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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成23(ネ)10008 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 知的財産高等裁判所

 折り紙の折り図についての著作物性のある部分を複製していないとした1審判決が維持されました。
 「原告は,本件折り図の「32の折り工程のうち,どの折り工程を選択し,一連の折り図として表現するか,何個の説明図を用いて説明するか」は,アイデアではなく,表\現であるとして,被告折り図と本件折り図とは,上記の点において共通するので,被告が被告折り図を作成する行為は,本件折り図について有する原告の複製権ないし翻案権を侵害すると主張する。しかし,原告の主張は,主張自体失当である。すなわち,著作権法により,保護の対象とされるのは,「思想又は感情」を創作的に表現したものであって,思想や感情そのものではない(著作権法2条1項1号参照)。原告の主張に係る「32の折り工程のうち,10個の図面によって行うとの説明の手法」それ自体は,著作権法による保護の対象とされるものではない。上記アのとおり,被告折り図と本件折り図とを対比すると,i)32の折り工程からなる折り方について,10個の図面(説明図)及び完成形を示した図面(説明図)による説明手法,ii)いくつかの工程をまとめた説明手法及び内容,iii)各説明図は,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,折り筋を付ける箇所を点線で,付けられた折筋を実線で,折り筋を付ける手順を矢印で示しているという説明手法等において共通する。しかし,これらは,読者に対し,わかりやすく説明するための手法上の共通点であって,具体的表現における共通点ではない。そして,具体的表\現態様について対比すると,本件折り図と被告折り図とは,上記アのとおり,数多くの相違点が存在する。被告折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず,また,被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえない。したがって,被告が,被告折り図を作成することによって本件折り図を複製ないし翻案した旨の原告の主張は採用できない。\n  

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成22(ワ)18968平成23年05月20日東京地裁

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平成22(ワ)36616 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 東京地方裁判所

 損害保険の代理店業等を営む原告が,損害保険会社である被告に対し,被告が,原告と被告間の損害保険代理店契約が解除された後に,原告の著作物である別紙1の「平成22年1月1日付け火災保険改定のお知らせ」と題する説明書面を複製し,これを含む案内資料を原告の顧客である社会福祉法人に送付し,被告との火災保険契約の締結を勧誘した行為が,複製権侵害であると判断されました。
 本件説明書面(甲2)は,別紙1のとおりのものであり,「平成22年1月1日付け火災保険改定のお知らせ」と題して,本件改定の内容を顧客向けに文章で説明する本文部分(1枚目)と,地域別に建物の構造級別区分ごとの保険料率の改定幅を数値で示した一覧表\及び本件改定の前後それぞれにおける建物の構造級別区分の判定の仕方をフローチャート方式で示した図表\などが記載された別添資料部分(2枚目)とからなるものである。そして,本件説明書面のうち,上記本文部分においては,「主な改定の内容」が,「1.火災保険上の建物構造級別の判定方法の簡素化」,「2.火災保険料率の大幅な改定」,「3.保険法の改定による対応」の3点に整理されて,それぞれの内容が数行程度の簡略な文章で紹介されるとともに,特に内容的に重要な部分については,太文字で表\記されたり,下線が付されるなど,一見して本件改定のポイントが把握しやすいような構成とされている。また,上記別添資料部分においては,本件改定による建物の構\造級別区分の判定方法の変更点について,一見して理解しやすいように,フローチャート方式の図表を用いた説明がされ,しかも,当該フローチャート図の中に,楕円で囲った白抜きの文字や太い矢印を適宜用いるなど,視覚的にも分かりやすくするための工夫が施されている。以上で述べたような本件説明書面の構\成やデザインは,本件改定の内容を説明するための表現方法として様々な可能\性があり得る中で(甲3ないし5,弁論の全趣旨),本件説明書面の作成者が,本件改定の内容を分かりやすく説明するという観点から特定の選択を行い,その選択に従った表現を行ったものといえるのであり,これらを総合した成果物である本件説明書面の中に作成者の個性が表\現されているものと認めることができる。

◆判決本文

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平成21(ワ)4998 著作権侵害等に基づく損害賠償等請求事件 平成23年09月15日 名古屋地方裁判所

 創作性の認められない部分については著作物性なしと判断しました。
 本件における原告各書籍及び本件各書籍のような法律問題の解説書においては,関連する法令の内容や法律用語の意味を整理して説明したり,法令又は判例,学説によって当然に導かれる一般的な法律解釈や実務の運用等を解説するなどし,それらを踏まえた見解を記述することが不可避である。しかるに,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,法令や通達,判決,決定等である場合には,これが著作権の目的とすることができないものである以上(同法13条参照),当該法令等の記述そのものが複製,翻案となることはないのはもちろん,同一性を有する部分が,法令や判決等によって当然に導かれる事柄である場合にも,創作的に表現した部分において同一性を有するとはいえないから,当該部分に係る記述も複製,翻案には当たらないと解すべきである。また,手続の流れや法令の内容等を法令の規定や実務の取扱いに従って図示したり図表\にすること,さらには,手続上通常用いられる書面の書式を掲載することはアイデアの範ちゅうに属することであり,これを独自の観点から分類し,整理要約したなどの個性的表現がされているといった格別の場合でない限り,そのような図示,図表\や書式は,創作的に表現した部分において同一性を有するものとはいえないから,複製,翻案に当たらないと解すべきである。さらに,同一性を有する部分が,ある法律問題に関する筆者の見解又は一般的な見解である場合にも,思想ないしアイデアにおいて同一性を有するにすぎないから,一般の法律書等に記載されていない独自の観点からそれを説明する上で通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,複製,翻案に当たらないと解される。そして,ある法律問題について,関連する法令等の内容や法律用語の意味を説明し,一般的な法律解釈や実務の運用等を記述する場合には,確立した法律用語をあらかじめ定義された用法で使用し,法令等又は判例等によって当然に導かれる一般的な法律解釈を説明しなければならないという表現上の制約がある。そのため,これらの事項について説明する場合に,条文の順序にとらわれずに,独自の観点から分類し,通常用いられる表\現にとらわれず,独自の表現を用いて整理要約したなど表\現上の格別の工夫がある場合でない限り,筆者の個性が表れているとはいえないから,著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることはできず,複製にも翻案にも当たらないと解すべきである。
・・・
以上のとおり,原告各表現と本件各表\現とは,表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから,本件各表現は,いずれも原告各表\現を複製,翻案したものとは認められない。

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平成19(ワ)24698 損害賠償等請求事件 平成23年05月26日 東京地方裁判所

 元社員が別の会社で作成したプログラムについて複製・翻案権侵害と認定されました。114条2項による侵害額の推定も認められました。
 証拠(乙11の1,3〜5)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月31日終了事業年度(1期)から平成21年8月31日終了事業年度(4期)までの間における,被告YKSC社の売上高の合計額は4億2 1 4 3 万1 3 8 4 円( 20,138,050 + 121,484,073 + 137,885,662 +141,923,599=421,431,384 円)であり,変動経費として売上高から控除すべき費用(材料費,外注加工費,旅費交通費)の合計額は1億3611万8708円(2,664,896+43,659,701+49,072,556+40,721,555=13,618,708 円)であると認められるから,上記期間における被告YKSC社の限界利益の合計額は2億8531万2676円であり,売上高に占める変動経費の比率は約32%であると認められる。本件では,上記のとおり,別紙売上集計表記載の一般測量,丁張測量,位置郎リース,成果(データ作成,図面・他成果)業務の売上高の一部について,被告ソ\フトを使用したことによる売上高であると認められるところ,上記認定に係るこれらの業務の性質や,被告YKSC社の業務のうち被告ソフトを使用したものと認められなかった業務の性質等を考慮すると,上記限界利益を算定するに当たって売上高から控除すべき変動経費は,売上高の30%と認めるのが相当である。したがって,上記(ア)a,b,同(イ)a,同(ウ)認定の売上高の合計額から3 0 % を控除した2 2 6 4 万5 6 6 5 円( { 6,560,430 +17,942,240+3,535,450+2,319,200+1,993,630}円×0.7=22,645,665円)が,被告YKSC社が被告ソフトを使用したことによる利益であると認められる。\n

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平成22(ワ)18968 損害賠償等請求事件 平成23年05月20日 東京地方裁判所

 折り紙を折り方を説明した折り図の翻案、複製かが争われました。裁判所は著作物性は認めたものの、翻案、複製には該当しないと判断しました。
 以上を前提に,本件折り図の著作物性について判断する。折り紙作品の折り図は,当該折り紙作品の折り方を示した図面であるが,その作図自体に作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該折り図は,著作物に該当するものと解される。もっとも,折り方そのものは,紙に折り筋を付けるなどして,その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり,紙の形,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向,折り手順は所与のものであること,折り図は,折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること,折り筋の表\現方法としては,点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば,その作図における表\現の幅は,必ずしも大きいものとはいい難い。また,折り図の著作物性を決するのは,あくまで作図における創作的表現の有無であり,折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない。
・・・・(イ) そこで検討するに,i)「へんしんふきごま」の折り方は,32の折り工程からなるところ,本件折り図は,この折り方について,1ないし10の手順に分解した説明図及び完成形を示した説明図を基に説明したものであるが,32の折り工程のうち,どこからどこまでの折り工程を一つの手順にまとめて何個の説明図を用いて説明するかについては選択の幅があること(甲13の1,2),ii)本件折り図は,別紙1のとおり,最初の折り工程から完成形に至るまでの折り工程について,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,紙の表と裏を色分け(赤色と無色)した各説明図において,折り筋を付ける手順を示す矢印,折り筋を付ける箇所及び向きを示す点線(谷折り線・山折り線),付けられた折り筋を示す実線,折った際に紙が重なる部分を予\測させるための仮想線を示す点線によって折り方を示すことを基本とし,これらの折り工程のうち矢印,点線等のみでは読み手が分かりにくいと考えた箇所について説明文及び写真を用いて折り方を補充して説明したものであること,iii)本件折り図に従えば,「へんしんふきごま」の折り紙作品を特段の支障なく作成できることによれば,本件折り図を全体としてみた場合,上記説明図の選択・配置,矢印,点線等と説明文及び写真の組合せ等によって,「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく,分かりやすく表現したものとして創作性を認めることができるから,本件折り図は,著作物に当たるものと認められる。
・・・・複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照),著作物の再製は,当該著作物に依拠して,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成することを意味するものと解され,また,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表\現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表\現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。以上を前提とすると,被告折り図が本件折り図の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,被告折り図において,本件折り図の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。・・・(ウ) 以上のとおり,被告折り図と本件折り図は,前記(イ)の相違点が存在することから,折り図としての見やすさの印象が大きく異なり,分かりやすさの程度においても差異があるものであって,前記(ア)の共通点を最大限勘案してもなお,被告折り図から,「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく,分かりやすく表現した本件折り図の表\現上の本質的特徴を直接感得することができるものとは認められない。したがって,被告折り図は,本件折り図の複製物又は翻案物のいずれにも当たらないというべきである。

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平成20(ワ)11762 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年01月28日 東京地方裁判所

 プログラム著作物について、差止、損害賠償が認められました。問題となったプログラムは、被告が原告在職中に作成したものでした。なお、翻案の差止は認められず、実施料相当額は10%と判断されました。
ウ これに対し,被告らは,原告プログラムにおいては,画面上の構成要素を貼\り付け,ボタン等を配置するために必要なプログラムなど,開発ツールであるMicrosoft社の「Visual Studio.net」によって自動生成された部分が相当の分量に及んでおり,これらの部分には創作性がないとした上で,原告プログラムのうちのMainForm.csの原告ソースコードに含まれる各関数を分析すると,別紙5において☆,○又は□の印を記載したものについては,自動生成コードが相当割合を占めることから,創作性が認められない旨を主張する。しかしながら,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる各関数における自動生成コードの占める割合が被告ら主張のとおりであることを前提にしたとしても,少なくとも別紙5において△の印が記載された合計10の関数については,被告ら自身が汎用的でないコードからなるものであることを認めており,創作性が認められることに実質的な争いはないものといえる。また,別紙5において□の印が記載された合計164の関数についても,被告らは,自動生成コードの割合が1割程度にすぎないこと,すなわち,9割程度が自動生成コードではないことを認めているのであり,これらの関数については,少なくとも自動生成コードが相当割合を占めることを理由として創作性を否定することはできないというべきである。この点,被告らは,これらの関数について,汎用的プログラムの組合せであることを理由として創作性が否定されるかのごとく主張するが,汎用的プログラムの組合せであったとしても,それらの選択と組合せが一義的に定まるものでない以上,このような選択と組合せにはプログラム作成者の個性が発揮されるのが通常というべきであるから,被告らの上記主張は採用できない。してみると,被告らの上記主張を前提としても,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる298の関数のうちの約6割(174/298)において,自動生成コードが1割以下にとどまっており,それ以外のコードは,その選択と組合せにおいてプログラム作成者の個性が発揮されていることが推認できるというべきであるから,プログラム著作物としての創作性を優に肯定することができる。エさらに,後記(2)イで認定するとおり,原告プログラムは,主として被告A1がその開発及びプログラミング作業を行ったものであるから,原告プログラムの内容等を最も知悉する者は被告A1にほかならないところ,それにもかかわらず,被告らは,原告プログラムの一部であるMainForm.csの原告ソースコードについて,別紙5に記載した印に基づいて前記第3の1(2)ア記載の程度の概括的な主張をしてその創作性を争うにとどまっており,それ以外の原告プログラムの創作性については,具体的理由に基づいてこれを争う旨の主張は行っていない。しかも,被告A1は,その本人尋問において,自らが行った原告プログラムにおけるソースコードの記述方法について,様々な創意工夫がされていることを自認する供述もしている。前記イ及びウで述べたことに加え,上記のような被告らの訴訟対応や被告A1の本人尋問における供述をも総合すれば,原告プログラムが,全体として創作性の認められるプログラム著作物であることは,優にこれを認めることができる。
・・・
原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。したがって,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づいて被告プログラムの翻案の差止めを求める原告の請求は理由がない。
・・・
そこで,上記会費収入を前提として,原告が原告プログラムについての著作権の行使につき受けるべき金銭の額(使用料相当額)を算定するに,i)社団法人発明協会発行の「実施料率【第5版】」(甲24)に記載されたソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約において定められた実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされ,特にソ\フトウェアにおいて高率契約の割合が高いとされていること,ii)原告プログラムは,原告において,多大な時間と労力をかけて開発されたものであり,かつ,原告の業務の中核となる重要な知的財産であって,競業他社にその使用を許諾することは,通常考え難いものであること,iii)他方,証拠(乙13,被告A1)によれば,被告会社においては,その会員に対し,被告ソフトを公衆送信して使用させることのみならず,被告会社が野村総研から購入した株価や銘柄に関するデータに種々の処理を施したものを提供するサービスや会員に対して電子メールで種々のアドバイスを送信するメールサービスも行っていることから,会員から得られる会費の中には,これらのサービスに対する対価に相当する部分も含まれており,本来,上記会費収入の全額が実施料率算定の基礎となるものではないことといった事情のほか,原告ソ\フト及び被告ソフトの内容,被告らによる侵害行為の態様及びそれに至る経緯,原告と被告らとの関係など本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告らによる平成19年1月から平成22年8月までの著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,上記(ア)の会費収入合計額2045万1200円の約10パーセントに当たる200万円と認めるのが相当である(なお,被告らによる著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,原告の原告ソフトの表\示画面に係る著作権侵害の主張が認められる場合でも,上記金額を超えるものとはいえない。)。

◆判決本文

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平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高第一小

 まねきTVに続き、ロクラク2についても、最高裁は複製権侵害と認定し、知財高裁の判断を破棄差し戻しました。
 放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能\\を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十\\分であるからである。
裁判官金築誠志の補足意見
 著作権法上の複製等の主体の判断基準に関しては,従来の当審判例との関連等の問題があるので,私の考え方を述べておくこととしたい。
1 上記判断基準に関しては,最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。このように,「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。
2 原判決は,本件録画の主体を被上告人ではなく利用者であると認定するに際し,番組の選択を含む録画の実行指示を利用者が自由に行っている点を重視したものと解される。これは,複製行為を,録画機器の操作という,利用者の物理的,自然的行為の側面に焦点を当てて観察したものといえよう。そして,原判決は,親機を利用者が自己管理している場合は私的使用として適法であるところ,被上告人の提供するサービスは,親機を被上告人が管理している場合であっても,親機の機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,利用者に代わって整備するものにすぎず,適法な私的使用を違法なものに転化させるものではないとしている。しかし,こうした見方には,いくつかの疑問がある。法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能\\なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。また,ロクラクIIの機能からすると,これを利用して提供されるサービスは,わが国のテレビ放送を自宅等において直接受信できない海外居住者にとって利用価値が高いものであることは明らかであるが,そのような者にとって,受信可能\\地域に親機を設置し自己管理することは,手間や費用の点で必ずしも容易ではない場合が多いと考えられる。そうであるからこそ,この種の業態が成り立つのであって,親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。さらに,被上告人が提供するサービスは,環境,条件等の整備にとどまり,利用者の支払う料金はこれに対するものにすぎないとみることにも,疑問がある。本件で提供されているのは,テレビ放送の受信,録画に特化したサービスであって,被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり,利用者もテレビ番組を録画,視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で,著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。もっとも,本件は,親機に対する管理,支配が認められれば,被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから,上記利益の帰属に関する評価が,結論を左右するわけではない。
3 原判決は,本件は前掲判例と事案を異にするとしている。そのこと自体は当然であるが,同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。原判断は,こうした総合的視点を欠くものであって,著作権法の合理的解釈とはいえないと考える。

◆判決本文

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