2024.10.17
令和5(ネ)10111 不正競争行為差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和6年9月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
イス(TRIPP TRAPP)の類似品に対して、商品等表示も認められず、著作権の適用なしと判断された控訴審判決です。知財高裁も同様の判断をしました。\n
そこで検討すると、被告各製品の形態は、別紙「被告各製品の形態」記載
の構成aから構\成fまで(以下、単に「構成 a」などという。)のとおりで
あり、これによると、被告各製品は、本件顕著な特徴を構成している特徴1)
から特徴3)までとの対比において、左右一対の側木の2本脚であり、かつ、
座面板及び足置板が左右一対の側木の間に床面と平行に固定されており(特
徴1))、左右方向から見て、側木が床面から斜めに立ち上がっており、側木
の下端が脚木の前方先端の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面
に接していることによって、側木と脚木が約66度の鋭角による略L字型の
形状を形成している(特徴2))が、側木の内側に溝は形成されておらず、側
木の後方部分に、固定部材と結合してネジ止めするための円形状の穴が多数
形成され、座面板及び足置板を側木の間で支持する支持部材、支持部材を側
木の間において掛け渡された状態で側木に固定する固定部材及びネジ部材を
備え、2本の側木後方に設けられた穴と固定部材を結合した状態でネジ部材
を閉めることで、支持部材と固定部材によって側木を前後から挟持して押圧
し、支持部材を側木に固定しており(構成f)、原告らの商品等表\示の特徴
3)を備えていないものと認められる。
なお、その他の形態上の諸要素を考慮しても、被告各製品は、側木及び脚
木からなる2本脚、背板、座面板及び足置板、横木のほかネジ部材、支持部
材、固定部材等から構成され、脚木は一直線であるが、側木は一直線ではな\nく、側木の上端部分は床面と垂直に折れ曲がっており、2本脚が、正面視で
床面に垂直で相互に平行となるように配置され、側木と脚木の結合部分から
離れた脚木中央部に横木が配置され、中央部に楕円形の穴が形成されている
背板は側木の最上部に配置され、座面板と足置板は楕円形の短辺を切り落と
したような曲線的形状とされ、ネジ部材、支持部材及び固定部材等により側
木に固定されていることから、被告各製品の形態においては、曲線的な要素
とともに、座面板及び足置板の支持部分に複数の部材が利用され、その安定
性が特徴的となっており、その印象も、原告製品における、直線的な形態が
際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象とは異なるものとなっている。
よって、原告製品全体の形態の特徴である本件顕著な特徴について、被告各
製品は、これを備えていないものと認められる。
(3) したがって、被告各製品は、本件顕著な特徴を備えていないから、取引の
実情の下において、取引者、需要者が、両者の外観、称呼、又は観念に基づ
く印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれ
があるものということはできない。よって、原告らの商品等表示と被告各製\n品の形態が類似すると認めることはできない。
・・・
著作権法2条2項は、「美術の著作物」には「美術工芸品」を含むものとする旨規定しており、同項の美術工芸品は実用的な機能と切り離して独立の美的鑑賞の対象とすることができるようなものが想定されていると考えられるのであって、同項の規定は、それが例示規定であると解した場合でも、いわゆる応用美術に著作物性を認める場合の要件について前記のように解する一つの根拠となるというべきである。\n
(2) 以上を踏まえ、本件について検討すると、原告製品については、特徴1)か
ら特徴3)まで及び側木と脚木をそれぞれ一直線とするデザインという本件顕
著な特徴があり、これにより原告製品の直線的な形態が際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象を与えるものとなっていると認められることは、
前記のとおりである。しかし、本件顕著な特徴は、2本脚の間に座面板及び
足置板がある点(特徴1))、側木と脚木とが略L字型の形状を構成する点\n(特徴2))、側木の内側に形成された溝に沿って座面板等をはめ込み固定す
る点(特徴3))からなるものであって、そのいずれにおいても高さの調整が
可能な子供用椅子としての実用的な機能\そのものを実現するために可能な複\n数の選択肢の中から選択された特徴である。また、これらの特徴により全体
として実現されているのも椅子としての機能である。したがって、本件顕著\nな特徴は、原告製品の椅子としての機能から分離することが困難なものであ\nる。すなわち、本件顕著な特徴を備えた原告製品は、椅子の創作的表現とし\nて美感を起こさせるものではあっても、椅子としての実用的な機能を離れて\n独立の美的鑑賞の対象とすることができるような部分を有するということは
できない。また、原告製品は、その製造・販売状況に照らすと、専ら美的鑑
賞目的で制作されたものと認めることもできない。それのみならず、仮に、
原告製品の本件顕著な特徴について、独立の美的鑑賞の対象となり得るよう
な創作性があると考えたとしても、前記のとおり、被告各製品は、本件顕著
な特徴を備えていないから、原告製品の形態が表現する、直線的な形態が際\n立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象とは異なるものとなっているの
であって、被告各製品から原告製品の表現上の本質的な特徴を直接感得する\nことはできない。そうすると、結局、本件において、著作権侵害は成立しないといわざるを得ない。
◆判決本文
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2024.08. 9
令和5(ワ)5412 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和6年7月2日 大阪地方裁判所
コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器について、著作物性無しと判断されました。念のために依拠性についても判断されて、依拠性無しと判断しています。
原告各作品は、コーヒー豆等を収納するガラス製の保存容器(キャニスター)で
あるから(争いなし)、実用目的を有する量産品であるといえる。原告各作品が、
保存容器という実用目的を達成するために必要な機能に係る構\成と分離して、美術
鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているか否かについてみると、原告各作品は、
ストレートガラスカップと木製の蓋から構成されており、ストレートガラスカップ\nに装飾のある木製の蓋を組み合わせること自体はアイデアであるところ、前者(ス
トレートガラスカップ部分)には、保存容器として必要な機能に係る構\成と分離し
て、美術鑑賞の対象となり得る美的特性が備わっているとは認められない(原告も
この部分について、創作的表現が備わっている旨の主張はしていない。)。また、\n後者(木製の蓋部分)は、先端側から順に略球形、円盤型、円錐型からなる3段か
ら構成され、各段の境目はくびれの構\成となっているところ、このような構成は持\nち運びや内容物の収納、ストレートガラスカップに対する蓋の着脱を容易するため
に必要な構成であるから、実用目的を達成するために必要な機能\に係る構成と分離\nして、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとはいえない。また、仮に、
保存容器(キャニスター)の実用目的を達成するために、その蓋部分の構成をフィ\nニアル状にする必然性はないとして部分的には実用目的を達成するために必要とは
いえない構成が含まれると解するとしても、略球形、円盤型及び円錐型を組み合わ\nせていくつかの段を構成し、各段の境目がくびれている木製の装飾は、骨董品に用\nいられるなど、かなり前から家具等で広く用いられていたこと(乙3、4)、原告
がP10を制作する以前の平成25年時点において、略球形や円盤の形状のいくつ
かの段が設けられ、各段の境目がくびれている木製の蓋が細いガラス瓶に接着され
た作品(乙2・5枚目)が存在していたことなどの事情も踏まえると、原告各作品
の上記蓋部分の構成はありふれたものであって、美術鑑賞の対象となり得る美的特\n性である創作的な表現を備えているとはいえない。したがって、原告各作品は、創作性がなく、著作物であると認めることはできな\nい。
2 争点2(複製又は翻案の有無)について
なお、事案にかんがみ、依拠性についても検討する。
原告は、被告各作品は原告各作品に依拠している根拠となる事情として、被告P
2が令和2年1月に原告各作品の取扱いを求めたが原告がこれを断ったこと、令和
4年10月以降に被告店舗で被告各作品が展示、販売されていること、及び、被告
P3が原告のインスタグラムのアカウントをブロックしたことを挙げる。
しかし、上記1のとおり、原告各作品の蓋部分のフィニアル状の装飾は、従来か
ら類似の装飾が広く存在するありふれたものであること、原告各作品と被告作品1
及び同2を比較しても、木製の蓋部分の形状は、先端部分や2段目の円盤部分、3
段目の円錐部分など複数の点において相違し、作品の印象にも相応の差異がもたら
されていること、被告各作品の制作にあたって実施された両被告間の話合いにおい
て、原告各作品に言及された事情はうかがわれないこと(乙8)などを踏まえると、
原告主張の上記各事情を前提としても、依拠性を認めることはできず、他に、依拠
性を認めるに足りる証拠はない。
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2024.06. 9
令和1(ワ)30628等 損害賠償請求本訴・損害賠償請求反訴 著作権 民事訴訟 令和6年3月28日 東京地方裁判所
絵柄が付されたタオルについて、著作権侵害なしと判断されました。被告は元原告のライセンシーでした。
(1) 著作物性の有無(争点1−1)
著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、\n美術又は音楽の範囲に属するものであり(著作権法2条1項1号)、美術の
著作物には、美術工芸品が含まれる(同条2項)。そして、美術工芸品以外
の実用目的の美術量産品であっても、実用目的に係る機能と分離して、それ\n自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えている場合には、美術の範
囲に属するものを創作的に表現したものとして、著作物に該当すると解する\nのが相当である。
これを本件についてみると、被告商品は、原告A制作に係る本件絵柄をタ
オルに付して商品化した上、量産されたものであるから、美術工芸品以外の
実用目的の美術量産品であるといえる。そして、被告商品は、先に制作され
た本件絵柄を利用し製作されたタオル商品であるから、被告商品のうち本件
絵柄と共通しその実質を同じくする部分(本件絵柄部分)は、何ら新たな創
作的要素を含むものではなく、本件絵柄とは別個の著作物として保護すべき
理由がない。
このような観点から、被告商品のうち、本件絵柄部分を除き、新たに付与
された部分(本件タオル部分)の創作性の存否につき検討するに、被告商品
は、本件タオル部分において、凹凸、陰影、配色、色合い、風合い、織り方
その他の特徴があったとしても、凹凸、陰影、配色、色合いなどは、本件絵
柄と共通しその実質を同じくする部分であると認めるのが相当であり、また、
風合い、織り方などは、タオルとしての実用目的に係る機能と密接不可分に\n関連する部分であるから、当該機能と分離してそれ自体独立して美術鑑賞の\n対象となる創作性を備えているものとはいえない。
そうすると、被告商品において、美的鑑賞の対象となるのは、飽くまで原
告A制作に係る美術的価値の高い本件絵柄部分であると認めるのが相当であ
り、被告一広の製作に係る本件タオル部分には、タオルとしての実用目的に
係る機能と分離して、それ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備え\nているものと認めることはできない。
のみならず、仮に被告一広の製作に係る本件タオル部分に著作物性が認め
られるという立場を採用したとしても、本件タオル部分は、原告らの主張を
前提としても、第三者にとって著作権侵害を構成する範囲が明らかになる程\n度に、被告商品ごとに個別具体的に明確に特定されているものとはいえず、
表現、創作活動等の自由の保障という観点からしても、本件タオル部分につ\nいては、そもそも新たに付与されたとされる創作的部分の特定を欠くものと
して、著作物性を認めるための前提を欠く。加えて、原告会社が本件絵柄の
使用を許諾した基本契約の内容をみても、1条5項によれば、被告一広にお
いて許諾された本件絵柄の使用は、著作物を構成するタイトル名、サブタイ\nトル名、登場キャラクター、コレクションの名称、形状、シンボル、ストー
リー、プロット等を、許諾商品の使用価値を高めるために捺染、印刷、彫塑、
撮影その他の技法を用いて、許諾商品に具現化することをいうと規定されて
いるのであるから、上記基本契約に係るその他の条項違反を主張するのは格
別、原告会社は、被告タオル美術館及び被告一広に対し、本件絵柄を複製及
び翻案してタオルとして商品化し、これを製造販売することにつき許諾した
ものと解するのが相当である。したがって、仮に被告商品において新たに付
与された創作的部分を認める立場を採用し、かつ、仮に原告会社が当該創作
的部分を表現したという立場を採用したとしても、原告会社は、そもそも基\n本契約において、被告一広に対し当該創作的部分に係る著作物の使用を許諾
していたものと認めるのが相当である。
以上によれば、本件タオル部分に著作物性を認めることはできず、本件タ
オル部分に係る著作権侵害に基づく原告らの請求は、いずれも理由がない。
(2) 著作者該当性(争点1−2)
仮に、本件絵柄部分を除いた本件タオル部分に著作物性を認める立場を採
用したとしても、証拠(甲7、甲33の2ないし5、甲35の2、3、甲3
8の2、3、甲40の2、3、乙6、乙27、乙113)及び弁論の全趣旨
によれば、原告Aは、配色指示書、配色指示図案等により、配色や糸、織り
方等を指示していることまでは認められるものの、具体的な糸の番手や本数、
密度、織り上がりの重量等を決定し、現実に被告商品のタオルを製作したの
は、タオルの製造に関する専門的技術を有する被告一広であることが認めら
れる。
そうすると、仮に本件タオル部分自体における上記工夫に創作性が認めら
れる立場を採用したとしても、原告Aの上記指示等はアイデアの域を超える
ものとはいえず、美的鑑賞の対象となる創作性を表現した著作者は、被告一\n広であると認めるのが相当である。
したがって、原告らの主張は、いずれも採用することができない。
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2024.03.25
令和5(ネ)1384等 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件 不正競争 民事訴訟 令和6年1月26日 大阪高等裁判所
大阪高裁は、アマゾンに対してサイト上に掲載した画像等が被告の著作権を侵害する等の申告をした行為が不正競争防止法(不競法)2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。1審の判決維持です。なお、著作物性無しと判断されたのは、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面的な表\紙及び裏表紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影した画像です。\n
写真集及び卓上カレンダーに係る被告画像1、2及び4ないし10は、
インターネットショッピングサイトにおいて販売する商品がどのような
ものかを紹介するために、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面\n的な表紙及び裏表\紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影
した画像であり、上記表紙及び裏表\紙以外に背景や余白はないのであっ
て、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、背景\n等に選択の余地がなく、上記表紙及び裏表\紙ひいてはそこに印刷された
芸能人を被写体とする写真を忠実に再現する以外に、その画像の表\現自
体に何らかの形で撮影者の個性が表れているとは認められないから、上\n記各被告画像には創作性が認められない。したがって、上記各被告画像
は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)\nとはいえず、著作物とは認められないから、一審被告が上記各被告画像
について著作権を有するとは認められない。
(イ) 被告画像3について
単語帳に係る被告画像3も、インターネットショッピングサイトにお
いて販売する商品がどのようなものかを紹介するための写真ではあるが、
芸能人を被写体とする写真が印刷された表\紙及び裏表紙を金具のリング\nから取り外し、各写真を表にして平面上に上下に並べ、その右側に一部\n裏表紙と重なる形で、63枚の単語カードを写真側を表\にして金具のリ
ングを要として扇状に広げたものを撮影したものであり、正面から撮影
されたものではあるものの、上記単語カードを扇状に広げることによっ
てその重なり合いによる陰影が表現され、また、2枚目以降の単語カー\nドの白い縁取りからわずかに各写真が垣間見えるように広げることによ
って各単語カードにそれぞれ異なる写真が印刷されていることを表現し\nており、白い背景によって表紙及び裏表\紙の写真等を浮き立たせる効果
も生んでいるといえる。このような手法が商品としての単語帳を紹介す
る際にまま見られるもの(乙62、63)であったとしても、その被写
体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、背景の選択には
複数の余地があり、被告画像3の表現自体に撮影者の個性が表\れている
と認められる。したがって、被告画像3は、「思想又は感情を創作的に
表現したもの」といえ、著作物性が認められるから、その撮影者である\n一審被告は被告画像3について著作権を有すると認められる。
(ウ) 以上に対し、一審被告は、被告画像1、2及び4ないし10についても、
手ブレ補正、露出補正、ホワイトバランス等の細かい調整を行い、光の
入り方に気を配って撮影場所にこだわり、複数の写真を撮影してその中
の一番良い写真について彩度、色合いを編集するなどの独自の工夫を凝
らしている旨主張するが、一審被告が主張するそのような工夫は、商品
である写真集ないし卓上カレンダーの表紙及び裏表\紙、ひいてはそこに
印刷された芸能人を被写体とする写真を忠実に再現するためのものであ\nって、上記工夫の結果、それらが忠実に再現された各被告画像が得られ
たとしても、その表現自体に何らかの形で撮影者である一審被告の個性\nが表れているとは認められない。したがって、上記一審被告の主張は上\n記(ア)の判断を左右しない。
・・・
ア 上記のとおり、被告サイト上の被告各画像及び商品名のうち、そもそも著
作物性が認められるのは被告画像3のみであり、その余については著作物性
自体が認められず、一審被告が著作権を有しないから、一審原告がその著作
権を侵害した事実はおよそ存在しない。そこで、原告画像3の掲載が被告画
像3についての一審被告の著作権侵害に当たるかにつき、以下検討する。
イ 被告画像3の表現上の本質的特徴は、前記(3)ア(イ)のとおり、本件商品3
を撮影する際の被写体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、
背景の選択等を総合した表現に認められるところ、画像テンプレートを利用\nして作成された原告画像3は、単語帳から取り外した一部の表紙等を並べて\nその横に単語帳を扇状に広げて置くなどの点で商品の見せ方に関する基本的
なアイデアに被告画像3との共通点はあるが、取り外して並べられたのが表\n紙や裏表紙の写真面か、単語カードの韓国語単語が記載された面か、その枚\n数、色彩及び配置、金具のリングを要として扇状に広げられた単語帳がその
右側に配置されているか左側に配置されているか等の配置、同単語帳の1枚
目のカードに印刷された写真内容、同単語帳の単語カードの枚数、色彩、扇
状の広がり方及び陰影等で異なっていることが一見して明らかであって、そ
の素材の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、色彩の配合、素
材と背景のコントラスト等において被告画像3と異なるから、被告画像3の
表現上の本質的特徴を直接感得させるものとはいえない。なお、原告画像3\nで選択された素材のうち、本件商品3の表紙を正面から撮影した画像部分の\nみは被告画像3と共通するが、その画像自体は、被告画像1、2及び4ない
し10について検討したと同様、平面的な上記表紙を忠実に再現したのみで\n創作性が認められない部分であるから、同画像部分が共通しているからとい
って、原告画像3が被告画像3と類似しているとは到底認められない。した
がって、一審原告が原告画像3を原告サイトに掲載したことが、被告画像3
に係る一審被告の著作権を侵害するものとは認められない。
以上によれば、一審被告が、本件各申告によってアマゾンに告知した、一\n審原告が被告サイト上の被告各画像及び商品名についての一審被告の著作権
を侵害しているとの本件各申告の内容は、全て虚偽の事実であったというこ\nとになる。そして、前記第2の2で原判決を補正した上で引用した前提事実
(1)によれば、一審原告と一審被告は競争関係にあるといえ、また、上記著
作権侵害の事実を申告する行為は一審原告の営業上の信用を害する虚偽の事\n実を告知する行為といえるから、本件各申告は、客観的に不競法2条1項2\n1号に該当するということになる。
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2024.03.23
令和4(ワ)9461 著作権 民事訴訟 令和6年2月7日 東京地方裁判所
不動産売買・賃貸の仲介にもちいる物件写真について、著作権侵害が認定されました。
ただ、損害額は1000円/枚で、約7万円です。
証拠(甲5、11、15、27、原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、\n本件各写真は、賃貸物件の外観・内観及び周辺環境等を撮影したものであるこ
と、本件各写真の撮影は、賃貸物件の内容を分かりやすく需要者に伝えるため、
明るさや撮影角度等を調整して行われたものであること、本件各写真の中には、
対象を広く写真に収めるため、パノラマ写真を撮影できるカメラを利用して撮
影されたものも含まれていることが認められる。
このような本件各写真の内容や撮影方法に照らすと、本件各写真は、被写体
の構図、カメラアングル、照明、撮影方法等を工夫して撮影されたものであり、\n撮影者の個性が表現されたものといえる。\nしたがって、本件各写真は、いずれも思想又は感情を創作的に表現したもの\nと認められ、「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当し、これに反する被告
らの主張は採用できない。
・・・
証拠(甲27、原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、通常、管理会社\n等を通さずに物件写真を取得する際には、自社の従業員などが現地を訪問し、
賃貸物件の外観や内観等の撮影した上で、必要に応じて写真の加工等を行っ
ていることが認められるところ、被告会社は、本件侵害対象写真を使用する
ことによって、上記の作業に係る支出等を免れたものといえる。
そして、証拠(甲23の3、25、26、乙3、5)及び弁論の全趣旨に
よれば、物件写真の撮影代行サービスの料金については、1)広角一眼レフカ
メラ撮影の外観・内観セット(単発発注)については、3600円から45
00円、360度パノラマ撮影(単発発注)については、3200円から4
000円(写真の加工等には別途オプション料金が必要)とするもの、2)内
観(画像15枚程度)2750円、外観・共用部セット3300円、高品質
撮影5500円、交通費2000円程度とするもの、3)外観・エントラン
ス・看板7枚以上で2750円〜5500円、外観・共用部・室内全て7枚
以上で1万3200円(いずれも一眼レフカメラ、広角カメラで撮影。1回
の撮影枚数は30枚以上。)、シータによる撮影(8枚以上)は1件4400
円(写真の加工等には別途オプション料金が必要で、徒歩15分以上の撮影
の場合は1650円が加算される。)とするもの、4)マンション一眼レフカ
メラ広角レンズ撮影について、外観のみ(10枚程度)3500円、内観の
み(20枚程度)4000円、外観・内観(30枚まで)4500円、オプ
ションとして360度パノラマ撮影について、1枚500円、5枚まで10
00円〜2000円(ただし、駅から徒歩16分以上の場合は1000円が
加 算 さ れ る 。) とするもの、5)外観 の み (5枚 か ら 10枚程度)1
200円から1800円、外観・内観セットについて10枚から15枚程度
の場合は2200円から2500円、30枚程度の場合は2500円から2
800円とするものなどがあることが認められ、このような料金の定めから
すれば、物件写真の撮影代行サービスを利用する場合、写真1枚当たりに換
算すると数百円程度の費用が必要となるほか、交通費や写真の加工等のため
のオプション料金が別途発生し得ることが認められる。
上記の事情に加え、本件侵害対象写真の掲載期間は最大で2か月弱であっ
てさほど長くないこと(前記3)、他方で、著作権侵害があった場合に事後
的に定められるべき「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」は通常の使
用料に比べて高額となることといった事情を併せ考慮すると、本件侵害対象
写真の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法11
4条3項)は、写真1枚当たり1000円の合計7万1000円と認めるの
が相当である。
(2) これに対し、原告は、NHKエンタープライズ(甲19)、毎日フォトバ
ンク(甲20)やアマナイメージズ(甲21)の写真使用料の定めからすれ
ば、本件侵害対象写真の使用料相当額は1枚当たり2万円とすべきであると
主張する。
しかし、NHKエンタープライズや毎日フォトバンクの提供する写真は、
報道等のために撮影された写真であり、また、アマナイメージズの提供する
写真はウェブ広告や動画配信広告等に用いられるものであって、その撮影対
象や撮影方法は、賃貸物件の紹介を目的とした物件写真とは大きく異なるも
のといえるから、上記各社の写真使用料の定めを本件で参考にすることは相
当ではない。
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2024.03.23
令和5(ワ)70052 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 令和6年2月26日 東京地方裁判所
囲碁将棋チャンネルは、YouTubeに、著作権侵害としてYouTuberの動画の削除申請しました。これが違法か否か争われました。争点は棋譜に著作権があるのか否かです。裁判所は約2万円の損害賠償を認めました。
原告は、本件において虚偽の事実を告知等されたことによって、経済的損害に
つき不正競争防止法2条1項21号に基づく損害賠償請求権が発生するほかに、
併せて人格的利益を侵害するものとして、別途不法行為に基づく損害賠償請求権
が発生する旨主張する。そこで検討するに、人格権ないし人格的利益とは、明文上の根拠を有するものではなく、生命又は身体的価値を保護する人格権、名誉権、プライバシー権、肖像権、名誉感情、自己決定権、平穏生活権、リプロダクティブ権、パブリシティ
権その他憲法13条の法意に照らし判例法理上認められるに至った各種の権利
利益を総称するものであるから、人格的利益の侵害を主張するのみでは、特定の
被侵害利益に基づく請求を特定するものとはいえない。しかしながら、原告は、
裁判所の重ねての釈明にもかかわらず、単なる総称としての人格的利益をいうに
とどまることからすると、原告の主張は、請求の特定を欠くものとして失当とい
うほかない。
もっとも、原告は、原告主張に係る人格的利益とは、最高裁平成16年(受)
第930号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1569頁(平
成17年判決)にいう著作者の人格的利益と同趣旨のものであり、大阪高裁令和
4年(ネ)第265号、第599号同4年10月14日判決(令和4年判決)も、
その趣旨をいうものである旨主張する。
仮に、原告主張に係る人格的利益が、上記判例を引用する限度で特定されてい
るものと善解したとしても、平成17年判決は、著作者の思想の自由,表現の自\n由が憲法により保障された基本的人権であることに鑑み、公立図書館において閲
覧に供された図書の著作者の思想、意見等伝達の利益を法的な利益として肯定す
るものであり、その射程は、公立図書館の職員がその基本的義務に違反して独断
的評価や個人的好みに基づく不公平な取扱によって蔵書を廃棄した場合に限定
されるものである。そうすると、私立図書館その他の私企業における場合は、明
らかにその射程外というべきものであるから、平成17年判決は、私企業である
YouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益が問題とされている本件に
は、適切なものといえない。
また、原告が引用する大阪高裁令和4年(ネ)第265号、第599号同4年
10月14日判決(令和4年判決)は、人格的利益に関わるものと説示しつつも、
投稿者の営業活動を妨害するという側面をも踏まえたものであるから、精神的価
値という法益に限定して法的利益性が主張されている本件には、必ずしも適切で
はない。のみならず、平成17年判決が、上記のとおり、伝達の利益を法的な利
益として肯定する場面を、公立図書館の職員による極めて不公平な取扱等の場合
に制限している趣旨に照らしても、憲法で保障されている表現の自由から、直ち\nにYouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益を肯定するのは相当では
ない。その他に、原告は、著作権法、電気通信事業法その他の法令を縷々指摘して、
原告主張に係る人格的利益が重要性の高い法益である旨主張するものの、原告が
掲げる法令は、原告主張に係る人格的利益を保護するものとはいえず、上記にお
いて説示したところに鑑みると、原告の主張は、その特定及び根拠を欠くもので
あり、採用の限りではない。
◆判決本文
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2024.02.24
令和5(ネ)10038 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年12月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
1審と同じく、著作物に該当するが、黙示の許諾があったと判断されました。
「確かに、乙14の4から13、乙15ないし20、22によれば、紙
におけるにじみなどの模様は模様付きの和紙としてカタログで販売される
ものにも見られるものではある。しかし、控訴人は、楮を原料とし、にじ
みが良く、染め方に深みを出すことができる和紙に、膠、明礬及び水を混
合した礬砂を刷毛で和紙の片面又は両面に引いて乾かし、その際、礬砂の
配合量や引き方等を調整したり、複数の刷毛を使い分けたりすることによ
り、紙上に、水のにじみにくい部分や染料の染みにくい部分を生み出し、
毛質、長さ、大小が異なり、特別に注文した複数の刷毛を使い分け、主に
柿渋、胡桃、墨、土など自然の染料で和紙を染め、刷毛のあと、にじみに
より紙上に色を配置するなどの手法を用いて和紙に模様や色彩を施し、一
点ずつ異なる模様の染描紙を制作しており、創作ノートに構図のためのス\nケッチ、色、染料の選択、配置、濃淡、線や動き等を記載することもあっ
た(前記1(3))こと、そして、本件染描紙15から20のうち、本件染描
紙18は約65cm×約180cm、それ以外は約74cm×約100c
mという大きさを備えるものであって、控訴人は空の情景を意識して本件
染描紙15から20を制作していること(前記1(2)、(3))、それぞれの模様
は原判決別紙本件染描紙(15〜20)一覧の各写真のとおりであって、
控訴人が、特定の色彩を選択して、構図を考えた上で模様を配置し、全体\nとしてまとまりのある図柄を作り上げたものといえることを考慮すれば、
創作的表現がされていると認められる。これらの事情を総合すれば、本件\n染描紙15から20の上記創作的表現は、模様のついた和紙として通常想\n定される模様とはいえず、実用的な目的のためのものといえる特徴と分離
して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備える部分を把握することが
できるといえる。したがって、本件染描紙15から20は、控訴人の著作
物であると認められる。」
(2) 翻案について
翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質な特徴の同一\n性を維持しつつ、具体的な表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想\n又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の\n表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行\n為をいう(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法
廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
これを本件において検討すると、被控訴人Y’が制作した本件展示物15
から20は、本件染描紙15から20に依拠し、原判決別紙染描紙(15〜
20)一覧において、四角い枠を付したものとして示した写真における、四
角い枠で囲んだ部分を利用して、補正した上で引用した原判決第3の2(3)で
認定した制作過程を経て制作されたものと認められ、また、本件展示物15
から20は、作品の全体像として、「Yアートワークス/天空図屏風シリーズ」
と題する一連の作品として、屏風様式を取り入れ、上記作品より一回り大き
い茶色のアルミ複合版製の下地とともに設置され、晴天の日の日中は、各展
示場の上方の天井にそれぞれ存在する天窓から日差しが差し込むように配置
され、本件展示物15から20が展示されている各壁面の正面付近の各床に
は、本件展示物15から20について、本件説明とともに、それぞれ各和歌
(原典及び口語訳)が記載された説明書きが埋め込まれていて、これらの構\n成要素が組み合わされて仕立てあげられた作品であることが認められるから、
本件染描紙15から20の具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新た\nに思想又は感情を創作的に表現するものと認められるものの、本件展示物1\n5から20の屏風の部分の表現と本件染描紙15から20の上記四角い枠で\n囲んだ部分の表現とを対比すると、前者は後者と比較して、全体的に青系の\n色彩が強調され、また、刷毛のあとや染色の境目などの輪郭が鋭く明確化さ
れているなど、両者は色合いや色調に多少の相違が認められるものの、刷毛
状の模様、にじみ具合及びこれらの構成や配置は極めて類似しているから、\n本件展示物15から20に接する者が本件染描紙15から20の表現上の本\n質的特徴を直接感得することが十分に可能\であるということができる。
したがって、本件展示物15から20は、本件染描紙15から20を翻案
したものであると認めるのが相当である。
・・・
6 当審における当事者の補充主張に対する判断
(1) 被控訴人Y’の前記第2の5(1)の主張について
被控訴人Y’は、本件染描紙15から20は著作物に当たらないと主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の4(2)のとおり、
本件染描紙15から20については創作的表現がされていると認められる。\n前記のとおり、本件染描紙15から20の模様は、単なる和紙の染みやに
じみではなく、控訴人は、膠、明礬及び水を混合した礬砂を刷毛で和紙の片
面又は両面に引いて乾かし、その際、礬砂の配合量や引き方等を調整したり、
複数の刷毛を使い分けたりすることにより、紙上に、水のにじみにくい部分
や染料の染みにくい部分を生み出し、毛質、長さ、大小が異なり、特別に注
文した複数の刷毛を使い分け、主に柿渋、胡桃、墨、土など自然の染料で和
紙を染め、刷毛のあと、にじみにより紙上に色を配置するなどの手法を用い
て模様や色彩を施すなどして、一点ごとに模様の異なる染描紙を制作してお
り、本件染描紙15から20は空の情景を意識して制作したものである(補
正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3))。
実際、被控訴人Y’も、控訴人店舗以外の店でも和紙を購入したが、控訴人店舗で購入した染描紙の模様が「空」や「雲」の世界観を見出しやすいと認識し、さらに、本件
染描紙15から20の中に「空」や「雲」の世界観を見出すことのできる部
分があると認め(補正の上で引用した原判決「事実及び理由」第3の2(3)、
乙24)、その部分を選定して切り出し、染描紙の色合いや色調の変化等を調
整、刷毛のあとを際立たせるといった加工を行い、その上で、紙をスキャナ
で読み込んでスキャンデータを作成し、これを拡大し、電子データ上で色付
けし、縦横比を調整するなどして「天空図屏風シリーズ」と題する一連の作
品を制作したのであって、本件染描紙15から20の模様を変えることなく、
これを強調することによって「空」をイメージさせる作品を作ったといえる。
これらの事情からすれば、本件染描紙15から20については、創作ノート
その他染描紙の構成や色彩に関して控訴人が記載した資料は証拠として提出\nされていないものの、控訴人は、これらの染描紙の制作にあたり、特定の色
彩を選択して、構図を考えた上で模様を配置して図柄を作り上げ、完成した\nこれらの染描紙は、実用的な目的のためのものといえる特徴と分離して、美
的鑑賞の対象となり得る美的特性を備える部分を把握することができる。
原審で行われた控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は、染描紙を制作
する際に用いる刷毛に含まれた水が紙の上でどのように動くのかについて完
全にコントロールすることはできず、染料を紙に染み込ませた後にどのよう
な模様が浮かび上がるのかを事前に完全に予想できるわけではないと認めら\nれる。しかし、上記のとおり、本件染描紙15から20については、控訴人
が空の情景を意識して制作し、実際に空の情景を見出し得る模様が作り出さ
れていると認められるのであって、制作過程の中に一部控訴人のコントロー
ルが及ばない部分があることや、完成した模様が控訴人の事前の想定と完全
には一致しないことがあるとしても、そのことをもって、本件染描紙15か
ら20が著作物と認められないことにはならない。
・・・
控訴人は、染描紙につき、和紙と分離して無体物である「染描」部分だけ
を利用することを包括的に許諾したことはなく、翻案等も含めた利用を包括
的かつ黙示に許諾してはいないと主張する。
しかし、控訴人が控訴人店舗に掲げていた本件注意書きは、「無断転用、模
倣、複写による商業行為」を禁ずるとの内容である。この「無断転用、模倣、
複写」に、控訴人がいう「無体物」としての利用、すなわち、染描紙の購入
者が染描紙の紙自体を使わずに模様をデータ化するなどして絵画等の作品制
作において利用する行為が含まれることが明らかであるとはいえない。控訴
人は、控訴人店舗で販売された染描紙にアーティストが絵を描いたものを控
訴人ウェブサイトに掲載しており(原判決「事実及び理由」第3の1(4))、染
描紙の購入者が染描紙を自らの作品に使用することが可能である旨を示して\nいたといえ、それにもかかわらず控訴人がいう「無体物」としての利用を明
示的に禁じていなかったのであるから、控訴人店舗で染描紙を購入した者が、
本件注意書きを見て、染描紙の模様をデータ化するなどして利用する行為が
禁じられていると理解することはできなかったといえ、かつ、控訴人も、こ
うした行為を禁ずる意図を有していなかったと推認することができる。
また、控訴人は、被控訴人Y’が染描紙を利用して雑誌「和樂」の「源氏
物語」の挿絵を作成して掲載することを被控訴人Y’から伝えられながら、
被控訴人Y’による染描紙の利用を問題とせず(原判決「事実及び理由」第
3の1(5)ク)、被控訴人Y’が染描紙を利用して実際にどのような絵を制作し
て雑誌に掲載したのかを確認しなかった(控訴人本人、弁論の全趣旨)。この
事実からも、控訴人が、染描紙の購入者が染描紙を利用して他の作品を制作
することに関し、染描紙に直接絵を描くことは許諾し、染描紙の模様をデー
タ化するなどして利用することは禁じていたとの区別をしていたとは認めら
れない。
控訴人のいう「無体物」としての利用であっても、それによって作品を制
作しようとする者は和紙である染描紙を購入するのであるから、控訴人が染
描紙を制作する目的が手漉き和紙の販売の促進にあるとしても、控訴人が「無
体物」としての利用も含めて黙示に許諾することと矛盾しない。
控訴人が、染描紙について「無体物」としての利用をしようとする者に対
して明示的な許諾の意思表示をしたことがあるとしても、そのことは控訴人\nが「無体物」としての利用を含めて他の作品制作への染描紙の利用を黙示に
許諾していたことと矛盾しない。控訴人が、明示的な許諾をする際に、「無体
物」としての利用を希望する者と何らかの条件交渉を行ったことがあるのか
否か、どのような条件交渉を行ったのかは不明であり、仮に何らかの条件交
渉を行った上で明示的な許諾の意思表示をしたことがあるとしても、事前に\n利用態様を認識した場合に控訴人がその者に対して一定の条件を求めること
はあり得るといえ、やはり、控訴人が「無体物」としての利用を含めて他の
作品制作への染描紙の利用を黙示に許諾していたことと矛盾しない。
以上の事情に加え、原判決「事実及び理由」第3の5に挙げられた事情も
併せ考慮すれば、控訴人は、複製に当たる場合を除き、「無体物」としての利
用を含め、染描紙を用いて他の作品を制作することを黙示的に許諾していた
と認められる。
◆判決本文
1審はこちら。
◆平成30(ワ)39895等
こちらに、問題となった展示物などがあります。
◆画像
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2024.02.19
令和5(ワ)70139 著作権侵害差止請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年12月7日 東京地方裁判所
木枯し紋次郎の作者の遺族が、口に長い竹の楊枝をくわえた長脇差を携えた渡世人の図形について、木枯し紋次郎をイメージさせるとして、著作権侵害、不競法2条1項1号該当性を争いました。裁判所は、抽象的アイデアであると判断しました。
さらに念のため、本件渡世人に係る記述自体をみても、原告ら主張に係る
本件渡世人は、1)通常より大きい三度笠を目深にかぶり、2)通常よりも長い
引き回しの道中合羽で身を包み、3)口に長い竹の楊枝をくわえ、4)長脇差を
携えた渡世人というものである。そして、証拠(乙1ないし15)及び弁論
の全趣旨によれば、渡世人が、三度笠を目深にかぶり、引き回しの道中合羽
で身を包み、長脇差を携えていたというのは、江戸時代の渡世人の姿として
ありふれた事実をいうものであり、口に長い竹の楊枝をくわえるという部分
を更に加えたとしても、これがアイデアとして独自性を有するかどうかは格
別、著作権法で保護されるべき創作的表現という観点からすれば、その記述\n自体は明らかにありふれたものである。仮に、本件渡世人に対しその後本件
テレビ作品で加えられた表現をもって二次的著作物とする原告らの主張に立\nって、「通常より大きい」三度笠で、「通常よりも長い」道中合羽で身を包
んでいるという記述を加えて更に検討したとしても、これらの記述も同じく
極めてありふれたものであり、原告らの上記主張の当否を判断するまでもな
く、本件渡世人に係る上記記述は、全体として、ありふれた事実をありふれ
た記述で江戸時代の渡世人をいうものにすぎず、これを創作的表現であると\n認めることはできない。
・・・・
不正競争防止法2条1項1号又は2号にいう「商品等表示」とは、人の業務\nに係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営
業を表示するものをいう。\nこれを本件についてみると、原告ら主張に係る商品等表示とは、前記1)ない
し4)の特徴を備えた本件渡世人に係る表示をいうところ(第1回口頭弁論調書\n参照)、本件渡世人がありふれた江戸時代の渡世人をいうにすぎないことは、
上記において説示したとおりであり、本件渡世人に係る表示は、そもそも不正\n競争防止法2条1項1号又は2号にいう「商品等表示」に該当するものとはい\nえない。
仮に、原告らの主張が、本件渡世人の図柄又は写真に「紋次郎」という名称
が付された表示をいうものとしても、商品等表\示として具体的な特定を欠くの
みならず、一般に「紋次郎」という名称は、本件書籍、本件漫画作品、本件テ
レビ作品及び本件映画作品に登場する中心人物を示す、いわゆるキャラクター
に関する識別情報であり、本来的に商品又は営業の出所表示機能\を有するもの
ではない。そして、本件全証拠をもっても、原告ら主張に係る上記表示が、キ\nャラクターに関する識別情報を超えて、原告らの営業を表示する二次的意味を\n有するものと認めるに足りず、まして原告ら主張に係る上記表示が、原告らの\n営業等を表示するものとして周知著名であるものとは、本件全証拠\nを踏まえても、明らかに認めるに足りない。
のみならず、証拠(乙20ないし28)及び弁論の全趣旨によれば、被告図
柄は昭和52年に、「紋次郎いか」は昭和57年に、「げんこつ紋次郎」は平
成20年に、それぞれ商標登録を受け、被告がこれらの商標を付するなどして
被告商品を販売し、その信用を長年にわたり蓄積してきた実情及び実績を踏ま
えると、仮に原告らの主張に立ったとしても、原告らの営業等と誤認混同を生
ずるおそれを直ちに認めることはできず、これを覆すに足りる証拠はない。
そうすると、仮に上記キャラクターに関する識別情報に一定の財産的価値が
化体していたとしても、実在の人物としてパブリシティ権侵害をいうなら格別、
被告が被告図柄を付して被告商品を製造販売する行為は、不正競争防止法2条
1項1号又は2号に掲げる「不正競争」に該当するものとはいえない。
したがって、原告らの主張は、いずれも採用することができない。
◆判決本文
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2024.02.15
令和1(ワ)10940 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和6年1月29日 大阪地方裁判所
プログラムの著作物性は認められましたが、複製・翻案については同意があったと認定されました。一方、氏名表示権侵害として10万円が認められました。\n
ア 本件プログラム1は、マンロック(高圧室作業場所への作業員の出入り用
気密扉)内の気圧、二酸化炭素濃度等を記録するペーパーレスレコーダー(最
大10機)を集中管理(レコーダーで記録された情報を遠隔地のパソコンで\nリアルタイムに表示し、データを蓄積するとともに閾値を超えた場合は警告\nを発することが可能)するシステムプログラムであり、統合管理画面(メイ\nンフォーム画面)、個々のレコーダーの監視画面(レコーダーフォーム画面。
表示形式はレコーダーと同様。)、レコーダーの通信ルーチン、データベース\n(レコーダーの情報を集積する部分)などを構成要素とするものである。(甲\n28、弁論の全趣旨)
この点、画面構成や、レコーダーのデータをどのように扱うかについては、\nプログラムの目的、環境規制の態様、ハードウェアやオペレーティングシス
テムなどに由来する制約等により、表現の選択の余地の乏しいものもあると\n考えられるが、データ処理の具体的態様(クラス、サブルーチンの利用等の
構造化処理を含む)、レコーダーとの通信プロトコルの選択及びそれに応じ\nた実装、データベース化の具体的処理手順などについて、各処理の効率化な
ども意識してソースコードを記述する過程においては、相応の選択の幅があ\nるものと認められる。
イ 原告は、このような選択の幅の中から、データ処理の態様を設計した上、
A4用紙で約120頁分(1頁あたり60行程度。以下同様)のソースコー\nドを作成したことからすると、ソースコード(甲28)の具体的記述を全体\nとしてみると、本件プログラム1は、原告の個性が反映されたものであって、
創作性があり、著作物であるということができる。
ウ 被告は、本件プログラム1のソースコードの多くの記述が公開されたサン\nプルプログラムであり、単純な作業を行う機能の複数の記述であり、計測上\nの管理基準に対応させた記述の順序や組合せであるから、ソースコードの記\n述に創作性はない旨を主張する。しかし、ソースコードに既存のサンプルが\n含まれることについて的確な立証はない上、仮にそのような記述が含まれる
としても、プログラム全体としての創作性を直ちに否定するものともいえな
いから、被告の主張は採用できない。
・・・
前提事実及び認定事実によると、本件各プログラムの中には、明示的に
異なる現場で用いることを前提とする仕様が採用されたものがあること、
本件各プログラムはいずれも発注の原因となった現場と異なる現場で用
いることについてプログラムの仕様上の制限はないとうかがわれること、
原告自身、一つの現場が終了したと見込まれる後も、プログラムの修正に
応じるなどしていること、原告自らソースコードを納品したものもあるこ\nとに加え、原告が、平成2年に独立した後、多数回にわたって被告から依
頼されたプログラムを制作、納品し、平成20年12月から平成21年4
月までの間は、被告に採用されてプログラム制作業務に従事していたこと
からすれば、計測業務における被告のプログラムの利用実態(プログラム
を一つの現場で利用するだけでなく他の現場においても複製、変更又は改
変(カスタマイズ)して利用していたことを含む。)から、自己が制作して
納品したプログラムが被告により複数の現場で利用され得ることを認識
していたものとみられることが認められる。これらの本件においてうかが
われる事情からすると、本件各プログラムの開発に係る各請負契約におい
て、成果物が、少なくとも被告の内部で使用される限りにおいては、他の
現場における使用や改変を許容する旨の黙示の合意があったものという
べきである。
・・・
(1) 氏名表示権が侵害されたか(争点3−3、5−2)及び被告に故意又は過失\nがあったか(争点3−4、5−3)
ア 本件プログラム3(争点3−3、3−4)
前記前提事実のとおり、本件プログラム3を複製、変更した被告プログラ
ム3の起動画面やバージョン表示画面においては、被告の社名が表\示され、
原告の氏名は表示されていない(甲9)。そして、本件プログラム3と被告プ\nログラム3を比較すると、ソースコードの大部分において同一であり、被告\nプログラム3には本件プログラム3に時間率評価機能を果たす計算処理や\ndB値の時系列変数の計算処理の機能が追加された点において相違するが\n(甲8の3)、この相違点から被告プログラム3が本件プログラム3と別個
のプログラムであるということはできない。
したがって、被告による上記表記により、本件プログラム3について、原\n告の氏名表示権が侵害され、その態様から、被告に故意があったと認められ\nる。
・・・
(3)損害の有無及び額(争点3−5、5−4)
(1)の被告の行為により原告の被った損害は、本件に顕れた一切の事情を考
慮し、10万円と認め(なお、原告は、本件プログラム5についての氏名表示\n権侵害固有の損害を主張しないが、弁論の全趣旨から、相当の損害賠償を求め
る趣旨と解される。)、被告は、相当因果関係のある弁護士費用1万円を加えた
11万円及びこれに対する遅延損害金を支払う義務を負う。
◆判決本文
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2024.02.15
令和5(ワ)6100 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和6年1月30日 大阪地方裁判所
X(旧Twitter)にて、アカウントのアイコンを一部変形して、第三者が使用したことが氏名権、著作権などを侵害するとして、15万円の損害賠償が認められました。
(1) 氏名権侵害について
氏名は、個人の人格の象徴であり、人格権の一内容を構成するものというべきで\nあるから、人は、その氏名を他人に冒用されない権利を有する。
前提事実(3)並びに証拠(甲5〜9)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件
アカウントを通じて本件各投稿を行っているところ、本件投稿1では、本件アカウ
ントにおける名前(原告の氏名である「P1」)及びユーザー名(原告が経営する
法人グループの総称である「(省略)」)が表示されており、本件投稿2ないし4\nでは、「P1」がリツイートした旨が表示されていることに加え、所定の操作によ\nり本件アカウントにおける名前等が表示されることが認められ、本件各投稿に接し\nた閲覧者は、投稿者として原告の氏名を認識するものと認められるから、被告は本
件各投稿において原告の氏名を冒用したといえる。したがって、本件各投稿は、原
告の氏名権を侵害する。
被告は、本件アカウントのプロフィール欄には「フィクションのため実在の人物
とは一切関係がございません」と記載されているから、閲覧者は、実在の人物とは
関係がないとの結論に至り、原告本人ではないと認識をする可能性がある旨を主張\nする。しかし、閲覧者は、アカウントに表示された氏名やユーザー名によって投稿\n者を特定するものと解されるから、被告指摘の記載があったとしても、閲覧者は、
原告がその旨を記載していると理解するにすぎず、前記判示に影響を与えるもので
はない。被告の前記主張は採用できない。
(2) 本件著作権の侵害について
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美\n術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいう。
本件イラストは、P3氏が、ツイッター上の交流において原告を表すためにふさ\nわしいイラストとして制作したものであり、腹ばいになるアザラシの様子をイラス
トにし、その下部に「(省略)」と記載したものであるところ、全体的に丸みを帯
びた輪郭で、頭部を大きくし、ヒレを頭部付近に小さく描くことにより、親しみや
すくかわいらしい印象を与えている点、大きな頭部いっぱいに両目、鼻及び口を描
くことでアザラシの表情に存在感を与えている点、これらに「(省略)」という表\
記を欧文字で加えることで、その性格(原告の人柄)を示しつつイラストとしての
一体感を感じさせる点において、選択の幅がある中から作成者によってあえて選ば
れた表現であるということができる。したがって、本件イラストは、作成者の思想\n又は感情が創作的に表現された、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えたもの\nであると認められ、「著作物」に該当する。
証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、P3氏は、本件イラストを制
作し、原告に対し、本件イラストに係る著作権を譲渡したことが認められ、原告
は、本件イラストに係る著作権を有していると認められる。
本件黒塗りイラストは、本件イラストの両目部分に黒の横線が入れられ、「(省
略)」という表記が黒塗りされたものであるが、被告がかかる改変を行ったことを\n認めるに足りる証拠はない。一方、前記改変は、前記目線等を加えたことに限られ
るから、本件黒塗りイラストは、本件イラストに依拠し、かつ、その表現上の本質\n的な特徴の同一性を維持しつつ、これに接する者が本件イラストの表現上の本質的\nな特徴を直接感得することができるものと認められ、本件黒塗りイラストは本件イ
ラストの複製物又は翻案物であって、原告が著作権を有するものといえる。そうで
あるところ、被告は、本件各投稿によって、本件黒塗りイラストに改変等を加える
ことなくツイッター上に投稿して、少なくとも不特定の者に対して閲覧可能な状態\nにしたことから、本件各投稿は、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害す
るといえる。
・・・
(4) 名誉感情侵害について
本件投稿1について検討するに、本件投稿1は、原告の氏名及び原告が経営する
法人グループの名称を表示するとともに、その存在はフィクションであり、実在の\n団体人物とは関係がない旨が記載されたものであるところ、一般閲覧者の普通の注
意と読み方を基準として判断した場合、本件投稿1に接した閲覧者は、原告自身が
原告や(省略)とは関係がない旨を投稿したと認識するものと認められる。したが
って、本件投稿1は、閲覧者に対し、原告は趣旨不明な投稿をする人物であるとの
印象を与え、原告の名誉感情を侵害するものといえる。被告は、本件各投稿は司法
書士として品位に欠ける言動をやめさせる公益目的で行った旨主張するが、仮にそ
のような目的があったとしても、原告になりすまして本件投稿1を行うことが正当
化される理由にはならない。
本件投稿2ないし4について検討するに、原告は、被告がP4アカウントを作成
したことを前提として、本件投稿2ないし4の閲覧者は、原告があたかもP4氏の
名誉権を侵害したり、プライバシー権を侵害したりする投稿を平気で行う人物であ
ると受け止めることから、これらの投稿は原告の名誉感情を侵害する旨を主張す
る。しかし、被告がP4アカウントを作成したことを認めるに足りる証拠はない。
また、P4アカウントによる投稿に接した閲覧者は、P4氏が自身のアカウントで
投稿していると認識するものと認められるところ、仮に被告が同氏になりすまして
P4アカウントを作成し投稿していたとしても、P4アカウントによる投稿をリツ
イートすること自体によって、直ちに同氏の名誉権やプライバシー権が侵害される
ことにはならないから、原告の前記主張はその前提を欠く。そして、本件投稿2
は、名前を「P4」、ユーザー名を「(省略)」とするP4アカウントによる「ば
ればれだよ。ことP4です。」という投稿を本件アカウントでリツイートしたもの
であるところ、一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準として判断した場合、本件
投稿2に接した閲覧者は、P4氏が自身のユーザー名及び氏名を紹介した投稿に対
して原告が注目し閲覧者に伝えようとしたと認識するものと認められる。したがっ
て、本件投稿2は、原告の名誉感情を侵害するものとはいえない。また、本件投稿
3及び4は、P4アカウントによる「ネコではなくタチのP4です。」及び「バリ
タチのP4です。」という投稿を本件アカウントでそれぞれリツイートしたもので
あるところ、「ネコ」、「タチ」及び「バリ」が同性愛者を指す用語として用いら
れることがあること(甲19)を踏まえ、一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準
として判断した場合、本件投稿3及び4に接した閲覧者は、P4氏が自身が同性愛
者であることを摘示した投稿に対して原告が注目し閲覧者に伝えようとしたと認識
するものと認められる。したがって、本件投稿3及び4は、原告の名誉感情を侵害
するものとはいえない。
(5) 以上から、本件各投稿は原告の氏名権及び本件著作権(複製権及び公衆送
信権)を侵害し、本件投稿1は原告の名誉感情を侵害するものとして、不法行為を
構成する。\n
2 争点2(損害の発生及びその額)について
前記1認定の本件各投稿による権利侵害の内容及び態様の一切を考慮すると、本
件各投稿により、原告が被った精神的苦痛を慰藉する金額は、15万円が相当と認
められる。ただし、原告は本件イラストの著作者ではなく、本件著作権(複製権及
び公衆送信権)侵害により原告に精神的苦痛が生じたとは認めるに足りない。
◆判決本文
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2024.01.30
令和4(ワ)11394 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和6年1月16日 大阪地方裁判所
棋譜情報をフリーライド利用された被告が、Googleに対して著作権侵害であると申告したことが、不競法2条1項21号の不正競争に当たるとして、争われました。大阪地裁は、「虚偽の事実の告知」に該当すると認定し、約120万円の損害賠償を認めました。\n
本件動画は被告の著作権を侵害するものではない(この点について被告は争って
いない。)にもかかわらず、本件削除申請は、グーグル等に対し、本件動画が被告\nの著作権を侵害する旨を摘示するものであるから、客観的な真実に反する内容を告
知するものとして、「虚偽の事実の告知」に当たると認められる。
これに対し、被告は、本件動画は被告の営業上の利益その他何らかの権利を侵害
する旨を主張するが、本件削除申請が虚偽の事実の告知に当たるかどうかの判断と\nは無関係である上、本件動画により被告の何らかの権利が侵害された事実も明らか
でないから、採用できない。
2 争点2(本件削除申請は原告の「営業上の利益」を侵害するか)について\n
前提事実に加え、証拠(枝番号があるものは各枝番号を含む。以下同じ。甲4〜
13、15、16)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、ユーチューブ及びツイキ
ャスにおいて、本件動画を配信して収益を得ていたところ、本件削除申請は、グー\nグル等のプラットフォーマーに対し、本件動画が被告の著作権を侵害する違法なも
のであることを摘示する内容であり、これによって、原告は、ユーチューブにおい
ては、別紙「原告動画目録」の「配信停止期間」欄記載の期間、動画の配信が停止
されたことが、ツイキャスにおいては、動画配信によって収益を得ることが少なく
とも一定期間停止されたことがそれぞれ認められる。そうすると、本件削除申請は、\n原告が本件動画の配信という営利事業を遂行していく上での信用を害するものとし
て、原告の「営業上の利益」を侵害したと認められる。
これに対し、被告は、原告による本件動画の配信は、被告が配信する棋譜情報を
フリーライドで利用するという著しく不公正な手段を用いて被告ら棋戦主催者の営
業活動上の利益を侵害するものとして不法行為を構成することを指摘して、本件動\n画の配信に係る営業上の利益は法律上保護される利益に当たらない旨を主張し、こ
れを裏付ける証拠として「王将戦における棋譜利用ガイドライン」(乙2)を提出
する。しかし、棋譜は、公式戦対局の指し手進行を再現した「盤面図」及び符号・
記号による「指し手順の文字情報」を含むものと認められるところ(乙2)、本件
動画で利用された棋譜等の情報は、被告が実況中継した対局における対局者の指し
手及び挙動(考慮中かどうか)であって、有償で配信されたものとはいえ、公表さ\nれた客観的事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であると解される。
同ガイドラインは、棋譜の利用権等を王将戦主催者が独占的に有する旨規定するが、
王将戦主催者が、原告を含めた被告の実況中継の閲覧者の関与なく一方的に定めた
ものであり(乙2)、原告に対して法的拘束力を生じさせるものであるとはいえな
い。また、前記1のとおり、本件動画は被告の著作権を侵害するものではなく、そ
の他、原告が、被告の配信する棋譜情報を利用することが不法行為を構成すること\nを認めるに足りる事情はない。したがって、被告の前記主張は、その前提を欠き、
採用できない。
◆判決本文
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