2024.06. 4
令和5(ネ)10110 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和6年5月16日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
発信者情報開示請求について、主な争点は、(争点1)「権利が侵害されたことが明らかである」(プロ責法5条1項1号)か、(争点2)本件各発信者情報が「当該権利の侵害に係る発信者情報」(同5条1項柱書)に当たるかでした。1審はいずれも該当しないとして請求を棄却しましたが、知財高裁は、これを取り消しました。
(1) 前提事実(訂正の上引用した原判決の「事実及び理由」の第2の2)によると、
共有対象となる特定のファイルに対応して形成されたビットトレントネットワークに
ピアとして参加した端末は、他のピアとの間でハンドシェイクの通信を行って稼働状
況やピース保有状況を確認した上、上記特定のファイルを構成するピースを保有する\nピアに対してその送信を要求してこれを受信し、また、他のピアからの要求に応じて
自身が保有するピースを送信して、最終的には上記特定のファイルを構成する全ての\nピースを取得する。
そして、証拠(甲5〜9、11)及び弁論の全趣旨によると、ビットトレントネッ
トワークで共有されていた本件複製ファイルが本件動画の複製物であること、原判決
別紙動画目録記載の各IPアドレス及びポート番号の組合せは、本件監視ソフトウェ\nアが、本件複製ファイルを共有しているピアのリストとしてトラッカーから取得した
ものであること、同目録記載の発信日時は、上記IPアドレス及びポート番号を割り
当てられていた各ピアが、本件監視ソフトウェアとの間で行ったハンドシェイクの通\n信において応答した日時であることがそれぞれ認められる。
そうすると、上記各ピアのユーザーは、その対応する各発信日時までに、本件動画
の複製物である本件複製ファイルのピースを、不特定の者の求めに応じて、これらの
者に直接受信させることを目的として送信し得るようにしたといえ、他のピアのユー
ザーと互いに関連し共同して、本件動画の複製物である本件複製ファイルを、不特定
の者の求めに応じて、これらの者に直接受信させることを目的として送信し得るよう
にしたといえる。これは、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動
公衆送信装置である各ピアの端末の公衆送信用記録媒体に本件複製ファイルを細分化
した情報である本件複製ファイルのピースを記録し(著作権法2条1項9号の5イ)、
又はこのような自動公衆送信用記憶媒体にビットトレントネットワーク以外の他の手
段によって取得した本件複製ファイルが記録されている自動公衆送信装置である各ピ
アの端末について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続を行った(同号ロ)
といえるから、本件動画につき控訴人が有する送信可能化権が侵害されたことが明ら\nかである。
(2) 被控訴人は、各ピアのユーザーが送信可能化権を侵害したことが明らかという\nには、当該ピアのユーザーのピース保持率が100%又はこれに近い状態に達してい
ることを要すると主張する。しかし、上記(1)のとおり、ビットトレントネットワーク
に参加した各ピアは、共有対象となったファイルの一部であるピースをそれぞれ保有
してこれを互いに送受信し、最終的には当該ファイルを構成する全てのピースを取得\nすることが可能な状態を作り出しているのであるから、各ピアのユーザーは、他のピ\nアのユーザーと互いに関連し共同して、当該ファイルを自動公衆送信し得るようにす
るものといえる。そして、ハンドシェイクの通信に応答したピアは、当該ファイルの
一部であるピースを保有してこれを自身の端末に記録し、他のピアの要求に応じてこ
れを送信する用意があることを示したものと認められるから、その保有するピースの
多寡にかかわらず、上記送信可能化行為を他のピアと共同して担ったものと評価でき\nる。被控訴人の主張は採用することができない。
・・・・
(1) 前記1(1)のとおり、原判決別紙動画目録記載のIPアドレス、ポート番号及び
発信日時により特定される通信は、各ピアが本件監視ソフトウェアとの間で行ったハ\nンドシェイクの通信において応答した通信であって、他のピアとの間で本件複製ファ
イルのピースを送受信し、又は本件複製ファイルを記録した端末をネットワークに接
続する通信そのものではない。このような通信に係る発信者情報(本件各発信者情報)
も、法5条1項の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に当たるかが問題となる。
(2) そこで検討すると、法5条1項は、開示を請求することができる発信者情報
を「当該権利の侵害に係る発信者情報」とやや幅を持たせたものとし、「当該権利の
侵害に係る発信者情報」のうちには、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害
関連通信に係るものとして総務省令で定めるもの。)を含むと規定しているところ、
特定発信者情報に対応する侵害関連通信は、侵害情報の記録又は入力に係る特定電気
通信ではない。上記の各規定の文理に照らすと、「当該権利の侵害に係る発信者情報」
は、必ずしも侵害情報の記録又は入力に係る特定電気通信に係る発信者情報に限られ
ないと解するのが合理的である。
また、法5条の趣旨は、特定電気通信による情報の流通には、これにより他人の権
利の侵害が容易に行われ、その高度の伝ぱ性ゆえに被害が際限なく拡大し、匿名で情
報の発信がされた場合には加害者の特定すらできず被害回復も困難になるという、他
の情報流通手段とは異なる特徴があることを踏まえ、特定電気通信による情報の流通
によって権利の侵害を受けた者が、情報の発信者のプライバシー、表現の自由、通信\nの秘密に配慮した厳格な要件の下で、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信
設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することがで
きるものとすることにより、加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図るこ\nとにあると解される(最高裁平成21年(受)第1049号同22年4月8日第一小
法廷判決・民集64巻3号676頁参照)。なお、令和3年法律第27号による改正
により、特定発信者情報の開示請求権が新たに創設されるとともに、その要件は、特
定発信者情報以外の発信者情報の開示請求権と比して加重されている。その趣旨は、
SNS等へのログイン時又はログアウト時の各通信に代表される侵害関連通信は、こ\nれに係る発信者情報の開示を認める必要性が認められる一方で、それ自体には権利侵
害性がなく、発信者のプライバシー及び表現の自由、通信の秘密の保護を図る必要性\nが高いことから、侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内において開示を認
めることにあると解される。
さらに、著作権法23条1項は、著作権者が専有する公衆送信を行う権利のうち、
自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含むと規定する。その趣旨は、著作権者\nにおいて、インターネット等のネットワーク上で行われる自動公衆送信の主体、時間、
内容等を逐一確認し、特定することが困難である実情に鑑み、自動公衆送信の前段階
というべき状態を捉えて送信可能化として定義し、権利行使を可能\とすることにある
と解される。
ビットトレントによるファイルの共有は、対象ファイルに対応したビットトレント
ネットワークを形成し、これに参加した各ピアが、細分化された対象ファイルのピー
スを互いに送受信して徐々に行われるから、その送受信に係る通信の数は膨大に及ぶ
ことが推認できる。しかるところ、ピースを現実に送受信した通信に係るものでなく
ては「権利の侵害に係る発信者情報」に当たらないとすると、ビットトレントネット
ワークにおいて著作物を無許諾で共有された著作権者が侵害の実情に即した権利行使
をするためには、ネットワークを逐一確認する多大な負担を強いられることとなり、
前記のとおり法5条が加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることとし\nた趣旨や、著作権法23条1項が自動公衆送信の前段階というべき送信可能化につき\n権利行使を可能とした趣旨にもとることになりかねない。\n
他方、ハンドシェイクの通信は、その通信に含まれる情報自体が権利侵害を構成す\nるものではないが、専ら特定のファイルを共有する目的で形成されたビットトレント
ネットワークに自ら参加したユーザーの端末がピアとなって、他のピアとの間で、自
らがピアとして稼働しピースを保有していることを確認、応答するための通信であり、
通常はその後にピースの送受信を伴うものである。そうすると、ハンドシェイクの通
信は、これが行われた日時までに、当該ピアのユーザーが特定のファイルの少なくと
も一部を送信可能化したことを示すものであって、送信可能\化に係る情報の送信と同
一人物によりされた蓋然性が認められる上、当該ファイルが他人の著作物の複製物で
あり権利者の許諾がないときは、ログイン時の通信に代表される侵害関連通信と比べ\nても、権利侵害行為との結びつきはより強いということができ、発信者のプライバシ
ー及び表現の自由、通信の秘密の保護を図る必要性を考慮しても、侵害情報そのもの\nの送信に係る特定電気通信に係る発信者情報と同等の要件によりその開示を認めるこ
とが許容されると解される。
以上によると、本件各発信者情報は、法5条1項にいう「当該権利の侵害に係る発
信者情報」に当たると解するのが相当である。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆令和5(ワ)70029
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
>> 発信者情報開示
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2023.09.25
令和4(ワ)9090 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年6月12日 東京地方裁判所
YouTube動画におけるテロップについて、著作物と認定され、約24万円の支払いを認めました。
(1) 前提事実(第 2 の 1)、証拠(甲 8〜10)及び弁論の全趣旨によれば、本件動
画は、動物等のイメージ画像等を繋ぎ合わせたスライドショー、BGM、本件テロッ
プ及びこれを朗読したナレーションによって構成されるところ、スライドショー及\nび BGM のみではストーリー性が乏しく、本件動画の内容を正しく把握することは
困難であると認められる。その意味で、本件テロップ及びこれを朗読したナレーシ
ョンは、その余の構成部分に比して、本件動画の中で重要な役割を担うものといえ\nる。また、このような役割を担う本件テロップの内容は、男性 2 人が群れを離れた
野生のライオンを保護し育てた後、野生動物の保護地区に戻したことや、後に男性
らの 1 名がこの保護地区を訪れた際の当該ライオンとの再会の模様等の一連の出来
事に関し、推察される各主体の心情等を交えて叙述したものである。表現方法につ\nいても、本件テロップは、動画視聴者の興味を引くことを意図してエピソード自体\nや表現の手法等を選択すると共に、構\成や分量等を工夫して作成されたものといえ
る。
したがって、本件テロップは、その作成者である原告の思想及び感情を創作的に
表現したものであり、言語の著作物と認められる。\n
(2) 被告は、本件テロップと同様の文章の構成により本件テロップと同じエピソ\
ードを紹介するインターネット上の記事は本件テロップの公開前から散見されるな
どとして、本件テロップの著作物性は認められない旨主張する。
証拠(乙 1〜4)によれば、本件テロップの公開前から、男性 2 人が野生のライオ
ンを育て、保護地区に戻したことや、後に男性が保護地区を訪れた際の当該ライオ
ンとの再会の模様等の一連の流れに関して、本件テロップと共通性を有する少なく
とも 4 つの記事がインターネット上で公開されていることが認められる。そのうち
の 1 つの内容は、おおむね別紙「既公開記事の内容」記載のとおりであり、本件テ
ロップとその公開前から存在する記事とでは、アイデアないし事実を共通にする部
分があると認められる。しかし、その具体的な表現を比較したとき、各主体の心情\nその他の表現の内容及び方法においてこれらは表\現を異にし、本件テロップにおい
ては、上記既存の記事には見られない創作性が発揮されているといってよい。した
がって、この点に関する被告の主張は採用できない。
2 争点 1-2(複製権、翻案権及び公衆送信権侵害の有無)
本件テロップと本件記事の各内容を比較すると、本件記事には、本件テロップと
完全に一致する表現が多数含まれる。他方、相違する部分は、句読点の有無や助詞\nの違い、文言の一部省略等の僅かな相違のほか、例えば、本件テロップには、「ドイ
ツ出身のCさんは幼い頃からずっと動物を大切に思ってきました。」とあるのに対
し、本件記事には、「この感動のストーリーは 2 人の人間から始まります。その 1 人
がCさん。Cさんはドイツ出身。幼い頃よりずっと動物を大切に思ってきました。」
とあるなどの相違部分が存在する。これらの相違部分は、表現の手法等に若干の違\nいが見られるものの、内容的には、本件テロップの表現を若干修正したり、要約又\nは省略したり、前後の表現を入れ替えるなどしているにとどまり、実質的にほぼ同\n一の内容を表現したものといえる。\n複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製する
ことをいうところ(著作権法 2 条 1 項 号)、著作物の再製とは、既存の著作物に
依拠し、これと同一のものを作成し、又は、具体的表現に修正、増減、変更等を加\nえても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表\現上の本質的な
特徴の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を\n直接感得できるものを作成する行為をいうものと解される。また、翻案とは、既存
の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体\n的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現するこ
とにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得でき\nる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成 11 年(受)第 922
号同 13 年 6 月 28 日第一小法廷判決・民集 5巻 4 号 837 頁参照)。
本件記事は、記事中に本件動画が埋め込まれていること(甲 4)や、上記のとおり、本件テロップと完全に一致する表現を多数含み、相違する部分も、句読点の有無等の僅かな形式的な相違や本件テロップの表\現の僅かな修正、要約、前後の入れ替え等にとどまり、実質的にほぼ同一の内容を表現したものであることに鑑みると、本件テロップに依拠したものと認められると共に、著作物である本件テロップの表\現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者がその特徴を直接感得できるものと認められる。したがって、被告が本件記事を被告サイト上に投稿する行為は、原告の本件テロップに係る複製権又は翻案権を侵害するものであると共に、本件記事を送信可能化するものとして公衆送信権を侵害するものと認められる。また、本件記事が本件テロップに依拠していることから、上記著作権侵害行為につき、被告には少なくとも過失が認められる。これに反する被告の主張は採用できない。以上より、原告は、被告に対し、著作権(複製権又は翻案権、公衆送信権)侵害の不法行為に基づき、損害賠償請求権を有することが認められる。\n
3 争点 1-3(原告が本件テロップの著作権を主張することの信義則違反の有無)
被告は、原告が第三者の著作権を侵害して作成した動画による収益が減少したと
して損賠賠償を請求し、また、本件動画全体としては請求が認められない可能性が\nあるため、本件テロップのみを対象として権利侵害を主張しているとして、原告の
請求が信義則に反する旨主張する。
しかし、そもそも、本件動画につき第三者の著作権を侵害して作成されたもので
あることを認めるに足りる的確な証拠はない。その点を措くとしても、本件テロッ
プは独立した表現物として把握し得るものであること、本件記事もそのような本件\nテロップに依拠して作成されたものとみられることに鑑みると、原告が本件テロッ
プの著作権侵害を主張することをもって信義則に反するということはできない。こ
の点に関する被告の主張は採用できない。
・・・
4 争点 2(原告の損害)
(1) 認定事実
前提事実、証拠(甲 14〜19(17 については枝番を含む。)、乙 11〜14)及び弁論
の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、令和 2 年 6 月 日に本件動画を投稿した。YouTube では動画の再生
回数等に応じて動画投稿者に収益が支払われるところ、上記投稿日から同年 月
日までの本件動画の再生回数は約 680 万 5000 回、推定収益は 309 万 6740 円で
あった。また、推定収益の推移は別紙「推定収益の推移データ」のとおりであり、
上記投稿日から同年 11 月 30 日までの推定収益は 379 万 4863 円であった。
イ 令和 2 年 7 月 27 日、被告は本件記事を投稿して公開したが、同年 9 月 30 日
まで閲覧者はおらず、その後、原告の申入れを受けて本件記事を削除した同年 11 月
までの本件記事の閲覧回数は 154 回であった。
ウ 作家等文芸を職業とする者の職能団体であり、著作権管理事業を行う日本文\n藝家協会は、その著作物使用料規程である本件規程により、著作物を書籍として複
製し、公衆に譲渡する場合の使用料につき、本体価格の 15%に発行部数を乗じた額
を上限として利用者と協会が協議して定める額としている。
エ 原告は、本件訴訟に先立ち、本件記事につき発信者情報開示請求訴訟を提起
して発信者情報の開示を受けたところ、その際、原告は、弁護士に訴訟追行を委任
し、弁護士費用 44 万円(消費税込)、実費 1 万 4194 円を支払った。
(2) 逸失利益について
ア 主位的主張について
上記認定のとおり、本件記事の閲覧回数は、同年 月 1 日以降本件記事が削除
されるまでの間の 154 回にとどまる。このことと、本件動画の再生回数及び推定収
益、とりわけ推定収益の推移の状況に鑑みると、このような本件記事の投稿と本件
動画の再生回数ないし収益の減少との間に因果関係を認めることはできない。した
がって、この点に関する原告の主張は採用できない。
イ 予備的主張について\n
原告は、本件記事により被告が得た収益の額ではなく、本件動画の経済的価値に
本件規程を参考にした仮想使用料率を乗じて、一回的な給付としての「著作権の行
使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法 114 条 3 項)を算出すべき
旨主張するものと理解される。他方、被告は、このような原告の主張を前提としつ
つ、本件記事により被告が得た収益の額を本件動画の経済的価値(ただし、その算
定対象期間は原告の主張と異なる。)に加算したものに仮想使用料率を乗じて「著作
権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算出すべき旨を主張する。そ
こで、本件においては、本件動画の経済的価値を基礎とし、これに仮想使用料率を
乗ずることによって、一回的な給付としての「著作権の行使につき受けるべき金銭
の額に相当する額」を算出することとする。
まず、本件動画の経済的価値は、本件記事の投稿期間とは直接の関わりがないと
思われることから、原告の主張のとおり、本件動画の投稿日から本件記事の削除日
までの収益額 379 万 4863 円をもって本件動画の経済的価値とするのが相当である。
他方、上記本件動画の経済的価値及び本件規程の内容を参酌すると共に、本件テロ
ップは、本件動画の中で重要な役割を担うものではあるものの、画像等と一体とな
って本件動画を構成するものであること、ここでの仮想使用料率は著作権侵害をし\nた者との関係で事後的に定められるものであることその他本件に現れた一切の事情
を考慮すれば、仮想使用料率については 3%程度とみるのが相当である。そうする
と、本件テロップに係る「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」(著作権法 114
条3項)は、12 万円をもって相当とすべきである。これに反する原告及び被告の主
張はいずれも採用できない。
(3) 発信者情報の取得に要した費用
ウェブサイトに匿名で投稿された記事が不法行為を構成し、被侵害者が損害賠償\n請求等の手段を取ろうとする場合、被侵害者は、侵害者である投稿者を特定する必
要がある。このための手段として、非侵害者には、特定電気通信役務提供者の損害
賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律により発信者情報の開示を請求
する権利が認められているものの、これを行使するためには、多くの場合、訴訟手
続等の法的手続を利用することが必要となる。その際、手続遂行のために、一定の
手続費用を要するほか、事案によっては弁護士費用を要することも当然あり得る。
そうすると、これらの発信者情報開示手続に要した費用は、当該不法行為による損
害賠償請求の遂行に必要な費用という意味で、不法行為との間で相当因果関係のあ
る損害となり得るといってよい。
本件では、上記認定のとおり、原告は、発信者情報開示請求訴訟に係る弁護士費
用 44 万円(消費税込)及び実費 1 万 4194 円の合計 4万 4194 円を支出した。発
信者情報開示手続の性質・内容等を考慮すると、このうち 万円をもって被告の
不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作物
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2023.02.17
令和4(ワ)10443 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年1月12日 東京地方裁判所
P-Pソフト「BitTorrent」をインストールしたコンピュータの発信者情報開示請求事件です。裁判所は、本件発信者によるHandshakeに係る情報は、\n「特定電気通信」に該当すると、開示を認めました。
ア 本件調査会社は、原告から指定されたコンテンツの品番を含むファイルを
トラッカーサイトで検索し、著作権侵害が疑われるファイルのハッシュ値
(データ〔ファイル〕を特定の関数で計算して得られる値のこと。ファイル
からハッシュ値は一意に定まるので、ファイルの同一性確認のために用いら
れる。)を取得し、本件検知システムに登録した。
イ 本件検知システムは、上記経緯により同システムの監視対象となった上記
ファイルのハッシュ値について、BitTorrentネットワーク上で監
視を行った。具体的には、本件検知システムは、トラッカーサーバーに対し、
上記ファイル(全部又は一部をいう。以下1において同じ。)のダウンロー
ドを要求し、当該ファイルをダウンロードできる(所持している)ピアのI
Pアドレス、ポート番号等のリストをトラッカーサーバーから受け取って、
本件検知システムのデータベースに記録した(別紙動画目録記載の「IPア
ドレス」及び「ポート番号」欄は、当該IPアドレス及びポート番号である。)。
そして、本件検知システムは、上記リストを受け取った後、同リストに載
っていたユーザーに接続をして、同ユーザーが応答することの確認(Han
dshake)を行っており、別紙動画目録記載の「発信時刻」欄の日時は、
当該Handshake完了時のものである。
もっとも、本件検知システムは、上記Handshakeの時点において、
上記ユーザーが保有している上記ファイルを実際にダウンロードしていな
いものの、上記時点において上記ユーザーから返信された上記ファイルのハ
ッシュ値によって、実際に上記ユーザーが上記ファイルを所持していること
の確認を行っている。そのため、本件検知システムは、上記時点において直
ちに上記ユーザーから上記ファイルのダウンロードができる状態にあった
ことになる。
ウ なお、BitTorrentにおいて、ファイルをダウンロードするよう
になったユーザーは、BitTorrentクライアントソフトを停止させ\nるまで、トラッカーサーバーに対し、当該ファイルが送信可能であることを\n継続的に通知し、他のユーザーからの要求があれば、当該ファイルを送信し
得る状態になっている。
(2) 権利侵害の明白性
前記前提事実記載のBitTorrentの仕組み及び上記認定事実記載
の本件検知システムの仕組み等によれば、本件発信者は、本件動画をその端末
にダウンロードして、本件動画を不特定多数の者からの求めに応じ自動的に送
信し得るようにした上、別紙動画目録記載のIPアドレス及びポート番号の割
当てを受けてインターネットに接続し、Handshakeの時点である別紙
動画目録記載の「発信時刻」欄記載の日時において、不特定の者に対し、Bi
tTorrentのネットワークを介して本件動画に係る送信可能化権が侵\n害されその状態が継続していることを通知したものと認めるのが相当である。
そして、当事者双方提出に係る証拠及び弁論の全趣旨によっても、侵害行為の
違法性を阻却する事由が存在することをうかがわせる事情を認めることはで
きない。
これらの事情を踏まえると、本件発信者は、Handshakeの時点にお
いて、不特定の者に対し、BitTorrentのネットワークを介して本件
動画に係る送信可能化権が侵害されその状態が継続していることを通知して\nいるのであるから、本件発信者によるHandshakeに係る情報は、プロ
バイダ責任制限法5条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に該当する
ものと解するのが相当である。また、本件発信者によるHandshakeに
係る情報は、上記のとおり、不特定の者において、本件動画に係る送信可能化\n権が侵害されその状態が継続していることを確認する上で、必要な電気通信の
送信であるといえるから、「特定電気通信」にも該当するものと解するのが相
当である。
(3) 被告の主張
ア 被告は、Handshakeは応答確認にすぎず、本件動画のアップロー
ド又はダウンロードではないから、Handshakeに係る情報は、送信
可能化権の侵害に係る発信者情報には当たらないと主張する。しかしながら、\n本件発信者が、Handshakeの時点において、不特定の者に対し、本
件動画に係る送信可能化権が侵害されその状態が継続していることを通知\nしていることは、上記において説示したとおりであり、当該事実関係を前提
とすれば、Handshakeに係る情報が「権利の侵害に係る発信者情報」
に該当するものと認めるのが相当である。したがって、被告の主張は、採用
することができない。
また、被告は、本件発信者は、Handshake時までに、本件動画の
ファイルのピースさえ保有していない可能性があると主張する。しかしなが\nら、前記認定事実によれば、確かに、本件検知システムは、Handsha
keの時点において、ユーザーが保有しているファイルを実際にダウンロー
ドしていないものの、本件検知システムは、上記時点において上記ユーザー
から返信された上記ファイルのハッシュ値によって、実際に上記ユーザーが
上記ファイルを所持していることの確認を行っていることが認められる。そ
うすると、本件発信者は、Handshakeの時点までに、少なくとも当
該ファイルのピースを所持しているものと推認するのが相当であり、これを
覆すに足りる証拠はない。したがって、被告の主張は採用することができな
い。
イ その他に、被告提出に係る準備書面を改めて検討しても、上記認定に係る
本件検知システムの仕組み等を踏まえると、被告の主張は、上記判断を左右
するに至らない。したがって、被告の主張は、いずれも採用することができ
ない。
(4) 弁論の全趣旨によれば、原告は、本件発信者に対し、損害賠償請求を予定し\nていることが認められることからすると、原告には本件発信者情報の開示を受
けるべき正当な理由があるものといえる。
(5) したがって、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、
本件発信者情報の開示を求めることができる。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 発信者情報開示
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2022.10.20
令和3(ワ)30051 損害賠償請求事件 その他 民事訴訟 令和4年9月28日 東京地方裁判所
放送局における番組中のナレーションが原告ブログに依拠しているかについて、著作物性を立証していないとして、著作者人格権による損害賠償請求が棄却されました。興味深いのは、被告が、既存の文章をほぼ転載したものであることを謝罪する旨の文章をウェブサイトにて掲載している点です。
原告は、被告によって、原告文章を無断転載して制作した本件番組が放送
されたことにより、原告の名誉が毀損される可能性が生じて、原告の平穏な\n日常を阻害され、原告が、これに対応するために金銭的及び時間的な負担を
負い、精神的苦痛を被り、人格権が侵害されたとして、不法行為に基づく損
害賠償を請求するものと理解することができる。そこで、この理解を前提に、
被告による本件番組の放送が原告の「権利又は法律上保護される利益を侵害
した」(民法709条)といえるか否かについて検討する。
前記前提事実(2)及び(3)のとおり、被告が原告文章に依拠して本件ナレー
ション等を作成した結果、本件ナレーション等は、原告文章と類似しており、
原告文章中の「以下省略」といった比較的特徴のある表現についてもほぼ同\nじ内容となっている。そして、被告が、本件番組において本件ナレーション
等を流すことについて、原告から事前の了解を得ていたことや、本件番組を
放送するに当たり、原告文章が掲載されている原告ウェブサイトを参照した
旨を表示したことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、被告の上記行\n為は、公共の放送事業者として不適切なものであったといわざるを得ない。
また、原告が主張するように、原告ウェブサイト中の文章は、分かりやす
く面白いものとなるように配慮され、独自性を有していると評価し得ること
や、被告が放送法で定められた公共の放送事業者であることからすると、本
件番組を視聴した者が、原告文章を見たとき、被告が無断転載をするはずが
ないと考えて、むしろ原告ウェブサイトの方が無断転載をしていると疑う可
能性を否定することはできない。しかし、前記前提事実(4)のとおり、被告は、本件番組が放送された4日後には、本件番組に係るウェブサイトにおいて、本件ナレーション等が既存の文章をほぼ転載したものであることを謝罪する旨の文章を掲載しており、こ
れは、上記のような誤解が生じることを防止し得る措置であるといえる。そ
して、本件全証拠によっても、実際に、上記のような誤解が広まったとは認
められない。しかも、名誉毀損が成立するためには、人の社会的評価を低下
させる事実を摘示することが必要であるところ、将棋の対局マナーについて
述べた本件ナレーション等において、原告の社会的評価を低下させる事実が
摘示されたとは認められない。そうすると、原告の主張する名誉毀損の可能\n性については、いまだ抽象的なものにとどまるものといわざるを得ない。
また、原告の主張に係る平穏に日常生活を送る利益について、上記のとお
り、原告の懸念する誤解が実際に広まったとは認められず、原告の名誉が毀
損される可能性も抽象的なものに留まることに照らせば、被告に対する損害\n賠償請求を可能とする程度に、原告の平穏な日常生活が害されたということ\nはできず、不法行為の成立要件である「権利又は法律上保護される利益」の
「侵害」を認めることはできないというべきである。
なお、被告が原告文章と類似する本件ナレーション等を含む本件番組を放
送したことが原告の権利を侵害するかは、本来、原告文章に著作物性が認め
られ、原告文章に係る原告の著作権又は著作者人格権が侵害されたと認めら
れるかという観点から検討すべきであるということができる。しかし、原告
は、本件訴訟において、著作権及び著作者人格権が侵害されたことを主張し
ないとしていることから、その要件についての具体的な主張立証がされてい
ないため、著作権侵害及び著作者人格権侵害の事実を認めることはできない。
(2) 以上によれば、本件番組の放送により、原告の人格権が侵害されたとは認
められず、また、原告文章に係る原告のそのほかの権利が侵害されたと認め
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作物
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 著作権その他
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2022.01.11
令和2(ワ)1573 債務不存在確認請求事件 著作権 民事訴訟 令和3年8月27日 東京地方裁判所
ファイル共有ソフトの使用者に対して、公衆送信権侵害が認められました。\n
ア 以上のとおり,原告X1,原告X2及び原告X3は本件ファイル1を, 原
告X4,原告X6,原告X7及び原告X8は本件ファイル2を,原告X9及
び原告X10は本件ファイル3を,それぞれ,BitTorrentを通じ
てダウンロードしたものと認められる(以下,ダウンロードを行ったと認め
られる上記各原告を「原告X1ら」という。)。
そして,前記前提事実2(3)のとおり,BitTorrentは,リーチャ
ーが,目的のファイル全体のダウンロードが完了する前であっても,既に所
持しているファイルの一部(ピース)を,他のリーチャーと共有するために
アップロード可能な状態に置く仕組みとなっていることに照らすと,原告X\n1らは,ダウンロードしたファイルを同時にアップロード可能な状態に置い\nたものと認められる。
イ 前記前提事実のとおり,BitTorrentは,特定のファイルをピー
スに細分化し,これをBitTorrentネットワーク上のユーザー間で
相互に共有及び授受することを通じ,分割された全てのファイル(ピース)
をダウンロードし,完全なファイルに復元して,当該ファイルを取得するこ
とを可能にする仕組みであるということができる。\n これを本件に即していうと,原告X1らが個々の送受信によりダウンロー
ドし又はアップロード可能な状態に置いたのは本件著作物の動画ファイル\nの一部(ピース)であったとしても,BitTorrentに参加する他の
ユーザーからその余のピースをダウンロードすることにより完全なファイ
ルを取得し,また,自己がアップロード可能な状態に置いた動画ファイルの\n一部(ピース)と,他のユーザーがアップロード可能な状態に置いたその余\nのピースとが相まって,原告X1ら以外のユーザーが完全なファイルをダウ
ンロードすることにより取得することを可能にしたものということができ\nる。そして,原告X1らは,BitTorrentを利用するに際し,その
仕組みを当然認識・理解して,これを利用したものと認めるのが相当である。
以上によれば,原告X1らは,BitTorrentの本質的な特徴,す
なわち動画ファイルを分割したピースをユーザー間で共有し,これをインタ
ーネットを通じて相互にアップロード可能な状態に置くことにより,ネット\nワークを通じて一体的かつ継続的に完全なファイルを取得することが可能\nになることを十分に理解した上で,これを利用し,他のユーザーと共同して,\n本件著作物の完全なファイルを送信可能化したと評価することができる。\n したがって,原告X1らは,いずれも,他のユーザーとの共同不法行為に
より,本件著作物に係る被告の送信可能化権を侵害したものと認められる。\nウ(ア) これに対し,原告らは,アップロード可能な状態に置いたファイルが全\n体のごく一部であり,個々のピースは著作物として価値があるものではな
いから,原告らの行為は著作権侵害に当たらないと主張するが,上記イで
判示したとおり,原告X1らによる行為は,他のユーザーと共同して本件
著作物を送信可能化したものと評価できるから,原告らの主張は採用する\nことができない。
(イ) 原告らは,ファイルを送信する側は,自らがファイルをアップロード可
能な状態に置いていることを認識していないことも多いと指摘するが,原\n告X1らは,BitTorrentを利用するに当たって,前記前提事実
(3)イ記載のような手続を踏み,各種ファイルやソフトウェアを入手して\nいる以上,BitTorrentの基本的な仕組みを理解していると推認
されるのであって,とりわけ,BitTorrentにおいて,ユーザー
がダウンロードしたファイル(ピース)について同時にアップロード可能\nな状態に置かれることは,その特徴的な点であるから,これを利用した原
告X1らがこの点を認識していなかったとは考え難い。
(ウ) 原告らは,送信可能化権侵害の主張に関し,ユーザー間における本件著\n作物に係るファイルの一部(ピース)の授受を中継した可能性やダウンロ\nードを開始した直後に何らかの事情でダウンロードが停止した可能性が\nあり,原告らが本件著作物を送信可能な状態に置いたと評価することはで\nきないと主張する。
しかし,BitTorrentにおいて,ユーザーがダウンロードした
ファイル(ピース)について同時にアップロード可能な状態に置かれるこ\nとは,前記判示のとおりであり,原告X1らがこれを中継したにすぎない
ということはできず,また,本件各ファイルのダウンロードの開始直後に
ダウンロードが停止したことをうかがわせる証拠もない。
(エ) 原告らは,シーダーとして本件著作物の動画ファイルの配布を行ったも
のではなく,原告X6や原告X10の共有比に照らしても,被告の主張す
るダウンロード総数の全部や主要な部分を惹起したということはできな
いので,民法719条1項前段を適用する前提を欠くと主張する。
しかしながら,そもそも,民法719条1項前段は,個々の行為者が結
果の一部しか惹起していない場合であっても,個々の行為を全体としてみ
た場合に一つの加害行為が存在していると評価される場合に,個々の行為
者につき結果の全部につき賠償責任を負わせる規定であるから,仮に個々
の原告がアップロード可能な状態に置いたデータの量が少なく,結果に対\nする寄与が少なかったとしても,そのことは,原告X1らの共同不法行為
責任を否定する事情にはならないというべきである。
エ 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告X1らが本件各フ
ァイルをアップロード可能な状態に置いた行為は,本件著作物に係る被告の\n送信可能化権を侵害することになる。\n
2 争点2−1(共同不法行為に基づく損害の範囲)について
(1) 被告は,本件著作物の侵害は,本件各ファイルの最初のアップロード以降継
続しており,社会的にも実質的にも密接な関連を持つ一体の行為であることな
どを理由として,原告らがBitTorrentを利用する以前に生じた損害
も含め,令和2年4月2日当時のダウンロード回数について,原告らは賠償義
務を負う旨主張する。しかしながら,民法719条1項前段に基づき共同不法行為責任を負う場合であっても,自らが本件各ファイルをダウンロードし又はアップロード可能な\n状態に置く前に他の参加者が行い,既に損害が発生しているダウンロード行為
についてまで責任を負うと解すべき根拠は存在しないから,被告の上記主張は
採用することはできない。
また,被告は,BitTorrentにアップロードされたファイルは,サ
ーバからの削除という概念がないため,永遠に違法なダウンロードが可能であ\nるとして,現在に至るまで損害は拡大している旨主張する。
しかし,前記前提事実(3)ウのとおり,BitTorrentは,ソフトウェ\nアを起動していなければアップロードは行われないほか,BitTorren
t上や端末の記録媒体からファイルを削除すれば,以後,当該ファイルがアッ
プロードされることはないものと認められる。
そうすると,原告X1らがBitTorrentを通じて自ら本件各ファイ
ルを他のユーザーに送信することができる間に限り,不法行為が継続している
と解すべきであり,その間に行われた本件各ファイルのダウンロードにより生
じた損害については,原告X1らの送信可能化権侵害と相当因果関係のある損\n害に当たるというべきである。他方,端末の記録媒体から本件各ファイルを削
除するなどして,BitTorrentを通じて本件各ファイルの送受信がで
きなくなった場合には,原告X1らがそれ以降に行われた本件各ファイルのダ
ウンロード行為について責任を負うことはないというべきである。
(2) アップロードの始期について
ア 以上を前提に検討するに,証拠(甲6)によれば,原告X6については,
遅くとも平成30年6月4日までには本件ファイル2をアップロード可能\nな状態に置いていたことが認められる。
イ 原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X7,原告X8,原告X
9及び原告X10については,BitTorrentを通じて本件各ファイ
ルのダウンロードを開始した時期は明らかではないものの,証拠(乙11)に
よれば,遅くとも,それぞれ次の各年月日において本件各ファイルをアップ
ロード可能な状態に置いていたことが認められる。\n
(ア) 原告X1 平成30年6月12日
(イ) 原告X2 平成30年6月4日
(ウ) 原告X3 平成30年6月2日
(エ) 原告X4 平成30年6月4日
(オ) 原告X7 平成30年6月12日
(カ) 原告X8 平成30年6月13日
(キ) 原告X9 平成30年6月2日
(ク) 原告X10 平成30年6月9日
(3) アップロードの終期について
ア 乙14及び弁論の全趣旨によれば,原告X1らは,それぞれ,別紙「損害
額一覧表」の「終期」欄記載の各年月日に原告ら代理人に相談をしたことが\n認められるところ,同原告らは既にプロバイダ各社からの意見照会を受け,
著作権者から損害賠償請求を受ける可能性があることを認識していた上,上\n記相談の際に,原告ら代理人からBitTorrentの利用を直ちに停止
すべき旨の助言を受けたものと推認することができるから,同原告らは,そ
れぞれ,遅くとも同日にはBitTorrentの利用を停止し,もって,
本件各ファイルにつきアップロード可能な状態を終了したものと認めるの\nが相当である。
イ これに対し,原告らは,プロバイダ各社からの意見照会を受けた時点で,
直感的にBitTorrentの利用を停止した旨主張するが,プロバイダ
各社から意見照会を受けたからといって,直ちにBitTorrentの利
用停止という行動に及ぶとは限らず,実際のところ,原告X6は,平成30
年10月19日に受領したものの,少なくとも同年11月頃までBitTo
rrentソフトウェアを端末にインストールしていたことがうかがわれ\nる(甲6)。そうすると,プロバイダ各社からの意見照会を受けた時点でB
itTorrentの利用を停止したと認めることはできない。
ウ 以上によれば,原告X1らは,それぞれ,別紙「損害額一覧表」の「期間」\n欄記載の期間中に他のユーザーが本件各ファイルをダウンロードしたこと
により生じた損害の限度で,賠償義務を負うことになる。
(4) ダウンロード数
ア 本件全証拠によっても,上記各期間中に本件各ファイルがダウンロードさ
れた正確な回数は明らかではない。他方で,証拠(乙2〜4,8〜10)に
よれば,令和元年10月1日から令和3年5月18日までの595日間にお
いて,本件ファイル1については501,本件ファイル2については232,
本件ファイル3については910,それぞれダウンロード数が増加している
ことが認められるところ,各原告につき,同期間の本件各ファイルのダウン
ロード数の増加率に,前記(2)・(3)において認定したダウンロードの始期か
ら終期までの日数(別紙「損害額一覧表」の「日数」欄記載のとおり)を乗\nじる方法によりダウンロード数を算定するのが相当である。この計算方法に基づき算定されたダウンロード数は,別紙「損害額一覧表」の「期間中のダウンロード数」欄記載のとおりである。\n
なお,原告らは,乙2〜4記載のコンプリート数(ダウンロード数)と甲
10記載のコンプリート数が大幅に異なることを根拠に,乙2〜4記載のコ
ンプリート数に依拠することは相当ではないと主張するが,コンプリート数
が一致しないのは,参照するトラッカーサーバーが異なることが原因である
と考えられ,上記乙2〜4のコンプリート数に特に不自然・不合理な点はな
い以上,上記各証拠に記載されたコンプリート数に基づいてダウンロード数
を計算することが相当である。
(5) 基礎とすべき販売価格
ア 原告X1らが本件各ファイルをBitTorrentにアップロード可
能な状態に置いたことにより,BitTorrentのユーザーにおいて,\n本件著作物を購入することなく,無料でダウンロードすることが可能となっ\nたことが認められる。これにより,被告は,本件各ファイルが1回ダウンロ
ードされるごとに,本件著作物を1回ダウンロード・ストリーミング販売す
る機会を失ったということができるから,本件著作物ダウンロード及びスト
リーミング形式の販売価格(通常版980円,HD版1270円)を基礎に
損害を算定するのが相当である。
そして,被告は,DMMのウェブサイトにおいて本件著作物のダウンロー
ド・ストリーミング販売を行っているところ,被告の売上げは上記の販売価
格の38%であると認められるので(弁論の全趣旨),本件各ファイルが1回
ダウンロードされる都度,被告は,通常版につき372円(=980×0.
38),HD版につき482円(=1270×0.38)の損害を被ったも
のということができる。
イ 本件ファイル3は通常版の動画ファイルのピースであるのに対し,本件フ
ァイル1及び2はHD版の動画ファイルのピースであることが認められる
ので(弁論の全趣旨),別紙「損害額一覧表」の「価格」欄記載のとおり,\n原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X6,原告X7及び原告X
8については482円,原告X9及び原告X10については372円を基礎
として,損害額を計算することが相当である。
ウ 本件各ファイルをダウンロードしたユーザーの中には有料であれば本件
著作物を購入しなかったものも存在するという原告らの指摘や,BitTo
rrentのユーザーと本件著作物の需要者等が異なるという原告らの指
摘も,前記認定を左右するものということはできない。
(6) 以上によれば,原告X1らが被告に対して負うべき損害賠償の額は,それぞ
れ,別紙「損害額一覧表」の「損害額」欄記載のとおりとなる(なお,同別紙\n「5)期間中のダウンロード数」は計算結果を小数第2位まで表示したものであ\nり,「損害額」欄は小数第1位で切り捨てたものである。)。
3 争点2−2(減免責の可否)について
原告らは,原告らにおいて複製物を作成しようという意思が希薄であり,客観
的にも本件著作物の流通に軽微な寄与をしたにすぎないことや,原告らとユーザ
ーとの間の主観的・経済的な結び付きが存在しないことからすれば,関連共同性
は微弱であるとして,損害額につき大幅な減免責が認められるべきである旨主張
するが,原告らの指摘するような事情をもって,前記認定の損害額を減免責すべ
き事情に当たるということはできない。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
>> 著作権その他
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2020.03.25
令和1(ワ)19689 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 令和2年2月25日 東京地方裁判所
著作権侵害について発信者情報開示請求が認められませんでした。
(1) 争点2−1(本件発信者情報1は法4条1項1号の「当該権利の侵害に係
る発信者情報」に該当するか)について
原告は,本件投稿動画が投稿されたことにより原告動画に係る原告の公衆
送信権又は送信可能化権が侵害されたと主張しているところ,本件発信者情\n報1は,本件投稿行為から約1年8か月が経過した,平成31年4月28日
午後0時00分34秒(協定世界時)に本件サイトにログインした者の情報
であり,このログイン時に本件投稿行為が行われたものではないから,法4
条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当しないことは明ら
かである。
この点について,原告は,最終ログイン者が本件投稿動画の投稿者である
可能性が高いと主張するが,同人が,本件投稿動画が投稿された本件サイト\nに,ユーザ名とパスワードを用いてログインした者であるとしても,本件投
稿動画を投稿した者であると直ちに認定することはできず,本件投稿行為か
ら同人のログインまで約1年8か月もの期間が経過していることも考慮すれ
ば,同人と本件投稿動画を投稿した者が同一人物ではない可能性が相当程度\n残っており,その他,本件全証拠を精査しても,最終ログイン者が本件投稿
動画の投稿者であるとは認め難いというほかない。
また,原告は,仮に最終ログイン者が本件投稿動画を投稿した者ではない
としても,投稿した者と密接に関連する者であり,省令が「発信者その他侵
害情報の送信に係る者」の情報も発信者情報に該当することを規定している
ことからすれば,本件発信者情報1は開示の対象になると主張する。しかし,
本件において,最終ログイン者と本件投稿動画の投稿者がどのような関係に
あるのかを的確に認めるに足る証拠はなく,また,法4条1項1号の「当該
権利の侵害に係る発信者情報」との文言,及び省令の「発信者その他侵害情
報の送信に係る者」という文言からは,その文言内容や規定振りに照らして,
本件投稿行為を行った者以外の者である最終ログイン者の情報が,原告が指
摘するような理由によって直ちに,開示の対象となる発信者情報に当たると
いうことはできないというべきである。
以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができず,本件発信者
情報1は,法4条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当し
ない。
(2) 争点2−2(本件発信者情報2又は同3は法4条1項1号の「当該権利の
侵害に係る発信者情報」に該当するか)について
前記第2の1の前提事実によれば,本件発信者情報2及び同3は,平成3
1年4月28日午後00時00分34秒(協定世界時・最終ログイン時)に
本件サイトにログインがされた際の割当てに係るIPアドレスを,約1年8
か月前である本件投稿行為が行われた日時頃に割り当てられていた者に関す
る情報である。
そして,原告は,このような本件発信者情報2又は同3に関し,本件投稿
行為が行われた日時頃に上記IPアドレスを割り当てられていた者は,本件
投稿行為をした者である可能性が高いものであるから,同人の情報に係る本\n件発信者情報2又は同3は,法4条1項1号の発信者情報に該当する旨主張
する。
しかし,前記(1)で説示したとおり,本件投稿行為から最終ログイン時まで
は約1年8か月の期間があることなどを考慮すれば,最終ログイン者が本件
投稿動画の投稿者であると認め難いというほかなく,ひいては,最終ログイ
ン時から約1年8か月も前である本件投稿行為が行われた日時頃に,本件サ
イトへの最終ログインの際の割当てに係るIPアドレスを割り当てられてい
た者が,本件投稿行為を行った者であるとも認め難いというほかない。
以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができず,本件発信者
情報2及び同3は,いずれも法4条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信
者情報」に該当しない。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 発信者情報開示
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2020.02. 6
令和1(ワ)60 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年11月18日 大阪地方裁判所
漫画を違法アップロードしていた個人に対して、連帯して約1.6億円の損害賠償が認められました。裁判所は「電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,配信プラットフォームの違いに応じた代表\的な複数の事例の中で,最も低いもので45%である」と認定しました。編集著作者としての講談社が原告です。一部の被告は欠席裁判でした。
証拠(甲2,13)及び弁論の全趣旨によれば,原告が原告各雑誌を販売してい
ること,その本体価格は別紙著作物目録の「本体価格(円)」欄にそれぞれ記載の
とおりであることが認められる。
また,証拠(甲25の1〜25の4)によれば,平成27年〜平成30年にそれ
ぞれ発行された調査報告書には,電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,\n配信プラットフォームの違いに応じた代表的な複数の事例の中で,最も低いもので\n45%であることが認められる。本件各違法アップロード行為の対象となった原告
各雑誌に係る販売利益率がこの割合を下回ることをうかがわせる事情はないから,
これが45%であるものとして算定することには十分な合理性がある。\n
(ウ) 逸失利益額
各雑誌に係るファイルごとのダウンロード数並びに雑誌ごとの本体価格及び販売
利益率を乗じると,1億5032万8192円となる。他方,被告P3は,「販売
することができないとする事情」(著作権法114条1項ただし書)について,何
ら主張立証していない。したがって,本件各違法アップロード行為による原告の逸
失利益額は,同額であると認められる。
イ 弁護士費用相当損害額
原告の逸失利益額(上記ア)その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告
らの本件各違法アップロード行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害額は,
1503万2819円と認めるのが相当である。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
>> 著作権その他
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2016.02.21
平成27(ワ)21233 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 平成28年1月29日 東京地方裁判所
著作権侵害を根拠に発信者情報開示が認められました。
このように,翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物とを対比した場合に同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であるところ,「創作的」に表\現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の個性が何らかの形で表れていれば足りるというべきである。そして,個性の表\れが認められるか否かについては,表現の選択の幅がある中で選択された表\現であるか否かを前提として,当該著作物における用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しの有無等の当該著作物の表\現形式,当該著作物が表現しようとする内容・目的に照らし,それに伴う表\現上の制約の有無や程度,当該表現方法が,同様の内容・目的を記述するため一般的に又は日常的に用いられる表\現であるか否か等の諸事情を総合して判断するのが相当である。
・・・
(3) また,本件記事2は,これまで台湾における「五術」に関わり,その際に不快な思いもしたものの,新たな試験ができたことで時代が変わり始めたなどと表現した文章であって,一つの文(文字数にして143文字)からなるものである。その表\現においては,用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しなどにおいて,一見して作者の個性が表\れていることは明らかである。これに対し,本件情報14ないし17は三つの文からなる文章であるが,このうち第1文は,やはり,台湾における「五術」に関わり,その際にあきれたこともあったものの,新たな制度ができたことで時代が変わったなどと表現した文章であって,文字数にして123文字からなるものであり,具体的表\現についてみても,本件情報14ないし17の第1文の表現は本件記事2の表\現と相当程度一致しており,その違いは,本件情報14及び15では31文字,本件情報16及び17では32文字でしかなく(別紙対比表2参照),「台湾における五術」,「江湖派理論」,「宗教による術数を利用した」「金儲けを目撃する度に」など,用語の選択,全体の構\成,文字の
配列,特徴的な言い回しにおいて酷似している。そして,その相違部分の内容をみても,本件記事2のうち「五術」の「学術発表にかかわって」という点を,本件情報14ないし17においては「五術」の「詐欺\発表にかかわって」に,「とても不愉快な文化の冒涜・歪曲」という点を「とても愉快な文化の笑い話・小話」に,「胸くそが悪かったのですが」という点を「呆れたのですが」に,「国家規模での認定試験」という点を「国家機関での検閲制度」に置き換えているにすぎない。\nしたがって,本件情報14ないし17は,本件記事2に依拠したうえで,同記事の内容を批判するか揶揄することを意図して上記異なる表現を用いたものといえるのであって,仮に上記相違部分について作成者の何らかの個性が表\れていて創作性が認められるとしても,他に異なる表現があり得るにもかかわらず,本件記事2と同一性を有する表\現が一定以上の分量にわたるものであって,本件記事2の表現の本質的な特徴を直接感得することができるものであるから,翻案権侵害に当たることが明らかであるというべきである。
(4) 以上のとおり,本件情報1ないし17は原告の翻案権を侵害することが明らかである。
また,そうである以上,本件情報1ないし17を本件ウェブサイトに発信する行為は,原告の公衆送信権を侵害するものであることも明らかというべきである。
◆判決本文
◆こちらが対象の表現です。
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
>> 翻案
>> 発信者情報開示
>> ピックアップ対象
▲ go to TOP
2014.07. 4
平成26(ワ)3570 著作権 民事訴訟 平成26年06月25日 東京地方裁判所
PtoPソフト(Gnutella互換ソ\フト)による著作権侵害についてレコード会社が、プロバイダに対して、発信者情報の開示を求めました。裁判所はこれを認めました。
被告は,無関係の第三者が契約者のIPアドレスや端末を不正に利用した可能性や,契約者の端末が暴\露ウィルスに感染した場合など,契約者の意思によらず送信可能になった可能\性もあるから,上記IPアドレスの割当てを受けた契約者がプロバイダ責任制限法2条4号にいう「発信者」に該当するとは限らない旨主張するが,被告が主張するような事情は飽くまで一般的抽象的な可能性を述べるものにすぎず,本件全証拠によっても,これら不正利用や暴\露ウイルスへの感染等を疑わせる具体的な事情は認められない。そして,前記1(4)エのとおり,被告から「219.108.203.208」のIPアドレスの割当てを受けた者により,それぞれインターネットに接続され,Gnutella互換ソフトウェアによって,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にされ,本件システムにより本件ファイル1及び2がダウンロードされたものであるから,上記IPアドレスを使用してインターネットに接続する権限を有していた契約者を「侵害情報の発信者」であると推認するのが合理的であり,契約者のIPアドレス等の不正利用や暴\露ウィルスへの可能性などの一般的抽象的可能\性の存在が,上記認定の妨げになるものとは認められないというべきである。(4) 以上の検討によれば,本件利用者1及び2は,原告レコード1及び2の複製物である本件ファイル1及び2をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し,Gnutella互換ソフトウェアにより,本件ファイル1及び2をインターネットに接続している不特定の他の同ソ\フトウェア利用者(公衆)からの求めに応じて,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にしたことが認められるから,本件利用者1及び2の上記行為は,原告らが原告レコード1及び2について有する送信可能化権を侵害したことが明らかであると認められる。そして,原告らは,原告ら各自が原告レコード1及び2について有する送信可能\化権に基づき,本件利用者1及び2に対して損害賠償請求及び差止請求を行う必要があるところ,本件利用者1及び2の氏名・住所等は原告らに不明であるため,上記請求を行うことが実際上できない状態にあることが認められる。〔甲1の1,2,甲4,5〕したがって,原告らには,被告から本件利用者1及び2に係る発信者情報(氏名,住所及び電子メールアドレス)の開示を受けるべき正当な理由がある。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 発信者情報開示
▲ go to TOP
2014.04. 1
平成21(ワ)16019 著作権 民事訴訟 平成26年03月14日 東京地方裁判所
データベースの著作物について、創作性が認められ、公衆送信権侵害、複製権侵害が認められました。判決文が260頁をこえてます。損害額も1億円を超えてます。
このように,データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうところ,前記第2,1の前提事実及び前記1で認定した事実によれば,原告CDDBは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能\を持ついわゆるリレーショナル・データベースである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるデータベースであるから,情報の選択又は体系的な構\成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。上記のような観点も踏まえ,原告CDDBのようなリレーショナル・データベースについて情報の選択に創作性があるというためには,データベースの主題,用途やデータベースの提供対象等を考慮して決定された一定の収集方針に基づき収集された情報の中から,更に一定の選定基準に基づき情報を選定することが必要であり,また体系的構\成に創作性があるというためには,収集,選定した情報を整理統合するために,情報の項目,構造,形式等を決定して様式を作成し,分類の体系を決定するなどのデータベースの体系の設定が行われることが必要であると解される。ただし,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構\成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表\れていることをもって足りるものと解される。
(2) 次に,著作物の複製ないし翻案については,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうとされているところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないというべきである。データベースについては,情報の選択又は体系的な構\成によって創作性を有するものは,著作物として保護されるものであるところ(著作権法12条の2),上記のとおり,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表\れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものあるが,データベースの著作物として保護されるのはあくまでも,具体的なデータベースに表\現として表れた情報の選択や体系的構\成であって,具体的な表現としての情報の選択や体系的構\成と離れた情報の選択の方針や体系的構成の方針それ自体は保護の対象とはならないというべきである。\n
・・・
前記認定のとおり,原告CDDBは,それまで存しなかった団体旅行の行程検索・行程表作成のため,顧客である旅行業者等からのヒアリングや寄せられた要望等に基づき,出発地,到着地,交通手段,経由地である観光施設,宿泊施設をデータベース化してこれをコンピュータで効率よく検索できるようにするためのデータベースであるところ,上記被告CDDB(当初版・2006年版)と共通するテーブルに関してみると,原告CDDBの「01市区町村テーブル」,「32駅テーブル」,「20ホテル・施設テーブル」,「21観光施設テーブル」,「09地点名テーブル」,「11接続テーブル」及び「10道路テーブル」により,出発地,経由地,目的地に面した道路に関するデータの検索を可能\にし,次に「09地点名テーブル」,「10道路テーブル」,「11接続テーブル」,「12禁止乗換テーブル」,「14区間料金テーブル」及び「15首都高速料金テーブル」により,道路を利用した移動に関する経路探索・料金の算出に必要なデータの検索を可能にしていること,また,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」,「22観光設備備考テーブル」,「05緯度経度テーブル」,「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」及び「08URL分類テーブル」により,ホテル・旅館,観光施設に関する情報を検索することを可能\にしていること,そして,「01市区町村テーブル」及び「02地区・県名テーブル」は,道路と地図を関連付ける情報として,地図から検索をするときに用いられていること,「01市区町村テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」及び「32駅テーブル」には施設等の近辺の道路地点の情報が代表道路地区コードや代表\道路地点番号として格納されており,当該市区町村内にあるこれらの施設や駅などを選ぶことを通じて,「09地点名テーブル」の必要な道路地点を選ぶことができること,観光施設も「21観光施設テーブル」から選択し,絞り込みは,「02地区・県名テーブル」,「01市区町村テーブル」から行うことができること,観光施設の名称は「21観光施設テーブル」に,検索結果の観光施設について,当該観光施設に関する様々の情報は,「22観光施設備考テーブル」に格納されており,観光施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」から参照可能であり,最終的に行程に入れるかどうかを判断することができること,が認められる。また,宿泊施設については,「20ホテル・旅館テーブル」から選択し,地区は「02地区・県名テーブル」,都道府県も同じく「02地区・県名テーブル」,市区町村は「01市区町村テーブル」,地図上の範囲設定は,地図ソ\フトと「05緯度経度テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」により,宿泊種別は「20ホテル・旅館テーブル」,名称は「20ホテル・旅館テーブル」,検索結果の宿泊施設については当該宿泊施設に関する様々な情報,すなわち,和室,洋室の客室数,収容人員,料金,付帯施設,駐車場などが「20ホテル・旅館テーブル」に格納されていて,当該宿泊施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」が対応し,これらを参照して,ユーザーである旅行会社ないしその顧客の判断で行程等を決めることができることが認められる。以上のとおり,これら共通するテーブルについては,いずれも各テーブルを構成するフィールドにつき,原告CDDBと,被告CDDB(当初版・2006年版)とでほとんどが共通し,リレーションのとり方もほぼ共通するものである。そして,両者で共通するこれらの体系的構\成は,原告CDDBの制作者において,それまでのデータベースにはなかった設計思想に基づき構成した原告CDDBの創作活動の成果であり,その共通する部分のみでデータベースとして機能\し得る膨大な規模の情報分類体系であると認められ,データベースとして制作者の個性が表現されているものということができる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの体系的構\成としての創作性を有するものと認めるのが相当である。
・・・・
(ア) 前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とでは,情報項目としてのテーブル,フィールドの設定について,被告CDDB(当初版・2006年版)のテーブル数31個のうちの,28個においてテーブルが一致している。そして,フィールド項目についても,318個のフィールドのうち,252個のフィールドが一致している。(イ) そして,前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とで一致する,地点名テーブルの道路情報,緯度経度情報,接続テーブル及び禁止乗換テーブルの情報,県範囲定義テーブルの各情報は,いずれも原告CDDBの制作者において,前記認定のとおり,それぞれ選択の幅のある中から一定の選択方針に基づき選定し,あるいは全く任意に番号等設定したものであり,それぞれ創作性を有するものと認められる。(ウ) さらに,原告CDDBにおいては,前記のとおり,旅行会社に対する実情調査等の結果を踏まえ,主たる目的として,大型観光バスによる団体旅行を主眼とした行程表作成のための便宜から,通常使用されるロードマップとは異なる観点である,貸切観光バスが通行するのに適した道路として,都道府県道については約10%,市区町村道では約0.004%程度を選択して「10道路テーブル」に格納し,道路地点として選択した地点における情報も緯度及び経度のデータとして格納することとし,これを大型観光バスが通過するのに適切と考えられる道路のうちの,行程表\を作成する上で必要と考えられる適切な地点である,交差点,インターチェンジ,サービスエリア,パーキングエリア,観光施設,宿泊施設,駅,役所等の代表道路地点とするのに適切な地点を選別し,パソ\コンのマウスを地図上でクリックする方法で選択して,実際に入力したものである。また,施設と関係する代表道路地点の選択においても,施設が存する場所の緯度経度による地点ではなく,大型観光バスでの出入りの観点から,当該施設の近辺の道路地点を選び,当該施設の代表\道路地点として適宜設定している。このように,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)との共通部分である,道路,道路位置,代表道路地点等の選別・選択についても,原告CDDBの制作者による創作活動の成果が表\れており,創作者の個性が表現されているものといえる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの情報の選択としての創作性を有するものと認めるのが相当である。(エ) そして,これら被告CDDB(当初版・2006年版)が原告CDDBと同一性を有する情報の選択に関する部分も,原告CDDBの創作的表現の本質的特徴を直接感得することのできる同一性が維持されているものというべきである。\n
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2013.07.31
平成24(ワ)16694 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月19日 東京地方裁判所
既製服などをコーディネートした衣服及びアクセサリーの選択及び組み合わせ方は、著作物性無しと判断されました。
著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品等に思想又は感情が創作的に表\現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表\現上の創作性がないものについては,著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。そして,当該作品等が「創作的」に表現されたものであるというためには,厳密な意味での作成者の独創性が表\現として表れていることまでを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表\現として表れていることを要するものであって,表\現が平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえず,「創作的」な表\現ということはできないというべきである。イ また,著作権侵害を主張するためには,当該作品等の全体において上記意味における表現上の創作性があるのみでは足りず,侵害を主張する部分に思想又は感情の創作的表\現があり,当該部分が著作物性を有することが必要となる。本件において,原告らは,本件映像部分の放送により,本件ファッションショーの1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリング,2)着用する衣服の選択及び相互のコーディネート,3)装着させるアクセサリーの選択及び相互のコーディネート,4)舞台上の一定の位置で決めるポーズの振り付け,5)舞台上の一定の位置で衣服を脱ぐ動作の振り付け,6)これら化粧,衣服,アクセサリー,ポーズ及び動作のコーディネート,7)モデルの出演順序及び背景に流される映像に係る著作権が侵害された旨主張するものであるから,上記1)〜7)の各要素のうち,本件映像部分に表れているものについて,侵害を主張する趣旨であると解される。したがって,上記1)〜7)の各要素のうち,本件映像部分に表れているものについて,著作物性が認められることが必要となる。\n
ウ 原告らがどのような権利につき侵害を主張する趣旨であるかについては明確ではない点があるが,本件番組の放送により,原告会社の著作権(公衆送信権・著作権法23条1項)及び著作隣接権(放送権・同法92条1項)(いずれも,原告会社が原告Aから譲渡を受けたと主張するもの。)並びに原告Aの著作者及び実演家としての氏名表示権(著作者としての氏名表\示権につき同法19条1項,実演家としての氏名表示権につき同法90条の2第1項)が侵害されたと主張する趣旨であると解される。このうち,公衆送信権侵害が認められるためには,「その著作物について」公衆送信が行われることを要するのであるから(同法23条1項),上記公衆送信は,当該著作物の創作的表\現を感得できる態様で行われていることを要するものと解するのが相当である。そして,当該著作物の創作的表現を感得できない態様で公衆送信が行われている場合には,当該著作物について公衆送信が行われていると評価することができないとともに,「その著作物の公衆への提供若しくは提示」(同法19条1項)がされているものと評価することもできないから,公衆送信権侵害及び著作者としての氏名表\示権の侵害は,いずれも認められないものというべきである。エ 以上を前提に,まず,公衆送信権及び著作者としての氏名表示権の侵害の成否について検討する。\n
(2) 公衆送信権(著作権法23条1項),氏名表示権(同法19条1項)侵\n害の成否
ア 1)個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリングについて
(ア) 本件映像部分の各場面におけるモデルの化粧及び髪型は,別紙映像目録添付の各写真のとおりであり,「Iline1着目」は下ろした髪全体を後ろに流した髪型,「Anna1着目」及び「Anna2着目」は緩やかにカールを付けた髪を下ろした髪型,「Izabella2着目」は耳上の髪をまとめ,耳下の髪にカールを付けて下ろした髪型,「Tamra2着目」は全体に強めにカールを付けて下ろした髪型であり,また,いずれのモデルにも,アイシャドーやアイライン,口紅等を用いて華やかな化粧が施されているものということができる。(イ) しかし,上記化粧及び髪型は,いずれも一般的なものというべきであり,作成者の個性が創作的に表現されているものとは認め難い。また,本件映像部分における各場面は,約2秒ないし9秒間のごく短いものである上,動くモデルを様々な角度から撮影したものであることから,各モデルの顔及び髪型が映る時間は極めて短いものであるということができる。これに加えて,本件映像部分は,暗い室内において,局所的に強い照明を当てながら撮影されたものであるため,本件映像部分から,各モデルの化粧及び髪型の細部を見て取ることは困難であるというべきであり,原告らが主張するような,細部におけるアイラインの引き方やまつ毛の流し方,目元,唇等における微妙な色の工夫等(甲4〜甲7)を看取することはできないものである。そうすると,仮にこれらの点に創作性が認められるとしても,本件映像部分において,上記創作的表\現を感得できる態様で公衆送信が行われているものとは認められない。
(ウ) したがって,これらの点には著作物性がなく,また,仮に著作物性が認められる点があるとしても,これが本件映像部分において公衆送信されているものとは認められない。
・・・
以上によれば,本件ファッションショーのうち,本件映像部分に表れた点に著作物性は認められず,又は本件映像部分において,その創作的表\現を感得できる態様で公衆送信が行われているものと認められないから,本件映像部分を放送することが,原告会社の著作権(公衆送信権・著作権法23条1項)又は原告Aの著作者人格権(氏名表示権・同法19条1項)を侵害するものとは認められない。\n
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作物
>> 著作権(ネットワーク関連)
▲ go to TOP
2013.07.25
平成24(ワ)24571 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月16日 東京地方裁判所
漫画家が書いた似顔絵を無断で画像投稿サイトに投稿したことは,原告の著作権を侵害し,かつ,その名誉又は声望を害する方法で著作物を利用する行為として原告の著作者人格権を侵害すると判断されました。
前記前提事実(4)によれば,被告は,自作自演の投稿であったにもかかわらず,被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく,あたかも,被告が本件サイト上に「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。」「陛下プロジェクト」なる企画を立ち上げ,プロのクリエーターに天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ,原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて,本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである(本件行為1)。本件似顔絵には,「C様へ」及び「A」という原告の自筆のサインがされていたところ,「C様」は,被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった(乙2の1・2,弁論の全趣旨)。 上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示したものである。 そうすると,本件行為1は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。
(4) 以上のとおり,本件行為1は,原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権を違法に侵害するものであり,被告にはそのことについての故意があったと認められる。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 著作権その他
▲ go to TOP
2013.07.21
平成24(ワ)10890 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年07月16日 大阪地方裁判所
パンフレットをウェブページに表示することが引用と認められました。\n
著作権法32条1項によると,公表された著作物は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されている。引用の目的上正当な範囲内とは,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり,具体的には,他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか,その方法や態様,利用される著作物の種類や性質,当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない。
(2) 本件掲載行為が引用に当たること
別紙ウェブページ記載のとおり,本件パンフレットの表紙(本件イラストを含む。)は,被告岡山県の事業である「新おかやま国際化推進プラン」を紹介する目的で掲載されたものであることが明らかである。その態様も,前記2(2)イ(イ)のとおり,被告岡山県の事業を広報するという目的に適うものであり,本件パンフレットの表紙に何らの改変も加えるものでもない。しかも,このような本件掲載行為の目的,態様等からすると,著作権者である原告P1の利益を不当に害するようなものでもない。以上に述べたところからすれば,本件掲載行為は,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということができ,「公正な慣行」に合致するということもできるから(原告もこのことについては明示的に争わない。),適法な引用に当たると解するのが相当である。
(3) 原告らの主張について
原告らは,1)本件掲載行為に係る別紙ウェブページの記載(被引用物)が著作物ではないこと,2) 原告らの著作権が表示されていないこと,3)主従関係にはないこと,4)本件掲載行為が同一性保持権を侵害することからすれば,引用は成立しない旨主張して争っている。このうち上記1)の主張について検討すると,旧著作権法30条1項第2では「自己ノ著作物中」に引用することが必要とされていたものの,同改正後の著作権法32条1項では明文上の根拠を有しない主張である。その点はさておくとしても,別紙ウェブページの記載は相当な分量のものであり,内容・構成に創作性が認められる(選択の幅がある)ことからすれば,その著作物性を否定することは困難である。上記2)の主張について検討すると,本件パンフレットの表紙には原告P1の氏名の表\示がないものの,後記4のとおり,このことは原告P1の氏名表示権を侵害するものではない。そうすると,本件パンフレットの表\紙は無名の著作物であり,著作権法48条2項により出所の表示の必要がないから,上記2)の主張にも理由がない。上記3)の主張については,前記2(2)イ(ウ)のとおり,別紙ウェブページにおける本件パンフレットの表紙の記載はウェブページ全体の中ではごく一部であり,主従関係にあるものと認められるから,上記3)の主張も採用できない。上記4)の主張に理由がないことは,後記4で述べるとおりである。よって,原告らの主張はいずれも採用できない。なお,別紙ウェブページ記載の態様からすれば,本件パンフレットの表紙の部分は,他のウェブページの記載と明瞭に区別することができる。\n
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 著作権その他
▲ go to TOP
2012.08.10
平成24(ネ)10027 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年08月08日 知的財産高等裁判所
グリー vs DeNAの釣りゲームについて、知財高裁は、釣りゲームの画面は、表現といえるまで具体化されていないとして、著作権侵害ではないと判断しました。
原告作品と被告作品とは,いずれも携帯電話機向けに配信されるソーシャルネットワークシステムの釣りゲームであり,両作品の魚の引き寄せ画面は,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において,共通する。イ しかしながら,そもそも,釣りゲームにおいて,まず,水中のみを描くことや,水中の画像に魚影,釣り糸及び岩陰を描くこと,水中の画像の配色が全体的に青色であることは,前記(2)ウのとおり,他の釣りゲームにも存在するものである上,実際の水中の影像と比較しても,ありふれた表現といわざるを得ない。次に,水中を真横から水平方向に描き,魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは,原告作品の特徴の1つでもあるが,このような手法で水中の様子を描くこと自体は,アイデアというべきものである。また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。そして,同心円の態様は,いずれも画面のほぼ中央に描かれ,中心からほぼ等間隔の三重の同心円であるという点においては,共通するものの,両者の画面における水中の影像が占める部分が,原告作品では全体の約5分の3にすぎない横長の長方形で,そのために同心円が上下両端にややはみ出して接しており,大きさ等も変化がないのに対し,被告作品においては,水中の影像が画面全体のほぼ全部を占める略正方形で,大きさが変化する同心円が最大になった場合であっても両端に接することはなく,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化するといった具体的表\現において,相違する。しかも,原告作品における同心円の配色が,最も外側のドーナツ形状部分及び中心の円の部分には,水中を表現する青色よりも薄い色を用い,上記ドーナツ形状部分と中心の円部分の間の部分には,背景の水中画面がそのまま表\示されているために,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,放射状に仕切られた11個のパネルの,中心の円を除いた部分に,緑色と紫色が配色され,同心円の存在が強調されている点,同心円のパネルの配色部分の数及び場所も,魚の引き寄せ画面ごとに異なり,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,緑色無地,銀色の背景に金色の釣り針,鮮やかな緑の背景に黄色の星マーク,金色の背景に銀色の銛,黒色の背景に赤字の×印の5種類に変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表\現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。さらに,黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても,釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き,釣り糸も描いているゲームは,前記(2)ウのとおり,従前から存在していたものであり,ありふれた表現というべきである。しかも,その具体的表\現も,原告作品の魚影は魚を側面からみたものであるのに対し,被告作品の魚影は前面からみたものである点等において,異なる。
ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表\現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,同心円が表\示された以降の画面をみても,被告作品においては,まず,水中が描かれる部分が,画面下の細い部分を除くほぼ全体を占める略正方形であって,横長の長方形である原告作品の水中が描かれた部分とは輪郭が異なり,そのため,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表\示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表\示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない。\n
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成23(ワ)13060
関連カテゴリー
>> 著作物
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
>> 翻案
▲ go to TOP
2012.02. 2
平成23(ネ)10011等 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所
ロクラクIIの差し戻し判決です。知財高裁は具体的事案を検討して侵害と認定しました。部門が4部から3部に変わってます。
最高裁判所は,「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(サービス提供者)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\を有する機器(複製機器)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。」,「複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である」等と判示して,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等について,更なる審理を尽くさせる必要があるとした。当裁判所は,審理の結果,本件サービスにおける,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮すると,被告は,放送番組等の複製物を取得することを可能にする本件サービスにおいて,その支配,管理下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\を有する機器に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合におけるサービス提供者に該当し,したがって,被告は,本件放送番組等の複製の主体であると認定,判断すべきであると解した。その理由は,以下のとおりである。
・・・
上記認定した事実に基づいて判断する。まず,ロクラクIIは,親機ロクラクと子機ロクラクとをインターネットを介して1対1で対応させることにより,親機ロクラクにおいて受信した放送番組等を別の場所に設置した子機ロクラクにおいて視聴することができる機器であり,親機ロクラクは,設置場所においてテレビアンテナを用いて受信した放送番組等をハードディスクに録画し,当該録画に係るデータをインターネットを介して,子機ロクラクに送信するものであって,ロクラクIIは,親子機能を利用するに当たり,放送番組等を複製するものといえる。また,被告は,上記のような仕組みを有するロクラクIIを利用者にレンタルし,月々,賃料(レンタル料)を得ている(なお,被告は,第1審判決前の時点において,一般利用者に対し,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を販売していたとは認められないのみならず,同判決後の時点においても,親機ロクラクと子機ロクラクのセット価格が39万8000円と高額に設定されていることからすれば,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を購入する利用者は,ほとんどいないものと推認される。)。そして,日本国内において,本件サービスを利用し,居住地等では視聴できない他の放送エリアの放送番組等を受信しようとする需要は多くないものと解されるから,本件サービスは,主に日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等を視聴するためのサービスであると解される。さらに,本件サービスは,利用者が,日本国内に親機ロクラクの設置場所(上記のとおり,電源供給環境のほか,テレビアンテナ及び高速インターネットへの接続環境を必要とする。)を確保すること等の煩わしさを解消させる目的で,サービス提供者が,利用者に対し,親機ロクラクの設置場所を提供することを当然の前提としたサービスであると理解できる。そして,被告は,本件モニタ事業当時には,ほとんどの親機ロクラクを被告本社事業所内に設置,保管し,これに電源を供給し,高速インターネット回線に接続するとともに,分配機等を介して,テレビアンテナに接続することにより,日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等の複製及び視聴をすることを可能にしていたことが認められる。また,被告は,本件サービスにおいて,当初は,親機ロクラクの設置場所として,被告自らハウジングセンターを設置することを計画していたこと,ところが,被告は,原告NHKらから,本件サービスが著作権侵害等に該当する旨の警告を受けたため,利用者に対し,自ら或いは取扱業者等をして,ハウジング業者等の紹介をし,ロクラクIIのレンタル契約とは別に,利用者とハウジング業者等との間で親機ロクラクの設置場所に係る賃貸借契約を締結させるとの付随的な便宜供与をしたこと,親機ロクラクの設置場所に係る賃料については,被告自ら又は被告と密接な関係を有する日本コンピュータにおいて,クレジットカード決済に係る収納代行サービスの契約当事者になり,本件サービスに係る事業を継続したことが認められる。上記の複製への関与の内容,程度等の諸要素を総合するならば,i)被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれらと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,また,ii)被告は,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を継続的に作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。
・・・
以上のとおり,被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。
◆判決本文
◆最高裁判決はこちらです。
1審・仮処分はこちらです
◆平成19(ワ)17279号
◆平成18(ヨ)22046号
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
>> 著作権その他
▲ go to TOP
2012.01.19
平成21(あ)1900 著作権法違反幇助被告事件 平成23年12月19日 最高裁判所第三小法廷 決定 棄却 大阪高等裁判所
刑事事件です。ファイル共有ソフトであるWinnyの配布が、著作権法違反幇助罪に該当しないとした高裁判決は結論において妥当すると判断されました。
刑法62条1項の従犯とは,他人の犯罪に加功する意思をもって,有形,無形の方法によりこれを幇助し,他人の犯罪を容易ならしむるものである(最高裁昭和24年(れ)第1506号同年10月1日第二小法廷判決・刑集3巻10号1629頁参照)。すなわち,幇助犯は,他人の犯罪を容易ならしめる行為を,それと認識,認容しつつ行い,実際に正犯行為が行われることによって成立する。原判決は,インターネット上における不特定多数者に対する価値中立ソフトの提供という本件行為の特殊性に着目し,「ソ\フトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供する場合」に限って幇助犯が成立すると解するが,当該ソ\フトの性質(違法行為に使用される可能性の高さ)や客観的利用状況のいかんを問わず,提供者において外部的に違法使用を勧めて提供するという場合のみに限定することに十\分な根拠があるとは認め難く,刑法62条の解釈を誤ったものであるといわざるを得ない。
(2) もっとも,Winnyは,1,2審判決が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソ\\フトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソ\フトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。新たに開発されるソ\フトには社会的に幅広い評価があり得る一方で,その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば,かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能\性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。かかるソ\フトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。すなわち,ソ\フトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,当該ソ\フトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソ\フトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソ\フトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。\n
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
>> 著作権その他
▲ go to TOP
2011.09. 8
平成22(ワ)7213 損害賠償請求事件 平成23年09月05日 東京地方裁判所
テレビ番組を海外居住者に提供することは、公衆送信に該当すると判断されました。
前記前提事実(2)イでみた本件サービスにおける配信システムの具体的内容によれば,本件サービスのうち,前記前提事実(2)イ(イ)のテレビ番組の動画ファイル形式による記録及び配信システムにおいては,テレビ放送を,ケーブルテレビ配線を介して受信した上,記録用サーバ機に記録するものであるから,テレビ放送に係る音及び影像を録音,録画するものであり,これを複製するものということができる(最高裁平成23年1月20日第一小法廷判決・裁判所時報2103号128頁参照)。ウ 本件サービスにおいて視聴可能なテレビ番組中に原告の地上波テレビ放送に係る放送番組が含まれていることは前記のとおりであるから,本件サービスのうち,動画ファイル形式により記録及び配信するものは,原告が放送事業者としてその放送について有する複製権を侵害するものである。
(3) この点に関し,被告は,本件サービスでは,利用者に個々の仮想PCが割り当てられ,各利用者による機器の操作が可能であって,各利用者が録画予\約した番組のみをダウンロードできる仕様としていたのであり,各利用者による機器の操作が不可欠であったと主張し,各サーバ機の自動公衆送信装置該当性を否認するが,前記前提事実でみた本件サービスの内容及び利用者数等に照らすと,何人も本件サービス利用契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであるから,本件サービスの利用者は不特定かつ多数の者に当たり,「公衆」(同法2条5項)に該当するものと認められるのであって,本件サービスにおけるストリーミング配信用サーバ機及び動画ファイル配信用サーバ機は自動公衆送信装置に該当する。被告の主張は採用することができない。
(4) 送信可能化権侵害及び複製権侵害の主体について
前記前提事実によれば,本件サービスは,ジェーネット合資会社及びジェーネット社により管理運営され,その利用料金は,上記2社名義の銀行口座に入金されていたものであることが認められるが,上記2社は,いずれも,被告が,本件サービスの管理運営のために設立した会社であって,実質的には被告一人で経営していたものであると認められる上,前記前提事実(6)のとおり,上記2社の銀行口座に入金された利用料金は,ほぼ全額が出金され,被告個人名義口座に入金されていたものであって,本件サービスによる利益は被告個人に帰属していたものであり,後記2のとおり,被告は本件サービスの違法性を認識しながら,本件サービスに係るシステムを構築していたと認められるのであるから,本件サービスに係る送信可能\化権侵害及び複製権侵害行為は,被告個人も独立の侵害行為の主体として関与したものであると認められる。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 翻案
▲ go to TOP
2011.09. 1
平成23(ワ)6526 プログラム著作権使用料等請求事件 平成23年08月25日 大阪地方裁判所
契約終了後にプログラムを使用したとして、プログラムの著作権侵害が認められました。原告被告とも代理人無しです。
本件契約(甲1)などによれば,本件プログラムは平成18年以前に作成されたものであること及び本件契約に基づく本件プログラムの利用料等は1か月2万8380円であったことが認められる。また,弁論の全趣旨によれば,本件プログラムと同様の機能を有する他のプログラムについて,インターネットで無料配布されたり,相当低廉な価額で提供されたりしているものもあることが認められる。これらのことに加え,前提事実で認定した被告による本件プログラムの利用態様及び推定される利用期間など一切の事情を考慮すれば,平成22年5月28日ころと平成23年3月28日ころにおけるそれぞれの無断利用について各5万円の限度で損害が発生したものと認めるのが相当である。\n
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
▲ go to TOP
2011.01.21
平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高第一小
まねきTVに続き、ロクラク2についても、最高裁は複製権侵害と認定し、知財高裁の判断を破棄差し戻しました。
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\\を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十\\分であるからである。
裁判官金築誠志の補足意見
著作権法上の複製等の主体の判断基準に関しては,従来の当審判例との関連等の問題があるので,私の考え方を述べておくこととしたい。
1 上記判断基準に関しては,最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。このように,「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。
2 原判決は,本件録画の主体を被上告人ではなく利用者であると認定するに際し,番組の選択を含む録画の実行指示を利用者が自由に行っている点を重視したものと解される。これは,複製行為を,録画機器の操作という,利用者の物理的,自然的行為の側面に焦点を当てて観察したものといえよう。そして,原判決は,親機を利用者が自己管理している場合は私的使用として適法であるところ,被上告人の提供するサービスは,親機を被上告人が管理している場合であっても,親機の機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,利用者に代わって整備するものにすぎず,適法な私的使用を違法なものに転化させるものではないとしている。しかし,こうした見方には,いくつかの疑問がある。法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能\\なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。また,ロクラクIIの機能からすると,これを利用して提供されるサービスは,わが国のテレビ放送を自宅等において直接受信できない海外居住者にとって利用価値が高いものであることは明らかであるが,そのような者にとって,受信可能\\地域に親機を設置し自己管理することは,手間や費用の点で必ずしも容易ではない場合が多いと考えられる。そうであるからこそ,この種の業態が成り立つのであって,親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。さらに,被上告人が提供するサービスは,環境,条件等の整備にとどまり,利用者の支払う料金はこれに対するものにすぎないとみることにも,疑問がある。本件で提供されているのは,テレビ放送の受信,録画に特化したサービスであって,被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり,利用者もテレビ番組を録画,視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で,著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。もっとも,本件は,親機に対する管理,支配が認められれば,被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから,上記利益の帰属に関する評価が,結論を左右するわけではない。
3 原判決は,本件は前掲判例と事案を異にするとしている。そのこと自体は当然であるが,同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。原判断は,こうした総合的視点を欠くものであって,著作権法の合理的解釈とはいえないと考える。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
▲ go to TOP
2011.01.20
平成21(受)653 著作権侵害差止等請求事件 平成23年01月18日 最高裁第三小
まねきTVについて、著作権侵害無しとの原審が破棄されました。
公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能\\を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
イ そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
ウ これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能\\化に当たるというべきである。
(2) 公衆送信権侵害について
本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。6 以上によれば,ベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しないことのみをもって自動公衆送信装置の該当性を否定し,被上告人による送信可能\\化権の侵害又は公衆送信権の侵害を認めなかった原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。原判決は破棄を免れず,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2010.09.10
平成21(ネ)10078 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月08日 知的財産高等裁判所
動画投稿サイトの運営者が侵害主体として認定されました。1審と同様の判断です。
以上からすると,本件サービスにおいて,著作権を侵害する動画を本件サーバに投稿する行為を実際に行っているのは,ユーザであって,控訴人らではない。したがって,ユーザが本件サービスに投稿する動画の中に,本件管理著作物が利用されている場合には,ユーザが当該動画を本件サーバに投稿する行為は,ユーザによる本件管理著作物の複製権侵害に該当することはいうまでもないところである。しかしながら,先に指摘したとおり,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであって,控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配している主体であるところ,ユーザの投稿に対し,控訴人会社から対価が支払われるわけではなく,控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ているものである。しかるところ,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と,約5割に達しているものであり,このような著作権侵害の蓋然性は,動画投稿サイトの実態それ自体や控訴人会社によるアダルト動画の排除を通じて,控訴人会社において,当然に予\想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,控訴人会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採っていない。そうすると,控訴人会社は,ユーザによる複製行為により,本件サーバに蔵置する動画の中に,本件管理著作物の著作権を侵害するファイルが存在する場合には,これを速やかに削除するなどの措置を講じるべきであるにもかかわらず,先に指摘したとおり,本件サーバには,本件管理著作物の複製権を侵害する動画が極めて多数投稿されることを認識しながら,一部映画など,著作権者からの度重なる削除要請に応じた場合などを除き,削除することなく蔵置し,送信可能化することにより,ユーザによる閲覧の機会を提供し続けていたのである。しかも,そのような動画ファイルを蔵置し,これを送信可能\化して閲覧の機会を提供するのは,控訴人会社が本件サービスを運営して経済的利益を得るためのものであったこともまた明らかである。したがって,控訴人会社が,本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。よって,控訴人会社は,本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって,当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。また,本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上,公衆送信(送信可能\化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。以上からすると,本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて,控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして,控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能\化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成20(ワ)21902平成21年11月13日東京地裁
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2009.12.17
平成20(ワ)21902 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月13日 東京地方裁判所
動画投稿サイトの運営者に著作権侵害に基づく、差し止め請求が認められました。
「・・被告会社は,同ファイルサーバに対する使用権原に基づき,本件サービスにおいて送受信の対象とされているファイルの所在及び内容を把握でき,必要に応じてファイルの送受信を制限したり,特定の利用者の利用自体を禁止したり,ファイルを削除する等の措置を講じることができるから(甲7,乙1,31,弁論の全趣旨),ライムライト社の管理するファイルサーバも含めて本件サーバを管理支配しているものと認められる。また,被告会社は,前記第2,2前提となる事実(3)アに認定したとおり,その定める独自のユーザインターフェイス環境においてユーザにコンテンツを提供するというコンセプトを有する本件サイトを開設しており(甲7,乙1,弁論の全趣旨),ただ,そのコンテンツがユーザの提供によるというにすぎないところであり,外形的には,被告会社は,少なくとも公衆送信(送信可能化を除く。)はしている。もっとも,複製又は送信可能\化については,後記(2)イ(ア)c(c)のとおり被告会社の代表者である被告A自らが行ったものも一部あるが,それ以外のものについては外形的にはユーザが行っている。また,複製又は送信可能\化される動画ファイルの選択はユーザの任意によるものであり,その結果として,公衆送信される動画ファイルも上記のようにユーザが任意に選択した範囲の中のものに限られるから,公衆送信されるべき動画ファイルの設定それ自体には被告会社は直接には関与していないことになる。したがって,複製及び送信可能化のみならず,公衆送信についても,侵害主体を論じる必要がある。この点,著作権法上の侵害主体を決するについては,当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,これらの観点を踏まえた上で,実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能\な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。・・・・・以上からすると,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであるところ,被告会社は,このような本件サービスを管理支配している主体であって,実際にも,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と約5割に達しているものであるところ,このような著作権侵害の蓋然性は被告会社において予想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,被告会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採らず,このような行為により利益を得ているものということができる。そうすると,被告会社は,著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引,招来,拡大させてこれにより利得を得る者であって,侵害行為を直接に行う者と同視できるから,本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能\化を含む。)に係る著作権侵害の主体というべきである。」
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2009.12. 8
平成21(ワ)31480 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月26日 東京地方裁判所
ネットオークションの為に、出品作品の画像を掲載した冊子の発行が著作権侵害かが争われました。平成22年からは一部除外規定はあるものの、引用、展示に伴う複製、時事の報道、権利濫用の主張を全て否定し、著作権侵害と認めました。
◆判決本文
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
▲ go to TOP
2009.05. 8
◆平成20(ワ)3036 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年04月30日 東京地方裁判所
著作権侵害として、放送局およびこれに放送を依頼した会社が訴えられました。放送局に過失はないと判断されました。
「前記(1)の前提事実によれば,i)被告スカパーは,被告亜太との間で締結した本件委託契約に基づいて,被告亜太が電気通信役務利用放送事業者として本件CS放送サービスで提供する放送番組に係る放送番組送出業務及び運用業務の委託を受けたが,本件委託契約上,被告スカパーが当該放送番組の制作,編集等について関与することは予定されていなかったこと,ii)本件放送のプロセスにおいて,被告スカパーが行った放送番組送出業務は,本件委託契約に基づいて,被告亜太から本件ドラマの信号(ベースバンド信号)を回線を通じて受信し,これを機械的に圧縮符号化し,電気通信事業者であるジェイサットからの委託に基づいて,圧縮符号化された信号を機械的に高次元多重化・変調処理し,ジェイサットの保有する通信衛星へ伝送可能な放送波にした上で,その放送波を通信衛星まで伝送したというものであり,被告亜太から受信した本件ドラマの信号(ベースバンド信号)を瞬時かつ機械的に処理してリアルタイムでそのまま通信衛星に向けて伝送したものであることが認められる。そうすると,本件放送のプロセスにおいて被告スカパーが行った放送番組送出業務は,上記のような機械的な処理であって,被告亜太が制作・編集した放送番組である本件ドラマの内容を公衆によって受信されることを直接の目的として行ったものとはいえないから,被告スカパーが本件放送の主体であると解することはできない。
(イ) 次に,被告スカパーは,本件CS放送サービスを運営し,また,本件委託契約により,被告亜太から運用業務(顧客管理業務,広告宣伝等の普及促進業務等)の委託を受けていたのであるから(前記(1)ア(イ)),被告スカパーは,被告亜太が本件CS放送サービスの785チャンネルで提供する放送番組名や放送番組の内容の一部を認識していたものと認められる。しかし,被告スカパーは,被告亜太が提供する放送番組の制作,編集等について関与していなかったこと(前記(ア))に照らすならば,被告スカパーが,被告亜太から運用業務の委託を受けていたからといって,個々の放送番組の具体的な内容やその著作権の帰属等について十分に知り得る立場にあったとまでいうことはできない。また,本件放送がされた平成17年5月当時,本件CS放送サービスのチャンネル数は合計295であったこと,そのうち,785チャンネルだけをみても1日当たりの放送番組数は40数番組であったこと(前記(1)イ(イ))に照らすならば,本件放送がされた当時の1日当たりの放送番組数はかなりの多数に及んでいたものと推認されるから,被告スカパーが本件CS放送サービスで放送される個々の放送番組の内容の詳細を把握し,当該放送番組を放送した場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認することは極めて困難であったことが認められる。そうすると,被告スカパーは,個別の放送番組の放送前に,その内容に著作権侵害等の法令違反が存在することを現に認識し,あるいは,著作権者等関係者からの警告等を受けるなどして著作権侵害等の法令違反が存在する具体的な可能性を認識していた事情がある場合であれば格別,そのような事情のない場合には,個別の放送番組ごとに,その放送前に,当該放送番組が放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認すべき注意義務を負うものではないと解される。しかるに,本件放送について,被告スカパーが,その放送前に著作権侵害等の法令違反が存在することを現に認識していたことを認めるに足りる証拠はなく,また,被告スカパーは,本件放送前はもとより,本件放送がされた期間中も,原告から,本件ドラマの放送が本件著作権の侵害に当たる旨の通知あるいは警告を受けたことがなかったのであるから(前記(1)ウ(イ)),被告スカパーにおいて,本件放送前に,本件ドラマが放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認すべき注意義務を負っていたものということはできない。」
◆平成20(ワ)3036 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年04月30日 東京地方裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2009.01.29
◆平成20(ネ)10055 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所
海外でのテレビ視聴を可能とする装置の販売および管理について、知財高裁は従来の考え方を否定して、業者が複製主体であるとはいえないと判断し、地裁判決を破棄しました。
「利用者が親子ロクラクを設置・管理し,これを利用して我が国内のテレビ放送を受信・録画し,これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為であることは異論の余地のないところであり,かかる適法行為を基本的な視点としながら,被控訴人らの前記主張を検討してきた結果,前記認定判断のとおり,本件サービスにおける録画行為の実施主体は,利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず,控訴人が提供する本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境,条件等を提供しているにすぎないものというべきである。かつて,デジタル技術は今日のように発達しておらず,インターネットが普及していない環境下においては,テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後,これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが,当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。しかしながら,我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し,国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中,デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して,海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。そして,技術の飛躍的進展に伴い,新たな商品開発やサービスが創生され,より利便性の高い製品が需用者の間に普及し,家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。本件サービスにおいても,利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから,かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく,もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない。したがって,本件サービスにおいて,著作権法上の規律の観点から,利用者による本件複製をもって,これを控訴人による複製と同視することはできず,その他,控訴人が本件複製を行っているものと認めるに足りる事実の立証はない。なお,クラブキャッツアイ事件最高裁判決は,スナック及びカフェを経営する者らが,当該スナック等において,カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き,ホステス等の従業員において,カラオケ装置を操作し,客に対して曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め,客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ,また,しばしば,ホステス等にも,客とともに又は単独で歌唱させ,もって,店の雰囲気作りをし,客の来集を図って利益を上げることを意図していたとの事実関係を前提に,演奏(歌唱)の形態による音楽著作物の利用主体を当該スナック等を経営する者らと認めたものであり,本件サービスについてこれまで認定説示してきたところに照らすならば,上記判例は本件と事案を異にすることは明らかである。」
原審・仮処分はこちらです
◆平成19(ワ)17279号
◆平成18(ヨ)22046号
◆平成20(ネ)10055 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
▲ go to TOP
2008.12.19
◆平成20(ネ)10059 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成20年12月15日 知的財産高等裁判所
まねきTVの控訴審判決です。地裁判決が維持されました。
「自動公衆送信装置は,公衆によって直接受信され得る送信を行う機能を有する装置でなければならず,その「公衆(不特定又は特定多数の者)によって直接受信され得る送信を行う」ことは,自動公衆送信装置の機能\として必要なのであるから,不特定又は特定多数の者であるかどうかは送信行為者を基準に判断されるべきであり,かつ,仮に,本件サービスにおいて,放送番組を利用者に送信しているのが被控訴人であると仮定したとしても,個々のベースステーションを自動公衆送信装置に擬するのであれば,個々のベースステーションごとに,当該ベースステーションが,被控訴人にとって不特定又は特定多数の者によって直接受信され得る送信を行う機能を有するといえなければならない。そして,上記のとおり,ベースステーションからの送信は,その所有者である利用者が発する指令により,当該利用者が設置している専用モニター又はパソ\コンに対してのみなされるものであり,かつ,上記2(原判決「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」の「2 事実認定」の(4))のとおり,当該利用者(当該ベースステーションの所有者)は,被控訴人との間で,本件サービスに関する契約を締結し,その契約の内容として,当該ベースステーションを被控訴人の事業所(データセンター)に持参又は送付した者であるから,このような者が,被控訴人にとって不特定又は特定多数の者といえないことは明らかである。したがって,個々のベースステーションが,被控訴人にとって不特定又は特定多数の者によって直接受信され得る送信を行う機能を有するものということはできない。
(3) 控訴人らは,ベースステーションを含めた被控訴人のデータセンター内のシステム全体が,一つの特定の構想に基づいて機器が集められ,それらが有機的に結合されて構\築された一つの「装置」となっているから,本件システムは,被控訴人事業所内のシステム全体が一つの自動公衆送信装置を構成しているものであり,被控訴人がこれを一体として管理・支配しているものであるところ,被控訴人が,本件システムを用いて行っている送信は,被控訴人に申\込みを行い,ベースステーションを送付してくる不特定又は多数の者(利用者)に対して行われているものであるから,送信可能化行為に該当するとも主張する。しかしながら,上記のとおり,本件サービスにおいて,利用者の専用モニター又はパソ\コンに対する送信は,各ベースステーションから,各利用者が発する指令により,当該利用者が設置している専用モニター又はパソコンに対してのみなされる(各ベースステーションにおいて,テレビアンテナを経て流入するアナログ放送波は,当該利用者の指令によりデジタルデータ化され,当該放送に係るデジタルデータが,各ベースステーションから当該利用者が設置している専用モニター又はパソ\コンに対してのみ送信される)ものである。そうすると,本件システムにおいて,各ベースステーションへのアナログ放送波の流入に関わるテレビアンテナ,アンテナ線,分配機,ブースター等,また,各ベースステーションからのデジタル放送データをインターネット回線に接続することに関わるLANケーブル,ルーター等は,それぞれが本来は別個の機器であるとしても,その接続関係や役割に有機的な関連性があるということができ,これらを一体として一つの「装置」と考える契機がないとはいえない。
しかしながら,本件サービスに係るデジタル放送データの送信の起点となるとともに,その送信の単一の宛先を指定し,かつ送信データを生成する機器であるベースステーションは,本件システム全体の中において,複数のベースステーション相互間に何ら有機的な関連性や結合関係はなく(例えば,利用者との契約の終了等により,あるベースステーションが欠落したとしても,他のベースステーションには何らの影響も及ぼさない。),かかる意味で,個々のベースステーションからの送信は独立して行われるものであるから,本来別個の機器である複数のベースステーションを一体として一つの「装置」と考える契機は全くないというべきである。したがって,控訴人らの上記主張は,複数のベースステーションを含めて一つの「装置」と理解する前提において失当というべきである。
(4) 控訴人らは,ある装置が自動公衆送信装置に当たるかどうかは,当該装置が有する客観的機能のみによって定まるというべきであるとした上,ベースステーションを用いて送信を行う者から見て不特定又は特定多数の者が,対になる専用モニター又はパソ\コン等を所持しているような場合には,そのベースステーションによって自動公衆送信が行われることになるから,そのような機能を有する装置であるベースステーションは,自動公衆送信装置に当たると主張し,事業者が予\め多数のベースステーションと対応モニターを購入し,その事業所内にベースステーションを設置して必要な設定を施しておき,顧客から申し込みがある都度,対応モニターを顧客に貸与する,というようなサービスを行っている場合をその例として挙げる。しかしながら,控訴人らの挙示する上記の例においても,個々のベースステーションからの送信は,当該事業者との貸借契約(又は貸借を含む契約)を経た特定の者の設置する対応モニターに対してのみなされるだけであり,したがって,仮に,送信の主体が当該事業者であるとしても,個々のベースステーションが,当該事業者にとって不特定又は特定多数の者によって直接受信され得る送信を行う機能\を有するものということはできず,これをもって自動公衆送信装置に当たるということができないことは,上記(2)と同様である。そして,控訴人らの主張に係る「ベースステーションを用いて送信を行う者から見て不特定又は特定多数の者が,対になる専用モニター又はパソコン等を所持しているような場合」として,他にどのような例を想定し得るのかは明らかではないから,控訴人らの上記主張を採用することはできない。(5) 以上のほか,被控訴人が本件システムによって行う本件サービスにおいて,自動公衆送信装置に該当すると認められるものが使用されているとの事実を認めるに足りる証拠はない。そうすると,上記のとおり,「送信可能化」は,自動公衆送信装置の使用を前提とするものであるから,その余の点につき判断するまでもなく,本件サービスにおいて,被控訴人が本件放送の送信可能\化行為を行っているということはできない。
原審はこちらです
◆平成19(ワ)5765 平成20年06月20日 東京地方裁判所
◆平成20(ネ)10059 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成20年12月15日 知的財産高等裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2008.06.24
◆平成19(ワ)5765 著作権侵害差止等請求事件 著作権民事訴訟 平成20年06月20日 東京地方裁判所
まねきTV(ソニーのベースステーションを多数預かるハウジングサービス)は、公衆送信権侵害とはならないと判断しました。
「上記アないしエで述べたベースステーションの機能,その所有者が各利用者であること,本件サービスを構\成するその余の機器類は汎用品であり,特別なソフトウェアは一切使用されていないことなどの各事情を総合考慮するならば,本件サービスにおいては,各利用者が,自身の所有するベースステーションにおいて本件放送を受信し,これを自身の所有するベースステーション内でデジタルデータ化した上で,自身の専用モニター又はパソ\コンに向けて送信し,自身の専用モニター又はパソコンでデジタルデータを受信して,本件放送を視聴しているものというのが相当である。要するに,本件サービスにおいて,本件放送をベースステーションにおいて受信し,ベースステーションから各利用者の専用モニター又はパソ\コンに向けて送信している主体は,各利用者であるというべきであって,被告であるとは認められない。(3)自動公衆送信装置該当性
ア 前記のとおり,自動公衆送信装置に該当するためには,それが(自動)公衆送信する機能,すなわち,送信者にとって当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者に対する送信をする機能\を有する装置であることが必要である。前記のとおり,本件サービスにおいて,ベースステーションによる送信行為は各利用者によってされるものであり,ベースステーションから送信されたデジタルデータの受信行為も各利用者によってされるものである。したがって,ベースステーションは,各利用者から当該利用者自身に対し送信をする機能,すなわち,「1対1」の送信をする機能\を有するにすぎず,不特定又は特定多数の者に対し送信をする機能を有するものではないから,本件サービスにおいて,各ベースステーションは「自動公衆送信装置」には該当しない。」
◆平成19(ワ)5765 著作権侵害差止等請求事件 著作権民事訴訟 平成20年06月20日 東京地方裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2007.06.22
◆平成17(ネ)3258等 著作権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件,反訴請求事件 著作権民事訴訟 平成19年06月14日 大阪高等裁判所
マンション内にサーバ設置し、ユーザの指示によってテレビ番組を録画しておきユーザからリクエストがあるとこれを配信する装置が著作隣接権侵害となるかが争われた選撮見録事件の控訴審判決です。
「控訴人商品においては販売の形式が採られており,控訴人自身は直接に物理的な複写等の行為を行うものではないが,控訴人商品における著作権,著作隣接権の侵害は,控訴人が敢えて採用した(乙21)放送番組に係る単一のファイルを複数の入居者が使用するという控訴人商品の構成自体に由来するものであり,そのことは使用者には知りようもないことがらであり,使用者の複製等についての関与も著しく乏しいから,その意味で,控訴人は,控訴人商品の販売後も,使用者による複製等(著作権,著作隣接権の侵害)の過程を技術的に決定・支配しているものということができる。のみならず,控訴人商品の安定的な運用のためには,その販売後も,固定IPアドレスを用いてのリモーコントロールによる保守管理が必要であると推認される上,控訴人は,控訴人商品の実用的な使用のために必要となるEPGを継続的に供給するなどにより,使用者による違法な複製行為等の維持・継続に関与し,これによって利益を受けているものであるから,自らコントロール可能\な行為により侵害の結果を招いている者として,規範的な意味において,独立して著作権,著作隣接権の侵害主体となると認めるのが相当である。」
原審は、
こちら(H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488)です。
◆平成17(ネ)3258等 著作権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件,反訴請求事件 著作権民事訴訟 平成19年06月14日 大阪高等裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
▲ go to TOP
2007.05.29
◆平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年05月25日 東京地方裁判所
ユーザが所有しているCDを携帯電話用のデータに変換してから、ユーザがサーバにアップすると、これを記憶しておき、当該ユーザがダウンロードするサービス(MYUTA)を行っている業者について、録音および公衆送信の主体が業者であると認定されました。
「本件サービスのいわば入口と出口だけを捉えれば,ユーザのパソコンとユーザの携帯電話という1対1の対応関係といえなくはないが,説明図?Cすなわち本件サーバにおいて音源ファイルが複製されていることに変わりはなく,しかも,本件サーバへの3G2ファイルの蔵置による複製は,本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられる。そして,前記(1)エのとおり,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,複製に係る蔵置のための操作の端緒となる関与をユーザが行い,原告が任意に随時行うものではないが,この蔵置による複製行為そのものは,専ら,原告の管理下において行われている。すなわち,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,ユーザがどの楽曲データをアップロードするかを決定して操作するものではあるが,複製の過程はすべて原告が所有し管理する本件サーバにおいて,原告が設計管理するシステムの上で,かつ,原告がユーザに要求する認証手続を経た上でされるものであって,原告の全面的な関与の下にされるものである。そうすると,この過程において,ユーザは複製のための操作の端緒となる関与をしたに留まるものというべきであり,上記の複製行為は,前記(1)カのとおり,それ自体,原告の行為としてとらえるのが相当である・・・本件サーバから音源データを送信しているのは,前記(1)のとおり,本件サーバを所有し管理している原告である。そして,公衆送信とは,公衆によって直接受信されることを目的とする(著作権法2条1項7号の2)から,送信を行う者にとって,当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者であれば,公衆に対する送信に当たることになる。そして,送信を行う原告にとって,本件サービスを利用するユーザが公衆に当たることは,前記(2)のとおりである。なお,本件サーバに蔵置した音源データのファイルには当該ユーザしかアクセスできないとしても,それ自体,メールアドレス,パスワード等や,アクセスキー,サブスクライバーID(加入者ID)による識別の結果,ユーザのパソコン,本件サーバのストレージ領域,ユーザの携帯電話が紐付けされ,他の機器からの接続が許可されないように原告が作成した本件サービスのシステム設計の結果であって,送信の主体が原告であり,受信するのが不特定の者であることに変わりはない。」
◆平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年05月25日 東京地方裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2007.01.22
◆平成18(ワ)1769等 著作権民事訴訟 平成19年01月19日 東京地方裁判所
送信可能化権が法定される前に締結された原盤に関する無制限かつ独占的な契約の解釈について、東京地裁は、種々の事情を考慮して、送信可能\化権についても包括的に譲渡されたものと判断しました。
「?@ 本件各契約には,原盤に関し原告の有する「一切の権利」を「何らの制限なく独占的に」譲渡する旨の規定があること,?A それにより,レコード会社であるSMEにおいて原盤に対する自由でかつ独占的な利用が可能となったこと,?B そこでは著作隣接権の内容が個々に問題にはならず,原盤に対する自由でかつ独占的な利用を可能ならしめるための一切の権利が問題になっていること,?C 他方,アーティストの所属事務所である原告は,レコード会社から収益を印税の形で受け取り,レコード製作者の権利の譲渡の対価を収受することができること,?D このような関係は,音楽業界において長年にわたる慣行として確立していること,これらの事情を総合的に考慮すれば,本件各契約により,原盤に関して原告の有する一切の権利が何らの制約なくSMEに譲渡されたものと解される。すなわち,平成9年法律第86号により創設された送信可能化権についても,本件各契約の第6条の包括的な譲渡の対象となり,上記改正法が施行された平成10年1月1日の時点で,A音源の持分2分の1とB音源の全部について,いったん,レコード製作者たる原告の下に付与されたものが,同時に,本件各契約の第6条により,そのまま原告からSMEに譲渡され,後に被告に承継されたことになる。」
◆平成18(ワ)1769等 著作権民事訴訟 平成19年01月19日 東京地方裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
▲ go to TOP
2006.08. 7
◆平成18(ヨ)22022 著作隣接権仮処分命令申立事件 平成18年08月04日 東京地方裁判所
ベースステーション(ソニー株式会社の商品名「ロケーションフリーテレビ」の構\成機器)を用いて海外にて日本のテレビ番組の受信するための管理を行っていた債務者に対する公衆送信権の侵害は認められませんでした。
附属書類(本件サービスのシステム構成)
「本件サービスにおいては,?@それに使用される機器の中心をなし,そのままではインターネット回線に送信できない放送波を送信可能なデジタルデータにする役割を果たすベースステーションは,名実ともに利用者が所有するものであり,その余は汎用品であり,本件サービスに特有のものではなく,特別なソ\フトウェアも使用していないこと,?A1台のベースステーションから送信される放送データを受信できるのはそれに対応する1台の専用モニター又はパソコンにすぎず,1台のベースステーションから複数の専用モニター又はパソ\コンに放送データが送信されることは予定されていないこと,?B特定の利用者のベースステーションと他の利用者のベースステーションとは,全く無関係に稼働し,それぞれ独立しており,債務者が保管する複数のベースステーション全体が一体のシステムとして機能しているとは評価し難いものであること,?C特定の利用者が所有する1台のベースステーションからは,当該利用者の選択した放送のみが,当該利用者の専用モニター又はパソコンのみに送信されるにすぎず,この点に債務者の関与はないこと,?D 利用者によるベースステーションへのアクセスに特別な認証手順を要求するなどして,利用者による放送の視聴を管理することはしていないことに照らせば,ベースステーションにおいて放送波を受信してデジタル化された放送データを専用モニター又はパソコンに送信するのは,ベースステーションを所有する本件サービスの利用者であり,ベースステーションからの放送データを受信する者も,当該専用モニター又はパソ\コンを所有する本件サービスの利用者自身であるということができる。そうすると,本件サービスにおけるベースステーションがインターネット回線を通じて専用モニター又はパソコンに放送データを送信することを債務者の行為と評価することは困難というべきであって,かかる送信は,利用者自身が自己の専用モニター又はパソ\コンに対して行っているとみるのが相当である。」
類似案件である録画ネット事件
H17.11.15 知財高裁 平成17(ラ)10007 著作権 民事仮処分事件では、複製権侵害が争われましたが、本件では、複製権侵害は申し立てておらず、公衆送信権侵害のみが申\し立てられました。
◆平成18(ヨ)22022 著作隣接権仮処分命令申立事件 平成18年08月04日 東京地方裁判所
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2005.10.26
◆H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488 著作権 民事訴訟事件
マンション内にサーバ設置し、ユーザの指示によってテレビ番組を録画しておきユーザからリクエストがあるとこれを配信する装置が著作隣接権侵害であるとして当該装置の販売差し止めが認められました。
裁判所は、複製権侵害および公衆送信権侵害の予防のために被告の商品の販売行為の差止めを請求することができると判断しました。
「被告商品の販売は、これが行われることによって、その後、ほぼ必然的に原告らの著作隣接権の侵害が生じ、これを回避することが、裁判等によりその侵害行為を直接差し止めることを除けば、社会通念上不可能であり、?A裁判等によりその侵害行為を直接差し止めようとしても、侵害が行われようとしている場所や相手方を知ることが非常に困難なため、完全な侵害の排除及び予防は事実上難しく、?B他方、被告において被告商品の販売を止めることは、実現が容易であり、?C差止めによる不利益は、被告が被告商品の販売利益を失うことに止まるが、被告商品の使用は原告らの放送事業者の複製権及び送信可能化権の侵害を伴うものであるから、その販売は保護すべき利益に乏しい。このような場合には、侵害行為の差止め請求との関係では、被告商品の販売行為を直接の侵害行為と同視し、その行為者を「著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」と同視することができるから、著作権法112条1項を類推して、その者に対し、その行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である」
◆H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488 著作権 民事訴訟事件
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
▲ go to TOP
2005.10.12
◆H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件
新聞記事の見出しが著作物かどうか、著作物でないとしても不法行為として損害賠償が認められるかが争われました。
知財高裁は、著作物でないとしても、不法行為として損害賠償が認められると判断しました。
著作物性については、「上記365個のYOL見出しは,その性質上,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところである上,個別にみても,・・いずれも事実関係を客観的にありふれた表\現で構成したものであり,見出しに対応するYOL記事本文との関係をも考慮しつつ検討するとしても,これらのYOL見出しの表\現に創作性があるとは到底いえない。」と判断しました。
一方、「とりわけ,本件YOL見出しは,控訴人の多大の労力,費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること,著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの,相応の苦労・工夫により作成されたものであって,簡潔な表現により,それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること,YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば,YOL見出しは,法的保護に値する利益となり得るものというべきである。」と不法行為であることを認めました。
原審です。
H16. 3.24 東京地裁 平成14(ワ)28035 著作権 民事訴訟事件
◆H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件
関連カテゴリー
>> 著作物
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
▲ go to TOP
2005.03. 7
◆H17. 3. 3 東京高裁 平成16(ネ)2067 著作権 民事訴訟事件
刊行された書籍について、インターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」に,上記対談記事が無断で転載されて自動公衆送信されたとして、書籍の著作権者が、掲示板運用者に差止及び損害賠償を求めていました。東京高裁は、請求棄却した原審を破棄し、差止および損害賠償を認めました。
インターネット上においてだれもが匿名で書き込みが可能な掲示板を開設し運営する者は,著作権侵害となるような書き込みをしないよう,適切な注意事項を適宜な方法で案内するなどの事前の対策を講じるだけでなく,著作権侵害となる書き込みがあった際には,これに対し適切な是正措置を速やかに取る態勢で臨むべき義務がある。掲示板運営者は,少なくとも,著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合には,可能\ならば発言者に対してその点に関する照会をし,更には,著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに削除するなど,速やかにこれに対処すべきものである。
(原審・東京地方裁判所平成15年(ワ)第15526号,平成16年3月11日判決)
◆H17. 3. 3 東京高裁 平成16(ネ)2067 著作権 民事訴訟事件
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 公衆送信
▲ go to TOP
2003.02. 3
◆ H15. 1.29 東京地裁 平成14(ワ)4249 著作権 民事訴訟事件
日本エム・エム・オーが運営する電子ファイル交換サービスについての中間判決です。
裁判所は、「被告らは,原告らに対して,上記電子ファイル交換サービスにおいて,上記各レコードをMP3形式で複製した電子ファイルが交換されたことについて,連帯して損害賠償金を支払う義務を負う」と判断しました。
原告がJASRACの事件が、
◆H15. 1.29 東京地裁 平成14(ワ)4237 著作権 民事訴訟事件 です。
◆ H15. 1.29 東京地裁 平成14(ワ)4249 著作権 民事訴訟事件
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
>> 複製
▲ go to TOP
2002.12.24
◆H14.10.29 東京高裁 平成14(ネ)2887等 著作権 民事訴訟事件
あるホームページ上の掲示板に書き込まれた文章が転載されたことを不服として、出版等の中止及び損害賠償金の支払などを請求した事件です。
インターネット上の情報は一般的な情報と異なり承諾を必要とする範囲を狭くすべきかが争点の1つになりました。
裁判所は、「インターネット上の書込みについて,その利用の承諾を得ることが全く不可能というわけではない。また,承諾を得られない場合であっても,創作性の程度が低いものについては,多くの場合,表\現に多少手を加えることにより,容易に複製権侵害を回避することができる場合が多いと考えられるから,そのようなものについても著作物性を認め,少なくともそのままいわゆるデッドコピーをすることは許されない,と解したとしても,そのことが,インターネットの利用,発展の妨げとなると解することはできないというべきである。」と判断しました。
◆H14.10.29 東京高裁 平成14(ネ)2887等 著作権 民事訴訟事件
関連カテゴリー
>> 著作権(ネットワーク関連)
▲ go to TOP