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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権(ネットワーク関連)

平成22(ワ)7213 損害賠償請求事件 平成23年09月05日 東京地方裁判所

 テレビ番組を海外居住者に提供することは、公衆送信に該当すると判断されました。
 前記前提事実(2)イでみた本件サービスにおける配信システムの具体的内容によれば,本件サービスのうち,前記前提事実(2)イ(イ)のテレビ番組の動画ファイル形式による記録及び配信システムにおいては,テレビ放送を,ケーブルテレビ配線を介して受信した上,記録用サーバ機に記録するものであるから,テレビ放送に係る音及び影像を録音,録画するものであり,これを複製するものということができる(最高裁平成23年1月20日第一小法廷判決・裁判所時報2103号128頁参照)。ウ 本件サービスにおいて視聴可能なテレビ番組中に原告の地上波テレビ放送に係る放送番組が含まれていることは前記のとおりであるから,本件サービスのうち,動画ファイル形式により記録及び配信するものは,原告が放送事業者としてその放送について有する複製権を侵害するものである。
(3) この点に関し,被告は,本件サービスでは,利用者に個々の仮想PCが割り当てられ,各利用者による機器の操作が可能であって,各利用者が録画予\約した番組のみをダウンロードできる仕様としていたのであり,各利用者による機器の操作が不可欠であったと主張し,各サーバ機の自動公衆送信装置該当性を否認するが,前記前提事実でみた本件サービスの内容及び利用者数等に照らすと,何人も本件サービス利用契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであるから,本件サービスの利用者は不特定かつ多数の者に当たり,「公衆」(同法2条5項)に該当するものと認められるのであって,本件サービスにおけるストリーミング配信用サーバ機及び動画ファイル配信用サーバ機は自動公衆送信装置に該当する。被告の主張は採用することができない。
(4) 送信可能化権侵害及び複製権侵害の主体について
前記前提事実によれば,本件サービスは,ジェーネット合資会社及びジェーネット社により管理運営され,その利用料金は,上記2社名義の銀行口座に入金されていたものであることが認められるが,上記2社は,いずれも,被告が,本件サービスの管理運営のために設立した会社であって,実質的には被告一人で経営していたものであると認められる上,前記前提事実(6)のとおり,上記2社の銀行口座に入金された利用料金は,ほぼ全額が出金され,被告個人名義口座に入金されていたものであって,本件サービスによる利益は被告個人に帰属していたものであり,後記2のとおり,被告は本件サービスの違法性を認識しながら,本件サービスに係るシステムを構築していたと認められるのであるから,本件サービスに係る送信可能\化権侵害及び複製権侵害行為は,被告個人も独立の侵害行為の主体として関与したものであると認められる。

◆判決本文

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平成23(ワ)6526 プログラム著作権使用料等請求事件 平成23年08月25日 大阪地方裁判所 

 契約終了後にプログラムを使用したとして、プログラムの著作権侵害が認められました。原告被告とも代理人無しです。
 本件契約(甲1)などによれば,本件プログラムは平成18年以前に作成されたものであること及び本件契約に基づく本件プログラムの利用料等は1か月2万8380円であったことが認められる。また,弁論の全趣旨によれば,本件プログラムと同様の機能を有する他のプログラムについて,インターネットで無料配布されたり,相当低廉な価額で提供されたりしているものもあることが認められる。これらのことに加え,前提事実で認定した被告による本件プログラムの利用態様及び推定される利用期間など一切の事情を考慮すれば,平成22年5月28日ころと平成23年3月28日ころにおけるそれぞれの無断利用について各5万円の限度で損害が発生したものと認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高第一小

 まねきTVに続き、ロクラク2についても、最高裁は複製権侵害と認定し、知財高裁の判断を破棄差し戻しました。
 放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\\を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十\\分であるからである。
裁判官金築誠志の補足意見
 著作権法上の複製等の主体の判断基準に関しては,従来の当審判例との関連等の問題があるので,私の考え方を述べておくこととしたい。
1 上記判断基準に関しては,最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。このように,「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。
2 原判決は,本件録画の主体を被上告人ではなく利用者であると認定するに際し,番組の選択を含む録画の実行指示を利用者が自由に行っている点を重視したものと解される。これは,複製行為を,録画機器の操作という,利用者の物理的,自然的行為の側面に焦点を当てて観察したものといえよう。そして,原判決は,親機を利用者が自己管理している場合は私的使用として適法であるところ,被上告人の提供するサービスは,親機を被上告人が管理している場合であっても,親機の機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,利用者に代わって整備するものにすぎず,適法な私的使用を違法なものに転化させるものではないとしている。しかし,こうした見方には,いくつかの疑問がある。法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能\\なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。また,ロクラクIIの機能からすると,これを利用して提供されるサービスは,わが国のテレビ放送を自宅等において直接受信できない海外居住者にとって利用価値が高いものであることは明らかであるが,そのような者にとって,受信可能\\地域に親機を設置し自己管理することは,手間や費用の点で必ずしも容易ではない場合が多いと考えられる。そうであるからこそ,この種の業態が成り立つのであって,親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。さらに,被上告人が提供するサービスは,環境,条件等の整備にとどまり,利用者の支払う料金はこれに対するものにすぎないとみることにも,疑問がある。本件で提供されているのは,テレビ放送の受信,録画に特化したサービスであって,被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり,利用者もテレビ番組を録画,視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で,著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。もっとも,本件は,親機に対する管理,支配が認められれば,被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから,上記利益の帰属に関する評価が,結論を左右するわけではない。
3 原判決は,本件は前掲判例と事案を異にするとしている。そのこと自体は当然であるが,同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。原判断は,こうした総合的視点を欠くものであって,著作権法の合理的解釈とはいえないと考える。

◆判決本文

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平成21(受)653 著作権侵害差止等請求事件 平成23年01月18日 最高裁第三小

 まねきTVについて、著作権侵害無しとの原審が破棄されました。
 公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能\\を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
イ そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
ウ これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能\\化に当たるというべきである。
(2) 公衆送信権侵害について
本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。6 以上によれば,ベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しないことのみをもって自動公衆送信装置の該当性を否定し,被上告人による送信可能\\化権の侵害又は公衆送信権の侵害を認めなかった原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。原判決は破棄を免れず,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

◆判決本文

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