動画投稿サイトの運営者に著作権侵害に基づく、差し止め請求が認められました。
「・・被告会社は,同ファイルサーバに対する使用権原に基づき,本件サービスにおいて送受信の対象とされているファイルの所在及び内容を把握でき,必要に応じてファイルの送受信を制限したり,特定の利用者の利用自体を禁止したり,ファイルを削除する等の措置を講じることができるから(甲7,乙1,31,弁論の全趣旨),ライムライト社の管理するファイルサーバも含めて本件サーバを管理支配しているものと認められる。また,被告会社は,前記第2,2前提となる事実(3)アに認定したとおり,その定める独自のユーザインターフェイス環境においてユーザにコンテンツを提供するというコンセプトを有する本件サイトを開設しており(甲7,乙1,弁論の全趣旨),ただ,そのコンテンツがユーザの提供によるというにすぎないところであり,外形的には,被告会社は,少なくとも公衆送信(送信可能化を除く。)はしている。もっとも,複製又は送信可能\化については,後記(2)イ(ア)c(c)のとおり被告会社の代表者である被告A自らが行ったものも一部あるが,それ以外のものについては外形的にはユーザが行っている。また,複製又は送信可能\化される動画ファイルの選択はユーザの任意によるものであり,その結果として,公衆送信される動画ファイルも上記のようにユーザが任意に選択した範囲の中のものに限られるから,公衆送信されるべき動画ファイルの設定それ自体には被告会社は直接には関与していないことになる。したがって,複製及び送信可能化のみならず,公衆送信についても,侵害主体を論じる必要がある。この点,著作権法上の侵害主体を決するについては,当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,これらの観点を踏まえた上で,実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能\な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。・・・・・以上からすると,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであるところ,被告会社は,このような本件サービスを管理支配している主体であって,実際にも,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と約5割に達しているものであるところ,このような著作権侵害の蓋然性は被告会社において予想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,被告会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採らず,このような行為により利益を得ているものということができる。そうすると,被告会社は,著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引,招来,拡大させてこれにより利得を得る者であって,侵害行為を直接に行う者と同視できるから,本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能\化を含む。)に係る著作権侵害の主体というべきである。」
◆判決本文
2009.12. 8
ネットオークションの為に、出品作品の画像を掲載した冊子の発行が著作権侵害かが争われました。平成22年からは一部除外規定はあるものの、引用、展示に伴う複製、時事の報道、権利濫用の主張を全て否定し、著作権侵害と認めました。
◆判決本文
2009.05. 8
著作権侵害として、放送局およびこれに放送を依頼した会社が訴えられました。放送局に過失はないと判断されました。
「前記(1)の前提事実によれば,i)被告スカパーは,被告亜太との間で締結した本件委託契約に基づいて,被告亜太が電気通信役務利用放送事業者として本件CS放送サービスで提供する放送番組に係る放送番組送出業務及び運用業務の委託を受けたが,本件委託契約上,被告スカパーが当該放送番組の制作,編集等について関与することは予定されていなかったこと,ii)本件放送のプロセスにおいて,被告スカパーが行った放送番組送出業務は,本件委託契約に基づいて,被告亜太から本件ドラマの信号(ベースバンド信号)を回線を通じて受信し,これを機械的に圧縮符号化し,電気通信事業者であるジェイサットからの委託に基づいて,圧縮符号化された信号を機械的に高次元多重化・変調処理し,ジェイサットの保有する通信衛星へ伝送可能な放送波にした上で,その放送波を通信衛星まで伝送したというものであり,被告亜太から受信した本件ドラマの信号(ベースバンド信号)を瞬時かつ機械的に処理してリアルタイムでそのまま通信衛星に向けて伝送したものであることが認められる。そうすると,本件放送のプロセスにおいて被告スカパーが行った放送番組送出業務は,上記のような機械的な処理であって,被告亜太が制作・編集した放送番組である本件ドラマの内容を公衆によって受信されることを直接の目的として行ったものとはいえないから,被告スカパーが本件放送の主体であると解することはできない。
(イ) 次に,被告スカパーは,本件CS放送サービスを運営し,また,本件委託契約により,被告亜太から運用業務(顧客管理業務,広告宣伝等の普及促進業務等)の委託を受けていたのであるから(前記(1)ア(イ)),被告スカパーは,被告亜太が本件CS放送サービスの785チャンネルで提供する放送番組名や放送番組の内容の一部を認識していたものと認められる。しかし,被告スカパーは,被告亜太が提供する放送番組の制作,編集等について関与していなかったこと(前記(ア))に照らすならば,被告スカパーが,被告亜太から運用業務の委託を受けていたからといって,個々の放送番組の具体的な内容やその著作権の帰属等について十分に知り得る立場にあったとまでいうことはできない。また,本件放送がされた平成17年5月当時,本件CS放送サービスのチャンネル数は合計295であったこと,そのうち,785チャンネルだけをみても1日当たりの放送番組数は40数番組であったこと(前記(1)イ(イ))に照らすならば,本件放送がされた当時の1日当たりの放送番組数はかなりの多数に及んでいたものと推認されるから,被告スカパーが本件CS放送サービスで放送される個々の放送番組の内容の詳細を把握し,当該放送番組を放送した場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認することは極めて困難であったことが認められる。そうすると,被告スカパーは,個別の放送番組の放送前に,その内容に著作権侵害等の法令違反が存在することを現に認識し,あるいは,著作権者等関係者からの警告等を受けるなどして著作権侵害等の法令違反が存在する具体的な可能性を認識していた事情がある場合であれば格別,そのような事情のない場合には,個別の放送番組ごとに,その放送前に,当該放送番組が放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認すべき注意義務を負うものではないと解される。しかるに,本件放送について,被告スカパーが,その放送前に著作権侵害等の法令違反が存在することを現に認識していたことを認めるに足りる証拠はなく,また,被告スカパーは,本件放送前はもとより,本件放送がされた期間中も,原告から,本件ドラマの放送が本件著作権の侵害に当たる旨の通知あるいは警告を受けたことがなかったのであるから(前記(1)ウ(イ)),被告スカパーにおいて,本件放送前に,本件ドラマが放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認すべき注意義務を負っていたものということはできない。」
◆平成20(ワ)3036 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年04月30日 東京地方裁判所
海外でのテレビ視聴を可能とする装置の販売および管理について、知財高裁は従来の考え方を否定して、業者が複製主体であるとはいえないと判断し、地裁判決を破棄しました。
「利用者が親子ロクラクを設置・管理し,これを利用して我が国内のテレビ放送を受信・録画し,これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為であることは異論の余地のないところであり,かかる適法行為を基本的な視点としながら,被控訴人らの前記主張を検討してきた結果,前記認定判断のとおり,本件サービスにおける録画行為の実施主体は,利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず,控訴人が提供する本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境,条件等を提供しているにすぎないものというべきである。かつて,デジタル技術は今日のように発達しておらず,インターネットが普及していない環境下においては,テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後,これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが,当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。しかしながら,我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し,国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中,デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して,海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。そして,技術の飛躍的進展に伴い,新たな商品開発やサービスが創生され,より利便性の高い製品が需用者の間に普及し,家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。本件サービスにおいても,利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから,かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく,もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない。したがって,本件サービスにおいて,著作権法上の規律の観点から,利用者による本件複製をもって,これを控訴人による複製と同視することはできず,その他,控訴人が本件複製を行っているものと認めるに足りる事実の立証はない。なお,クラブキャッツアイ事件最高裁判決は,スナック及びカフェを経営する者らが,当該スナック等において,カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き,ホステス等の従業員において,カラオケ装置を操作し,客に対して曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め,客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ,また,しばしば,ホステス等にも,客とともに又は単独で歌唱させ,もって,店の雰囲気作りをし,客の来集を図って利益を上げることを意図していたとの事実関係を前提に,演奏(歌唱)の形態による音楽著作物の利用主体を当該スナック等を経営する者らと認めたものであり,本件サービスについてこれまで認定説示してきたところに照らすならば,上記判例は本件と事案を異にすることは明らかである。」
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◆平成19(ワ)17279号
◆平成18(ヨ)22046号
◆平成20(ネ)10055 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所