段の左側の接点は,各モードを開始
するための接点であり,同接点がONとなることを動作条件とするものであるから,
通常,上記左側の各接点は左側に記載され,これと右側の接点とを入れ替えるとい
うことはしないというべきであり,したがって,上記各段における接点の順番も一
般的なものである。したがって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れてい
るということはできない。
また,ブロックY17は,拡幅待機中であることを規定するブロックであるとこ
ろ,拡幅待機中をONにする条件として,10個のb接点をすべてAND回路で接
続しているが,上記条件を表現する回路として,関係する接点を全てAND回路で\n接続することは一般的なものであると考えられる。また,上記各接点の順番も,リ
モコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネルモード及びメンテナンスモ
ードの順番にし,各モードごとに開の動作条件と閉の動作条件の順番としたもので
あるところ,前記のとおり,上記各モードの順番は,他のブロックの順番と同じに
したものであり,開の動作条件と閉の動作条件の順番も一般的なものである。した
がって,同ブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。
さらに,ブロックY25は,ポップアップフロアを上昇させる動作を実行するた
めのブロックであるが,拡幅フロアの上昇又は下降に関しては,拡幅フロア上昇に
関する接点及び拡幅フロア下降に関する接点がそれぞれ四つずつ存在するという状
況下において,同ブロックでは,拡幅フロア上昇に関する接点をa接点,拡幅フロ
ア下降に関する接点をb接点とした上で,四つのa接点及び四つのb接点をそれぞ
れOR回路とし,これら二つのOR回路をAND回路で接続している。拡幅フロア
の上昇と下降という相反する動作に関する接点が存在する場合において,目的とす
る動作のスイッチが入り,目的に反する動作のスイッチが入っていないときに,目
的とする動作が実行されるために,目的とする動作の接点をa接点,これと反する
動作の接点をb接点としてAND回路で接続し,命令をONとする回路で表現する\nことは,a接点及びb接点の役割に照らすと,ありふれたものといえる。また,同
一の動作に関する接点が複数あり,目的とする動作の接点であるa接点のいずれか
がONとなったときに目的とする動作が実行されるようにするため,それらの接点
をOR回路で表現することもありふれたものといえる。さらに,OR回路で接続さ\nれた四つの段においては,リモコンオンリーモード,リモコンモード,タッチパネ
ルモード及びメンテナンスモードの順番としているが,前記のとおり,この順番は,
他のブロックの順番と同じにしたものである。ブロックY26は,ポップアップフ
ロアを下降させる動作を実行するためのブロックであり,上記のブロックY25で
述べたのと同様のことをいうことができる。加えて,ブロックY25及びブロック
Y26のAND回路で接続された各二つの列においては,上昇又は下降のa接点,
下降又は上昇のb接点の順番としているが,前記のとおり,ラダー図においては動
作条件となる接点は左側に記載されるところ,ブロックY25及びブロックY26
の各1列目は,「拡幅フロア上昇」又は「拡幅フロア下降」の動作条件となる接点
であると認められるから,通常,同ブロックのとおりの順番で接続され,1列目と
2列目を入れ替えるということはしないものということができる。したがって,こ
れらのブロックの表現方法に作成者の個性が表\れているということはできない。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成28(ワ)19080
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2018.06.15
平成30(ネ)10009 損害賠償等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成30年6月7日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
不競法の商品形態模倣、著作権侵害などが争われました。知財高裁は、不競法については特徴部分は異なる形状であり、また、著作物性なしとして、1審の判断を維持しました。
控訴人は,原告商品は,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端か
ら突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐ
に伸びている上,小型かつ軽量である点に特徴があるところ,被告各製品
もこの点において共通する形態及び構成を有していると主張する。\n この点につき検討するに,半田フィーダは,径の小さい半田(直径が1
ミリメートルに満たないものもある)を,半田付けしようとする位置に案
内するために用いられるものであるから,正確に位置決めをしたり,他の
機器との干渉を防いだりするために,供給する半田の出口に当たる出口ノ
ズルを細長い直針状の形態とすることは,半田フィーダとしての機能を確\n保するために不可欠な形態というべきである。このことは,他社の半田フ
ィーダが同様の形態を採用していることからも明らかである(乙11,1
2)。
また,出口ノズルに向けて半田を供給する際には,チューブ等の供給・
支持部材と半田とが接触して,半田が曲がったり,摩擦による抵抗が生じ
たりすることをできるだけ抑制し,安定して半田を供給する必要があると
考えられるところ,そのために,半田フィーダにおいて,半田の供給口に
当たる部材を出口ノズルの反対側の位置に出口ノズルに対してまっすぐに
取り付ける構成を採用することは,ごく自然な着想といえる。このことは,\n同様の構成を有する他社の半田フィーダが存在することによっても裏付け\nられているというべきである(乙12,15〜17)。
さらに,配線チューブがフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びてい
る点についても,ある機器に何らかのチューブが取り付けられている場合
に,取り回し等の観点から複数のチューブをまとめて同方向に取り出すこ
とは,他社の半田フィーダにおいても同様の構成が採用されていることが\n認められるように(乙15〜17),極めて容易に着想し得る一般的な構\n成というべきである。
なお,商品の重量そのものは,不競法2条4項が定める「商品の形態」
に当たるとはいえない。
以上によれば,控訴人が原告商品の特徴的形状であると主張する形態は,
いずれも半田フィーダという商品が通常有する形態にすぎないというべき
である。
・・・
著作権法上の美術の著作物として保護される
ためには,仮にそれが産業用の利用を目的とするものであったとしても,
美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞
の対象となり得るような創作的特性を備えていなければならないというべ
きである。
控訴人が主張するように,原告商品は,ステッピングモータの一部分が
飛び出している点を除き,出口ノズルから配線チューブ等に至るまで,各
構成が概ね直線状にコンパクトにまとめられた形態を有していることが認\nめられる。しかし,原告商品の外観からは,社会通念上,この機器を動作
させるために必要な部材を機能的観点に基づいて組み合わせたもの,すな\nわち技術的思想が表現されたものであるということ以上に,端整とか鋭敏,\n優雅といったような何かしらの審美的要素を見て取ることは困難であると
いわざるを得ず,原告商品が美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性
を備えているということはできない。
◆判決本文
原審はこちら。
◆平成27(ワ)33412
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2018.04.26
平成27(ワ)21897等 著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件 特許権 民事訴訟 平成30年3月28日 東京地方裁判所
データが入れられる前のデータベースシステムは、著作権法で保護されるデータベースではないと判断されました。
原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv
er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ
ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に
創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる
べき旨主張する。
原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事
業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著
作権法2条1項10号の3)とは認められない。
原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉
え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の
主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情
報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって,
辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる
ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。
したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に
当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ
ベースの著作物ということはできない。
◆判決本文
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2018.04. 4
平成29(ワ)672等 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年3月29日 東京地方裁判所
イラストが写真の翻案かがあらそわれました。写真の著作物性は認められましたが、翻案ではないと判断されました。
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),\n陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合して
なる一つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば
創作性が認められ,著作物に当たるというべきである。
(2) これを本件についてみると,本件写真素材は,別紙1のとおりであるとこ
ろ,右手にコーヒーカップを持ち,やや左にうつむきながらコーヒーカップ
を口元付近に保持している男性を被写体とし,被写体に左前面上方から光を
当てつつ焦点を合わせ,背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として
白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調さ
れたカラー写真であり,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表\現において撮影者の個性が表れているものといえる。したがって,本件写真素材は上記の総合的表\現
を全体としてみれば創作性が認められ,著作物に当たる。
(3) これに対し,被告は,本件写真素材は,背景,照明・光量,色合いのいず
れにおいても多くの類例がみられる平凡かつありふれた表現であり,創作性が存在しないため,著作物とは認められないと主張する。しかし,写真の創\n作性は,写真を構成する諸要素を総合して判断されるべきものであるところ,背景,照明・光量,色合い等の各要素において,それぞれ似たような例が存\n在するとしても,そのことは直ちに創作性を否定する理由とはならない。本
件写真素材の総合的表現を全体としてみればそこに創作性が認められることは前記(2)のとおりであるから,被告の主張は採用できない。
原告は,被告が本件写真素材を原告に無断でトレースし,小説同人誌の裏
表紙のイラストに使用して,当該小説同人誌を販売した行為は,原告の本件写真素材に係る著作権(複製権,翻案権及び譲渡権)を侵害していると主張\nする。
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再
製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と
は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に
依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\
現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ
る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷
判決・民集55巻4号837頁参照)。
(3) 本件イラストは,別紙2のとおりのものであり,A5版の小説同人誌の裏
表紙にある3つのイラストスペースのうちの一つにおいて,ある人物が持つ雑誌の裏表\紙として,2.6センチメートル四方のスペースに描かれている白黒のイラストであって,背景は無地の白ないし灰色となっており,薄い白
い線(雑誌を開いた際の歪みによって表紙に生じる反射光を表\現したもの)
が人物の顔面中央部を縦断して加入され,また,文字も加入されているもの
である。
(4) 前記1(2)で説示した本件写真素材の創作性を踏まえれば,本件写真素材
の表現上の本質的特徴は,被写体の配置や構\図,被写体と光線の関係,色彩
の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現に認められる。一方,前記前提事実(3)のとおり,本件イラストは本件写真素材に依拠して作成さ
れているものの,本件イラストと本件写真素材を比較対照すると,両者が共
通するのは,右手にコーヒーカップを持って口元付近に保持している被写体
の男性の,右手及びコーヒーカップを含む頭部から胸部までの輪郭の部分の
みであり,他方,本件イラストと本件写真素材の相違点としては,1)本件イ
ラストはわずか2.6センチメートル四方のスペースに描かれているにすぎ
ないこともあって,本件写真素材における被写体と光線の関係(被写体に左
前面上方から光を当てつつ焦点を合わせるなど)は表現されておらず,かえって,本件写真素材にはない薄い白い線(雑誌を開いた際の歪みによって表\紙に生じる反射光を表現したもの)が人物の顔面中央部を縦断して加入されている,2)本件イラストは白黒のイラストであることから,本件写真素材に
おける色彩の配合は表現されていない,3)本件イラストはその背景が無地の
白ないし灰色となっており,本件写真素材における被写体と背景のコントラ
スト(背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすこ
とで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されているなど)は
表現されていない,4)本件イラストは上記のとおり小さなスペースに描かれ
ていることから,頭髪も全体が黒く塗られ,本件写真素材における被写体の
頭髪の流れやそこへの光の当たり具合は再現されておらず,また,本件イラ
ストには上記の薄い白い線が人物の顔面中央部を縦断して加入されているこ
とから,鼻が完全に隠れ,口もほとんどが隠れており,本件写真素材におけ
る被写体の鼻や口は再現されておらず,さらに,本件イラストでは本件写真
素材における被写体のシャツの柄も異なっていること等が認められる。これ
らの事実を踏まえると,本件イラストは,本件写真素材の総合的表現全体における表\現上の本質的特徴(被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等)を備えているとはいえず,本件イラストは,本件写真
素材の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえない。
(5) したがって,本件イラストは,本件写真素材の複製にも翻案にも当たらず,
被告は本件写真素材に係る著作権を侵害したものとは認められない。なお,
原告は,譲渡権侵害も主張するが,本件イラストが本件写真素材の複製及び
翻案には当たらないため,本件イラストを掲載した小説同人誌を頒布しても
譲渡権の侵害とはならない。
◆判決本文
◆本件写真素材
◆本件イラスト
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2018.04. 4
平成27(ワ)21897等 著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件 特許権 民事訴訟 平成30年3月28日 東京地方裁判所
データが蓄積される前のプログラムについては、データベースの著作物とは認められませんでした。
原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv
er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ
ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に
創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる
べき旨主張する。
原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事
業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著
作権法2条1項10号の3)とは認められない。
原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉
え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の
主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情
報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって,
辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる
ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。
したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に
当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ
ベースの著作物ということはできない。
◆判決本文
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