キャラクターの複製・翻案であるとの主張は認められませんでした。
(2) 原告作品全体の創作性及び被告作品全体との対比について
ア 証拠(甲1,2,5〜7)によれば,原告の原著作物(別紙2)に描かれ
た原告キャラクターは,頭部は髪がなく半楕円形であり,目は小さい黒点で
顔の外側に広く離して配され,上下に分かれたくちばし部分はいずれも厚く
オレンジ色であり,上下のくちばしから構成される口は横に大きく広がり,\n体は黄色く,顔部分と下半身部分との明確な区別はなく寸胴であり,手足は
先細の棒状であるとの特徴を有しており,原告作品においては,原告キャラ
クターのこれらの特徴の全部又は一部が表現されているものと認められる。\n
イ 証拠(乙1)及び別紙6「対比キャラクター」を含む弁論の全趣旨によれ
ば,原告作品に描かれた原告キャラクターの上記特徴のうち,キャラクター
の髪を描かず,頭部を半楕円形で描く点は同別紙の「エリザベス」及び「タ
キシードサム」と,目を小さい黒点のみで描く点は同別紙の「タキシードサ
ム」,「アフロ犬」,「ハローキティ」,「にゃんにゃんにゃんこ」及び「ラ
イトン」と,口唇部分を全体的に厚く,口を横に大きく描く点は同別紙の「お
ばけのQ太郎」と,顔部分と下半身部分とを明確に区別をせずに寸胴に描き,
手足は手首・足首を描かずに先細の棒状に描く点は同別紙の「おばけのQ太
郎」及び「エリザベス」(ただし,いずれも手の部分)と共通し,いずれも,
擬人化したキャラクターの漫画・イラスト等においては,ありふれた表現で\nあると認められる。
ウ そうすると,原告作品は,上記の特徴を組み合わせて表現した点にその創\n作性があるものと認められるものの,原告作品に描かれているような単純化
されたキャラクターが,人が日常的にする表情をし,又はポーズをとる様子\nを描く場合,その表現の幅が限定されることからすると,原告作品が著作物\nとして保護される範囲も,このような原告作品の内容・性質等に照らし,狭
い範囲にとどまるものというべきである。
(3) 被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かについて
上記(2)を踏まえ,被告作品が原告作品の複製又は翻案に当たるか否かにつ
いて,作品ごとに以下検討する。
ア 被告作品1について
(ア) 被告作品1−1について
a 原告作品1−1と被告作品1−1との対比
原告作品1−1と被告作品1−1とを対比すると,両作品は,ほぼ正
面を向いて立つキャラクターにつき,目を黒点のみで描いている点,く
ちばしと肌の色を明確に区別できるように描いている点,顔部分と下半
身部分とを明確に区別せずに描いている点,胴体部分に比して手足を短
く描いている点のほか,黒色パーマ様の髪が描かれている点において共
通するが,黒色パーマ様の髪型を描くこと自体はアイデアにすぎない上,
その余の共通点は,いずれも擬人化されたキャラクターにおいてはあり
ふれた表現であると認められる。\n 他方,両作品については,原告作品1−1では,キャラクターの体色
が黄色で,両目が小さめの黒点のみで顔の外側付近に広く離して描かれ,
上下のくちばしはオレンジ色で,たらこのように厚く描かれているのに
対し,被告作品1−1では,キャラクターの体色は白色で,両目がより
顔の中心に近い位置に,多少大きめの黒点で描かれ,上下のくちばしは
黄色で原告キャラクターに比べると厚みが薄く,横幅も狭く描かれてい
るなどの相違点がある(以下,これを「作品に共通する相違点」という。)。
加えて,原告作品1−1では,キャラクターが,いわゆるおばさんパ
ーマ状の髪型(毛量は体の約5分の1程度で,への字型の形状をし,眉
毛も見えている。)をして,口を開け,左手を上下に大きく振りながら,
表情豊かに相手に話しかけているかのような様子が表\現されているの
に対し,被告作品1−1では,いわゆるアフロヘアー風のこんもりとし
た髪がキャラクターの体全体の半分程度を占めるなど,その髪型が強調
され,キャラクターの表情や手足の描写にはさしたる特徴がないなどの\n相違点があり,その具体的な表現は大きく異なっている。\n 以上のとおり,両作品は,アイデア又はありふれた表現において共通\nするにすぎず,具体的な表現においても上記のとおりの相違点があるこ\nとにも照らすと,被告作品1−1から原告作品1−1の本質的特徴を感
得することはできないというべきである。
したがって,被告作品1−1は,原告作品1−1の複製にも翻案にも
当たらない。
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