かなり前の事件ですが、漏れていたのでアップします。
イラストに著作物性は認めました。しかし、両者の関係について、似ているのはアイデアレベルだと判断しました。判決文の後ろに原告と被告のイラストが対比されています。
被告は,原告博士絵柄は(被告博士絵柄とともに),博士をイメージした
人物としての一般的要素を取り入れ,顔の表情や色調に工夫を加えて作成さ\nれているものの,著作物としての創作性が認められないありふれた表現であ\nる旨主張する。
そこで,この点についてみるに,証拠(乙1〜8)及び弁論の全趣旨によ
れば,原告博士絵柄及び被告博士絵柄以外の博士をイメージした人物として,
法務省の商業登記Q&Aに用いられている博士(乙第1号証),中央出版株
式会社のさんすうおまかせビデオに用いられている博士(乙第2号証),独
立行政法人水資源機構のホームページに用いられているものしり博士(乙第\n3号証),株式会社新学社の社会科資料集6年に用いられている歴史博士
(乙第4号証),証券クエストのホームページに用いられている博士(乙第
5号証),DEX WEBのイラスト・クリップアートに表示されている3\nDCGの博士(乙第6号証),株式会社パルスのおもしろ実験室のパッケー
ジに用いられている博士(乙第7号証,ただし,乙第6号証の博士と同一の
もの)及び株式会社UYEKIの防虫ダニ用スプレーの宣伝に用いられてい
る博士(乙第8号証)の絵柄があること,これらの絵柄の共通の要素として,
角帽を被り,丸い鼻から髭を生やし,比較的ふくよかな体型の年配の男性で
あることなどを挙げることができること,が認められる。しかしながら,こ
れらの博士のそれぞれの絵柄を見れば,共通の要素としての角帽,鼻,髭,
体型等の描き方にしても様々であり,まして,色づかいやタッチなどの全体
の印象を含めれば,博士をイメージさせる要素が類似するとしても,これら
の博士の絵柄相互間において,表現物としての共通性があって,いずれもが\nありふれていると言い切ることはできないものというべきである。そして,
原告博士絵柄については,上記の各博士のそれぞれの絵柄と対比して,なお
博士絵柄の表現としてありふれているとまでは言えないものと認められる。
(3)したがって,原告博士絵柄は,全体としてみたとき,前記(1)のような
特徴を備えた博士の絵柄の一つの表現であって,そこに作成者の個性の反映\nされた創作性があるというべきであり,原告商品の一部を構成する原告博士\n絵柄の登場する画像の著作物として,創作的な表現とみることができるもの\nと認められる。
・・・・
原告博士絵柄と被告博士絵柄とを対比すると,原告博士絵柄と被告博士絵
柄とは,前記(1)アのとおりの共通点があり,また,同ウの由来を考慮す
れば,元来,被告博士絵柄は,原告博士絵柄に似せて製作されたものという
ことができるものの,同イの相違点に照らすと,絵柄として酷似していると
は,言い難いものと認められる。
そして,原告博士絵柄のような博士の絵柄については,前記1(2)の乙
第1ないし第8号証でみた博士の絵柄のように,角帽やガウンをまとい髭な
どを生やしたふっくらとした年配の男性とするという点はアイデアにすぎず,
前記(1)アの原告博士絵柄と被告博士絵柄との共通点として挙げられてい
るその余の具体的表現(ほぼ2頭身で,頭部を含む上半身が強調されて,下\n半身がガウンの裾から見える大きな靴で描かれていること,顔のつくりが下
ぶくれの台形状であって,両頬が丸く,中央部に鼻が位置し,そこからカイ
ゼル髭が伸びていること,目が鼻と横幅がほぼ同じで縦方向に長い楕円であ
って,その両目の真上に眉があり,首と耳は描かれず,左右の側頭部にふく
らんだ髪が生えていること)は,きわめてありふれたもので表現上の創作性\nがあるということはできず,両者は表現でないアイデアあるいは表\現上の創
作性が認められない部分において同一性を有するにすぎない。また,被告博
士絵柄全体をみても,前記(1)イの相違点に照らすと,これに接する者が
原告博士絵柄を表現する固有の本質的特徴を看取することはできないものと\nいうべきである(なお,原告商品に登場する原告博士絵柄と被告各商品に登
場する被告博士絵柄は,ともにそれぞれの商品の一部を構成する画像として\n存在するところ,動きのある映像として見たとき,原告博士絵柄と被告博士
絵柄との違いは明白である。)。
したがって,被告各商品の一部を構成する被告博士絵柄の登場する画像が\n原告商品の一部を構成する原告博士絵柄の登場する画像の複製権や翻案権を\n侵害していると認めることはできない
◆判決本文
引用の目的が正当な範囲内で行なわれるものとはいえないとして、複製・公衆送信侵害と認定されました。
別紙対比表1,2の「被告侵害部分」で特定された原告コンテンツの各記載\nは,その内容や記載の順序,文体等に照らし原告の個性が表出されているものと認\nめられるから,これらはいずれも原告の思想又は感情を創作的に表現したものとし\nて著作権法上の著作物であるということができ,したがって原告は,その作成者と
してその著作権(複製権,公衆送信権)を有するものと認められる。
そして,別紙対比表1,2記載のとおり,被告は,原告コンテンツをそのまま自\nらの本件ウェブページに転載したものであり,不特定多数の者が本件ウェブサイト
にアクセスして本件ウェブページを自由に閲覧することができるものであることか
らすると,被告は,原告の複製権及び公衆送信権を侵害したものというべきである。
(2) 被告は,これら記載の掲載行為は著作権法32条1項の「引用」に該当する
旨主張する。
しかし,被告が引用した原告コンテンツの一部の傍らには,本件記載のようなコ
メントが付されているのであって,既に説示したとおり,これらコメントを付す行
為は,原告製品ひいては原告を批評するという公益を図る目的でされたものとは認
められず,むしろ原告製品ひいては原告の信用を毀損する目的でされた違法な行為
というべきものであり,また売主の説明責任を果たすための正当な行為と認めるこ
ともできないことからすれば,その引用が「公正な慣行に合致するもの」とも「引
用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものともということはできない。
したがって,被告による原告コンテンツの掲載行為を,著作権法32条1項の「引
用」として適法と認めることはできない。
なお,被告は,原告コンテンツはそれ自体経済的価値を有するものとして市場で
取引されるものではないなどと主張するが,その指摘はそうであるとしても,これ
をもって「引用の目的上正当な範囲内で行なわれ」たということはできない。
◆判決本文