知財みちしるべロゴマーク
知財みちしるべトップページへ

更新メール
購読申し込み
購読中止

知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

複製

令和2(ワ)3931 損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年10月6日  東京地方裁判所

 鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が認められ、約200万円の損害賠償が認められました。被告は、新聞記事は事実の報道なので、著作物無しとも主張しましたが、読みやすく表現しているので創作性ありと認定しました。また、記録が残っていないH30年以前の配信についても、推定認定されています。

 ア 平成30年度掲載記事のうちの一部の記事について、被告は、その著作物 性を争っている。 しかしながら、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機 器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業 等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に 関する記事である。そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報 について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど されており、表現上の工夫がされている。また、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テー\nマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関 係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成している。したがって、平成30年度掲載記事は、\nいずれも創作的な表現であり、著作物であると認められる。
・・・
以上の事実に、平成30年度について被告が本件イントラネットに掲載し た原告が著作権を有する記事の数が前記 のとおりであることなどの状況 等を考慮すると、平成30年度掲載記事の選別を行ったC証人が選別した平 成28年度及び平成29年度については、被告による著作権侵害が認められ る記事の総数(自社及び沿線記事に分類した記事及びそれに分類していない 記事の合計)は、これら両年度の枠付き記事(自社及び沿線記事に分類した 記事の一部)の合計である52本の3倍に当たる156本を下らないもので あると認定するのが相当である。
・・・
原告は、本件個別規定に基づく損害額を主張するところ、上記によれば、原 告においては、少なくも平成20年以降は、本件個別規定を適用して原告が発 行する新聞の記事について利用許諾を検討する体制を整えており、これらの規 定を複数年にわたり、少なくとも1000件程度適用し、これに基づく使用料 を徴収してきた実績があることが認められる。また、本件個別規定には、社内 LAN(イントラネット)での利用を想定した文言がある。他方、本件で問題 になっているイントラネットでの掲載に関して本件個別規定に基づき支払われ た利用料の額等の実績については不明であり、また、本件個別規定には件数が 多い場合の割引に関する規定もあり、件数が相当に多い場合、どの程度本件個 別規定の本文で定める額が現実に適用されていたかが必ずしも明らかではない。 さらに、本件イントラネットによる新聞記事の掲載は、被告の業務に関連する 最新の時事情報を従業員等に周知することを目的とするものであったことから すると、掲載から短期間で当該記事にアクセスする者は事実上いなくなると認 められる。これらの事実に加え、本件に係る被告による侵害態様等を総合的に 考慮すると、本件については、原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額 (著作権法114条3項)は、掲載された原告の記事1本について掲載期間に かかわらず3000円として、原告に同額の損害が生じたものと認めるのが相 当である。
被告は、被告による使用が本件個別規定における「非営利で公共性のある使 用」に当たること、被告が取材対象者に当たる記事も存在することなどを指摘 する。本件個別規定の【割引】、【無料】の項目にはこれらの事情により原告が 無料での利用を許諾することが記載されている。しかし、株式会社である被告 にこれらの規定が適用されたかは明らかではなく、また、上記で定められてい る取扱いをしなければならないことが一般的であったことを認めるに足りる証 拠はない。また、被告は、本件は本件包括規定によるべきであると主張するが、 本件個別規定について前記 ア、イに認定した事情が認められる状況で、本件 包括規定の存在は、本件個別規定も参酌して上記のとおりの損額の額を認定す ることの妨げになるものとは認められない。 前記のとおり、平成30年度以前については、遅くとも平成30年3月31 日までに、原告が著作権を有する記事が458本掲載されたと認めるのが相当 であるから、これによる損害は137万4000円となる。平成30年度掲載 記事について、別紙損害金計算表の「掲載月」欄記載の月に対応する「記事数」欄記載の数の記事について侵害が成立すると認められる(なお、原告は、記事\n177、185、215について被告で2本分の記事が掲載されたことを理由 に2本分の損害を計上しているが、単一の記事に係る単一のイントラネットへ の掲載であることなどからすると、いずれも1本分の損害を計上するのが相当 である。)から、損害額は「損害額」欄記載のとおりとなり、その合計額は、3 9万9000円になる。

◆判決本文

原告新聞社が異なる関連事件です。こちらは約460万円の損害が認められています。

◆令和2(ワ)12348

関連カテゴリー
 >> 著作物
 >> 複製
 >> 公衆送信
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

令和3(ワ)10987  著作権侵害損害賠償請求事件  著作権 令和4年2月24日  東京地方裁判所

 「文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表\現されたものとはいえない」として、著作権侵害ではないと判断されました。

そこで検討すると,著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)と は,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを 再製することをいい(最高裁判所昭和50年(オ)第324号同53年9月 7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照),著作物の翻案(著作 権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特\n徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新た\nに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著\n作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創\n作する行為をいう。しかして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を\n保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して 創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\n現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作\n物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないもの と解される(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第 一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依 拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,著作権法による保護の 対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である\n(著作権法2条1項1号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,\n厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の何 らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文章自体\nがごく短く又は表現上制約があるため他の表\現が想定できない場合や,表現\nが平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表現されたものと\nはいえないから,創作的な表現であるということはできない。\n したがって,被告各記述を含む被告の雑誌記事,書籍等が,被告各記述に 対応する原告各記述との同一性により原告雑誌記事,原告ルポの複製又は翻 案に当たるか否かを判断するに当たっては,両者において共通する部分が, 思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部\n分又は表現上の創作性がない部分でないかどうかを検討する必要がある。\nそこで,以上の見地から,別紙1及び2の各対比表について個別に検討す\nることとする。
(2) 別紙1の対比表について\n
ア 「1−1あ」,「1−5あ」,「1−6あ」,「1−7あ」,「1−10あ」に ついて
この箇所の原告記述と被告記述とでは,1)奨学金の原資を確保するので あれば,元本の回収が何より重要であること,2)日本学生支援機構は20\n04年以降,回収金をまず延滞金と利息に充当するという方針をとってい ること,3)日本学生支援機構の2010年度の利息収入は232億円,延\n滞金収入は37億円に達し,これらの金は経常収益に計上され,原資とは 無関係のところにあること,といった点が共通している。 しかし,上記共通点のうち,1)は,原告雑誌記事が発行,公表される以\n前から既に問題になっていた奨学金の金融事業化についての一般的な考察 (乙5ないし7)であって,思想又はアイデアに属するものというべきで ある。2)と3)は,奨学金の回収方法や日本学生支援機構の収支に関する事\n実であり,3)の後段の,回収された金と奨学金の原資との関係についての 評価は,これもまた1)と同様に奨学金の金融事業化についての一般的考察 として思想又はアイデアに属するものというべきであって,原告記述と被 告記述とは,表現それ自体ではない部分において同一性を有するにすぎな\nい。また,1)ないし3)の記述順序は同一ではあるが,その記述順序自体は 独創的なものとはいえないし,文章の分量も短く簡潔で,表現も特徴のな\nいありふれたものといわざるを得ず,表現上の創作性が認められない部分\nにおいて同一性を有するにすぎない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 著作物
 >> 複製
 >> 翻案
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

令和1(ワ)26366  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年5月27日  東京地方裁判所

 ポスティング業務を行うために住宅地図を購入し、これを適宜縮小して複写し、これにさらに、集合住宅名、ポストの数、配布数、交差点名、道路の状況、配布禁止宅等のポスティング業務に必要な情報を書き込むなどした地図(以下「ポスティング用地図」という。)の原図を作成して、配置していた被告に対して、差止請求と3000万円の損害賠償が認められました。

一般に、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号に よって、客観的に表現するものであるから、個性的表\現の余地が少なく、文 学、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭 いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨選択及びそ の表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を\n果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表れ得るものということが\nできる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及びその表\n示の方法を総合して判断すべきものである。
・・・
前記(2)によれば、本件改訂により発行された原告各地図は、都市計画図等 を基にしつつ、原告がそれまでに作成していた住宅地図における情報を記載 し、調査員が現地を訪れて家形枠の形状等を調査して得た情報を書き加える などし、住宅地図として完成させたものであり、目的の地図を容易に検索す ることができる工夫がされ、イラストを用いることにより、施設がわかりや すく表示されたり、道路等の名称や建物の居住者名、住居表\示等が記載され たり、建物等を真上から見たときの形を表す枠線である家形枠が記載された\nりするなど、長年にわたり、住宅地図を作成販売してきた原告において、住 宅地図に必要と考える情報を取捨選択し、より見やすいと考える方法により 表示したものということができる。したがって、本件改訂により発行された\n原告各地図は、作成者の思想又は感情が創作的に表現されたもの(著作権法\n2条1項)と評価することができるから、地図の著作物(著作権法10条1 項6号)であると認めるのが相当である。また、前記(2)アのとおり、本件改訂より後に更に改訂された原告各地図は、いずれも本件改訂により発行された原告各地図の内容を備えるものであるから、同様に地図の著作物であると認めるのが相当である。なお、本件改訂より前に発行された原告各地図については、原告は、本件訴訟において、被告らにより著作権が侵害された対象として主張していないので(前記第2の4(1)(原告の主張)エ)、著作物性についての検討を要しない(以下においては、「原告各地図」という場合、特に断らない限り、本件改訂以降に発行されたものを指す。)。
(5) これに対して、被告らは、1) 地図に著作物性が認められる場合は一般的に 狭く、住宅地図は他の地図と比較して著作物性が認められる場合が更に制限 される、2) 原告各地図は、江戸時代の古地図や既存の地図、都市計画図に依 拠して作成されたものであり、創作性が発揮される余地は乏しい、3) 原告各 地図は機械的に作成され、正確・精密であるとされることからすると、創作 性が発揮される部分は更に限定され、国土地理院は、2500分の1の縮尺 の都市計画基本図について、著作物性が認められる可能性は低いとの見解を\n示している、4) 過去に作成された住宅地図には家形枠が記載されたものがあ り、家形枠を用いた表現自体ありふれている、5) 原告は地図作成業務のうち 少なくとも6割を海外の会社に対して発注しており、原告各地図には独自性 がないとして、原告各地図には著作物性が認められないと主張する。 しかし、上記1)については、前記(1)のとおり、地図の著作物性は、記載す べき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべきものであると\nころ、前記(4)のとおり、原告各地図は、その作成方法、内容等に照らして、 作成者の個性が発現したものであって、その思想又は感情を創作的に表現し\nたものと評価できるから、地図の著作物であると認められる。 上記2)については、原告が古地図や都市計画図等を参照して原告各地図を 作成したものであったとしても、前記(2)アのとおり、原告各地図は、本件改 訂によって、都市計画図等をデータ化したものに、居住者名や建物名、地形 情報、調査員が現地を訪れて調査した家形枠の形状等を書き加えるなどして 作成されたものであり、その結果、前記(2)イの特徴を備えるに至ったもので あって、このような原告各地図の作成方法、特徴等に照らせば、原告各地図 は、都市計画図等に新たな創作的表現が付加されたものとして、著作物性を\n有していると認められる。
上記3)については、原告各地図が正確・精密であるとしても、前記(1)のと おり、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法等において創作性を発\n揮する余地はある。また、被告らの指摘する国土地理院の見解(乙63)は、 都市計画基本図について述べたものであり、住宅地図作成会社が作成する住 宅地図一般について述べたものではないし、上記2)について説示したとおり、 原告各地図は、都市計画図等を基図としてデータ化した上、これに種々の情 報を書き加えるなどすることで、住宅地図として完成させたものであるから、 国土地理院の上記見解は原告各地図に当てはまるものではない。さらに、前 記(2)イのとおり、原告各地図は、地図の4辺に目盛りが振られ、当該地図の 上、右上、右、右下、下、左下、左及び左上の各位置にある地図の番号が記 載されており、目的とする地図を検索しやすいものとなっている上、信号機 やバス停等がイラストを用いてわかりやすく表示されたり、建物等の居住者\n名や店舗名等を記載することにより住居表示についてもわかりやすくする工\n夫がされているなどの特徴を有するのに対し、証拠(乙70ないし73)に よれば、都市計画基本図にはこのような特徴が全くないことが認められ、原 告各地図と都市計画基本図とでは、そもそも性質が異なることから、同列に 論じることはできない。
上記4)については、住宅地図において家形枠を記載することがよくあると しても、原告各地図における家形枠の具体的な表現がありふれていることを\n認めるに足りる証拠はないから、直ちに原告各地図の著作物性を否定するこ とはできないというべきである。
上記5)については、原告が原告各地図の作成業務を海外の会社に発注して いることのみをもって、原告各地図の独自性を否定し、ひいては、その著作 物性を否定することはできないというべきである。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 著作物
 >> 複製
 >> 公衆送信
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

平成31(ワ)8969  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年4月22日  東京地方裁判所

 ゲーム画面が著作権侵害か否か争われました。前提として裁判管轄についても争われました。後者の裁判管轄は「あり」としましたが、被告は、リンク設定行為をしただけなので、複製及び公衆送信には該当しないと、請求棄却されました。

証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、原告及び被告は、いずれも中国 に住所を置く法人であり、日本に事務所等の拠点を有しないこと、被告ゲー ムの開発や配信に関する主要な作業は中国において行われたことが認められ る。これらの事情によれば、本件訴訟に関する証拠が中国に存在することが うかがわれるから、本件を日本の裁判所で審理した場合には、被告が、本件 訴訟の争点に関する主張立証をする際に、中国語で記載された書類を日本語 に翻訳したり、中国語を話す関係者のために通訳を手配したりするなどの一 定の負担を被り得ることは、否定し難い。
しかし、本件訴訟における原告の請求は、日本国内向けに配信された被告 ゲーム及びそれに関連する画像の複製を差し止め、被告ゲーム等のデータを 削除し、被告ゲームの売上げに基づき著作権法114条2項によって推定さ れる額の損害を賠償すること等を求めるというものである。そうすると、本 件訴訟における請求の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告 が主張する上記損害は日本において発生したものと解されるから、本件は、 事案の性質上、日本とも強い関連性を有するというべきである。 また、本件訴訟の争点は、前記第2の3及び前記第3のとおり、原告各画 像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性(争点2−1)、被告による原\n告画像1に係る著作権侵害の成否(争点2−2)、被告が原告各画像に依拠 して被告各画像を作成したと認められるか否か(争点2−3)、差止め及び 削除請求の必要性(争点3)並びに損害額(争点4)である。この点、上記 争点2−1については、原告各画像と被告各画像の対比や同一性ないし類似 性が認められる部分が創作的な表現であるか否かに関する検討を要するとこ\nろ、それらの点に係る主張立証は、主として原告各画像及び被告各画像自体 に基づいて行うことになる。これに加えて、他の画像に基づき、上記同一性 ないし類似性の認められる部分がありふれた表現であることの主張立証を行\nうことも考えられるが、当該他の画像に関する証拠が中国に存在するとして も、その性質上、翻訳等の作業は必要とされないであろうから、被告に過大 な負担が生じるとは認め難い。上記争点2−2は、本件リンク設定行為が原 告画像1に係る原告の著作権を侵害するかどうかを、主として日本の著作権 法の解釈、適用によって判断するというものであるから、証拠の所在地が当 該争点の判断において重要な意味を持つものとはいえない。上記争点2−3 に関する証拠としては、原告ゲーム及び被告ゲーム以外のゲーム等の画像及 び公表時期に関する資料、ゲーム制作者の陳述書等が想定されるが、それら\nの全てが中国にのみ所在するとはうかがわれず、立証に際して被告に過大な 負担が生じるとまでは認め難い。上記争点3については、前記第3の3のと おり、被告ゲームの配信が中止された事実が重要な評価障害事実として主張 立証され得るところ、被告ゲームが日本国内向けに配信されたオンラインゲ ームであることを踏まえると、上記事実に関する主要な証拠は日本に所在す るものと認められる。上記争点4についても、上記のとおり、原告が主張す る損害は日本において発生したものと解されるから、損害額の算定の基礎と なる主要な証拠は日本に所在するものと考えられる。したがって、本件が日 本で審理されるとしても、本件の重要な争点に係る主張立証に当たり、被告 に過大な負担が生じるとまでは認められない。
(2) これに対し、被告は、1)本件訴訟と当事者、事案及び争点において密接な 関連性が存在する別件中国訴訟が中国の裁判所において係属していること、 2)原告と被告は、当然に、本件訴訟を中国の裁判所に提起することが最も適 切であり、本件が中国の裁判所での解決が図られると想定していたこと、3) 本件訴訟に関する客観的な事実関係は全て中国において発生したこと、4)本 件訴訟の証拠は全て中国国内に存在すること、5)本件を日本の裁判所で審理 する場合には被告に過大な負担を課すること等を根拠として挙げ、本件訴訟 には民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」があると主張する。 しかし、まず、上記1)についてみるに、本件訴訟と別件中国訴訟は、いず れも原告が当事者であるという点において共通するものの、被告は別件中国 訴訟の当事者の地位にはないから、当事者が完全に一致するものではない。 しかも、別件中国訴訟においては、原告ゲームの中国語版の表現と「C」と\n称するゲームの表現の類否等が争点とされているのであって、被告ゲームの\n表現との類否は争点とされていないばかりか、証拠(甲10)によれば、別\n件中国訴訟において争点とされている原告ゲームの表現はいずれも原告各画\n像とは異なる画像等に係るものであると認められる。そうすると、本件訴訟 と別件中国訴訟の事案及び争点はいずれも大きく相違するものといえるから、 本件訴訟と別件中国訴訟との間に強い関連性があるとまでは認められない。 次に、上記2)についてみるに、上記のとおり、本件訴訟と別件中国訴訟と の関連性は強くない上、原告ゲームと被告ゲームがいずれも日本国内向けに 配信されたスマートフォン向けのオンラインゲームであることに照らすと、 別件中国訴訟が本件訴訟に先立って中国国内の裁判所に係属していたとして も、原告ゲームと被告ゲームに関する著作権侵害に関する紛争の解決が中国 の裁判所で図られることが想定されていたとまでは認められない。 さらに、上記3)ないし5)についてみるに、前記(1)のとおり、本件の請求 の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告が主張する上記損害 は日本において発生したものと解されることから、本件に関する客観的な事 実関係が全て中国において発生したということはできない。また、前記(1) のとおり、本件の証拠が専ら中国に存在するとは認められないし、本件を日 本の裁判所が審理するとしても、立証に関して被告に過大な負担を生じさせ るものとまでは認められない。 したがって、被告の上記1)ないし5)の主張はいずれも理由がない。
(3) 以上の次第で、本件の事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の 所在地、原告を当事者とする中国の裁判所に係属中の訴訟の存在その他の事 情を十分に考慮しても、本件訴訟について、民事訴訟法3条の9所定の「特\n別の事情」があると認めることはできない。
・・・
ア 証拠(甲9、乙15ないし17)及び弁論の全趣旨によれば、本件リン ク設定行為は、本件動画の表紙画面である被告画像1をリンク先のサーバ\nーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示させるものにすぎず、\n被告は、本件リンク設定行為を通じて、被告画像1のデータを本件ウェブ ページのサーバーに入力する行為を行っていないものと認められる。そう すると、前記(2)アのとおり原告画像1を複製したものと認められる被告 画像1を含む本件動画をYouTubeが管理するサーバーに入力、蓄積 し、これを公衆送信し得る状態を作出したのは、本件動画の投稿者であっ て、被告による本件リンク設定行為は、原告画像1について、有形的に再 製するものとも、公衆送信するものともいえないというべきである。
イ これに対し、原告は、1)本件ウェブページに被告画像1を貼り付ける行\n為も、本件リンク設定行為も、本件ウェブページの閲覧者にとっては、何 らの操作を介することなく被告画像1を閲覧できる点で異なるところはな いこと、2)本件リンク設定行為は、被告画像1を閲覧者の端末上に自動表\n示させるために不可欠な行為であり、かつ、原告画像1の複製の実現にお ける枢要な行為といえること、3)本件リンク設定行為をすることにより、 被告ゲームを宣伝し、被告ゲームの販売による多大な利益を得たことを指 摘し、規範的にみて、被告が複製及び公衆送信の主体と認められる旨を主 張する。しかし、上記1)についてみると、単に、本件ウェブページに被告画像1 を貼り付ける等の侵害行為がされた場合と同一の結果が生起したことをも\nって、本件リンク設定行為について、複製権及び公衆送信権の侵害主体性 を直ちに肯定することはできないというべきである。 また、上記2)についてみると、仮に枢要な行為に該当することが侵害主 体性を基礎付け得ると解したとしても、本件リンク設定行為の前の時点で 既に本件動画の投稿者による原告画像1の複製行為が完了していたことに 照らすと、本件リンク設定行為が原告画像1の複製について枢要な行為で あるとは認め難いというべきである。なお、本件動画は、本件ウェブペー ジを閲覧する方法によらずとも、本件動画が投稿されたYouTubeの 「D」のページにアクセスすることによっても閲覧することができるから、 本件リンク設定行為が原告画像1の公衆送信にとって枢要な行為であると も認められない。 さらに、上記3)についてみると、本件全証拠によっても、本件リンク設 定行為により被告がどの程度の利益を得ていたのかは明らかではないから、 その点をもって、被告が原告画像1の複製及び公衆送信の主体であること を根拠付けることはできない。 したがって、上記1)ないし3)の点を考慮しても、被告を原告画像1の複 製及び公衆送信の主体であると認めることはできず、原告の上記主張は採 用することができない。
ウ また、原告は、仮に被告が著作権侵害の主体であると認められない場合 であっても、少なくとも、被告が本件リンク設定行為により上記著作権侵 害を幇助したものと認められると主張する。 しかし、前記アのとおり、被告による本件リンク設定行為は、被告画像 1をリンク先のサーバーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示\nさせるものにすぎず、本件動画の投稿者による被告画像1を含む本件動画 をYouTubeが管理するサーバーに入力・蓄積して公衆送信し得る状 態にする行為と直接関係するものではない。そうすると、本件リンク設定 行為が本件動画の投稿者による複製及び公衆送信行為自体を容易にしたと はいい難いから、被告による本件リンク設定行為が、被告画像1に係る原 告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を幇助するものと認めることは できない。 したがって、被告を原告画像1の複製及び公衆送信の幇助者であると認 めることはできない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 著作物
 >> 複製
 >> 公衆送信
 >> 裁判管轄
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

令和2(ワ)11834  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年1月27日  大阪地方裁判所

 漏れていたのでアップします。原告のイラストをテレビに自作イラストとして投稿して、放映された事件で、著作権侵害として、34万円の損害賠償が認められました。著作権侵害の場合、特許などと異なり、故意・過失が侵害認定要件となっていますが、「検索サイトによる画像検索等の方法により特定の画像の制作者等を特定することは,特別の専門的知識等がなくとも比較的容易」と判断されています。  原告は,平成28年6月19日,自ら作成した本件イラストを原告筆名の名義で 開設する SNS「ツイッター」のアカウント(以下「原告アカウント」という。) により投稿してこれを公表した。\nまた,原告は,同年10月頃,イラスト集(以下「本件イラスト集」という。) を出版したが,本件イラスト集には掲載されたイラストの著作者名として原告筆名 が表示され,また,本件イラストもこれに掲載されている。\nさらに,本件イラストは,令和元年9月10日以降,「コンビニプリント」と称 するサービスにより,全国のコンビニエンスストアでその複製物を購入し得るよう になっているところ,そのサービス提供に当たり,原告筆名が著作者名として表示\nされている。(以上につき甲5〜8,当裁判所に顕著な事実)
・・・
前提事実(第2の2(2))によれば,原告は,本件イラストの著作者とし て,その著作権及び著作者人格権を有する者と認められる。 にもかかわらず,被告が,本件応募行為等に際し,本件データを原告に無断で 複製していまじんに提供し,また,いまじんに対し本件イラストの著作者が「X 2」である旨を伝えたことにより,本件番組の放送に際してはその旨の表示がさ\nれ,原告の実名又は原告筆名は著作者として表示されなかった。\n
イ 被告の故意又は過失の有無(争点1)
被告は,本件イラストの著作者ではなく,また,その主張を前提としても, SNS を通じて知り合っただけの人物から同人の作品としてデータの提供を受けた にとどまる。 本件応募フォーム,とりわけ本件注意書の記載内容(前記1(1))に鑑みれば, 本件番組がオリジナル作品の制作者本人による応募を前提とするものであること は容易に理解される。また,この趣旨を踏まえれば,仮に制作者本人以外の者が 応募する場合であっても,応募者が制作者本人の承諾等を得た上で応募すべきこ とが求められることも,やはり容易に理解し得る。さらに,日テレ及びその系列 局で本件番組が放送されること及び放送日時等も踏まえれば,本件番組が多くの 視聴者により視聴されることも容易に予想される。\n他方,昨今のインターネットをめぐる状況を踏まえると,SNS その他ウェブサ イト等を通じて,他人が作成したイラスト等の画像データを入手することは事実 上容易であり,また,検索サイトによる画像検索等の方法により特定の画像の制 作者等を特定することは,特別の専門的知識等がなくとも比較的容易である。
以上のような事情を踏まえれば,被告は,本件応募行為等に際し,本件イラス トに係る他人の著作権及び著作者人格権を侵害することのないよう,インターネ ット上の画像検索等の客観性を有する適切な方法により,その著作者ないし著作 権者を確認すべき注意義務を負っていたことが認められる。にもかかわらず,被 告は,その主張を前提としても,単に被告に本件データを提供した人物(P3) に本件イラストが同人の作品であることなどを直接電話等で確認したにとどま る。そうである以上,被告には,本件イラストに係る著作権(複製権)及び著作 者人格権(氏名表示権)の各侵害行為について,少なくとも過失が認められる\n(なお,原告は,複製権侵害につき,明示的には被告の故意を主張するにとどま るが,その主張全体の趣旨から,過失の主張も包むものと理解される。)。これ に反する被告の主張は採用できない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 複製
 >> 著作権その他
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

令和2(ワ)32121  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月30日  東京地方裁判所

 写真の複製・翻案かが争われました。料理写真なので、構図なども一般的と判断されています。\n

 著作権法が、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、\n文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(同法2条1項1号)をいい、 複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製 することをいう旨規定していること(同項15号)からすると、著作物の複 製(同法21条)とは、当該著作物に依拠して、その創作的表現を有形的に\n再製する行為をいうものと解される。 また、著作物の翻案(同法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、 その表現上の本質的な特徴である創作的表\現の同一性を維持しつつ、具体的 表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表\現す ることにより、これに接する者が既存の著作物の創作的表現を直接感得する\nことのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される。 そうすると、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとい うためには、原告写真と被告写真3との間で表現が共通し、その表\現が創作 性のある表現であること、すなわち、創作的表\現が共通することが必要であ るものと解するのが相当である。
一方で、原告写真と被告写真3において、アイデアなど表現それ自体では\nない部分が共通するにすぎない場合には、被告写真3が原告写真を複製又は 翻案したものに当たらないと解される。そして、共通する表現がありふれた\nものであるような場合には、そのような表現に独占権を認めると、後進の創\n作者の自由かつ多様な表現の妨げとなり、文化の発展に寄与するという著作\n権法の目的(同法1条)に反する結果となりかねないため、当該表現に創作\n性を肯定して保護することは許容されない。したがって、この場合も、複製 又は翻案したものに当たらないと解される。
(2) 原告は、原告写真と被告写真3において共通する部分である共通点aない しfは創作性のある表現であるから、被告写真3は原告写真を複製又は翻案\nしたものに当たる旨主張するので、以下において判断する。
ア 共通点aについて
原告写真と被告写真3とは、被写体であるスティック春巻を2本ない し3本ずつ両側から交差させている点において共通する。 しかし、証拠(乙9)によれば、角度や向きを変えながら料理を順に 重ねて盛る「重ね盛り」という方法が存在することが認められるところ、 原告写真と被告写真3の被写体であるスティック春巻はいずれも細長い 形状を有するから、スティック春巻を盛り付ける場合に、上記の「重ね 盛り」の方法によってスティック春巻を数本ずつ交差させて配置するこ とは、スティック春巻の撮影する場合に一般的に行われるものであると いうことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8) によれば、共通点aと同様に、棒状の春巻を配置して撮影された写真が 複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は、\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点aは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点aの部分が、原告写真の共通点aの部分を複製又は翻案した ものに当たると認めることはできない。
イ 共通点bについて
原告写真と被告写真3とは、2本のスティック春巻を斜めにカットして、 断面を視覚的に認識しやすいように見せ、さらに、チーズも主役でない程 度に見えるようにしている点において共通する。 しかし、具が衣に包まれているという春巻の形状に照らすと、春巻の 具を撮影するためには春巻をカットしなければならないし、その際、具 を強調するために、断面積が大きくなるよう、斜めにカットすることは、 スティック春巻を撮影する際に一般的に採用され得る手法ということが できる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によれば、 共通点bと同様に春巻を斜めにカットした断面を配置して撮影された写 真が複数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表\n現は、ありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点bは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点bの部分が原告写真の共通点bの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
ウ 共通点cについて
原告写真と被告写真3とは、端に角度がついた、白色で模様がなく、被 写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの皿を使用して いる点において共通する。 しかし、証拠(乙10、11)によれば、白い器は料理の色を引き立て る効果があり、選択肢として基本的な色であること、料理の写真を撮影す る際には盛り付ける料理にぴったり合う大きさの皿を選択することが重要 であることが認められる。そうすると、白色で模様がなく、黄土色のステ ィック春巻とフィットする大きさの皿を使用することは、スティック春巻 の写真を撮影する上で一般的に行われ得るということができる。加えて、 証拠(甲25、26、乙2、8)によれば、共通点cと同様に、白色で模 様がなく、被写体である複数本のスティック春巻とフィットする大きさの 皿を使用して撮影された写真が複数存在すると認められることに照らすと、 上記の共通点に係る表現はありふれたものといわざるを得ない。\n以上によれば、共通点cは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点cの部分が原告写真の共通点cの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
エ 共通点dについて
原告写真と被告写真3とは、皿に並べた春巻を、正面からでなく、角度 をつけて撮影している点において共通する。 しかし、証拠(乙12)によれば、料理写真の構図として、料理を正面\nから撮影するのではなく、左右に回転させて左右向きに配置して、斜めの 方向から撮影する手法が存在することが認められる。そうすると、皿に並 べた春巻を、角度をつけて撮影することは、一般的に行われ得るというこ とができる。加えて、証拠(甲25、26、乙7、8)によれば、共通点 dと同様に、皿に並べた春巻を、角度をつけて撮影した写真が複数存在す ると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現はありふれたも\nのといわざるを得ない。 以上によれば、共通点dは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点dの部分が原告写真の共通点dの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
オ 共通点eについて
原告写真と被告写真3とは、撮影時に光を真上から当てるのではなく、 斜め上から当てることで、被写体の影を付けている点において共通する。 しかし、証拠(乙13)によれば、料理写真の撮影方法として、料理の 斜め後ろから料理に光を当て、料理上部を明るく照らすとともに手前側を 暗くして立体感を生じさせる斜め逆光という手法が存在すること、斜め逆 光は料理写真で最もよく使われるライティングであることが認められる。 したがって、被写体に影を付け、立体感を醸成するという撮影方法は、春 巻を含む料理の写真を撮影する上で一般的に用いられ得る手法であるとい うことができる。加えて、証拠(甲25、26、乙2、6ないし8)によ れば、共通点eと同様に、斜め逆光の手法を用いて撮影された春巻の写真 が多数存在すると認められることに照らすと、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点eは創作的表現であるとはいえないから、被告\n写真3の共通点eの部分が原告写真の共通点eの部分を複製又は翻案し たものに当たると認めることはできない。
カ 共通点fについて
原告写真と被告写真3とは、葉物を含む野菜を皿の左上のスペースに置 いている点において共通する。 しかし、揚げ物である春巻に、野菜が付け合わせとして盛り付けられ ることは、一般的に行われることであるといえるから、春巻の写真を撮 影する際に野菜が皿の隅のスペースに置かれることもまた、一般的に行 われることということができる。現に、証拠(甲25、26、乙2、6 ないし8)によれば、上記の共通点と同様に配置された春巻の写真が複 数存在することが認められる。そうすると、上記の共通点に係る表現は\nありふれたものといわざるを得ない。 以上によれば、共通点fは創作的表現であるとはいえないから、被告写\n真3の共通点fの部分が原告写真の共通点fの部分を複製又は翻案したも のに当たると認めることはできない。
キ 全体的観察
前記アないしカのとおり、共通点aないしfはいずれも創作的表現であ\nるとは認められないから、これらの共通点を全体として観察しても、原告 写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認められない。\n
ク 小括
以上の次第で、原告写真と被告写真3は、ありふれた表現が共通するに\nすぎず、原告写真と被告写真3との間で創作的表現が共通するとは認めら\nれないから、被告写真3が原告写真を複製又は翻案したものに当たるとは 認められない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 著作物
 >> 複製
 >> 翻案
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP

令和3(ワ)3208  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年11月9日  大阪地方裁判所

 プログラムの著作権侵害として、10億円を超える損害額が認定され、一部として6000万円の損害賠償が認められました。原告プログラムはAUTOCADです。

(1) 著作権法114条3項に基づく使用許諾料相当の損害について
ア 証拠(甲1,2,4〜9,18,乙2,3[各枝番を含む。])及び弁論の全 趣旨によれば,原告製品は,オンラインストア等で顧客に対し販売されていること, 原告製品には,永久ライセンス版と,使用期間を1か月,1年,3年に制限したサ ブスクリプション版が存在するところ,これらの動作種別は,ライセンス認証時に 原告から送付される認証コードの種別により決せられることが認められるが,被告 は,前記認定のとおり,本件海賊版製品の落札者に対し,本件海賊版製品と共に, ライセンス認証を回避する不正なプログラム,及びインターネットに接続せずにイ ンストールをすること等を指示するマニュアル等を添付して,落札者をして前記ラ イセンス認証システムを無効化させ,これによって,落札者は,使用期間の制限な く本件海賊版製品を使用することが可能になったことが認められる。\nこれらの事実関係に照らすと,原告製品の永久ライセンス版の定価をもって,原 告が原告製品の著作権の行使につき受けるべき価額であると認めるのが相当である。
イ これに対し,被告は,原告製品の定価をもって著作権法114条3項の使用 料相当額とすることは,最低限の賠償額を保障した同3項の趣旨及び文理に反する 旨を主張する。しかし,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使 用期間制限の有無や期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用 することが可能となるのであり,これによって,原告は,被告販売行為がなければ\n得られたであろう永久ライセンス版の定価の額に相当する額を得られなかったこと になるし,被告販売行為の態様は,本件海賊版製品をライセンス認証を回避しつつ インストールすることができるよう販売するという悪質なものであり,その違法性 は高く,市場への影響も大きい。 被告は,原告製品の定価と原告製品の使用料相当額として受けるべき金銭の額と は別である旨を主張するが,原告製品のようなアプリケーションプログラムの販売 価格は,その本質において著作物の使用許諾に対する対価というべきであるから, 前述のとおり,原告製品の定価をもって,著作権法114条3項が定める著作権の 行使につき受けるべき金銭の額と見ることができるのであり,被告の主張は理由が ない。
また,被告は,原告製品と動作環境との適合性や進化するセキュリティソフトと\nの相性の問題等があるため,本件海賊版製品を期間の制限なく使用できることはあ り得ないことから,原告製品の永久ライセンス版の価格を使用許諾料の基準とする のは相当でないこと,あるいは,原告製品の期間契約には,1か月,1年及び3年 の各期間設定があるところ,契約期間が長くなれば割安になることから,原告製品 のうち永久ライセンス版が設定されていないものについて1年ライセンス版の価格 を使用許諾料の基準とするのは相当でないことを主張する。しかし,前述したとお り,被告販売行為により,落札者は,もともとの原告製品の使用期間制限の有無や 期間にかかわらず,使用期間の制限なく本件海賊版製品を使用することが可能とな\nるのであり,その時点で原告には原告製品の永久ライセンス版の定価相当額の損害 が発生したというべきであって,その後,動作環境等により本件海賊版製品を使用 できなくなる可能性があることやもともとの原告製品には期間制限があることなど\nの事情は,損害額の算定には影響しないと解するのが相当である。
ウ 証拠(甲2の1〜2の18)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品の永久ラ イセンス版の定価は,別紙2−1「原告損害一覧表1」及び同2−2「原告損害一\n覧表2」の各「原告製品価格」欄記載の価格をくだらないことが認められ,被告販\n売行為による原告の損害は,同各「原告損害」欄記載の合計10億5509万67 50円をくだらない。
(2) 弁護士費用相当の損害について
被告販売行為と相当因果関係のある弁護士費用は,原告が主張する弁護士費用1 億0550万円をもって相当と認める。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> プログラムの著作物
 >> 複製
 >> 著作権その他
 >> ピックアップ対象

▲ go to TOP