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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成24(ワ)33533 著作権侵害差止等請求事件 著作権 平成25年10月30日 東京地方裁判所

 いわゆる自炊業者(スキャン代行業者)に対する差止および損害賠償が認められました。著30条の適用は否定されました。
 複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であり,その複製の実現に当たり枢要な行為をしている者が複製の主体であるということができる(最高裁平成23年1月20日第一小法廷判決・最高裁平成21年(受)第788号・民集65巻1号399頁参照。)。これを本件についてみると,本件における複製の対象は,利用者が提供する書籍であり,問題とされる複製行為は,書籍をスキャナーで読み取って電子化されたファイルを作成することにあるところ,本件事業における一連の作業は,前記第2,1(8)記載のとおり,利用者においてインターネットのウェブサイトから書籍の電子化を申し込み,直接被告会社らの指定する場所にこれを郵送等するか,あるいは,書籍の販売業者等から直接被告会社らの指定する場所に郵送等し,これを受領した被告会社らにおいて,書籍を裁断するなどしてスキャナーで読み取り,書籍の電子ファイルを作成して,完成した電子ファイルを利用者がインターネットを通じてダウンロードするか,電子ファイルを格納したDVDないしUSB等の送付を受ける,というものである。これら一連の作業をみると,書籍を受領した後に始まる書籍のスキャナーでの読込み及び電子ファイルの作成という複製に関連する行為は,被告会社の支配下において全ての作業が行われ,その過程に利用者らが物理的に関与することは全くない。上記によれば,本件事業において,書籍をスキャナーで読み取って電子化されたファイルを作成するという複製の実現に当たり枢要な行為を行っているのは被告会社らであるということができる。そうすると,本件事業における複製行為の主体は被告会社らであり,利用者ではないというべきである。
 (2) 次に本件事案に著作権法30条1項が適用されるか否かにつき検討する。著作権法30条1項は,著作権の目的となっている著作物は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは,同項1号ないし3号に定める場合を除き,その使用する者が複製することができる旨規定している。そうすると,同条項にいう「その使用する者が複製する」というためには,使用者自身により複製行為がされるか,あるいは使用者の手足とみなしうる者によりこれがされる必要があるというべきところ,既に検討したとおり,被告タイムズ及び被告ビー・トゥ・システムズは,本件事業における複製の主体であって,使用者自身でも,使用者の手足とみなしうる者でもないのであるから,本件においては,著作権法30条1項にいう「その使用する者が複製する」の要件を満たすとはいえず,したがって,同条が適用されるものではないと認めるのが相当である。

◆判決本文

◆スキャン代行業者に対する他の事件はこちらです。平成24(ワ)33525 平成25年9月30日 東京地裁 文

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平成24(ワ)10382 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年10月21日 東京地方裁判所

 キャラクターの複製・翻案かが争われました。裁判所は複製・翻案のいずれでもないと判断しました。
,原告作品1と被告商品1を対比すると,別紙原告作品1と被告商品1との対比(判決)記載のとおりの相違点が認められるから,被告商品1は,原告作品1を有形的に再製したものではないし,原告作品1の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものではない。以上のとおり,被告商品1は,原告作品1と同一又は類似であるとは認められないから,被告商品1が原告作品1を複製又は翻案したものである\nとは認められない。

◆判決本文

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平成25(ネ)10040 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年09月30日 知的財産高等裁判所

 著作権侵害および著作者人格権侵害が認定されました。被告は人権擁護団体のようです。原告はプライバシー侵害(受刑者として公表された)が気にさわったでしょうか?\n
 事件の経緯は下記です。
刑務所に収容されている受刑者が自己作成の絵画を被告に預けたところ、被告はこれを展示すると共に、展示会のパンフレットに同絵画の複製を掲載して頒布。また、パンフレットに本件絵画とともに受刑者があることとその氏名を掲載。
 前記第2の2(3)において認定したとおり,第1審被告は,本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表示しているところ,これは,本件絵画の公衆への提供に際し著作者名を表\示しないこととすることを内容とする第1審原告の氏名表示権を侵害するものである。なお,第1審原告は,前記第2,2(3),同(4)及び前記1(1)のとおり,「アンデパンダン展」が「救援」誌上の絵画の展示会であると認識して,本件絵画を含む複数の絵画を第1審被告に送付した際に,それらの絵画を「匿名」又は変名で掲載することを第1審被告に求めたことはなかったこと,その後本件展示会の開催直前に,第1審被告からの手紙により,展示会が「救援」誌上ではなく,公開のギャラリーで行われることを知ったことから,急遽,自己の氏を表示せず,「(第1審原告の名)」のみの表\示とすることを申し入れたことに照らせば,第1審原告は,「救援」誌上の展示会を前提として,第1審被告に送付した本件絵画を含む各絵画について,その著作者名として自己の氏名を表\示する意思を有していたものにすぎず,公開のギャラリーにおいて本件絵画を展示する際や,一般に頒布される予定の本件パンフレットに本件絵画等を掲載するに際し,著作者としてその氏名を表\示することを承諾していたものと認めることはできない(本件パンフレットについては,本件絵画のカラーコピーを掲載することが複製権侵害となることは,前記2のとおりである。)。そして,他に第1審原告が,第1審被告において本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表示することを承諾していたことを認めるに足りる証拠もない。さらに,上記に認定判断したところに加え,本件証拠上,第1審被告が,第1審原告に対し,本件パンフレットに本件絵画を掲載するに当たり,著作者として第1審原告の氏名を表\示することの承諾を得ようとした形跡もうかがえないことも併せ考えると,第1審被告には,本件パンフレットに本件絵画の著作者として第1審原告の氏名を表示することによる氏名表\示権の侵害について,少なくとも過失があるものと認められる。 なお,氏名表示権は著作者人格権の一つであるところ,著作者人格権は,著作者の精神的活動の所産として創作された著作物と著作者との人格的なつながりに基づいて,当該著作物の上に存する著作者の人格的利益を保護するものであり,特に氏名表\示権は,著作者が著作物の創作者であることを表示し,あるいは,表\示しない利益を保護するためのものであるから,かかる著作者の利益は,一般人が,著作物とは無関係に有する,自己が受刑者であることを公表されないことについての利益(プライバシー)とは異なる性質のものである。本件においては,この受刑者であることを公表\されないことについての第1審原告の利益は,法19条の氏名表示権で保護されるべき著作者の利益とは別個のプライバシー侵害の問題として,別途,後記4において判断することとする。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)33525 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年09月30日 東京地方裁判所

 書籍のデジタル化業者(自炊業者)が書籍をスキャンすることは、利用者の手足として利用者の管理下で複製しているとみることはできないと判断されました。
著作権法2条1項15号は,「複製」について,「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義している。この有形的再製を実現するために,複数の段階からなる一連の行為が行われる場合があり,そのような場合には,有形的結果の発生に関与した複数の者のうち,誰を複製の主体とみるかという問題が生じる。この問題については,複製の実現における枢要な行為をした者は誰かという見地から検討するのが相当であり,枢要な行為及びその主体については,個々の事案において,複製の対象,方法,複製物への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して判断するのが相当である(最高裁平成21年(受)第788号同23年1月20日第一小法廷判決・民集65巻1号399頁参照)。本件における複製は,上記(1)ア及びイで認定したとおり,1)利用者が法人被告らに書籍の電子ファイル化を申し込む,2)利用者は,法人被告らに書籍を送付する,3)法人被告らは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,4)法人被告らは,裁断した書籍を法人被告らが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,5)完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過によって実現される。この一連の経過において,複製の対象は利用者が保有する書籍であり,複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らが管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化するというものである。電子ファイル化により有形的再製が完成するまでの利用者と法人被告らの関与の内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付するのは利用者であるが,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら法人被告らであり,利用者は同作業には全く関与していない。以上のとおり,本件における複製は,書籍を電子ファイル化するという点に特色があり,電子ファイル化の作業が複製における枢要な行為というべきであるところ,その枢要な行為をしているのは,法人被告らであって,利用者ではない。したがって,法人被告らを複製の主体と認めるのが相当である。
(イ) この点について,被告サンドリームらは,著作権法30条1項の適用を主張する際において,被告サンドリームは,使用者のために,その者の指示に従い,補助者的な立場で電子データ化を行っているにすぎないとし,また,被告ドライバレッジらは,同項の「使用する者が複製する」の解釈について,「複製」に向けての因果の流れを開始し,支配している者が複製の主体と判断されるべきであるし,複製の自由が書籍の所有権に由来するものであることに照らしても,書籍の所有者が複製の主体であると判断すべきであると主張する。著作権法30条1項は,複製の主体が利用者であるとして利用者が被告とされるとき又は事業者が間接侵害者若しくは教唆・幇助者として被告とされるときに,利用者側の抗弁として,その適用が問題となるものと解されるところ,本件においては,複製の主体は事業者であるとされているのであるから,同項の適用が問題となるものではない。もっとも,被告らの主張は,利用者を複製の主体とみるべき事情として主張しているものとも解されるので,この点について検討する。確かに,法人被告らは,利用者からの発注を受けて書籍を電子ファイル化し,これを利用者に納品するのであるから,利用者が因果の流れを支配しているようにもみえる。しかし,本件において,書籍を電子ファイル化するに当たっては,書籍を裁断し,裁断した頁をスキャナーで読み取り,電子ファイル化したデータを点検する等の作業が必要となるのであって,一般の書籍購読者が自ら,これらの設備を準備し,具体的な作業をすることは,設備の費用負担や労力・技術の面において困難を伴うものと考えられる。このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならば,抽象的には利用者が因果の流れを支配しているようにみえるとしても,有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下にあるとみられるのであって,複製における枢要な行為を法人被告らが行っているとみるのが相当である。また,被告らは,法人被告らが補助者にすぎないと主張する。利用者がその手足として他の者を利用して複製を行う場合に,「その使用する者が複製する」と評価できる場合もあるであろうが,そのためには,具体的事情の下において,手足とされるものの行為が複製のための枢要な行為であって,その枢要な行為が利用者の管理下にあるとみられることが必要である。本件においては,上記のとおり,法人被告らは利用者の手足として利用者の管理下で複製しているとみることはできないのであるから,利用者が法人被告らを手足として自ら複製を行ったものと評価することはできない。
(ウ) さらに,被告ドライバレッジらは,「複製」といえるためには,オリジナル又は複製物に格納された情報を格納する媒体を有形的に再製することに加え,当該再製行為により複製物の数を増加させることが必要であり,言い換えれば,「有形的再製」に伴い,その対象であるオリジナル又は複製物が廃棄される場合には,当該再製行為により複製物の数が増加しないのであるから,当該「有形的再製」は「複製」には該当しない旨主張する。しかし,著作権法21条は,「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」と規定し,著作権者が著作物を複製する排他的な権利を有することを定めている。その趣旨は,複製(有形的再製)によって著作物の複製物が作成されると,これが反復して利用される可能性・蓋然性があるから,著作物の複製(有形的再製)それ自体を著作権者の排他的な権利としたものと解される。そうすると,著作権法上の「複製」は,有形的再製それ自体をいうのであり,有形的再製後の著作物及び複製物の個数によって複製の有無が左右されるものではないから,被告ドライバレッジらの主張は採用できない。\n

◆判決本文

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平成25(ヨ)20003 工作物設置続行禁止仮処分申立事件 著作権 民事仮処分 平成25年09月06日 大阪地方裁判所 

 庭園内に工作物を設置することについて、裁判所は、やむを得ないと認められる改変(著20条2項同4号)に該当するとして、設置続行禁止(仮処分)を認めませんでした。
 既に述べたとおり,本件庭園は,自然の再現,あるいは水の循環といったコンセプトを取り入れることで,美的要素を有していると認められる。しかしながら,本件庭園は,来客がその中に立ち入って散策や休憩に利用することが予定されており,その設置の本来の目的は,都心にそのような一角を設けることで,複合商業施設である新梅田シティの美観,魅力度あるいは好感度を高め,最終的には集客につなげる点にあると解されるから,美術としての-24-鑑賞のみを目的とするものではなく,むしろ,実際に利用するものとしての側面が強いということができる。また,本件庭園は,債務者ほかが所有する本件土地上に存在するものであるが,本件庭園が著作物であることを理由に,その所有者が,将来にわたって,本件土地を本件庭園以外の用途に使用することができないとすれば,土地所有権は重大な制約を受けることになるし,本件庭園は,複合商業施設である新梅田シティの一部をなすものとして,梅田スカイビル等の建物と一体的に運用されているが,老朽化,市場の動向,経済情勢等の変化に応じ,その改修等を行うことは当然予定されているというべきであり,この場合に本件庭園を改変することができないとすれば,本件土地所有権の行使,あるいは新梅田シティの事業の遂行に対する重大な制約となる。以上のとおり,本件庭園を著作物と認める場合には,本件土地所有者の権利行使の自由との調整が必要となるが,土地の定着物であるという面,また著作物性が認められる場合があると同時に実用目的での利用が予\定される面があるという点で,問題の所在は,建築物における著作者の権利と建築物所有者の利用権を調整する場合に類似するということができるから,その点を定める著作権法20条2項2号の規定を,本件の場合に類推適用することは,合理的と解される。
イ 模様替え
本件工作物の設置は,本件庭園の既存施設であるカナルや花渦を物理的に改変せずに行うものであることから,著作権法20条2項2号が定める中では,「模様替え」に相当すると解される。債権者は,建築基準法の解釈として,本件工作物の設置は「模様替え」に当たらない旨を主張するが,本件庭園は建築物そのものではなく,著作権法の定めを建築基準法と同一に考える必要もないから,債権者の主張は採用できない。
ウ 著作権法20条2項2号のあてはめ
本件への適用を考えるに,著作権法20条は,1項において,著作者が,その著作物について,意に反して変更,切除その他の改変を受けず,同一性を保持することができる旨を定めた上で,2項2号において,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変については,前項の規定を適用しない旨を定めている。著作権法は,建築物について同一性保持権が成立する場合であっても,その所有者の経済的利用権との調整の見地から,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変について,特段の条件を付することなく,同一性保持権の侵害とはならない旨を定めているのであり,これが本件庭園の著作者と本件土地所有者の関係に類推されると解する以上,本件工作物の設置によって,本件庭園を改変する行為は,債権者の同一性保持権を侵害するものではないといわざるをえない。
エ 債権者の主張について
(ア) 債権者は,著作権法20条2項2号が適用されるためには,1)経済的,実用的な観点から必要な範囲の増改築であること,2)個人的な嗜好に基づく恣意的な改変ではないことが必要であり,本件工作物の設置は,そのいずれの要件も欠くから,同号は適用されない旨を主張する。しかしながら,同号の文言上,そのような要件を課していないことに加え,著作物性のある建築物の所有者が,同一性保持権の侵害とならないよう増改築等ができるのは,経済的,実用的な観点から必要な範囲の増改築であり,かつ,個人的な嗜好に基づく恣意的な改変ではない場合に限られるとすることは,建築物所有者の権利に不合理な制約を加えるものであり,相当ではない。 以上によれば,同号の文言に特段の制約がない以上,建築物の所有者は,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えをすることができると解されるのであり,その理は,債権者と債務者の関係にも類推されるというべきである。債務者の主張はこの理をいうものとして理由があり,これに反する債権者の主張は採用できない。 (イ) もっとも,建築物の所有者は建築物の増改築等をすることができるとしても,一切の改変が無留保に許容されていると解するのは相当でなく,その改変が著作者との関係で信義に反すると認められる特段の事情がある場合はこの限りではないと解する余地がある。債権者が,本件工作物の設置はP2個人のプロジェクトのモニュメントであり,実用性,経済性,必要性を欠くと主張する点も,その趣旨を述べたものとして理解することもできるが,前記1で述べたところに照らすと,なお採用できないというべきである。すなわち,本件庭園は,複合商業施設である新梅田シティと一体をなすものであり,市場動向や流行に従って,その設備を適宜に更新していく必要があることは,債権者も理解していたはずであること,債権者は,本件庭園の設計当初から,旧花野について,将来新たな建築がされることを予見していたこと,平成18年改修の際も,一定の改変は受忍するともとれる趣旨を述べていること,債務者は,本件工作物を設置する場所の検討に当たって,一応,債権者の意見を聴取し,一定程度反映させていること,以上の点を指摘することができるのであって,これらを総合すると,本件工作物の設置について,本件庭園の著作者である債権者との関係で,信義に反すると認められる特段の事情があるとまではいえない。\n
オ まとめ
以上によれば,本件工作物の設置は,著作者である債権者の意に反した本件庭園の改変にはあたるものの,著作権法20条2項2号が類推適用される結果,同一性保持権の侵害は成立しないことになる。

◆判決本文

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平成24(ネ)10076 出版差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成25年04月18日 知的財産高等裁判所

 編集著作物性について、原審は著作物性無しとしましたが、一部についてこれを認めました。
 エ 認定のとおり,控訴人書籍漢方薬便覧部分においては,148の処方名,1000個以上の商品名の漢方薬から,臨床現場での重要性や使用頻度等を踏まえて,148の処方名,307の商品名の漢方薬を選択するとともに,195の処方名,1900個以上の商品名の生薬並びに生薬及び漢方処方に基づく医薬品の中から1の処方名(「ヨクイニンエキス」),2の商品名の生薬を選択した上で,これを「漢方薬」の大分類の中に含めたものである。控訴人は,「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるにもかかわらず,これを漢方薬として選択したものである(甲59,69)。そして,生薬である「ヨクイニンエキス」については,「ポケット判治療薬Up-To-Date(2008年版)」(乙2)及び「ポケット医薬品集2008年版」(乙3)では,皮膚科用薬の章に掲載され,「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)では,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬製剤」の章に掲載され,「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,「漢方製剤」ではなく「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」に掲載されているのであって,これを「漢方製剤」の分類に選択した類書は,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に見られないところ,同書における漢方薬の選択及び配列については,控訴人書籍と全く同一の148の処方名,307の商品名の漢方製剤に加えて「ヨクイニンエキス」が選択され,控訴人書籍と50音順を崩した4箇所を含め,全く同一の配列がされていること,同書が控訴人書籍の発行後に発行されたこと等に照らし,同書をもってありふれていることの根拠とすることはできない。以上によれば,前記の漢方薬の薬剤の選択,特に「ヨクイニンエキス」を漢方製剤として選択したことには,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができる。
イ 薬剤の配列について
控訴人書籍及び被控訴人書籍の漢方薬便覧部分は,「処方名」(漢方処方名)を原則として50音順とし,例外的に,1)・・・4箇所のみ50音順を崩して配列している点において同一である。このうち,控訴人は,4)の「ヨクイニンエキス」について,漢方薬ではなく生薬であるところから,全く別個に配列し,これを漢方薬の最後に配列したものである。また,上記2)の配列については,「桔梗湯」及び「桔梗石膏」は,いずれも生薬「桔梗」を含む漢方製剤であり,咽喉における症状に用いられる点で共通しているところ,「桔梗湯」は,・・・に記載された漢の時代から伝わる生薬の配合及び分量についての歴史的な処方であり,喉痛等に対して処方する機会が極めて多いのに対し,「桔梗石膏」は,原典を有しない比較的新しい処方であるため,まず「桔梗湯」の処方を考えることが臨床現場においては通常であること,また,「桔梗湯」は,単体で処方されることが多い漢方製剤であるが,「桔梗石膏」は,他の漢方製剤と共に処方されることが多い漢方製剤であるため,まず単体で処方することのできる「桔梗湯」を前にもってくることが臨床現場における使用に資することから,臨床現場の使用実態に即した配列にしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。さらに,上記3)の配列も,「桂枝加竜骨牡蛎湯」が,前記のとおり・・・に記載された漢の時代から伝わる歴史的な処方であるのに対し,・・・が,江戸時代に日本で書かれた「方機」という書物に記載された処方であるところ,歴史が深い処方の方が信頼が高く,臨床現場においてより頻繁に用いられているところから,・・を先に配列することとしたものである(甲76,弁論の全趣旨)。このように,控訴人書籍における薬剤の配列は,漢方処方が,歴史的,経験的な実証に基づく薬効,中心的な役割を果たす主薬,基本方剤等,複数の分類基準によって区別される上に,基本方剤に新たな薬効を持つ生薬が加味されることで,多くの漢方処方に派生するという関係にあるところから,そのような歴史的,経験的な実証に基づく生薬の薬効及び基本方剤分類を考慮した配列にしたものである。そして,控訴人書籍の発行後に発行された「ポケット版臨床医薬品集2008」(乙9)以外に,上記1)ないし4)について控訴人書籍と同一の配列をしたものは見当たらない。被控訴人が発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5),「日本医薬品集 医療薬 2008年版」(乙6)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においてすら,「ヨクイニンエキス」は,「漢方製剤」の分類の中には選択されず,それとは別の「その他の生薬製剤」又は「その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品」等に分類されていたものである。また,被控訴人が控訴人書籍の発行より前に発行した「薬効・薬理別 医薬品事典(平成16年8月版)」(乙5)及び「最新治療薬リスト平成18年版」(乙11)においては,控訴人書籍及び被控訴人書籍とは異なり,上記1)ないし3)を含め,全て50音順に配列されていたものである。
ウ 以上によれば,控訴人書籍漢方薬便覧部分は,漢方薬の148の処方名を掲載したほか,多数の生薬の中から「ヨクイニンエキス」のみを大分類「漢方薬」に分類するものとして選択した上,漢方3社が製造販売する薬剤がある漢方処方名については,当該漢方処方名に属する漢方3社の薬剤を全て選択し,漢方3社が薬剤を製造販売していない漢方処方名については,臨床現場における重要性や使用頻度等に鑑みて個別に薬剤を選択したというのであるから,薬剤の選択に控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているということができ,上記のような考慮から薬剤を選択した上,歴史的,経験的な実証に基づきあえて50音順の原則を崩して配列をした控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の配列には,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表\れているから,一定の創作性があり,これと完全に同一の選択及び配列を行った被控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列は,控訴人書籍のそれの複製に当たるといわざるを得ない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成20(ワ)29705
 

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平成23(ワ)33071 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年03月14日 東京地方裁判所

 題号「風にそよぐ墓標」の一部が、複製権および翻案権侵害と認定されました。ただ、損害額は慰謝料の方が高額でした。
 証拠(甲1,2,6,乙1,2の1及び2,3,4,原告及び被告B各本人)によれば,被告Bは,本件事故が犠牲者の妻や母という女性の視点から語られることが多かったことから,犠牲者の息子という男性の視点から本件事故を著述しようと考えていたところ,原告とCの息子であるGを知り,本件事故に関して原告が著述した「なにか云って」と題する書籍と原告書籍を図書館から借りて閲読した上で,平成22年5月21日,Gに対し,本件事故に関する取材を8時間ほどしたこと,被告Bは,同月24日,取材内容を補強するために,原告に対しても,本件事故に関する取材を3時間ほどしたこと,原告は,本件事故から25年弱が経過するとともに,上記両書籍の著述によって本件事故を自分なりに終結させていたので,当時の状況を思い出せなかったり,上記両書籍や原告に関する放送等を収録したDVD映像の各該当部分を示して説明したりした上,被告Bに対し,上記両書籍とDVD2本を提供したこと,これに対し,被告Bは,原告に対し,原告の説明や上記両書籍や両DVDを基にして正確に著述する旨約束したこと,原告は,同月29日ころ,被告Bに対し,手紙を送り,同月24日の取材で話題になった原告とCが出会った経緯等につき,訂正を申し入れたことが認められる。前記認定の事実によれば,原告が被告Bに対し原告書籍等を用いて事実の正確な著述をするよう求めたことは窺うことができるものの,さらに進んで,原告が被告Bに対し原告各記述の複製又は翻案及び譲渡に係る利用の許諾を黙示にしたということはできず,他に被告Bが原告から原告各記述の複製又は翻案及び譲渡に係る利用の許諾を黙示に得たことを認めるに足りる証拠はない。
(3) 以上によれば,被告Bは,別紙対比表の当裁判所の判断欄に○と記載した被告各記述を不可分的に有する被告書籍の第3章を著述することによって,原告の原告書籍の著作権(複製権又は翻案権)を侵害し,被告集英社は,当該被告各記述を第3章に含む被告書籍を頒布することによって,原告の原告書籍の著作権(譲渡権又は著作権法28条に基づく譲渡権)を侵害するものと認められる。\n

◆判決本文

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平成23(ワ)35951 損害賠償 著作権 民事訴訟 平成25年01月31日 東京地方裁判所

 コミック版について増刷発行まで原告の利用許諾があったとして、原告の請求は認められませんでした。
 そこで検討するに,前記(2)ア及びイの認定事実によれば,被告は,B執筆の書籍「Bの都市伝説」シリーズを原作とする漫画版として,複数の漫画家が作画した漫画各話を掲載したコンビニコミックである本件各コミックの出版を企画し,被告主張の本件各合意のそれぞれの合意の時期に,本件コミック1については作画原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については作画原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を支払うとの条件で,原告に対し,本件各作画の制作を順次依頼し,原告は,その都度これを了承したものであり,被告の上記各依頼の趣旨は,原告に対し,原告が本件各作画の制作を行うとともに,被告が本件各コミックに本件各作画を掲載して出版及び販売することについての利用許諾を求めるものであるから,原告が被告の上記各依頼を了承することにより,原告と被告との間で,本件各合意が成立したものと認められる。そして,前記(2)アないしウの認定事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,1)本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえないこと,2)被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったことが認められる。
上記1)及び2)の事情に照らすならば,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は,本件各コミックの初版分に限定されるものではなく,その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当である。イ これに対し原告は,原告と被告間の本件各作画についての利用許諾の合意は,原告が提供した原稿について雑誌発行(初版発行)から2週間程度の期間を限定して被告が出版することを許諾することを内容とするものであり,原稿1枚当たり1万円の原稿料及び原稿1枚当たり1万3000円の原稿料の約定は,上記利用許諾の対価にすぎないから,本件各コミックの増刷分には利用許諾の効力は及ばない旨主張し,原告の供述(甲22の陳述書を含む。以下同じ。)中にはこれに沿う部分がある。しかしながら,被告が本件各コミックに掲載する本件各作画の制作を原告に依頼した際に,原告と被告との間で,本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったものであり(前記ア2)),また,原告の供述を前提としても,原告が,被告の上記依頼を受けた際に,本件各コミックの流通期間を2週間程度に限定することを条件とすることや,原稿料は初版分に限定する趣旨である旨を被告に述べたというものではない。かえって,原告の供述中には,原告が,本件コミック2に掲載する本件作画2ないし4の原稿料の値上げ要請をした際に,コミックの発行部数は原稿料を定めるに当たって考慮に入れていなかった旨の供述部分があることからすれば,原告においては,本件各作画の利用許諾の対価としては,コミックの発行部数の多寡にかかわらず,原稿1枚当たり一定額の原稿料の支払を受けることで了承していたことがうかがわれる。しかも,本件各コミックの2刷及び3刷は,初版を増刷したものであって,本件各作画の利用形態は初版と何ら変わることはないのであるから,本件各コミックの流通期間が原告が想定していた約2週間を超えたからといって原告において特段の不利益をもたらすものとは認め難く,本件各合意を締結するに当たっての合理的意思に反するものとも認め難い。もっとも,被告は,本件作画2,9ないし12を掲載した都市伝説Gコミックについて再録掲載料を原告に支払っているが(前記(2)エ(ウ)),都市伝説Gコミックは,本件各コミックに収録された漫画の中から全14話を選択して収録したものであり,本件各コミックにおける本件作画2,9ないし12の利用形態とは異なるものであるから,上記再録掲載料の支払の事実をもって原告の上記主張を裏付けることはできない。以上によれば,原告の上記主張は,採用することができない。他に前記アの認定を左右するに足りる証拠はない。
 (4) 以上のとおり,被告が本件各コミックを増刷して発行することについて,本件各合意に基づく原告の利用許諾があったものと認められるから,被告のかかる行為が本件各作画について原告が保有する複製権の侵害行為に当たる旨の原告の主張(請求原因(1))は理由がない。

◆判決本文

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