屋外に恒常的に設置された建物の写真について、著作物性ありと判断され、発信者情報開示が認められました。
前記前提事実,証拠(甲1,6,8,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,
本件写真は,原告が,空気の透明度が高い冬季において,天候が良好な日
の夜間に,約180度の眺望を有する本件展望台から見ることができる夜
景のうち,大阪府内所在のりんくうゲートタワー及びその周辺の建造物の
組合せを被写体として選択し,中でも目を引く建造物であるりんくうゲー
トタワーを構図のほぼ中心に据え,その左右に複数の建造物がそれぞれ配\n置されるようにして,カメラについては,「70−200mm」のレンズを
選択し,レンズ焦点距離を「200.00mm」,シャッター速度を「16.
0秒」,絞り値を「f/9」とするなどの設定をした上で,ストロボ発光な
しで撮影したものと認められる。
そうすると,本件写真は,原告において,撮影時期及び時間帯,撮影時
の天候,撮影場所等の条件を選択し,被写体の組合せ,選択及び配置,構\n図並びに撮影方法を工夫し,シャッターチャンスを捉えて撮影したもので
あり,原告の個性が表現されているものと認められる。\nしたがって,原告が撮影した本件写真及びこれに本件文字を付加して作
成した本件写真画像は,いずれも,原告の思想又は感情を創作的に表現し\nたものということができるから,「著作物」(著作権法2条1項1号)に該
当する。
イ 被告は,本件写真の被写体であるりんくうゲートタワー及びその周辺の
建造物は,屋外に恒常的に設置されているものであるから,これを被写体
として撮影しようとすれば,焦点距離や撮影位置,構図等の表\現の選択の
幅は必然的に限定され,本件写真の構図自体ありふれたものであるから,\n撮影者の個性が現れたものとはいえず,本件写真には創作性がない旨主張
する。
しかしながら,別紙4写真画像目録記載の本件写真画像から明らかなよ
うに,本件展望台からの眺望は広く,撮影することができる建造物は多数
あり,それらから発せられる光も様々であるから,どのような位置から,
どのような構図で撮影するか,どの建物に焦点を合わせるかといった選択\nの幅が限定的であるということはできない。
そして,前記アのとおり,原告は,上記の幅の中から1つの撮影位置,
構図及び焦点距離を選択した上,さらに,撮影時期及び時間帯,撮影時の\n天候等の条件についても選択して,撮影方法を工夫し,シャッターチャン
スを捉えて撮影したものであるから,本件写真には,原告の個性が現れて
いるものと認められる。
◆判決本文
本件コンピュータプログラムは著作物性なしと判断されました。
イ そこで検討すると,前記1(1),(3)イ認定のとおり,本件プログラムは,ED
INETにおける取扱いに変更があったことを踏まえ,ユーザーが作成した会計に
関するエクセルファイル等をX−Smartに取り込み,会計科目を開示科目に組
み替え,編集作業等を経て,宝XBRLの形式に変換することを簡易に行うことな
どを目的として開発されたものであり,相応の分量のソースコードから成るもので\nある。
しかしながら,前記1(2)に照らすと,DI社が原告に本件プログラムの開発を委託した際に提供された本件各資料のうち,少なくとも本件資料4ないし6には,本
件プログラムに要求される機能及びそれを実現する処理,画面の構\成要素等を別紙
3本件プログラム説明書と同様のものとすることが概ね示されていたと認められる。
また,前記1(3)認定のとおり,本件プログラムは,ユーザーからのフィードバッ
クの結果を踏まえ,順次,DI社からの発注を受けて修正及び追加等をしながら開
発されたものであり,その過程で,そのソースコードの一部については,DI社か\nら元となるデータやそのサンプルが提供され,その作成方法を指示されるなどして
作成されたものであること,その他,ソースコード中にNetAdvantageに含まれるフ
ァイル,VisualStudioで自動生成されるファイル,オープンソースからダウンロー\nドしたファイルから作成された部分や,一般的な設定ファイル等である部分も相応
に含まれていることにも照らせば,ソースコードの分量等をもって,本件プログラ\nムに係る表現の選択の幅が広いと直ちにはいえない。\n
(2)原告が創作的表現であると主張している部分についての検討\n
以上を前提として,本件プログラムのうち,原告が創作的表現であると主張して\nいる部分について検討する。
ア ドロップダウンリストの生成に係る部分
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード1には,画面1の「ファイル形式」を\n選択するドロップダウンリストを生成する処理が記述されているところ,原告は,
本件ソースコード1では,ドロップダウンリストを「asp:DropDownList」を利用し
て別の箇所で生成しているが,他の表現1のように,ドロップダウンリストを直接\n生成することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主\n張する。
しかしながら,前記1(3)ウ認定のとおり,本件プログラムの開発はASP.NE
T環境下で行われているところ,証拠(乙227)及び弁論の全趣旨によれば,
「asp:DropDownList」は,ドロップダウンリストを生成するためのツールとしてA
SP.NET環境で用意されているものであり,これを利用する方法は一般的なこ
とであると認められるから,他の表現1があるとしても,「asp:DropDownList」を
利用することに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,本件ソースコード1の具体的な記述も,ASP.NET環境で利用可能\な
宣言構文のとおりのものであると認められる(乙227)のであって,作成者の個\n性が表れていると認めるに足りず,創作的表\現であるとはいえない。
イ サブルーチンに係る部分
原告は,本件ソースコード2ないし4について,サブルーチン化するか否か,サ\nブルーチン化するとしてどのようにサブルーチン化するかについて選択の幅がある
と主張する。
しかしながら,前記第2の2(5)ア認定のとおり,サブルーチンは,高等学校工業
科用の文部科学省検定済教科書である乙232文献にも記載されているような基本
的なプログラミング技術の一つであり,証拠(乙238,240)及び弁論の全趣
旨によれば,プログラム中で繰り返し表れる作業につきサブルーチンに設定するこ\nとで可読性及び保守性を向上させることができ,そのような観点からサブルーチン
を設定することは一般的な手法であると認められるから,本件ソースコード2ない\nし4にサブルーチンが設定されているというだけでは,作成者の個性が表れている\nとはいえない。
また,本件ソースコード3において,更にサブルーチンを設定しないことに何ら\nかの目的,意図があるともいい難いから,サブルーチンを更に分割することができ
るというだけでは,作成者の個性が表れていると認めるに足りないというべきであ\nる。
以上に加えて,原告は,上記の各点以外に,本件ソースコード2ないし4の記述\nに選択の幅があることを具体的に主張立証しておらず,これらを創作的表現である\nと認めるに足りない。
ウ 条件分岐及びループに係る部分
(ア) 本件ソースコード5\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード5には,画面1から画面2に遷移する\n際に呼び出されるサブルーチンのうち,アップロードしたファイルの種類を判別し,
対応する画面を生成する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード\n5では,switch文で条件分岐を行っているが,他の表現5のように,els\ne−ifで条件分岐を行うこともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性
が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(乙223ないし226,232,233)及び弁論の全趣
旨によれば,switch文は,複数の選択肢の中から式の値に合うものを選び,
その処理を行うものであり,else‐ifは,複数の条件のどれに当てはまるか
によって異なる処理を行うものであって,いずれも高等学校工業科用の文部科学省
検定済教科書である乙232文献その他複数の文献(乙223ないし226,23
3)に記載されている条件分岐の基本的な制御文であり,3種類以上の場合に分け
て条件を指定するときに使用されるものであると認められるから,本件ソースコー\nド5のように,アップロードしたファイルの種類によって場合を分けて条件を指定
する必要がある場合に,switch文を使用すること自体は一般的なことである
と認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
(イ) 本件ソースコード6\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード6には,ファイルの何列目からデータ\nを取り込むかを取得し,取り込み開始が20列目を超えているか否かを判別し,超
えている場合にはエラーを発生させる処理が記述されているところ,原告は,本件
ソースコード6では,for文でループを行っているが,他の表\現6のように,w
hile文でループを行うこともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性
が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(乙223ないし226,232,233)及び弁論の全趣
旨によれば,for文は,繰り返す回数を指定して反復処理を行うものであり,w
hile文は,指定した条件を満たす限り反復処理を行うものであって,いずれも,
高等学校工業科用の文部科学省検定済教科書である乙232文献その他複数の文献
(乙223ないし226,233)に記載されているループの基本的な制御文であ
り,for文で記述できるものはwhile文でも記述可能であると認められるか\nら,本件ソースコード6のように,取り込み開始が20列目を超えているか否かを\nループ処理によって判別するに当たり,for文を使用すること自体は一般的なこ
とであると認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
(ウ) 本件ソースコード7\n前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード7には,ファイルの最大列数や項目名\nの開始列を取得する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード7で\nは,全てのデータに対してforeach文でループを行っているが,他の表現7\n(1)のように,あらかじめ決められた条件で抽出されたデータに対してのみループを
行うことも可能であり,他の表\現7(2)のように,for文でループを行うこともで
きるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主張する。\n
しかしながら,証拠(乙223ないし226,233)及び弁論の全趣旨によれ
ば,C#において,foreach文は,複数のデータの集まりの各要素を最初か
ら最後まで1回ずつ呼び出して処理するものであり,for文等と共に複数の文献
(乙223ないし226,233)に記載されているループの基本的な制御文であ
って,for文等で記述された処理を代替し得るものであると認められるから,本
件ソースコード7のように,ファイルの最大列数や項目名の開始列を判別するに当\nたり,foreach文を使用すること自体は一般的なことであると認められ,そ
のことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,他の表現7(1)及び(2)は,ループを行う範囲を限定するものであると認めら
れるが,同等の処理を行うものと認められる本件ソースコード7と比べて記述が長\nく,可読性が低下していると認められるところ,あえてそのような記述をする必要
があると認めるに足る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現であるとは認め
難い。
(エ) 本件ソースコード8\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード8には,金額の単位を選択するために\n画面3に表示されるドロップダウンリストを生成するための判別処理等が記述され\nているところ,原告は,本件ソースコード8では,foreach文によるループ\nの中で,求める条件が正しい場合に次の条件に進むように記述しているが,他の表\n現8のように,求める条件が正しくない場合にループをやり直すように記述するこ
ともできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている旨主張する。\nしかしながら,前記(ウ)のとおり,foreach文は,ループの基本的な制御
文であるから,本件ソースコード8のように,ドロップダウンリストを生成するた\nめの判別処理として,foreach文を使用すること自体は一般的なことである
と認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,証拠(乙232ないし234)及び弁論の全趣旨によれば,他の表現8に\n用いられているcontinue文は,ループの中で使用され,その前のif文が
真になった場合にcontinue以降の処理をスキップして,次のループ処理の
最初に戻るものであると認められるものの,if文を用いた本件ソースコード8と\n比べてソースコードが長く,可読性が低下していると認められ,あえてそのような\n記述をする必要があると認めるに足る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現
であるとは認め難い。
(オ) 本件ソースコード9\n
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード9には,画面2で選択された列の種別\nを判別して対応する処理が記述されているところ,原告は,本件ソースコード9で\nは,else−ifで条件分岐を行っているが,他の表現9(1)のように,swit
ch文で条件分岐を行うこともでき,他の表現9(2)のように,switch文に加
えて,foreach文によるループの対象として,条件分岐の判別に必要な変数
を直接取得することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れてい\nる旨主張する。
しかしながら,前記(ア)のとおり,else−if及びswitch文は,いず
れも条件分岐の基本的な制御文であるから,本件ソースコード9のように,画面2\nで選択された列の種別を判別して対応する処理を行うに当たり,else−ifで
条件分岐を行うこと自体は一般的なことであると認められ,そのことに作成者の個
性が表れているということはできない。\nまた,証拠(乙222)及び弁論の全趣旨によれば,他の表現9(2)は,他の表現\n9(1)と同様のswitch文の中に統合言語クエリ(LINQ)を実行する処理に
係る記述を挿入したものであると認められるものの,ソースコードが長く,可読性\nが低下していると認められ,あえてそのような記述をする必要があると認めるに足
る証拠はないから,これを選択可能な他の表\現であるとは認め難い。
(カ) 小括(本件ソースコード5ないし9)\n
原告は,上記(ア)ないし(オ)の各点以外に,本件ソースコード5ないし9の記述に\n選択の幅があることを具体的に主張立証しておらず,これらを創作的表現であると\n認めるに足りない。
エ 変数への設定に係る部分
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード10には,画面4に表\示される会計科
目のデータの判別及び設定を行う処理が記述されているところ,原告は,本件ソー\nスコード10では,変数に対して判別結果を直接設定し,条件演算子「?」,「:」
を使用しているが,他の表現10のように,if文によって変数に設定する値を変\nえることもできる,実際の表現の方が簡潔に表\現されているが,他の表現10にも,\nデバッグやログの出力をしやすいといった利点があるのであって,選択の幅があり,
ここに原告の個性が表れている旨主張する。\nしかしながら,証拠(甲48,乙236,237)及び弁論の全趣旨によれば,
条件演算子は,条件に基づいて複数の処理を選択する演算子であると認められ,i
f文等の条件分岐の制御文と同様の処理を行い得るものであって,両者は代替され
得るものとして認識されていると認められるから,本件ソースコード10のように,\n会計科目のデータの判別及び設定を行うに当たり,条件演算子を使用すること自体
は一般的なことであると認められ,変数に対して判別結果が直接設定されることが
特殊なことであると認めるに足る証拠もないから,それらに作成者の個性が表れて\nいるということはできない。
また,原告は,上記の点以外に,本件ソースコード10の記述に選択の幅がある\nことを具体的に主張立証していないから,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
オ チェック処理に係る部分
前記1(4)認定のとおり,本件ソースコード11には,組替操作時に画面4でドロ\nップされた行番号の取得及び変換を行う処理が記述されているところ,原告は,本
件ソースコード11では,TryParseメソ\ッドの戻り値でドロップされた行
番号のチェック結果を判別しているが,他の表現11のように,Parseメソ\ッ
ドを用いて,まず行番号の取得を試みて,エラーが発生するかどうかでチェック結
果を判別することもできるから,選択の幅があり,ここに原告の個性が表れている\n旨主張する。
しかしながら,証拠(乙226,227)によれば,TryParseメソッド\n及びParseメソッドは,いずれもC#ライブラリに標準機能\として搭載された,
文字列を数値に変換する手法であるところ,TryParseメソッドは,変換に\n失敗したときに,例外として情報を取得し,それを精査することにより失敗の原因
を究明することができるとされるParseメソッドとは異なり,戻り値として,\n失敗したという情報だけを取得し,ソースコードはParseメソ\ッドより短くな
ると認められ,本件ソースコード11のように,ドロップされた行番号の取得及び\n変換を行うに当たり,TryParseメソッドを用いること自体は一般的なこと\nであると認められ,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,原告は,上記の点以外に,本件ソースコード11の記述に選択の幅がある\nことを具体的に主張立証していないから,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
カ デバッグログを出力するコードに係る部分
(ア) 本件ソースコード12\n
原告は,本件ソースコード12にデバッグログを出力するコードが挿入されてい\nることにプログラム作成者の個性が表れると主張する。\nしかしながら,弁論の全趣旨によれば,プログラムの開発過程において,プログ
ラムの保守及び変更等の必要から,不具合があり得ると考えられるソースコード上\nにデバッグログを出力するコードを挿入することは一般的に行われていることであ
ると認められるから,デバッグログを出力するコードが挿入されているというだけ
で,そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\nまた,本件ソースコード12のデバッグログを出力するコードの記述に作成者の\n個性が表れていることについて原告は具体的に主張立証していないから,これを創\n作的表現であると認めるに足りない。\n
(イ) 本件ソースコード13\n
原告は,デバッグログを出力するコードが挿入されていない本件ソースコード1\n3に対し,他の表現12(1)及び(2)のように,デバッグログを出力するコードを挿入
することも選択し得るとも主張するが,納品されるプログラムにデバッグログを出
力するコードが挿入されていないこと自体は一般的なことであると考えられるから,
そのことに作成者の個性が表れているということはできない。\n
キ コメントに係る部分
原告は,本件ソースコード14等におけるコメントの有無及びその内容にプログ\nラム作成者の個性が表れる旨主張する。\nしかしながら,前記(1)アのとおり,プログラムは,電子計算機を機能させて一の\n結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現し\nたもの(著作権法2条1項10号の2)であるところ,コメントは,コンピュータ
ーの処理の結果に影響するものではなく,コンピューターに対する指令を構成する\nものであるとはいえないから,上記のプログラムに当たらない。
また,原告は,本件ソースコード14のコメントの内容に作成者の個性が表\れて
いることを具体的に主張立証しておらず,これを創作的表現であると認めるに足り\nない。
ク 小括(本件ソースコード)\n
以上のとおり,原告が創作的表現であると主張している本件ソ\ースコードについ
て,作成者の個性が表れているということはできず,著作権法で保護されるべき著\n作物であると認めることはできない。
(3) 原告の主張について
原告は,本件プログラムはプログラムの著作物に当たるとし,その理由として,
1)本件プログラムは,原告が創作した部分に限っても,合計4万0381ステップ
という膨大な量のソースコードから成り,指令の組み合せ方,その順序,関数化の\n方法等には無限に近い選択肢があること,2)本件プログラムにおけるエクセル取込
機能及び簡易組替機能\は,一般的な用途に使用されるものではないから,これらの
機能を実現するためのプログラムがありふれたものであるとはいえないこと,3)原
告は,NetAdvantageやVisualStudio等の開発ツールを用いながらも,ライブラリ群
の中からどのライブラリを用いるべきか,どの順番でライブラリを呼び出させるべ
きか,どのように加工すべきか,どのようにパラメータを設定すべきかなどに工夫
を凝らしており,それらに個性が表れていること,4)本件各資料は,いずれも要求
定義又は外部設計に関するものにすぎず,DI社が要求している機能を実現するた\nめの指令の組合せは記載されていないから,本件プログラムに係る選択の幅を狭め
るものではないことを主張する。
しかしながら,上記1)について,前記(1)アのとおり,プログラムに著作物性があ
るというためには,プログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた
表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創作性が表れていることを要す\nると解されるところ,本件プログラムに表現上の創作性があることについて具体的\nに主張立証されない以上,前記(1)イで認定,説示したとおり,多くのステップ数に
より記述されていることをもって,直ちに表現上の創作性を認めることはできない。\nまた,上記2)について,原告の主張は,本件プログラムの機能の特殊性を指摘す\nるにとどまっているところ,プログラムの機能そのものは著作権法によって保護さ\nれるものではなく,特定の機能を実現するためのプログラムであるというだけで,\n直ちに表現上の創作性を認めることはできない。\nさらに,上記3)について,原告は,ライブラリの使用等にどのような工夫をした
かについて具体的に主張立証しておらず,その点に選択の幅があり,作成者の個性
が表れていると認めるに足りない。\nまた,上記4)について,本件各資料にソースコードが具体的に記述されていない\nとしても,要求されている機能及び処理を実現するための表\現に選択の幅があると
当然にはいえないから,この点を考慮しても,本件プログラムに表現上の創作性を\n認めるに足りないというべきである。
◆判決本文