2024.02.15
令和1(ワ)10940 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和6年1月29日 大阪地方裁判所
プログラムの著作物性は認められましたが、複製・翻案については同意があったと認定されました。一方、氏名表示権侵害として10万円が認められました。\n
ア 本件プログラム1は、マンロック(高圧室作業場所への作業員の出入り用
気密扉)内の気圧、二酸化炭素濃度等を記録するペーパーレスレコーダー(最
大10機)を集中管理(レコーダーで記録された情報を遠隔地のパソコンで\nリアルタイムに表示し、データを蓄積するとともに閾値を超えた場合は警告\nを発することが可能)するシステムプログラムであり、統合管理画面(メイ\nンフォーム画面)、個々のレコーダーの監視画面(レコーダーフォーム画面。
表示形式はレコーダーと同様。)、レコーダーの通信ルーチン、データベース\n(レコーダーの情報を集積する部分)などを構成要素とするものである。(甲\n28、弁論の全趣旨)
この点、画面構成や、レコーダーのデータをどのように扱うかについては、\nプログラムの目的、環境規制の態様、ハードウェアやオペレーティングシス
テムなどに由来する制約等により、表現の選択の余地の乏しいものもあると\n考えられるが、データ処理の具体的態様(クラス、サブルーチンの利用等の
構造化処理を含む)、レコーダーとの通信プロトコルの選択及びそれに応じ\nた実装、データベース化の具体的処理手順などについて、各処理の効率化な
ども意識してソースコードを記述する過程においては、相応の選択の幅があ\nるものと認められる。
イ 原告は、このような選択の幅の中から、データ処理の態様を設計した上、
A4用紙で約120頁分(1頁あたり60行程度。以下同様)のソースコー\nドを作成したことからすると、ソースコード(甲28)の具体的記述を全体\nとしてみると、本件プログラム1は、原告の個性が反映されたものであって、
創作性があり、著作物であるということができる。
ウ 被告は、本件プログラム1のソースコードの多くの記述が公開されたサン\nプルプログラムであり、単純な作業を行う機能の複数の記述であり、計測上\nの管理基準に対応させた記述の順序や組合せであるから、ソースコードの記\n述に創作性はない旨を主張する。しかし、ソースコードに既存のサンプルが\n含まれることについて的確な立証はない上、仮にそのような記述が含まれる
としても、プログラム全体としての創作性を直ちに否定するものともいえな
いから、被告の主張は採用できない。
・・・
前提事実及び認定事実によると、本件各プログラムの中には、明示的に
異なる現場で用いることを前提とする仕様が採用されたものがあること、
本件各プログラムはいずれも発注の原因となった現場と異なる現場で用
いることについてプログラムの仕様上の制限はないとうかがわれること、
原告自身、一つの現場が終了したと見込まれる後も、プログラムの修正に
応じるなどしていること、原告自らソースコードを納品したものもあるこ\nとに加え、原告が、平成2年に独立した後、多数回にわたって被告から依
頼されたプログラムを制作、納品し、平成20年12月から平成21年4
月までの間は、被告に採用されてプログラム制作業務に従事していたこと
からすれば、計測業務における被告のプログラムの利用実態(プログラム
を一つの現場で利用するだけでなく他の現場においても複製、変更又は改
変(カスタマイズ)して利用していたことを含む。)から、自己が制作して
納品したプログラムが被告により複数の現場で利用され得ることを認識
していたものとみられることが認められる。これらの本件においてうかが
われる事情からすると、本件各プログラムの開発に係る各請負契約におい
て、成果物が、少なくとも被告の内部で使用される限りにおいては、他の
現場における使用や改変を許容する旨の黙示の合意があったものという
べきである。
・・・
(1) 氏名表示権が侵害されたか(争点3−3、5−2)及び被告に故意又は過失\nがあったか(争点3−4、5−3)
ア 本件プログラム3(争点3−3、3−4)
前記前提事実のとおり、本件プログラム3を複製、変更した被告プログラ
ム3の起動画面やバージョン表示画面においては、被告の社名が表\示され、
原告の氏名は表示されていない(甲9)。そして、本件プログラム3と被告プ\nログラム3を比較すると、ソースコードの大部分において同一であり、被告\nプログラム3には本件プログラム3に時間率評価機能を果たす計算処理や\ndB値の時系列変数の計算処理の機能が追加された点において相違するが\n(甲8の3)、この相違点から被告プログラム3が本件プログラム3と別個
のプログラムであるということはできない。
したがって、被告による上記表記により、本件プログラム3について、原\n告の氏名表示権が侵害され、その態様から、被告に故意があったと認められ\nる。
・・・
(3)損害の有無及び額(争点3−5、5−4)
(1)の被告の行為により原告の被った損害は、本件に顕れた一切の事情を考
慮し、10万円と認め(なお、原告は、本件プログラム5についての氏名表示\n権侵害固有の損害を主張しないが、弁論の全趣旨から、相当の損害賠償を求め
る趣旨と解される。)、被告は、相当因果関係のある弁護士費用1万円を加えた
11万円及びこれに対する遅延損害金を支払う義務を負う。
◆判決本文
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2023.10.31
令和5(ネ)10059 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年10月12日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
Yahoo!地図が原告地図の複製・翻案に該当するか争われました。知財高裁は、1審の東京地裁(29部)と同様に、翻案には該当しないと判断しました。
イ 判断手法(検討手順)について
ところで、控訴人と被控訴人は、複製又は翻案の有無を検討する手法
としての2段階テストと濾過テストの採否についてそれぞれの立場で主
張しているが、要は、創作性のある表現部分について同一性があるとい\nえるかどうかの判断がされれば足りるのであって、その判断に至る過程
で、最初に両著作物の共通部分の抽出を行うか、創作性の認められる表\n現上の特徴にまず着目するかという検討手順に関しては、合理的・効率
的な判断に資するための合目的的な観点から、事案に応じて適切に使い
分ければ足りる。本件では、控訴人の主張する手法(控訴人のいう2段階テスト)に沿
って(部分的に濾過テストの手法を併用する。)、以下、検討すること
とする。
(2) 控訴人地図1の表現上の本質的特徴について\n
ア 控訴人は、控訴人地図1の表現上の本質的特徴として、別紙2記載の本\n質的特徴1)〜7)を主張するところ、別紙の各控訴人地図1(甲1)に照
らして、控訴人地図1がその主張する特徴を備えていると認めることは
できる。そして、上記(1)アで述べたところに照らすと、上記本質的特徴1)〜7)
は、それぞれを個別に取り上げれば、地理情報の取捨選択、その配置等
の具体的な表現につき、上記のような制約の下での狭い幅での選択が示\nされているにとどまるものであり、従来の地図に比して顕著な特徴を有
するといった独創性が含まれているとまでは認められない。
イ この点、控訴人は、特に本質的特徴1)、同3)、同4)、5)について、従来
の常識にとらわれない素材の取捨選択を行うなどしたものであって、そ
の一部の組み合わせだけでも独創性のある表現が認められる旨主張する。\nしかし、まず、本質的特徴1)に関していえば、後述するとおり、そもそ
も被控訴人各地図と共通するとは認められないものである(この点は濾
過テストの手法を用いた。)。そして、本質的特徴3)については、控訴
人地図1の作成当時、建物及び住宅の真上から見た形状を影なしのポリ
ゴンで記載した地図は複数存在したと認められ(乙6,7,11,14,
15、25、32〜38)、本質的特徴4)、5)については、控訴人地図
1の作成当時、建物の名称及び住宅の番地が、建物及び住宅のポリゴン
の中央付近に、(番地についてはアラビア数字で)折り返すことなく横
書きされた記載を含む地図は複数存在したと認められ(乙7,14、1
5、25、32〜38)、いずれもありふれた特徴にすぎない。
なお、控訴人は、上記証拠の地図は、新旧番地を対照するという特殊な
背景の下で作成されたものが含まれているなどと主張するところ、確か
に、「番地」の取捨選択において、控訴人の主張する事情は重要な意味
を有するといえるが、上記の証拠の中には、住居表示新旧対照図以外の\nものも含まれているし(乙25、32〜34)、「番地」の取捨選択以
外の要素に関しては、従来のありふれた表現を示す証拠としての適格性\nを失うものではない。控訴人の上記主張は採用できない。
ウ 以上に述べたところを踏まえると、控訴人地図1は、別紙2の本質的特
・徴1)〜7)を備える総体として表現上の創作性を認めることができるもの\nであり、その表現上の本質的部分の特徴を被控訴人各地図から直接感得\nできるかどうかも、これを断片的、部分的に捉えるのではなく、相違点
も含めた総体としての全体的な考察により検討する必要があるというべ
きである。
(3) プロアトラス地図との比較検討
ア 各別紙のプロアトラス地図と控訴人地図1とを、控訴人主張の本質的特
徴の項目ごとに比較すると、以下のとおり認められる。
(ア) 控訴人主張の本質的特徴1)(共通要素a)について
まず、地理情報の取捨選択という観点からみるに、プロアトラス地
図では、控訴人地図1と同じく、「道路・河川」、「検索の目安とな
る公共施設や著名ビル等の個別建物形」、「一般住宅及び建物の個別
建物形」、「検索の目安となる公共施設や著名ビル等の名称」、及び
「建物番地」を記載することを選択し、一般住宅及び建物に関する
「居住人氏名」、「地類界」(宅地の境等)、「等高線」を記載して
いないことは認められる。しかし、その実際の適用(当てはめ)として、「検索の目安となる公共施設や著名ビル等の名称」等の選択は必ずしも一致していない。
また、プロアトラス地図では、控訴人地図1には記載されていない交
差点名の記載がある(別紙プロアトラス地図・Aの「潮平」等)ほか、
「一般住宅及び建物」に関する「建物名称」を記載している点(プロ
アトラス地図・Aの「シャトレ喜鶴」「あけぼの」、プロアトラス地
図・Cの「タウン・ハウス」等)でも相違する。
次に、具体的な表現形式という観点からみても、プロアトラス地図\nは、1)ガソリンスタンドであれば「G」、飲食店であれば「R」、駐\n車場であれば「P」、学校であれば「文に〇の記号」など建物の種類
を示す記号が用いられている点、2)緑地部分が緑色、公共性の高い建
物は濃い灰色、商業施設等はオレンジ色、その他の建物及び住宅は薄
い灰色に塗り分けられ、道路が3色に塗り分けられている点で控訴人
地図1と相違しており、これらの点は、地理情報を表現する際の創作\n性に強く影響を及ぼす有意な相違と評価すべきものである。
控訴人は、これら相違点は、いずれも軽微な相違であり、表現の本\n質的特徴の同一性を失わせるものではないと主張する。しかし、地図
の著作物における地理情報の取捨選択、その配置等の具体的な表現方\n法には一定の制約があり、選択の幅が狭いと解されること(前記(1)ア)
を踏まえると、上記のような相違点を軽微なものと評価するのは相当
といえない。控訴人の主張は採用できない。
・・・・
(4) ヤフー地図との比較検討
ヤフー地図は、プロアトラス地図と多くの点で共通する特徴を有するもの
であり、したがって、控訴人地図1とプロアトラス地図との対比検討の項目
で述べたところは、ほぼそのままヤフー地図との対比検討に関しても妥当す
る。なお、プロアトラス地図になく、ヤフー地図に認められる特徴として、
ガソリンスタンド、コンビニエンスストア及びファーストフードショップの\nチェーン店について、名称ではなく各チェーン店の標章が記載されている点、
名称を折り返して表示する例がある点(ヤフー地図・Aの「健孝クリニック\n南部整形外科」等)が挙げられるが、これは、プロアトラス地図以上に控訴
人地図との表現上の違いが大きいことを示すものである。以上によれば、ヤフー地図についても、控訴人地図1の表\現上の本質的部分の特徴を直接感得できるとは認められないというべきである。
(5) 小括
したがって、被控訴人各地図は、いずれも控訴人地図1を複製又は翻案
したものとは認められないから、その余の点を判断するまでもなく、控訴人
地図1に関する著作権侵害は認められない。
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◆令和3(ワ)17636
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2023.06. 9
令和4(ネ)10106 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年6月8日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が争われました。1審は約200万円の損害賠償を認めました。知財高裁も同様ですが、損害額が上がっています。
1審被告は平成30年度掲載記事が「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事(甲9、10、乙14)は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表\現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表\現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。
また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。
したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。
◆判決本文
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◆令和2(ワ)3931
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◆令和5(ネ)10008
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2023.04.26
令和4(ネ)10125 損害賠償金請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年4月18日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ウェブページのフライパンの説明画像についての損害賠償請求事件です。1審は著作権侵害を認め、5万円の賠償を認めました。原告は、残りの約15万円の支払いを求めて控訴しましたが、控訴棄却です。関連事件がたくさんあります。
(1) 控訴人は、前記第2の4のとおり、1)本件各画像がウェブページごとに独立して利用されている以上、損害額はウェブページ数を基本に算定すべきである(同(1)及び(2))、2)第三者に許諾することを想定していない著作物にも相場の利用料を参酌して利用料を算出するべきである(同(3))旨主張する。上記主張に対して、引用に係る原判決の第4の3(補正後のもの)において説示するところを改めて敷衍すると、次のとおりである。
(2) 著作権法114条3項によって、著作権者が著作権侵害によって受けた損害の額とすることのできる「受けるべき金銭の額に相当する額」の算定に当たっては、当該著作物の利用回数あるいは当該利用から生じた利益等の、当該著作物の直接の侵害行為の物理的な分量に従うのみならず、当該著作物の利用期間、利用態様、当該著作物から享受できる内容又は価値、侵害者の内心の態様(同条5項参照)、当該著作物を利用する市場の状況、他の者への利用許諾の状況等の諸般の事情を総合考慮して定めるべきものである。
本件についてみると、ウェブサイトの閲覧上、本件各画像は、見かけ上、本件商品の数に相当するウェブページで閲覧されるものではあるが、それらは一定の目的をもって一体化された画像の一部が使い回されているとみることも可能なものであり、一体の利用とみることができるから、本件各画像又はウェブページごとに複製又は送信可能\化について損害額を算定することは妥当とはいい難い。そして、本件各画像の利用期間も短期間であって、たとえ通販サイトであろうとも、閲覧に供された回数は限定的なものと考えるのが自然である。さらに、本件画像2)中のフライパンで調理中の食材を写した写真と本件画像3)中のフライパンを製造している職人の写真は、スキャンパン社から提供を受けたものであることを控訴人は自認しており(スキャンパン社がこれら写真に係る著作権を控訴人に譲渡したことを認めるに足りる証拠はない。)、控訴人が著作権を有するものではないし、本件各画像は商業的実用用途を目的とする著作物であって、むしろ、本件各商品をありのままに表現することを主目的とするものと理解され、その表\現される思想又は感情は限定的なものであるといえる。このことは、本件各画像が文字、写真等の素材を組み合わせたものであったとしても変わるものではない。また、被控訴人に過失があることは免れないとしても、それは重大なものではなく、その利用目的も、控訴人の営業を殊更に妨害するためであったり、本件各画像に表現されたところから享受できる価値を損なうためであったりなどの、専ら害意に基づくものとは認められず、単純なる自己の営業のための商業的利用にすぎない。n
(3) 次に、写真又は画像についての利用許諾状況をみてみると、日本美術著作権協会の利用申請方法は、画像の利用許諾を原則として1用途1目的につき毎回申\請を要するものと定めていること(甲26)、株式会社東京美術倶楽部の使用料規程は、コンピューター・ネットワークにおける美術の著作物の利用料の額を、著作物1点あたり1回につき1か月当たり1万円(美術関係業態以外)、2か月目以降は5000円と定めていること(甲27)、朝日新聞社が運営するデータベースの利用規約は、収録された写真、動画等を提供するサービスにおける法人の利用条件を、1媒体につき1用途1回限りの非独占的使用に限り、重版、再放送その他の用途で再利用する場合には別料金が発生すると定めていること(甲28)、Imagenaviの利用ガイドは、画像素材について、使用になる用途、期間によって料金設定が決まり、複数媒体に使用する場合には1使用ごとに料金が発生すると定めていること(甲29)が認められるが、これらの規定が念頭に置く「目的」、「用途」、「回数」又は「使用」は何を基準とするかは一義的には明らかでなく、ましてや上記各証拠がウェブサイトという1媒体の中における利用料をウェブページを基準にして決めていると理解することも困難であるから、これら利用料の算定方法を直ちに本件における損害額の算定方法の参考とすることはできない(なお、控訴人から音楽又は音源の利用に関する利用許諾に関する証拠も提出されているが、著作物としての性質が大きく異なるものであり、その参酌は相当でない。)。
(4) さらに、写真又は画像についての利用料についてみると、毎日新聞社は、同社が権利を有する報道写真等をインターネット上で商業利用する者に対し、2万2000円から4万4000円の利用料の支払を求めることがあり(甲5)、朝日新聞社は、同社が権利を有する報道写真等をインターネット上で利用する者に対し、使用期間6か月までの場合に2万2000円、使用期間1年までの場合に3万3000円、使用期間3年までの場合に5万5000円の使用料の支払を求めることがあり(甲6)、株式会社アフロは、同社が権利を有する様々な種類の静止画像をインターネット上の広告やホームページなどに利用する者に対し、同一ウェブサイト内においては利用箇所を問わず、利用期間1年までの場合に2万2000円、利用期間3年までの場合に2万8600円、利用期間5年までの場合に3万3000円の利用料の支払を求めることがある(甲7)との事実が認められるものの、利用許諾される写真のサイズ、質等や、媒体の数、掲載場所等の利用許諾の際の利用条件の詳細が不明であり、これら利用料をそのまま本件における損害額の算定について参考とすることはできず、ましてや、上記利用料を参考として算定した額をウェブページ1ページ当たりの損害として損害額を算定すべきとする根拠ともならない。また、ペイレスイメージズは、印刷物又はウェブ用との用途における画像素材単品での購入価格を、解像度、大きさに応じて440円から5500円に設定しているとの事実は認められるものの(乙3)、どのような画像が想定されているのか不明であり、やはり、この購入代金をそのまま本件における損害額の算定について参考とすることができない。
(5) 以上のとおりであり、本件記録に顕れた諸般の事情を考慮すると、本件における損害額は、被告サイト全体における利用について5万円とするのが相当であると認められ、控訴人の前記(1)1)の主張を採用することはできず、同2)に主張するところを参酌しても、上記結論は左右されない。
3 当審における控訴人の追加主張に対する判断
控訴人は、前記第2の5のとおり、原審及び当審において生じた訴訟費用を不法行為に基づく損害として追加する旨を主張する。民事訴訟手続の遂行により要した費用のうち、民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものについては、専ら訴訟裁判所の裁判所書記官の処分を経て取り立てることが予定されているというべきであるから、当該訴訟における不法行為に基づく損害賠償請求において、民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されないと解される(最高裁判所平成31年(受)第606号令和2年4月7日第三小法廷判決参照)。控訴人は、訴え提起及び控訴提起の手数料や書類の送付に要した郵便費用を不法行為に基づく損害として主張するが、これらは民事訴訟費用等に関する法律2条1号、2号に定めるものであるから、これら費目を本件において損害賠償として請求することはできない。n
◆判決本文
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◆令和3(ワ)28410
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2023.04.24
令和3(ワ)17636 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年4月14日 東京地方裁判所
Yahoo!地図が原告地図の複製・翻案に該当するか争われました。東京地裁(29部)は、「記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべき」との判断基準を示しました。結論は請求棄却です。原告は個人です。
(1) 複製及び翻案の判断方法
ア 著作物の複製(著作権法2条1項15号)とは、印刷、写真、複写、録
音、録画その他の方法により有形的に再製することをいう。また、著作物
の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表\現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして、著作権法は、思想又は感情の
創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、\n事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない
部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製
又は翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁平成11年(受)
第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁
参照)。
そうすると、プロアトラスSV及びYahoo!地図が原告地図1を複
製又は翻案したものに当たるというためには、原告地図1とプロアトラス
SV及びYahoo!地図が、創作的表現において同一性を有することが必要であるものと解される。したがって、原告地図1とプロアトラスSV\n及びYahoo!地図との間で、アイデアなど表現それ自体でない部分でのみ同一性が認められる場合には、プロアトラスSV及びYahoo!地\n図は原告地図1を複製又は翻案したものに当たらない。また、原告地図1
とプロアトラスSV及びYahoo!地図との間に、表現において同一性が認められる場合であっても、同一性を有する表\現がありふれたものであるなど、その表現に創作性が認められない場合も、プロアトラスSV及びYahoo!地図は原告地図1を複製又は翻案したものに当たらないと解\nすべきである。
ところで、複製又は翻案の成否を判断するに当たっては、著作権を主張
する者が作成したものに着目して創作性を判断し、その上で、被疑侵害者
が作成したものを観察して、著作権の創作的表現と認められる部分が再製されているか否かを判断するとしても、原告地図1における創作的表\現がプロアトラスSV及びYahoo!地図に再製されていると認められるか
否かを検討する必要があるから、原告地図1とプロアトラスSV及びYa
hoo!地図の共通部分が創作的表現であるか否かを検討した場合と結論を異にするものではないというべきである。\n
イ この点、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号
によって客観的に表現するものであるから、個性的表\現の余地が少なく、
文学、音楽、造形美術上の著作物等に比して、著作権法上の保護を受ける
範囲が狭いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨
選択及び表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表\れ得るということができる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及
びその表示の方法を総合して判断すべきものであり、前記アの創作的表\現
の同一性についても、このような観点から検討すべきである。
(2) プロアトラスSVが原告地図1を複製又は翻案したものであるか
ア 証拠(甲1、4、63)及び弁論の全趣旨によれば、原告地図1は、沖
縄県糸満市周辺の地図であること、原告地図1及びプロアトラスSVにお
ける同市潮平及び阿波根周辺の各記載は、別紙原告地図1・A及びプロア
トラスSV・Aのとおりであること、同市照屋周辺の各記載は、別紙原告
地図1・B及びプロアトラスSV・Bのとおりであること、同市兼城周辺
の各記載は、別紙原告地図1・C及びプロアトラスSV・Cのとおりであ
ることが認められる。そこで、別紙原告地図1・AないしC及びプロアトラスSV・AないしCを対比し、原告が主張する原告地図1とプロアトラスSVの共通部分
(前記第3の1(原告の主張)(1)ア(ア)a(a)1)ないし5)並びに(b)6)及び
7)。以下、この第4の1(2)アの検討においては、当該(原告の主張)で付
した頭書の番号に従って、「共通部分1)」などという。)が創作的表現と認められるかについて検討する。\n
(ア) 共通部分1)について
a 原告は、原告地図1とプロアトラスSVには住宅地図であるという
共通部分1)が存在すると主張するところ、別紙原告地図1・Aないし
C及びプロアトラスSV・AないしCを対比すると、建物や住宅、道
路、河川等が記載されている点で一致するとは認められるものの、こ
れらの具体的な記載が一致しているとは認められない。
b 前記aの一致点について検討すると、地図に建物や住宅、道路、河
川等を記載すること自体はアイデアにすぎず、共通部分1)は、表現それ自体でない部分で同一性を有するにすぎないというべきである。\n したがって、共通部分1)について、創作的表現において同一性を有するものと認めることはできない。\n
(イ) 共通部分2)について
a 原告は、原告地図1とプロアトラスSVが、いずれも、検索の目安
となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物について、居住
人氏名や建物名称の記載を省略し、住宅及び建物のポリゴン並びに番
地のみを記載し、当該ポリゴンは影なしのポリゴンであり、番地は当
該ポリゴンのほぼ中央に、紙面又は画面の水平方向に沿って横書きで、
折り返すことなく、必ずしも当該ポリゴンの内部に収まらずに、アラ
ビア数字で記載されている点を、共通部分2)として主張する。しかし、別紙原告地図1・AないしC及びプロアトラスSV・Aな
いしCを対比すると、原告地図1とプロアトラスSVで、同じ建物に
ついて名称が記載されているものもあれば、一方の地図では名称が記
載されているが、他方の地図では記載されていないものもあり、公共
施設やビル等のうち検索の目安となるものや著名なものが異なるとい
える。また、原告地図1とプロアトラスSVで、住宅及び建物のポリ
ゴンの具体的な記載が全て一致するとは認められない。さらに、原告
地図1では、ほぼ全てのポリゴンにつき番地が記載されているのに対
し、プロアトラスSVでは、番地が記載されていないポリゴンが相当
数ある。
したがって、原告地図1とプロアトラスSVは、一部の住宅及び建
物のポリゴンの具体的な記載の点、一部の建物について建物名称が記
載され、住宅の居住人氏名やその他の建物の建物名称の記載は省略さ
れている点、住宅及び建物がポリゴンで表現されており、当該ポリゴンには影が記載されていない点、一部の住宅及び建物の番地が、当該\nポリゴンのほぼ中央に、紙面又は画面の水平方向に沿って横書きで、
折り返すことなく、必ずしも当該ポリゴンの内部に収まらずに、アラ
ビア数字で記載されている点でのみ一致すると認めるのが相当である。
b 前記aのとおり、原告地図1とプロアトラスSVで、一部の住宅及
び建物のポリゴンの具体的な記載が一致したとしても、それは、同じ
住宅又は建物を真上から見たときの外枠を記載したことによるもので
あるから、住宅及び建物の形状という事実において同一性が認められ
るにすぎない。また、原告地図1では、ポリゴンが淡い黄色であるの
に対し、プロアトラスSVでは、ポリゴンは薄い灰色、濃い灰色又は
オレンジ色であること、原告地図1では、番地は、黒色で、各数字が
鉛直方向に記載されているのに対し、プロアトラスSVでは、番地は、
薄茶色で、各数字が斜体で記載されていることを考慮すると、その他
の一致点は、具体的な表現において同一性を有するものとは認められず、地図の記載方法というアイデアにおいて同一性が認められるにす\nぎないといわざるを得ない。
さらに、共通部分2)が表現において同一性を有するものであるとしても、証拠(乙6、7、11、14、15、25、32ないし38)\nによれば、原告地図1の作成当時、建物及び住宅の真上から見た形状
を影なしのポリゴンで記載した地図は複数存在したと認められる。そ
うすると、このような記載方法については、ありふれていたといえる
上、原告地図1の表示範囲である沖縄県糸満市周辺の地図において、建物及び住宅の形状をこのようなポリゴンで記載するとしても、ポリ\nゴンは建物及び住宅の形状に従って記載するものであるため、表現の選択の幅は狭いといわざるを得ないから、創作性は認められないとい\nうべきである。
その上、証拠(乙7、14、15、25、32ないし38)によれ
ば、原告地図1の作成当時、建物及び住宅の番地が、建物及び住宅の
ポリゴンの中央付近に、アラビア数字で折り返すことなく横書きされ
た記載を含む地図は複数存在したと認められる。そうすると、このよ
うな記載方法についても、ありふれていたといえる上、原告地図1の
表示範囲である沖縄県糸満市周辺の地図において、建物及び住宅の番地をこのように記載するとしても、番地はあらかじめ指定されている\nものであるため、表現の選択の幅は狭いといわざるを得ないから、創作性は認められないというべきである。したがって、共通部分2)は、表現それ自体でない事実又はアイデアにおける同一性を有するにすぎないか、表\現において同一性を有する
としても、その表現に創作性は認められないから、共通部分2)につき、
創作的表現において同一性を有するものと認めることはできない。
c これに対して、原告は、乙第6及び32ないし34号証の各地図は
一般住宅の居住人名が記載された箇所があること、乙第7、14、1
5及び36ないし38号証の各地図は極めて特殊な状況の下で、一部
地域についてのみ作成されたものであること、乙第10号証の地図は
そもそもポリゴンの記載がないこと、乙第18号証の地図はポリゴン
を記載し、一般住宅の居住人名を記載せず、一部の建物の名称を記載
するという特徴を有しないこと、乙第24及び25号証の各地図は主
に自動車での移動等のために広域の道路情報や地理情報を得ることを
目的としたものであり、そもそも居住人名や番地を記載する必要はな
いことからすると、原告地図1の記載がありふれていたことの証拠と
ならないと主張する。
しかし、上記各地図は、いずれも、建物及び住宅の真上から見た形
状を影なしのポリゴンで記載したり、建物及び住宅の番地が、建物及
び住宅のポリゴンの中央付近に、アラビア数字で折り返すことなく横
書きされたりする部分を含んでいると認められ、他方で、本件全証拠
によっても、上記各地図が特殊な目的のために作成されたものである
といった、ありふれていることを否定するような事情を認めることは
できない。そうすると、上記の記載方法はありふれていたものといわ
ざるを得ない。
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2023.02.17
令和3(ワ)13720 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年1月20日 東京地方裁判所
出版権に基づく著作権侵害を主張しましたが、裁判所は、「相違部分には、被告の思想又は感情を創作的に表現した部分が含まれる」として、原作のまま複製には該当しないと判断しました。\n
1 争点1(被告表紙等が原告表\紙を「原作のまま…複製」(著作権法80条1項
1号)したものであるか)について
(1) 前記前提事実(2)イのとおり、原告は、Bとの間で、本件出版契約を締結し、
原告漫画について、紙媒体出版物(オンデマンド出版を含む。)として複製
し、頒布することなどを内容とする「出版権」の設定を受けることを合意し
たところ、この合意内容によれば、原告は、原告漫画を目的とする出版権と
して、「頒布の目的をもつて、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方
法により文書又は図画として複製する権利」(著作権法80条1項1号)を
取得したものと認められる。
そして、上記出版権は、著作物を「原作のまま…複製する権利」であるこ
とからすると、出版権の目的である著作物を有形的に再製する行為には及ぶ
が、上記著作物のうち創作的表現とは認められない部分と同一性のあるもの\nを作成する行為には及ばないし、翻案、すなわち、上記著作物の表現上の本\n質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加え\nて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が\n上記著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物\nを創作する行為(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第1
小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)にも及ばないと解される。
(2) 証拠(甲4、5)によれば、被告が作成した被告表紙等は、少なくとも以\n下の部分において、原告表紙と相違すると認められる(以下、これらの相違\n部分を「本件相違部分」という。)。
ア 原告人物1の髪は目及び耳にかかる程度の長さで描かれているのに対し、
被告人物1の後髪は肩にかかり、横髪は耳を隠し、前髪は頬にかかるほど
の長さで描かれている部分
イ 原告人物1の右耳は飾りが付いていないように描かれているのに対し、
被告人物1の右耳はピアスのように見える飾りが付いているように描かれ
ている部分
ウ 原告人物2の髪は自然に流れるようにウェーブした状態に描かれている
のに対し、被告人物2の髪は、複数の束となっており、束ごとに髪先が直
線的に切りそろえられた状態に描かれている部分
エ 原告人物2の瞳は略楕円形で、眉毛は細い線のように描かれているのに
対し、被告人物2の瞳は略円形で、眉毛は太く描かれている部分
オ 原告人物2は口をほとんど開けていないように描かれているのに対し、
被告人物2は、口を開き、歯が覗くように描かれている部分
カ 原告人物1及び2は学生服及びワイシャツを着ているように描かれてい
るのに対し、被告人物1及び2は学生服及びワイシャツとは異なる服を着
ているように描かれている部分
(3) 前記前提事実(1)イ及び(3)並びに前記(2)の認定事実によれば、二次創作同
人誌を発行していた被告は、自らの知識や経験に基づき、被告漫画のストー
リーや登場人物の設定等を念頭に置きつつ、被告漫画の表紙及び中表\紙とし
てふさわしいものとなるように考えながら、原告表紙との本件相違部分を含\nむ被告表紙等を作成したということができる。そして、本件相違部分は、人\n物の髪型、目及び衣服といった当該人物の外見を特徴付ける部分に関する表\n現であり、別紙対比表からも明らかなとおり、被告表\紙等における被告人物
1及び2の外見の描写のうち本件相違部分が占める割合は小さくない。さら
に、本件相違部分に係る表現がありふれたものであることを認めるに足りる\n証拠はない。したがって、本件相違部分には、被告の思想又は感情を創作的
に表現した部分が含まれると認めるのが相当である。\n
そうすると、原告表紙と被告表\紙等との共通部分に創作的表現が認められ\nない場合には、被告表紙等は、原告表\紙のうち創作的表現とは認められない\n部分と同一性があるにすぎず、被告は、創作的表現を含む本件相違部分を備\nえた、原告表紙とは別の新たな著作物である被告表\紙等を創作したといえる。
また、上記共通部分に創作的表現が認められる場合には、被告は、新たに創\n作的表現を含む本件相違部分を加えることにより、原告表\紙の表現上の本質\n的な特徴を直接感得することのできる別の著作物である被告表紙等を創作し\nたものであるから、原告表紙を翻案したものといえる。\n
以上によれば、被告表紙等は、いずれにしても、原告表\紙を「原作のまま
…複製」(著作権法80条1項1号)したものとは認められないから、被告
が被告表紙等を作成したことにより原告漫画に係る原告の出版権が侵害され\nたとは認められない。
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2023.01. 6
令和3(ワ)5086 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年12月12日 大阪地方裁判所
原告の「桜のイラスト」の複製・翻案かが争われました。大阪地裁は、著作物性は認めたものの、創作性ある部分が共通しないとして、請求棄却しました。
3 争点2(被告各イラストが、原告各イラストを複製ないし翻案したものであり、
かつ同一性保持権を侵害するものであるかどうか)について(被告イラスト2に
関する判断)
前記2の認定によると、原告イラスト1は、現実の桜にみられる要素を原告な
りの手法により適宜デフォルメして表現し、それらを組み合わせた上、認定に係\nる背景を付した所定の用紙上に配置するなどして1個のデザインとして完成さ
せたものであって、認定した表現を含む表\現の総体としては原告の個性が現れた
ものであって創作性があるといえ、著作物性を一応肯定できる(争点1)。
よって、進んで争点2について判断する。
この点、原告は、原告特徴1)〜9)が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴で\nあり、そのうち原告特徴1)及び3)〜9)が被告各イラストと共通し、被告各イラス
トに接した者が原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を直接感得することが\nできると主張するところ、原告は、主に被告イラスト2との対比において複製な
いし翻案を主張したので、まず被告イラスト2について検討する。
(1) 原告特徴1)について
原告主張の原告特徴1)は、前記第3の2(1)に主張のとおりであるところ、
ここでいう「背景全体」とは、花の白いスタンピング(かすれ要素A)が原告
特徴2)として特定されてこれが除かれていることから、原告イラスト1から、
正面視花要素A、側面視花要素A、つぼみ要素A、かすれ要素Aを除いた部分
をいうものと解される。
そして、前記認定によると、同部分の具体的態様は、「色調の異なるピンク色
や一部オレンジ色が、不明瞭にぼかし味をもちながら配色された」ものであっ
て、これと対応する被告イラスト2の要素としては、「赤みのある紫、青みのあ
る紫、オレンジ色などがグラデーション、ぼかしを伴って全体としてはマーブ
ル状に彩色され、前記すかしを伴ったスタンピング要素Bがランダムに散りば
められている」背景部分が該当する。
この点、原告イラスト1と被告イラスト2の背景部分は、そもそもの枠の大
きさが異なることに伴う広がりの規模や、背景として認識される部分の形状が
大きく異なって特段の共通点を見出し難い上、被告イラスト2における、赤み
のある紫、青みのある紫、オレンジ色などがマーブル状に彩色されている点は、
原告イラスト1にはみられない被告イラスト2の特徴というべきであって、こ
れらの相違点の与える影響は大きなものがある。したがって、原告特徴1)で指摘する内容は、被告イラスト2との共通点を構成しないというべきである。\n
(2) 原告特徴3)ないし同4)について
原告は、原告特徴3)及び同4)が被告イラスト2にもみられると主張するとこ
ろ、前記認定によると、原告イラスト1には、5または6個の正面視花要素A
等で構成されるまとまりが台紙の略左中央上、略右上及び略右下の3か所にあ\nることが認められる。また、原告特徴4)中の「空きスペース」に描かれた「適
宜桜の花」が具体的に何を指すかは必ずしも明らかではないが、右上上端及び
左中下端に見切れた正面視花要素Aが各1個、台紙略左下のおおむね中央に正
面視花要素A1個をいうものと解され、これらが同位置に配されている。
一方、被告イラスト2においては、3個の正面視花要素B等で構成されるま\nとまり(別紙被告イラスト2分析図でいうγ及びεのまとまり)、4個の正面
視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうδのまとまり)、5個の\n正面視花要素B等で構成されるまとまり(同分析図でいうα及びβのまとまり)\nが、袋体正面では15から20個、前記αからεまでのまとまりが回転を加え
たうえでやや不規則に被告イラスト2の枠を埋めるように配されている。また、
これらのまとまりが不整形な形状のためにできたまとまりのない部分に正面
視花要素Bが単独で配されている。
そして、原告イラスト1にみられるまとまりと、被告イラスト2におけるま
とまりを、それ自体で相互に比較しても、各構成要素(正面視花要素、側面視\n花要素、つぼみ要素)の構成や形態において同一のものは認められない上、被\n告イラスト2においては、まとまりの数自体や、まとまりの繰り返しによって
与えられる印象が強く、後述の各構成要素の相違点と相まって、「5ないし6\n個の桜の花をまとまって描く」というアイデアのレベルを超えた具体的な表現\n上の共通性を認めることはできない。また、桜の花を数個まとめて描くこと自
体は、自然の桜を描写する際に自然に着想することであって、他の桜のイラス
トにもみられるありふれたものといわざるを得ない。また、原告特徴4)につい
ても、原告イラスト1においては、被告イラスト2との対比において、まとま
りとまとまりの間隔というものは観念しづらく、むしろまとまりの配置のない
略左下部に1個の正面視花要素Aを配したとの印象が強く、具体的表現におけ\nる共通性を感得できない。
以上によると、原告特徴3)及び同4)で指摘される内容は、被告イラスト2に
みられる特徴とはいえず、共通点は認められない。
(3) 原告特徴5)、同6)及び同7)について
原告は、正面視花要素Aに関して、原告特徴5)、同6)及び同7)が特徴であり、
同特徴が被告イラスト2にも存すると主張する。
この点、まず、正面視花要素Aと同Bの花弁についてみると、前記認定のと
おり、原告イラスト1における花弁は、「白色で基部付近はピンクないし淡い
ピンク色が不均一の色調でぼかしたように配されている」のであり、花弁の白
と背景のコントラストが強く意識される一方、被告イラスト2における花弁は
「ごく薄い赤みないし青みのかかった紫色の下地に透明感のある白の小さな
おおむね丸いドットが重なるように多数配されて前記薄紫の下地が透けて看
取できる」態様で描かれており、花弁それ自体も淡く着色されている上、背景
とのコントラストは弱く、全体として正面視花要素Bは同Aと相当に異なった
印象を受けるものである。したがって、原告特徴5)が被告デザイン2にも備わ
っているとは認められない。また、原告特徴6)及び同7)についてみると、完全
に開花した桜を正面視で「5枚の花弁を放射線状に一体に、花弁ごとに区切ら
ずに描き、花弁の中央部に略放射線状にランダムな長さ及び角度で8本又は9
本描く」ことや、同様にやや斜方視で、「5枚の花弁を略扇形に一体に、花弁ご
とに区切らずに描いた上で、弧の部分にランダムに山を複数描き、花弁の下寄
りの部分に茶色の細い線でおしべ等を略扇形状にランダムな長さ及び角度で
6本又は7本描き、その先端を茶色の小さい丸で描いている点」は、前記認定
に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストにみ\nられるごく一般的な表現であり、ありふれたものであって、そもそもかかる特\n徴は、原告イラスト1の本質的特徴に当たらない。
(4) 原告特徴8)及び同9)について
原告主張の「先端に白色のつぼみがついた茶色の花柄及びがく片を、花から
適宜飛び出して描いている点」(原告特徴8))及び「つぼみには完全に閉じた状
態のものと、半開き状態のものがあり、前者はふっくらとした雫形状で、先端
がやや尖っていて、がく片は3本であり、後者は略扇形で弧の部分にランダム
に山を複数描き、がく片は基本的に4本となっている点」についても、前記認
定に係る自然の桜の態様及び他のイラストの表現に照らすと、桜のイラストに\nみられるごく一般的な表現であり、ありふれたものといわざるをえず、原告イ\nラスト1の本質的特徴に当たらない。
・・・
(6) まとめ
以上のとおり、被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分又\nは表現上創作性がない部分において原告イラスト1と同一性を有するにとど\nまり、これに接する者が、原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得する\nことはできないから、依拠性を判断するまでもなく、原告イラスト1の複製及
び翻案に当たらない。よって、被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販
売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するもの
とはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということもない。
◆判決本文
◆当事者のイラストです
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2022.10.13
令和2(ワ)3931 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年10月6日 東京地方裁判所
鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が認められ、約200万円の損害賠償が認められました。被告は、新聞記事は事実の報道なので、著作物無しとも主張しましたが、読みやすく表現しているので創作性ありと認定しました。また、記録が残っていないH30年以前の配信についても、推定認定されています。
ア 平成30年度掲載記事のうちの一部の記事について、被告は、その著作物
性を争っている。
しかしながら、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機
器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業
等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に
関する記事である。そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報
について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど
されており、表現上の工夫がされている。また、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テー\nマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関
係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成している。したがって、平成30年度掲載記事は、\nいずれも創作的な表現であり、著作物であると認められる。
・・・
以上の事実に、平成30年度について被告が本件イントラネットに掲載し
た原告が著作権を有する記事の数が前記 のとおりであることなどの状況
等を考慮すると、平成30年度掲載記事の選別を行ったC証人が選別した平
成28年度及び平成29年度については、被告による著作権侵害が認められ
る記事の総数(自社及び沿線記事に分類した記事及びそれに分類していない
記事の合計)は、これら両年度の枠付き記事(自社及び沿線記事に分類した
記事の一部)の合計である52本の3倍に当たる156本を下らないもので
あると認定するのが相当である。
・・・
原告は、本件個別規定に基づく損害額を主張するところ、上記によれば、原
告においては、少なくも平成20年以降は、本件個別規定を適用して原告が発
行する新聞の記事について利用許諾を検討する体制を整えており、これらの規
定を複数年にわたり、少なくとも1000件程度適用し、これに基づく使用料
を徴収してきた実績があることが認められる。また、本件個別規定には、社内
LAN(イントラネット)での利用を想定した文言がある。他方、本件で問題
になっているイントラネットでの掲載に関して本件個別規定に基づき支払われ
た利用料の額等の実績については不明であり、また、本件個別規定には件数が
多い場合の割引に関する規定もあり、件数が相当に多い場合、どの程度本件個
別規定の本文で定める額が現実に適用されていたかが必ずしも明らかではない。
さらに、本件イントラネットによる新聞記事の掲載は、被告の業務に関連する
最新の時事情報を従業員等に周知することを目的とするものであったことから
すると、掲載から短期間で当該記事にアクセスする者は事実上いなくなると認
められる。これらの事実に加え、本件に係る被告による侵害態様等を総合的に
考慮すると、本件については、原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額
(著作権法114条3項)は、掲載された原告の記事1本について掲載期間に
かかわらず3000円として、原告に同額の損害が生じたものと認めるのが相
当である。
被告は、被告による使用が本件個別規定における「非営利で公共性のある使
用」に当たること、被告が取材対象者に当たる記事も存在することなどを指摘
する。本件個別規定の【割引】、【無料】の項目にはこれらの事情により原告が
無料での利用を許諾することが記載されている。しかし、株式会社である被告
にこれらの規定が適用されたかは明らかではなく、また、上記で定められてい
る取扱いをしなければならないことが一般的であったことを認めるに足りる証
拠はない。また、被告は、本件は本件包括規定によるべきであると主張するが、
本件個別規定について前記 ア、イに認定した事情が認められる状況で、本件
包括規定の存在は、本件個別規定も参酌して上記のとおりの損額の額を認定す
ることの妨げになるものとは認められない。
前記のとおり、平成30年度以前については、遅くとも平成30年3月31
日までに、原告が著作権を有する記事が458本掲載されたと認めるのが相当
であるから、これによる損害は137万4000円となる。平成30年度掲載
記事について、別紙損害金計算表の「掲載月」欄記載の月に対応する「記事数」欄記載の数の記事について侵害が成立すると認められる(なお、原告は、記事\n177、185、215について被告で2本分の記事が掲載されたことを理由
に2本分の損害を計上しているが、単一の記事に係る単一のイントラネットへ
の掲載であることなどからすると、いずれも1本分の損害を計上するのが相当
である。)から、損害額は「損害額」欄記載のとおりとなり、その合計額は、3
9万9000円になる。
◆判決本文
原告新聞社が異なる関連事件です。こちらは約460万円の損害が認められています。
◆令和2(ワ)12348
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2022.08.23
令和3(ワ)10987 著作権侵害損害賠償請求事件 著作権 令和4年2月24日 東京地方裁判所
「文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表\現されたものとはいえない」として、著作権侵害ではないと判断されました。
そこで検討すると,著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)と
は,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを
再製することをいい(最高裁判所昭和50年(オ)第324号同53年9月
7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照),著作物の翻案(著作
権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特\n徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新た\nに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著\n作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創\n作する行為をいう。しかして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を\n保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して
創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\n現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作\n物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないもの
と解される(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第
一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依
拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,著作権法による保護の
対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である\n(著作権法2条1項1号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,\n厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の何
らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文章自体\nがごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表現されたものと\nはいえないから,創作的な表現であるということはできない。\n したがって,被告各記述を含む被告の雑誌記事,書籍等が,被告各記述に
対応する原告各記述との同一性により原告雑誌記事,原告ルポの複製又は翻
案に当たるか否かを判断するに当たっては,両者において共通する部分が,
思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分でないかどうかを検討する必要がある。\nそこで,以上の見地から,別紙1及び2の各対比表について個別に検討す\nることとする。
(2) 別紙1の対比表について\n
ア 「1−1あ」,「1−5あ」,「1−6あ」,「1−7あ」,「1−10あ」に
ついて
この箇所の原告記述と被告記述とでは,1)奨学金の原資を確保するので
あれば,元本の回収が何より重要であること,2)日本学生支援機構は20\n04年以降,回収金をまず延滞金と利息に充当するという方針をとってい
ること,3)日本学生支援機構の2010年度の利息収入は232億円,延\n滞金収入は37億円に達し,これらの金は経常収益に計上され,原資とは
無関係のところにあること,といった点が共通している。
しかし,上記共通点のうち,1)は,原告雑誌記事が発行,公表される以\n前から既に問題になっていた奨学金の金融事業化についての一般的な考察
(乙5ないし7)であって,思想又はアイデアに属するものというべきで
ある。2)と3)は,奨学金の回収方法や日本学生支援機構の収支に関する事\n実であり,3)の後段の,回収された金と奨学金の原資との関係についての
評価は,これもまた1)と同様に奨学金の金融事業化についての一般的考察
として思想又はアイデアに属するものというべきであって,原告記述と被
告記述とは,表現それ自体ではない部分において同一性を有するにすぎな\nい。また,1)ないし3)の記述順序は同一ではあるが,その記述順序自体は
独創的なものとはいえないし,文章の分量も短く簡潔で,表現も特徴のな\nいありふれたものといわざるを得ず,表現上の創作性が認められない部分\nにおいて同一性を有するにすぎない。
◆判決本文
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2022.07.31
令和1(ワ)26366 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年5月27日 東京地方裁判所
ポスティング業務を行うために住宅地図を購入し、これを適宜縮小して複写し、これにさらに、集合住宅名、ポストの数、配布数、交差点名、道路の状況、配布禁止宅等のポスティング業務に必要な情報を書き込むなどした地図(以下「ポスティング用地図」という。)の原図を作成して、配置していた被告に対して、差止請求と3000万円の損害賠償が認められました。
一般に、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号に
よって、客観的に表現するものであるから、個性的表\現の余地が少なく、文
学、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭
いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨選択及びそ
の表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を\n果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表れ得るものということが\nできる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及びその表\n示の方法を総合して判断すべきものである。
・・・
前記(2)によれば、本件改訂により発行された原告各地図は、都市計画図等
を基にしつつ、原告がそれまでに作成していた住宅地図における情報を記載
し、調査員が現地を訪れて家形枠の形状等を調査して得た情報を書き加える
などし、住宅地図として完成させたものであり、目的の地図を容易に検索す
ることができる工夫がされ、イラストを用いることにより、施設がわかりや
すく表示されたり、道路等の名称や建物の居住者名、住居表\示等が記載され
たり、建物等を真上から見たときの形を表す枠線である家形枠が記載された\nりするなど、長年にわたり、住宅地図を作成販売してきた原告において、住
宅地図に必要と考える情報を取捨選択し、より見やすいと考える方法により
表示したものということができる。したがって、本件改訂により発行された\n原告各地図は、作成者の思想又は感情が創作的に表現されたもの(著作権法\n2条1項)と評価することができるから、地図の著作物(著作権法10条1
項6号)であると認めるのが相当である。また、前記(2)アのとおり、本件改訂より後に更に改訂された原告各地図は、いずれも本件改訂により発行された原告各地図の内容を備えるものであるから、同様に地図の著作物であると認めるのが相当である。なお、本件改訂より前に発行された原告各地図については、原告は、本件訴訟において、被告らにより著作権が侵害された対象として主張していないので(前記第2の4(1)(原告の主張)エ)、著作物性についての検討を要しない(以下においては、「原告各地図」という場合、特に断らない限り、本件改訂以降に発行されたものを指す。)。
(5) これに対して、被告らは、1) 地図に著作物性が認められる場合は一般的に
狭く、住宅地図は他の地図と比較して著作物性が認められる場合が更に制限
される、2) 原告各地図は、江戸時代の古地図や既存の地図、都市計画図に依
拠して作成されたものであり、創作性が発揮される余地は乏しい、3) 原告各
地図は機械的に作成され、正確・精密であるとされることからすると、創作
性が発揮される部分は更に限定され、国土地理院は、2500分の1の縮尺
の都市計画基本図について、著作物性が認められる可能性は低いとの見解を\n示している、4) 過去に作成された住宅地図には家形枠が記載されたものがあ
り、家形枠を用いた表現自体ありふれている、5) 原告は地図作成業務のうち
少なくとも6割を海外の会社に対して発注しており、原告各地図には独自性
がないとして、原告各地図には著作物性が認められないと主張する。
しかし、上記1)については、前記(1)のとおり、地図の著作物性は、記載す
べき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべきものであると\nころ、前記(4)のとおり、原告各地図は、その作成方法、内容等に照らして、
作成者の個性が発現したものであって、その思想又は感情を創作的に表現し\nたものと評価できるから、地図の著作物であると認められる。
上記2)については、原告が古地図や都市計画図等を参照して原告各地図を
作成したものであったとしても、前記(2)アのとおり、原告各地図は、本件改
訂によって、都市計画図等をデータ化したものに、居住者名や建物名、地形
情報、調査員が現地を訪れて調査した家形枠の形状等を書き加えるなどして
作成されたものであり、その結果、前記(2)イの特徴を備えるに至ったもので
あって、このような原告各地図の作成方法、特徴等に照らせば、原告各地図
は、都市計画図等に新たな創作的表現が付加されたものとして、著作物性を\n有していると認められる。
上記3)については、原告各地図が正確・精密であるとしても、前記(1)のと
おり、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法等において創作性を発\n揮する余地はある。また、被告らの指摘する国土地理院の見解(乙63)は、
都市計画基本図について述べたものであり、住宅地図作成会社が作成する住
宅地図一般について述べたものではないし、上記2)について説示したとおり、
原告各地図は、都市計画図等を基図としてデータ化した上、これに種々の情
報を書き加えるなどすることで、住宅地図として完成させたものであるから、
国土地理院の上記見解は原告各地図に当てはまるものではない。さらに、前
記(2)イのとおり、原告各地図は、地図の4辺に目盛りが振られ、当該地図の
上、右上、右、右下、下、左下、左及び左上の各位置にある地図の番号が記
載されており、目的とする地図を検索しやすいものとなっている上、信号機
やバス停等がイラストを用いてわかりやすく表示されたり、建物等の居住者\n名や店舗名等を記載することにより住居表示についてもわかりやすくする工\n夫がされているなどの特徴を有するのに対し、証拠(乙70ないし73)に
よれば、都市計画基本図にはこのような特徴が全くないことが認められ、原
告各地図と都市計画基本図とでは、そもそも性質が異なることから、同列に
論じることはできない。
上記4)については、住宅地図において家形枠を記載することがよくあると
しても、原告各地図における家形枠の具体的な表現がありふれていることを\n認めるに足りる証拠はないから、直ちに原告各地図の著作物性を否定するこ
とはできないというべきである。
上記5)については、原告が原告各地図の作成業務を海外の会社に発注して
いることのみをもって、原告各地図の独自性を否定し、ひいては、その著作
物性を否定することはできないというべきである。
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2022.04.28
平成31(ワ)8969 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年4月22日 東京地方裁判所
ゲーム画面が著作権侵害か否か争われました。前提として裁判管轄についても争われました。後者の裁判管轄は「あり」としましたが、被告は、リンク設定行為をしただけなので、複製及び公衆送信には該当しないと、請求棄却されました。
証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、原告及び被告は、いずれも中国
に住所を置く法人であり、日本に事務所等の拠点を有しないこと、被告ゲー
ムの開発や配信に関する主要な作業は中国において行われたことが認められ
る。これらの事情によれば、本件訴訟に関する証拠が中国に存在することが
うかがわれるから、本件を日本の裁判所で審理した場合には、被告が、本件
訴訟の争点に関する主張立証をする際に、中国語で記載された書類を日本語
に翻訳したり、中国語を話す関係者のために通訳を手配したりするなどの一
定の負担を被り得ることは、否定し難い。
しかし、本件訴訟における原告の請求は、日本国内向けに配信された被告
ゲーム及びそれに関連する画像の複製を差し止め、被告ゲーム等のデータを
削除し、被告ゲームの売上げに基づき著作権法114条2項によって推定さ
れる額の損害を賠償すること等を求めるというものである。そうすると、本
件訴訟における請求の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告
が主張する上記損害は日本において発生したものと解されるから、本件は、
事案の性質上、日本とも強い関連性を有するというべきである。
また、本件訴訟の争点は、前記第2の3及び前記第3のとおり、原告各画
像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性(争点2−1)、被告による原\n告画像1に係る著作権侵害の成否(争点2−2)、被告が原告各画像に依拠
して被告各画像を作成したと認められるか否か(争点2−3)、差止め及び
削除請求の必要性(争点3)並びに損害額(争点4)である。この点、上記
争点2−1については、原告各画像と被告各画像の対比や同一性ないし類似
性が認められる部分が創作的な表現であるか否かに関する検討を要するとこ\nろ、それらの点に係る主張立証は、主として原告各画像及び被告各画像自体
に基づいて行うことになる。これに加えて、他の画像に基づき、上記同一性
ないし類似性の認められる部分がありふれた表現であることの主張立証を行\nうことも考えられるが、当該他の画像に関する証拠が中国に存在するとして
も、その性質上、翻訳等の作業は必要とされないであろうから、被告に過大
な負担が生じるとは認め難い。上記争点2−2は、本件リンク設定行為が原
告画像1に係る原告の著作権を侵害するかどうかを、主として日本の著作権
法の解釈、適用によって判断するというものであるから、証拠の所在地が当
該争点の判断において重要な意味を持つものとはいえない。上記争点2−3
に関する証拠としては、原告ゲーム及び被告ゲーム以外のゲーム等の画像及
び公表時期に関する資料、ゲーム制作者の陳述書等が想定されるが、それら\nの全てが中国にのみ所在するとはうかがわれず、立証に際して被告に過大な
負担が生じるとまでは認め難い。上記争点3については、前記第3の3のと
おり、被告ゲームの配信が中止された事実が重要な評価障害事実として主張
立証され得るところ、被告ゲームが日本国内向けに配信されたオンラインゲ
ームであることを踏まえると、上記事実に関する主要な証拠は日本に所在す
るものと認められる。上記争点4についても、上記のとおり、原告が主張す
る損害は日本において発生したものと解されるから、損害額の算定の基礎と
なる主要な証拠は日本に所在するものと考えられる。したがって、本件が日
本で審理されるとしても、本件の重要な争点に係る主張立証に当たり、被告
に過大な負担が生じるとまでは認められない。
(2) これに対し、被告は、1)本件訴訟と当事者、事案及び争点において密接な
関連性が存在する別件中国訴訟が中国の裁判所において係属していること、
2)原告と被告は、当然に、本件訴訟を中国の裁判所に提起することが最も適
切であり、本件が中国の裁判所での解決が図られると想定していたこと、3)
本件訴訟に関する客観的な事実関係は全て中国において発生したこと、4)本
件訴訟の証拠は全て中国国内に存在すること、5)本件を日本の裁判所で審理
する場合には被告に過大な負担を課すること等を根拠として挙げ、本件訴訟
には民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」があると主張する。
しかし、まず、上記1)についてみるに、本件訴訟と別件中国訴訟は、いず
れも原告が当事者であるという点において共通するものの、被告は別件中国
訴訟の当事者の地位にはないから、当事者が完全に一致するものではない。
しかも、別件中国訴訟においては、原告ゲームの中国語版の表現と「C」と\n称するゲームの表現の類否等が争点とされているのであって、被告ゲームの\n表現との類否は争点とされていないばかりか、証拠(甲10)によれば、別\n件中国訴訟において争点とされている原告ゲームの表現はいずれも原告各画\n像とは異なる画像等に係るものであると認められる。そうすると、本件訴訟
と別件中国訴訟の事案及び争点はいずれも大きく相違するものといえるから、
本件訴訟と別件中国訴訟との間に強い関連性があるとまでは認められない。
次に、上記2)についてみるに、上記のとおり、本件訴訟と別件中国訴訟と
の関連性は強くない上、原告ゲームと被告ゲームがいずれも日本国内向けに
配信されたスマートフォン向けのオンラインゲームであることに照らすと、
別件中国訴訟が本件訴訟に先立って中国国内の裁判所に係属していたとして
も、原告ゲームと被告ゲームに関する著作権侵害に関する紛争の解決が中国
の裁判所で図られることが想定されていたとまでは認められない。
さらに、上記3)ないし5)についてみるに、前記(1)のとおり、本件の請求
の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告が主張する上記損害
は日本において発生したものと解されることから、本件に関する客観的な事
実関係が全て中国において発生したということはできない。また、前記(1)
のとおり、本件の証拠が専ら中国に存在するとは認められないし、本件を日
本の裁判所が審理するとしても、立証に関して被告に過大な負担を生じさせ
るものとまでは認められない。
したがって、被告の上記1)ないし5)の主張はいずれも理由がない。
(3) 以上の次第で、本件の事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の
所在地、原告を当事者とする中国の裁判所に係属中の訴訟の存在その他の事
情を十分に考慮しても、本件訴訟について、民事訴訟法3条の9所定の「特\n別の事情」があると認めることはできない。
・・・
ア 証拠(甲9、乙15ないし17)及び弁論の全趣旨によれば、本件リン
ク設定行為は、本件動画の表紙画面である被告画像1をリンク先のサーバ\nーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示させるものにすぎず、\n被告は、本件リンク設定行為を通じて、被告画像1のデータを本件ウェブ
ページのサーバーに入力する行為を行っていないものと認められる。そう
すると、前記(2)アのとおり原告画像1を複製したものと認められる被告
画像1を含む本件動画をYouTubeが管理するサーバーに入力、蓄積
し、これを公衆送信し得る状態を作出したのは、本件動画の投稿者であっ
て、被告による本件リンク設定行為は、原告画像1について、有形的に再
製するものとも、公衆送信するものともいえないというべきである。
イ これに対し、原告は、1)本件ウェブページに被告画像1を貼り付ける行\n為も、本件リンク設定行為も、本件ウェブページの閲覧者にとっては、何
らの操作を介することなく被告画像1を閲覧できる点で異なるところはな
いこと、2)本件リンク設定行為は、被告画像1を閲覧者の端末上に自動表\n示させるために不可欠な行為であり、かつ、原告画像1の複製の実現にお
ける枢要な行為といえること、3)本件リンク設定行為をすることにより、
被告ゲームを宣伝し、被告ゲームの販売による多大な利益を得たことを指
摘し、規範的にみて、被告が複製及び公衆送信の主体と認められる旨を主
張する。しかし、上記1)についてみると、単に、本件ウェブページに被告画像1
を貼り付ける等の侵害行為がされた場合と同一の結果が生起したことをも\nって、本件リンク設定行為について、複製権及び公衆送信権の侵害主体性
を直ちに肯定することはできないというべきである。
また、上記2)についてみると、仮に枢要な行為に該当することが侵害主
体性を基礎付け得ると解したとしても、本件リンク設定行為の前の時点で
既に本件動画の投稿者による原告画像1の複製行為が完了していたことに
照らすと、本件リンク設定行為が原告画像1の複製について枢要な行為で
あるとは認め難いというべきである。なお、本件動画は、本件ウェブペー
ジを閲覧する方法によらずとも、本件動画が投稿されたYouTubeの
「D」のページにアクセスすることによっても閲覧することができるから、
本件リンク設定行為が原告画像1の公衆送信にとって枢要な行為であると
も認められない。
さらに、上記3)についてみると、本件全証拠によっても、本件リンク設
定行為により被告がどの程度の利益を得ていたのかは明らかではないから、
その点をもって、被告が原告画像1の複製及び公衆送信の主体であること
を根拠付けることはできない。
したがって、上記1)ないし3)の点を考慮しても、被告を原告画像1の複
製及び公衆送信の主体であると認めることはできず、原告の上記主張は採
用することができない。
ウ また、原告は、仮に被告が著作権侵害の主体であると認められない場合
であっても、少なくとも、被告が本件リンク設定行為により上記著作権侵
害を幇助したものと認められると主張する。
しかし、前記アのとおり、被告による本件リンク設定行為は、被告画像
1をリンク先のサーバーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示\nさせるものにすぎず、本件動画の投稿者による被告画像1を含む本件動画
をYouTubeが管理するサーバーに入力・蓄積して公衆送信し得る状
態にする行為と直接関係するものではない。そうすると、本件リンク設定
行為が本件動画の投稿者による複製及び公衆送信行為自体を容易にしたと
はいい難いから、被告による本件リンク設定行為が、被告画像1に係る原
告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を幇助するものと認めることは
できない。
したがって、被告を原告画像1の複製及び公衆送信の幇助者であると認
めることはできない。
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2022.04. 4
令和2(ワ)11834 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年1月27日 大阪地方裁判所
漏れていたのでアップします。原告のイラストをテレビに自作イラストとして投稿して、放映された事件で、著作権侵害として、34万円の損害賠償が認められました。著作権侵害の場合、特許などと異なり、故意・過失が侵害認定要件となっていますが、「検索サイトによる画像検索等の方法により特定の画像の制作者等を特定することは,特別の専門的知識等がなくとも比較的容易」と判断されています。
原告は,平成28年6月19日,自ら作成した本件イラストを原告筆名の名義で
開設する SNS「ツイッター」のアカウント(以下「原告アカウント」という。)
により投稿してこれを公表した。\nまた,原告は,同年10月頃,イラスト集(以下「本件イラスト集」という。)
を出版したが,本件イラスト集には掲載されたイラストの著作者名として原告筆名
が表示され,また,本件イラストもこれに掲載されている。\nさらに,本件イラストは,令和元年9月10日以降,「コンビニプリント」と称
するサービスにより,全国のコンビニエンスストアでその複製物を購入し得るよう
になっているところ,そのサービス提供に当たり,原告筆名が著作者名として表示\nされている。(以上につき甲5〜8,当裁判所に顕著な事実)
・・・
前提事実(第2の2(2))によれば,原告は,本件イラストの著作者とし
て,その著作権及び著作者人格権を有する者と認められる。
にもかかわらず,被告が,本件応募行為等に際し,本件データを原告に無断で
複製していまじんに提供し,また,いまじんに対し本件イラストの著作者が「X
2」である旨を伝えたことにより,本件番組の放送に際してはその旨の表示がさ\nれ,原告の実名又は原告筆名は著作者として表示されなかった。\n
イ 被告の故意又は過失の有無(争点1)
被告は,本件イラストの著作者ではなく,また,その主張を前提としても,
SNS を通じて知り合っただけの人物から同人の作品としてデータの提供を受けた
にとどまる。
本件応募フォーム,とりわけ本件注意書の記載内容(前記1(1))に鑑みれば,
本件番組がオリジナル作品の制作者本人による応募を前提とするものであること
は容易に理解される。また,この趣旨を踏まえれば,仮に制作者本人以外の者が
応募する場合であっても,応募者が制作者本人の承諾等を得た上で応募すべきこ
とが求められることも,やはり容易に理解し得る。さらに,日テレ及びその系列
局で本件番組が放送されること及び放送日時等も踏まえれば,本件番組が多くの
視聴者により視聴されることも容易に予想される。\n他方,昨今のインターネットをめぐる状況を踏まえると,SNS その他ウェブサ
イト等を通じて,他人が作成したイラスト等の画像データを入手することは事実
上容易であり,また,検索サイトによる画像検索等の方法により特定の画像の制
作者等を特定することは,特別の専門的知識等がなくとも比較的容易である。
以上のような事情を踏まえれば,被告は,本件応募行為等に際し,本件イラス
トに係る他人の著作権及び著作者人格権を侵害することのないよう,インターネ
ット上の画像検索等の客観性を有する適切な方法により,その著作者ないし著作
権者を確認すべき注意義務を負っていたことが認められる。にもかかわらず,被
告は,その主張を前提としても,単に被告に本件データを提供した人物(P3)
に本件イラストが同人の作品であることなどを直接電話等で確認したにとどま
る。そうである以上,被告には,本件イラストに係る著作権(複製権)及び著作
者人格権(氏名表示権)の各侵害行為について,少なくとも過失が認められる\n(なお,原告は,複製権侵害につき,明示的には被告の故意を主張するにとどま
るが,その主張全体の趣旨から,過失の主張も包むものと理解される。)。これ
に反する被告の主張は採用できない。
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2022.04. 1
令和2(ワ)32121 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年3月30日 東京地方裁判所
写真の複製・翻案かが争われました。料理写真なので、構図なども一般的と判断されています。\n
著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、\n文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(同法2条1項1号)をいい、
複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製
することをいう旨規定していること(同項15号)からすると、著作物の複
製(同法21条)とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に\n再製する行為をいうものと解される。
また、著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、
その表現上の本質的な特徴である創作的表\現の同一性を維持しつつ、具体的
表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現す
ることにより、これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感得する\nことのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。
そうすると、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとい
うためには、原告写真と被告写真3との間で表現が共通し、その表\現が創作
性のある表現であること、すなわち、創作的表\現が共通することが必要であ
るものと解するのが相当である。
一方で、原告写真と被告写真3において、アイデアなど表現それ自体では\nない部分が共通するにすぎない場合には、被告写真3が原告写真を複製又は
翻案したものに当たらないと解される。そして、共通する表現がありふれた\nものであるような場合には、そのような表現に独占権を認めると、後進の創\n作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり、文化の発展に寄与するという著作\n権法の目的(同法1条)に反する結果となりかねないため、当該表現に創作\n性を肯定して保護することは許容されない。したがって、この場合も、複製
又は翻案したものに当たらないと解される。
(2) 原告は、原告写真と被告写真3において共通する部分である共通点aない
しfは創作性のある表現であるから、被告写真3は原告写真を複製又は翻案\nしたものに当たる旨主張するので、以下において判断する。
ア 共通点aについて
原告写真と被告写真3とは、被写体であるスティック春巻を2本ない
し3本ずつ両側から交差させている点において共通する。
しかし、証拠(乙9)によれば、角度や向きを変えながら料理を順に
重ねて盛る「重ね盛り」という方法が存在することが認められるところ、
原告写真と被告写真3の被写体であるスティック春巻はいずれも細長い
形状を有するから、スティック春巻を盛り付ける場合に、上記の「重ね
盛り」の方法によってスティック春巻を数本ずつ交差させて配置するこ
とは、スティック春巻の撮影する場合に一般的に行われるものであると
いうことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)
によれば、共通点aと同様に、棒状の春巻を配置して撮影された写真が
複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は、\nありふれたものといわざるを得ない。
以上によれば、共通点aは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点aの部分が、原告写真の共通点aの部分を複製又は翻案した
ものに当たると認めることはできない。
イ 共通点bについて
原告写真と被告写真3とは、2本のスティック春巻を斜めにカットして、
断面を視覚的に認識しやすいように見せ、さらに、チーズも主役でない程
度に見えるようにしている点において共通する。
しかし、具が衣に包まれているという春巻の形状に照らすと、春巻の
具を撮影するためには春巻をカットしなければならないし、その際、具
を強調するために、断面積が大きくなるよう、斜めにカットすることは、
スティック春巻を撮影する際に一般的に採用され得る手法ということが
できる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によれば、
共通点bと同様に春巻を斜めにカットした断面を配置して撮影された写
真が複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表\n現は、ありふれたものといわざるを得ない。
以上によれば、共通点bは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点bの部分が原告写真の共通点bの部分を複製又は翻案し
たものに当たると認めることはできない。
ウ 共通点cについて
原告写真と被告写真3とは、端に角度がついた、白色で模様がなく、被
写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの皿を使用して
いる点において共通する。
しかし、証拠(乙10、11)によれば、白い器は料理の色を引き立て
る効果があり、選択肢として基本的な色であること、料理の写真を撮影す
る際には盛り付ける料理にぴったり合う大きさの皿を選択することが重要
であることが認められる。そうすると、白色で模様がなく、黄土色のステ
ィック春巻とフィットする大きさの皿を使用することは、スティック春巻
の写真を撮影する上で一般的に行われ得るということができる。加えて、
証拠(甲25、26、乙2、8)によれば、共通点cと同様に、白色で模
様がなく、被写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの
皿を使用して撮影された写真が複数存在すると認められることに照らすと、
上記の共通点に係る表現はありふれたものといわざるを得ない。\n以上によれば、共通点cは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点cの部分が原告写真の共通点cの部分を複製又は翻案し
たものに当たると認めることはできない。
エ 共通点dについて
原告写真と被告写真3とは、皿に並べた春巻を、正面からでなく、角度
をつけて撮影している点において共通する。
しかし、証拠(乙12)によれば、料理写真の構図として、料理を正面\nから撮影するのではなく、左右に回転させて左右向きに配置して、斜めの
方向から撮影する手法が存在することが認められる。そうすると、皿に並
べた春巻を、角度をつけて撮影することは、一般的に行われ得るというこ
とができる。加えて、証拠(甲25、26、乙7、8)によれば、共通点
dと同様に、皿に並べた春巻を、角度をつけて撮影した写真が複数存在す
ると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現はありふれたも\nのといわざるを得ない。
以上によれば、共通点dは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点dの部分が原告写真の共通点dの部分を複製又は翻案し
たものに当たると認めることはできない。
オ 共通点eについて
原告写真と被告写真3とは、撮影時に光を真上から当てるのではなく、
斜め上から当てることで、被写体の影を付けている点において共通する。
しかし、証拠(乙13)によれば、料理写真の撮影方法として、料理の
斜め後ろから料理に光を当て、料理上部を明るく照らすとともに手前側を
暗くして立体感を生じさせる斜め逆光という手法が存在すること、斜め逆
光は料理写真で最もよく使われるライティングであることが認められる。
したがって、被写体に影を付け、立体感を醸成するという撮影方法は、春
巻を含む料理の写真を撮影する上で一般的に用いられ得る手法であるとい
うことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によ
れば、共通点eと同様に、斜め逆光の手法を用いて撮影された春巻の写真
が多数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。
以上によれば、共通点eは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点eの部分が原告写真の共通点eの部分を複製又は翻案し
たものに当たると認めることはできない。
カ 共通点fについて
原告写真と被告写真3とは、葉物を含む野菜を皿の左上のスペースに置
いている点において共通する。
しかし、揚げ物である春巻に、野菜が付け合わせとして盛り付けられ
ることは、一般的に行われることであるといえるから、春巻の写真を撮
影する際に野菜が皿の隅のスペースに置かれることもまた、一般的に行
われることということができる。現に、証拠(甲25、26、乙2、6
ないし8)によれば、上記の共通点と同様に配置された春巻の写真が複
数存在することが認められる。そうすると、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。
以上によれば、共通点fは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点fの部分が原告写真の共通点fの部分を複製又は翻案したも
のに当たると認めることはできない。
キ 全体的観察
前記アないしカのとおり、共通点aないしfはいずれも創作的表現であ\nるとは認められないから、これらの共通点を全体として観察しても、原告
写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認められない。\n
ク 小括
以上の次第で、原告写真と被告写真3は、ありふれた表現が共通するに\nすぎず、原告写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認めら\nれないから、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとは
認められない。
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2022.01. 3
令和3(ワ)3208 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和3年11月9日 大阪地方裁判所
プログラムの著作権侵害として、10億円を超える損害額が認定され、一部として6000万円の損害賠償が認められました。原告プログラムはAUTOCADです。
(1) 著作権法114条3項に基づく使用許諾料相当の損害について
ア 証拠(甲1,2,4〜9,18,乙2,3[各枝番を含む。])及び弁論の全
趣旨によれば,原告製品は,オンラインストア等で顧客に対し販売されていること,
原告製品には,永久ライセンス版と,使用期間を1か月,1年,3年に制限したサ
ブスクリプション版が存在するところ,これらの動作種別は,ライセンス認証時に
原告から送付される認証コードの種別により決せられることが認められるが,被告
は,前記認定のとおり,本件海賊版製品の落札者に対し,本件海賊版製品と共に,
ライセンス認証を回避する不正なプログラム,及びインターネットに接続せずにイ
ンストールをすること等を指示するマニュアル等を添付して,落札者をして前記ラ
イセンス認証システムを無効化させ,これによって,落札者は,使用期間の制限な
く本件海賊版製品を使用することが可能になったことが認められる。\nこれらの事実関係に照らすと,原告製品の永久ライセンス版の定価をもって,原
告が原告製品の著作権の行使につき受けるべき価額であると認めるのが相当である。
イ これに対し,被告は,原告製品の定価をもって著作権法114条3項の使用
料相当額とすることは,最低限の賠償額を保障した同3項の趣旨及び文理に反する
旨を主張する。しかし,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使
用期間制限の有無や期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用
することが可能となるのであり,これによって,原告は,被告販売行為がなければ\n得られたであろう永久ライセンス版の定価の額に相当する額を得られなかったこと
になるし,被告販売行為の態様は,本件海賊版製品をライセンス認証を回避しつつ
インストールすることができるよう販売するという悪質なものであり,その違法性
は高く,市場への影響も大きい。
被告は,原告製品の定価と原告製品の使用料相当額として受けるべき金銭の額と
は別である旨を主張するが,原告製品のようなアプリケーションプログラムの販売
価格は,その本質において著作物の使用許諾に対する対価というべきであるから,
前述のとおり,原告製品の定価をもって,著作権法114条3項が定める著作権の
行使につき受けるべき金銭の額と見ることができるのであり,被告の主張は理由が
ない。
また,被告は,原告製品と動作環境との適合性や進化するセキュリティソフトと\nの相性の問題等があるため,本件海賊版製品を期間の制限なく使用できることはあ
り得ないことから,原告製品の永久ライセンス版の価格を使用許諾料の基準とする
のは相当でないこと,あるいは,原告製品の期間契約には,1か月,1年及び3年
の各期間設定があるところ,契約期間が長くなれば割安になることから,原告製品
のうち永久ライセンス版が設定されていないものについて1年ライセンス版の価格
を使用許諾料の基準とするのは相当でないことを主張する。しかし,前述したとお
り,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使用期間制限の有無や
期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用することが可能とな\nるのであり,その時点で原告には原告製品の永久ライセンス版の定価相当額の損害
が発生したというべきであって,その後,動作環境等により本件海賊版製品を使用
できなくなる可能性があることやもともとの原告製品には期間制限があることなど\nの事情は,損害額の算定には影響しないと解するのが相当である。
ウ 証拠(甲2の1〜2の18)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の永久ラ
イセンス版の定価は,別紙2−1「原告損害一覧表1」及び同2−2「原告損害一\n覧表2」の各「原告製品価格」欄記載の価格をくだらないことが認められ,被告販\n売行為による原告の損害は,同各「原告損害」欄記載の合計10億5509万67
50円をくだらない。
(2) 弁護士費用相当の損害について
被告販売行為と相当因果関係のある弁護士費用は,原告が主張する弁護士費用1
億0550万円をもって相当と認める。
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2021.10. 8
令和3(ネ)10028 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和3年9月29日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ゲームの著作物について複製・翻案であるかについて1審は複製・翻案ではないと判断しました。知財高裁(1部)も同様です。
また,控訴人は,当審において,原判決は,全体として一つのゲーム
を一画面一画面に分断し,分断した画面ごとに共通する部分(アイコン
等の配置等)について,個別に創作性を判断し,その結果として,共通
する部分全体の創作性を否定したものであり,一連の流れのあるゲーム
の著作権侵害を判断しているのではなく,画面の著作権侵害を判断して
いるにすぎないから,このような原判決の判断手法によると,他社のゲ
ームをデッドコピーしても,キャラクターやアイコンのデザイン等を多
少変更さえしてしまえば,著作権侵害を免れることになり,不合理であ
るとして,被告ゲームは原告ゲームを複製又は翻案したものに当たらな
いとした原判決の判断手法は誤りである旨主張する。
しかしながら,原告ゲーム全体と被告ゲーム全体の共通部分が創作的
表現といえるか否かを判断する際に,その構\成要素を分析し,それぞれ
について表現といえるか否か,表\現上の創作性を有するか否かを検討す
ることは,有益かつ必要なことであり,その上で,ゲーム全体又は侵害
が主張されている部分全体について表現といえるか否か,表\現上の創作
性を有するか否かを判断することは,合理的な判断手法であると解され
る。
そして,前記(イ)のとおり,原判決は,被告ゲームと原告ゲームの共
通点はアイデアや創作性のないものにとどまり,また,具体的表現にお\nいて相違し,デッドコピーであるとは評価できないから,被告ゲーム全
体が,原告ゲーム全体を複製又は翻案したものに当たるということはで
きないと判断したものであり,その判断手法に誤りはない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」
(2) 原判決42頁6行目の「原告は,」を「ア 控訴人は,」と改め,同43頁
20行目から44頁20行目までを次のとおり改める。
「 イ ところで,著作権法上の「プログラム」は,「電子計算機を機能させ\nて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせ
たものとして表現したもの」をいい(同法2条1項10号の2),プロ\nグラムをプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護するた
めには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に
表現され,その作成者の個性が表\れていることが必要であると解され
る。すなわち,プログラムの具体的記述において,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選
択の幅があり,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表\れ
ていることが必要であると解される。
これを原告ソースコードについてみるに,前記ア認定のとおり,原\n告ソースコードは,原告ゲームの473個のLuaファイルのうちの\n1個である「MissionMainPage.lua」であり,原告
ソースコードに係るプログラムは,「任務(ミッション)」に係る画面\n(メインミッション画面,デイリーミッション画面,功績画面)の切
り替えに関する処理及び表示内容の更新処理を行うプログラムである。\nそして,原告ソースコードの記述は,原判決別紙「ソ\ースコード対比
表」の「原告ソ\ースコード」欄記載のとおりであり,個々の記述の意味
は,同表の「裁判所の認定」欄記載のとおりである。\n原告ソースコードの記述は,いずれも単純な作業を行うfunct\nion(ローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び出し等)
が複数記述されたものであり,ソースコードによって記述される機能\
が上記のとおりローカル変数やテーブルの宣言及びモジュールの呼び
出し等の単純な作業を行うことである以上,表現の選択の幅は狭く,\nその具体的記述の表現も,定型的なものであり,ありふれたものであ\nると言わざるを得ない。
また,個々の記述の順序や組合せについても,ゲームの機能に対応\nさせたにすぎないものであり,ありふれたものである。
そうすると,原告ソースコードの具体的記述に控訴人の思想又は感\n情が創作的に表現され,控訴人の個性が表\れていると認めることはで
きないから,原告ソースコードに係るプログラムは,プログラムの著\n作物に該当するものと認めることはできない。
したがって,被告ソースコードの大部分が原告ソ\ースコードと共通
しているとしても,原告ソースコードに係るプログラムの著作物性は\n認められないから,被告ソースコードの制作は,原告ソ\ースコードに
係るプログラム著作権(複製権又は翻案権)の侵害に当たらない。
(4) 編集著作権の侵害について
控訴人は,当審において,1)原告ゲームは,素材である個々の画面(8
4画面)の選択,その画面遷移等の配列,素材である各画面内における
アイコン,ボタン,キャラクター等の選択又は配列に作成者の個性が発
揮されているから,素材の選択又は配列によって創作性を有する編集著
作物である,2)原告ソースコードも,個々のソ\ースコードの書き方,各
ソースコードの順序,変数の名称等の素材を選択して組み合わせたこと\nに作成者の個性が発揮されているから,素材の選択又は配列によって創
作性を有する編集著作物である,3)被告ゲームは,編集著作物である原
告ゲーム(原告ソースコードを含む。)を複製又は翻案して制作されたも\nのであるから,被告ゲームの制作及び配信行為は,原告ゲームについて
控訴人が有する編集著作権(複製権,翻案権及び公衆送信権)の侵害に
当たる旨主張する。
しかしながら,控訴人の上記主張は,原告ゲーム又は原告ソースコー\nドにおける個々の素材の選択又は配列にいかなる創作的表現がされてい\nるのか,その創作的表現が被告ゲーム又は被告ソ\ースコードにおいてど
のように利用されているのかについて具体的に主張するものではないか
ら,その主張自体理由がない。
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2021.04.23
平成30(ワ)5948 損害賠償請求事件 著作権 令和3年1月21日 大阪地方裁判所
舟券購入のプログラムについて著作物性、翻案かが争われました。裁判所はこれを認め、約1.4億円の損害額を認めました。ただ請求が一部請求したため1400万の損害賠償額です。
プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,そ\nの指令の表現の組合せ,その表\現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があ
り,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表\現上の創
作性が表れていることを要するといわなければならない(知財高裁平成21年\n(ネ)第10024号同24年1月25日判決・判例時報2163号88頁)。
イ そこで検討するに,前記1(5)で認定したところによれば,原告プログラム
は,市販のプログラム開発支援ソフトウェアである Microsoft Visual Studio を使用
して Microsoft Visual Basic 言語で記述されているから,ソースコードを個別の行\nについてみれば,標準的な構文やありふれた指令の表\現が多用されており,独創的
な関数等は用いられていない。
しかしながら,前記(5)イについては,一定の画面表示を得るために複数の記述\n方法が考えられるところ,一定の意図のもとに特定の指令を組み合わせ,独自のメ
ソッドを作成して独自の構\成で記述しており,同ウ及びエについては,一定の処理
方式を選択すること自体はアイデアにすぎないが,やはり,一定の結果を得るため
にどのように指令を組み合せ,どの範囲で構造体を設定し,配列・構\造化するかに
は様々な選択肢が考えられるところ,その具体的な記述は,一定の意図のもとに特
定の指令を組み合わせ,多数の構造体を設定し,配列・構\造化した独自のものにな
っている。
また,同オについては,HTML データから一定の情報を抽出する指令の記述は
選択の幅があるところ,メンテナンス性を考慮して独自の記述をしていることが認
められ,同カについても,人間が情報を入力してログインや舟券購入の操作をする
ことを想定して作成されている投票サイトのサーバーに,人間の操作を介さずに必
要なデータを送信してログインや舟券の購入を完了するための指令の表現方法は複\n数考えられるところ,複数の方式を適宜使い分けて記述し,一連の舟券購入動作を
構成していることが認められる。\nそうすると,前記イないしカのソースコードには表\現上の創作性があるといえ,
これらを組み合わせて構成されている原告プログラムにも,表\現上の創作性が認め
られるというべきである。
ウ 被告ら(被告エーワンを除く。以下同じ。)は,原告プログラムの機能は,\n原告プログラムを利用せずに競艇公式ウェブサイト等により実行できると主張する
が,競艇公式ウェブサイト等で人間の動作として情報を得たり舟券の購入をしたり
することと,原告プログラムにより情報を得たり自動的に舟券を購入したりするこ
とは異なるから,原告プログラムに創作性がないとする理由にはならない。
また,被告らは,原告プログラムが利用しているデータが競艇公式ウェブサイト
で公知であると主張するが,プログラムに入力される変数であるレース情報等のデ
ータが公知であるか否かはプログラムの著作物性とは関係がなく,失当である。
さらに,被告らは,原告プログラムのうち自動運転機能の部分は,既存のソ\ース
コードを単純作業により組み合わせたものであり,「Boat Advisor」等の類似のソ\nフトウェアが多数存在すると主張する。しかしながら,前記のとおり,原告プログ
ラムは,独自の指令の組合せ,構造体等の設定,構\成によって記述されており,あ
りふれたものとはいえず,証拠(乙2)をみても,「Boat Advisor」はレース予\n想,データ分析を主たる機能とするソ\フトウェアであり,原告プログラムのように
舟券を自動購入するものであるとは認められず,原告プログラムがありふれたソー\nスコードによって構成されているものとはいえない。\n原告プログラムに著作物性がないとの被告らの主張は,採用できない。
(2) 争点2(被告プログラムは,原告プログラムを複製又は翻案したものか)
について
ア 前記1(3)で認定したところによれば,被告プログラムは,被告P4がP7
より入手した原告プログラムについて,被告P3において逆コンパイルを行うと共
に難読化を解除し,期待値と称する機能を追加した以外は,逆コンパイルによって\n得られた原告プログラムの機能をそのまま利用したものであるから,少なくともそ\nのまま利用した部分において,被告プログラムは,原告プログラムを複製したもの
ということができる。
イ また,前記1(6)で認定したところによれば,被告プログラムは,少なくと
も,原告プログラムの BoatRaceCom.DLL 及び Kcommon.DLL を複製して作成され
たことが明らかである。
さらに,被告プログラムは,原告プログラムと画面表示やモジュール名がほぼ同\nじであること,マニュアルに記載された機能が原告プログラムとほぼ同一であるこ\nとも,上記アの結論と合致する。
ウ 被告らは,被告プログラムは,被告プログラム独自のアルゴリズムで算出さ
れた期待値(人気指数)に基づく予想をユーザーに提供するものであって,その部\n分に創作性があり,原告プログラムとは全く異なるものであると主張する。
被告らが主張する期待値の機能については,本件の証拠によっても判然とはしな\nいが,仮に,より勝率が高くなることが期待される買目を計算して推奨し,舟券を
自動購入する機能を追加した点で,被告プログラムは原告プログラムと異なる旨を\nいう趣旨であるとしても,原告プログラムが元々有する買目設定の機能を強化,発\n展させたものと理解し得るものであると共に,既に認定したとおり,被告プログラ
ムは,期待値の機能を追加した以外の部分については,原告プログラムを複製した\nものをそのまま利用しているとされるのであり,全体として,被告プログラムは,
原告プログラムの本質的特徴を直接感得し得るものであるから,少なくとも翻案に
あたることは明らかというべきであり,被告プログラムの作成は,原告プログラム
についての原告らの著作権を侵害するものである。
なお,被告らは,被告プログラムに「買目切捨」や「保険買目」など,原告プロ
グラムにはない機能があると主張するが,被告P3において,期待値の機能\以外は
原告プログラムと異なる機能はないと供述していること,前記のとおり,マニュア\nルや画面が同じであること,原告プログラムにも同一の機能があることから,当該\n主張は上記結論を左右するものではない。
・・・
前記1の(2)ないし(4)によれば,P7は1本20万円を原告らに支払って取
得した原告ソフトウェアを1本50万円から80万円で約30本販売したこと,被\n告P5は,被告エーワンの名義で,被告ソフトウェア約70本を1本60万円から\n100万円で販売し,その中に,平成28年5月2日のP8に対する100万円の
売買が含まれること,以上の事実が認められる。なお,被告ガルヒが被告ソフトウ\nェアを販売するためのセキュリティ認証キーを140個用意したことは前記1の
(4)で認定したとおりであるが,これに対応する140本の被告ソフトウェアが販\n売されたと認めるに足りる証拠はない。
イ 以上によれば,被告らは,被告ソフトウェアを少なくとも70本販売し,う\nち少なくとも1本は平成28年5月2日に100万円で販売し,その余は少なくと
も1本60万円で販売したと認めるのが相当であり,ここから控除すべき経費等の
主張はないから,被告ソフトウェアの販売により被告らが受けた利益は,少なくと\nも4240万円であると認められる。
そうすると,著作権法114条2項により,原告らの受けた損害額は4240万
円,著作権を共有する原告各人について2120万円ずつと推定される。
また,損害のうち100万円(各50万円)は,平成28年5月2日に被告ソフ\nトウェアが販売されたことによるものであり,被告エーワンを含む被告らは,同日
から遅滞の責を負う。その余については販売時期が不明であり,前記のとおり,被
告ソフトウェアが3から4か月間販売されていたことからすれば,遅くとも同年9\n月2日までには,その余の損害すべてに係る侵害行為が行われたと認められるか
ら,原告らのその余の損害について,被告らは,同日から遅滞の責を負うものと認
められる。
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2021.01. 5
令和2(ワ)2403 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和2年12月23日 東京地方裁判所
写真の著作物の複製・公衆送信があったとして、約30万円の損害賠償が認められました。損害の算定根拠は、「fotoQuote」というサイトにおける料金表です。\n
本件写真は,原告が,天候の良好な平成23年3月2日の日中に,インドの世界遺産であるエローラ石窟群のカイラーサ寺院を被写体として選択し,日陰となる箇所が極力少なくなるように配慮しつつ,同寺院の正面を斜め上方から,同寺院の主要な建物を
中心に据え,その全体がおおむね収まるように撮影したものであることが認め
られる。
そうすると,本件写真は,原告が撮影時期及び時間帯,撮影時の天候,撮影
場所等の条件を選択し,被写体の選択及び配置,構図並びに撮影方法を工夫し,\nシャッターチャンスを捉えて撮影したものであるから,原告の個性が表現され\nたものということができる。したがって,本件写真は原告の思想又は感情を創
作的に表現した「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当し,本件写真を創\n作した原告は「著作者」(同項2号)に該当するので,本件写真に係る著作権
及び著作者人格権を有する。
・・・
前記2(3),3のとおり,本件画像は,飲食店業等を目的とする会社である
被告がその事業のために本件サイトに掲載したものであり,本件画像の掲載
期間は,約5年に及ぶ。また,証拠(甲6ないし8)によれば,原告は,自
身の写真のライセンスに当たっては,通常,「fotoQuote」の料金
表(甲7)を使用していること,同料金表\によれば,世界市場のウェブ広告
にハーフページ(300×600ピクセル)の大きさの写真を5年間使用さ
せる内容のライセンス料は,地域をアジアに限定しても,1989米ドルを
下らないこと,令和2年8月20日(本件の訴え提起の前日)時点における
米ドル・円相場の仲値が1ドル106.10円であることが認められる。さ
らに,証拠(甲3の1)によれば,本件画像は,400×300ピクセルの
大きさで使用されていたことが認められる。そうすると,本件写真を営利目
的で使用する場合,原告は,21万1032円でその利用を許諾することと
していたものと認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
以上に加え,本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件写真に係る原告
の著作権(複製権,自動公衆送信権)の行使につき受けるべき金銭の額に相
当する額(著作権法114条3項)は,21万1032円と認めるのが相当
である。
また,上記の諸事情に鑑みれば,本件写真に係る原告の著作者人格権(氏
名表示権)が侵害されたことにより原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料\nは5万円,弁護士費用相当額の損害は5万円とそれぞれ認めるのが相当であ
る。
(2) これに対し,被告は,原告が損害の算定根拠とする「fotoQuote」
の料金表は,あくまで営利目的の広告等として写真が使用された場合に適用\nされるものであり,被告は非営利公益目的で本件写真を使用したものである
から,これを算定根拠とすることはできないと主張する。
しかし,前記2(3)のとおり,本件画像は,飲食店業等を目的とする会社で
ある被告がその事業のために本件サイトに掲載したものであり,被告が本件
画像を利用したのは営利目的であったというべきであるから,被告の上記主
張は前提を欠く。
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2020.12.31
令和1(ワ)26106 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和2年10月14日 東京地方裁判所
キャラクターの複製・翻案であるとの主張は認められませんでした。
(2) 原告作品全体の創作性及び被告作品全体との対比について
ア 証拠(甲1,2,5〜7)によれば,原告の原著作物(別紙2)に描かれ
た原告キャラクターは,頭部は髪がなく半楕円形であり,目は小さい黒点で
顔の外側に広く離して配され,上下に分かれたくちばし部分はいずれも厚く
オレンジ色であり,上下のくちばしから構成される口は横に大きく広がり,\n体は黄色く,顔部分と下半身部分との明確な区別はなく寸胴であり,手足は
先細の棒状であるとの特徴を有しており,原告作品においては,原告キャラ
クターのこれらの特徴の全部又は一部が表現されているものと認められる。\n
イ 証拠(乙1)及び別紙6「対比キャラクター」を含む弁論の全趣旨によれ
ば,原告作品に描かれた原告キャラクターの上記特徴のうち,キャラクター
の髪を描かず,頭部を半楕円形で描く点は同別紙の「エリザベス」及び「タ
キシードサム」と,目を小さい黒点のみで描く点は同別紙の「タキシードサ
ム」,「アフロ犬」,「ハローキティ」,「にゃんにゃんにゃんこ」及び「ラ
イトン」と,口唇部分を全体的に厚く,口を横に大きく描く点は同別紙の「お
ばけのQ太郎」と,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに寸胴に描き,
手足は手首・足首を描かずに先細の棒状に描く点は同別紙の「おばけのQ太
郎」及び「エリザベス」(ただし,いずれも手の部分)と共通し,いずれも,
擬人化したキャラクターの漫画・イラスト等においては,ありふれた表現で\nあると認められる。
ウ そうすると,原告作品は,上記の特徴を組み合わせて表現した点にその創\n作性があるものと認められるものの,原告作品に描かれているような単純化
されたキャラクターが,人が日常的にする表情をし,又はポーズをとる様子\nを描く場合,その表現の幅が限定されることからすると,原告作品が著作物\nとして保護される範囲も,このような原告作品の内容・性質等に照らし,狭
い範囲にとどまるものというべきである。
(3) 被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かについて
上記(2)を踏まえ,被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かにつ
いて,作品ごとに以下検討する。
ア 被告作品1について
(ア) 被告作品1−1について
a 原告作品1−1と被告作品1−1との対比
原告作品1−1と被告作品1−1とを対比すると,両作品は,ほぼ正
面を向いて立つキャラクターにつき,目を黒点のみで描いている点,く
ちばしと肌の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半
身部分とを明確に区別せずに描いている点,胴体部分に比して手足を短
く描いている点のほか,黒色パーマ様の髪が描かれている点において共
通するが,黒色パーマ様の髪型を描くこと自体はアイデアにすぎない上,
その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはあり
ふれた表現であると認められる。\n 他方,両作品については,原告作品1−1では,キャラクターの体色
が黄色で,両目が小さめの黒点のみで顔の外側付近に広く離して描かれ,
上下のくちばしはオレンジ色で,たらこのように厚く描かれているのに
対し,被告作品1−1では,キャラクターの体色は白色で,両目がより
顔の中心に近い位置に,多少大きめの黒点で描かれ,上下のくちばしは
黄色で原告キャラクターに比べると厚みが薄く,横幅も狭く描かれてい
るなどの相違点がある(以下,これを「作品に共通する相違点」という。)。
加えて,原告作品1−1では,キャラクターが,いわゆるおばさんパ
ーマ状の髪型(毛量は体の約5分の1程度で,への字型の形状をし,眉
毛も見えている。)をして,口を開け,左手を上下に大きく振りながら,
表情豊かに相手に話しかけているかのような様子が表\現されているの
に対し,被告作品1−1では,いわゆるアフロヘアー風のこんもりとし
た髪がキャラクターの体全体の半分程度を占めるなど,その髪型が強調
され,キャラクターの表情や手足の描写にはさしたる特徴がないなどの\n相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。\n 以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通\nするにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ\nとにも照らすと,被告作品1−1から原告作品1−1の本質的特徴を感
得することはできないというべきである。
したがって,被告作品1−1は,原告作品1−1の複製にも翻案にも
当たらない。
◆判決本文
原告作品、被告作品、参考著作物はこちらです。
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2020.12.25
令和2(ワ)3594 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 令和2年12月17日 東京地方裁判所
プログラムの著作物について、複製、公衆送信されたとして損害賠償が認められました。損害額の認定について、本件プログラムは単独では販売されておらず、コニュニティの入会費用として約25万円がプログラムの価値で、被告は、約25万*7名分が損害と主張しました。東京地裁(46部)はそのうちの1人については、コミュニティへの入会の機会を失ったと認定して、約25万円の損害額が認定されました。
(1) 前記1(1)のとおり,原告は,本件ソフトの配布を原告コミュニティへの入\n会の特典とし,原告コミュニティに入会した者から入会費用を受け取ること
によって,本件ソフトを独占的に利用することができる地位による利益を享\n受していた。ここで,被告が本件各行為により本件ソフトを配布した本件各\n参加者は,いずれも原告コミュニティの紹介,勧誘を受けたが入会しなかっ
たこと(前記1(2))を踏まえると,被告の本件各行為がなかったならば本件
各参加者全員が入会費用を支払って原告コミュニティに入会したことを認め
ることはできない。もっとも,本件各参加者のうちAは,原告コミュニティ
に参加した被告と情報交換をして,被告から本件ソフトの交付を受け,また,\n本件ソフトの配布のために必要な処理等を率先して行うなどしていて,本件\nソフトの価値に強く着目していた者であり,被告の行為がなければ,本件ソ\
フトを入手するために本件ソフトが入会特典である原告コミュニティに参加\nしたと認めることが相当である。そうすると,被告の本件各行為により,原
告は少なくとも本件ソフトが入会特典である原告コミュニティに参加した者\nを1名失ったと認められる。
そして,本件ソフトが入会特典であり本件ソ\フトの再許諾料を含むといえ
る原告コミュニティの入会費用は24万9900円であり,また,本件契約
において,原告がBANANAに対して支払う1回の利用許諾代金が同額で
あり,再利用許諾の代金を含む原告コミュニティの参加費用はその利用許諾
代金を下回らない範囲で設定するとされていたこと(前記第2の1(2)イ)等
に照らすと,原告は,少なくとも同額の損害を被ったものと認められる。
また,原告は,BANANAに対して本件各参加者7人分の利用許諾代金
174万9300円を支払う義務を負っているなどとも主張する。しかし,
被告の本件各行為によって原告に上記の支払義務が発生したことを認めるに
は足りず,原告が被告の本件各行為により同額の損害を被ったとは認められ
ない。
◆判決本文
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2020.07.17
平成29(ワ)22922 著作権に基づく差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年11月15日 東京地方裁判所
テストに用いる質問項目の表現が著作権侵害かが争われました。裁判所は依拠性を否定して、非侵害と認定しました。\n
(1) 出版権者は,設定行為で定めるところにより,頒布の目的をもって,その
出版権の目的である著作物を,原作のまま印刷その他の機械的又は科学的方
法により文書又は図画として複製する権利を専有し(著作権法80条1項1
号),被告が,原告の出版権を侵害したというためには,被告が,頒布の目
的をもって,その出版権の目的である著作物を複製したことが必要である。
また,原告が出版権を有する著作物について,被告が本件出版物において複
製したというためには,本件出版物が,被告によって,原告が出版権を有す
る著作物に依拠して作成されたことを要する。
原告は,本件においてAを著作者とする著作物の出版権侵害を主張すると
ころ,本件出版物の質問票における質問の表現と新日本版の質問票における\n質問の表現とを比較し,その類似性に基づいて上記出版権侵害を主張してお\nり,本件出版物の質問票に記載された質問が,新日本版の質問票に記載され
た質問に依拠して作成され,本件出版物の質問票が,原告が出版権を有する
新日本版の質問票を複製していると主張していると解され
の主張),まず,この点について判断する。
(2) 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができ
る。
ア Bらは,昭和63年10月10日,日本心理学会第52回大会におい
て,「MMPI自動診断システム(1)翻訳,標準化,および,実施プロ
グラム」と題する発表を行った。\nこの発表において,Bらは,旧三京房版におけるMMPIの質問の翻\n訳には多数の誤訳などの問題が存在し,これが日本においてMMPIが
活用されていない原因であるから,MMPIの質問の翻訳と標準化をや
り直すべきであると考え,Bがまず翻訳の下訳を作成し,それにEとC
がそれぞれ手を加えた2種類の訂正原稿を比較しながら,3名で最終原
稿をまとめたと発表した(以下,この翻訳を「Bら新訳」という。)。ま\nた,Bらは,Bら新訳につき,標準化作業を継続中であると発表した。\n(乙2の1,乙4,10)
なお,心理検査は測定値(得点)によって特定の性格特性を測定する
が,その測定値(得点)に基づいて測定事項を正しく判断するためには,
個人が所属する準拠集団ごとに,当該心理検査を相当数の被験者に対し
て実施したデータを集積し,得点の分布を調べ,当該心理検査の測定値
(得点)を解析する基準(尺度)を明らかにする作業が必要であり,こ
れを標準化という。(甲3)
イ Bらは,昭和63年12月15日発行の「なぞときロールシャッハ
ロールシャッハ・システムの案内と展望」において,昭和62年11月
7日当時には,Bら新訳は完成していなかったこと,昭和63年6月当
時にはBら新訳に基づく検査を実施したことを記載した(乙9)。
ウ Bらは,平成元年11月30日の同学会第53回大会において「MM
PI自動診断システム(2)暫定的標準化と自動解釈について」と題す
る発表を行った。この発表\において,Bらは,Bら新訳は翻訳の誤りが
多い旧三京房版とはほとんど一致しないこと,及びBら新訳について標
準化作業を継続中であることを発表した。(乙2の2)\n
エ Bらは,平成2年11月30日の同学会第53回大会において「MM
PI自動診断システム(3)新版,三京房版,メイヨウ新基準との比較」
と題する発表を行った。この発表\において,Bらは,Bら新訳につき標
準化作業を行い,「現在までに参加した被験者は男性113名,女性15
6名である。」と発表した。(乙2の3)\n
オ Bらは,平成4年3月25日,Bら新訳を付録として付した「コンピ
ュータ心理診断法 MINI,MMPI-1自動診断システムへの招待」
と題する書籍を出版した(乙4)。
カ 平成13年1月1日発行のF編著「国際的質問紙法心理テストMMP
I-2とMMPI-Aの研究 Minnesota Multiphasic Personality Invent
ory 2 & A Study(北里大学看護学部精神保健学教授平成12年3月退任
記念論集)」には,MMPIには旧三京房版も含めて15種類の翻訳があ
ったが,それらには誤訳があるほか恣意的な意訳などの疑問点があった
旨の記載があり,また,「1992年(判決注:平成4年):富山大学の
Bらが,これ等の疑問点を訂正する形のMMPI-1新訳版を作成。」と
の記載があり,また,「1993年(判決注:平成5年):Dらがこれま
での翻訳を修正し,再標準化しMMPI−1新日本版を作成。」との記載
がある(乙1)。
キ Bらは,平成18年,Bら新訳の質問項目92の「看護婦」との訳語
について,「看護師」と変更した(乙7,10〔17頁〕)。
ク 被告は,平成29年,Bら新訳のうち上記キの部分を変更した質問が
掲載された本件出版物を出版した(前提事実 オ)。
ケ 新日本版について,以下の事実が認められる。(乙13)
新日本版は,平成5年10月1日,MMPI新日本版研究会を編者と
して原告から出版された(前記前提事実(2)エ)。同研究会の代表はDであ\nり,同研究会のメンバーにAは含まれていない。
新日本版の前書きには,旧三京房版は改訂の必要性が痛感されていた
こと,Aらは改訂に着手したが完成しなかったこと,Aから依頼を受け
て平成2年にMMPI新日本版研究会が旧三京房版の改定作業を引き受
けたこと,MMPI新日本版研究会は,より適切な日本語版を作成する
という目的からMMPI原版を最も適切と思われる日本語に移して適切
な標準化作業を行うという条件の下でこの作業に取り組み,項目の配列
順序は旧三京房版を踏襲するがそれ以外の点では全く独自の観点から作
業を進め,新日本版を作成したことなどが記載されている。
(3) 以上の事実によれば,Bらは,昭和62年11月7日から昭和63年6月
までに間にBら新訳を完成させ,これを前提として,学会での発表を行うと\n共に標準化作業を進め,平成4年3月25日にBら新訳を掲載した書籍を出
版したと認められる。前記前提事実(2)エのとおり,新日本版は平成5年10
月1日に出版されたものであるから,Bらが,Bら新訳を作成した昭和62
年から昭和63年当時,新日本版に接し,これを用いてBら新訳を作成する
ことは不可能であったといえる。\n
これに対し,原告は,昭和63年には既に新日本版の第一段階の質問票は
完成しており,Bらがこれを参照した可能性がある旨主張するが,MMPI\n新日本版研究会が旧三共房版の改訂作業を引き受けたのは平成2年であり,
同研究会が「MMPI原版を最も適切と思われる日本語に移」す作業を行っ
たこと(前記(2)ケ)からすれば,昭和63年の段階で新日本版の質問票の質
問と同内容の翻訳が完成していたと認めることは困難であるし,また同翻訳
が公表され,Bら一般の研究者が参照し得たと認めるに足りる証拠もない。\n そして,本件出版物の質問票の質問は,Bら新訳の質問92が「看護婦に
なりたいと思います。」から「看護師になりたいと思います。」へと変更され
た以外は,Bら新訳の質問と同一であるから(甲4の1,乙10,前記(2)
ク),本件出版物の質問票の質問が,新日本版の質問票の質問に依拠して作
成されたと認めることはできない。なお,本件出版物の質問票の質問と新日
本版の質問票の質問は,その内容においてほぼ重なるが,これらはいずれも
MMPIを翻訳したものでその内容が共通することは当然であり,その重な
りによって,本件出版物の質問票が新日本版の質問票に依拠して作成された
と認めることはできない。
したがって,本件出版物は新日本版を複製したものであるとは認められず,
原告主張の出版権侵害は理由がない。
(4) 原告は,原告が旧三京房版の出版権を有するとも主張するため,本件出版
物の質問票が,旧三京房版の質問票を複製したものであるか否かについても
検討する。
本件出版物の質問票の質問は,その内容において,旧三京房版の質問票の
質問と重なるものもあるが(甲3,乙6,10),これらもいずれもMMP
Iを翻訳したものであるから,このことをもって直ちに本件出版物の質問票
が旧三京房版の質問票に依拠してこれを再製したものとはいえない。前記(2)
で認定したとおり,Bらは,旧三京房版における質問の翻訳に疑問を持ち,
独自にMMPIの英文の翻訳等を行ってBら新訳を完成させたものと認めら
れること,上記各質問票の質問の日本語の表現は同じ英文に対応するものと\nしてはいずれも相当に違うこと(甲3,乙6,10)などから,本件出版物
の質問票の質問が旧三京房版の質問票の質問を複製したものであると認める
ことはできず,その他,本件出版物が旧三京房版を複製したことを認めるに
足りる証拠はない。したがって,本件出版物が旧三京房版を複製したもので
あるとは認められない。
◆判決本文
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2019.11.26
平成30(ワ)14843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年9月18日 東京地方裁判所
写真の著作物が無料でアップロードされたとして、約30万円の損害賠償が認められました。
本件各写真は,本件各商品を販売するために撮影されたものであると認めら
れるところ(甲33),以下のとおり,いずれも,商品の特性に応じて,被写体の
配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,背景\n等の写真の表現上の諸要素につき相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情\nが創作的に表現されているということができる。\n
ア すなわち,本件写真1ないし4は,ト音記号,楽譜又は楽器の柄のネクタイ
を被写体とするものであり,ネクタイの下端部を手前にして波打つように配置され,
背景はネクタイの下端部が配置された写真下部を白色,写真上部を暗い灰色又は黒
色とし,陰影が明確に付されるなどして,ネクタイの柄や質感を視覚的に認識しや
すいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているという
ことができる。
イ 本件写真5ないし10は,弦楽器の柄のコインケース等の商品を被写体とす
るものであり,本件写真5,7,9は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,
本件写真6,8,10は,柄の部分を大きく撮影したものであって,商品の配置の
仕方や陰影の付し方により,商品の質感や弦楽器の柄を視覚的に認識しやすいもの
となっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということがで
きる。
ウ 本件写真11ないし40は,楽器を演奏する動物等の置物を被写体とするも
のであり,本件写真11,14,17,20,23,26,29,32,35,3
8は,商品の前方を正面から撮影したもの,本件写真12,15,18,21,2
4,27,30,33,36,39は,商品の後方を斜め上から撮影したもの,本
件写真13,16,19,22,25,28,31,34,37,40は,動物等
の顔を斜め上から大きく撮影したものであって,背景は緑色,白色又はそれらのグ
ラデーションとし,陰影を付すなどして,動物等の表情や演奏態様等を視覚的に認\n識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされている
ということができる。
エ 本件写真41ないし44は,鍵盤等の柄のフロアマットを被写体とするもの
であり,本件写真41及び43は,四角形状の商品の形態に沿って商品のみを大き
く撮影したもの,本件写真42及び44は,その一部を大きく撮影したものであっ
て,生地の質感や鍵盤等の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販
売用の写真として相応の工夫がされているということができる。
オ 本件写真45ないし50は,写譜用のペンを被写体とするものであり,本件
写真45,47,49は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,本件写真4
6,48,50は,ペンの先端部分を大きく撮影したものであって,商品に光を反
射させ,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の質感や細かい模様を視覚的
に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされて
いるということができる。
カ 本件写真51及び52は,写譜用のペンの替芯(5本)及びそのケースを被
写体とするものであり,ケースから突出する替芯につき長さを変えた状態で大きく
撮影したものであって,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の形状を視覚
的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされ
ているということができる。
キ 本件写真53ないし61は,トランペット等の楽器の柄の黒色クリアファイ
ルを被写体とするものであり,本件写真53,55,57,59は,商品を中央に
配置して全体を撮影し,柄の部分に光を反射させ,背景は黒色を基調とし,陰影を
付すなどしたもの,本件写真54,56,58,60は,柄の部分を大きく撮影し
たものであって,トランペット等の楽器の柄を視覚的に認識しやすいものとなって
おり,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。ま
た,本件写真61は,商品を中央に配置して柄のない方向から全体を撮影したもの
であり,背景を白色と黒色のグラデーションとし,陰影を付すなどして,商品の形
状を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工
夫がされているということができる。
ク 以上のとおり,本件各写真には,商品の販売用の写真として相応の工夫がさ
れており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。\n
(2)被告は,本件各写真が著作物であることを争い,取り分け,本件写真42な
いし44は商品を上から撮影しているだけであり,本件写真45,46,50ない
し52は商品の販売用の写真として一般的なものであるから,これらに創作性が認
められないことは明らかである旨主張するが,前記のとおり,本件各写真には,商
品の販売用の写真として相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的
に表現されているということができるのであって,被告の上記主張は採用すること\nができない。
(3) 以上によれば,本件各写真には創作性が認められ,前記前提事実(2)のとおり,
これらは原告代表者によって原告の発意に基づき職務上作成されたものであるから,\nいずれも,原告の著作物であると認められる。
前記のとおり,被告は,原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害しており,これらについて,少なくとも,過失があると認められるから,不法行為による損害賠償責任を負っているところ,原告は,本件\n各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)として,著作権侵害に
係るものにつき合計46万3800円,著作者人格権侵害に係るものにつき合計4
万6800円の損害が生じたと主張する。
(2) そこで検討すると,前記のとおり,被告は,原告が本件各写真を原告ウェブ
サイトに掲載することによって販売していた本件各商品を,本件各写真と実質的に
同一の被告各写真を被告ウェブサイトに掲載することによって販売していたもので
あり,このような被告各写真の使用態様に加えて,被告各写真の掲載期間は長いも
ので1年6か月にわたること,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,画像素材
の販売業者である「ペイレスイメージズ」のウェブサイトでは,画像素材の単品で
の購入価格が432円から5400円までとされていると認められることなど,本
件訴訟に現れた事情を考慮すると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべ
き金銭の額(著作権法114条3項)は,写真1枚当たり5000円と認めるのが
相当である。もっとも,原告の氏名表示権が侵害されたことによって,別途の財産\n的損害が生じたと認めるに足りない。
(3)ア これに対し,原告は,アマナイメージズの価格表において,画像素材1点\n当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円,使用期間3年までの使用
単価は6万0480円,無断使用した場合には使用料金の200%を請求できると
されていることを主張するが,弁論の全趣旨によれば,アマナイメージズは,画像
素材のレンタルや販売を業とする株式会社であると認められるのに対し,本件各写
真はレンタルや販売を目的として撮影されたものではないから,原告が主張する価
格表について本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損\n害額の算定に当たって大きく考慮することは相当とはいえない。
イ 他方で,被告は,(1)本件各写真の創作性の程度の低さなどに照らせば,販売
用の広告写真1枚当たりの使用料相当額はせいぜい1000円程度である,(2)被告
において学遊社に本件各写真と同じカットでプロカメラマンによる写真撮影の見積
りを依頼したところ,ライティングを施すことを含む見積額が8万円であったから,
本件各写真の使用料相当額に係る損害は高くても合計8万円である旨主張する。
しかしながら,(1)については,前記のとおり,本件各写真は,商品の販売用の写
真として相応の工夫がされているということができるから,創作性の程度が低いこ
とを理由として著作権法114条3項所定の損害額を著しく低額にすべきであると
いうことはできない。
(2)については,証拠(甲41,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,学遊社は,被
告から提供を受けた本件各写真をサンプルとして参照し,本件各写真に対応する6
1カットの写真を半日でまとめて撮影した場合の撮影料を見積もったものと認めら
れるところ,学遊社の見積りは,本件各写真をサンプルとして参照しているため,
被写体の配置,カメラアングル・構図等を検討する必要はなく,また,半日でまと\nめて撮影しているため,複数日にわたって撮影されたと認められる本件各写真と比
べて撮影費用が低額となっているとみる余地があることなどからすれば,見積額が
8万円であるからといって,本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114
条3項所定の損害額が同程度であるということはできない。
(3) そうすると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著
作権法114条3項)は,合計30万5000円(5000円×61枚)であると
認められる。
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2019.10.30
令和1(ネ)10045 標章使用差止反訴請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和元年10月23日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ピクトグラムの使用合意があること、およびその複製又は翻案には該当しないとした1審の判断が維持されました。複製又は翻案には該当しない理由は1審と同じです。
まず,控訴人が主張する反訴原告主張合意については,これを記載した
契約書等の書面は作成されていない。また,控訴人が主張する平成14年
頃の反訴原告主張合意の成立にかかる事実経過(前記第2の5(控訴人の
主張)ア)も,これを裏付ける客観的な証拠は見当たらない。
ア そこで,控訴人と被控訴人との間の取引経過についてみると,各業態
の第1号店を出店する際の請求書をみても,店舗デザイン設計料とのみ
あるだけで,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムに係る制
作料,使用料については何ら記載されていない。そして,ロゴやピクト
グラムについては,ハードオフ,オフハウス,モードオフ,ガレージオ
フ,ホビーオフ,リカーオフといった各業態の第1号店を出店した(ハ
ードオフのピクトグラムについては,平成7年頃に使い始めた)後は,
コーナーの拡大などの必要に応じて更なるピクトグラムの制作・納品を
しつつも,基本的にはそれまでに制作したロゴやピクトグラムを用いて
店舗デザインの設計等を行うのが恒例となっており,各業態によって差
はあるものの,制作したロゴ及びピクトグラムはその後の出店店舗でも
用いられていた。また,平成29年4月26日に請求するまで(前記1
において引用する原判決第3の1(15)),20年以上の長期間にわたっ
て,控訴人は,反訴原告標章であるロゴや反訴原告ピクトグラムの使用
料を店舗デザイン設計(監理)料と別に請求したことはなく,制作料に
ついても,その請求を裏付ける書面は基本的に存在しない。
ただし,控訴人から被控訴人に対する制作料の請求については,平成
16年3月22日の制作料(基本デザイン料)の請求(前記1⑴におい
て改めた原判決引用部分第3の1(10))及び平成28年3月の制作料の請
求(前記1において引用する原判決第3の1(12)エ)が存在する。しか
しながら,仮に反訴原告主張合意が存在したのであれば,かかる請求が
できないことは控訴人にとって明らかであって,それにもかかわらず請
求したこと自体,それまでに作成・納品した制作料について将来も請求
できないことを認識していたからこそ,新たに作成・納品したロゴ等に
ついて,制作料の支払合意を取り付けるべく,このような行為に及んだ
と考えられるところである。なお,仮に,かかる2回の請求以外に,控
訴人が被控訴人に対し,口頭で,ロゴ等の制作料の請求をしたことがあ
ったとしても同様である。
このような状況に照らすと,将来的に,控訴人,被控訴人の間におい
て,店舗デザイン設計(監理)料等の名目で支払われた金員とは別に,
反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの制作料・使用料を請求する権
利が留保されていたとは考えにくく,むしろ,これらの制作料及び使用
料の支払義務を前提とする反訴原告主張合意がなかったことが窺われる。
イ また,契約終了に当たり,控訴人が被控訴人に当初交付した書類の内
容は前記1(2)に記載のとおりであるところ,かかる記載内容からは,無
償使用許諾を前提とする反訴原告主張合意の存在というよりも,むしろ,
使用料は店舗のデザイン設計料に含まれていたとの認識が窺われる。ま
た,同書面には,制作料そのものについての言及は存在しない。
ウ 加えて,被控訴人においては,仮に反訴原告標章や反訴原告ピクトグ
ラムの使用ができなくなれば,重大な不利益が生じることが明らかであ
る。したがって,仮に反訴原告主張合意のような合意が存在するのであ
れば,これによって生じる不利益の重大性に鑑み,合意の内容を書面化
することが通常であると考えられるところ,そのような書面が存在しな
いことは既に指摘したとおりである。
エ 以上によれば,被控訴人は,店舗デザイン設計料等とは別に,ロゴや
ピクトグラムの制作料,使用料を支払う意思はなく,控訴人も,被控訴
人からの店舗デザイン設計の依頼を受ける際に,ロゴや平成7年頃以降
はピクトグラムの制作をも必要に応じて行うことを前提としつつも,こ
れらの制作料や使用料については,将来的にも被控訴人から引き続き店
舗設計業務の依頼を受けられることを期待したことから,明示的に制作
料や使用料として請求することはせずに,店舗設計業務を継続して受注
していく中で,これらについて実質的に回収を図っていこうという意向
であったと考えられる。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成29(ワ)37350
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2019.09. 2
平成29(ワ)37350 標章使用差止請求反訴事件 著作権 民事訴訟 令和元年5月21日 東京地方裁判所
ピクトグラムが表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、著作権侵害が否定されました。ただ、両者の具体例は掲載されていないので詳細は不明ですが、「H君」(「H」の文字を人間に見立て,両足,顔,耳,口,両手を連\n想させる装飾を施した部分をいう。),ボックスボイテル型の瓶のシルエット(反訴原告標章5),エレキギターの黒塗りイラスト等のようです。
反訴被告標章1,2及び5の作成,使用等によって,反訴原告標章1,2
及び5についての反訴原告の複製権又は翻案権が侵害されるか否かを検討
するため,反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分について
みると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字
が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の
間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「O\nFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くよ
うな装飾が施されていることなどで共通している。
アルファベット文字について著作物性を肯定するためには,その文字自体
が鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていなければならないと解
するのが相当である。反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文
字が反訴被告の店舗で使用等をするために様々な工夫を凝らしたものであ
ることは反訴原告が主張するとおりであるとしても,それらの工夫による反
訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハ
ウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するも\nのであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備
えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,い
ずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組
合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれた\nものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。
したがって,反訴原告標章1と反訴被告標章1は,表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,\n仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても,反訴被告標章1を作成等する
行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえない。また,上
記と同様の理由から,反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても反
訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。
ウ 反訴被告ピクトグラムの作成,使用等により反訴原告ピクトグラムについ
ての反訴原告の著作権が侵害されるか否かを検討するため,反訴原告ピクト
グラムと反訴被告ピクトグラムが同一性を有する部分についてみると,反訴
原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,いずれも,反訴被告で取り扱
う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そし
て,これらは,Tシャツの前部中央に表示された表\現が異なる反訴原告ピク
トグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ない
し4−03を除く全てについて,具体的な形状が異なる製品を選択してこれ
を表現したものである。したがって,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムは,基本的に,同じジャンルの製品を選択してその外観を表してい\nる点において共通するにとどまるといえるものである。また,反訴原告ピク
トグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて,選択された製品の配置の角度,
複数の製品の種類の選択,レイアウトにおいて共通するものはあるが,これ
らは,いずれも,アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得る\nありふれた表現といえるものであり,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピク\nトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。また,反訴原
告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−0
1ないし4−03におけるTシャツの形状は概ね同じであるが,これらは極
めてありふれたTシャツの形状であり,その形状についての表現に創作性が\nあるとは認められない。
これらを考慮すると,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,
表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部分において同一性を
有するにすぎないから,仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著
作物であるとしても,反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の
複製権又は翻案権を侵害するものではない。
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2019.07.22
平成30(ワ)16791 著作権に基づく差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年5月15日 東京地方裁判所
問題集は、編集著作物に該当する、解説は著作物と判断されましたが、本件解説の本質的特徴の同一性に欠けるとして、著作権侵害ではないと判断されました。
複製については、「被告は,実名は明らかにできないが,原告の経営する塾に在籍する複数の生徒から問題の原本を入手し解説講義を行っており,被告が本件問題を複製した事実は一切なく,生徒から任意に本件問題の原本を入手したものである。」と主張しています。
争点(1)(本件問題及び本件解説の著作物性の有無)について
(1) 証拠(甲4の1,5の1)によれば,本件問題のうち,国語Aの1は物語
文の,同2は論説文の読解問題であり,いずれも問1〜10から構成され,\n国語Bの1は物語文の,同2は説明文の読解問題であり,いずれも問1〜5
から構成されていることが認められる。\n また,証拠(甲4の2,5の2)によれば,本件解説には,解答部分,配
点部分,解説部分から構成され,解説部分には,設問ごとに,問題の出題意図,\n題材とされた文章のうち着目すべき箇所,当該箇所に係る文章の理解方法,
正解を導き出すための留意点等が記載されている。
他方,被告ライブ解説(甲1)は,本件問題について,同問題に係るテス
トの終了後に,被告の担当者等がウェブ上の動画において口頭でその解説を
するものであり,本件問題及び本件解説が画面上に表示されることはない。\n
(2) 著作権法12条は,「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性
を有するものは,著作物として保護する。」と規定するところ,被告は,本
件問題について,「どの部分を問題とするのか」,「何を問うのか」は問題
作成におけるアイデアにすぎないとして,本件問題は編集著作物に該当しな
いと主張する。
しかし,国語の問題を作成する場合において,数多くの作品のうちから問
題の題材となる文章を選択した上で,当該文章から設問を作成するに当たっ
ては,題材とされる文章のいずれの部分を取り上げ,どのような内容の設問
として構成し,その設問をどのような順序で配置するかについては,作問者\nが,問題作成に関する原告の基本方針,最新の入試動向等に基づき,様々な
選択肢の中から取捨選択し得るものであり,そこには作問者の個性や思想が
発揮されているということができる。本件問題についても,題材となる作品
の選択,題材とされた文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択,設問
の内容,設問の配列・順序について,作問者の個性が発揮され,その素材の
選択又は配列に創作性があると認めることができる。
したがって,本件問題は編集著作物に該当する。
(3) 本件解説は,前記のとおり,本件問題の各設問について,問題の出題意図,
正解を導き出すための留意点等について説明するものであり,各設問につい
て,一定程度の分量の記載がされているところ,その記載内容は,各設問の
解説としての性質上,表現の独自性は一定程度制約されるものの,同一の設\n問に対して,受験者に理解しやすいように上記の諸点を説明するための表現\n方法や説明の流れ等は様々であり,本件解説についても,受験者に理解しや
すいように表現や説明の流れが工夫されるなどしており,そこには作成者の\n個性等が発揮されているということができる。
したがって,本件解説は創作性を有し,言語の著作物に該当するというべ
きである。
2 争点(2)(複製又は翻案該当性)について
(1) 複製について
原告は,被告が本件問題及び本件解説の複製を自ら行っているか,仮に,
自ら複製行為を行っていないとしても,保護者又は生徒をいわば手足のよう
に利用して複製をさせているのであるから,被告自身が複製を行ったと同視
し得ると主張する。
しかし,被告は,複数の原告学習塾の生徒から問題の原本を入手し解説を
行っている事実は認めるものの,問題を複製した事実は否認するところ,本
件においては,被告が自ら本件問題及び本件解説文を複製したと認めるに足
りる証拠はない。
また,被告が,指導者としての強い立場を利用し,保護者又は生徒に本件
問題等の複製を依頼し,あるいは,複製の費用を負担し,金銭や便宜を供与
するなどの働きかけをして保護者や生徒に本件問題等の複製を依頼したとの
事実を認めるに足りる証拠もない。そうすると,仮に,保護者又は生徒が本
件問題等の複製を行い,複製した本件問題の写しを被告に交付したとしても,
そのことから直ちに被告自身が複製を行ったと同視することはできない。
したがって,被告が原告の有する複製権を侵害したとの主張は理由がない。
(2) 翻案について
ア 著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,
その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表\現に修正,
増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することによ\nり,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得す\nることのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受)
第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁
参照)。
イ 被告ライブ解説においては,前記1(1)のとおり,本件問題の全部又は一
部の画像を表示しておらず,また,口頭で本件問題の全部又は一部を読み\n上げるなどの行為もしていない。そうすると,被告ライブ解説は本件問題
の本質的な特徴の同一性を維持しているということはできず,被告ライブ
解説に接する者が本件問題の素材の選択又は配列に係る本質的な特徴を直
接感得することができるということはできない。
したがって,被告ライブ解説が本件問題を翻案したものであるとは認め
られない。
ウ 本件解説に関し,原告は,被告ライブ解説と本件解説は同様の問題につ
いて,同じ視点から解説したものであり,同じ目的の下,同じ解答に至る
考え方を説明したものであるから,その本質的な特徴は同一であると主張
する。
しかし,原告が翻案権侵害を主張する設問について,本件解説と被告ラ
イブ解説の対応する記載を対比しても,表現が共通する部分はほとんどな\nい。例えば,国語Aの1の問5に関する本件解説と被告ライブ解説を比較
しても,共通する表現は「険のある」,「祐介」など,ごくわずかな部分に\nすぎず,被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持している
ということはできない。本件解説の他の設問に係る部分についても,本件
解説と被告ライブ解説とで表現が共通する部分はほとんど存在せず,当該\n各設問に係る被告ライブ解説が本件解説の本質的特徴の同一性を維持して
いるということはできない。
したがって,本件ライブ解説が本件解説を翻案したものであるとは認め
られない。
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2019.07.12
平成30年(ワ)第466号 著作権に基づく差止等請求事件 令和元年7月11日 奈良地方裁判所
電話ボックスを金魚鉢にみたてた現代アートについて、著作物性は認めましたが、
複製ではないと判断されました。問題の作品については判決文よりも下記写真の方がわかりやすいです。https://this.kiji.is/521862833728078945?fbclid=IwAR3SJE_DfyKsf9UNjJTXiLG1XrQs9kzhhkcDdj6XMD9DBeFvihaoK9tcon8
著作権法は,著作権の対象である著作物の定義について「思想又は感情を
創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する\nものをいう。」(同法2条1項1号)と規定しており,作品等に思想又は感情
が創作的に表現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものと\nして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイディアなど
表現それ自体ではないもの又は表\現上の創作性がないものは,著作物に該当
せず,同法による保護の対象とはならないと解される。
また,アイディアが決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られ
る場合,そのような限られた方法に同法上の保護を与えるとアイディアの独
占を招くこととなるから,この点については創作性が認められず,同法上の
保護の対象とはならないと解される。
(2)そこで,原告作品の基本的な特徴に着目すると,1)公衆電話ボックス様の
造形物を水槽に仕立て,その内部に公衆電話機を設置した状態で金魚を泳が
せていること,2)金魚の生育環境を維持するために,公衆電話機の受話器部
分を利用して気泡を出す仕組みであることが特徴として挙げることができる。
このうち,1)については,確かに公衆電話ボックスという日常的なものに,
その内部で金魚が泳ぐ、という非日常的な風景を織り込むという原告の発想自
体は斬新で独創的なものではあるが,これ自体はアイディアにほかならず,
表現それ自体ではないから,著作権法上保護の対象とはならない。\nまた,2)についても,多数の金魚を公衆電話ボックスの大きさ及び形状の
造作物内で泳がせるというアイディアを実現するには,水中に空気を注入す
ることが必須となることは明らかであるところ,公衆電話ボックス内に通常
存在する物から気泡を発生させようとすれば,もともと穴が開いている受話
器から発生させるのが合理的かつ自然な発想である。すなわち,アイディア
が決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られることとなるから,
この点について創作性を認めることはできない。
そうすると,上記1),2)の特徴について,著作物性を認めることはできな
いというべきである。
(3)他方,原告作品について,公衆電話ボックス様の造作物の色・形状,内部に
設置された公衆電話機の種類・色・配置等の具体的な表現においては,作者\n独自の思想又は感情が表現されているということができ,創作性を認めるこ\nとができるから,著作物に当たるものと認めることができる。
2 争点2(被告作品による原告作品の著作権侵害の有無)について
(1)被告作品と原告作品の対比
被告作品と原告作品を対比すると,次の点を指摘することができる(甲7,
22,25,26,51の1.2)。
ア 公衆電話ボックス様の造作物
原告作品と被告作品は,いずれも我が国で見られる一般的な公衆電話ボ
ックスを模した,垂直方向に長い直方体で,側面の4面がガラス張りの造
作物内部に水を満たし,その中に金魚を泳がせている。
しかしながら,原告作品は屋根部分が黄緑色様であるのに対し,被告作
品は屋根部分が赤色である。また,被告作品は実際に使用されていた公衆
電話ボックスの部材を利用しているのに対し,原告作品はこれを使用せず,
アルミサッシや鉄枠等を組み合わせて制作されている。
イ造作物内部に設置された公衆電話機
原告作品と被告作品は,いずれも上記造作物内部に棚板を二枚設置し,
上段に公衆電話機が設置されている。
しかしながら,原告作品の公衆電話機は黄緑色様であるのに対し,被告
作品の公衆電話機は灰色であり,公衆電話機のタイプも異なっている。ま
た,棚板について,原告作品は水色で,形は二段とも正方形であるのに対
し,被告作品は銀色で,下段の形は三角形である。
ウ 受話器部分
原告作品と被告作品は,いずれも受話器がハンガー部分又は本体から外
された状態で水中に浮かんでおり,受話器の受話部分から気泡が発生して
いる。
(2)検討
ア 著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであり,既存\nの著作物に依拠して作成,創作された著作物が,思想,感情若しくはアイ
ディア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作
性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合に
は,著作物の複製には当たらないものと解される。
イ 前記1で判示したところによれば,原告が同一性を主張する点(前記第
2の3(2)ア(ア))は著作権法上の保護の及ばないアイディアに対する主張で
あるから,原告の同一性に関する上記主張はそもそも理由がない。
なお,事案に鑑み,具体的表現内容について原告作品と被告作品との間\nに同一性が認められるか否かについて検討するに,前記(1)で指摘したとお
り,原告作品と被告作品は,1)造作物内部に二段の棚板が設置され,その
上段に公衆電話機が設置されている点,2)同受話器が水中に浮かんでいる
点は共通している。しかしながら,1)については,我が国の公衆電話ボッ
クスでは,上段に公衆電話機,下段に電話帳等を据え置くため,二段の棚
板が設置されているのが一般的であり,二段の棚板を設置してその上段に
公衆電話機を設置するという表現は,公衆電話ボックス様の造作物を用い\nるという原告のアイディアに必然的に生じる表現であるから,この点につ\nいて創作性が認められるものではない。また,2)については,具体的表現\n内容は共通しているといえるものの,原告作品と被告作品の具体的表現と\nしての共通点は2)の点のみであり,この点を除いては相違しているのであ
って,被告作品から原告作品を直接感得することはできないから,原告作
品と被告作品との同一性を認めることはできない。
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2019.04. 3
平成30(ワ)27253 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成31年3月13日 東京地方裁判所(29部)
お菓子のパッケージのイラストについて、著作権の譲渡権侵害について、同一性の程度が高いとして、被告に注意義務違反があったとして過失が認定されました。
被告らは,いずれも加工食品の製造及び販売等を業とする株式会社であり,業として,被告商品を販売していたのであるから,その製造を第三者に委託していたとしても,補助参加人等に対して被告イラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていたと認めるのが相当である。
また,前記認定のとおり,本件イラストと被告イラストの同一性の程度が非常に
高いものであったことからしても,被告らが上記のような確認をしていれば,著作
権及び著作者人格権の侵害を回避することは十分に可能\であったと考えられる。に
もかかわらず,被告らは,上記のような確認を怠ったものであるから,上記の注意
義務違反が認められる。
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2018.07.19
平成29(ワ)32433 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年6月21日 東京地方裁判所(46部)
プログラムの著作物について、複製又は翻案が争われました。全体のプログラムを新サーバへ移行しましたが、問題となっている本件共通環境設定プログラムは複製・翻案していないと判断しました。
争点 (2)−2(本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの保守管理
業務に伴う複製権又は翻案権侵害)について
ア 原告は,被告マルイチ産商と被告テクニカルパートナーは,被告マルイチ
産商のコンピュータ保守管理のための人材派遣契約を締結し,被告テクニカ
ルパートナーらは,上記派遣契約に基づき,被告マルイチ産商のコンピュー
タの保守管理業務を行っており,本件基本契約が終了した平成26年9月1
7日以降も,保守管理業務の一環として,本件共通環境設定プログラムの複
製又は翻案を行ったと主張する。
しかし,保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又
は翻案が行われた事実を認めるに足りる証拠はなく,原告の主張を採用する
ことはできない。
イ また,仮に,被告らが本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラム
の保守管理業務に伴い,本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案を行っ
たとしても,本件基本契約26条は,「著作権・知的財産権および諸権利の帰
属」に関する定めが本件基本契約の終了後も有効であると定めており,被告
マルイチ産商は,本件基本契約終了後も「著作権・知的財産権および諸権利
の帰属」に関する定めである本件基本契約21条3項 に基づき,本件共通
環境設定プログラムを複製等することができると解するのが相当であるか
ら,複製権又は翻案権侵害は成立しないと解するのが相当である。
これに対し,原告は,本件基本契約は更新しない旨の意思表示による解約\n(28条1項但書)により終了したのであり,本件基本契約26条の「本契
約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合」に直接
該当しないし,本件基本契約26条が規定するのは「著作権・知的財産権お
よび諸権利の帰属」であり,本件基本契約21条3項が定める権利の帰属主
体が契約終了によっても変わらないことを定めているとしても,同項(2)の利
用に関する定めは射程外であると主張する。
しかし,本件基本契約26条は,「契約終了後の権利義務」との見出しの下
で「本契約が合意の解約により終了した場合および解除により終了した場合
でも」と定めており,他の原因による終了の場合にも適用されることを前提
にしていると解され,本件基本契約中に他の原因による契約終了時の権利義
務等を定める条項がないことからしても,本件基本契約26条は,更新しな
い旨の意思表示による解約による契約終了の場合の権利義務の帰趨も定め\nていると解釈すべきである。
また,本件基本契約26条における「著作権・知的財産権および諸権利の
帰属」との文言は,本件基本契約21条の見出しと同一であること,また,
同条3項は,成果物の著作権・知的財産権および諸権利の帰属を定めるとと
もに,著作権が共有となる場合(同項 )には双方が利用することができる
ことを定め,原告のみに帰属する場合(同項 )には被告マルイチ産商に対
して利用することができる範囲を定めており,著作権の帰属の違いに対応し
て利用することができる範囲をそれぞれ定めているものであり,そのような
定めにおいて,契約終了後,著作権の帰属の定めのみ有効に存続すると解す
るのは不自然であること,契約中に契約終了後の利用やその禁止についての
定めはないことからすると,本件基本契約26条において契約終了後も有効
とされる「著作権・知的財産権および諸権利の帰属」の定めとは,同21条
の定め全体を指し,同条が定める利用に関する定めも含んでいると解釈する
のが相当である。原告が主張する本件基本契約の解釈によれば,本件新冷蔵
庫等システムの使用のために必要となる本件共通環境設定プログラムは本
件基本契約終了により一切複製等できなくなり,本件共通環境設定プログラ
ムのサーバ移行等を行うことができず,本件新冷蔵庫等システム自体の使用
を継続することも不可能ないし困難となるが,そのような解釈は不合理であ\nる。
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2018.07.12
平成28(ワ)32742 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年6月19日 東京地方裁判所(47部)
いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ
る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら
制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に
撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光\n線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな\nらざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,
撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写\n真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採
用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外
観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ
の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ
り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい\nった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰\nが撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表\nれないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め
られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」
の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ
とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻\nが花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な
っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の\n経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると\nいえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。
これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり,
旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故
一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲
章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア\nン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2
はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択,
表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表\現には筆者の個性が表れ\nているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ
ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に\nは幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表\れて
いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告
の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再
製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と
は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現\nに修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が\n既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作\n成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に
依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\
現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接\n感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ
る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷
判決・民集55巻4号837頁参照)。
被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品
対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制\n作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同
一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体
として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。\nよって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし
7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害
する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保
持権を侵害する。
これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有
するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり,
制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は
採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額
に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争
うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作
品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認
められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日
に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A
が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含\nめて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は
実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には,
故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの
と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力\nがあると認められる。
これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず,
販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く\nと主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告
作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も
指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を
含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする
ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説
明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる
(甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞
を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用
目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後
記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認
められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か
ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示
に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集
の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に
より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす
る事情があると主張する。
そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい
てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は
一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層
に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ
ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ
とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考
えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については,
原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で
ある。
◆判決本文
問題となった著作物は以下です。
◆別紙1
◆別紙2
◆別紙3
◆別紙4
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2018.04. 4
平成29(ワ)672等 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年3月29日 東京地方裁判所
イラストが写真の翻案かがあらそわれました。写真の著作物性は認められましたが、翻案ではないと判断されました。
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),\n陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合して
なる一つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば
創作性が認められ,著作物に当たるというべきである。
(2) これを本件についてみると,本件写真素材は,別紙1のとおりであるとこ
ろ,右手にコーヒーカップを持ち,やや左にうつむきながらコーヒーカップ
を口元付近に保持している男性を被写体とし,被写体に左前面上方から光を
当てつつ焦点を合わせ,背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として
白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調さ
れたカラー写真であり,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表\現において撮影者の個性が表れているものといえる。したがって,本件写真素材は上記の総合的表\現
を全体としてみれば創作性が認められ,著作物に当たる。
(3) これに対し,被告は,本件写真素材は,背景,照明・光量,色合いのいず
れにおいても多くの類例がみられる平凡かつありふれた表現であり,創作性が存在しないため,著作物とは認められないと主張する。しかし,写真の創\n作性は,写真を構成する諸要素を総合して判断されるべきものであるところ,背景,照明・光量,色合い等の各要素において,それぞれ似たような例が存\n在するとしても,そのことは直ちに創作性を否定する理由とはならない。本
件写真素材の総合的表現を全体としてみればそこに創作性が認められることは前記(2)のとおりであるから,被告の主張は採用できない。
原告は,被告が本件写真素材を原告に無断でトレースし,小説同人誌の裏
表紙のイラストに使用して,当該小説同人誌を販売した行為は,原告の本件写真素材に係る著作権(複製権,翻案権及び譲渡権)を侵害していると主張\nする。
(2) 複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再
製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と
は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に
依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\
現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ
る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷
判決・民集55巻4号837頁参照)。
(3) 本件イラストは,別紙2のとおりのものであり,A5版の小説同人誌の裏
表紙にある3つのイラストスペースのうちの一つにおいて,ある人物が持つ雑誌の裏表\紙として,2.6センチメートル四方のスペースに描かれている白黒のイラストであって,背景は無地の白ないし灰色となっており,薄い白
い線(雑誌を開いた際の歪みによって表紙に生じる反射光を表\現したもの)
が人物の顔面中央部を縦断して加入され,また,文字も加入されているもの
である。
(4) 前記1(2)で説示した本件写真素材の創作性を踏まえれば,本件写真素材
の表現上の本質的特徴は,被写体の配置や構\図,被写体と光線の関係,色彩
の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現に認められる。一方,前記前提事実(3)のとおり,本件イラストは本件写真素材に依拠して作成さ
れているものの,本件イラストと本件写真素材を比較対照すると,両者が共
通するのは,右手にコーヒーカップを持って口元付近に保持している被写体
の男性の,右手及びコーヒーカップを含む頭部から胸部までの輪郭の部分の
みであり,他方,本件イラストと本件写真素材の相違点としては,1)本件イ
ラストはわずか2.6センチメートル四方のスペースに描かれているにすぎ
ないこともあって,本件写真素材における被写体と光線の関係(被写体に左
前面上方から光を当てつつ焦点を合わせるなど)は表現されておらず,かえって,本件写真素材にはない薄い白い線(雑誌を開いた際の歪みによって表\紙に生じる反射光を表現したもの)が人物の顔面中央部を縦断して加入されている,2)本件イラストは白黒のイラストであることから,本件写真素材に
おける色彩の配合は表現されていない,3)本件イラストはその背景が無地の
白ないし灰色となっており,本件写真素材における被写体と背景のコントラ
スト(背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすこ
とで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されているなど)は
表現されていない,4)本件イラストは上記のとおり小さなスペースに描かれ
ていることから,頭髪も全体が黒く塗られ,本件写真素材における被写体の
頭髪の流れやそこへの光の当たり具合は再現されておらず,また,本件イラ
ストには上記の薄い白い線が人物の顔面中央部を縦断して加入されているこ
とから,鼻が完全に隠れ,口もほとんどが隠れており,本件写真素材におけ
る被写体の鼻や口は再現されておらず,さらに,本件イラストでは本件写真
素材における被写体のシャツの柄も異なっていること等が認められる。これ
らの事実を踏まえると,本件イラストは,本件写真素材の総合的表現全体における表\現上の本質的特徴(被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等)を備えているとはいえず,本件イラストは,本件写真
素材の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえない。
(5) したがって,本件イラストは,本件写真素材の複製にも翻案にも当たらず,
被告は本件写真素材に係る著作権を侵害したものとは認められない。なお,
原告は,譲渡権侵害も主張するが,本件イラストが本件写真素材の複製及び
翻案には当たらないため,本件イラストを掲載した小説同人誌を頒布しても
譲渡権の侵害とはならない。
◆判決本文
◆本件写真素材
◆本件イラスト
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2017.06.22
平成18(ワ)16899 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成20年7月4日 東京地方裁判所
かなり前の事件ですが、漏れていたのでアップします。
イラストに著作物性は認めました。しかし、両者の関係について、似ているのはアイデアレベルだと判断しました。判決文の後ろに原告と被告のイラストが対比されています。
被告は,原告博士絵柄は(被告博士絵柄とともに),博士をイメージした
人物としての一般的要素を取り入れ,顔の表情や色調に工夫を加えて作成さ\nれているものの,著作物としての創作性が認められないありふれた表現であ\nる旨主張する。
そこで,この点についてみるに,証拠(乙1〜8)及び弁論の全趣旨によ
れば,原告博士絵柄及び被告博士絵柄以外の博士をイメージした人物として,
法務省の商業登記Q&Aに用いられている博士(乙第1号証),中央出版株
式会社のさんすうおまかせビデオに用いられている博士(乙第2号証),独
立行政法人水資源機構のホームページに用いられているものしり博士(乙第\n3号証),株式会社新学社の社会科資料集6年に用いられている歴史博士
(乙第4号証),証券クエストのホームページに用いられている博士(乙第
5号証),DEX WEBのイラスト・クリップアートに表示されている3\nDCGの博士(乙第6号証),株式会社パルスのおもしろ実験室のパッケー
ジに用いられている博士(乙第7号証,ただし,乙第6号証の博士と同一の
もの)及び株式会社UYEKIの防虫ダニ用スプレーの宣伝に用いられてい
る博士(乙第8号証)の絵柄があること,これらの絵柄の共通の要素として,
角帽を被り,丸い鼻から髭を生やし,比較的ふくよかな体型の年配の男性で
あることなどを挙げることができること,が認められる。しかしながら,こ
れらの博士のそれぞれの絵柄を見れば,共通の要素としての角帽,鼻,髭,
体型等の描き方にしても様々であり,まして,色づかいやタッチなどの全体
の印象を含めれば,博士をイメージさせる要素が類似するとしても,これら
の博士の絵柄相互間において,表現物としての共通性があって,いずれもが\nありふれていると言い切ることはできないものというべきである。そして,
原告博士絵柄については,上記の各博士のそれぞれの絵柄と対比して,なお
博士絵柄の表現としてありふれているとまでは言えないものと認められる。
(3)したがって,原告博士絵柄は,全体としてみたとき,前記(1)のような
特徴を備えた博士の絵柄の一つの表現であって,そこに作成者の個性の反映\nされた創作性があるというべきであり,原告商品の一部を構成する原告博士\n絵柄の登場する画像の著作物として,創作的な表現とみることができるもの\nと認められる。
・・・・
原告博士絵柄と被告博士絵柄とを対比すると,原告博士絵柄と被告博士絵
柄とは,前記(1)アのとおりの共通点があり,また,同ウの由来を考慮す
れば,元来,被告博士絵柄は,原告博士絵柄に似せて製作されたものという
ことができるものの,同イの相違点に照らすと,絵柄として酷似していると
は,言い難いものと認められる。
そして,原告博士絵柄のような博士の絵柄については,前記1(2)の乙
第1ないし第8号証でみた博士の絵柄のように,角帽やガウンをまとい髭な
どを生やしたふっくらとした年配の男性とするという点はアイデアにすぎず,
前記(1)アの原告博士絵柄と被告博士絵柄との共通点として挙げられてい
るその余の具体的表現(ほぼ2頭身で,頭部を含む上半身が強調されて,下\n半身がガウンの裾から見える大きな靴で描かれていること,顔のつくりが下
ぶくれの台形状であって,両頬が丸く,中央部に鼻が位置し,そこからカイ
ゼル髭が伸びていること,目が鼻と横幅がほぼ同じで縦方向に長い楕円であ
って,その両目の真上に眉があり,首と耳は描かれず,左右の側頭部にふく
らんだ髪が生えていること)は,きわめてありふれたもので表現上の創作性\nがあるということはできず,両者は表現でないアイデアあるいは表\現上の創
作性が認められない部分において同一性を有するにすぎない。また,被告博
士絵柄全体をみても,前記(1)イの相違点に照らすと,これに接する者が
原告博士絵柄を表現する固有の本質的特徴を看取することはできないものと\nいうべきである(なお,原告商品に登場する原告博士絵柄と被告各商品に登
場する被告博士絵柄は,ともにそれぞれの商品の一部を構成する画像として\n存在するところ,動きのある映像として見たとき,原告博士絵柄と被告博士
絵柄との違いは明白である。)。
したがって,被告各商品の一部を構成する被告博士絵柄の登場する画像が\n原告商品の一部を構成する原告博士絵柄の登場する画像の複製権や翻案権を\n侵害していると認めることはできない
◆判決本文
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2017.03.28
平成28(ワ)7393 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成29年3月21日 大阪地方裁判所
引用の目的が正当な範囲内で行なわれるものとはいえないとして、複製・公衆送信侵害と認定されました。
別紙対比表1,2の「被告侵害部分」で特定された原告コンテンツの各記載\nは,その内容や記載の順序,文体等に照らし原告の個性が表出されているものと認\nめられるから,これらはいずれも原告の思想又は感情を創作的に表現したものとし\nて著作権法上の著作物であるということができ,したがって原告は,その作成者と
してその著作権(複製権,公衆送信権)を有するものと認められる。
そして,別紙対比表1,2記載のとおり,被告は,原告コンテンツをそのまま自\nらの本件ウェブページに転載したものであり,不特定多数の者が本件ウェブサイト
にアクセスして本件ウェブページを自由に閲覧することができるものであることか
らすると,被告は,原告の複製権及び公衆送信権を侵害したものというべきである。
(2) 被告は,これら記載の掲載行為は著作権法32条1項の「引用」に該当する
旨主張する。
しかし,被告が引用した原告コンテンツの一部の傍らには,本件記載のようなコ
メントが付されているのであって,既に説示したとおり,これらコメントを付す行
為は,原告製品ひいては原告を批評するという公益を図る目的でされたものとは認
められず,むしろ原告製品ひいては原告の信用を毀損する目的でされた違法な行為
というべきものであり,また売主の説明責任を果たすための正当な行為と認めるこ
ともできないことからすれば,その引用が「公正な慣行に合致するもの」とも「引
用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものともということはできない。
したがって,被告による原告コンテンツの掲載行為を,著作権法32条1項の「引
用」として適法と認めることはできない。
なお,被告は,原告コンテンツはそれ自体経済的価値を有するものとして市場で
取引されるものではないなどと主張するが,その指摘はそうであるとしても,これ
をもって「引用の目的上正当な範囲内で行なわれ」たということはできない。
◆判決本文
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2016.02.21
平成27(ワ)21233 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 平成28年1月29日 東京地方裁判所
著作権侵害を根拠に発信者情報開示が認められました。
このように,翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物とを対比した場合に同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であるところ,「創作的」に表\現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の個性が何らかの形で表れていれば足りるというべきである。そして,個性の表\れが認められるか否かについては,表現の選択の幅がある中で選択された表\現であるか否かを前提として,当該著作物における用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しの有無等の当該著作物の表\現形式,当該著作物が表現しようとする内容・目的に照らし,それに伴う表\現上の制約の有無や程度,当該表現方法が,同様の内容・目的を記述するため一般的に又は日常的に用いられる表\現であるか否か等の諸事情を総合して判断するのが相当である。
・・・
(3) また,本件記事2は,これまで台湾における「五術」に関わり,その際に不快な思いもしたものの,新たな試験ができたことで時代が変わり始めたなどと表現した文章であって,一つの文(文字数にして143文字)からなるものである。その表\現においては,用語の選択,全体の構成の工夫,特徴的な言い回しなどにおいて,一見して作者の個性が表\れていることは明らかである。これに対し,本件情報14ないし17は三つの文からなる文章であるが,このうち第1文は,やはり,台湾における「五術」に関わり,その際にあきれたこともあったものの,新たな制度ができたことで時代が変わったなどと表現した文章であって,文字数にして123文字からなるものであり,具体的表\現についてみても,本件情報14ないし17の第1文の表現は本件記事2の表\現と相当程度一致しており,その違いは,本件情報14及び15では31文字,本件情報16及び17では32文字でしかなく(別紙対比表2参照),「台湾における五術」,「江湖派理論」,「宗教による術数を利用した」「金儲けを目撃する度に」など,用語の選択,全体の構\成,文字の
配列,特徴的な言い回しにおいて酷似している。そして,その相違部分の内容をみても,本件記事2のうち「五術」の「学術発表にかかわって」という点を,本件情報14ないし17においては「五術」の「詐欺\発表にかかわって」に,「とても不愉快な文化の冒涜・歪曲」という点を「とても愉快な文化の笑い話・小話」に,「胸くそが悪かったのですが」という点を「呆れたのですが」に,「国家規模での認定試験」という点を「国家機関での検閲制度」に置き換えているにすぎない。\nしたがって,本件情報14ないし17は,本件記事2に依拠したうえで,同記事の内容を批判するか揶揄することを意図して上記異なる表現を用いたものといえるのであって,仮に上記相違部分について作成者の何らかの個性が表\れていて創作性が認められるとしても,他に異なる表現があり得るにもかかわらず,本件記事2と同一性を有する表\現が一定以上の分量にわたるものであって,本件記事2の表現の本質的な特徴を直接感得することができるものであるから,翻案権侵害に当たることが明らかであるというべきである。
(4) 以上のとおり,本件情報1ないし17は原告の翻案権を侵害することが明らかである。
また,そうである以上,本件情報1ないし17を本件ウェブサイトに発信する行為は,原告の公衆送信権を侵害するものであることも明らかというべきである。
◆判決本文
◆こちらが対象の表現です。
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2015.07.30
平成26(ワ)26770 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成27年7月16日 東京地方裁判所
資格試験の予備校が発行しているテキストについて、著作権侵害か否かが争われました。東京地裁は、複製や翻案ではないと判断しました。
原告表現1は,原告書籍1に掲載された平成8年一級建築士本試験の製図問題(設計課題「景勝地に建つ研修所」)中の図面であり,原告書籍1には次の1)ないし3)の点を除いて上記問題がそのまま掲載されている(甲1,18の3,乙1)。
原告は,原告表現1と上記問題の図面とは,1)湖を表す部分,2)等高線の描き方,3)方角表示が異なっており,これらの点については原告が独自の表\現をしたものであるから,原告表現1には創作性が認められると主張する。\nそこで判断するに,1)の湖を表す部分が,上記問題の図面ではまだら状の模様であったのを,一部を切り欠いた横線とし,切り欠き部分が斜め方向に連なるような模様としている点,2)の等高線の描き方が,線の曲がり方が同図面より緩やかになっている点,3)の方角表示が同図面より細い矢印を用いている点で原告表\現1は同図面と異なっているが(別紙侵害部分対照表1参照),これらのうち水面を横線で表\示することはありふれた表現方法であると解される。また,等高線の曲がり方の相違は僅かなものであるし(同上),方角表\示を矢印で表現することは,矢印の太さにかかわらずありふれたことであり,その表\現に作成者の個性が表れているとみることは困難である。これに加え,原告書籍1は過去の本試験問題を掲載したものであり,事柄の性質上,図面を含めて問題を忠実に再現することが求められることを考慮すると,上記の各相違点を総合しても,原告表\現1につき著作権法上保護すべき創作性を認めることはできない。したがって,被告表現1が原告表\現1を機械的に複写したものであるとしても,原告の著作権を侵害することはないと解すべきである。
◆判決本文
◆表現対比資料1
◆表現対比資料2
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2015.07.22
平成26(ネ)10004 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成27年6月24日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
プロ野球のカードゲームについて、2選手の画像は著作権侵害と判断されました。損害賠償については、利益の総額については約1500万円ですが、2選手のカードによって得られた額の立証責任は控訴人(著作権者)にあるとして、8%を控訴人の損害と認めました。また2項侵害について、2選手のカードによる利益額の認定が争われましたが、裁判所は、総額のうち2選手分がいくらかの立証責任は著作権者側にあると判断しました。
前記イaのとおり,両ゲームの中島選手の選手カードをみると,本体写真のポー
ズ及び配置,多色刷りで本体写真を拡大した二重表示部分の存在,部位や位置関\n係,背景の炎及び放射線状の閃光の描き方という具体的な表現が同一であり,これ\nによって中島選手の力強いスイングによる躍動感や迫力が伝わってくるものであっ
て,両選手カードは,表現上の本質的特徴を同一にしているものと認められ,ま\nた,その表現上の本質的特徴を同一にしている部分において思想又は感情の創作的\n表現があるものと認められる。\nこれに対し,中島選手の前記相違点のうち,1)及び2)は前記のとおり表現上の本\n質的な特徴とはいえないし(2)のチームカラーは氏名の表記下部のごく一部にすぎ\nず,目も惹かない。),3)二重表示の写真の大きさの程度の違いは,いずれもカー\nドのほぼ中央部分に,本体写真よりも大きく拡大された頭部が選手カードの縁まで
はみ出すように配置され,本体写真の頭部の上方にあり,腰よりも上の上半身のみ
が本体写真の右上部に配置されるという点では共通していることや,選手カードが
表示されるのは主に携帯電話の画面上であることも考慮すると,全体の印象を左右\nするような大きな違いとはいえない。また,4)の二重写真の色味や5)炎の色味の違
い及び閃光を強調する楕円形状の有無の違いはあるものの,控訴人ゲームの選手
カードの炎も中央部は黄色であり,閃光も一部黄色であり,閃光という表現自体輝\nく印象を与えるものといえるから,金色を基調とした被控訴人ゲームの選手カード
と大きく相違する印象を与えるものとはいえず,また,楕円形状の有無も閃光の明
るさの程度の違いを認識させるものにすぎないから,これらの相違点が上記共通点
から受ける印象を凌駕するものとはいえない。なお,被控訴人は,閃光(後光)の
具体的な本数や密度も違うと主張するが,これらも閃光の明るさの程度の違いを認
識させるものにすぎず,視覚的には差異を生じさせるものとはいえない。
したがって,被控訴人ゲームの中島選手の選手カードは,控訴人ゲームの同選手
カードと同一のものとはいえず,別の写真を使用し,全体として金色を基調とした
色味に変更することで,新たな表現を加えたものといえるから,複製に当たるもの\nとは認められないものの,控訴人ゲームの同選手カードを翻案したものと認められ
る。
b ダルビッシュ選手の選手カードについて
両ゲームのダルビッシュ選手の選手カードについても,前記イbのとおり,本体
写真のポーズ及び配置,多色刷りで本体写真を拡大した二重表示部分の存在,部位\nや位置関係,背景の炎及び放射線状の閃光の描き方という具体的な表現が共通であ\nり,これによってダルビッシュ選手の力強い投球動作による躍動感や迫力が伝わっ
てくるものであって,両選手カードは,表現上の本質的特徴を同一にしているもの\nと認められ,また,その表現上の本質的特徴を同一にしている部分において思想又\nは感情の創作的表現があるものと認められる。\n
・・・
被控訴人ゲームの配信開始から選手カードの表現が変更される平成23年8月18日から同月26日までの9日間に,被控訴人ゲームにおけるレアパックの販売に\nより被控訴人が得た利益が1541万5312円であることは争いがない。
ところで,著作権法114条2項は,著作権を侵害した者が「その侵害の行為に
より」利益を受けているときは,その利益の額を著作権者が受けた損害の額と推定
するものである。レアパックは,開けてみるまでどのカードが入っているか分から
ないものであり,したがってレアパックの販売とは,本件2選手カード以外のカー
ドの販売にも当たるものであるが,本件では,本件2選手カードの著作権侵害のみ
が認められるから,上記レアパックの販売利益のうち,本件2選手カードによって
得られた利益に相当する額のみが当該著作権侵害の行為により被控訴人が受けてい
る利益に当たるというべきであり,その点の立証責任は控訴人にあるものとして,
判断する。
この点,乙93,99及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人ゲームの配信開始当
時,レアパックにより入手できる選手カードは,希少性に応じて,キラ,グレー
ト,スター,スーパースター,レジェンド,レジェンド+に分類される合計996
枚であったことが認められる。しかし,1)レジェンド及びレジェンド+の存在につ
いては,被控訴人のホームページ等では公開されておらず,被控訴人ゲーム上の利
用者のサークルトピックス(利用者同士の質問板)の一部の記載でのみ確認できる
状態であったから(乙99,弁論の全趣旨),利用者の大多数が知っていたとは認
められず,またこれらのカードが当たる確率も相当低いものと認識されていたと考
えられるから,利用者がレジェンド及びレジェンド+を期待してレアパックを購入
した可能性は低いというべきこと,2)レアパックを購入する利用者は,グレードの
より高いカード(すなわち,スター,スーパースター)の入手を期待しているのが
通常であること,3)スターカードは143枚,スーパースターカードは61枚の合
計204枚が存在したものであるが(乙93),これに該当する選手として被控訴
人ホームページやプレスリリースにおいて配信時に公開されていたのは各球団1
名,合計12名のみで,そのうち2名が中島選手及びダルビッシュ選手であり(甲
131,弁論の全趣旨),ゲームの利用を開始する者は,他の利用者の口コミや,
Mobageの新着表示やゲームランキングなどで被控訴人ゲーム名が表\示される
のを見て開始することが多いとしても(乙101),上記のとおりの広報がされて
いることからすれば,これを見て被控訴人ゲームの内容を確認した利用者も相当程
度いると推認されること,4)上記2選手は人気の高い選手であり,特にダルビッシ
ュ選手の選手カードについては,利用者が被控訴人ゲームを初めて利用する際のチ
ュートリアル(ゲームの練習)において必ず一度付与され,チュートリアル終了後
に保有カードから削除されるものであり(乙99),利用者がレアパックを購入し
てスーパースターの選手カードを入手したいという気持ちを誘発するために利用さ
れていること,5)前記レアパックの販売利益は,配信開始のごく初期の9日間の売
上のみについてのものであること,からすれば,前記レアパックの販売利益のうち
少なくとも8%が,本件2選手カードの販売により被控訴人が受けた利益と認める
のが相当である。
したがって,著作権法114条2項により控訴人が受けた損害の額と推定される
額は,123万3225円(1541万5312円×0.08)である。
◆判決本文
◆原審はこちら 平成23(ワ)29184
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2015.05.15
平成26(ワ)30442 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成27年4月24日 東京地方裁判所
欠席裁判ですが、ブログの記事の著作権侵害として100万円の損害賠償が認められました。
証拠(甲1ないし11の4)から認められる原告著作物の内容,その複製物である被告ら各記事の分量及び投稿回数,原告が訴外ワカバヤシに対し情報提供料ないし連載コンテンツ料の名目で原告著作物の取得に向けた対価として支払った額が税抜き月20万円であること等の事実によれば,原告に生じた著作権法114条3項に基づく損害は40万円であると認めるのが相当である。
また,上記証拠から認められる本件事実関係に鑑みると,原告が被った信用毀損による無形損害は50万円と認めるのが相当である。
被告らによる著作権侵害行為に基づいて原告は上記損害を被り,本件訴訟提起を余儀なくされたところ,被告らの不法行為と相当因果関係にある弁護士費用としては10万円を認めるのが相当である。
そうすると,原告が被告らの著作権侵害行為により被った損害の合計は100万円となる。
◆判決本文
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2015.04.27
平成26(ワ)7527 著作権確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成27年3月27日 東京地方裁判所
別の文献を要約した部分について、著作物性有りと認定されました。「被告Bは,被告Aを指導教授として研究を行っていた」とあるので、学生とその指導教官および学校法人が訴えられたんですね。著作権を学会に譲渡するという学会規定も問題を複雑にしています。
別紙著作物対照表のとおり,被告表\現1と原告表現1のうちそれぞれ「の基本原則として」以下の部分の記述は,接続詞の「次に」が「さらに」となっている点で異なる以外は,誤字(「地域姓」)を含めて,全く同一の文章といえるものであるから,被告表\現1が原告表現1に依拠して,その記述を複製したものであることは明らかである。この点に関して被告らは,原告表\現1は丁1文献を要約して引用したものにすぎず,創作性がないと主張する。しかし,著作権法2条1項1号所定の「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表\れたものであれば足りるというべきであるところ,証拠(略)によれば,原告表現1は,9頁にわたる丁1文献を,「再送信同意の基本原則」,「具体的な技術要件」,「再送信同意の手続き」の3部に分けて簡潔に要約したものであり,各部において丁1文献の該当項の冒頭部分を中心に抜き出してはいるものの,必ずしも冒頭部分をそのまま抜き出したものでないことが認められるから,そこには選択の範囲,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表\現等の点において原告なりの工夫がされていると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるのであり,表\現上の創作性がないということはできない。そして,被告表現1は,原告表\現1との共通部分において,単に素材となる事実が同一であるというだけでなく,具体的表現を含めた記述のデッドコピーというべきものであるから,原告表\現1の複製に当たると認めるのが相当である。
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2015.03. 4
平成25(ワ)15362 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成27年2月25日 東京地方裁判所
歴史小説から製作した放送番組について著作権侵害が認定され、差止請求および30万円の損害賠償が認められました。
原告は,別紙作品対照表1ないし3記載のとおり,原告各小説を別紙作品対照表\1ないし3記載の各原告小説1ないし3の表現欄に記載された各部分に分け,それらが個々的に著作物に当たり,また,被告各番組を別紙作品対照表\1ないし3記載の各被告番組1ないし3の表現欄に記載された各部分に分け,別紙主張対照表\1ないし3の「原告の主張」欄記載の理由により,それぞれの各被告番組の表現は,各原告小説の複製若しくは翻案に当たり,したがって,原告の有する複製権若しくは翻案権を侵害する旨主張する。\nそこで,以下,それぞれについて,原告各小説の記述部分にかかる創作性等に関して具体的に陳述する原告の陳述書(甲1,26,27)の内容を斟酌しつつ,個別に複製権若しくは翻案権侵害の成否に関する当裁判所の判断を示すこととするが,その具体的内容は,別紙主張対照表1ないし3の「当裁判所の判断」欄記載のとおりである。\nそうすると,同欄記載のとおり,著作権(複製権,翻案権)侵害が認められるのは,被告番組1については,別紙作品対照表1の「3 エピソードの翻案」の番号1の表\現部分(これを以下「被告番組1−3−1」といい,以下,各作品対照表記載の各番号に従って同様に称することとする。),被告番組2については,被告番組2−5−6,被告番組3については,被告番組3−4−6であり,その余は複製権侵害,翻案権侵害のいずれも成立しないと認めるのが相当である。\nまた,上記被告番組1の内容が語られている被告番組4については,被告番組1−3−1と同じ表現部分(以下「被告番組4侵害認定表\現部分」という。)が,上記被告番組3の内容が語られている被告番組5については,被告番組3−4−6と同じ表現部分(以下「被告番組5侵害認定表\現部分」という。)が,それぞれ原告の保有する著作権(複製権,翻案権)を侵害すると認められ,その余は複製権侵害,翻案権侵害のいずれも成立
しないと認めるのが相当である。
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2014.10.27
平成25(ネ)10089 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成26年10月22日 知的財産高等裁判所
いわゆる自炊業者による複製は30条の範囲外であるとの1審判断が維持されました。
「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」である(同法2条1項15号)。そして,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。
本件サービスは,1)前記1控訴人ドライバレッジに書籍の電子ファイル化を申し込む,2)利用者は,控訴人ドライバレッジに書籍を送付する,3)控訴人ドライバレッジは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,4)控訴人ドライバレッジは,裁断した書籍を控訴人ドライバレッジが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,5)完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが,ナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人ドライバレッジのみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。
そして,控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。
そうすると,控訴人ドライバレッジは,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。
・・・
控訴人らは,本件サービスにおいて,「特定の」書籍の所有者(処分権者)による書籍の取得,送付がなければ,およそ書籍の電子ファイル化などすることができないことから,利用者による「特定の」書籍の取得及び送付こそが,書籍の電子ファイル化にとって「不可欠の前提行為」であり「枢要な行為」にほかならず,利用者は本件サービスを利用しなくても,利用者自ら書籍を電子ファイル化することが可能であって,控訴人ドライバレッジは,利用者自身が実現不可能\な複製を可能としているのではないし,利用者が取得していない書籍や取得し得ない書籍を電子ファイル化しているものでもないから,控訴人ドライバレッジの行為が複製の実現について「枢要な行為」ということはできず,控訴人ドライバレッジは複製行為の主体ではない旨主張する。\nしかし,控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,本件サービスの内容を決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。したがって,利用者が複製される書籍を取得し,控訴人ドライバレッジに電子ファイル化を注文して書籍を送付しているからといって,独立した事業者として,複製の意思をもって自ら複製行為をしている控訴人ドライバレッジの複製行為の主体性が失われるものではない。また,利用者による書籍の取得及び送付がなければ,控訴人ドライバレッジが書籍を電子ファイル化することはないものの,書籍の
取得及び送付自体は「複製」に該当するものではなく,「複製」に該当する行為である書籍の電子ファイル化は専ら控訴人ドライバレッジがその管理・支配の下で行っているのである。控訴人ドライバレッジは利用者の注文内容に従って書籍を電子ファイル化しているが,それは,利用者が,控訴人ドラ用しているにすぎず,当該事実をもって,控訴人ドライバレッジによる書籍の電子ファイル化が利用者の管理下において行われていると評価することはできない。また,利用者は本件サービスを利用しなくても,自ら書籍を電子ファイル化することが可能であるが,そのことによって,独立した事業者として,複製の意思をもって自ら複製行為をしている控訴人ドライバレッジの複製行為の主体性が失われるものではない。\n
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◆原審はこちらです。平成24(ワ)33525
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2014.06.10
平成25(ワ)13369 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年05月27日 東京地方裁判所
猫の写真の著作物について著作権侵害と認定されました。興味深いのは目をくりぬく行為について、著作財産権侵害が66万程度に対して、人格権侵害の損害が200万円という認定です。
原告は,(1) 原告写真の現物又はコピーに猫の目の部分をくり抜く加工を施す行為,(2) これらを並べて本件各パネルを作成し,さらに本件各パネルを組み合わせて本件看板を作成する行為が原告の翻案権を侵害する旨主張するので,以下,検討する。(1) 証拠(甲1〜5,7〜11)及び弁論の全趣旨によれば,原告写真は,いずれも猫そのもの(別表のNo.1〜43等)又は猫を含む風景(同44〜73等)を被写体とした写真であること,被告アンダーカバーは,写真集に掲載された原告写真又はそのコピーに,猫の顔の部分を中心に切り取るか(別紙「訴状別表\の見方」のシール番号1,2,5,7,8,9等),又は猫のほぼ全身部分を切り取った(同3,4,6,10等)上,更にその目の部分をくり抜く加工を施したことが認められる。これらの加工はいずれも定型的で単純な行為であり,これによって新たな思想又は感情が創作的に表現されたということはできない。したがって,この点について原告写真の翻案権侵害をいう原告の主張は失当というべきである。(2) 証拠(甲6〜11)及び弁論の全趣旨によれば,本件看板は,目の部分をくり抜いた猫の写真ないしその複製物を色彩あるいは大きさのグラデーションが生じるように多数(正確な数についての主張はないが,全部で数百枚に及ぶことは明らかである。別紙「訴状別表の見方」の添付写真1)参照)並べてコラージュとしたものであり,全体として一個の創作的な表現となっていると認められる一方,これに使用された原告写真又はそのコピーのそれぞれは本件看板の全体からすればごく一部であるにとどまり,本件看板を構\成する素材の一つとなっているということができる。そうすると,本件看板に接する者が,原告写真の表現上の本質的な特徴(原告が,それぞれの原告写真を撮影するに当たり,被写体の選択,シャッターチャンス,アングル,レンズ・フィルムの選択等を工夫することにより,原告の思想又は感情が写真上に創作的に表\現されたと認められる部分。ただし,原告写真の表現上の本質的な特徴がどこに存在するかについて原告による具体的な主張はない。)を直接感得することができるといえないと解すべきである。したがって,本件各パネル又は本件看板の作成行為が原告の翻案権を侵害すると認めることはできない。\n
2 争点(2)(被告三越伊勢丹の責任の有無)について
(1) 原告は,まず,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権の侵害行為を幇助したと主張する。そこで判断するに,原告は本件看板の作成行為及び本件売場への設置行為について著作権及び著作者人格権の侵害があると主張するところ,まず,本件看板の作成は被告アンダーカバーにより行われたものであって,作成行為自体に被告三越伊勢丹が関与したことをうかがわせる証拠はない。また,本件看板を本件売場に設置し,これを訪れた買物客らに見える状態に置くことは,それ自体として原告写真についての原告の著作権又は著作者人格権の侵害となるものではない(著作権法25条参照)。なお,原告は,本件各パネルを本件売場において組み立てて本件看板とする行為が著作権又は著作者人格権を侵害するものであって,被告三越伊勢丹はこれを幇助したとも主張するが,上記行為は複数のパネルを順番に並べるという単純な行為であって(甲6〜11参照),これを独立の侵害行為とみることは相当でない。したがって,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権等の侵害行為を幇助したと認めることはできない。
(2) 原告は,次に,被告三越伊勢丹には百貨店としてテナントに対して適切な管理監督をする条理上の義務があり,また,本件の状況下において被告アンダーカバーが著作権について明確な処理をしたか否かを精査する義務等があるところ,これらを怠ったことに不法行為責任を負う旨主張する。そこで判断するに,百貨店を経営する会社がテナントに対して著作権法に反する行為をしないよう適切な管理監督をする義務を負い,これに反したときは第三者に対して損害賠償責任を負うと解すべき根拠は見いだし難い。また,本件の関係各証拠上,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権侵害の事実を知り,又はこれを容易に知り得たとは認められないから,原告の主張するような精査等の義務を負うと解することもできない。(3) したがって,原告の主張はいずれも採用することができず,被告三越伊勢丹に対する原告の請求は理由がない。
3 争点(3)(原告の損害額)について
以上によれば,被告アンダーカバーは,コピー使用分の66枚につき原告の複製権を侵害し,現物使用分及びコピー使用分により本件看板を作成した行為につき原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであり,これらの行為につき被告アンダーカバーには少なくとも過失があると認められる。そこで,これにより原告が被った損害額について,以下,検討する。
(1) 著作権侵害について
ア 原告は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)につき,1)ポジフィルムの買取り(紛失)料金相当額として,又は,2)原告写真を看板等に使用する場合の使用料10万円の5倍に当たる額として,1枚当たり50万円が相当であると主張する。イ そこでまず原告の上記1)の主張についてみるに,原告は,同主張の根拠として,原告の意に反するような使用態様はポジフィルムを買い取った場合にのみ許されるからである旨主張している。しかし,原告の意に反する使用態様であることについては後記のとおり著作者人格権の侵害に係る慰謝料額の認定に当たり考慮すべき事柄である上,ポジフィルムを買い取ったとしても意に反した使用が許されることになるわけでない。したがって,原告の上記1)の主張は失当というべきである。ウ 次に原告の上記2)の主張についてみるに,原告は原告写真を看板に使用する場合の使用料は1枚当たり1回につき10万円となるべきであると主張するところ,後掲の証拠(ただし,書証の枝番の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,写真の使用を第三者に許諾している業者又は写真家のインターネットサイトには,ディスプレイや看板に本件と同様の大きさの写真を用いる場合の使用料を,1枚当たり5万円(3か月まで。甲12),4万8000円(3か月まで。甲13),3万5000円(1年間。犬猫の写真を専門とする写真家のもの。乙2),5万円(乙5),3万円(乙6)と設定しているものがあることが認められる。しかし,これらの使用料は,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,いずれも使用を許諾された写真を一個の作品として,すなわち写真に現れた創作的な表現を直接感得し得る態様で看板等に用いることにより,写真それ自体が有する顧客吸引力を利用することを予\定して定められたものと認められる。これに対し,本件看板においては,多数の猫の顔写真を用いたコラージュ看板を作成するための素材として使用されたものであって,個々の原告写真が一個の作品として使用されるものではない。したがって,上記認定の使用料は,本件における損害額算定の参考になるにとどまり,これを直接の基準とすることは相当でないと解される。そして,上記のような原告写真の使用の態様と,本件看板は,我が国有数の百貨店において多数の買物客らの目を引くように設置されたものであるが,その設置期間が約2か月にとどまったことなど本件に現れた諸事情を総合考慮すると,本件における原告写真の使用料は1枚当たり1回につき1万円と認めるのが相当である。エ 原告は,さらに,本件においては使用料の5倍に相当する額を請求できると主張する。しかし,著作権法114条3項は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額を損害額とする旨規定しているのであり,違約金ないし懲罰的損害賠償請求を認めたものではない。したがって,原告の主張を採用することはできない。オ 以上に対し,被告アンダーカバーは,1枚当たりの使用料は5833円とすべきであり,2回使用された原告写真については使用料が逓減されるべきと主張するが,使用料を1万円と解すべきことは上記で判断したとおりである。また,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,第三者に写真の使用を許諾している業者又は写真家の中には2回目以降の使用料を減額する者がいると認められるものの,減額することが一般的であると認めるに足りる証拠はない。したがって,被告アンダーカバーの上記主張を採用することはできない。カ 以上によれば,被告アンダーカバーが原告の複製権を侵害したことによる原告の損害額は,66万円(1万円×66枚)と認めるのが相当である。
(2) 著作者人格権侵害について
被告アンダーカバーは,原告写真の現物又はコピーを使用して本件看板を作成して原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであるところ,同一性を侵害された原告写真が多数に及ぶ上,その改変行為は猫の目の部分をくり抜くという嗜虐的とも解し得るものであって,その性質上,原告の意に大きく反するということができる。また,証拠(甲1〜5,14,15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は専ら猫や犬を被写体として撮影する写真家であり,原告写真が収録された写真集は,原告が長い年月を掛けて,世界各地を旅して作成したものであり,さらに,改変された写真の中には原告自身の飼い猫のものもあることが認められる。これらのことからすれば,被告アンダーカバーの著作者人格権侵害により原告が被った精神的損害は甚大なものであって,本件看板の設置期間が約2か月であること,被告アンダーカバーが原告に対し謝罪の意を表\していることといった事情を考慮しても,本件における慰謝料の額は200万円をもって相当というべきである。
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2014.06.10
平成22(ワ)27449 著作権 民事訴訟 平成26年05月30日 東京地方裁判所
鑑定対象となった原画のコピーを添付することは32条の引用であると判断されました。
上記観点から,本件行為につき,著作権法32条1項所定の「引用」としての利用として許されるか否かについて検討する。前記1(5)認定のとおり,Dの作品に関する鑑定証書を作成するに当たり,鑑定証書に対象となった原画のカラーコピーを添付することについて,被告は,鑑定証書はそこに添付されたカラーコピーの原画が真作であることを証するために作成されるものであることから,鑑定証書の鑑定対象となった原画を,多数の同種画題が存する可能性のある中で特定し,かつ,当該鑑定証書自体が偽造されるのを防止する目的で行っていると認められること,そして,その目的達成のためには,鑑定の対象である原画のカラーコピーを添付することが最も確実であることから,これを添付する必要性,有用性が認められること,著作物の鑑定の結果が適正に保存され,著作物の鑑定業務の適正を担保することは,贋作の存在を排除し,著作物の価値を高め,著作権者等の権利の保護を図ることにもつながるものであることなどを併せ考慮すると,著作物の鑑定のために当該著作物の複製を利用することは,著作権法の規定する引用の目的に含まれるというべきである。そして,本件行為について,原画を複製したカラーコピーは,ホログラムシールを貼\\付した表面の鑑定証書の裏面に添付され,表\\裏一体のものとしてパウチラミネート加工されており,原画をカラーコピーした部分のみが分離して利用に供されることは考え難く,鑑定証書自体も,絵画の所有者の直接又は間接の依頼に基づき1部ずつ作製されたものであり,絵画と所在を共にすることが想定されているということができ,これら鑑定証書が原画とは別に流通している実態があることについての的確な証拠もないことに照らせば,鑑定証書の作製に際して,原画を複製したカラーコピーを添付することは,その方法ないし態様としてみても,社会通念上,合理的な範囲内にとどまるものというべきである。しかも,以上の方法ないし態様であれば,原画の著作権を相続した原告らの許諾なく原画を複製したカラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などとは異なり,原告らが絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われるなどということも考え難い。以上を総合考慮すれば,被告が,鑑定証書を作製するに際して,その裏面に本件コピーを添付したことは,著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において,その鑑定に求められる公正な慣行に合致したものということができ,かつ,その引用の目的上でも,正当な範囲内のものであると認めるのが相当である。そうすると,本件行為は著作権法32条1項所定の「引用」として適法なものであるということができる。
(3)ア この点に関して原告らは,被告が著作権者である遺族の許諾なく行う本件行為は公正な慣行に合致するものではないから,適法引用の要件を充たさない旨主張する。しかし,前記1(6)で認定したとおり,被告の作成する鑑定証書と同程度の大きさの鑑定証書を発行し,絵画のコピーを添付するとの取扱いについては,著作権者の許諾を得ているとするところとそうでないとするところもみられるほか,許諾を得ているとするところでも,結局許諾のないままに行っているとするものもあることなどからすると,原画のカラーコピーを鑑定証書に添付するにつき,著作権者である遺族の許諾を得て鑑定証書に本件コピーを添付するという公正な慣行が存在すると認めることはできないというべきである。
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2014.04. 1
平成21(ワ)16019 著作権 民事訴訟 平成26年03月14日 東京地方裁判所
データベースの著作物について、創作性が認められ、公衆送信権侵害、複製権侵害が認められました。判決文が260頁をこえてます。損害額も1億円を超えてます。
このように,データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうところ,前記第2,1の前提事実及び前記1で認定した事実によれば,原告CDDBは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能\を持ついわゆるリレーショナル・データベースである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるデータベースであるから,情報の選択又は体系的な構\成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。上記のような観点も踏まえ,原告CDDBのようなリレーショナル・データベースについて情報の選択に創作性があるというためには,データベースの主題,用途やデータベースの提供対象等を考慮して決定された一定の収集方針に基づき収集された情報の中から,更に一定の選定基準に基づき情報を選定することが必要であり,また体系的構\成に創作性があるというためには,収集,選定した情報を整理統合するために,情報の項目,構造,形式等を決定して様式を作成し,分類の体系を決定するなどのデータベースの体系の設定が行われることが必要であると解される。ただし,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構\成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表\れていることをもって足りるものと解される。
(2) 次に,著作物の複製ないし翻案については,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうとされているところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないというべきである。データベースについては,情報の選択又は体系的な構\成によって創作性を有するものは,著作物として保護されるものであるところ(著作権法12条の2),上記のとおり,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表\れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものあるが,データベースの著作物として保護されるのはあくまでも,具体的なデータベースに表\現として表れた情報の選択や体系的構\成であって,具体的な表現としての情報の選択や体系的構\成と離れた情報の選択の方針や体系的構成の方針それ自体は保護の対象とはならないというべきである。\n
・・・
前記認定のとおり,原告CDDBは,それまで存しなかった団体旅行の行程検索・行程表作成のため,顧客である旅行業者等からのヒアリングや寄せられた要望等に基づき,出発地,到着地,交通手段,経由地である観光施設,宿泊施設をデータベース化してこれをコンピュータで効率よく検索できるようにするためのデータベースであるところ,上記被告CDDB(当初版・2006年版)と共通するテーブルに関してみると,原告CDDBの「01市区町村テーブル」,「32駅テーブル」,「20ホテル・施設テーブル」,「21観光施設テーブル」,「09地点名テーブル」,「11接続テーブル」及び「10道路テーブル」により,出発地,経由地,目的地に面した道路に関するデータの検索を可能\にし,次に「09地点名テーブル」,「10道路テーブル」,「11接続テーブル」,「12禁止乗換テーブル」,「14区間料金テーブル」及び「15首都高速料金テーブル」により,道路を利用した移動に関する経路探索・料金の算出に必要なデータの検索を可能にしていること,また,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」,「22観光設備備考テーブル」,「05緯度経度テーブル」,「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」及び「08URL分類テーブル」により,ホテル・旅館,観光施設に関する情報を検索することを可能\にしていること,そして,「01市区町村テーブル」及び「02地区・県名テーブル」は,道路と地図を関連付ける情報として,地図から検索をするときに用いられていること,「01市区町村テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」及び「32駅テーブル」には施設等の近辺の道路地点の情報が代表道路地区コードや代表\道路地点番号として格納されており,当該市区町村内にあるこれらの施設や駅などを選ぶことを通じて,「09地点名テーブル」の必要な道路地点を選ぶことができること,観光施設も「21観光施設テーブル」から選択し,絞り込みは,「02地区・県名テーブル」,「01市区町村テーブル」から行うことができること,観光施設の名称は「21観光施設テーブル」に,検索結果の観光施設について,当該観光施設に関する様々の情報は,「22観光施設備考テーブル」に格納されており,観光施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」から参照可能であり,最終的に行程に入れるかどうかを判断することができること,が認められる。また,宿泊施設については,「20ホテル・旅館テーブル」から選択し,地区は「02地区・県名テーブル」,都道府県も同じく「02地区・県名テーブル」,市区町村は「01市区町村テーブル」,地図上の範囲設定は,地図ソ\フトと「05緯度経度テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」により,宿泊種別は「20ホテル・旅館テーブル」,名称は「20ホテル・旅館テーブル」,検索結果の宿泊施設については当該宿泊施設に関する様々な情報,すなわち,和室,洋室の客室数,収容人員,料金,付帯施設,駐車場などが「20ホテル・旅館テーブル」に格納されていて,当該宿泊施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」が対応し,これらを参照して,ユーザーである旅行会社ないしその顧客の判断で行程等を決めることができることが認められる。以上のとおり,これら共通するテーブルについては,いずれも各テーブルを構成するフィールドにつき,原告CDDBと,被告CDDB(当初版・2006年版)とでほとんどが共通し,リレーションのとり方もほぼ共通するものである。そして,両者で共通するこれらの体系的構\成は,原告CDDBの制作者において,それまでのデータベースにはなかった設計思想に基づき構成した原告CDDBの創作活動の成果であり,その共通する部分のみでデータベースとして機能\し得る膨大な規模の情報分類体系であると認められ,データベースとして制作者の個性が表現されているものということができる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの体系的構\成としての創作性を有するものと認めるのが相当である。
・・・・
(ア) 前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とでは,情報項目としてのテーブル,フィールドの設定について,被告CDDB(当初版・2006年版)のテーブル数31個のうちの,28個においてテーブルが一致している。そして,フィールド項目についても,318個のフィールドのうち,252個のフィールドが一致している。(イ) そして,前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とで一致する,地点名テーブルの道路情報,緯度経度情報,接続テーブル及び禁止乗換テーブルの情報,県範囲定義テーブルの各情報は,いずれも原告CDDBの制作者において,前記認定のとおり,それぞれ選択の幅のある中から一定の選択方針に基づき選定し,あるいは全く任意に番号等設定したものであり,それぞれ創作性を有するものと認められる。(ウ) さらに,原告CDDBにおいては,前記のとおり,旅行会社に対する実情調査等の結果を踏まえ,主たる目的として,大型観光バスによる団体旅行を主眼とした行程表作成のための便宜から,通常使用されるロードマップとは異なる観点である,貸切観光バスが通行するのに適した道路として,都道府県道については約10%,市区町村道では約0.004%程度を選択して「10道路テーブル」に格納し,道路地点として選択した地点における情報も緯度及び経度のデータとして格納することとし,これを大型観光バスが通過するのに適切と考えられる道路のうちの,行程表\を作成する上で必要と考えられる適切な地点である,交差点,インターチェンジ,サービスエリア,パーキングエリア,観光施設,宿泊施設,駅,役所等の代表道路地点とするのに適切な地点を選別し,パソ\コンのマウスを地図上でクリックする方法で選択して,実際に入力したものである。また,施設と関係する代表道路地点の選択においても,施設が存する場所の緯度経度による地点ではなく,大型観光バスでの出入りの観点から,当該施設の近辺の道路地点を選び,当該施設の代表\道路地点として適宜設定している。このように,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)との共通部分である,道路,道路位置,代表道路地点等の選別・選択についても,原告CDDBの制作者による創作活動の成果が表\れており,創作者の個性が表現されているものといえる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの情報の選択としての創作性を有するものと認めるのが相当である。(エ) そして,これら被告CDDB(当初版・2006年版)が原告CDDBと同一性を有する情報の選択に関する部分も,原告CDDBの創作的表現の本質的特徴を直接感得することのできる同一性が維持されているものというべきである。\n
◆判決本文
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2013.11.11
平成24(ワ)33533 著作権侵害差止等請求事件 著作権 平成25年10月30日 東京地方裁判所
いわゆる自炊業者(スキャン代行業者)に対する差止および損害賠償が認められました。著30条の適用は否定されました。
複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であり,その複製の実現に当たり枢要な行為をしている者が複製の主体であるということができる(最高裁平成23年1月20日第一小法廷判決・最高裁平成21年(受)第788号・民集65巻1号399頁参照。)。これを本件についてみると,本件における複製の対象は,利用者が提供する書籍であり,問題とされる複製行為は,書籍をスキャナーで読み取って電子化されたファイルを作成することにあるところ,本件事業における一連の作業は,前記第2,1(8)記載のとおり,利用者においてインターネットのウェブサイトから書籍の電子化を申し込み,直接被告会社らの指定する場所にこれを郵送等するか,あるいは,書籍の販売業者等から直接被告会社らの指定する場所に郵送等し,これを受領した被告会社らにおいて,書籍を裁断するなどしてスキャナーで読み取り,書籍の電子ファイルを作成して,完成した電子ファイルを利用者がインターネットを通じてダウンロードするか,電子ファイルを格納したDVDないしUSB等の送付を受ける,というものである。これら一連の作業をみると,書籍を受領した後に始まる書籍のスキャナーでの読込み及び電子ファイルの作成という複製に関連する行為は,被告会社の支配下において全ての作業が行われ,その過程に利用者らが物理的に関与することは全くない。上記によれば,本件事業において,書籍をスキャナーで読み取って電子化されたファイルを作成するという複製の実現に当たり枢要な行為を行っているのは被告会社らであるということができる。そうすると,本件事業における複製行為の主体は被告会社らであり,利用者ではないというべきである。
(2) 次に本件事案に著作権法30条1項が適用されるか否かにつき検討する。著作権法30条1項は,著作権の目的となっている著作物は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは,同項1号ないし3号に定める場合を除き,その使用する者が複製することができる旨規定している。そうすると,同条項にいう「その使用する者が複製する」というためには,使用者自身により複製行為がされるか,あるいは使用者の手足とみなしうる者によりこれがされる必要があるというべきところ,既に検討したとおり,被告タイムズ及び被告ビー・トゥ・システムズは,本件事業における複製の主体であって,使用者自身でも,使用者の手足とみなしうる者でもないのであるから,本件においては,著作権法30条1項にいう「その使用する者が複製する」の要件を満たすとはいえず,したがって,同条が適用されるものではないと認めるのが相当である。
◆判決本文
◆スキャン代行業者に対する他の事件はこちらです。平成24(ワ)33525 平成25年9月30日 東京地裁 文
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2013.11. 8
平成24(ワ)10382 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年10月21日 東京地方裁判所
キャラクターの複製・翻案かが争われました。裁判所は複製・翻案のいずれでもないと判断しました。
,原告作品1と被告商品1を対比すると,別紙原告作品1と被告商品1との対比(判決)記載のとおりの相違点が認められるから,被告商品1は,原告作品1を有形的に再製したものではないし,原告作品1の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものではない。以上のとおり,被告商品1は,原告作品1と同一又は類似であるとは認められないから,被告商品1が原告作品1を複製又は翻案したものである\nとは認められない。
◆判決本文
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2013.10.12
平成25(ネ)10040 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年09月30日 知的財産高等裁判所
著作権侵害および著作者人格権侵害が認定されました。被告は人権擁護団体のようです。原告はプライバシー侵害(受刑者として公表された)が気にさわったでしょうか?\n
事件の経緯は下記です。
刑務所に収容されている受刑者が自己作成の絵画を被告に預けたところ、被告はこれを展示すると共に、展示会のパンフレットに同絵画の複製を掲載して頒布。また、パンフレットに本件絵画とともに受刑者があることとその氏名を掲載。
前記第2の2(3)において認定したとおり,第1審被告は,本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表示しているところ,これは,本件絵画の公衆への提供に際し著作者名を表\示しないこととすることを内容とする第1審原告の氏名表示権を侵害するものである。なお,第1審原告は,前記第2,2(3),同(4)及び前記1(1)のとおり,「アンデパンダン展」が「救援」誌上の絵画の展示会であると認識して,本件絵画を含む複数の絵画を第1審被告に送付した際に,それらの絵画を「匿名」又は変名で掲載することを第1審被告に求めたことはなかったこと,その後本件展示会の開催直前に,第1審被告からの手紙により,展示会が「救援」誌上ではなく,公開のギャラリーで行われることを知ったことから,急遽,自己の氏を表示せず,「(第1審原告の名)」のみの表\示とすることを申し入れたことに照らせば,第1審原告は,「救援」誌上の展示会を前提として,第1審被告に送付した本件絵画を含む各絵画について,その著作者名として自己の氏名を表\示する意思を有していたものにすぎず,公開のギャラリーにおいて本件絵画を展示する際や,一般に頒布される予定の本件パンフレットに本件絵画等を掲載するに際し,著作者としてその氏名を表\示することを承諾していたものと認めることはできない(本件パンフレットについては,本件絵画のカラーコピーを掲載することが複製権侵害となることは,前記2のとおりである。)。そして,他に第1審原告が,第1審被告において本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表示することを承諾していたことを認めるに足りる証拠もない。さらに,上記に認定判断したところに加え,本件証拠上,第1審被告が,第1審原告に対し,本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表\示することの承諾を得ようとした形跡もうかがえないことも併せ考えると,第1審被告には,本件パンフレットに本件絵画の著作者として第1審原告の氏名を表示することによる氏名表\示権の侵害について,少なくとも過失があるものと認められる。
なお,氏名表示権は著作者人格権の一つであるところ,著作者人格権は,著作者の精神的活動の所産として創作された著作物と著作者との人格的なつながりに基づいて,当該著作物の上に存する著作者の人格的利益を保護するものであり,特に氏名表\示権は,著作者が著作物の創作者であることを表示し,あるいは,表\示しない利益を保護するためのものであるから,かかる著作者の利益は,一般人が,著作物とは無関係に有する,自己が受刑者であることを公表されないことについての利益(プライバシー)とは異なる性質のものである。本件においては,この受刑者であることを公表\されないことについての第1審原告の利益は,法19条の氏名表示権で保護されるべき著作者の利益とは別個のプライバシー侵害の問題として,別途,後記4において判断することとする。\n
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2013.10. 1
平成24(ワ)33525 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年09月30日 東京地方裁判所
書籍のデジタル化業者(自炊業者)が書籍をスキャンすることは、利用者の手足として利用者の管理下で複製しているとみることはできないと判断されました。
著作権法2条1項15号は,「複製」について,「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義している。この有形的再製を実現するために,複数の段階からなる一連の行為が行われる場合があり,そのような場合には,有形的結果の発生に関与した複数の者のうち,誰を複製の主体とみるかという問題が生じる。この問題については,複製の実現における枢要な行為をした者は誰かという見地から検討するのが相当であり,枢要な行為及びその主体については,個々の事案において,複製の対象,方法,複製物への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して判断するのが相当である(最高裁平成21年(受)第788号同23年1月20日第一小法廷判決・民集65巻1号399頁参照)。本件における複製は,上記(1)ア及びイで認定したとおり,1)利用者が法人被告らに書籍の電子ファイル化を申し込む,2)利用者は,法人被告らに書籍を送付する,3)法人被告らは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,4)法人被告らは,裁断した書籍を法人被告らが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,5)完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過によって実現される。この一連の経過において,複製の対象は利用者が保有する書籍であり,複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らが管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化するというものである。電子ファイル化により有形的再製が完成するまでの利用者と法人被告らの関与の内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付するのは利用者であるが,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら法人被告らであり,利用者は同作業には全く関与していない。以上のとおり,本件における複製は,書籍を電子ファイル化するという点に特色があり,電子ファイル化の作業が複製における枢要な行為というべきであるところ,その枢要な行為をしているのは,法人被告らであって,利用者ではない。したがって,法人被告らを複製の主体と認めるのが相当である。
(イ) この点について,被告サンドリームらは,著作権法30条1項の適用を主張する際において,被告サンドリームは,使用者のために,その者の指示に従い,補助者的な立場で電子データ化を行っているにすぎないとし,また,被告ドライバレッジらは,同項の「使用する者が複製する」の解釈について,「複製」に向けての因果の流れを開始し,支配している者が複製の主体と判断されるべきであるし,複製の自由が書籍の所有権に由来するものであることに照らしても,書籍の所有者が複製の主体であると判断すべきであると主張する。著作権法30条1項は,複製の主体が利用者であるとして利用者が被告とされるとき又は事業者が間接侵害者若しくは教唆・幇助者として被告とされるときに,利用者側の抗弁として,その適用が問題となるものと解されるところ,本件においては,複製の主体は事業者であるとされているのであるから,同項の適用が問題となるものではない。もっとも,被告らの主張は,利用者を複製の主体とみるべき事情として主張しているものとも解されるので,この点について検討する。確かに,法人被告らは,利用者からの発注を受けて書籍を電子ファイル化し,これを利用者に納品するのであるから,利用者が因果の流れを支配しているようにもみえる。しかし,本件において,書籍を電子ファイル化するに当たっては,書籍を裁断し,裁断した頁をスキャナーで読み取り,電子ファイル化したデータを点検する等の作業が必要となるのであって,一般の書籍購読者が自ら,これらの設備を準備し,具体的な作業をすることは,設備の費用負担や労力・技術の面において困難を伴うものと考えられる。このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならば,抽象的には利用者が因果の流れを支配しているようにみえるとしても,有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下にあるとみられるのであって,複製における枢要な行為を法人被告らが行っているとみるのが相当である。また,被告らは,法人被告らが補助者にすぎないと主張する。利用者がその手足として他の者を利用して複製を行う場合に,「その使用する者が複製する」と評価できる場合もあるであろうが,そのためには,具体的事情の下において,手足とされるものの行為が複製のための枢要な行為であって,その枢要な行為が利用者の管理下にあるとみられることが必要である。本件においては,上記のとおり,法人被告らは利用者の手足として利用者の管理下で複製しているとみることはできないのであるから,利用者が法人被告らを手足として自ら複製を行ったものと評価することはできない。
(ウ) さらに,被告ドライバレッジらは,「複製」といえるためには,オリジナル又は複製物に格納された情報を格納する媒体を有形的に再製することに加え,当該再製行為により複製物の数を増加させることが必要であり,言い換えれば,「有形的再製」に伴い,その対象であるオリジナル又は複製物が廃棄される場合には,当該再製行為により複製物の数が増加しないのであるから,当該「有形的再製」は「複製」には該当しない旨主張する。しかし,著作権法21条は,「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」と規定し,著作権者が著作物を複製する排他的な権利を有することを定めている。その趣旨は,複製(有形的再製)によって著作物の複製物が作成されると,これが反復して利用される可能性・蓋然性があるから,著作物の複製(有形的再製)それ自体を著作権者の排他的な権利としたものと解される。そうすると,著作権法上の「複製」は,有形的再製それ自体をいうのであり,有形的再製後の著作物及び複製物の個数によって複製の有無が左右されるものではないから,被告ドライバレッジらの主張は採用できない。\n
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2013.09.25
平成25(ヨ)20003 工作物設置続行禁止仮処分申立事件 著作権 民事仮処分 平成25年09月06日 大阪地方裁判所
庭園内に工作物を設置することについて、裁判所は、やむを得ないと認められる改変(著20条2項同4号)に該当するとして、設置続行禁止(仮処分)を認めませんでした。
既に述べたとおり,本件庭園は,自然の再現,あるいは水の循環といったコンセプトを取り入れることで,美的要素を有していると認められる。しかしながら,本件庭園は,来客がその中に立ち入って散策や休憩に利用することが予定されており,その設置の本来の目的は,都心にそのような一角を設けることで,複合商業施設である新梅田シティの美観,魅力度あるいは好感度を高め,最終的には集客につなげる点にあると解されるから,美術としての-24-鑑賞のみを目的とするものではなく,むしろ,実際に利用するものとしての側面が強いということができる。また,本件庭園は,債務者ほかが所有する本件土地上に存在するものであるが,本件庭園が著作物であることを理由に,その所有者が,将来にわたって,本件土地を本件庭園以外の用途に使用することができないとすれば,土地所有権は重大な制約を受けることになるし,本件庭園は,複合商業施設である新梅田シティの一部をなすものとして,梅田スカイビル等の建物と一体的に運用されているが,老朽化,市場の動向,経済情勢等の変化に応じ,その改修等を行うことは当然予定されているというべきであり,この場合に本件庭園を改変することができないとすれば,本件土地所有権の行使,あるいは新梅田シティの事業の遂行に対する重大な制約となる。以上のとおり,本件庭園を著作物と認める場合には,本件土地所有者の権利行使の自由との調整が必要となるが,土地の定着物であるという面,また著作物性が認められる場合があると同時に実用目的での利用が予\定される面があるという点で,問題の所在は,建築物における著作者の権利と建築物所有者の利用権を調整する場合に類似するということができるから,その点を定める著作権法20条2項2号の規定を,本件の場合に類推適用することは,合理的と解される。
イ 模様替え
本件工作物の設置は,本件庭園の既存施設であるカナルや花渦を物理的に改変せずに行うものであることから,著作権法20条2項2号が定める中では,「模様替え」に相当すると解される。債権者は,建築基準法の解釈として,本件工作物の設置は「模様替え」に当たらない旨を主張するが,本件庭園は建築物そのものではなく,著作権法の定めを建築基準法と同一に考える必要もないから,債権者の主張は採用できない。
ウ 著作権法20条2項2号のあてはめ
本件への適用を考えるに,著作権法20条は,1項において,著作者が,その著作物について,意に反して変更,切除その他の改変を受けず,同一性を保持することができる旨を定めた上で,2項2号において,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変については,前項の規定を適用しない旨を定めている。著作権法は,建築物について同一性保持権が成立する場合であっても,その所有者の経済的利用権との調整の見地から,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変について,特段の条件を付することなく,同一性保持権の侵害とはならない旨を定めているのであり,これが本件庭園の著作者と本件土地所有者の関係に類推されると解する以上,本件工作物の設置によって,本件庭園を改変する行為は,債権者の同一性保持権を侵害するものではないといわざるをえない。
エ 債権者の主張について
(ア) 債権者は,著作権法20条2項2号が適用されるためには,1)経済的,実用的な観点から必要な範囲の増改築であること,2)個人的な嗜好に基づく恣意的な改変ではないことが必要であり,本件工作物の設置は,そのいずれの要件も欠くから,同号は適用されない旨を主張する。しかしながら,同号の文言上,そのような要件を課していないことに加え,著作物性のある建築物の所有者が,同一性保持権の侵害とならないよう増改築等ができるのは,経済的,実用的な観点から必要な範囲の増改築であり,かつ,個人的な嗜好に基づく恣意的な改変ではない場合に限られるとすることは,建築物所有者の権利に不合理な制約を加えるものであり,相当ではない。
以上によれば,同号の文言に特段の制約がない以上,建築物の所有者は,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えをすることができると解されるのであり,その理は,債権者と債務者の関係にも類推されるというべきである。債務者の主張はこの理をいうものとして理由があり,これに反する債権者の主張は採用できない。
(イ) もっとも,建築物の所有者は建築物の増改築等をすることができるとしても,一切の改変が無留保に許容されていると解するのは相当でなく,その改変が著作者との関係で信義に反すると認められる特段の事情がある場合はこの限りではないと解する余地がある。債権者が,本件工作物の設置はP2個人のプロジェクトのモニュメントであり,実用性,経済性,必要性を欠くと主張する点も,その趣旨を述べたものとして理解することもできるが,前記1で述べたところに照らすと,なお採用できないというべきである。すなわち,本件庭園は,複合商業施設である新梅田シティと一体をなすものであり,市場動向や流行に従って,その設備を適宜に更新していく必要があることは,債権者も理解していたはずであること,債権者は,本件庭園の設計当初から,旧花野について,将来新たな建築がされることを予見していたこと,平成18年改修の際も,一定の改変は受忍するともとれる趣旨を述べていること,債務者は,本件工作物を設置する場所の検討に当たって,一応,債権者の意見を聴取し,一定程度反映させていること,以上の点を指摘することができるのであって,これらを総合すると,本件工作物の設置について,本件庭園の著作者である債権者との関係で,信義に反すると認められる特段の事情があるとまではいえない。\n
オ まとめ
以上によれば,本件工作物の設置は,著作者である債権者の意に反した本件庭園の改変にはあたるものの,著作権法20条2項2号が類推適用される結果,同一性保持権の侵害は成立しないことになる。
◆判決本文
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2013.05. 2
平成24(ネ)10076 出版差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所
編集著作物性について、原審は著作物性無しとしましたが、一部についてこれを認めました。
エ 認定のとおり,控訴人書籍漢方薬便覧部分においては,148の処方名,1000個以上の商品名の漢方薬から,臨床現場での重要性や使用頻度等を踏まえて,148の処方名,307の商品名の漢方薬を選択するとともに,195の処方名,1900個以上の商品名の生薬並びに生薬及び漢方処方に基づく医薬品の中から1の処方名(「ヨクイニンエキス」),2の商品名の生薬を選択した上で,これを「漢方薬」の大分類の中に含めたものである。控訴人は,「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるにもかかわらず,これを漢方薬として選択したものである(甲59,69)。そして,生薬である「ヨクイニンエキス」については,「ポケット判治療薬Up-To-Date(2008年版)」(乙2)及び「ポケット医薬品集2008年版」(乙3)では,皮膚科用薬の章に掲載され,「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)では,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬製剤」の章に掲載され,「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」に掲載されているのであって,これを「漢方製剤」の分類に選択した類書は,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に見られないところ,同書における漢方薬の選択及び配列については,控訴人書籍と全く同一の148の処方名,307の商品名の漢方製剤に加えて「ヨクイニンエキス」が選択され,控訴人書籍と50音順を崩した4箇所を含め,全く同一の配列がされていること,同書が控訴人書籍の発行後に発行されたこと等に照らし,同書をもってありふれていることの根拠とすることはできない。以上によれば,前記の漢方薬の薬剤の選択,特に「ヨクイニンエキス」を漢方製剤として選択したことには,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができる。
イ 薬剤の配列について
控訴人書籍及び被控訴人書籍の漢方薬便覧部分は,「処方名」(漢方処方名)を原則として50音順とし,例外的に,1)・・・4箇所のみ50音順を崩して配列している点において同一である。このうち,控訴人は,4)の「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるところから,全く別個に配列し,これを漢方薬の最後に配列したものである。また,上記2)の配列については,「桔梗湯」及び「桔梗石膏」は,いずれも生薬「桔梗」を含む漢方製剤であり,咽喉における症状に用いられる点で共通しているところ,「桔梗湯」は,・・・に記載された漢の時代から伝わる生薬の配合及び分量についての歴史的な処方であり,喉痛等に対して処方する機会が極めて多いのに対し,「桔梗石膏」は,原典を有しない比較的新しい処方であるため,まず「桔梗湯」の処方を考えることが臨床現場においては通常であること,また,「桔梗湯」は,単体で処方されることが多い漢方製剤であるが,「桔梗石膏」は,他の漢方製剤と共に処方されることが多い漢方製剤であるため,まず単体で処方することのできる「桔梗湯」を前にもってくることが臨床現場における使用に資することから,臨床現場の使用実態に即した配列にしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。さらに,上記3)の配列も,「桂枝加竜骨牡蛎湯」が,前記のとおり・・・に記載された漢の時代から伝わる歴史的な処方であるのに対し,・・・が,江戸時代に日本で書かれた「方機」という書物に記載された処方であるところ,歴史が深い処方の方が信頼が高く,臨床現場においてより頻繁に用いられているところから,・・を先に配列することとしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。このように,控訴人書籍における薬剤の配列は,漢方処方が,歴史的,経験的な実証に基づく薬効,中心的な役割を果たす主薬,基本方剤等,複数の分類基準によって区別される上に,基本方剤に新たな薬効を持つ生薬が加味されることで,多くの漢方処方に派生するという関係にあるところから,そのような歴史的,経験的な実証に基づく生薬の薬効及び基本方剤分類を考慮した配列にしたものである。そして,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に,上記1)ないし4)について控訴人書籍と同一の配列をしたものは見当たらない。被控訴人が発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5),「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においてすら,「ヨクイニンエキス」は,「漢方製剤」の分類の中には選択されず,それとは別の「その他の生薬製剤」又は「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」等に分類されていたものである。また,被控訴人が控訴人書籍の発行より前に発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,控訴人書籍及び被控訴人書籍とは異なり,上記1)ないし3)を含め,全て50音順に配列されていたものである。
ウ 以上によれば,控訴人書籍漢方薬便覧部分は,漢方薬の148の処方名を掲載したほか,多数の生薬の中から「ヨクイニンエキス」のみを大分類「漢方薬」に分類するものとして選択した上,漢方3社が製造販売する薬剤がある漢方処方名については,当該漢方処方名に属する漢方3社の薬剤を全て選択し,漢方3社が薬剤を製造販売していない漢方処方名については,臨床現場における重要性や使用頻度等に鑑みて個別に薬剤を選択したというのであるから,薬剤の選択に控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができ,上記のような考慮から薬剤を選択した上,歴史的,経験的な実証に基づきあえて50音順の原則を崩して配列をした控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の配列には,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているから,一定の創作性があり,これと完全に同一の選択及び配列を行った被控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列は,控訴人書籍のそれの複製に当たるといわざるを得ない。
◆判決本文
◆原審はこちら。平成20(ワ)29705
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2013.04. 9
平成23(ワ)33071 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年03月14日 東京地方裁判所
題号「風にそよぐ墓標」の一部が、複製権および翻案権侵害と認定されました。ただ、損害額は慰謝料の方が高額でした。
証拠(甲1,2,6,乙1,2の1及び2,3,4,原告及び被告B各本人)によれば,被告Bは,本件事故が犠牲者の妻や母という女性の視点から語られることが多かったことから,犠牲者の息子という男性の視点から本件事故を著述しようと考えていたところ,原告とCの息子であるGを知り,本件事故に関して原告が著述した「なにか云って」と題する書籍と原告書籍を図書館から借りて閲読した上で,平成22年5月21日,Gに対し,本件事故に関する取材を8時間ほどしたこと,被告Bは,同月24日,取材内容を補強するために,原告に対しても,本件事故に関する取材を3時間ほどしたこと,原告は,本件事故から25年弱が経過するとともに,上記両書籍の著述によって本件事故を自分なりに終結させていたので,当時の状況を思い出せなかったり,上記両書籍や原告に関する放送等を収録したDVD映像の各該当部分を示して説明したりした上,被告Bに対し,上記両書籍とDVD2本を提供したこと,これに対し,被告Bは,原告に対し,原告の説明や上記両書籍や両DVDを基にして正確に著述する旨約束したこと,原告は,同月29日ころ,被告Bに対し,手紙を送り,同月24日の取材で話題になった原告とCが出会った経緯等につき,訂正を申し入れたことが認められる。前記認定の事実によれば,原告が被告Bに対し原告書籍等を用いて事実の正確な著述をするよう求めたことは窺うことができるものの,さらに進んで,原告が被告Bに対し原告各記述の複製又は翻案及び譲渡に係る利用の許諾を黙示にしたということはできず,他に被告Bが原告から原告各記述の複製又は翻案及び譲渡に係る利用の許諾を黙示に得たことを認めるに足りる証拠はない。
(3) 以上によれば,被告Bは,別紙対比表の当裁判所の判断欄に○と記載した被告各記述を不可分的に有する被告書籍の第3章を著述することによって,原告の原告書籍の著作権(複製権又は翻案権)を侵害し,被告集英社は,当該被告各記述を第3章に含む被告書籍を頒布することによって,原告の原告書籍の著作権(譲渡権又は著作権法28条に基づく譲渡権)を侵害するものと認められる。\n
◆判決本文
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2013.02. 7
平成23(ワ)35951 損害賠償 著作権 民事訴訟 平成25年01月31日 東京地方裁判所
コミック版について増刷発行まで原告の利用許諾があったとして、原告の請求は認められませんでした。
そこで検討するに,前記(2)ア及びイの認定事実によれば,被告は,B執筆の書籍「Bの都市伝説」シリーズを原作とする漫画版として,複数の漫画家が作画した漫画各話を掲載したコンビニコミックである本件各コミックの出版を企画し,被告主張の本件各合意のそれぞれの合意の時期に,本件コミック1については作画原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については作画原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を支払うとの条件で,原告に対し,本件各作画の制作を順次依頼し,原告は,その都度これを了承したものであり,被告の上記各依頼の趣旨は,原告に対し,原告が本件各作画の制作を行うとともに,被告が本件各コミックに本件各作画を掲載して出版及び販売することについての利用許諾を求めるものであるから,原告が被告の上記各依頼を了承することにより,原告と被告との間で,本件各合意が成立したものと認められる。そして,前記(2)アないしウの認定事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,1)本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえないこと,2)被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったことが認められる。
上記1)及び2)の事情に照らすならば,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は,本件各コミックの初版分に限定されるものではなく,その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当である。イ これに対し原告は,原告と被告間の本件各作画についての利用許諾の合意は,原告が提供した原稿について雑誌発行(初版発行)から2週間程度の期間を限定して被告が出版することを許諾することを内容とするものであり,原稿1枚当たり1万円の原稿料及び原稿1枚当たり1万3000円の原稿料の約定は,上記利用許諾の対価にすぎないから,本件各コミックの増刷分には利用許諾の効力は及ばない旨主張し,原告の供述(甲22の陳述書を含む。以下同じ。)中にはこれに沿う部分がある。しかしながら,被告が本件各コミックに掲載する本件各作画の制作を原告に依頼した際に,原告と被告との間で,本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったものであり(前記ア2)),また,原告の供述を前提としても,原告が,被告の上記依頼を受けた際に,本件各コミックの流通期間を2週間程度に限定することを条件とすることや,原稿料は初版分に限定する趣旨である旨を被告に述べたというものではない。かえって,原告の供述中には,原告が,本件コミック2に掲載する本件作画2ないし4の原稿料の値上げ要請をした際に,コミックの発行部数は原稿料を定めるに当たって考慮に入れていなかった旨の供述部分があることからすれば,原告においては,本件各作画の利用許諾の対価としては,コミックの発行部数の多寡にかかわらず,原稿1枚当たり一定額の原稿料の支払を受けることで了承していたことがうかがわれる。しかも,本件各コミックの2刷及び3刷は,初版を増刷したものであって,本件各作画の利用形態は初版と何ら変わることはないのであるから,本件各コミックの流通期間が原告が想定していた約2週間を超えたからといって原告において特段の不利益をもたらすものとは認め難く,本件各合意を締結するに当たっての合理的意思に反するものとも認め難い。もっとも,被告は,本件作画2,9ないし12を掲載した都市伝説Gコミックについて再録掲載料を原告に支払っているが(前記(2)エ(ウ)),都市伝説Gコミックは,本件各コミックに収録された漫画の中から全14話を選択して収録したものであり,本件各コミックにおける本件作画2,9ないし12の利用形態とは異なるものであるから,上記再録掲載料の支払の事実をもって原告の上記主張を裏付けることはできない。以上によれば,原告の上記主張は,採用することができない。他に前記アの認定を左右するに足りる証拠はない。
(4) 以上のとおり,被告が本件各コミックを増刷して発行することについて,本件各合意に基づく原告の利用許諾があったものと認められるから,被告のかかる行為が本件各作画について原告が保有する複製権の侵害行為に当たる旨の原告の主張(請求原因(1))は理由がない。
◆判決本文
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2012.12.14
平成24(ワ)15034 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年11月30日 東京地方裁判所
プログラムの著作物について、本件プログラムに基づいて生成された画像は、プログラムの著作物の複製ではないと判断しました。
被告は,同一事案について既に判決が確定しているから,一事不再理の原則からみても本件訴えは却下されるべきであると主張する。しかし,別件訴訟は,原告が,被告に対し,主位的には,ウェブサイト制作作業等の請負代金等296万円及び遅延損害金の支払を,予備的には,被告が原告作成のウェブサイト等に不正にアクセスしたことによってウェブサイト制作費,コンサルティング料金等相当額である286万円を不当に利得したとして同額及び法定利息金の支払を求めたものである(甲3の1・2。なお,原告は,別件訴訟控訴審において,主位的請求及び予\備的請求とも100万円及びこれに対する附帯請求の限度に請求を減縮した。)。これに対し,本件訴訟は,原告が,被告に対し,本件プログラムの著作権(複製権)侵害(予備的に一般不法行為)に基づき,損害賠償金合計1120万円の一部請求として280万円の支払を求める事案である。別件訴訟と本件訴訟とは当事者を同一にし,事実関係に重なるところがあるとはいえ,訴訟物も争点も異なるものであるから,本件訴えが一事不再理の原則により不適法であるとはいえない。
2 別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為について
(1) 原告は,別件乙3の印刷物は,原告が著作権を有するプログラムの著作物である本件プログラムを紙に印刷して複製したものであり,複製権侵害であると主張するので,この点について検討する。
(2) 原告は,本件プログラムは原告が創作した「プログラムの著作物」(法10条1項9号)であると主張する。プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表\現したもの」(法2条1項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法(法10条3項)に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表\現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどについて,法により保護されるべき作成者の個性(創作性)が表\れることになる。したがって,プログラムに著作物性(法2条1項1号)があるというためには,指令の表現自体,その指令の表\現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表\現ではなく,プログラム制作者の個性,すなわち,表現上の創作性が表\れていることを要する(知財高裁平成21年(ネ)第10024号平成24年1月25日判決・裁判所ウェブサイト)。原告は,本件プログラムのソースコード(甲6の1。A4用紙7枚(1枚当たり36行。全部で232行)のもの。)を提出するものの,本件プログラムのうちどの部分が既存のソ\ースコードを利用したもので,どの部分が原告の制作したものか,原告制作部分につき他に選択可能な表\現が存在したか等は明らかでなく,原告制作部分が,選択の幅がある中から原告が選択したものであり,かつ,それがありふれた表現ではなく,原告の個性,すなわち表\現上の創作性が発揮されているものといえるかも明らかでない。・・・
原告は,被告がブラウザを用いて本件プログラムにアクセスし,その情報を被告のパソコンのモニタに表\示させ,表示された情報のスクリーンショットを撮り,当該スクリーンショットの画像ファイルを紙である別件乙3(甲1の1,乙2)に印刷したことが,プログラムの著作物である本件プログラムの複製に当たると主張する。法にいう「複製」とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうが(法2条1項15号),著作物を有形的に再製したというためには,既存の著作物の創作性のある部分が再製物に再現されていることが必要である。これを本件についてみると,紙である別件乙3(甲1の1,乙2)に記載されているのは画像であって,その画像からは本件プログラムの創作性のある部分(指令の表\現自体,その指令の表現の組合せ,その表\現順序からなる部分)を読み取ることはできず,本件プログラムの創作性のある部分が画像に再現されているということはできないから,別件乙3の印刷が本件プログラムの複製に当たるということはできない。
◆判決本文
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2012.08.10
平成24(ネ)10027 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年08月08日 知的財産高等裁判所
グリー vs DeNAの釣りゲームについて、知財高裁は、釣りゲームの画面は、表現といえるまで具体化されていないとして、著作権侵害ではないと判断しました。
原告作品と被告作品とは,いずれも携帯電話機向けに配信されるソーシャルネットワークシステムの釣りゲームであり,両作品の魚の引き寄せ画面は,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において,共通する。イ しかしながら,そもそも,釣りゲームにおいて,まず,水中のみを描くことや,水中の画像に魚影,釣り糸及び岩陰を描くこと,水中の画像の配色が全体的に青色であることは,前記(2)ウのとおり,他の釣りゲームにも存在するものである上,実際の水中の影像と比較しても,ありふれた表現といわざるを得ない。次に,水中を真横から水平方向に描き,魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは,原告作品の特徴の1つでもあるが,このような手法で水中の様子を描くこと自体は,アイデアというべきものである。また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。そして,同心円の態様は,いずれも画面のほぼ中央に描かれ,中心からほぼ等間隔の三重の同心円であるという点においては,共通するものの,両者の画面における水中の影像が占める部分が,原告作品では全体の約5分の3にすぎない横長の長方形で,そのために同心円が上下両端にややはみ出して接しており,大きさ等も変化がないのに対し,被告作品においては,水中の影像が画面全体のほぼ全部を占める略正方形で,大きさが変化する同心円が最大になった場合であっても両端に接することはなく,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化するといった具体的表\現において,相違する。しかも,原告作品における同心円の配色が,最も外側のドーナツ形状部分及び中心の円の部分には,水中を表現する青色よりも薄い色を用い,上記ドーナツ形状部分と中心の円部分の間の部分には,背景の水中画面がそのまま表\示されているために,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,放射状に仕切られた11個のパネルの,中心の円を除いた部分に,緑色と紫色が配色され,同心円の存在が強調されている点,同心円のパネルの配色部分の数及び場所も,魚の引き寄せ画面ごとに異なり,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,緑色無地,銀色の背景に金色の釣り針,鮮やかな緑の背景に黄色の星マーク,金色の背景に銀色の銛,黒色の背景に赤字の×印の5種類に変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表\現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。さらに,黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても,釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き,釣り糸も描いているゲームは,前記(2)ウのとおり,従前から存在していたものであり,ありふれた表現というべきである。しかも,その具体的表\現も,原告作品の魚影は魚を側面からみたものであるのに対し,被告作品の魚影は前面からみたものである点等において,異なる。
ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表\現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,同心円が表\示された以降の画面をみても,被告作品においては,まず,水中が描かれる部分が,画面下の細い部分を除くほぼ全体を占める略正方形であって,横長の長方形である原告作品の水中が描かれた部分とは輪郭が異なり,そのため,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表\示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表\示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない。\n
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成23(ワ)13060
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2012.07.11
平成23(ワ)13060 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年07月05日 大阪地方裁判所
同一性を有する部分が,思想又は感情を創作的に表現したものでないとして、翻案権侵害は無しと判断されました。
著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう。ここで,再製とは,既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解すべきであるが,同一性の程度については,完全に同一である場合のみではなく,多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない,すなわち実質的に同一である場合も含むと解すべきである。また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。もとより,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであって(同法2条1項1号),思想,発想又はアイデア等を直接保護するものではない。そのため,仮に既存の著作物に依拠して創作された著作物であっても,具体的な表\現のレベルでの本質的な特徴の同一性が維持されておらず,具体的な表現から抽出される思想,発想又はアイデアのレベルにおいて既存の著作物と同一又は類似と評価され,あるいは事実又は事件といったレベルにおいて同一又は類似の内容を述べていると評価されるにとどまる場合は,両者は,いずれも表\現それ自体ではない部分において共通性を有するにすぎないから,著作権法上の複製にも翻案にも当たらない。また,具体的な表現に同一又は類似と評価される部分があったとしても,表\現上の創作性がない部分について同一又は類似と評価されるにすぎない場合は,やはり複製にも翻案にも当たらない。イ このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との間に,外形的表現としての同一性が認められることが必要で,さらに,同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表\現したものであることが必要である(著作権法2条1項1号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,筆者の何らかの個性が表\現されたものであれば足り,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることまでは必要ないが,文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,これを創作的な表\現ということはできない。
ウ 本件において,原告は,被告による被告著作物部分の記述又は発言は,P3の浮世絵についての独自の研究成果を盗用したものであるとして,複製又は翻案に当たる旨主張する。しかしながら,前述のとおり,原告記述部分と被告著作物部分とを対比して同一又は類似するといえる部分があるとしても,それが思想又は感情の創作的表現の同一性の問題ではなく,表\現から抽出される又は表現が前提とする,思想,発想又はアイデアにおける同一性,あるいは事実又は事件における同一性の問題にすぎないときは,当該被告著作物部分の記述又は発言は,複製又は翻案に該当するとはいえない。また,原告記述部分が何らかの歴史的事実に言及し,これに対する見解を述べるものであったとしても,そのような事実,見解自体について,排他的権利が成立するものではなく,これと同じ事実,見解を表\明することが,著作権法上禁止されるいわれはない。
◆判決本文
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2012.03.29
平成22(ワ)34705 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年03月22日 東京地方裁判所
SLのビデオ撮影について、テレビ放映の目次の許諾はないと判断しました。
以上のとおりであるから,被告オスカ企画による本件テレビ番組の制作,被告オスカ社による本件テレビ番組の販売及び販売先のテレビ局による本件テレビ番組の放送につき,原告の許諾を得ていたと認めることはできない。また,前記認定のとおり,本件テレビ番組がテレビで放送された当時,本件ビデオ映像は,まだ公表されていなかったものであり,かつ,同番組には,撮影者である原告の氏名は表\示されていなかったことが認められる。したがって,原告は,被告オスカ企画が,原告の意に反して本件ビデオ映像を編集し,本件ビデオ映像の一部を利用して本件テレビ番組を制作したことにより,本件ビデオ映像に係る原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害されたものと認められる。また,原告は,被告オスカ社が,本件テレビ番組がテレビで放送されることを目的として,同番組をテレビ局に販売し,その後同番組がテレビで放送されたことにより,本件ビデオ映像に係る原告の著作権(頒布権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び公表\権)を侵害されたものと認められる。
◆判決本文
関連事件はこちらです。
◆平成22年(ネ)第10046号/a>
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2012.03.11
平成22(ネ)10024 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年02月14日 知的財産高等裁判所
JASRAC以外の著作権等管理事業者による、カラオケの著作権使用料請求事件です。委託が終了しているか、損害額について争われました。
TMA社からの解約(解除)通知が発せられたのが平成18年(2006年)7月20日ころであり,契約終了時とされたのがそれから8か月余を経過した平成19年(2007年)3月31日であるから,係属中の損害賠償請求訴訟を一審原告からTMA社に承継させるための猶予期間としては十\分であると解することができ,一審原告は平成19年3月31日の経過により,TMA・原告契約に基づく本件著作権と一審被告に対する損害賠償債権(請求権)の管理権限を全て失ったと認めるのが相当である。この結論は,その後一審原告が,原権利者の一部の者から確認書B(甲75,甲80の1〜44(欠番部分を除く。))及び確認書D(甲145の1の1ないし甲145の62の1,甲150の1,甲151の1,甲152の1,甲153の1,甲158の1,甲160の1,甲161の1)を取得したことを考慮しても,影響を受けるものではない。一審原告は,平成19年(2007年)3月31日を経過しても上記管理権を失わないと主張するが,これを採用することができない。
・・・以上によれば,本件著作権の管理権限については,本件訴訟の対象たる損害賠償請求権も含め,TMA・原告契約によるものは,一審原告はこれを一切有しないというべきである。
・・・
以上のとおり,一審原告の本訴請求のうち,直接契約に係る部分については,直接契約の締結が認められた部分につき請求を認容し,TMA社を介した部分については,一審原告が対象楽曲の著作権の管理権限を失ったものと認められるため,この部分に関する請求を棄却することとし,その損害額の算定方法については,JASRAC規程の個別課金方式を採用することとする。そうすると,一審原告の本訴請求のうちその認容金額は原判決より少ないこととなるので,一審原告の控訴(A事件)は全て理由がなく,逆に,一審被告の控訴(B事件)は一部理由があることになる。よって,A事件についての一審原告の控訴を棄却し,B事件について一審被告の控訴に基づき原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。
◆判決本文
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2012.02.13
平成23(ネ)10041等 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所
元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定された著作権侵害事件の控訴審です。知財高裁は1審の判断を維持しました。
上記事実関係によれば,被告プログラムのうち36個のファイルが原告プログラムの35個のファイルとほぼ1対1で対応し,かつ,被告プログラムの上記36個のファイルにおけるソースコードが原告プログラムの35個のファイルにおけるソ\ースコードと,記述内容の大部分において同一又は実質的に同一である。このように,測量業務に必要な機能を抽出・分類し,これをファイル形式に区分して,関連付け,使用する関数を選択し,各ファイルにおいてサブルーチン化する処理機能\を選択し,共通処理のためのソースコードを作成し,また,各ファイルにおいてデータベースに構\造化して格納するデータを選択するなど,原告プログラムのうち作成者の個性が現れている多くの部分において,被告プログラムのソースコードは原告プログラムのソ\ースコードと同一又は実質的に同一であり,被告プログラムは原告プログラムとその表現が同一ないし実質的に同一であるか,又は表\現の本質的な特徴を直接感得できるものといえる。
◆判決本文
◆原審はこちら 平成19(ワ)24698平成23年05月26日東京地裁
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2012.02. 2
平成23(ネ)10011等 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所
ロクラクIIの差し戻し判決です。知財高裁は具体的事案を検討して侵害と認定しました。部門が4部から3部に変わってます。
最高裁判所は,「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(サービス提供者)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\を有する機器(複製機器)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。」,「複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である」等と判示して,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等について,更なる審理を尽くさせる必要があるとした。当裁判所は,審理の結果,本件サービスにおける,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮すると,被告は,放送番組等の複製物を取得することを可能にする本件サービスにおいて,その支配,管理下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\を有する機器に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合におけるサービス提供者に該当し,したがって,被告は,本件放送番組等の複製の主体であると認定,判断すべきであると解した。その理由は,以下のとおりである。
・・・
上記認定した事実に基づいて判断する。まず,ロクラクIIは,親機ロクラクと子機ロクラクとをインターネットを介して1対1で対応させることにより,親機ロクラクにおいて受信した放送番組等を別の場所に設置した子機ロクラクにおいて視聴することができる機器であり,親機ロクラクは,設置場所においてテレビアンテナを用いて受信した放送番組等をハードディスクに録画し,当該録画に係るデータをインターネットを介して,子機ロクラクに送信するものであって,ロクラクIIは,親子機能を利用するに当たり,放送番組等を複製するものといえる。また,被告は,上記のような仕組みを有するロクラクIIを利用者にレンタルし,月々,賃料(レンタル料)を得ている(なお,被告は,第1審判決前の時点において,一般利用者に対し,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を販売していたとは認められないのみならず,同判決後の時点においても,親機ロクラクと子機ロクラクのセット価格が39万8000円と高額に設定されていることからすれば,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を購入する利用者は,ほとんどいないものと推認される。)。そして,日本国内において,本件サービスを利用し,居住地等では視聴できない他の放送エリアの放送番組等を受信しようとする需要は多くないものと解されるから,本件サービスは,主に日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等を視聴するためのサービスであると解される。さらに,本件サービスは,利用者が,日本国内に親機ロクラクの設置場所(上記のとおり,電源供給環境のほか,テレビアンテナ及び高速インターネットへの接続環境を必要とする。)を確保すること等の煩わしさを解消させる目的で,サービス提供者が,利用者に対し,親機ロクラクの設置場所を提供することを当然の前提としたサービスであると理解できる。そして,被告は,本件モニタ事業当時には,ほとんどの親機ロクラクを被告本社事業所内に設置,保管し,これに電源を供給し,高速インターネット回線に接続するとともに,分配機等を介して,テレビアンテナに接続することにより,日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等の複製及び視聴をすることを可能にしていたことが認められる。また,被告は,本件サービスにおいて,当初は,親機ロクラクの設置場所として,被告自らハウジングセンターを設置することを計画していたこと,ところが,被告は,原告NHKらから,本件サービスが著作権侵害等に該当する旨の警告を受けたため,利用者に対し,自ら或いは取扱業者等をして,ハウジング業者等の紹介をし,ロクラクIIのレンタル契約とは別に,利用者とハウジング業者等との間で親機ロクラクの設置場所に係る賃貸借契約を締結させるとの付随的な便宜供与をしたこと,親機ロクラクの設置場所に係る賃料については,被告自ら又は被告と密接な関係を有する日本コンピュータにおいて,クレジットカード決済に係る収納代行サービスの契約当事者になり,本件サービスに係る事業を継続したことが認められる。上記の複製への関与の内容,程度等の諸要素を総合するならば,i)被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれらと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,また,ii)被告は,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を継続的に作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。
・・・
以上のとおり,被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。
◆判決本文
◆最高裁判決はこちらです。
1審・仮処分はこちらです
◆平成19(ワ)17279号
◆平成18(ヨ)22046号
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2012.01.19
平成22(受)1884 著作権侵害差止等請求事件 平成24年01月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻し 知的財産高等裁判所
原審は、映画の著作物について、著作権存続期間が満了した判断して複製したことについて、高裁は過失無しとして損害賠償請求を棄却しました。これに対して最高裁は、この過失なしとの判断は誤りと判断しました。
原審は,要旨,次のとおり判断して,上告人の損害賠償請求を棄却した。旧法下の映画については,映画を製作した団体が著作者になり得るのか,どのような要件があれば団体も著作者になり得るのかをめぐって,学説は分かれ,指導的な裁判例もなく,本件各監督が著作者の一人であったといえるか否かも考え方が分かれ得るところである。このような場合に,結果的に著作者の判定を誤り,著作権の存続期間が満了したと誤信したとしても,被上告人に過失があったとして損害賠償責任を問うべきではない。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
旧法下の映画の著作者については,その全体的形成に創作的に寄与した者が誰であるかを基準として判断すべきであるところ(最高裁平成20年(受)第889号同21年10月8日第一小法廷判決・裁判集民事232号25頁),一般に,監督を担当する者は,映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与し得る者であり,本件各監督について,本件各映画の全体的形成に創作的に寄与したことを疑わせる事情はなく,かえって,本件各映画の冒頭部分やポスターにおいて,監督として個別に表示されたり,その氏名を付して監督作品と表\\示されたりしていることからすれば,本件各映画に相当程度創作的に寄与したと認識され得る状況にあったということができる。他方,被上告人が,旧法下の映画の著作権の存続期間に関し,上記の2(7)アないしウの考え方を採ったことに相当な理由があるとは認められないことは次のとおりである。すなわち,独創性を有する旧法下の映画の著作権の存続期間については,旧法3条〜6条,9条の規定が適用される(旧法22条ノ3)ところ,旧法3条は,著作者が自然人であることを前提として,当該著作者の死亡の時点を基準にその著作物の著作権の存続期間を定めるとしているのである。旧法3条が著作者の死亡の時点を基準に著作物の著作権の存続期間を定めることを想定している以上,映画の著作物について,一律に旧法6条が適用されるとして,興行の時点を基準にその著作物の著作権の存続期間が定まるとの解釈を採ることは困難であり,上記のような解釈を示す公的見解,有力な学説,裁判例があったこともうかがわれない。また,団体名義で興行された映画は,自然人が著作者である旨が実名をもって表示されているか否かを問うことなく,全て団体の著作名義をもって公表\\された著作物として,旧法6条が適用されるとする見解についても同様である。最高裁平成19年(受)第1105号同年12月18日第三小法廷判決・民集61巻9号3460頁は,自然人が著作者である旨がその実名をもって表示されたことを前提とするものではなく,上記判断を左右するものではない。そして,旧法下の映画について,職務著作となる場合があり得るとしても,これが,原則として職務著作となることや,映画製作者の名義で興行したものは当然に職務著作となることを定めた規定はなく,その旨を示す公的見解等があったこともうかがわれない。加えて,被上告人は,本件各映画が職務著作であることを基礎付ける具体的事実を主張しておらず,本件各映画が職務著作であると判断する相当な根拠に基づいて本件行為に及んだものでないことが明らかである。そうすると,被上告人は,本件行為の時点において,本件各映画の著作権の存続期間について,少なくとも本件各監督が著作者の一人であるとして旧法3条が適用されることを認識し得たというべきであり,そうであれば,本件各監督の死亡した時期などの必要な調査を行うことによって,本件各映画の著作権が存続していたことも認識し得たというべきである。以上の事情からすれば,被上告人が本件各映画の著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても,本件行為について被上告人に少なくとも過失があったというほかはない。\n
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成21(ネ)10050
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2011.12.28
平成23(ネ)10008 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 知的財産高等裁判所
折り紙の折り図についての著作物性のある部分を複製していないとした1審判決が維持されました。
「原告は,本件折り図の「32の折り工程のうち,どの折り工程を選択し,一連の折り図として表現するか,何個の説明図を用いて説明するか」は,アイデアではなく,表\現であるとして,被告折り図と本件折り図とは,上記の点において共通するので,被告が被告折り図を作成する行為は,本件折り図について有する原告の複製権ないし翻案権を侵害すると主張する。しかし,原告の主張は,主張自体失当である。すなわち,著作権法により,保護の対象とされるのは,「思想又は感情」を創作的に表現したものであって,思想や感情そのものではない(著作権法2条1項1号参照)。原告の主張に係る「32の折り工程のうち,10個の図面によって行うとの説明の手法」それ自体は,著作権法による保護の対象とされるものではない。上記アのとおり,被告折り図と本件折り図とを対比すると,i)32の折り工程からなる折り方について,10個の図面(説明図)及び完成形を示した図面(説明図)による説明手法,ii)いくつかの工程をまとめた説明手法及び内容,iii)各説明図は,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,折り筋を付ける箇所を点線で,付けられた折筋を実線で,折り筋を付ける手順を矢印で示しているという説明手法等において共通する。しかし,これらは,読者に対し,わかりやすく説明するための手法上の共通点であって,具体的表現における共通点ではない。そして,具体的表\現態様について対比すると,本件折り図と被告折り図とは,上記アのとおり,数多くの相違点が存在する。被告折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず,また,被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえない。したがって,被告が,被告折り図を作成することによって本件折り図を複製ないし翻案した旨の原告の主張は採用できない。\n
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成22(ワ)18968平成23年05月20日東京地裁
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2011.12.28
平成22(ワ)36616 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 東京地方裁判所
損害保険の代理店業等を営む原告が,損害保険会社である被告に対し,被告が,原告と被告間の損害保険代理店契約が解除された後に,原告の著作物である別紙1の「平成22年1月1日付け火災保険改定のお知らせ」と題する説明書面を複製し,これを含む案内資料を原告の顧客である社会福祉法人に送付し,被告との火災保険契約の締結を勧誘した行為が,複製権侵害であると判断されました。
本件説明書面(甲2)は,別紙1のとおりのものであり,「平成22年1月1日付け火災保険改定のお知らせ」と題して,本件改定の内容を顧客向けに文章で説明する本文部分(1枚目)と,地域別に建物の構造級別区分ごとの保険料率の改定幅を数値で示した一覧表\及び本件改定の前後それぞれにおける建物の構造級別区分の判定の仕方をフローチャート方式で示した図表\などが記載された別添資料部分(2枚目)とからなるものである。そして,本件説明書面のうち,上記本文部分においては,「主な改定の内容」が,「1.火災保険上の建物構造級別の判定方法の簡素化」,「2.火災保険料率の大幅な改定」,「3.保険法の改定による対応」の3点に整理されて,それぞれの内容が数行程度の簡略な文章で紹介されるとともに,特に内容的に重要な部分については,太文字で表\記されたり,下線が付されるなど,一見して本件改定のポイントが把握しやすいような構成とされている。また,上記別添資料部分においては,本件改定による建物の構\造級別区分の判定方法の変更点について,一見して理解しやすいように,フローチャート方式の図表を用いた説明がされ,しかも,当該フローチャート図の中に,楕円で囲った白抜きの文字や太い矢印を適宜用いるなど,視覚的にも分かりやすくするための工夫が施されている。以上で述べたような本件説明書面の構\成やデザインは,本件改定の内容を説明するための表現方法として様々な可能\性があり得る中で(甲3ないし5,弁論の全趣旨),本件説明書面の作成者が,本件改定の内容を分かりやすく説明するという観点から特定の選択を行い,その選択に従った表現を行ったものといえるのであり,これらを総合した成果物である本件説明書面の中に作成者の個性が表\現されているものと認めることができる。
◆判決本文
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2011.11.22
平成21(ワ)4998 著作権侵害等に基づく損害賠償等請求事件 平成23年09月15日 名古屋地方裁判所
創作性の認められない部分については著作物性なしと判断しました。
本件における原告各書籍及び本件各書籍のような法律問題の解説書においては,関連する法令の内容や法律用語の意味を整理して説明したり,法令又は判例,学説によって当然に導かれる一般的な法律解釈や実務の運用等を解説するなどし,それらを踏まえた見解を記述することが不可避である。しかるに,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,法令や通達,判決,決定等である場合には,これが著作権の目的とすることができないものである以上(同法13条参照),当該法令等の記述そのものが複製,翻案となることはないのはもちろん,同一性を有する部分が,法令や判決等によって当然に導かれる事柄である場合にも,創作的に表現した部分において同一性を有するとはいえないから,当該部分に係る記述も複製,翻案には当たらないと解すべきである。また,手続の流れや法令の内容等を法令の規定や実務の取扱いに従って図示したり図表\にすること,さらには,手続上通常用いられる書面の書式を掲載することはアイデアの範ちゅうに属することであり,これを独自の観点から分類し,整理要約したなどの個性的表現がされているといった格別の場合でない限り,そのような図示,図表\や書式は,創作的に表現した部分において同一性を有するものとはいえないから,複製,翻案に当たらないと解すべきである。さらに,同一性を有する部分が,ある法律問題に関する筆者の見解又は一般的な見解である場合にも,思想ないしアイデアにおいて同一性を有するにすぎないから,一般の法律書等に記載されていない独自の観点からそれを説明する上で通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,複製,翻案に当たらないと解される。そして,ある法律問題について,関連する法令等の内容や法律用語の意味を説明し,一般的な法律解釈や実務の運用等を記述する場合には,確立した法律用語をあらかじめ定義された用法で使用し,法令等又は判例等によって当然に導かれる一般的な法律解釈を説明しなければならないという表現上の制約がある。そのため,これらの事項について説明する場合に,条文の順序にとらわれずに,独自の観点から分類し,通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,筆者の個性が表れているとはいえないから,著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることはできず,複製にも翻案にも当たらないと解すべきである。
・・・
以上のとおり,原告各表現と本件各表\現とは,表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから,本件各表現は,いずれも原告各表\現を複製,翻案したものとは認められない。
◆判決本文
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2011.06.13
平成19(ワ)24698 損害賠償等請求事件 平成23年05月26日 東京地方裁判所
元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定されました。114条2項による侵害額の推定も認められました。
証拠(乙11の1,3〜5)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月31日終了事業年度(1期)から平成21年8月31日終了事業年度(4期)までの間における,被告YKSC社の売上高の合計額は4億2 1 4 3 万1 3 8 4 円( 20,138,050 + 121,484,073 + 137,885,662 +141,923,599=421,431,384 円)であり,変動経費として売上高から控除すべき費用(材料費,外注加工費,旅費交通費)の合計額は1億3611万8708円(2,664,896+43,659,701+49,072,556+40,721,555=13,618,708 円)であると認められるから,上記期間における被告YKSC社の限界利益の合計額は2億8531万2676円であり,売上高に占める変動経費の比率は約32%であると認められる。本件では,上記のとおり,別紙売上集計表記載の一般測量,丁張測量,位置郎リース,成果(データ作成,図面・他成果)業務の売上高の一部について,被告ソ\フトを使用したことによる売上高であると認められるところ,上記認定に係るこれらの業務の性質や,被告YKSC社の業務のうち被告ソフトを使用したものと認められなかった業務の性質等を考慮すると,上記限界利益を算定するに当たって売上高から控除すべき変動経費は,売上高の30%と認めるのが相当である。したがって,上記(ア)a,b,同(イ)a,同(ウ)認定の売上高の合計額から3 0 % を控除した2 2 6 4 万5 6 6 5 円( { 6,560,430 +17,942,240+3,535,450+2,319,200+1,993,630}円×0.7=22,645,665円)が,被告YKSC社が被告ソフトを使用したことによる利益であると認められる。\n
◆判決本文
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2011.05.24
平成22(ワ)18968 損害賠償等請求事件 平成23年05月20日 東京地方裁判所
折り紙を折り方を説明した折り図の翻案、複製かが争われました。裁判所は著作物性は認めたものの、翻案、複製には該当しないと判断しました。
以上を前提に,本件折り図の著作物性について判断する。折り紙作品の折り図は,当該折り紙作品の折り方を示した図面であるが,その作図自体に作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該折り図は,著作物に該当するものと解される。もっとも,折り方そのものは,紙に折り筋を付けるなどして,その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり,紙の形,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向,折り手順は所与のものであること,折り図は,折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること,折り筋の表\現方法としては,点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば,その作図における表\現の幅は,必ずしも大きいものとはいい難い。また,折り図の著作物性を決するのは,あくまで作図における創作的表現の有無であり,折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない。
・・・・(イ) そこで検討するに,i)「へんしんふきごま」の折り方は,32の折り工程からなるところ,本件折り図は,この折り方について,1ないし10の手順に分解した説明図及び完成形を示した説明図を基に説明したものであるが,32の折り工程のうち,どこからどこまでの折り工程を一つの手順にまとめて何個の説明図を用いて説明するかについては選択の幅があること(甲13の1,2),ii)本件折り図は,別紙1のとおり,最初の折り工程から完成形に至るまでの折り工程について,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,紙の表と裏を色分け(赤色と無色)した各説明図において,折り筋を付ける手順を示す矢印,折り筋を付ける箇所及び向きを示す点線(谷折り線・山折り線),付けられた折り筋を示す実線,折った際に紙が重なる部分を予\測させるための仮想線を示す点線によって折り方を示すことを基本とし,これらの折り工程のうち矢印,点線等のみでは読み手が分かりにくいと考えた箇所について説明文及び写真を用いて折り方を補充して説明したものであること,iii)本件折り図に従えば,「へんしんふきごま」の折り紙作品を特段の支障なく作成できることによれば,本件折り図を全体としてみた場合,上記説明図の選択・配置,矢印,点線等と説明文及び写真の組合せ等によって,「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく,分かりやすく表現したものとして創作性を認めることができるから,本件折り図は,著作物に当たるものと認められる。
・・・・複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照),著作物の再製は,当該著作物に依拠して,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成することを意味するものと解され,また,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表\現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表\現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。以上を前提とすると,被告折り図が本件折り図の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,被告折り図において,本件折り図の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。・・・(ウ) 以上のとおり,被告折り図と本件折り図は,前記(イ)の相違点が存在することから,折り図としての見やすさの印象が大きく異なり,分かりやすさの程度においても差異があるものであって,前記(ア)の共通点を最大限勘案してもなお,被告折り図から,「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく,分かりやすく表現した本件折り図の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるものとは認められない。したがって,被告折り図は,本件折り図の複製物又は翻案物のいずれにも当たらないというべきである。
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2011.02. 8
平成20(ワ)11762 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年01月28日 東京地方裁判所
プログラム著作物について、差止、損害賠償が認められました。問題となったプログラムは、被告が原告在職中に作成したものでした。なお、翻案の差止は認められず、実施料相当額は10%と判断されました。
ウ これに対し,被告らは,原告プログラムにおいては,画面上の構成要素を貼\り付け,ボタン等を配置するために必要なプログラムなど,開発ツールであるMicrosoft社の「Visual Studio.net」によって自動生成された部分が相当の分量に及んでおり,これらの部分には創作性がないとした上で,原告プログラムのうちのMainForm.csの原告ソースコードに含まれる各関数を分析すると,別紙5において☆,○又は□の印を記載したものについては,自動生成コードが相当割合を占めることから,創作性が認められない旨を主張する。しかしながら,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる各関数における自動生成コードの占める割合が被告ら主張のとおりであることを前提にしたとしても,少なくとも別紙5において△の印が記載された合計10の関数については,被告ら自身が汎用的でないコードからなるものであることを認めており,創作性が認められることに実質的な争いはないものといえる。また,別紙5において□の印が記載された合計164の関数についても,被告らは,自動生成コードの割合が1割程度にすぎないこと,すなわち,9割程度が自動生成コードではないことを認めているのであり,これらの関数については,少なくとも自動生成コードが相当割合を占めることを理由として創作性を否定することはできないというべきである。この点,被告らは,これらの関数について,汎用的プログラムの組合せであることを理由として創作性が否定されるかのごとく主張するが,汎用的プログラムの組合せであったとしても,それらの選択と組合せが一義的に定まるものでない以上,このような選択と組合せにはプログラム作成者の個性が発揮されるのが通常というべきであるから,被告らの上記主張は採用できない。してみると,被告らの上記主張を前提としても,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる298の関数のうちの約6割(174/298)において,自動生成コードが1割以下にとどまっており,それ以外のコードは,その選択と組合せにおいてプログラム作成者の個性が発揮されていることが推認できるというべきであるから,プログラム著作物としての創作性を優に肯定することができる。エさらに,後記(2)イで認定するとおり,原告プログラムは,主として被告A1がその開発及びプログラミング作業を行ったものであるから,原告プログラムの内容等を最も知悉する者は被告A1にほかならないところ,それにもかかわらず,被告らは,原告プログラムの一部であるMainForm.csの原告ソースコードについて,別紙5に記載した印に基づいて前記第3の1(2)ア記載の程度の概括的な主張をしてその創作性を争うにとどまっており,それ以外の原告プログラムの創作性については,具体的理由に基づいてこれを争う旨の主張は行っていない。しかも,被告A1は,その本人尋問において,自らが行った原告プログラムにおけるソースコードの記述方法について,様々な創意工夫がされていることを自認する供述もしている。前記イ及びウで述べたことに加え,上記のような被告らの訴訟対応や被告A1の本人尋問における供述をも総合すれば,原告プログラムが,全体として創作性の認められるプログラム著作物であることは,優にこれを認めることができる。
・・・
原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。したがって,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づいて被告プログラムの翻案の差止めを求める原告の請求は理由がない。
・・・
そこで,上記会費収入を前提として,原告が原告プログラムについての著作権の行使につき受けるべき金銭の額(使用料相当額)を算定するに,i)社団法人発明協会発行の「実施料率【第5版】」(甲24)に記載されたソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約において定められた実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされ,特にソ\フトウェアにおいて高率契約の割合が高いとされていること,ii)原告プログラムは,原告において,多大な時間と労力をかけて開発されたものであり,かつ,原告の業務の中核となる重要な知的財産であって,競業他社にその使用を許諾することは,通常考え難いものであること,iii)他方,証拠(乙13,被告A1)によれば,被告会社においては,その会員に対し,被告ソフトを公衆送信して使用させることのみならず,被告会社が野村総研から購入した株価や銘柄に関するデータに種々の処理を施したものを提供するサービスや会員に対して電子メールで種々のアドバイスを送信するメールサービスも行っていることから,会員から得られる会費の中には,これらのサービスに対する対価に相当する部分も含まれており,本来,上記会費収入の全額が実施料率算定の基礎となるものではないことといった事情のほか,原告ソ\フト及び被告ソフトの内容,被告らによる侵害行為の態様及びそれに至る経緯,原告と被告らとの関係など本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告らによる平成19年1月から平成22年8月までの著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,上記(ア)の会費収入合計額2045万1200円の約10パーセントに当たる200万円と認めるのが相当である(なお,被告らによる著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,原告の原告ソフトの表\示画面に係る著作権侵害の主張が認められる場合でも,上記金額を超えるものとはいえない。)。
◆判決本文
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2011.01.21
平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高第一小
まねきTVに続き、ロクラク2についても、最高裁は複製権侵害と認定し、知財高裁の判断を破棄差し戻しました。
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\\を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十\\分であるからである。
裁判官金築誠志の補足意見
著作権法上の複製等の主体の判断基準に関しては,従来の当審判例との関連等の問題があるので,私の考え方を述べておくこととしたい。
1 上記判断基準に関しては,最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。このように,「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。
2 原判決は,本件録画の主体を被上告人ではなく利用者であると認定するに際し,番組の選択を含む録画の実行指示を利用者が自由に行っている点を重視したものと解される。これは,複製行為を,録画機器の操作という,利用者の物理的,自然的行為の側面に焦点を当てて観察したものといえよう。そして,原判決は,親機を利用者が自己管理している場合は私的使用として適法であるところ,被上告人の提供するサービスは,親機を被上告人が管理している場合であっても,親機の機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,利用者に代わって整備するものにすぎず,適法な私的使用を違法なものに転化させるものではないとしている。しかし,こうした見方には,いくつかの疑問がある。法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能\\なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。また,ロクラクIIの機能からすると,これを利用して提供されるサービスは,わが国のテレビ放送を自宅等において直接受信できない海外居住者にとって利用価値が高いものであることは明らかであるが,そのような者にとって,受信可能\\地域に親機を設置し自己管理することは,手間や費用の点で必ずしも容易ではない場合が多いと考えられる。そうであるからこそ,この種の業態が成り立つのであって,親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。さらに,被上告人が提供するサービスは,環境,条件等の整備にとどまり,利用者の支払う料金はこれに対するものにすぎないとみることにも,疑問がある。本件で提供されているのは,テレビ放送の受信,録画に特化したサービスであって,被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり,利用者もテレビ番組を録画,視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で,著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。もっとも,本件は,親機に対する管理,支配が認められれば,被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから,上記利益の帰属に関する評価が,結論を左右するわけではない。
3 原判決は,本件は前掲判例と事案を異にするとしている。そのこと自体は当然であるが,同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。原判断は,こうした総合的視点を欠くものであって,著作権法の合理的解釈とはいえないと考える。
◆判決本文
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2010.11.12
平成22(ネ)10046 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年11月10日 知的財産高等裁判所
いわゆる100均で廉価販売されたDVDについての著作権侵害について、原審の判断が一部変更されました。原審は著作権料相当額を8%とし、返品数を除いた販売数、さらに過失相殺がなされましたが、知財高裁は、5%、複製数から判断しました。
本件映像は,先に指摘したとおり,知人である控訴人の父親から控訴人の今後について相談を受けたBが,控訴人に対し,動画撮影を勧め,控訴人が海外に出掛ける際に,厚意で,オスカ企画所有の機材とDVテープを無償で貸し出したことを契機として,撮影されたものである。その上,BやAは,控訴人が動画撮影技術を習得するために,控訴人が撮影した映像について,アドバイスをしたり,控訴人が渡航する際,渡航費用を援助するなど(丙3),厚意で便宜を提供していたものである(なお,控訴人は,原審における本人尋問において,渡航費用に関しては,機材を借りる際など,いつも控訴人が補助参加人を訪問していたが,補助参加人から交通費をもらっておらず,それが積み重なっていたことを考慮して,小遣い程度としてBが支払ったものだと思うと供述するが,機材を無償で貸与する際の交通費についてまで,補助参加人が負担する格別の必要性は存しないものであり,控訴人のかかる供述は不自然である。)。また,本件映像は,控訴人の趣味の一環として撮影されたものであり,控訴人,補助参加人及びオスカ企画において,当初は商品として利用することは想定されておらず,控訴人も,機材を返却する際に映像を見たことがあったほかは,本件映像の説明書を作成するため,本件VHSテープの送付を依頼するまでは,本件映像を閲覧しておらず,かつ,本件DVD販売に係る紛争が発生するまで,本件DVテープの引渡しなどを一切請求していなかったものである。さらに,本件DVDに収録された映像のうち,ハワイの映像については,控訴人が撮影したものではない。以上からすると,補助参加人及びオスカ企画が関与して制作された本件DVDについて,販売枚数1枚当たりの控訴人が受けるべき著作権料相当額は,販売価格の5パーセントと認めるのが相当である。(エ) 被控訴人における本件DVDの販売枚数は6581枚であり,原判決は,かかる枚数について控訴人の損害を算定しているが,本件映像の複製権侵害は,納品された9984枚において生じているものであって,控訴人が受けるべき著作権料相当額は,9984枚について算定すべきである。(オ) したがって,本件映像の著作権の行使につき控訴人が受けるべき金銭の額に相当する額は,199万6800円であると認められる。(計算式)4000円×5パーセント×9984枚=199万6800円・・・以上のとおり,被控訴人による本件DVDの販売と相当因果関係がある控訴人の損害額は,合計329万6800円となる。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成20(ワ)36380平成22年04月21日東京地裁
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2010.10.14
平成22(ネ)10052 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年10月13日 知的財産高等裁判所
鑑定書に添付した絵画のコピーについて1審は侵害と判断しましたが、知財高裁は引用であり、非侵害と判断しました。
「そこで,前記見地から,本件各鑑定証書に本件各絵画を複製した本件各コピーを添付したことが著作権法32条にいう引用としての利用として許されるか否かについて検討すると,本件各鑑定証書は,そこに本件各コピーが添付されている本件各絵画が真作であることを証する鑑定書であって,本件各鑑定証書に本件各コピーを添付したのは,その鑑定対象である絵画を特定し,かつ,当該鑑定証書の偽造を防ぐためであるところ,そのためには,一般的にみても,鑑定対象である絵画のカラーコピーを添付することが確実であって,添付の必要性・有用性も認められることに加え,著作物の鑑定業務が適正に行われることは,贋作の存在を排除し,著作物の価値を高め,著作権者等の権利の保護を図ることにもつながるものであることなどを併せ考慮すると,著作物の鑑定のために当該著作物の複製を利用することは,著作権法の規定する引用の目的に含まれるといわなければならない。そして,本件各コピーは,いずれもホログラムシールを貼付した表\面の鑑定証書の裏面に添付され,表裏一体のものとしてパウチラミネート加工されており,本件各コピー部分のみが分離して利用に供されることは考え難いこと,本件各鑑定証書は,本件各絵画の所有者の直接又は間接の依頼に基づき1部ずつ作製されたものであり,本件絵画と所在を共にすることが想定されており,本件各絵画と別に流通することも考え難いことに照らすと,本件各鑑定証書の作製に際して,本件各絵画を複製した本件各コピーを添付することは,その方法ないし態様としてみても,社会通念上,合理的な範囲内にとどまるものということができる。しかも,以上の方法ないし態様であれば,本件各絵画の著作権を相続している被控訴人等の許諾なく本件各絵画を複製したカラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などとは異なり,被控訴人等が本件各絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われるなどということも考え難いのであって,以上を総合考慮すれば,控訴人が,本件各鑑定証書を作製するに際して,その裏面に本件各コピーを添付したことは,著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において,その鑑定に求められる公正な慣行に合致したものということができ,かつ,その引用の目的上でも,正当な範囲内のものであるということができるというべきである。
イ この点につき,被控訴人は,著作権法32条1項における引用として適法とされるためには,利用する側が著作物であることが必要であると主張するが,「自己ノ著作物中ニ正当ノ範囲内ニ於テ節録引用スルコト」を要件としていた旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項2号とは異なり,現著作権法(昭和45年法律第48号)32条1項は,引用者が自己の著作物中で他人の著作物を引用した場合を要件として規定していないだけでなく,報道,批評,研究等の目的で他人の著作物を引用する場合において,正当な範囲内で利用されるものである限り,社会的に意義のあるものとして保護するのが現著作権法の趣旨でもあると解されることに照らすと,同法32条1項における引用として適法とされるためには,利用者が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であることは要件でないと解されるべきものであって,本件各鑑定証書それ自体が著作物でないとしても,そのことから本件各鑑定証書に本件各コピーを添付してこれを利用したことが引用に当たるとした前記判断が妨げられるものではなく,被控訴人の主張を採用することはできない。
ウ なお,控訴人が本件各絵画の鑑定業務を行うこと自体は,何ら被控訴人の複製権を侵害するものではないから,本件各絵画の鑑定業務を行っている被控訴人がこれを独占できないことをもって,著作権者の正当な利益が害されたということができるものでないことはいうまでもない。
(3) 小括したがって,控訴人が本件各鑑定証書を作製するに際してこれに添付するため本件各コピーを作製したことは,これが本件各絵画の複製に当たるとしても,著作権法32条1項の規定する引用として許されるものであったといわなければならない。
◆判決本文
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2010.09.10
平成21(ネ)10078 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月08日 知的財産高等裁判所
動画投稿サイトの運営者が侵害主体として認定されました。1審と同様の判断です。
以上からすると,本件サービスにおいて,著作権を侵害する動画を本件サーバに投稿する行為を実際に行っているのは,ユーザであって,控訴人らではない。したがって,ユーザが本件サービスに投稿する動画の中に,本件管理著作物が利用されている場合には,ユーザが当該動画を本件サーバに投稿する行為は,ユーザによる本件管理著作物の複製権侵害に該当することはいうまでもないところである。しかしながら,先に指摘したとおり,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであって,控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配している主体であるところ,ユーザの投稿に対し,控訴人会社から対価が支払われるわけではなく,控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ているものである。しかるところ,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と,約5割に達しているものであり,このような著作権侵害の蓋然性は,動画投稿サイトの実態それ自体や控訴人会社によるアダルト動画の排除を通じて,控訴人会社において,当然に予\想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,控訴人会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採っていない。そうすると,控訴人会社は,ユーザによる複製行為により,本件サーバに蔵置する動画の中に,本件管理著作物の著作権を侵害するファイルが存在する場合には,これを速やかに削除するなどの措置を講じるべきであるにもかかわらず,先に指摘したとおり,本件サーバには,本件管理著作物の複製権を侵害する動画が極めて多数投稿されることを認識しながら,一部映画など,著作権者からの度重なる削除要請に応じた場合などを除き,削除することなく蔵置し,送信可能化することにより,ユーザによる閲覧の機会を提供し続けていたのである。しかも,そのような動画ファイルを蔵置し,これを送信可能\化して閲覧の機会を提供するのは,控訴人会社が本件サービスを運営して経済的利益を得るためのものであったこともまた明らかである。したがって,控訴人会社が,本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。よって,控訴人会社は,本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって,当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。また,本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上,公衆送信(送信可能\化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。以上からすると,本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて,控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして,控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能\化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成20(ワ)21902平成21年11月13日東京地裁
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2010.07.20
平成22(ネ)10017等 著作権侵害差止等反訴請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年07月14日 知的財産高等裁判所
神奈川県知事が著者である「破天荒力・・・」について、地裁は著作権侵害を認めましたが、高裁は逆転判断。
既に説示したとおり,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を著作物として保護するものである(著作権法2条1項1号)から,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表\\現上の創作性がない部分は,著作権法による保護が及ばない。すなわち,歴史的事実の発見やそれに基づく推論等のアイデアは,それらの発見やアイデア自体に独自性があっても,著作に当たってそれらを事実又は思想として選択することは,それ自体,著作権による保護の対象とはなり得ない。そのようにして選択された事実又は思想の配列は,それ自体としてひとつの表現を構\\成することがあり得るとしても,以上のとおり,原判決添付別紙対比表2記載の各被控訴人書籍記述部分の事実又は思想の選択及び配列自体には,いずれも表\\現上の格別な工夫があるとまでいうことはできないばかりか,上記各被控訴人書籍記述部分とこれに対応する各控訴人書籍記述部分とでは,事実又は思想の選択及び配列が異なっているのである。したがって,上記各控訴人書籍記述部分は,これに対応する各被控訴人書籍記述部分と単に記述されている事実又は思想が共通するにとどまるから,これについて各被控訴人書籍記述部分の複製又は翻案に当たるものと認めることができないことは明らかである。
◆判決本文
◆1審はこちら・東京地裁平成20(ワ)1586
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2010.05.31
平成21(ワ)12854 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月28日 東京地方裁判所
雑誌に掲載された患者の手記を病院のサイトに掲載したことが、複製権、公衆送信権侵害であるとして、約40万円の損害賠償が認定されました。引用であるとの主張も認められず。
被告は,本件転載について,著作権法32条1項の「引用」として適法なものである旨主張するが,同項所定の「引用」とは,報道,批評,研究等の目的で自己の著作物中に他人の著作物の全部又は一部を採録するものであって,引用を含む著作物の表現形式上,引用して利用する側の著作物と,引用されて利用される側の著作物を明瞭に区別して認識することができ,かつ,両著作物の間に前者が主,後者が従の関係があるものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和55年3月28日第三小法廷判決・民集34巻3号244頁)。そして,同項の立法趣旨は,新しい著作物を創作する上で,既存の著作物の表\\現を引用して利用しなければならない場合があることから,所定の要件を具備する引用行為に著作権の効力が及ばないものとすることにあると解されるから,利用する側に著作物性,創作性が認められない場合は「引用」に該当せず,同項の適用はないというべきである。(2) これを本件についてみると,・・・以下,数頁にわたって本件記事を掲載するという体裁になっているが,本件記事を除く部分は,いずれも短文の上,内容もおしなべて平凡なものであり,これらについて,被告の思想又は感情を創作的に表現したものとして,著作物性,創作性を認めることは困難である。仮に,これらの部分に著作物性,創作性が肯定される余地があるとしても,その分量,内容からして,引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物との間に,前者が主,後者が従の関係があるものと認めることはできない。したがって,本件転載が著作権法32条1項所定の「引用」として適法であるとすることはできない。\n
◆判決本文
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2010.05.29
平成22(ネ)10004 著作権侵害確認等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所
論文の著作権侵害について、原審は複製翻案権侵害と認定しましたが、知財高裁は該当箇所は創作性無しとしてこれを取り消しました。
第1論文の当該表記部分は,判断を含めた事実について,ごく普通の構\文を用いた英文で表記したものであって,全体として,個性的な表\現であるということはできず創作性はなく,また表現の本質的な特徴部分も認められないから,第2論文該当箇所は,第1論文該当箇所を複製したものということはできず,また翻案ということもできない。この点について,原告は,「Discussion」には,多数の書き方が存在するから,第1論文の当該表記部分は,創作性を有すると主張する。しかし,ある内容を表\現するに当たり,他の表現の選択が可能\であったとしても,そのことから,当然に,当該表記部分に創作性が生じると解すべきではなく,創作性を有するとするためには,表\現に個性が発揮されていることを要する。第1論文該当箇所は,いずれも,語句の選択,順序,配列を含めて格別の個性の発揮された表現であるということはできないから,原告の主張は理由がない。なお,第2論文は,第1論文と対比すると,表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通する部分が存在するが,「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容において相違すること,第2論文は,第1論文の全体記述及び個々の記述を総合勘案しても,第1論文の表現の本質的特徴を感得できるものではない点については,既に述べたとおりである。\n
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成18(ワ)2591平成21年11月27日東京地方裁判所
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2010.05.28
平成20(ワ)31609 損害賠償請求 著作権 民事訴訟 平成22年05月19日 東京地方裁判所
鑑定書につけたカラーコピーが複製があると認定されました。
本件において,前記認定事実によると,本件鑑定証書1及び2に貼付された本件絵画1及び2の縮小カラーコピーは,本件絵画1を約23%(約4分の1)の,本件絵画2を約16%(約6分の1)の各大きさに縮小したものであり,本件絵画1及び2そのものは提出されていないものの,これらの縮小カラーコピーにおいては,いずれも,画題である「花」が,油彩を画材として,上記構\図,色彩及び筆致等により描かれており,その大胆な構図や,単純化された花の表\現,鮮やかな色彩の対比や絵の具の塗り重ねによる重厚な印象等,本件絵画1及び2の作風が表れているところである。そうすると,本件鑑定証書1及び2に貼\付された本件絵画1及び2の縮小カラーコピーは,通常の注意力を有する者がこれを観た場合,画材,描かれた対象,構図,色彩,絵筆の筆致等により表\現される本件絵画1及び2の特徴的部分を感得するのに十分というべきである。したがって,本件鑑定証書1及び2に貼\付された本件絵画1及び2の縮小カラーコピーは,本件絵画1及び2の美術の著作物としての本質的な特徴的部分が再現されているというべきであり,当該縮小カラーコピーを作製した被告の行為は,本件絵画1及び2の複製に該当すると認めるのが相当である。
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2010.04.19
平成21(ワ)6604 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年03月30日 東京地方裁判所
写真の著作物について、許諾権の範囲を超えた貸与があったとして、貸与権侵害が認められました。「逆版」のデュープフィルムの作成についての同一性保持権侵害は否定されました。
著作者は,その著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有する(著作権法26条の3)。ここに「公衆」とは,同法2条5項が「公衆」には,「特定かつ多数の者を含むものとする。」と定めていることから,複製物の貸与を受ける者が,不特定又は特定多数の者であれば,公衆への貸与に該当するものと解される。上記事実によれば,アマナイメージズは被告の受託者として,第三者(三晃堂)に写真の使用を許諾したものであり,三晃堂は,広く一般に写真の貸出業を行う写真エージェンシーであるアマナイメージズにとって,不特定の者に該当すると認められる(アマナイメージズが,本件写真の使用許諾先を三晃堂(特定の者)に限定していたとの事実は認められない。)。そして,アマナイメージズにとって,三晃堂は不特定の者に該当するのであるから,アマナイメージズに対して,本件写真の使用許諾行為を委託した被告にとっても,三晃堂は不特定の者に該当すると認めるのが相当である。したがって,被告が,アマナイメージズに委託して,本件写真を第三者に貸し出した行為は,本件写真に係る原告の著作権(貸与権)の侵害に当たる。・・・(1)原告は,被告が本件写真について「逆版」のデュープフィルムを作成したとして,被告の上記行為が本件写真に係る原告の著作者人格権(同一性保持権)の侵害に当たる旨主張する。・・・本件委託契約(乙1)においては,写真のデュープ方法を特に指定したり,制限したりする約定はなかったことが認められる。以上の事実によれば,原被告間において,本件委託契約上,デュープフィルムの作成方法として,オリジナルフィルムとデュープフィルムの乳剤面同士を密着させてデュープする方法を採ることが制限されていたと解することはできず,被告が本件写真のデュープフィルムを上記の方法により作成したことは,本件委託契約に基づき原告から許諾された範囲内の行為であったと認めるのが相当である。また,そもそも,被告の作成したデュープフィルムによっても,像が左右正向きとなるようにプリントすること(本件写真で言えば,甲4の状態)も,左右逆向きとなるようにプリントすること(本件写真で言えば,甲5の状態)も問題なくできるのであるから,オリジナルフィルムとはベース面と乳剤面とが逆となり,ノッチコードの位置が逆となるデュープフィルムを作成しただけでは,本件写真に改変を加えた(像を左右逆とする改変を加えた)ということはできない。
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2010.04.12
平成18(ワ)5689等 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年03月31日 東京地方裁判所
プログラムの著作権・商標権侵害が認められました。あと、国際裁判管轄が争われてます。
原告コンセプトは,第2事件について,ソースコードライセンス契約(乙5の1,2)5.4条の定めを根拠として,我が国に国際裁判管轄が認められないと主張し,訴えの却下を求めている。原告アシュラは,この主張に対し,時機に後れた防御方法であり,民事訴訟法157条1項により却下されるべきである旨の申立てをするが,国際裁判管轄の有無は裁判所が職権で調査すべき事項であるから,その主張が時機に後れたことを理由として,これを却下することはできない。そこで,第2事件について我が国の国際裁判管轄を検討する。第2事件は,前記第2の1(2)のとおり,原告アシュラが,原告コンセプトに対し,プログラム著作権及び商標権に基づき,原告コンセプトが販売する製品,マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害賠償又は不当利得返還を求める事案である。原告アシュラとファモティクとの間に締結されたソースコードライセンス契約(乙5の1,2)5.4条には「この契約に基づくいかなる訴訟も,カリフォルニア州の連邦又は州裁判所に起こされるものとし,ライセンシーは,この契約により対人裁判管轄権に服する。」旨の規定があるが,同契約の当事者は原告アシュラとファモティクであるから,上記規定は,原告アシュラがファモティクに対し,又はファモティクが原告アシュラに対し,同契約上の紛争に基づく訴訟を提起する場合の裁判管轄について合意したものであって,契約当事者以外の第三者との間に係属すべき訴訟の管轄について定めたものであるとは解されない。そして,同契約5.8条によれば,ファモティクは,原告アシュラの書面による事前同意なしに同契約上の地位を譲渡することができないものとされているから,原告コンセプトが同契約上のライセンシーとしての地位をファモティクから適法に譲り受けたものということはできず,原告コンセプトとファモティクを同視することはできない以上,上記5.4条の規定を理由として,第2事件について我が国の国際裁判管轄が否定されるということはできない。ところで,国際裁判管轄については,これを直接規定する法規もなく,また,よるべき条約も,一般に承認された明確な国際法上の原則も,いまだ確立していないのが現状であるから,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により,条理に従って決定するのが相当である(最高裁昭和56年10月16日第二小法廷判決・民集35巻7号1224頁参照)。そして,我が国の民事訴訟法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成9年11月11日第三小法廷判決・民集51巻10号4055頁参照)。これを第2事件についてみると,同事件は,外国法人である原告アシュラが進んで我が国の裁判権に服するとして我が国の裁判所に提起した訴訟であるところ,他方,被告である原告コンセプトは東京都千代田区を本店の所在地とする日本法人であるから,我が国に普通裁判籍(民事訴訟法4条4項)があるが,我が国の国際裁判管轄を否定すべき上記特段の事情があるとは認められない。したがって,第2事件に係る訴えについては,我が国に国際裁判管轄を認めるのが相当であり,原告コンセプトの上記本案前の主張は理由がない。
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2010.02. 3
平成20(ワ)1586 著作権侵害差止等請求反訴事件 著作権 民事訴訟
ノンフィクション書籍について、一部複製が認められました。
原告書籍のように,歴史的事実を素材として叙述されたノンフィクション作品においては,基礎資料からどのような歴史的事実を取捨選択し,その歴史的事実をどのように評価し,どのような視点から,どのような筋の運び,ストーリー展開,言い回し,語句等を用いて具体的に叙述したかといった点に筆者の個性が現れるものといえるが,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を保護するものであり(同法2条1項1号参照),思想,感情又はアイデア,事実又は事件など表\現それ自体でないものや,表現であっても,表\現上の創作性がない部分は保護の対象とするものではないから,ノンフィクション作品においても,叙述された表現のうち,表\現上の創作性を有する部分のみが著作権法の保護の対象となるものであり,素材である歴史的事実そのものや特定の歴史的事実を取捨選択したことそれ自体には著作権法の保護が及ぶものではないものと解される。そして,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照),また,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解されるから(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照),被告書籍記述部分がこれに対応する原告書籍記述部分の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,被告書籍記述部分において,原告書籍記述部分における創作的表現を再製したかどうか,あるいは,原告書籍記述部分の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。そこで,以下においては,上記のような観点から,別紙対比表1ないし3,仙之助及び正造を主人公とした章全体の各原告書籍記述部分と各被告書籍記述部分を対比し,後者が前者の複製又は翻案に当たるか否かについて順次判断する。・・・・・・・・の記述に引き続いて,孝子は正造と離婚した後スコットランド人実業家と再婚したのに対し,正造は再婚することがなかった事実を指摘し,「正造が結婚したのは,最初から孝子というより富士屋ホテルだったのかもしれない。」と述べている記述である。そして,原告書籍記述部分は,上記のエピソ\ードを経て,婿であった正造が孝子と離婚後も富士屋ホテルにとどまり,生涯再婚することなく,富士屋ホテルの経営に精力を注いだ事実について,「富士屋ホテル」を正造の結婚相手に喩えて,正造が「結婚した」のは「富士屋ホテルだったのかもしれない」と表現した点において,筆者の個性が現れており,創作性が認められる。この点について被告らは,「〜と結婚したようなもの」という表\現は,何かに一心不乱に打ち込む状態を表すありきたりな言い回しにすぎないから,原告書籍記述部分は,原告による個性的表\現とはいえない旨主張する。しかしながら,原告書籍記述部分のように短い文章の表現の創作性の有無を判断するに当たっては,当該記述部分の前後の記述をも踏まえて,当該記述部分がいかなる脈絡の下で,どのような内容を表\現しようとしたものかをも勘案して総合的に判断すべきであり,また,語句や言い回しそのものはよく用いられるものであっても,ある思想又は感情を表現をしようとする場合に多様な具体的表\現が可能な中で,特に当該語句や言い回しを選んで用い,当該語句や言い回しを含む表\現がありふれたものといえない場合には,表現上の創作性を有するというべきである。\n
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2010.01. 4
平成18(ワ)2591 著作権侵害確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月27日 東京地方裁判所
論文について複製権侵害、翻案権侵害が争われました。裁判所は、複製権侵害であると認定しました。
以上によれば,第1論文は,原告が,被告が作成した原稿について,原稿への書き込み及び口頭により,英語表現の訂正,付加や,記載の順序,内容等について指示をし,その指示を受けた被告が原稿の修文をしたり,新たに作成した文章を書き入れて,完成するに至ったものであって,第1論文は,原告と被告が共同で創作し,原告と被告の寄与を分離して個別的に利用することができないものというべきであるから,第1論文は原告と被告の共同著作物(著作権法2条1項12号)であると認められる。したがって,原告は,第1論文の共同著作者である。・・・・以上によれば,被告は,第1論文に依拠し,第1論文の「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)について,その創作的表\現を有形的に再製して第2論文を作成したものであるから,被告による第2論文の作成は,上記の限度において複製に当たるものと認められる。そして,被告は,第1論文の共同著作者である原告の同意を得ずに,第2論文を作成しているから,被告による第2論文の作成は,原告の第1論文の一部についての複製権の侵害に当たる。・・・・・原告は,第2論文は,第1論文に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,「Results」及び「Conclusion」の章のみを書き替えたものであり,両論文の読者は,その余の部分についての酷似を容易に感得できるから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものである旨主張する。ところで,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,第2論文において第1論文の創作的表現が有形的に再製されている部分は,「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)であって,しかも,両論文の「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容が異なり,その表現において類似する箇所は存しないことに照らすならば,上記部分から第1論文全体の表\現上の本質的特徴な特徴を直接感得することができるものではないから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものと認めることはできない。
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2009.12. 8
平成21(ワ)31480 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月26日 東京地方裁判所
ネットオークションの為に、出品作品の画像を掲載した冊子の発行が著作権侵害かが争われました。平成22年からは一部除外規定はあるものの、引用、展示に伴う複製、時事の報道、権利濫用の主張を全て否定し、著作権侵害と認めました。
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2009.01.29
◆平成20(ネ)10055 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所
海外でのテレビ視聴を可能とする装置の販売および管理について、知財高裁は従来の考え方を否定して、業者が複製主体であるとはいえないと判断し、地裁判決を破棄しました。
「利用者が親子ロクラクを設置・管理し,これを利用して我が国内のテレビ放送を受信・録画し,これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為であることは異論の余地のないところであり,かかる適法行為を基本的な視点としながら,被控訴人らの前記主張を検討してきた結果,前記認定判断のとおり,本件サービスにおける録画行為の実施主体は,利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず,控訴人が提供する本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境,条件等を提供しているにすぎないものというべきである。かつて,デジタル技術は今日のように発達しておらず,インターネットが普及していない環境下においては,テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後,これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが,当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。しかしながら,我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し,国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中,デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して,海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。そして,技術の飛躍的進展に伴い,新たな商品開発やサービスが創生され,より利便性の高い製品が需用者の間に普及し,家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。本件サービスにおいても,利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから,かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく,もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない。したがって,本件サービスにおいて,著作権法上の規律の観点から,利用者による本件複製をもって,これを控訴人による複製と同視することはできず,その他,控訴人が本件複製を行っているものと認めるに足りる事実の立証はない。なお,クラブキャッツアイ事件最高裁判決は,スナック及びカフェを経営する者らが,当該スナック等において,カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き,ホステス等の従業員において,カラオケ装置を操作し,客に対して曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め,客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ,また,しばしば,ホステス等にも,客とともに又は単独で歌唱させ,もって,店の雰囲気作りをし,客の来集を図って利益を上げることを意図していたとの事実関係を前提に,演奏(歌唱)の形態による音楽著作物の利用主体を当該スナック等を経営する者らと認めたものであり,本件サービスについてこれまで認定説示してきたところに照らすならば,上記判例は本件と事案を異にすることは明らかである。」
原審・仮処分はこちらです
◆平成19(ワ)17279号
◆平成18(ヨ)22046号
◆平成20(ネ)10055 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所
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2008.10. 1
◆平成20(ネ)10031 損害賠償請求 著作権民事訴訟 平成20年09月30日 知的財産高等裁判所
土地宝典を各法務局に備え置いて利用者に貸し出すとともに,各法務局内にコインコピー機を設置し,当該コインコピー機を用いた利用者による無断複製行為を放置していたことを理由に、約600万の損害賠償等を認めた1審判決を破棄し、計約200万の損害賠償等を認めました。
「当裁判所は,?@被告は,不特定多数の第三者(各法務局内に設置されたコインコピー機を用いて,本件土地宝典を無断複製した者)による本件土地宝典の複製権侵害行為を幇助したものであって,共同不法行為者とみなされる(民法719条2項)から,原告らに対し,不法行為による使用料相当額の損害及び弁護士費用(合計132万円(原告株式会社富士不動産鑑定事務所に対し106万1500円,原告Y1に対し19万8000円,原告Y2に対し6万500円))を賠償すべき責任を負うが,?A被告は,本件土地宝典の複製権侵害行為を幇助したことにより,民法703条所定の利益を受けたとは認められないものと判断する」
原審はこちらです
◆平成17(ワ)16218 損害賠償請求事件 平成20年01月31日 東京地方裁判所
◆平成20(ネ)10031 損害賠償請求 著作権民事訴訟 平成20年09月30日 知的財産高等裁判所
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2007.06.22
◆平成17(ネ)3258等 著作権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件,反訴請求事件 著作権民事訴訟 平成19年06月14日 大阪高等裁判所
マンション内にサーバ設置し、ユーザの指示によってテレビ番組を録画しておきユーザからリクエストがあるとこれを配信する装置が著作隣接権侵害となるかが争われた選撮見録事件の控訴審判決です。
「控訴人商品においては販売の形式が採られており,控訴人自身は直接に物理的な複写等の行為を行うものではないが,控訴人商品における著作権,著作隣接権の侵害は,控訴人が敢えて採用した(乙21)放送番組に係る単一のファイルを複数の入居者が使用するという控訴人商品の構成自体に由来するものであり,そのことは使用者には知りようもないことがらであり,使用者の複製等についての関与も著しく乏しいから,その意味で,控訴人は,控訴人商品の販売後も,使用者による複製等(著作権,著作隣接権の侵害)の過程を技術的に決定・支配しているものということができる。のみならず,控訴人商品の安定的な運用のためには,その販売後も,固定IPアドレスを用いてのリモーコントロールによる保守管理が必要であると推認される上,控訴人は,控訴人商品の実用的な使用のために必要となるEPGを継続的に供給するなどにより,使用者による違法な複製行為等の維持・継続に関与し,これによって利益を受けているものであるから,自らコントロール可能\な行為により侵害の結果を招いている者として,規範的な意味において,独立して著作権,著作隣接権の侵害主体となると認めるのが相当である。」
原審は、
こちら(H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488)です。
◆平成17(ネ)3258等 著作権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件,反訴請求事件 著作権民事訴訟 平成19年06月14日 大阪高等裁判所
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2007.05.29
◆平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年05月25日 東京地方裁判所
ユーザが所有しているCDを携帯電話用のデータに変換してから、ユーザがサーバにアップすると、これを記憶しておき、当該ユーザがダウンロードするサービス(MYUTA)を行っている業者について、録音および公衆送信の主体が業者であると認定されました。
「本件サービスのいわば入口と出口だけを捉えれば,ユーザのパソコンとユーザの携帯電話という1対1の対応関係といえなくはないが,説明図?Cすなわち本件サーバにおいて音源ファイルが複製されていることに変わりはなく,しかも,本件サーバへの3G2ファイルの蔵置による複製は,本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられる。そして,前記(1)エのとおり,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,複製に係る蔵置のための操作の端緒となる関与をユーザが行い,原告が任意に随時行うものではないが,この蔵置による複製行為そのものは,専ら,原告の管理下において行われている。すなわち,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,ユーザがどの楽曲データをアップロードするかを決定して操作するものではあるが,複製の過程はすべて原告が所有し管理する本件サーバにおいて,原告が設計管理するシステムの上で,かつ,原告がユーザに要求する認証手続を経た上でされるものであって,原告の全面的な関与の下にされるものである。そうすると,この過程において,ユーザは複製のための操作の端緒となる関与をしたに留まるものというべきであり,上記の複製行為は,前記(1)カのとおり,それ自体,原告の行為としてとらえるのが相当である・・・本件サーバから音源データを送信しているのは,前記(1)のとおり,本件サーバを所有し管理している原告である。そして,公衆送信とは,公衆によって直接受信されることを目的とする(著作権法2条1項7号の2)から,送信を行う者にとって,当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者であれば,公衆に対する送信に当たることになる。そして,送信を行う原告にとって,本件サービスを利用するユーザが公衆に当たることは,前記(2)のとおりである。なお,本件サーバに蔵置した音源データのファイルには当該ユーザしかアクセスできないとしても,それ自体,メールアドレス,パスワード等や,アクセスキー,サブスクライバーID(加入者ID)による識別の結果,ユーザのパソコン,本件サーバのストレージ領域,ユーザの携帯電話が紐付けされ,他の機器からの接続が許可されないように原告が作成した本件サービスのシステム設計の結果であって,送信の主体が原告であり,受信するのが不特定の者であることに変わりはない。」
◆平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年05月25日 東京地方裁判所
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2005.10.26
◆H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488 著作権 民事訴訟事件
マンション内にサーバ設置し、ユーザの指示によってテレビ番組を録画しておきユーザからリクエストがあるとこれを配信する装置が著作隣接権侵害であるとして当該装置の販売差し止めが認められました。
裁判所は、複製権侵害および公衆送信権侵害の予防のために被告の商品の販売行為の差止めを請求することができると判断しました。
「被告商品の販売は、これが行われることによって、その後、ほぼ必然的に原告らの著作隣接権の侵害が生じ、これを回避することが、裁判等によりその侵害行為を直接差し止めることを除けば、社会通念上不可能であり、?A裁判等によりその侵害行為を直接差し止めようとしても、侵害が行われようとしている場所や相手方を知ることが非常に困難なため、完全な侵害の排除及び予防は事実上難しく、?B他方、被告において被告商品の販売を止めることは、実現が容易であり、?C差止めによる不利益は、被告が被告商品の販売利益を失うことに止まるが、被告商品の使用は原告らの放送事業者の複製権及び送信可能化権の侵害を伴うものであるから、その販売は保護すべき利益に乏しい。このような場合には、侵害行為の差止め請求との関係では、被告商品の販売行為を直接の侵害行為と同視し、その行為者を「著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」と同視することができるから、著作権法112条1項を類推して、その者に対し、その行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である」
◆H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488 著作権 民事訴訟事件
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2005.10.12
◆H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件
新聞記事の見出しが著作物かどうか、著作物でないとしても不法行為として損害賠償が認められるかが争われました。
知財高裁は、著作物でないとしても、不法行為として損害賠償が認められると判断しました。
著作物性については、「上記365個のYOL見出しは,その性質上,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところである上,個別にみても,・・いずれも事実関係を客観的にありふれた表\現で構成したものであり,見出しに対応するYOL記事本文との関係をも考慮しつつ検討するとしても,これらのYOL見出しの表\現に創作性があるとは到底いえない。」と判断しました。
一方、「とりわけ,本件YOL見出しは,控訴人の多大の労力,費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること,著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの,相応の苦労・工夫により作成されたものであって,簡潔な表現により,それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること,YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば,YOL見出しは,法的保護に値する利益となり得るものというべきである。」と不法行為であることを認めました。
原審です。
H16. 3.24 東京地裁 平成14(ワ)28035 著作権 民事訴訟事件
◆H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件
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2005.05.25
◆H17. 5.17 東京地裁 平成15(ワ)12551等 著作権 民事訴訟事件
法律問題の解説書の記述を模倣することが、複製等に該当するのかが争われました。
裁判所は、「手続の流れや法令の内容等を法令の規定に従って図示することはアイデアであり,一定の工夫が必要ではあるが,これを独自の観点から分類し整理要約したなどの個性的表現がされている場合は格別,法令の内容に従って整理したにすぎない図表\については,誰が作成しても同じような表現にならざるを得ない。よって,図表\において同一性を有する部分が単に法令の内容を整理したにすぎないものである場合にも,思想又は感情を創作的に表現した部分において同一性を有するとはいえないから,複製にも翻案にも当たらないと解すべきである。そのように解さなければ,ある者が手続の流れ等を図示した後は,他の者が同じ手続の流れ等を法令の規定に従って図示すること自体を禁じることになりかねないからである。」と、複製にも翻案にも当たらないと判断しました。
◆H17. 5.17 東京地裁 平成15(ワ)12551等 著作権 民事訴訟事件
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2004.12.29
◆H16.12.24 東京地裁 平成15(ワ)25535 著作権 民事訴訟事件
大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」が、映画「七人の侍」の翻案権及び著作者人格権等を侵害しているかが争われました。
裁判所は、「原告脚本と被告脚本とを対比すると,前記のとおりいくつかの場面において一定の共通点が認められるが,共通する部分はアイデアの段階にとどまるものであり,登場人物の人物設定についても類似するものとは認められない。また,原告脚本と被告脚本との間には,ストーリー全体の展開やテーマにおいて相違があり,結局,原告脚本の表現上の本質的な特徴を被告脚本から感得することはできないから,被告脚本による原告脚本についての著作権(翻案権)及び亡黒澤の著作者人格権(氏名表\示権及び同一性保持権)の侵害は認められない。」と判断しました。
◆H16.12.24 東京地裁 平成15(ワ)25535 著作権 民事訴訟事件
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2003.04. 9
◆H15. 3.28 東京地裁 平成11(ワ)5265 著作権 民事訴訟事件
主な争点として、教科書に掲載された著作物を試験問題に採用した行為が、「引用」または「試験問題」としての複製に該当するのかが争われました。
裁判所は、かかる主張を認めず、著作権侵害を認定しました。
◆H15. 3.28 東京地裁 平成11(ワ)5265 著作権 民事訴訟事件
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2003.02.28
◆H15. 2.26 東京地裁 平成13(ワ)20223 著作権 民事訴訟事件
争点の1つは、設計図の著作物性です。
裁判所は、「設計者が自由に選択できる事項としては,「各部屋及び通路の具体的形状」及び「全体の配置」などに限られていたこと,?A原告設計図における表現方法は,極く一般の設計図において用いられる平面的な表\現方法であって,表現方法における格別の個性の発揮はないこと,?B本件事務所を,南側壁面に沿った3つのエリアと,西側壁面に沿った細長いエリアに分けるという発想は,正にアイディアそのものであって,この点が著作権法上の保護の対象となり得る表現とはいえないこと等の点を総合考慮すると,原告設計図において,創作性のある部分は,FTJ,日本研究所及びエトラリの各専用部分や各部屋及び通路等の具体的な形状及び具体的な配置の組合せにあるということができる。・・・原告設計図は,著作権法上の保護の対象となる著作物といえるが,その創作性のある部分は上記の点に限られるというべきである」と著作物性は認めましたが、著作物性のない部分の複製であるとして、著作権侵害を否定しました。
◆H15. 2.26 東京地裁 平成13(ワ)20223 著作権 民事訴訟事件
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2003.02. 3
◆ H15. 1.29 東京地裁 平成14(ワ)4249 著作権 民事訴訟事件
日本エム・エム・オーが運営する電子ファイル交換サービスについての中間判決です。
裁判所は、「被告らは,原告らに対して,上記電子ファイル交換サービスにおいて,上記各レコードをMP3形式で複製した電子ファイルが交換されたことについて,連帯して損害賠償金を支払う義務を負う」と判断しました。
原告がJASRACの事件が、
◆H15. 1.29 東京地裁 平成14(ワ)4237 著作権 民事訴訟事件 です。
◆ H15. 1.29 東京地裁 平成14(ワ)4249 著作権 民事訴訟事件
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2003.02. 3
◆H15. 1.31 東京地裁 平成13(ワ)17306 著作権 民事訴訟事件
プログラムの著作物について、複製ないし翻案したか否かが争われました。裁判所は、判決理由にて、「原告プログラムの創作性を有する本質的な特徴部分を直接感得することもできない」と翻案に対する判断基準に言及しました。
◆H15. 1.31 東京地裁 平成13(ワ)17306 著作権 民事訴訟事件
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