マンション内にサーバ設置し、ユーザの指示によってテレビ番組を録画しておきユーザからリクエストがあるとこれを配信する装置が著作隣接権侵害となるかが争われた選撮見録事件の控訴審判決です。
「控訴人商品においては販売の形式が採られており,控訴人自身は直接に物理的な複写等の行為を行うものではないが,控訴人商品における著作権,著作隣接権の侵害は,控訴人が敢えて採用した(乙21)放送番組に係る単一のファイルを複数の入居者が使用するという控訴人商品の構成自体に由来するものであり,そのことは使用者には知りようもないことがらであり,使用者の複製等についての関与も著しく乏しいから,その意味で,控訴人は,控訴人商品の販売後も,使用者による複製等(著作権,著作隣接権の侵害)の過程を技術的に決定・支配しているものということができる。のみならず,控訴人商品の安定的な運用のためには,その販売後も,固定IPアドレスを用いてのリモーコントロールによる保守管理が必要であると推認される上,控訴人は,控訴人商品の実用的な使用のために必要となるEPGを継続的に供給するなどにより,使用者による違法な複製行為等の維持・継続に関与し,これによって利益を受けているものであるから,自らコントロール可能\な行為により侵害の結果を招いている者として,規範的な意味において,独立して著作権,著作隣接権の侵害主体となると認めるのが相当である。」
原審は、
こちら(H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488)です。
◆平成17(ネ)3258等 著作権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件,反訴請求事件 著作権民事訴訟 平成19年06月14日 大阪高等裁判所
ユーザが所有しているCDを携帯電話用のデータに変換してから、ユーザがサーバにアップすると、これを記憶しておき、当該ユーザがダウンロードするサービス(MYUTA)を行っている業者について、録音および公衆送信の主体が業者であると認定されました。
「本件サービスのいわば入口と出口だけを捉えれば,ユーザのパソコンとユーザの携帯電話という1対1の対応関係といえなくはないが,説明図?Cすなわち本件サーバにおいて音源ファイルが複製されていることに変わりはなく,しかも,本件サーバへの3G2ファイルの蔵置による複製は,本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられる。そして,前記(1)エのとおり,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,複製に係る蔵置のための操作の端緒となる関与をユーザが行い,原告が任意に随時行うものではないが,この蔵置による複製行為そのものは,専ら,原告の管理下において行われている。すなわち,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,ユーザがどの楽曲データをアップロードするかを決定して操作するものではあるが,複製の過程はすべて原告が所有し管理する本件サーバにおいて,原告が設計管理するシステムの上で,かつ,原告がユーザに要求する認証手続を経た上でされるものであって,原告の全面的な関与の下にされるものである。そうすると,この過程において,ユーザは複製のための操作の端緒となる関与をしたに留まるものというべきであり,上記の複製行為は,前記(1)カのとおり,それ自体,原告の行為としてとらえるのが相当である・・・本件サーバから音源データを送信しているのは,前記(1)のとおり,本件サーバを所有し管理している原告である。そして,公衆送信とは,公衆によって直接受信されることを目的とする(著作権法2条1項7号の2)から,送信を行う者にとって,当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者であれば,公衆に対する送信に当たることになる。そして,送信を行う原告にとって,本件サービスを利用するユーザが公衆に当たることは,前記(2)のとおりである。なお,本件サーバに蔵置した音源データのファイルには当該ユーザしかアクセスできないとしても,それ自体,メールアドレス,パスワード等や,アクセスキー,サブスクライバーID(加入者ID)による識別の結果,ユーザのパソコン,本件サーバのストレージ領域,ユーザの携帯電話が紐付けされ,他の機器からの接続が許可されないように原告が作成した本件サービスのシステム設計の結果であって,送信の主体が原告であり,受信するのが不特定の者であることに変わりはない。」
◆平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年05月25日 東京地方裁判所