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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権(ネットワーク関連)

平成24(ネ)10027 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年08月08日 知的財産高等裁判所

 グリー vs DeNAの釣りゲームについて、知財高裁は、釣りゲームの画面は、表現といえるまで具体化されていないとして、著作権侵害ではないと判断しました。
 原告作品と被告作品とは,いずれも携帯電話機向けに配信されるソーシャルネットワークシステムの釣りゲームであり,両作品の魚の引き寄せ画面は,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において,共通する。イ しかしながら,そもそも,釣りゲームにおいて,まず,水中のみを描くことや,水中の画像に魚影,釣り糸及び岩陰を描くこと,水中の画像の配色が全体的に青色であることは,前記(2)ウのとおり,他の釣りゲームにも存在するものである上,実際の水中の影像と比較しても,ありふれた表現といわざるを得ない。次に,水中を真横から水平方向に描き,魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは,原告作品の特徴の1つでもあるが,このような手法で水中の様子を描くこと自体は,アイデアというべきものである。また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。そして,同心円の態様は,いずれも画面のほぼ中央に描かれ,中心からほぼ等間隔の三重の同心円であるという点においては,共通するものの,両者の画面における水中の影像が占める部分が,原告作品では全体の約5分の3にすぎない横長の長方形で,そのために同心円が上下両端にややはみ出して接しており,大きさ等も変化がないのに対し,被告作品においては,水中の影像が画面全体のほぼ全部を占める略正方形で,大きさが変化する同心円が最大になった場合であっても両端に接することはなく,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化するといった具体的表\現において,相違する。しかも,原告作品における同心円の配色が,最も外側のドーナツ形状部分及び中心の円の部分には,水中を表現する青色よりも薄い色を用い,上記ドーナツ形状部分と中心の円部分の間の部分には,背景の水中画面がそのまま表\示されているために,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,放射状に仕切られた11個のパネルの,中心の円を除いた部分に,緑色と紫色が配色され,同心円の存在が強調されている点,同心円のパネルの配色部分の数及び場所も,魚の引き寄せ画面ごとに異なり,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,緑色無地,銀色の背景に金色の釣り針,鮮やかな緑の背景に黄色の星マーク,金色の背景に銀色の銛,黒色の背景に赤字の×印の5種類に変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表\現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。さらに,黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても,釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き,釣り糸も描いているゲームは,前記(2)ウのとおり,従前から存在していたものであり,ありふれた表現というべきである。しかも,その具体的表\現も,原告作品の魚影は魚を側面からみたものであるのに対し,被告作品の魚影は前面からみたものである点等において,異なる。
ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表\現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,同心円が表\示された以降の画面をみても,被告作品においては,まず,水中が描かれる部分が,画面下の細い部分を除くほぼ全体を占める略正方形であって,横長の長方形である原告作品の水中が描かれた部分とは輪郭が異なり,そのため,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表\示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表\示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成23(ワ)13060

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平成23(ネ)10011等 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所

 ロクラクIIの差し戻し判決です。知財高裁は具体的事案を検討して侵害と認定しました。部門が4部から3部に変わってます。
 最高裁判所は,「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(サービス提供者)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\を有する機器(複製機器)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。」,「複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である」等と判示して,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等について,更なる審理を尽くさせる必要があるとした。当裁判所は,審理の結果,本件サービスにおける,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮すると,被告は,放送番組等の複製物を取得することを可能にする本件サービスにおいて,その支配,管理下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\を有する機器に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合におけるサービス提供者に該当し,したがって,被告は,本件放送番組等の複製の主体であると認定,判断すべきであると解した。その理由は,以下のとおりである。
・・・
 上記認定した事実に基づいて判断する。まず,ロクラクIIは,親機ロクラクと子機ロクラクとをインターネットを介して1対1で対応させることにより,親機ロクラクにおいて受信した放送番組等を別の場所に設置した子機ロクラクにおいて視聴することができる機器であり,親機ロクラクは,設置場所においてテレビアンテナを用いて受信した放送番組等をハードディスクに録画し,当該録画に係るデータをインターネットを介して,子機ロクラクに送信するものであって,ロクラクIIは,親子機能を利用するに当たり,放送番組等を複製するものといえる。また,被告は,上記のような仕組みを有するロクラクIIを利用者にレンタルし,月々,賃料(レンタル料)を得ている(なお,被告は,第1審判決前の時点において,一般利用者に対し,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を販売していたとは認められないのみならず,同判決後の時点においても,親機ロクラクと子機ロクラクのセット価格が39万8000円と高額に設定されていることからすれば,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を購入する利用者は,ほとんどいないものと推認される。)。そして,日本国内において,本件サービスを利用し,居住地等では視聴できない他の放送エリアの放送番組等を受信しようとする需要は多くないものと解されるから,本件サービスは,主に日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等を視聴するためのサービスであると解される。さらに,本件サービスは,利用者が,日本国内に親機ロクラクの設置場所(上記のとおり,電源供給環境のほか,テレビアンテナ及び高速インターネットへの接続環境を必要とする。)を確保すること等の煩わしさを解消させる目的で,サービス提供者が,利用者に対し,親機ロクラクの設置場所を提供することを当然の前提としたサービスであると理解できる。そして,被告は,本件モニタ事業当時には,ほとんどの親機ロクラクを被告本社事業所内に設置,保管し,これに電源を供給し,高速インターネット回線に接続するとともに,分配機等を介して,テレビアンテナに接続することにより,日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等の複製及び視聴をすることを可能にしていたことが認められる。また,被告は,本件サービスにおいて,当初は,親機ロクラクの設置場所として,被告自らハウジングセンターを設置することを計画していたこと,ところが,被告は,原告NHKらから,本件サービスが著作権侵害等に該当する旨の警告を受けたため,利用者に対し,自ら或いは取扱業者等をして,ハウジング業者等の紹介をし,ロクラクIIのレンタル契約とは別に,利用者とハウジング業者等との間で親機ロクラクの設置場所に係る賃貸借契約を締結させるとの付随的な便宜供与をしたこと,親機ロクラクの設置場所に係る賃料については,被告自ら又は被告と密接な関係を有する日本コンピュータにおいて,クレジットカード決済に係る収納代行サービスの契約当事者になり,本件サービスに係る事業を継続したことが認められる。上記の複製への関与の内容,程度等の諸要素を総合するならば,i)被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれらと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,また,ii)被告は,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を継続的に作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。
・・・
 以上のとおり,被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。

◆判決本文

◆最高裁判決はこちらです。 

1審・仮処分はこちらです
    ◆平成19(ワ)17279号
    ◆平成18(ヨ)22046号

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平成21(あ)1900 著作権法違反幇助被告事件 平成23年12月19日 最高裁判所第三小法廷 決定 棄却 大阪高等裁判所

 刑事事件です。ファイル共有ソフトであるWinnyの配布が、著作権法違反幇助罪に該当しないとした高裁判決は結論において妥当すると判断されました。
 刑法62条1項の従犯とは,他人の犯罪に加功する意思をもって,有形,無形の方法によりこれを幇助し,他人の犯罪を容易ならしむるものである(最高裁昭和24年(れ)第1506号同年10月1日第二小法廷判決・刑集3巻10号1629頁参照)。すなわち,幇助犯は,他人の犯罪を容易ならしめる行為を,それと認識,認容しつつ行い,実際に正犯行為が行われることによって成立する。原判決は,インターネット上における不特定多数者に対する価値中立ソフトの提供という本件行為の特殊性に着目し,「ソ\フトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供する場合」に限って幇助犯が成立すると解するが,当該ソ\フトの性質(違法行為に使用される可能性の高さ)や客観的利用状況のいかんを問わず,提供者において外部的に違法使用を勧めて提供するという場合のみに限定することに十\分な根拠があるとは認め難く,刑法62条の解釈を誤ったものであるといわざるを得ない。
  (2) もっとも,Winnyは,1,2審判決が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソ\\フトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソ\フトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。新たに開発されるソ\フトには社会的に幅広い評価があり得る一方で,その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば,かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能\性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。かかるソ\フトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。すなわち,ソ\フトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,当該ソ\フトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソ\フトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソ\フトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。\n

◆判決本文

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