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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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令和1(ワ)26106  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年10月14日  東京地方裁判所

 キャラクターの複製・翻案であるとの主張は認められませんでした。

(2) 原告作品全体の創作性及び被告作品全体との対比について
ア 証拠(甲1,2,5〜7)によれば,原告の原著作物(別紙2)に描かれ た原告キャラクターは,頭部は髪がなく半楕円形であり,目は小さい黒点で 顔の外側に広く離して配され,上下に分かれたくちばし部分はいずれも厚く オレンジ色であり,上下のくちばしから構成される口は横に大きく広がり,\n体は黄色く,顔部分と下半身部分との明確な区別はなく寸胴であり,手足は 先細の棒状であるとの特徴を有しており,原告作品においては,原告キャラ クターのこれらの特徴の全部又は一部が表現されているものと認められる。\n
イ 証拠(乙1)及び別紙6「対比キャラクター」を含む弁論の全趣旨によれ ば,原告作品に描かれた原告キャラクターの上記特徴のうち,キャラクター の髪を描かず,頭部を半楕円形で描く点は同別紙の「エリザベス」及び「タ キシードサム」と,目を小さい黒点のみで描く点は同別紙の「タキシードサ ム」,「アフロ犬」,「ハローキティ」,「にゃんにゃんにゃんこ」及び「ラ イトン」と,口唇部分を全体的に厚く,口を横に大きく描く点は同別紙の「お ばけのQ太郎」と,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに寸胴に描き, 手足は手首・足首を描かずに先細の棒状に描く点は同別紙の「おばけのQ太 郎」及び「エリザベス」(ただし,いずれも手の部分)と共通し,いずれも, 擬人化したキャラクターの漫画・イラスト等においては,ありふれた表現で\nあると認められる。
ウ そうすると,原告作品は,上記の特徴を組み合わせて表現した点にその創\n作性があるものと認められるものの,原告作品に描かれているような単純化 されたキャラクターが,人が日常的にする表情をし,又はポーズをとる様子\nを描く場合,その表現の幅が限定されることからすると,原告作品が著作物\nとして保護される範囲も,このような原告作品の内容・性質等に照らし,狭 い範囲にとどまるものというべきである。
(3) 被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かについて 上記(2)を踏まえ,被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かにつ いて,作品ごとに以下検討する。
ア 被告作品1について
(ア) 被告作品1−1について
a 原告作品1−1と被告作品1−1との対比
原告作品1−1と被告作品1−1とを対比すると,両作品は,ほぼ正 面を向いて立つキャラクターにつき,目を黒点のみで描いている点,く ちばしと肌の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半 身部分とを明確に区別せずに描いている点,胴体部分に比して手足を短 く描いている点のほか,黒色パーマ様の髪が描かれている点において共 通するが,黒色パーマ様の髪型を描くこと自体はアイデアにすぎない上, その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはあり ふれた表現であると認められる。\n 他方,両作品については,原告作品1−1では,キャラクターの体色 が黄色で,両目が小さめの黒点のみで顔の外側付近に広く離して描かれ, 上下のくちばしはオレンジ色で,たらこのように厚く描かれているのに 対し,被告作品1−1では,キャラクターの体色は白色で,両目がより 顔の中心に近い位置に,多少大きめの黒点で描かれ,上下のくちばしは 黄色で原告キャラクターに比べると厚みが薄く,横幅も狭く描かれてい るなどの相違点がある(以下,これを「作品に共通する相違点」という。)。 加えて,原告作品1−1では,キャラクターが,いわゆるおばさんパ ーマ状の髪型(毛量は体の約5分の1程度で,への字型の形状をし,眉 毛も見えている。)をして,口を開け,左手を上下に大きく振りながら, 表情豊かに相手に話しかけているかのような様子が表\現されているの に対し,被告作品1−1では,いわゆるアフロヘアー風のこんもりとし た髪がキャラクターの体全体の半分程度を占めるなど,その髪型が強調 され,キャラクターの表情や手足の描写にはさしたる特徴がないなどの\n相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。\n 以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通\nするにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ\nとにも照らすと,被告作品1−1から原告作品1−1の本質的特徴を感 得することはできないというべきである。 したがって,被告作品1−1は,原告作品1−1の複製にも翻案にも 当たらない。

◆判決本文

原告作品、被告作品、参考著作物はこちらです。

◆判決本文

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令和2(ワ)3594  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年12月17日  東京地方裁判所

 プログラムの著作物について、複製、公衆送信されたとして損害賠償が認められました。損害額の認定について、本件プログラムは単独では販売されておらず、コニュニティの入会費用として約25万円がプログラムの価値で、被告は、約25万*7名分が損害と主張しました。東京地裁(46部)はそのうちの1人については、コミュニティへの入会の機会を失ったと認定して、約25万円の損害額が認定されました。

 (1) 前記1(1)のとおり,原告は,本件ソフトの配布を原告コミュニティへの入\n会の特典とし,原告コミュニティに入会した者から入会費用を受け取ること によって,本件ソフトを独占的に利用することができる地位による利益を享\n受していた。ここで,被告が本件各行為により本件ソフトを配布した本件各\n参加者は,いずれも原告コミュニティの紹介,勧誘を受けたが入会しなかっ たこと(前記1(2))を踏まえると,被告の本件各行為がなかったならば本件 各参加者全員が入会費用を支払って原告コミュニティに入会したことを認め ることはできない。もっとも,本件各参加者のうちAは,原告コミュニティ に参加した被告と情報交換をして,被告から本件ソフトの交付を受け,また,\n本件ソフトの配布のために必要な処理等を率先して行うなどしていて,本件\nソフトの価値に強く着目していた者であり,被告の行為がなければ,本件ソ\ フトを入手するために本件ソフトが入会特典である原告コミュニティに参加\nしたと認めることが相当である。そうすると,被告の本件各行為により,原 告は少なくとも本件ソフトが入会特典である原告コミュニティに参加した者\nを1名失ったと認められる。
そして,本件ソフトが入会特典であり本件ソ\フトの再許諾料を含むといえ る原告コミュニティの入会費用は24万9900円であり,また,本件契約 において,原告がBANANAに対して支払う1回の利用許諾代金が同額で あり,再利用許諾の代金を含む原告コミュニティの参加費用はその利用許諾 代金を下回らない範囲で設定するとされていたこと(前記第2の1(2)イ)等 に照らすと,原告は,少なくとも同額の損害を被ったものと認められる。
また,原告は,BANANAに対して本件各参加者7人分の利用許諾代金 174万9300円を支払う義務を負っているなどとも主張する。しかし, 被告の本件各行為によって原告に上記の支払義務が発生したことを認めるに は足りず,原告が被告の本件各行為により同額の損害を被ったとは認められ ない。

◆判決本文

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平成29(ワ)22922  著作権に基づく差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年11月15日  東京地方裁判所

 テストに用いる質問項目の表現が著作権侵害かが争われました。裁判所は依拠性を否定して、非侵害と認定しました。\n

 (1) 出版権者は,設定行為で定めるところにより,頒布の目的をもって,その 出版権の目的である著作物を,原作のまま印刷その他の機械的又は科学的方 法により文書又は図画として複製する権利を専有し(著作権法80条1項1 号),被告が,原告の出版権を侵害したというためには,被告が,頒布の目 的をもって,その出版権の目的である著作物を複製したことが必要である。 また,原告が出版権を有する著作物について,被告が本件出版物において複 製したというためには,本件出版物が,被告によって,原告が出版権を有す る著作物に依拠して作成されたことを要する。 原告は,本件においてAを著作者とする著作物の出版権侵害を主張すると ころ,本件出版物の質問票における質問の表現と新日本版の質問票における\n質問の表現とを比較し,その類似性に基づいて上記出版権侵害を主張してお\nり,本件出版物の質問票に記載された質問が,新日本版の質問票に記載され た質問に依拠して作成され,本件出版物の質問票が,原告が出版権を有する 新日本版の質問票を複製していると主張していると解され の主張),まず,この点について判断する。
(2) 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができ る。
ア Bらは,昭和63年10月10日,日本心理学会第52回大会におい て,「MMPI自動診断システム(1)翻訳,標準化,および,実施プロ グラム」と題する発表を行った。\nこの発表において,Bらは,旧三京房版におけるMMPIの質問の翻\n訳には多数の誤訳などの問題が存在し,これが日本においてMMPIが 活用されていない原因であるから,MMPIの質問の翻訳と標準化をや り直すべきであると考え,Bがまず翻訳の下訳を作成し,それにEとC がそれぞれ手を加えた2種類の訂正原稿を比較しながら,3名で最終原 稿をまとめたと発表した(以下,この翻訳を「Bら新訳」という。)。ま\nた,Bらは,Bら新訳につき,標準化作業を継続中であると発表した。\n(乙2の1,乙4,10) なお,心理検査は測定値(得点)によって特定の性格特性を測定する が,その測定値(得点)に基づいて測定事項を正しく判断するためには, 個人が所属する準拠集団ごとに,当該心理検査を相当数の被験者に対し て実施したデータを集積し,得点の分布を調べ,当該心理検査の測定値 (得点)を解析する基準(尺度)を明らかにする作業が必要であり,こ れを標準化という。(甲3)
イ Bらは,昭和63年12月15日発行の「なぞときロールシャッハ ロールシャッハ・システムの案内と展望」において,昭和62年11月 7日当時には,Bら新訳は完成していなかったこと,昭和63年6月当 時にはBら新訳に基づく検査を実施したことを記載した(乙9)。
ウ Bらは,平成元年11月30日の同学会第53回大会において「MM PI自動診断システム(2)暫定的標準化と自動解釈について」と題す る発表を行った。この発表\において,Bらは,Bら新訳は翻訳の誤りが 多い旧三京房版とはほとんど一致しないこと,及びBら新訳について標 準化作業を継続中であることを発表した。(乙2の2)\n
エ Bらは,平成2年11月30日の同学会第53回大会において「MM PI自動診断システム(3)新版,三京房版,メイヨウ新基準との比較」 と題する発表を行った。この発表\において,Bらは,Bら新訳につき標 準化作業を行い,「現在までに参加した被験者は男性113名,女性15 6名である。」と発表した。(乙2の3)\n
オ Bらは,平成4年3月25日,Bら新訳を付録として付した「コンピ ュータ心理診断法 MINI,MMPI-1自動診断システムへの招待」 と題する書籍を出版した(乙4)。
カ 平成13年1月1日発行のF編著「国際的質問紙法心理テストMMP I-2とMMPI-Aの研究 Minnesota Multiphasic Personality Invent ory 2 & A Study(北里大学看護学部精神保健学教授平成12年3月退任 記念論集)」には,MMPIには旧三京房版も含めて15種類の翻訳があ ったが,それらには誤訳があるほか恣意的な意訳などの疑問点があった 旨の記載があり,また,「1992年(判決注:平成4年):富山大学の Bらが,これ等の疑問点を訂正する形のMMPI-1新訳版を作成。」と の記載があり,また,「1993年(判決注:平成5年):Dらがこれま での翻訳を修正し,再標準化しMMPI−1新日本版を作成。」との記載 がある(乙1)。
キ Bらは,平成18年,Bら新訳の質問項目92の「看護婦」との訳語 について,「看護師」と変更した(乙7,10〔17頁〕)。
ク 被告は,平成29年,Bら新訳のうち上記キの部分を変更した質問が 掲載された本件出版物を出版した(前提事実 オ)。
ケ 新日本版について,以下の事実が認められる。(乙13)
新日本版は,平成5年10月1日,MMPI新日本版研究会を編者と して原告から出版された(前記前提事実(2)エ)。同研究会の代表はDであ\nり,同研究会のメンバーにAは含まれていない。 新日本版の前書きには,旧三京房版は改訂の必要性が痛感されていた こと,Aらは改訂に着手したが完成しなかったこと,Aから依頼を受け て平成2年にMMPI新日本版研究会が旧三京房版の改定作業を引き受 けたこと,MMPI新日本版研究会は,より適切な日本語版を作成する という目的からMMPI原版を最も適切と思われる日本語に移して適切 な標準化作業を行うという条件の下でこの作業に取り組み,項目の配列 順序は旧三京房版を踏襲するがそれ以外の点では全く独自の観点から作 業を進め,新日本版を作成したことなどが記載されている。
(3) 以上の事実によれば,Bらは,昭和62年11月7日から昭和63年6月 までに間にBら新訳を完成させ,これを前提として,学会での発表を行うと\n共に標準化作業を進め,平成4年3月25日にBら新訳を掲載した書籍を出 版したと認められる。前記前提事実(2)エのとおり,新日本版は平成5年10 月1日に出版されたものであるから,Bらが,Bら新訳を作成した昭和62 年から昭和63年当時,新日本版に接し,これを用いてBら新訳を作成する ことは不可能であったといえる。\n
これに対し,原告は,昭和63年には既に新日本版の第一段階の質問票は 完成しており,Bらがこれを参照した可能性がある旨主張するが,MMPI\n新日本版研究会が旧三共房版の改訂作業を引き受けたのは平成2年であり, 同研究会が「MMPI原版を最も適切と思われる日本語に移」す作業を行っ たこと(前記(2)ケ)からすれば,昭和63年の段階で新日本版の質問票の質 問と同内容の翻訳が完成していたと認めることは困難であるし,また同翻訳 が公表され,Bら一般の研究者が参照し得たと認めるに足りる証拠もない。\n そして,本件出版物の質問票の質問は,Bら新訳の質問92が「看護婦に なりたいと思います。」から「看護師になりたいと思います。」へと変更され た以外は,Bら新訳の質問と同一であるから(甲4の1,乙10,前記(2) ク),本件出版物の質問票の質問が,新日本版の質問票の質問に依拠して作 成されたと認めることはできない。なお,本件出版物の質問票の質問と新日 本版の質問票の質問は,その内容においてほぼ重なるが,これらはいずれも MMPIを翻訳したものでその内容が共通することは当然であり,その重な りによって,本件出版物の質問票が新日本版の質問票に依拠して作成された と認めることはできない。 したがって,本件出版物は新日本版を複製したものであるとは認められず, 原告主張の出版権侵害は理由がない。
(4) 原告は,原告が旧三京房版の出版権を有するとも主張するため,本件出版 物の質問票が,旧三京房版の質問票を複製したものであるか否かについても 検討する。
本件出版物の質問票の質問は,その内容において,旧三京房版の質問票の 質問と重なるものもあるが(甲3,乙6,10),これらもいずれもMMP Iを翻訳したものであるから,このことをもって直ちに本件出版物の質問票 が旧三京房版の質問票に依拠してこれを再製したものとはいえない。前記(2) で認定したとおり,Bらは,旧三京房版における質問の翻訳に疑問を持ち, 独自にMMPIの英文の翻訳等を行ってBら新訳を完成させたものと認めら れること,上記各質問票の質問の日本語の表現は同じ英文に対応するものと\nしてはいずれも相当に違うこと(甲3,乙6,10)などから,本件出版物 の質問票の質問が旧三京房版の質問票の質問を複製したものであると認める ことはできず,その他,本件出版物が旧三京房版を複製したことを認めるに 足りる証拠はない。したがって,本件出版物が旧三京房版を複製したもので あるとは認められない。

◆判決本文

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