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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成25(ネ)10089  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成26年10月22日  知的財産高等裁判所

 いわゆる自炊業者による複製は30条の範囲外であるとの1審判断が維持されました。
「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」である(同法2条1項15号)。そして,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。 本件サービスは,1)前記1控訴人ドライバレッジに書籍の電子ファイル化を申し込む,2)利用者は,控訴人ドライバレッジに書籍を送付する,3)控訴人ドライバレッジは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,4)控訴人ドライバレッジは,裁断した書籍を控訴人ドライバレッジが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,5)完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが,ナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人ドライバレッジのみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。 そして,控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。 そうすると,控訴人ドライバレッジは,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。
・・・
控訴人らは,本件サービスにおいて,「特定の」書籍の所有者(処分権者)による書籍の取得,送付がなければ,およそ書籍の電子ファイル化などすることができないことから,利用者による「特定の」書籍の取得及び送付こそが,書籍の電子ファイル化にとって「不可欠の前提行為」であり「枢要な行為」にほかならず,利用者は本件サービスを利用しなくても,利用者自ら書籍を電子ファイル化することが可能であって,控訴人ドライバレッジは,利用者自身が実現不可能\な複製を可能としているのではないし,利用者が取得していない書籍や取得し得ない書籍を電子ファイル化しているものでもないから,控訴人ドライバレッジの行為が複製の実現について「枢要な行為」ということはできず,控訴人ドライバレッジは複製行為の主体ではない旨主張する。\nしかし,控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,本件サービスの内容を決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。したがって,利用者が複製される書籍を取得し,控訴人ドライバレッジに電子ファイル化を注文して書籍を送付しているからといって,独立した事業者として,複製の意思をもって自ら複製行為をしている控訴人ドライバレッジの複製行為の主体性が失われるものではない。また,利用者による書籍の取得及び送付がなければ,控訴人ドライバレッジが書籍を電子ファイル化することはないものの,書籍の 取得及び送付自体は「複製」に該当するものではなく,「複製」に該当する行為である書籍の電子ファイル化は専ら控訴人ドライバレッジがその管理・支配の下で行っているのである。控訴人ドライバレッジは利用者の注文内容に従って書籍を電子ファイル化しているが,それは,利用者が,控訴人ドラ用しているにすぎず,当該事実をもって,控訴人ドライバレッジによる書籍の電子ファイル化が利用者の管理下において行われていると評価することはできない。また,利用者は本件サービスを利用しなくても,自ら書籍を電子ファイル化することが可能であるが,そのことによって,独立した事業者として,複製の意思をもって自ら複製行為をしている控訴人ドライバレッジの複製行為の主体性が失われるものではない。\n

◆判決本文

 

◆原審はこちらです。平成24(ワ)33525

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平成25(ワ)13369 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年05月27日 東京地方裁判所

猫の写真の著作物について著作権侵害と認定されました。興味深いのは目をくりぬく行為について、著作財産権侵害が66万程度に対して、人格権侵害の損害が200万円という認定です。
 原告は,(1) 原告写真の現物又はコピーに猫の目の部分をくり抜く加工を施す行為,(2) これらを並べて本件各パネルを作成し,さらに本件各パネルを組み合わせて本件看板を作成する行為が原告の翻案権を侵害する旨主張するので,以下,検討する。(1) 証拠(甲1〜5,7〜11)及び弁論の全趣旨によれば,原告写真は,いずれも猫そのもの(別表のNo.1〜43等)又は猫を含む風景(同44〜73等)を被写体とした写真であること,被告アンダーカバーは,写真集に掲載された原告写真又はそのコピーに,猫の顔の部分を中心に切り取るか(別紙「訴状別表\の見方」のシール番号1,2,5,7,8,9等),又は猫のほぼ全身部分を切り取った(同3,4,6,10等)上,更にその目の部分をくり抜く加工を施したことが認められる。これらの加工はいずれも定型的で単純な行為であり,これによって新たな思想又は感情が創作的に表現されたということはできない。したがって,この点について原告写真の翻案権侵害をいう原告の主張は失当というべきである。(2) 証拠(甲6〜11)及び弁論の全趣旨によれば,本件看板は,目の部分をくり抜いた猫の写真ないしその複製物を色彩あるいは大きさのグラデーションが生じるように多数(正確な数についての主張はないが,全部で数百枚に及ぶことは明らかである。別紙「訴状別表の見方」の添付写真1)参照)並べてコラージュとしたものであり,全体として一個の創作的な表現となっていると認められる一方,これに使用された原告写真又はそのコピーのそれぞれは本件看板の全体からすればごく一部であるにとどまり,本件看板を構\成する素材の一つとなっているということができる。そうすると,本件看板に接する者が,原告写真の表現上の本質的な特徴(原告が,それぞれの原告写真を撮影するに当たり,被写体の選択,シャッターチャンス,アングル,レンズ・フィルムの選択等を工夫することにより,原告の思想又は感情が写真上に創作的に表\現されたと認められる部分。ただし,原告写真の表現上の本質的な特徴がどこに存在するかについて原告による具体的な主張はない。)を直接感得することができるといえないと解すべきである。したがって,本件各パネル又は本件看板の作成行為が原告の翻案権を侵害すると認めることはできない。\n
2 争点(2)(被告三越伊勢丹の責任の有無)について
(1) 原告は,まず,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権の侵害行為を幇助したと主張する。そこで判断するに,原告は本件看板の作成行為及び本件売場への設置行為について著作権及び著作者人格権の侵害があると主張するところ,まず,本件看板の作成は被告アンダーカバーにより行われたものであって,作成行為自体に被告三越伊勢丹が関与したことをうかがわせる証拠はない。また,本件看板を本件売場に設置し,これを訪れた買物客らに見える状態に置くことは,それ自体として原告写真についての原告の著作権又は著作者人格権の侵害となるものではない(著作権法25条参照)。なお,原告は,本件各パネルを本件売場において組み立てて本件看板とする行為が著作権又は著作者人格権を侵害するものであって,被告三越伊勢丹はこれを幇助したとも主張するが,上記行為は複数のパネルを順番に並べるという単純な行為であって(甲6〜11参照),これを独立の侵害行為とみることは相当でない。したがって,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権等の侵害行為を幇助したと認めることはできない。 (2) 原告は,次に,被告三越伊勢丹には百貨店としてテナントに対して適切な管理監督をする条理上の義務があり,また,本件の状況下において被告アンダーカバーが著作権について明確な処理をしたか否かを精査する義務等があるところ,これらを怠ったことに不法行為責任を負う旨主張する。そこで判断するに,百貨店を経営する会社がテナントに対して著作権法に反する行為をしないよう適切な管理監督をする義務を負い,これに反したときは第三者に対して損害賠償責任を負うと解すべき根拠は見いだし難い。また,本件の関係各証拠上,被告三越伊勢丹が被告アンダーカバーによる著作権及び著作者人格権侵害の事実を知り,又はこれを容易に知り得たとは認められないから,原告の主張するような精査等の義務を負うと解することもできない。(3) したがって,原告の主張はいずれも採用することができず,被告三越伊勢丹に対する原告の請求は理由がない。
3 争点(3)(原告の損害額)について
以上によれば,被告アンダーカバーは,コピー使用分の66枚につき原告の複製権を侵害し,現物使用分及びコピー使用分により本件看板を作成した行為につき原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであり,これらの行為につき被告アンダーカバーには少なくとも過失があると認められる。そこで,これにより原告が被った損害額について,以下,検討する。
(1) 著作権侵害について
ア 原告は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)につき,1)ポジフィルムの買取り(紛失)料金相当額として,又は,2)原告写真を看板等に使用する場合の使用料10万円の5倍に当たる額として,1枚当たり50万円が相当であると主張する。イ そこでまず原告の上記1)の主張についてみるに,原告は,同主張の根拠として,原告の意に反するような使用態様はポジフィルムを買い取った場合にのみ許されるからである旨主張している。しかし,原告の意に反する使用態様であることについては後記のとおり著作者人格権の侵害に係る慰謝料額の認定に当たり考慮すべき事柄である上,ポジフィルムを買い取ったとしても意に反した使用が許されることになるわけでない。したがって,原告の上記1)の主張は失当というべきである。ウ 次に原告の上記2)の主張についてみるに,原告は原告写真を看板に使用する場合の使用料は1枚当たり1回につき10万円となるべきであると主張するところ,後掲の証拠(ただし,書証の枝番の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,写真の使用を第三者に許諾している業者又は写真家のインターネットサイトには,ディスプレイや看板に本件と同様の大きさの写真を用いる場合の使用料を,1枚当たり5万円(3か月まで。甲12),4万8000円(3か月まで。甲13),3万5000円(1年間。犬猫の写真を専門とする写真家のもの。乙2),5万円(乙5),3万円(乙6)と設定しているものがあることが認められる。しかし,これらの使用料は,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,いずれも使用を許諾された写真を一個の作品として,すなわち写真に現れた創作的な表現を直接感得し得る態様で看板等に用いることにより,写真それ自体が有する顧客吸引力を利用することを予\定して定められたものと認められる。これに対し,本件看板においては,多数の猫の顔写真を用いたコラージュ看板を作成するための素材として使用されたものであって,個々の原告写真が一個の作品として使用されるものではない。したがって,上記認定の使用料は,本件における損害額算定の参考になるにとどまり,これを直接の基準とすることは相当でないと解される。そして,上記のような原告写真の使用の態様と,本件看板は,我が国有数の百貨店において多数の買物客らの目を引くように設置されたものであるが,その設置期間が約2か月にとどまったことなど本件に現れた諸事情を総合考慮すると,本件における原告写真の使用料は1枚当たり1回につき1万円と認めるのが相当である。エ 原告は,さらに,本件においては使用料の5倍に相当する額を請求できると主張する。しかし,著作権法114条3項は,著作権の行使につき受けるべき金銭の額を損害額とする旨規定しているのであり,違約金ないし懲罰的損害賠償請求を認めたものではない。したがって,原告の主張を採用することはできない。オ 以上に対し,被告アンダーカバーは,1枚当たりの使用料は5833円とすべきであり,2回使用された原告写真については使用料が逓減されるべきと主張するが,使用料を1万円と解すべきことは上記で判断したとおりである。また,証拠(甲12,13,乙2,5,6)及び弁論の全趣旨によれば,第三者に写真の使用を許諾している業者又は写真家の中には2回目以降の使用料を減額する者がいると認められるものの,減額することが一般的であると認めるに足りる証拠はない。したがって,被告アンダーカバーの上記主張を採用することはできない。カ 以上によれば,被告アンダーカバーが原告の複製権を侵害したことによる原告の損害額は,66万円(1万円×66枚)と認めるのが相当である。
(2) 著作者人格権侵害について
被告アンダーカバーは,原告写真の現物又はコピーを使用して本件看板を作成して原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものであるところ,同一性を侵害された原告写真が多数に及ぶ上,その改変行為は猫の目の部分をくり抜くという嗜虐的とも解し得るものであって,その性質上,原告の意に大きく反するということができる。また,証拠(甲1〜5,14,15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は専ら猫や犬を被写体として撮影する写真家であり,原告写真が収録された写真集は,原告が長い年月を掛けて,世界各地を旅して作成したものであり,さらに,改変された写真の中には原告自身の飼い猫のものもあることが認められる。これらのことからすれば,被告アンダーカバーの著作者人格権侵害により原告が被った精神的損害は甚大なものであって,本件看板の設置期間が約2か月であること,被告アンダーカバーが原告に対し謝罪の意を表\していることといった事情を考慮しても,本件における慰謝料の額は200万円をもって相当というべきである。

◆判決本文

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平成22(ワ)27449  著作権 民事訴訟 平成26年05月30日 東京地方裁判所

 鑑定対象となった原画のコピーを添付することは32条の引用であると判断されました。
 上記観点から,本件行為につき,著作権法32条1項所定の「引用」としての利用として許されるか否かについて検討する。前記1(5)認定のとおり,Dの作品に関する鑑定証書を作成するに当たり,鑑定証書に対象となった原画のカラーコピーを添付することについて,被告は,鑑定証書はそこに添付されたカラーコピーの原画が真作であることを証するために作成されるものであることから,鑑定証書の鑑定対象となった原画を,多数の同種画題が存する可能性のある中で特定し,かつ,当該鑑定証書自体が偽造されるのを防止する目的で行っていると認められること,そして,その目的達成のためには,鑑定の対象である原画のカラーコピーを添付することが最も確実であることから,これを添付する必要性,有用性が認められること,著作物の鑑定の結果が適正に保存され,著作物の鑑定業務の適正を担保することは,贋作の存在を排除し,著作物の価値を高め,著作権者等の権利の保護を図ることにもつながるものであることなどを併せ考慮すると,著作物の鑑定のために当該著作物の複製を利用することは,著作権法の規定する引用の目的に含まれるというべきである。そして,本件行為について,原画を複製したカラーコピーは,ホログラムシールを貼\\付した表面の鑑定証書の裏面に添付され,表\\裏一体のものとしてパウチラミネート加工されており,原画をカラーコピーした部分のみが分離して利用に供されることは考え難く,鑑定証書自体も,絵画の所有者の直接又は間接の依頼に基づき1部ずつ作製されたものであり,絵画と所在を共にすることが想定されているということができ,これら鑑定証書が原画とは別に流通している実態があることについての的確な証拠もないことに照らせば,鑑定証書の作製に際して,原画を複製したカラーコピーを添付することは,その方法ないし態様としてみても,社会通念上,合理的な範囲内にとどまるものというべきである。しかも,以上の方法ないし態様であれば,原画の著作権を相続した原告らの許諾なく原画を複製したカラーコピーが美術書等に添付されて頒布された場合などとは異なり,原告らが絵画の複製権を利用して経済的利益を得る機会が失われるなどということも考え難い。以上を総合考慮すれば,被告が,鑑定証書を作製するに際して,その裏面に本件コピーを添付したことは,著作物を引用して鑑定する方法ないし態様において,その鑑定に求められる公正な慣行に合致したものということができ,かつ,その引用の目的上でも,正当な範囲内のものであると認めるのが相当である。そうすると,本件行為は著作権法32条1項所定の「引用」として適法なものであるということができる。
(3)ア この点に関して原告らは,被告が著作権者である遺族の許諾なく行う本件行為は公正な慣行に合致するものではないから,適法引用の要件を充たさない旨主張する。しかし,前記1(6)で認定したとおり,被告の作成する鑑定証書と同程度の大きさの鑑定証書を発行し,絵画のコピーを添付するとの取扱いについては,著作権者の許諾を得ているとするところとそうでないとするところもみられるほか,許諾を得ているとするところでも,結局許諾のないままに行っているとするものもあることなどからすると,原画のカラーコピーを鑑定証書に添付するにつき,著作権者である遺族の許諾を得て鑑定証書に本件コピーを添付するという公正な慣行が存在すると認めることはできないというべきである。

◆判決本文

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平成21(ワ)16019 著作権 民事訴訟 平成26年03月14日 東京地方裁判所

 データベースの著作物について、創作性が認められ、公衆送信権侵害、複製権侵害が認められました。判決文が260頁をこえてます。損害額も1億円を超えてます。

 このように,データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうところ,前記第2,1の前提事実及び前記1で認定した事実によれば,原告CDDBは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能\を持ついわゆるリレーショナル・データベースである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるデータベースであるから,情報の選択又は体系的な構\成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。上記のような観点も踏まえ,原告CDDBのようなリレーショナル・データベースについて情報の選択に創作性があるというためには,データベースの主題,用途やデータベースの提供対象等を考慮して決定された一定の収集方針に基づき収集された情報の中から,更に一定の選定基準に基づき情報を選定することが必要であり,また体系的構\成に創作性があるというためには,収集,選定した情報を整理統合するために,情報の項目,構造,形式等を決定して様式を作成し,分類の体系を決定するなどのデータベースの体系の設定が行われることが必要であると解される。ただし,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構\成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表\れていることをもって足りるものと解される。
(2) 次に,著作物の複製ないし翻案については,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうとされているところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないというべきである。データベースについては,情報の選択又は体系的な構\成によって創作性を有するものは,著作物として保護されるものであるところ(著作権法12条の2),上記のとおり,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表\れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものあるが,データベースの著作物として保護されるのはあくまでも,具体的なデータベースに表\現として表れた情報の選択や体系的構\成であって,具体的な表現としての情報の選択や体系的構\成と離れた情報の選択の方針や体系的構成の方針それ自体は保護の対象とはならないというべきである。\n
・・・
 前記認定のとおり,原告CDDBは,それまで存しなかった団体旅行の行程検索・行程表作成のため,顧客である旅行業者等からのヒアリングや寄せられた要望等に基づき,出発地,到着地,交通手段,経由地である観光施設,宿泊施設をデータベース化してこれをコンピュータで効率よく検索できるようにするためのデータベースであるところ,上記被告CDDB(当初版・2006年版)と共通するテーブルに関してみると,原告CDDBの「01市区町村テーブル」,「32駅テーブル」,「20ホテル・施設テーブル」,「21観光施設テーブル」,「09地点名テーブル」,「11接続テーブル」及び「10道路テーブル」により,出発地,経由地,目的地に面した道路に関するデータの検索を可能\にし,次に「09地点名テーブル」,「10道路テーブル」,「11接続テーブル」,「12禁止乗換テーブル」,「14区間料金テーブル」及び「15首都高速料金テーブル」により,道路を利用した移動に関する経路探索・料金の算出に必要なデータの検索を可能にしていること,また,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」,「22観光設備備考テーブル」,「05緯度経度テーブル」,「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」及び「08URL分類テーブル」により,ホテル・旅館,観光施設に関する情報を検索することを可能\にしていること,そして,「01市区町村テーブル」及び「02地区・県名テーブル」は,道路と地図を関連付ける情報として,地図から検索をするときに用いられていること,「01市区町村テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」及び「32駅テーブル」には施設等の近辺の道路地点の情報が代表道路地区コードや代表\道路地点番号として格納されており,当該市区町村内にあるこれらの施設や駅などを選ぶことを通じて,「09地点名テーブル」の必要な道路地点を選ぶことができること,観光施設も「21観光施設テーブル」から選択し,絞り込みは,「02地区・県名テーブル」,「01市区町村テーブル」から行うことができること,観光施設の名称は「21観光施設テーブル」に,検索結果の観光施設について,当該観光施設に関する様々の情報は,「22観光施設備考テーブル」に格納されており,観光施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」から参照可能であり,最終的に行程に入れるかどうかを判断することができること,が認められる。また,宿泊施設については,「20ホテル・旅館テーブル」から選択し,地区は「02地区・県名テーブル」,都道府県も同じく「02地区・県名テーブル」,市区町村は「01市区町村テーブル」,地図上の範囲設定は,地図ソ\フトと「05緯度経度テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」により,宿泊種別は「20ホテル・旅館テーブル」,名称は「20ホテル・旅館テーブル」,検索結果の宿泊施設については当該宿泊施設に関する様々な情報,すなわち,和室,洋室の客室数,収容人員,料金,付帯施設,駐車場などが「20ホテル・旅館テーブル」に格納されていて,当該宿泊施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」が対応し,これらを参照して,ユーザーである旅行会社ないしその顧客の判断で行程等を決めることができることが認められる。以上のとおり,これら共通するテーブルについては,いずれも各テーブルを構成するフィールドにつき,原告CDDBと,被告CDDB(当初版・2006年版)とでほとんどが共通し,リレーションのとり方もほぼ共通するものである。そして,両者で共通するこれらの体系的構\成は,原告CDDBの制作者において,それまでのデータベースにはなかった設計思想に基づき構成した原告CDDBの創作活動の成果であり,その共通する部分のみでデータベースとして機能\し得る膨大な規模の情報分類体系であると認められ,データベースとして制作者の個性が表現されているものということができる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの体系的構\成としての創作性を有するものと認めるのが相当である。
・・・・
(ア) 前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とでは,情報項目としてのテーブル,フィールドの設定について,被告CDDB(当初版・2006年版)のテーブル数31個のうちの,28個においてテーブルが一致している。そして,フィールド項目についても,318個のフィールドのうち,252個のフィールドが一致している。(イ) そして,前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とで一致する,地点名テーブルの道路情報,緯度経度情報,接続テーブル及び禁止乗換テーブルの情報,県範囲定義テーブルの各情報は,いずれも原告CDDBの制作者において,前記認定のとおり,それぞれ選択の幅のある中から一定の選択方針に基づき選定し,あるいは全く任意に番号等設定したものであり,それぞれ創作性を有するものと認められる。(ウ) さらに,原告CDDBにおいては,前記のとおり,旅行会社に対する実情調査等の結果を踏まえ,主たる目的として,大型観光バスによる団体旅行を主眼とした行程表作成のための便宜から,通常使用されるロードマップとは異なる観点である,貸切観光バスが通行するのに適した道路として,都道府県道については約10%,市区町村道では約0.004%程度を選択して「10道路テーブル」に格納し,道路地点として選択した地点における情報も緯度及び経度のデータとして格納することとし,これを大型観光バスが通過するのに適切と考えられる道路のうちの,行程表\を作成する上で必要と考えられる適切な地点である,交差点,インターチェンジ,サービスエリア,パーキングエリア,観光施設,宿泊施設,駅,役所等の代表道路地点とするのに適切な地点を選別し,パソ\コンのマウスを地図上でクリックする方法で選択して,実際に入力したものである。また,施設と関係する代表道路地点の選択においても,施設が存する場所の緯度経度による地点ではなく,大型観光バスでの出入りの観点から,当該施設の近辺の道路地点を選び,当該施設の代表\道路地点として適宜設定している。このように,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)との共通部分である,道路,道路位置,代表道路地点等の選別・選択についても,原告CDDBの制作者による創作活動の成果が表\れており,創作者の個性が表現されているものといえる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの情報の選択としての創作性を有するものと認めるのが相当である。(エ) そして,これら被告CDDB(当初版・2006年版)が原告CDDBと同一性を有する情報の選択に関する部分も,原告CDDBの創作的表現の本質的特徴を直接感得することのできる同一性が維持されているものというべきである。\n

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