マンション内にサーバ設置し、ユーザの指示によってテレビ番組を録画しておきユーザからリクエストがあるとこれを配信する装置が著作隣接権侵害であるとして当該装置の販売差し止めが認められました。
裁判所は、複製権侵害および公衆送信権侵害の予防のために被告の商品の販売行為の差止めを請求することができると判断しました。
「被告商品の販売は、これが行われることによって、その後、ほぼ必然的に原告らの著作隣接権の侵害が生じ、これを回避することが、裁判等によりその侵害行為を直接差し止めることを除けば、社会通念上不可能であり、?A裁判等によりその侵害行為を直接差し止めようとしても、侵害が行われようとしている場所や相手方を知ることが非常に困難なため、完全な侵害の排除及び予防は事実上難しく、?B他方、被告において被告商品の販売を止めることは、実現が容易であり、?C差止めによる不利益は、被告が被告商品の販売利益を失うことに止まるが、被告商品の使用は原告らの放送事業者の複製権及び送信可能化権の侵害を伴うものであるから、その販売は保護すべき利益に乏しい。このような場合には、侵害行為の差止め請求との関係では、被告商品の販売行為を直接の侵害行為と同視し、その行為者を「著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」と同視することができるから、著作権法112条1項を類推して、その者に対し、その行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である」
◆H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488 著作権 民事訴訟事件
新聞記事の見出しが著作物かどうか、著作物でないとしても不法行為として損害賠償が認められるかが争われました。
知財高裁は、著作物でないとしても、不法行為として損害賠償が認められると判断しました。
著作物性については、「上記365個のYOL見出しは,その性質上,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところである上,個別にみても,・・いずれも事実関係を客観的にありふれた表\現で構成したものであり,見出しに対応するYOL記事本文との関係をも考慮しつつ検討するとしても,これらのYOL見出しの表\現に創作性があるとは到底いえない。」と判断しました。
一方、「とりわけ,本件YOL見出しは,控訴人の多大の労力,費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること,著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの,相応の苦労・工夫により作成されたものであって,簡潔な表現により,それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること,YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば,YOL見出しは,法的保護に値する利益となり得るものというべきである。」と不法行為であることを認めました。
原審です。
H16. 3.24 東京地裁 平成14(ワ)28035 著作権 民事訴訟事件
◆H17.10. 6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件
法律問題の解説書の記述を模倣することが、複製等に該当するのかが争われました。
裁判所は、「手続の流れや法令の内容等を法令の規定に従って図示することはアイデアであり,一定の工夫が必要ではあるが,これを独自の観点から分類し整理要約したなどの個性的表現がされている場合は格別,法令の内容に従って整理したにすぎない図表\については,誰が作成しても同じような表現にならざるを得ない。よって,図表\において同一性を有する部分が単に法令の内容を整理したにすぎないものである場合にも,思想又は感情を創作的に表現した部分において同一性を有するとはいえないから,複製にも翻案にも当たらないと解すべきである。そのように解さなければ,ある者が手続の流れ等を図示した後は,他の者が同じ手続の流れ等を法令の規定に従って図示すること自体を禁じることになりかねないからである。」と、複製にも翻案にも当たらないと判断しました。
◆H17. 5.17 東京地裁 平成15(ワ)12551等 著作権 民事訴訟事件