2010.11.12
平成22(ネ)10046 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年11月10日 知的財産高等裁判所
いわゆる100均で廉価販売されたDVDについての著作権侵害について、原審の判断が一部変更されました。原審は著作権料相当額を8%とし、返品数を除いた販売数、さらに過失相殺がなされましたが、知財高裁は、5%、複製数から判断しました。
本件映像は,先に指摘したとおり,知人である控訴人の父親から控訴人の今後について相談を受けたBが,控訴人に対し,動画撮影を勧め,控訴人が海外に出掛ける際に,厚意で,オスカ企画所有の機材とDVテープを無償で貸し出したことを契機として,撮影されたものである。その上,BやAは,控訴人が動画撮影技術を習得するために,控訴人が撮影した映像について,アドバイスをしたり,控訴人が渡航する際,渡航費用を援助するなど(丙3),厚意で便宜を提供していたものである(なお,控訴人は,原審における本人尋問において,渡航費用に関しては,機材を借りる際など,いつも控訴人が補助参加人を訪問していたが,補助参加人から交通費をもらっておらず,それが積み重なっていたことを考慮して,小遣い程度としてBが支払ったものだと思うと供述するが,機材を無償で貸与する際の交通費についてまで,補助参加人が負担する格別の必要性は存しないものであり,控訴人のかかる供述は不自然である。)。また,本件映像は,控訴人の趣味の一環として撮影されたものであり,控訴人,補助参加人及びオスカ企画において,当初は商品として利用することは想定されておらず,控訴人も,機材を返却する際に映像を見たことがあったほかは,本件映像の説明書を作成するため,本件VHSテープの送付を依頼するまでは,本件映像を閲覧しておらず,かつ,本件DVD販売に係る紛争が発生するまで,本件DVテープの引渡しなどを一切請求していなかったものである。さらに,本件DVDに収録された映像のうち,ハワイの映像については,控訴人が撮影したものではない。以上からすると,補助参加人及びオスカ企画が関与して制作された本件DVDについて,販売枚数1枚当たりの控訴人が受けるべき著作権料相当額は,販売価格の5パーセントと認めるのが相当である。(エ) 被控訴人における本件DVDの販売枚数は6581枚であり,原判決は,かかる枚数について控訴人の損害を算定しているが,本件映像の複製権侵害は,納品された9984枚において生じているものであって,控訴人が受けるべき著作権料相当額は,9984枚について算定すべきである。(オ) したがって,本件映像の著作権の行使につき控訴人が受けるべき金銭の額に相当する額は,199万6800円であると認められる。(計算式)4000円×5パーセント×9984枚=199万6800円・・・以上のとおり,被控訴人による本件DVDの販売と相当因果関係がある控訴人の損害額は,合計329万6800円となる。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成20(ワ)36380平成22年04月21日東京地裁
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2010.10.14
平成22(ネ)10052 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年10月13日 知的財産高等裁判所
鑑定書に添付した絵画のコピーについて1審は侵害と判断しましたが、知財高裁は引用であり、非侵害と判断しました。
「そこで,前記見地から,本件各鑑定証書に本件各絵画を複製した本件各コピーを添付したことが著作権法32条にいう引用としての利用として許されるか否かについて検討すると,本件各鑑定証書は,そこに本件各コピーが添付されている本件各絵画が真作であることを証する鑑定書であって,本件各鑑定証書に本件各コピーを添付したのは,その鑑定対象である絵画を特定し,かつ,当該鑑定証書の偽造を防ぐためであるところ,そのためには,一般的にみても,鑑定対象である絵画のカラーコピーを添付することが確実であって,添付の必要性・有用性も認められることに加え,著作物の鑑定業務が適正に行われることは,贋作の存在を排除し,著作物の価値を高め,著作権者等の権利の保護を図ることにもつながるものであることなどを併せ考慮すると,著作物の鑑定のために当該著作物の複製を利用することは,著作権法の規定する引用の目的に含まれるといわなければならない。そして,本件各コピーは,いずれもホログラムシールを貼付した表\面の鑑定証書の裏面に添付され,表裏一体のものとしてパウチラミネート加工されており,本件各コピー部分のみが分離して利用に供されることは考え難いこと,本件各鑑定証書は,本件各絵画の所有者の直接又は間接の依頼に基づき1部ずつ作製されたものであり,本件絵画と所在を共にすることが想定されており,本件各絵画と別に流通することも考え難いことに照らすと,本件各鑑定証書の作製に際して,本件各絵画を複製した本件各コピーを添付することは,その方法ないし態様としてみても,社会通念上,合理的な範囲内にとどまるものということができる。しかも,以上の方法ないし態様であれば,本件各絵画の著作権を相続している被控訴人等の許諾なく本件各絵画を複製したカラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などとは異なり,被控訴人等が本件各絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われるなどということも考え難いのであって,以上を総合考慮すれば,控訴人が,本件各鑑定証書を作製するに際して,その裏面に本件各コピーを添付したことは,著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において,その鑑定に求められる公正な慣行に合致したものということができ,かつ,その引用の目的上でも,正当な範囲内のものであるということができるというべきである。
イ この点につき,被控訴人は,著作権法32条1項における引用として適法とされるためには,利用する側が著作物であることが必要であると主張するが,「自己ノ著作物中ニ正当ノ範囲内ニ於テ節録引用スルコト」を要件としていた旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項2号とは異なり,現著作権法(昭和45年法律第48号)32条1項は,引用者が自己の著作物中で他人の著作物を引用した場合を要件として規定していないだけでなく,報道,批評,研究等の目的で他人の著作物を引用する場合において,正当な範囲内で利用されるものである限り,社会的に意義のあるものとして保護するのが現著作権法の趣旨でもあると解されることに照らすと,同法32条1項における引用として適法とされるためには,利用者が自己の著作物中で他人の著作物を利用した場合であることは要件でないと解されるべきものであって,本件各鑑定証書それ自体が著作物でないとしても,そのことから本件各鑑定証書に本件各コピーを添付してこれを利用したことが引用に当たるとした前記判断が妨げられるものではなく,被控訴人の主張を採用することはできない。
ウ なお,控訴人が本件各絵画の鑑定業務を行うこと自体は,何ら被控訴人の複製権を侵害するものではないから,本件各絵画の鑑定業務を行っている被控訴人がこれを独占できないことをもって,著作権者の正当な利益が害されたということができるものでないことはいうまでもない。
(3) 小括したがって,控訴人が本件各鑑定証書を作製するに際してこれに添付するため本件各コピーを作製したことは,これが本件各絵画の複製に当たるとしても,著作権法32条1項の規定する引用として許されるものであったといわなければならない。
◆判決本文
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2010.09.10
平成21(ネ)10078 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月08日 知的財産高等裁判所
動画投稿サイトの運営者が侵害主体として認定されました。1審と同様の判断です。
以上からすると,本件サービスにおいて,著作権を侵害する動画を本件サーバに投稿する行為を実際に行っているのは,ユーザであって,控訴人らではない。したがって,ユーザが本件サービスに投稿する動画の中に,本件管理著作物が利用されている場合には,ユーザが当該動画を本件サーバに投稿する行為は,ユーザによる本件管理著作物の複製権侵害に該当することはいうまでもないところである。しかしながら,先に指摘したとおり,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであって,控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配している主体であるところ,ユーザの投稿に対し,控訴人会社から対価が支払われるわけではなく,控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ているものである。しかるところ,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と,約5割に達しているものであり,このような著作権侵害の蓋然性は,動画投稿サイトの実態それ自体や控訴人会社によるアダルト動画の排除を通じて,控訴人会社において,当然に予\想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,控訴人会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採っていない。そうすると,控訴人会社は,ユーザによる複製行為により,本件サーバに蔵置する動画の中に,本件管理著作物の著作権を侵害するファイルが存在する場合には,これを速やかに削除するなどの措置を講じるべきであるにもかかわらず,先に指摘したとおり,本件サーバには,本件管理著作物の複製権を侵害する動画が極めて多数投稿されることを認識しながら,一部映画など,著作権者からの度重なる削除要請に応じた場合などを除き,削除することなく蔵置し,送信可能化することにより,ユーザによる閲覧の機会を提供し続けていたのである。しかも,そのような動画ファイルを蔵置し,これを送信可能\化して閲覧の機会を提供するのは,控訴人会社が本件サービスを運営して経済的利益を得るためのものであったこともまた明らかである。したがって,控訴人会社が,本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。よって,控訴人会社は,本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって,当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。また,本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上,公衆送信(送信可能\化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。以上からすると,本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて,控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして,控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能\化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成20(ワ)21902平成21年11月13日東京地裁
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2010.07.20
平成22(ネ)10017等 著作権侵害差止等反訴請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年07月14日 知的財産高等裁判所
神奈川県知事が著者である「破天荒力・・・」について、地裁は著作権侵害を認めましたが、高裁は逆転判断。
既に説示したとおり,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を著作物として保護するものである(著作権法2条1項1号)から,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表\\現上の創作性がない部分は,著作権法による保護が及ばない。すなわち,歴史的事実の発見やそれに基づく推論等のアイデアは,それらの発見やアイデア自体に独自性があっても,著作に当たってそれらを事実又は思想として選択することは,それ自体,著作権による保護の対象とはなり得ない。そのようにして選択された事実又は思想の配列は,それ自体としてひとつの表現を構\\成することがあり得るとしても,以上のとおり,原判決添付別紙対比表2記載の各被控訴人書籍記述部分の事実又は思想の選択及び配列自体には,いずれも表\\現上の格別な工夫があるとまでいうことはできないばかりか,上記各被控訴人書籍記述部分とこれに対応する各控訴人書籍記述部分とでは,事実又は思想の選択及び配列が異なっているのである。したがって,上記各控訴人書籍記述部分は,これに対応する各被控訴人書籍記述部分と単に記述されている事実又は思想が共通するにとどまるから,これについて各被控訴人書籍記述部分の複製又は翻案に当たるものと認めることができないことは明らかである。
◆判決本文
◆1審はこちら・東京地裁平成20(ワ)1586
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2010.05.31
平成21(ワ)12854 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月28日 東京地方裁判所
雑誌に掲載された患者の手記を病院のサイトに掲載したことが、複製権、公衆送信権侵害であるとして、約40万円の損害賠償が認定されました。引用であるとの主張も認められず。
被告は,本件転載について,著作権法32条1項の「引用」として適法なものである旨主張するが,同項所定の「引用」とは,報道,批評,研究等の目的で自己の著作物中に他人の著作物の全部又は一部を採録するものであって,引用を含む著作物の表現形式上,引用して利用する側の著作物と,引用されて利用される側の著作物を明瞭に区別して認識することができ,かつ,両著作物の間に前者が主,後者が従の関係があるものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和55年3月28日第三小法廷判決・民集34巻3号244頁)。そして,同項の立法趣旨は,新しい著作物を創作する上で,既存の著作物の表\\現を引用して利用しなければならない場合があることから,所定の要件を具備する引用行為に著作権の効力が及ばないものとすることにあると解されるから,利用する側に著作物性,創作性が認められない場合は「引用」に該当せず,同項の適用はないというべきである。(2) これを本件についてみると,・・・以下,数頁にわたって本件記事を掲載するという体裁になっているが,本件記事を除く部分は,いずれも短文の上,内容もおしなべて平凡なものであり,これらについて,被告の思想又は感情を創作的に表現したものとして,著作物性,創作性を認めることは困難である。仮に,これらの部分に著作物性,創作性が肯定される余地があるとしても,その分量,内容からして,引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物との間に,前者が主,後者が従の関係があるものと認めることはできない。したがって,本件転載が著作権法32条1項所定の「引用」として適法であるとすることはできない。\n
◆判決本文
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2010.05.29
平成22(ネ)10004 著作権侵害確認等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所
論文の著作権侵害について、原審は複製翻案権侵害と認定しましたが、知財高裁は該当箇所は創作性無しとしてこれを取り消しました。
第1論文の当該表記部分は,判断を含めた事実について,ごく普通の構\文を用いた英文で表記したものであって,全体として,個性的な表\現であるということはできず創作性はなく,また表現の本質的な特徴部分も認められないから,第2論文該当箇所は,第1論文該当箇所を複製したものということはできず,また翻案ということもできない。この点について,原告は,「Discussion」には,多数の書き方が存在するから,第1論文の当該表記部分は,創作性を有すると主張する。しかし,ある内容を表\現するに当たり,他の表現の選択が可能\であったとしても,そのことから,当然に,当該表記部分に創作性が生じると解すべきではなく,創作性を有するとするためには,表\現に個性が発揮されていることを要する。第1論文該当箇所は,いずれも,語句の選択,順序,配列を含めて格別の個性の発揮された表現であるということはできないから,原告の主張は理由がない。なお,第2論文は,第1論文と対比すると,表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通する部分が存在するが,「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容において相違すること,第2論文は,第1論文の全体記述及び個々の記述を総合勘案しても,第1論文の表現の本質的特徴を感得できるものではない点については,既に述べたとおりである。\n
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成18(ワ)2591平成21年11月27日東京地方裁判所
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2010.05.28
平成20(ワ)31609 損害賠償請求 著作権 民事訴訟 平成22年05月19日 東京地方裁判所
鑑定書につけたカラーコピーが複製があると認定されました。
本件において,前記認定事実によると,本件鑑定証書1及び2に貼付された本件絵画1及び2の縮小カラーコピーは,本件絵画1を約23%(約4分の1)の,本件絵画2を約16%(約6分の1)の各大きさに縮小したものであり,本件絵画1及び2そのものは提出されていないものの,これらの縮小カラーコピーにおいては,いずれも,画題である「花」が,油彩を画材として,上記構\図,色彩及び筆致等により描かれており,その大胆な構図や,単純化された花の表\現,鮮やかな色彩の対比や絵の具の塗り重ねによる重厚な印象等,本件絵画1及び2の作風が表れているところである。そうすると,本件鑑定証書1及び2に貼\付された本件絵画1及び2の縮小カラーコピーは,通常の注意力を有する者がこれを観た場合,画材,描かれた対象,構図,色彩,絵筆の筆致等により表\現される本件絵画1及び2の特徴的部分を感得するのに十分というべきである。したがって,本件鑑定証書1及び2に貼\付された本件絵画1及び2の縮小カラーコピーは,本件絵画1及び2の美術の著作物としての本質的な特徴的部分が再現されているというべきであり,当該縮小カラーコピーを作製した被告の行為は,本件絵画1及び2の複製に該当すると認めるのが相当である。
◆判決本文
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2010.04.19
平成21(ワ)6604 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年03月30日 東京地方裁判所
写真の著作物について、許諾権の範囲を超えた貸与があったとして、貸与権侵害が認められました。「逆版」のデュープフィルムの作成についての同一性保持権侵害は否定されました。
著作者は,その著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有する(著作権法26条の3)。ここに「公衆」とは,同法2条5項が「公衆」には,「特定かつ多数の者を含むものとする。」と定めていることから,複製物の貸与を受ける者が,不特定又は特定多数の者であれば,公衆への貸与に該当するものと解される。上記事実によれば,アマナイメージズは被告の受託者として,第三者(三晃堂)に写真の使用を許諾したものであり,三晃堂は,広く一般に写真の貸出業を行う写真エージェンシーであるアマナイメージズにとって,不特定の者に該当すると認められる(アマナイメージズが,本件写真の使用許諾先を三晃堂(特定の者)に限定していたとの事実は認められない。)。そして,アマナイメージズにとって,三晃堂は不特定の者に該当するのであるから,アマナイメージズに対して,本件写真の使用許諾行為を委託した被告にとっても,三晃堂は不特定の者に該当すると認めるのが相当である。したがって,被告が,アマナイメージズに委託して,本件写真を第三者に貸し出した行為は,本件写真に係る原告の著作権(貸与権)の侵害に当たる。・・・(1)原告は,被告が本件写真について「逆版」のデュープフィルムを作成したとして,被告の上記行為が本件写真に係る原告の著作者人格権(同一性保持権)の侵害に当たる旨主張する。・・・本件委託契約(乙1)においては,写真のデュープ方法を特に指定したり,制限したりする約定はなかったことが認められる。以上の事実によれば,原被告間において,本件委託契約上,デュープフィルムの作成方法として,オリジナルフィルムとデュープフィルムの乳剤面同士を密着させてデュープする方法を採ることが制限されていたと解することはできず,被告が本件写真のデュープフィルムを上記の方法により作成したことは,本件委託契約に基づき原告から許諾された範囲内の行為であったと認めるのが相当である。また,そもそも,被告の作成したデュープフィルムによっても,像が左右正向きとなるようにプリントすること(本件写真で言えば,甲4の状態)も,左右逆向きとなるようにプリントすること(本件写真で言えば,甲5の状態)も問題なくできるのであるから,オリジナルフィルムとはベース面と乳剤面とが逆となり,ノッチコードの位置が逆となるデュープフィルムを作成しただけでは,本件写真に改変を加えた(像を左右逆とする改変を加えた)ということはできない。
◆判決本文
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2010.04.12
平成18(ワ)5689等 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年03月31日 東京地方裁判所
プログラムの著作権・商標権侵害が認められました。あと、国際裁判管轄が争われてます。
原告コンセプトは,第2事件について,ソースコードライセンス契約(乙5の1,2)5.4条の定めを根拠として,我が国に国際裁判管轄が認められないと主張し,訴えの却下を求めている。原告アシュラは,この主張に対し,時機に後れた防御方法であり,民事訴訟法157条1項により却下されるべきである旨の申立てをするが,国際裁判管轄の有無は裁判所が職権で調査すべき事項であるから,その主張が時機に後れたことを理由として,これを却下することはできない。そこで,第2事件について我が国の国際裁判管轄を検討する。第2事件は,前記第2の1(2)のとおり,原告アシュラが,原告コンセプトに対し,プログラム著作権及び商標権に基づき,原告コンセプトが販売する製品,マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害賠償又は不当利得返還を求める事案である。原告アシュラとファモティクとの間に締結されたソースコードライセンス契約(乙5の1,2)5.4条には「この契約に基づくいかなる訴訟も,カリフォルニア州の連邦又は州裁判所に起こされるものとし,ライセンシーは,この契約により対人裁判管轄権に服する。」旨の規定があるが,同契約の当事者は原告アシュラとファモティクであるから,上記規定は,原告アシュラがファモティクに対し,又はファモティクが原告アシュラに対し,同契約上の紛争に基づく訴訟を提起する場合の裁判管轄について合意したものであって,契約当事者以外の第三者との間に係属すべき訴訟の管轄について定めたものであるとは解されない。そして,同契約5.8条によれば,ファモティクは,原告アシュラの書面による事前同意なしに同契約上の地位を譲渡することができないものとされているから,原告コンセプトが同契約上のライセンシーとしての地位をファモティクから適法に譲り受けたものということはできず,原告コンセプトとファモティクを同視することはできない以上,上記5.4条の規定を理由として,第2事件について我が国の国際裁判管轄が否定されるということはできない。ところで,国際裁判管轄については,これを直接規定する法規もなく,また,よるべき条約も,一般に承認された明確な国際法上の原則も,いまだ確立していないのが現状であるから,当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念により,条理に従って決定するのが相当である(最高裁昭和56年10月16日第二小法廷判決・民集35巻7号1224頁参照)。そして,我が国の民事訴訟法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは,原則として,我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき,被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが,我が国で裁判を行うことが当事者間の公平,裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には,我が国の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成9年11月11日第三小法廷判決・民集51巻10号4055頁参照)。これを第2事件についてみると,同事件は,外国法人である原告アシュラが進んで我が国の裁判権に服するとして我が国の裁判所に提起した訴訟であるところ,他方,被告である原告コンセプトは東京都千代田区を本店の所在地とする日本法人であるから,我が国に普通裁判籍(民事訴訟法4条4項)があるが,我が国の国際裁判管轄を否定すべき上記特段の事情があるとは認められない。したがって,第2事件に係る訴えについては,我が国に国際裁判管轄を認めるのが相当であり,原告コンセプトの上記本案前の主張は理由がない。
◆判決本文
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2010.02. 3
平成20(ワ)1586 著作権侵害差止等請求反訴事件 著作権 民事訴訟
ノンフィクション書籍について、一部複製が認められました。
原告書籍のように,歴史的事実を素材として叙述されたノンフィクション作品においては,基礎資料からどのような歴史的事実を取捨選択し,その歴史的事実をどのように評価し,どのような視点から,どのような筋の運び,ストーリー展開,言い回し,語句等を用いて具体的に叙述したかといった点に筆者の個性が現れるものといえるが,著作権法は,思想又は感情の創作的表現を保護するものであり(同法2条1項1号参照),思想,感情又はアイデア,事実又は事件など表\現それ自体でないものや,表現であっても,表\現上の創作性がない部分は保護の対象とするものではないから,ノンフィクション作品においても,叙述された表現のうち,表\現上の創作性を有する部分のみが著作権法の保護の対象となるものであり,素材である歴史的事実そのものや特定の歴史的事実を取捨選択したことそれ自体には著作権法の保護が及ぶものではないものと解される。そして,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照),また,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解されるから(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照),被告書籍記述部分がこれに対応する原告書籍記述部分の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,被告書籍記述部分において,原告書籍記述部分における創作的表現を再製したかどうか,あるいは,原告書籍記述部分の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。そこで,以下においては,上記のような観点から,別紙対比表1ないし3,仙之助及び正造を主人公とした章全体の各原告書籍記述部分と各被告書籍記述部分を対比し,後者が前者の複製又は翻案に当たるか否かについて順次判断する。・・・・・・・・の記述に引き続いて,孝子は正造と離婚した後スコットランド人実業家と再婚したのに対し,正造は再婚することがなかった事実を指摘し,「正造が結婚したのは,最初から孝子というより富士屋ホテルだったのかもしれない。」と述べている記述である。そして,原告書籍記述部分は,上記のエピソ\ードを経て,婿であった正造が孝子と離婚後も富士屋ホテルにとどまり,生涯再婚することなく,富士屋ホテルの経営に精力を注いだ事実について,「富士屋ホテル」を正造の結婚相手に喩えて,正造が「結婚した」のは「富士屋ホテルだったのかもしれない」と表現した点において,筆者の個性が現れており,創作性が認められる。この点について被告らは,「〜と結婚したようなもの」という表\現は,何かに一心不乱に打ち込む状態を表すありきたりな言い回しにすぎないから,原告書籍記述部分は,原告による個性的表\現とはいえない旨主張する。しかしながら,原告書籍記述部分のように短い文章の表現の創作性の有無を判断するに当たっては,当該記述部分の前後の記述をも踏まえて,当該記述部分がいかなる脈絡の下で,どのような内容を表\現しようとしたものかをも勘案して総合的に判断すべきであり,また,語句や言い回しそのものはよく用いられるものであっても,ある思想又は感情を表現をしようとする場合に多様な具体的表\現が可能な中で,特に当該語句や言い回しを選んで用い,当該語句や言い回しを含む表\現がありふれたものといえない場合には,表現上の創作性を有するというべきである。\n
◆判決本文
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2010.01. 4
平成18(ワ)2591 著作権侵害確認等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月27日 東京地方裁判所
論文について複製権侵害、翻案権侵害が争われました。裁判所は、複製権侵害であると認定しました。
以上によれば,第1論文は,原告が,被告が作成した原稿について,原稿への書き込み及び口頭により,英語表現の訂正,付加や,記載の順序,内容等について指示をし,その指示を受けた被告が原稿の修文をしたり,新たに作成した文章を書き入れて,完成するに至ったものであって,第1論文は,原告と被告が共同で創作し,原告と被告の寄与を分離して個別的に利用することができないものというべきであるから,第1論文は原告と被告の共同著作物(著作権法2条1項12号)であると認められる。したがって,原告は,第1論文の共同著作者である。・・・・以上によれば,被告は,第1論文に依拠し,第1論文の「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)について,その創作的表\現を有形的に再製して第2論文を作成したものであるから,被告による第2論文の作成は,上記の限度において複製に当たるものと認められる。そして,被告は,第1論文の共同著作者である原告の同意を得ずに,第2論文を作成しているから,被告による第2論文の作成は,原告の第1論文の一部についての複製権の侵害に当たる。・・・・・原告は,第2論文は,第1論文に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,「Results」及び「Conclusion」の章のみを書き替えたものであり,両論文の読者は,その余の部分についての酷似を容易に感得できるから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものである旨主張する。ところで,言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。これを本件についてみるに,前記(1)のとおり,第2論文において第1論文の創作的表現が有形的に再製されている部分は,「Abstract」の一部(別紙対比表1の2ないし4の各項)及び「Discussion」の一部(別紙対比表2のcないしlの各項)であって,しかも,両論文の「Results」及び「Conclusion」の各章は,記載内容が異なり,その表現において類似する箇所は存しないことに照らすならば,上記部分から第1論文全体の表\現上の本質的特徴な特徴を直接感得することができるものではないから,第2論文は,第1論文を全体として翻案したものと認めることはできない。
◆判決本文
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