2024.06. 6
令和3(ワ)13623 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年4月14日 東京地方裁判所
漏れていたのでアップします。コミュニティサイト運営者が、公衆送信権の侵害主体であると認定され、差止と7万円の損害賠償が認められました。
(2)ア 本件投稿者は、原告写真の複製物であり被告各写真を本件記事の文章と
ともに被告に送信した。
イ もっとも、本件投稿者が被告に上記送信をしたことにより、直ちに、被
告各写真が公衆送信されることになったとは認められない。
本件ウェブサイトでは、会員が被告に送信した記事を被告地域パートナ
ーが承認して、初めて、その記事を本件ウェブサイトの一般の閲覧者が閲
覧できるようになる(前記1(1)ウ )。本件投稿者が被告に送信した被告
各写真を含む本件記事についても、被告の地域パートナーが、その内容等
を審査して、それを承認したことにより、その承認後、被告各写真や本件
記事を本件ウェブサイトの一般の閲覧者が閲覧できるようになったと推認
することができる。
ウ 被告は、旅行に関する情報提供サービス及びそのコンサルティング業等
を目的とする株式会社であり(前記前提事実(1)イ)、本件ウェブサイトに
は、「ジャパントラベルは、日本の魅力を世界に発信するメディアであり、
その他コンサルティングビジネスおよび第二種旅行業登録の訪日専門トラ
ベルエージェンシーを運営」(前記1 ア)、「「インバウンド専門旅行会社
経験豊富な外国人・日本人スタッフがカスタマイズツアーを主力とした
インバウンドツアーをサポートします。」(同イ )と記載されていること、
本件ウェブサイトを通じて、ホテル又は飛行機を予約したり、鉄道切符や\n施設入場券、各種パッケージツアー、体験型ツアーを購入したり、オーダ
ーメイドの旅の予約をしたりすることができること(同イ )からすれ
ば、本件ウェブサイトは、会員から記事の送信を受けて、その記事を表示\nすることで観光地の情報を提供しつつ、それを利用してツアーの企画など
の旅行関連事業を行うことも目的としたものといえる。したがって、本件
ウェブサイトは、被告の旅行関連事業の営業のために設けられているとい
う性質も有するといえる。
本件ウェブサイトでは、被告が利用者コンテンツを審査し、編集等する
旨の規定が設けられている(前記1 ウ )だけではなく、実際に、会員
が記事を被告に送信しても、被告地域パートナーの承認がない限り当該記
事は本件ウェブサイトに掲載されず、会員が被告に送信した写真は、被告
地域パートナーが承認という作業をすることによって、自動公衆送信装置
といえるサーバーに蔵置、記録され、送信可能化されるに至り、公衆送信\nされることになったといえる。また、前記 ウによれば、本件ウェブサイ
トは、被告が行う旅行関連事業の営業のために設けられているという性質
も有するといえる。会員による記事の送信は、そのような被告のための記
事の提供という面も有していた。被告地域パートナーは、本件ウェブサイ
トにおいて、会員から送信された記事の内容について、上記のとおりの本
件ウェブサイトの目的に沿うものであるかやその目的との関係でその質を
維持するものであるかなどを広く審査して、承認の可否を決定し、また必
要な修正を行っていたと推認でき、また、これらの作業を被告の営業のた
めに被告の履行補助者として行っていたと認められる。
これらによれば、本件投稿者が被告に送信した被告各写真は、被告の履
行補助者である被告地域パートナーが被告の営業のために内容を広く審査
して承認という作業をしたことによって、サーバーに蔵置、記録され、送
信可能化されるに至り、公衆送信されたといえる。これらを考慮すると、\n被告が、被告各写真の複製、公衆送信をしたと認めることが相当である。
被告の主張について
被告は、1)記事の修正等をする被告地域パートナーはボランティアであ
ること、2)被告各写真の投稿者は、被告から経済的利益を得たり、また、
指示等を受けておらず、任意に被告各写真を投稿したことを挙げて、被告
は、複製、公衆送信の主体ではないなどと主張する。
ア 上記1)について、被告地域パートナーがボランティアであったとして
も、本件ウェブサイトは被告の旅行関連事業の営業のために設けられて
いるという性質も有し、被告地域パートナーによる記事の承認等は、そ
のような被告の営業のために行われるものと推認できることを併せて考
えれば、被告地域パートナーは、被告からの直接の報酬の支払を受けて
いなかったとしても、被告の履行補助者とみるのが相当である。
したがって、被告の上記1)の主張を採用することはできない。
イ 上記2)について、本件ウェブサイトが前記のとおり被告の営業目的の
ために設けられているという性質も有し、また、被告各写真についても、
他の記事と同様に、被告地域パートナーが内容を広く審査して承認し、
公衆送信されるようになったと認められることに鑑みれば、被告各写真
が被告に対して送信されたのは会員の自由な意思に基づくものであった
としても、被告各写真を複製し公衆送信したのは被告とみるのが相当で
ある。したがって、被告の上記2)の主張も採用することはできない。
(5)著作者人格権侵害について
前提事実 のとおり、本件ウェブサイトにおいて、原告の氏名(ペンネー
ム)を表示せずに被告各写真が表\示され、また、別紙URL目録記載1のウ
ェブページにおいて原告写真の左右が切除されていたと認めることができる。
これらと、本件ウェブサイトにおいて被告各写真が掲載されるに至る過程
に照らせば、前記(3)と同様の理由により、被告は、原告の氏名表示権及び同\n一性保持権を侵害したといえる。
以上によれば、被告は、原告が保有する原告写真の複製権及び公衆送信
権を侵害し、また、氏名表示権及び同一性保持権を侵害したといえる。\n
◆判決本文
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2024.06. 4
令和5(ネ)10110 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和6年5月16日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
発信者情報開示請求について、主な争点は、(争点1)「権利が侵害されたことが明らかである」(プロ責法5条1項1号)か、(争点2)本件各発信者情報が「当該権利の侵害に係る発信者情報」(同5条1項柱書)に当たるかでした。1審はいずれも該当しないとして請求を棄却しましたが、知財高裁は、これを取り消しました。
(1) 前提事実(訂正の上引用した原判決の「事実及び理由」の第2の2)によると、
共有対象となる特定のファイルに対応して形成されたビットトレントネットワークに
ピアとして参加した端末は、他のピアとの間でハンドシェイクの通信を行って稼働状
況やピース保有状況を確認した上、上記特定のファイルを構成するピースを保有する\nピアに対してその送信を要求してこれを受信し、また、他のピアからの要求に応じて
自身が保有するピースを送信して、最終的には上記特定のファイルを構成する全ての\nピースを取得する。
そして、証拠(甲5〜9、11)及び弁論の全趣旨によると、ビットトレントネッ
トワークで共有されていた本件複製ファイルが本件動画の複製物であること、原判決
別紙動画目録記載の各IPアドレス及びポート番号の組合せは、本件監視ソフトウェ\nアが、本件複製ファイルを共有しているピアのリストとしてトラッカーから取得した
ものであること、同目録記載の発信日時は、上記IPアドレス及びポート番号を割り
当てられていた各ピアが、本件監視ソフトウェアとの間で行ったハンドシェイクの通\n信において応答した日時であることがそれぞれ認められる。
そうすると、上記各ピアのユーザーは、その対応する各発信日時までに、本件動画
の複製物である本件複製ファイルのピースを、不特定の者の求めに応じて、これらの
者に直接受信させることを目的として送信し得るようにしたといえ、他のピアのユー
ザーと互いに関連し共同して、本件動画の複製物である本件複製ファイルを、不特定
の者の求めに応じて、これらの者に直接受信させることを目的として送信し得るよう
にしたといえる。これは、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動
公衆送信装置である各ピアの端末の公衆送信用記録媒体に本件複製ファイルを細分化
した情報である本件複製ファイルのピースを記録し(著作権法2条1項9号の5イ)、
又はこのような自動公衆送信用記憶媒体にビットトレントネットワーク以外の他の手
段によって取得した本件複製ファイルが記録されている自動公衆送信装置である各ピ
アの端末について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続を行った(同号ロ)
といえるから、本件動画につき控訴人が有する送信可能化権が侵害されたことが明ら\nかである。
(2) 被控訴人は、各ピアのユーザーが送信可能化権を侵害したことが明らかという\nには、当該ピアのユーザーのピース保持率が100%又はこれに近い状態に達してい
ることを要すると主張する。しかし、上記(1)のとおり、ビットトレントネットワーク
に参加した各ピアは、共有対象となったファイルの一部であるピースをそれぞれ保有
してこれを互いに送受信し、最終的には当該ファイルを構成する全てのピースを取得\nすることが可能な状態を作り出しているのであるから、各ピアのユーザーは、他のピ\nアのユーザーと互いに関連し共同して、当該ファイルを自動公衆送信し得るようにす
るものといえる。そして、ハンドシェイクの通信に応答したピアは、当該ファイルの
一部であるピースを保有してこれを自身の端末に記録し、他のピアの要求に応じてこ
れを送信する用意があることを示したものと認められるから、その保有するピースの
多寡にかかわらず、上記送信可能化行為を他のピアと共同して担ったものと評価でき\nる。被控訴人の主張は採用することができない。
・・・・
(1) 前記1(1)のとおり、原判決別紙動画目録記載のIPアドレス、ポート番号及び
発信日時により特定される通信は、各ピアが本件監視ソフトウェアとの間で行ったハ\nンドシェイクの通信において応答した通信であって、他のピアとの間で本件複製ファ
イルのピースを送受信し、又は本件複製ファイルを記録した端末をネットワークに接
続する通信そのものではない。このような通信に係る発信者情報(本件各発信者情報)
も、法5条1項の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に当たるかが問題となる。
(2) そこで検討すると、法5条1項は、開示を請求することができる発信者情報
を「当該権利の侵害に係る発信者情報」とやや幅を持たせたものとし、「当該権利の
侵害に係る発信者情報」のうちには、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害
関連通信に係るものとして総務省令で定めるもの。)を含むと規定しているところ、
特定発信者情報に対応する侵害関連通信は、侵害情報の記録又は入力に係る特定電気
通信ではない。上記の各規定の文理に照らすと、「当該権利の侵害に係る発信者情報」
は、必ずしも侵害情報の記録又は入力に係る特定電気通信に係る発信者情報に限られ
ないと解するのが合理的である。
また、法5条の趣旨は、特定電気通信による情報の流通には、これにより他人の権
利の侵害が容易に行われ、その高度の伝ぱ性ゆえに被害が際限なく拡大し、匿名で情
報の発信がされた場合には加害者の特定すらできず被害回復も困難になるという、他
の情報流通手段とは異なる特徴があることを踏まえ、特定電気通信による情報の流通
によって権利の侵害を受けた者が、情報の発信者のプライバシー、表現の自由、通信\nの秘密に配慮した厳格な要件の下で、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信
設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することがで
きるものとすることにより、加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図るこ\nとにあると解される(最高裁平成21年(受)第1049号同22年4月8日第一小
法廷判決・民集64巻3号676頁参照)。なお、令和3年法律第27号による改正
により、特定発信者情報の開示請求権が新たに創設されるとともに、その要件は、特
定発信者情報以外の発信者情報の開示請求権と比して加重されている。その趣旨は、
SNS等へのログイン時又はログアウト時の各通信に代表される侵害関連通信は、こ\nれに係る発信者情報の開示を認める必要性が認められる一方で、それ自体には権利侵
害性がなく、発信者のプライバシー及び表現の自由、通信の秘密の保護を図る必要性\nが高いことから、侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内において開示を認
めることにあると解される。
さらに、著作権法23条1項は、著作権者が専有する公衆送信を行う権利のうち、
自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含むと規定する。その趣旨は、著作権者\nにおいて、インターネット等のネットワーク上で行われる自動公衆送信の主体、時間、
内容等を逐一確認し、特定することが困難である実情に鑑み、自動公衆送信の前段階
というべき状態を捉えて送信可能化として定義し、権利行使を可能\とすることにある
と解される。
ビットトレントによるファイルの共有は、対象ファイルに対応したビットトレント
ネットワークを形成し、これに参加した各ピアが、細分化された対象ファイルのピー
スを互いに送受信して徐々に行われるから、その送受信に係る通信の数は膨大に及ぶ
ことが推認できる。しかるところ、ピースを現実に送受信した通信に係るものでなく
ては「権利の侵害に係る発信者情報」に当たらないとすると、ビットトレントネット
ワークにおいて著作物を無許諾で共有された著作権者が侵害の実情に即した権利行使
をするためには、ネットワークを逐一確認する多大な負担を強いられることとなり、
前記のとおり法5条が加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることとし\nた趣旨や、著作権法23条1項が自動公衆送信の前段階というべき送信可能化につき\n権利行使を可能とした趣旨にもとることになりかねない。\n
他方、ハンドシェイクの通信は、その通信に含まれる情報自体が権利侵害を構成す\nるものではないが、専ら特定のファイルを共有する目的で形成されたビットトレント
ネットワークに自ら参加したユーザーの端末がピアとなって、他のピアとの間で、自
らがピアとして稼働しピースを保有していることを確認、応答するための通信であり、
通常はその後にピースの送受信を伴うものである。そうすると、ハンドシェイクの通
信は、これが行われた日時までに、当該ピアのユーザーが特定のファイルの少なくと
も一部を送信可能化したことを示すものであって、送信可能\化に係る情報の送信と同
一人物によりされた蓋然性が認められる上、当該ファイルが他人の著作物の複製物で
あり権利者の許諾がないときは、ログイン時の通信に代表される侵害関連通信と比べ\nても、権利侵害行為との結びつきはより強いということができ、発信者のプライバシ
ー及び表現の自由、通信の秘密の保護を図る必要性を考慮しても、侵害情報そのもの\nの送信に係る特定電気通信に係る発信者情報と同等の要件によりその開示を認めるこ
とが許容されると解される。
以上によると、本件各発信者情報は、法5条1項にいう「当該権利の侵害に係る発
信者情報」に当たると解するのが相当である。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆令和5(ワ)70029
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2024.04.23
令和4(ワ)18776 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和6年4月18日 東京地方裁判所
既に新聞報道がなされていますが、判決がアップされました。漫画村に対する損害賠償について、東京地裁は、約17億円の損害賠償を認めました。
(1) 著作権法 114 条 3 項に基づく損害について
ア 原告らは、原告らが有する本件作品に係る出版権又は独占的利用権の侵害行
為を行った被告に対し、出版権の侵害については著作権法 114 条 3 項に基づき、ま
た、独占的利用権の侵害については同項の類推適用により、本件作品の出版権又は
独占的利用権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の
額として、その損害賠償を請求することができるといえる。
イ 利用料率について
(ア) 本件サイトにおいては、ユーザーは無償で本件作品の閲覧が可能であり、ユ\nーザーから閲覧可能とすることの対価を得ていないという意味では、侵害による売\n上高は観念できない。
もっとも、本件作品は、原告らが、別紙作品目録 1〜3 の各「販売価額(税込)」
欄記載の金額で、原告ら又は原告 KADOKAWA の完全子会社の電子配信サイトで電
子配信され、又は、コミック単行本等として販売されていたものである(前提事実
(2))。そうすると、原告らは、本件作品に係る出版権又は独占的利用権に基づき、これらの販売による利益を受けていたものと認められる。
また、本件サイトでは、ファイルをユーザーの端末にダウンロード(複製(いわ
ゆる端末のキャッシュは除く。))することなく、いわゆるストリーミング形式によ
り無償で閲覧することが想定されていた。もっとも、閲覧にあたり、ユーザーは、
広告の視聴等の制約を受けることなく閲覧することが可能であった。また、本件サ\nイトにおいては、閲覧した画像ファイルの保存操作を制限するような技術や機能は\n採用されておらず、ユーザーにおいて、各画像ファイルをユーザーの端末の記録媒
体に保存することも可能であった(以上につき、前記 1(1)イ)。これらの事情に鑑み
ると、ユーザーにとっては、ストリーミング形式での閲覧が想定されているとはい
え、本件サイトを通じて本件作品の閲覧が可能である限り、本件サイトにアクセス\nしさえすれば何らの制限なく本件作品を無償で閲覧可能な状態に置かれるといえる。\nこれは、実質的には、ユーザーが本件サイトにアクセスする都度、電子配信された
本件作品を購入したのと異ならない状態が実現されているものと評価することがで
きる。
これらの事情その他本件に表れた一切の事情を総合的に考慮すると、本件におい\nて、被告による侵害行為に対し、原告らが本件作品に係る出版権又は独占的利用権
の行使につき「受けるべき金銭の額に相当する金額」(著作権法 114 条 3 項)の算定
にあたっては、別紙作品目録 1〜3 の「裁判所認定損害額」欄記載のとおり、「販売
価額(税込)」欄の金額から 10%を控除した金額に、各作品の閲覧数を乗じた額とす
ることが相当である。これに反する原告らの主張は採用できない。
(イ) 被告の主張について
被告は、本件サイトと同規模の漫画閲覧サイト運営者(漫画定額読み放題サービ
スサイト)と原告らとの間で締結されるべきライセンス利用契約のライセンス料を
基礎に損害額を算定すべきである旨主張する。
しかし、そもそも、本件作品のうち電子配信の対象となっていない作品(別紙作
品目録 3 の番号 174〜221)については、この主張が妥当する余地はない。
また、その他の本件作品についても、上記のとおり、原告らは、自ら又は完全子
会社が管理・運営する電子配信サイトを通じて有償でのみ電子配信しているのであ
って、これらの作品が漫画定額読み放題サービスの対象とされていることを認める
に足りる証拠はない。そうすると、原告らにとっては、本件作品を同サービスの対
象とする動機はなく、仮に本件作品を同サービスの対象として利用許諾契約を締結
するとすれば、本件作品の販売価格と同額ないしこれに近い額を利用料として設定
すると考えることには合理性がある。
したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
ウ 閲覧数
本件調査によれば、平成 29 年 6 月〜平成 30 年 4 月の間の本件サイトへのアクセ
ス総数は 億 3781 万超と推計される。また、本件サイトの平均滞在時間は約 分程度でされるところ(前記 1(3)イ)、この平均滞在時間は、漫画作品 1 巻を閲覧する
のに一応十分な時間といえる。これを踏まえ、本件サイトにアクセスしたユーザー\nが 1 アクセス当たり漫画 1 巻を閲覧したとすると、上記期間中、本件サイトにおい
ては、合計 億 3781 万巻の閲覧があったと推計されるとみてよい。
また、本件調査時に本件サイトに掲載されていた作品巻数は 7 万 2577 巻とされ
るから、本件サイトにおける本件作品 1 巻当たりの平均閲覧数は、74回を下回ら
ないものとみられる。
この点、被告は、SimilarWeb によるアクセス数の推計は不正確である旨を指摘し
て、これを損害額算定の基礎とすることはできないと主張する。
確かに、本件調査の推計が依拠する SimilarWeb による調査結果の信頼性について
は、これを疑問視する見解も見受けられるが(例えば乙 6)、本件において、その調
査手法ないし結果の信頼性を疑わせる具体的な事情は証拠上見当たらない。その点
を措くとしても、本件調査においては、平成 29 年 6 月〜平成 30 年 4 月の間におけ
る本件サイトへの月平均サイトアクセス数は 4889 万 2057 回とされている(前記
1(3)イ)。他方、被告は本件サイトの管理・運営に関与し、利用者数の状況を把握し
得る立場にあり、現に把握していたと考えられるところ(前記 1(2)、(4))、被告によ
れば、令和 4 年 7 月時点の投稿ではあるものの、月間利用者は 8500 万人とされ(前
記 1(4)ア)、また、平成 30 年 2 月時点の本件サイトの月間アクセス数は 1 億 6000 万とされている(前記 1(4)イ)。被告の本件サイト利用者数に関する上記各言及には誇
張が含まれている可能性も否めないものの、上記各数値と本件調査での推計に係る\n数値との乖離の程度等を考慮すると、その可能性を考慮してもなお、少なくとも、\n本件調査結果として推計された閲覧数が本件サイトの現実の閲覧数を上回るものと
はうかがわれない。したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
エ 著作権法 114 条 3 項に基づき算定される損害額
以上によれば、本件において、原告らが「受けるべき金銭の額に相当する金額」(著作権法 114 条 3 項)は、別紙作品目録 1〜3 の「裁判所認定損害額」欄記載のと
おり、「販売価額(税込)」欄記載の金額から 10%を控除した金額に、各作品の閲覧
数 74回を乗じた金額と認めるのが相当である。
このような損害額の合計額は、それぞれ、以下のとおりとなる。
・原告 KADOKAWA につき 3 億 6886 万 9059 円
・原告集英社につき 3 億 90万 9859 円
・原告小学館につき 8 億 1968 万 6790 円
(2) 弁護士費用相当損害金
原告らは、本件訴訟の提起に当たり訴訟代理人弁護士に委任せざるを得なかったものであり、本件に表れた一切の事情を考慮すると、被告の不法行為と相当因果関\n係のある弁護士費用相当損害金の額は、それぞれ、以下のとおりとなる。
・原告 KADOKAWA につき 3688 万 690円
・原告集英社につき 3902 万 098円
・原告小学館につき 8196 万 8679 円
(3) 小括
したがって、本件作品に係る出版権又は独占的利用権の侵害の不法行為に係る原告らの損害額の合計は、それぞれ、以下のとおりとなる。
・原告 KADOKAWA につき 4 億 057万 5964 円
・原告集英社につき 4 億 2923 万 0844 円
・原告小学館につき 9 億 016万 5469 円
なお、原告らは、予備的に著作権法 114 条 1 項に基づき算定される損害額をも主
張する。しかし、原告らの主張を前提としても上記認定に係る損害額を上回ること
はないから、この点に関して判断する必要はない。
◆判決本文
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2024.02.19
令和5(ネ)10001等 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件 著作権 知的財産裁判例 令和5年7月13日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
各動画からキャプチャした静止画をブログ上に投稿した行為について、1審は、著作権侵害として約240万円の損害賠償を認めました。知財高裁は、「上記の額をそのまま採用することが相当とはいえない」として、約190万と認定しました。
控訴人による本件各動画の利用態様は、本件各動画からキャプチャした本件
静止画を本件各記事に貼り付け、これを本件ブログ上に投稿して掲載するというも\nのである。そうすると、その使用料相当額の算定に当たっては、他に映像からキャ
プチャした写真の使用料に関する証拠がない以上、前記ア(ア)のとおりのNHKエ
ンタープライズの規定を参酌するのが相当である。
なお、本件記事1ないし7は、30枚ないし70枚程度の本件静止画を用い、こ
れらをそれぞれ本件動画1ないし7における時系列に従って貼り付けた上、各静止\n画の間に、直後の静止画に対応する本件動画1ないし7の内容を1行ないし数行で
まとめた要約を記載したものであり、本件記事1ないし7の内容を見ただけで三十\n数分ないし五十数分の本件動画1ないし7の全体をほぼ把握できるようにするもの\nであって、その実質は、映像そのものに準ずるものとも解し得るが、前記アのとお
りの各使用料によると、本来であれば、静止画(写真)を使用する枚数が多くなる
と、その使用料(映像からキャプチャした写真の使用料)も高額になるところ、そ
の枚数が更に多くなり、静止画を利用したコンテンツの実質が映像に準ずる域に達
した場合に、映像の使用料が参酌されることになってかえって使用料が低額になる
というのは不合理であるから、本件記事1ないし7の上記内容を考慮しても、本件
各記事については、上記のとおり、映像からキャプチャした写真の使用料に係るN
HKエンタープライズの規定を参酌するのが相当である。
映像からキャプチャした写真の使用料に係るNHKエンタープライズの規定によ
ると、使用目的が「通信(モバイル含む)」の場合の基本料金は、5000円とさ
れ、また、写真素材使用料は、「カラー」、「一般写真」及び「国内撮影」の場合、
1カット当たり2万円とされ、さらに、証拠(甲7の1ないし8、甲8の1ないし
8)及び弁論の全趣旨によると、控訴人が利用した本件静止画は、合計362枚
(話数♯054は59枚、♯044は45枚、♯043は54枚、♯042は29
枚、♯041は57枚、♯040は73枚、♯039は38枚、♯037は7枚)
であると認められるから、これらによると、同規定に基づく使用料は、合計724
万5000円(2万円×362枚+5000円)となる。
そして、弁論の全趣旨によって認められるNHK(甲12によりNHKエンター
プライズが取り扱う映像の制作者であると認められる。)と原告チャンネルとの相
違(規模、事業内容、社会的影響等)及びNHKが制作した映像と本件各動画との
相違(コンテンツが配信される媒体、視聴者数、映像ないし動画の制作に要する費
用、労力及び時間、コンテンツとしての社会的価値等)が大きく、上記の額をその
まま採用することが相当とはいえないこと等の事情に加え、著作権侵害があった場
合に事後的に定められるべき「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」(法11
4条3項)が通常の使用料に比べておのずと高額になることを併せ考慮すると、被
控訴人が本件各動画に係る「著作権の行使につき受けるべき金銭の額」は、これを
150万円と認めるのが相当である。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆令和3年(ワ)24148
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2023.10.31
令和5(ネ)10059 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年10月12日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
Yahoo!地図が原告地図の複製・翻案に該当するか争われました。知財高裁は、1審の東京地裁(29部)と同様に、翻案には該当しないと判断しました。
イ 判断手法(検討手順)について
ところで、控訴人と被控訴人は、複製又は翻案の有無を検討する手法
としての2段階テストと濾過テストの採否についてそれぞれの立場で主
張しているが、要は、創作性のある表現部分について同一性があるとい\nえるかどうかの判断がされれば足りるのであって、その判断に至る過程
で、最初に両著作物の共通部分の抽出を行うか、創作性の認められる表\n現上の特徴にまず着目するかという検討手順に関しては、合理的・効率
的な判断に資するための合目的的な観点から、事案に応じて適切に使い
分ければ足りる。本件では、控訴人の主張する手法(控訴人のいう2段階テスト)に沿
って(部分的に濾過テストの手法を併用する。)、以下、検討すること
とする。
(2) 控訴人地図1の表現上の本質的特徴について\n
ア 控訴人は、控訴人地図1の表現上の本質的特徴として、別紙2記載の本\n質的特徴1)〜7)を主張するところ、別紙の各控訴人地図1(甲1)に照
らして、控訴人地図1がその主張する特徴を備えていると認めることは
できる。そして、上記(1)アで述べたところに照らすと、上記本質的特徴1)〜7)
は、それぞれを個別に取り上げれば、地理情報の取捨選択、その配置等
の具体的な表現につき、上記のような制約の下での狭い幅での選択が示\nされているにとどまるものであり、従来の地図に比して顕著な特徴を有
するといった独創性が含まれているとまでは認められない。
イ この点、控訴人は、特に本質的特徴1)、同3)、同4)、5)について、従来
の常識にとらわれない素材の取捨選択を行うなどしたものであって、そ
の一部の組み合わせだけでも独創性のある表現が認められる旨主張する。\nしかし、まず、本質的特徴1)に関していえば、後述するとおり、そもそ
も被控訴人各地図と共通するとは認められないものである(この点は濾
過テストの手法を用いた。)。そして、本質的特徴3)については、控訴
人地図1の作成当時、建物及び住宅の真上から見た形状を影なしのポリ
ゴンで記載した地図は複数存在したと認められ(乙6,7,11,14,
15、25、32〜38)、本質的特徴4)、5)については、控訴人地図
1の作成当時、建物の名称及び住宅の番地が、建物及び住宅のポリゴン
の中央付近に、(番地についてはアラビア数字で)折り返すことなく横
書きされた記載を含む地図は複数存在したと認められ(乙7,14、1
5、25、32〜38)、いずれもありふれた特徴にすぎない。
なお、控訴人は、上記証拠の地図は、新旧番地を対照するという特殊な
背景の下で作成されたものが含まれているなどと主張するところ、確か
に、「番地」の取捨選択において、控訴人の主張する事情は重要な意味
を有するといえるが、上記の証拠の中には、住居表示新旧対照図以外の\nものも含まれているし(乙25、32〜34)、「番地」の取捨選択以
外の要素に関しては、従来のありふれた表現を示す証拠としての適格性\nを失うものではない。控訴人の上記主張は採用できない。
ウ 以上に述べたところを踏まえると、控訴人地図1は、別紙2の本質的特
・徴1)〜7)を備える総体として表現上の創作性を認めることができるもの\nであり、その表現上の本質的部分の特徴を被控訴人各地図から直接感得\nできるかどうかも、これを断片的、部分的に捉えるのではなく、相違点
も含めた総体としての全体的な考察により検討する必要があるというべ
きである。
(3) プロアトラス地図との比較検討
ア 各別紙のプロアトラス地図と控訴人地図1とを、控訴人主張の本質的特
徴の項目ごとに比較すると、以下のとおり認められる。
(ア) 控訴人主張の本質的特徴1)(共通要素a)について
まず、地理情報の取捨選択という観点からみるに、プロアトラス地
図では、控訴人地図1と同じく、「道路・河川」、「検索の目安とな
る公共施設や著名ビル等の個別建物形」、「一般住宅及び建物の個別
建物形」、「検索の目安となる公共施設や著名ビル等の名称」、及び
「建物番地」を記載することを選択し、一般住宅及び建物に関する
「居住人氏名」、「地類界」(宅地の境等)、「等高線」を記載して
いないことは認められる。しかし、その実際の適用(当てはめ)として、「検索の目安となる公共施設や著名ビル等の名称」等の選択は必ずしも一致していない。
また、プロアトラス地図では、控訴人地図1には記載されていない交
差点名の記載がある(別紙プロアトラス地図・Aの「潮平」等)ほか、
「一般住宅及び建物」に関する「建物名称」を記載している点(プロ
アトラス地図・Aの「シャトレ喜鶴」「あけぼの」、プロアトラス地
図・Cの「タウン・ハウス」等)でも相違する。
次に、具体的な表現形式という観点からみても、プロアトラス地図\nは、1)ガソリンスタンドであれば「G」、飲食店であれば「R」、駐\n車場であれば「P」、学校であれば「文に〇の記号」など建物の種類
を示す記号が用いられている点、2)緑地部分が緑色、公共性の高い建
物は濃い灰色、商業施設等はオレンジ色、その他の建物及び住宅は薄
い灰色に塗り分けられ、道路が3色に塗り分けられている点で控訴人
地図1と相違しており、これらの点は、地理情報を表現する際の創作\n性に強く影響を及ぼす有意な相違と評価すべきものである。
控訴人は、これら相違点は、いずれも軽微な相違であり、表現の本\n質的特徴の同一性を失わせるものではないと主張する。しかし、地図
の著作物における地理情報の取捨選択、その配置等の具体的な表現方\n法には一定の制約があり、選択の幅が狭いと解されること(前記(1)ア)
を踏まえると、上記のような相違点を軽微なものと評価するのは相当
といえない。控訴人の主張は採用できない。
・・・・
(4) ヤフー地図との比較検討
ヤフー地図は、プロアトラス地図と多くの点で共通する特徴を有するもの
であり、したがって、控訴人地図1とプロアトラス地図との対比検討の項目
で述べたところは、ほぼそのままヤフー地図との対比検討に関しても妥当す
る。なお、プロアトラス地図になく、ヤフー地図に認められる特徴として、
ガソリンスタンド、コンビニエンスストア及びファーストフードショップの\nチェーン店について、名称ではなく各チェーン店の標章が記載されている点、
名称を折り返して表示する例がある点(ヤフー地図・Aの「健孝クリニック\n南部整形外科」等)が挙げられるが、これは、プロアトラス地図以上に控訴
人地図との表現上の違いが大きいことを示すものである。以上によれば、ヤフー地図についても、控訴人地図1の表\現上の本質的部分の特徴を直接感得できるとは認められないというべきである。
(5) 小括
したがって、被控訴人各地図は、いずれも控訴人地図1を複製又は翻案
したものとは認められないから、その余の点を判断するまでもなく、控訴人
地図1に関する著作権侵害は認められない。
◆判決本文
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◆令和3(ワ)17636
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2023.09.18
令和4(ワ)9660 債務不存在確認請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年8月31日 大阪地方裁判所
ファイル共有ソフト「BitTorrent」の使用で被告動画が拡散したとして、20万円を超える賠償請求がなされました。原告は3万円を超える賠償債務は存在しないとする確認訴訟を提起しました。裁判所は3万7675円を超えては存在しないと判断しました。\n
(1) 被告は、ビットトレントを通じてアップロード等をすることは社会的にも
実質的にも密接な関連をもつ一体行為に参加するものであるなどとして、原告は、
本件ファイルが最初にビットトレントにアップロードされて以降の全ての権利侵害
についての責任を負う旨を主張し、仮に、原告がビットトレントを通じて自ら本件
ファイルを他のユーザーに送信することができた期間に限り不法行為が継続してい
たと解されるとしても、原告は、遅くとも令和3年10月25日に本件ファイルを
アップロードし、早くとも令和4年4月8日以降に本件ファイルにつきアップロー
ド可能な状態を終了した旨を主張する。\nしかし、共同不法行為(民法719条1項前段)が成立するためには、少なくと
も行為者各自の行為が客観的に関連して共同していることを要する(最三小判昭和
43年4月23日民集22巻4号964頁参照)から、原告が自らビットトレント
を通じて本件ファイルのデータのダウンロードを開始する前や、ダウンロードした
本件ファイルを削除したりビットトレントのクライアントソフトを削除するなどし\nてビットトレントを通じた本件ファイルのデータの送信ができなくなった後に発生
した本件著作権の侵害については、他の行為者の行為との客観的な関連共同性のあ
る行為が存在せず、共同不法行為責任を負うと解すべき理由がない。すなわち、本
件において、原告と他の氏名不詳者との間で共同不法行為が成立するのは、原告が
ビットトレントを通じて本件ファイルのデータを他のユーザーに送信可能な状態に\nある場合に限られるというべきである。
証拠(甲1、2の1、2の2、6)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、令和3
年当時、自宅の私用パソコンを、平日は2時間から3時間程度、休日前及び休日は\n3時間から5時間程度、インターネットに接続してネット情報の閲覧等(いわゆる
ネットサーフィン)をするが、常時接続はせず、使用時以外はシャットダウンする
という使用態様であったところ、同年10月25日、ビットトレントのネットワー
ク及びビットトレントを利用するためのクライアントソフト「μTORRENT」\nを使用して、約3時間かけて本件ファイルのダウンロードを完了させた後、原告の
パソコンからトレントファイルを削除し、翌日、本件ファイルを視聴したが、途中\nで原告のパソコンから本件ファイルを削除したこと、令和4年4月6日、原告が原\n告プロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書の送付を受け、その頃、原
告のパソコンからビットトレントのクライアントソ\フト自体を削除したことが認め
られる。以上の事実及び前提事実(3)記載のビットトレントの仕組みに照らすと、
原告がビットトレントを通じて本件ファイルを他のユーザーに送信可能な状態にあ\nったというためには、少なくとも、原告が原告のパソコンをインターネットに接続\nしてビットトレントのクライアントソフトを起動した状態で、ビットトレントを通\nじて本件ファイルをダウンロードしているか又はダウンロードを完了した本件ファ
イルを原告のパソコンの送信可能\な領域に蔵置していることが必要と考えられる。
そうであるところ、原告が、原告のパソコンをインターネットに接続してビットト\nレントを通じて本件ファイルをダウンロードしていたのは約3時間に限られ、ダウ
ンロード完了後の原告のパソコンのインターネットへの接続状況やビットトレント\nのクライアントファイルの起動状況は不明であり、その翌日、原告のパソコンに保\n存した本件ファイルを視聴したものの(このときのインターネットへの接続状態や
ビットトレントのクライアントファイルの起動状況が不明であることは同様であ
る。)、途中で原告のパソコンから本件ファイルを削除したのであるから、原告が\nビットトレントを通じて本件ファイルを他のユーザーに送信可能な状態にあったと\n認められるのは、本件ファイルをダウンロードしていた3時間に限られるというべ
きである(なお、本件ファイルをパソコンから削除しても、キャッシュのデータ等\nが残存する可能性がないとはいえないが、そもそも原告のパソ\コンの送信可能な領\n域に本件ファイルのキャッシュのデータ等が自動的に保存されるものかは不明であ
る上、原告が敢えてデータをパソコンに残存させる必要性は乏しく、その後、原告\nの端末から本件ファイルに係るデータがビットトレントを通じてアップロードされ
た事実もうかがえないことから、原告は本件ファイルに係るデータをパソコンから\n全部削除したものと認められる。)。
したがって、原告が、本件著作物に係る著作権侵害について賠償責任を負う範囲
は、令和3年10月25日の3時間に発生した侵害行為による損害に限られるもの
というべきであり、被告の前記主張は、いずれも採用することができない。
(2) 以上を踏まえて本件著作物に係る著作権侵害による損害額について検討す
るに、前提事実(2)並びに証拠(乙3、4)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作
物の「HD版ダウンロード及びHD版ストリーミング無制限」のダウンロード価格
(販売価格)は1450円であること、本件著作物の利益率は38%であること、
ビットトレントを通じた本件ファイルのダウンロード回数は、令和3年10月25
日時点で1206回、同月26日時点で1753回であり、同月25日の前記ダウ
ンロード回数は547回であることが認められる。そうすると、原告が本件の共同
不法行為により負うべき損害の範囲は、3万7675円(≒547 回×1450 円×38%
÷24×3。1円未満四捨五入)となる。
(3) 原告は、被告が、令和3年10月25日から令和4年4月8日までの間、
原告による共同不法行為が継続していたことを前提として178万9097円の損
害賠償額を主張することは損害拡大防止義務違反がある、不誠実な対応であるなど
述べて、過失相殺及び権利濫用の主張をするが、かかる被告の主張は採用すること
ができないことは前記(1)のとおりであって、原告の前記主張はその前提を欠く。
また、原告は、原告が、積極的に複製物を作成しようとする意思は希薄で、他者
のダウンロード行為による金銭的な利益を得てもいないことを指摘して、損害額に
ついて減免責されるべきである旨を主張するが、原告が指摘する事情をもって、前
記認定の損害額を減免責すべき事情に当たるとはいえない。
(4) 以上から、原告の被告に対する本件著作物に係る著作権侵害に基づく損害
賠償債務は3万7675円を超えて存在しないものと認められる。
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2023.06. 9
令和4(ネ)10106 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年6月8日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が争われました。1審は約200万円の損害賠償を認めました。知財高裁も同様ですが、損害額が上がっています。
1審被告は平成30年度掲載記事が「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事(甲9、10、乙14)は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表\現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表\現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。
また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。
したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。
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2023.04.26
令和4(ネ)10125 損害賠償金請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年4月18日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ウェブページのフライパンの説明画像についての損害賠償請求事件です。1審は著作権侵害を認め、5万円の賠償を認めました。原告は、残りの約15万円の支払いを求めて控訴しましたが、控訴棄却です。関連事件がたくさんあります。
(1) 控訴人は、前記第2の4のとおり、1)本件各画像がウェブページごとに独立して利用されている以上、損害額はウェブページ数を基本に算定すべきである(同(1)及び(2))、2)第三者に許諾することを想定していない著作物にも相場の利用料を参酌して利用料を算出するべきである(同(3))旨主張する。上記主張に対して、引用に係る原判決の第4の3(補正後のもの)において説示するところを改めて敷衍すると、次のとおりである。
(2) 著作権法114条3項によって、著作権者が著作権侵害によって受けた損害の額とすることのできる「受けるべき金銭の額に相当する額」の算定に当たっては、当該著作物の利用回数あるいは当該利用から生じた利益等の、当該著作物の直接の侵害行為の物理的な分量に従うのみならず、当該著作物の利用期間、利用態様、当該著作物から享受できる内容又は価値、侵害者の内心の態様(同条5項参照)、当該著作物を利用する市場の状況、他の者への利用許諾の状況等の諸般の事情を総合考慮して定めるべきものである。
本件についてみると、ウェブサイトの閲覧上、本件各画像は、見かけ上、本件商品の数に相当するウェブページで閲覧されるものではあるが、それらは一定の目的をもって一体化された画像の一部が使い回されているとみることも可能なものであり、一体の利用とみることができるから、本件各画像又はウェブページごとに複製又は送信可能\化について損害額を算定することは妥当とはいい難い。そして、本件各画像の利用期間も短期間であって、たとえ通販サイトであろうとも、閲覧に供された回数は限定的なものと考えるのが自然である。さらに、本件画像2)中のフライパンで調理中の食材を写した写真と本件画像3)中のフライパンを製造している職人の写真は、スキャンパン社から提供を受けたものであることを控訴人は自認しており(スキャンパン社がこれら写真に係る著作権を控訴人に譲渡したことを認めるに足りる証拠はない。)、控訴人が著作権を有するものではないし、本件各画像は商業的実用用途を目的とする著作物であって、むしろ、本件各商品をありのままに表現することを主目的とするものと理解され、その表\現される思想又は感情は限定的なものであるといえる。このことは、本件各画像が文字、写真等の素材を組み合わせたものであったとしても変わるものではない。また、被控訴人に過失があることは免れないとしても、それは重大なものではなく、その利用目的も、控訴人の営業を殊更に妨害するためであったり、本件各画像に表現されたところから享受できる価値を損なうためであったりなどの、専ら害意に基づくものとは認められず、単純なる自己の営業のための商業的利用にすぎない。n
(3) 次に、写真又は画像についての利用許諾状況をみてみると、日本美術著作権協会の利用申請方法は、画像の利用許諾を原則として1用途1目的につき毎回申\請を要するものと定めていること(甲26)、株式会社東京美術倶楽部の使用料規程は、コンピューター・ネットワークにおける美術の著作物の利用料の額を、著作物1点あたり1回につき1か月当たり1万円(美術関係業態以外)、2か月目以降は5000円と定めていること(甲27)、朝日新聞社が運営するデータベースの利用規約は、収録された写真、動画等を提供するサービスにおける法人の利用条件を、1媒体につき1用途1回限りの非独占的使用に限り、重版、再放送その他の用途で再利用する場合には別料金が発生すると定めていること(甲28)、Imagenaviの利用ガイドは、画像素材について、使用になる用途、期間によって料金設定が決まり、複数媒体に使用する場合には1使用ごとに料金が発生すると定めていること(甲29)が認められるが、これらの規定が念頭に置く「目的」、「用途」、「回数」又は「使用」は何を基準とするかは一義的には明らかでなく、ましてや上記各証拠がウェブサイトという1媒体の中における利用料をウェブページを基準にして決めていると理解することも困難であるから、これら利用料の算定方法を直ちに本件における損害額の算定方法の参考とすることはできない(なお、控訴人から音楽又は音源の利用に関する利用許諾に関する証拠も提出されているが、著作物としての性質が大きく異なるものであり、その参酌は相当でない。)。
(4) さらに、写真又は画像についての利用料についてみると、毎日新聞社は、同社が権利を有する報道写真等をインターネット上で商業利用する者に対し、2万2000円から4万4000円の利用料の支払を求めることがあり(甲5)、朝日新聞社は、同社が権利を有する報道写真等をインターネット上で利用する者に対し、使用期間6か月までの場合に2万2000円、使用期間1年までの場合に3万3000円、使用期間3年までの場合に5万5000円の使用料の支払を求めることがあり(甲6)、株式会社アフロは、同社が権利を有する様々な種類の静止画像をインターネット上の広告やホームページなどに利用する者に対し、同一ウェブサイト内においては利用箇所を問わず、利用期間1年までの場合に2万2000円、利用期間3年までの場合に2万8600円、利用期間5年までの場合に3万3000円の利用料の支払を求めることがある(甲7)との事実が認められるものの、利用許諾される写真のサイズ、質等や、媒体の数、掲載場所等の利用許諾の際の利用条件の詳細が不明であり、これら利用料をそのまま本件における損害額の算定について参考とすることはできず、ましてや、上記利用料を参考として算定した額をウェブページ1ページ当たりの損害として損害額を算定すべきとする根拠ともならない。また、ペイレスイメージズは、印刷物又はウェブ用との用途における画像素材単品での購入価格を、解像度、大きさに応じて440円から5500円に設定しているとの事実は認められるものの(乙3)、どのような画像が想定されているのか不明であり、やはり、この購入代金をそのまま本件における損害額の算定について参考とすることができない。
(5) 以上のとおりであり、本件記録に顕れた諸般の事情を考慮すると、本件における損害額は、被告サイト全体における利用について5万円とするのが相当であると認められ、控訴人の前記(1)1)の主張を採用することはできず、同2)に主張するところを参酌しても、上記結論は左右されない。
3 当審における控訴人の追加主張に対する判断
控訴人は、前記第2の5のとおり、原審及び当審において生じた訴訟費用を不法行為に基づく損害として追加する旨を主張する。民事訴訟手続の遂行により要した費用のうち、民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものについては、専ら訴訟裁判所の裁判所書記官の処分を経て取り立てることが予定されているというべきであるから、当該訴訟における不法行為に基づく損害賠償請求において、民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されないと解される(最高裁判所平成31年(受)第606号令和2年4月7日第三小法廷判決参照)。控訴人は、訴え提起及び控訴提起の手数料や書類の送付に要した郵便費用を不法行為に基づく損害として主張するが、これらは民事訴訟費用等に関する法律2条1号、2号に定めるものであるから、これら費目を本件において損害賠償として請求することはできない。n
◆判決本文
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2023.01. 6
令和4(ネ)10083 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和4年12月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
本文、ユーザー名のほかアイコンまでをリツートした行為について、引用と認められると判断されました。
ア 控訴人は、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が利用規約に反することは明らかであり、それゆえ利用規約に基づいて本件ツイートによる公衆送信権侵害等について適法となることはないなどと主張する。
しかし、控訴人の上記主張は、利用規約の内容によって直ちに著作権法32条1項にいう公正な慣行の内容が規定されることを前提にするものであって、相当でない。この点、控訴人は、利用規約が遵守されることがツイッターの全ユーザー間の共通認識となっているとも主張するが、当該主張も、結局は利用規約の内容によって直ちに著作権法32条1項にいう公正な慣行の内容が規定されることをいうものに帰し、訂正して引用した原判決の第4の2(2)の認定判断を左右するものではない。特に、本件ツイート及びそこにおける原告ツイートの引用が批評という表現行為に係るものであることに照らしても、利用規約によってその態様ゆえにその引用としての適法性が直ちに左右されるとみることはできない。\n
イ 控訴人は、ユーザーにおいては、ツイートを削除していなくともプロフィール画像を変更すれば過去のツイートについても変更後のプロフィール画像が表示されること等を前提としてツイッターを利用していることや、プロフィール画像がツイート本文の内容とは独立して自身の個性を表\現するものであるなどと主張する。しかし、訂正して引用した原判決の第4の2(3)で説示したとおり、ユーザーは、自らのツイートの内容が当該ツイートをした時点におけるアイコンと一体的に表現主体及び表\現内容を示すものとして取り扱われ得ることについても、相応の範囲で受忍すべきものであり、控訴人の上記主張も、訂正して引用した原判決の第4の2(2)の認定判断を左右するものではない。
ウ 控訴人は、本文やユーザー名のほかアイコンまで掲載する必要があるのかには疑問があり、また、現在もツイッター上で閲覧可能な原告ツイートについて、これをあえてスクリーンショットで掲載する必要はないなどと主張する。\nしかし、控訴人においては原告アイコンが原告ツイートの内容と一体的に取り扱われ得ることを相応の範囲で受忍すべきことは既に説示したとおりであり、また、原告ツイートが現在も閲覧可能であるとしても、仮に本件投稿者が引用リツイート機能\を用いていた場合には、原告ツイートを削除等するという専ら控訴人の意思に係る行為によって引用に係る原告ツイートが削除等され、本件ツイートの趣旨等が不明確となるような事態が生じ得ることに照らして、原告ツイートが現在も閲覧可能であるか否かは、本件ツイートにおける引用の適否に直ちに影響すべきものではない。この点、原告ツイートが投稿されてから本件ツイートが投稿されるまでには約7年半という相応の長期間が経過しているところ、原告ツイートが現在も閲覧可能\であり(甲20)、その間に特に控訴人がプロフィール画像を変更したといったことも認められないものであるが、一般的に、引用元ツイートが投稿後変更されることなく相応の長期間が経過した後であっても、引用リツイートの投稿を契機として引用元のツイートが変更や削除等されたりする可能性もあるから、上記相応の長期間の経過をもって直ちに本件ツイートにおける引用の必要性や相当性が否定されるものではなく、また、閲覧可能\性や画像の変更の有無に係る上記各事情は、他方で、原告ツイートの投稿時から本件ツイートの投稿時までの間に、原告において原告アイコンを含む原告ツイートの変更や削除等をしなければならないような事情が他には生じておらず、本件ツイートにおける引用の必要性や相当性を判断するに当たり他に考慮すべき特段の事情がないことをうかがわせるものである。
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2023.01. 3
令和3(ワ)21224 損害賠償金請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年11月21日 東京地方裁判所
ウェブページのフライパンの説明画像について、著作権侵害を認め、5万円の賠償を認めました。
本件において、原告が、本件各画像を含め、自己が著作権を有する著作
物を第三者に有償で利用許諾していたと認めるに足りる証拠はないから、
実際の利用許諾例に準じて使用料相当額を算定することはできない。
イ この点、原告は、新聞社や写真提供会社が提供する画像レンタルサービ
スにおける使用料を根拠として、本件各画像の1ページ当たりの使用料相
当額は6万6666円を下らず、これに本件各画像が掲載されたウェブペ
ージのページ数を乗じて使用料相当額を算定すべきであると主張する。
(ア) まず、ページ数を単純に乗ずることの当否について検討すると、原告
商品は、特長、材質、製造方法、メーカーなどが同一である複数のフラ
イパンの一群からなる商品であるところ(甲12)、被告ストアにおける
本件各画像の利用態様も、複数の商品販売ページにわたって、原告商品
が等しく備える特長等を紹介する本件画像1)ないし7)の各画像の複製物
を共通して複製及び送信可能化し、本件商品画像については、当該ペー\nジで販売している商品に相当する画像1点を複製及び送信可能化したと\nいうものであることが認められる(前提事実(2)ア、イ、甲2)。このよ
うな利用態様にかんがみれば、特に、全てのページにわたって原告商品
に共通する特長等を紹介する同一の画像7点については、異なる態様で
複数回利用された場合と同視することはできず、本件において、単純に
ページ数(すなわち販売している商品の種類の数)を乗じて使用料相当
額を算定することが相当であるとはいえない。
そこで、更に検討すると、本件各画像は、商品群からなる原告商品の
ネット通販用広告画像、すなわち販売促進資料として作成されたものと
認められることから(甲12)、原告商品の販売と無関係に本件各画像を
使用することは通常考え難く、仮に原告が第三者に本件各画像の利用を
許諾するとすれば、原告も主張するとおり、原告商品の日本国内の正規
代理店として、原告商品の再販売契約をするに当たり、その販売促進資
料として本件各画像全体を利用許諾するような場合が想定される。そし
て、同一のオンラインショッピングモール上に出店しているとしても、
オンラインストア名が異なれば、商品の販売経路を複数有することにな
るから、販売促進資料としての画像の利用許諾契約に当たっても、原告
商品を取り扱うオンラインストア数の多寡を考慮するのが合理的といえ
る。アフロ社が提供している画像レンタルサービスにおいて、同一サイ
トである限り、使用箇所を問わず同じ使用料が設定されている(甲7の
「ウェブ広告・ホームページ」欄の注記)ことも、オンラインストア数
に応じて使用料相当額を算定する方法の合理性を裏付けるものである。
以上のとおり、原告商品が一つの商品群からなるものであること、被
告ストアにおける本件各画像の実際の利用態様及び想定される本件各画
像の利用許諾の態様にかんがみれば、本件各画像の使用料相当額を算定
するに当たっては、本件各画像の複製物が掲載されたページ数(すなわ
ち販売している商品の種類の数)ではなく、オンラインストア数を基準
とすべきであって、本件においては、被告ストアが一つであることから、
被告ストア全体にわたって本件各画像を1回利用したものとして算定す
るのが相当というべきである。
(イ) 次に、本件各画像の具体的な使用料相当額について検討する。
a 原告が指摘する新聞社の画像レンタルサービスにおいて、具体的に
どのような写真や画像が提供されているのかを認めるに足りる証拠は
ない。しかし、新聞社が提供する写真は、いわゆる報道写真にみられ
るように、ある事件や事象の一瞬を捉えているなど、構図やシャッタ\nーチャンス等に高度な工夫を凝らした創作性の高いものや、他の手段
では入手が困難な希少性の高いものである可能性があると考えられる。\nまた、アフロ社が提供する画像レンタルサービスについては、上記
のような報道写真とは異なる性格の画像も提供されていることがうか
がわれるものの(甲7)、やはり、実際にどのような写真や画像が提供
されているのかは、本件証拠上認めるに足りない。
b その一方で、被告が指摘するシャッターストック社やピクスタ社の
画像レンタルサービスについてみると、証拠からうかがわれる具体的
な画像の内容(乙3、4)のほか、ピクスタ社では6200万点以上
の写真、イラストなどの素材について、料金が1か月間に利用できる
画像の点数に基づいて設定されていたり、未利用画像数を翌月以降に
繰り越せるといった条件で提供されていたりすること(乙2、4)に
かんがみれば、これらのサービスにおいて低額な使用料で提供されて
いるのは、汎用性のあるウェブサイト用の素材である可能性が高い。\n もっとも、商業的利用の可否など、その余の使用条件については、
本件証拠上判然としない。
c これに対し、前提事実(2)ア及び前記(ア)のとおり、本件各画像は、
商品販売ページを見た顧客の購買意欲を高めるように、原告商品を用
いて調理している様子を撮影した写真や特長等を述べた文言、画像な
どを配置した原告商品に特化した販売促進目的の画像であって、報道
写真とも、シャッターストック社やピクスタ社が提供する汎用性のあ
るウェブサイト用の素材とも、性格及び目的が大きく異なる。また、
前記(ア)において説示したとおり、原告が第三者に本件各画像を利用許
諾することが想定されるのは、原告商品の正規代理店として、原告商
品の再販売契約に当たって販売促進資料として利用されるような場合
であるから、専ら写真、画像等の利用許諾に伴う使用料をもって収益
を上げるというビジネスモデルに基づき設定された使用料の水準が妥
当するともいい難い。これらの事情に照らせば、原告及び被告の双方
がそれぞれ指摘する画像レンタルサービスにおいて規定されている使
用料の水準が本件においてそのまま妥当するとはいえない。
その一方で、前記(ア)のとおり、本件各画像は、原告商品の再販売契
約に伴う販売促進資料との位置付けで利用許諾されることが想定でき
るから、本件各画像の使用料のみによって本件各画像の取得費用を回
収したり、原告商品の再販売によって得られる利益を超えたりするよ
うな高額な使用料が設定されるとは考え難い。
このほか、本件各画像は、報道写真のように高度の創作性を有して
おり代替可能性が小さいとまではいえないものの、原告商品に特化し\nた販売促進資料として工夫して作成されたものであり(前記(ア))、相
応に創作性を有する著作物であること(前記1)、被告ストアにおける
販売商品数は11点であり、本件各画像の利用期間が約3か月間であ
ったこと(前記(1))、本件各画像の利用に当たっての将来の使用料額
を定める場面ではなく、原告の許諾を何ら得ることなく本件各画像を
利用した被告に対する損害賠償を請求する場面での金額の算定である
ことなどを総合考慮すると、本件各画像の使用料相当額は合計5万円
と認められる。
ウ 当事者の主張について
(ア) 原告は、本件各画像の使用料相当額を算定するに当たり、いつも社に
本件各画像のデザイン制作料等として約700万円を支払ったことを考
慮すべきであると主張する。
しかし、原告がいつも社に委託したのは、ウェブサイト関連業務及び
検索エンジン最適化サービスであり、本件各画像の制作業務はその一部
を構成するにすぎないと認められるところ(甲12)、本件各画像のデザ\nイン制作のみに要した費用を認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって、本件各画像の使用料相当額の算定に当たって、原告が主
張する金額を考慮することはできない。
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2022.12.22
令和3(ワ)24148 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年11月24日 東京地方裁判所
著作権侵害として、発信者情報の特定のための裁判費用も含めて242万円の損害賠償が認められました。引用であるとの主張は否定されました。
被告は、本件各記事による本件各動画の利用は適法な引用(法 32条 1項)に当たる旨を主張する。しかし、証拠(甲 7)及び弁論の全趣旨によれば、本件各記事は、いずれも、約 30 枚〜60 枚程度の本件各動画からキャプチャした静止画を当該動画の時系列に沿ってそれぞれ貼り付けた上で、各静止画の間に、直後に続く静止画に対応する本件各動画の内容を 1 行〜数行程度で簡単に要約して記載し、最後に、本件各動画の閲覧者のコメントの抜粋や被告の感想を記載するという構成を基本的なパターンとして採用している。各静止画の間には、上記要約のほか、被告による補足説明やコメント等が挟まれることもあるが、これらは、関連する動画(URL のみのものも含まれる。)やスクリーンショットを 1 個〜数個張り付けたり、1 行〜数行程度のコメントを付加したりしたものであり、概ね、各静止画及びこれに対応する本件各動画の内容の要約部分による本件各動画全体の内容のスムーズな把握を妨げない程度のものにとどまる。また、本件各記事の最後に記載された被告の感想は、いずれも十数行〜二十\数行程度であり、本件各動画それぞれについての概括的な感想といえるものである。
以上のとおり、本件各記事は、いずれも、キャプチャした静止画を使用
して本件各動画の内容を紹介しつつそれを批評する面を有するものではあ
る。しかし、本件各記事においてそれぞれ使用されている静止画の数は約
30 枚〜60 枚程度という多数に上り、量的に本件各記事のそれぞれにおい
て最も多くの割合を占める。また、本件各記事は、いずれも、静止画と要
約等とが相まって、4分程度という本件各動画それぞれの内容全体の概略
を記事の閲覧者が把握し得る構成となっているのに対し、本件各記事の最\n後に記載された投稿者の感想は概括的なものにとどまる。
以上の事情を総合的に考慮すると、本件各記事における本件各動画の利
用は、引用の目的との関係で社会通念上必要とみられる範囲を超えるもの
であり、正当な範囲内で行われたものとはいえない。
したがって、本件各記事による本件各動画の利用は、適法な「引用」(法
32条1項)とはいえない。この点に関する被告の主張は採用できない。
イ 争点(2)(時事の事件の報道の抗弁の成否)について
被告は、本件各記事における本件各動画の利用は、社会において有用で
公衆の関心事となりそうな新しい事業を計画している一般企業家が存在す
る事実及びその事業計画に対する投資家の判断・評価という近時の出来事
を公衆に伝達することを主目的とするものであり、時事の事件の報道(法
41 条)に当たる旨を主張する。
しかし、そもそも、本件各動画は、その内容に鑑みると、一般企業家が
投資家に対して事業計画のプレゼンテーションを行い、質疑応答等を経て、
最終的に投資家が出資の可否を決定するプロセス等をエンタテインメント
として視聴に供する企画として制作されたものというべきであって、それ
自体、「時事の事件」すなわち現時又は近時に生起した出来事を内容とする
ものではない。本件各記事は、前記認定のとおり、このような本件各動画
の内容全体の概略を把握し得るものであると共に、これを視聴した被告の
概括的な感想をブログで披歴したものに過ぎず、その投稿をもって「報道」
ということもできない。
したがって、本件各記事は、そもそも「時事の事件の報道」とは認めら
れないから、適法な「時事の事件の報道のための利用」(法 41 条)とはい
えない。この点に関する被告の主張は採用できない。
ウ 争点(3)(権利濫用の抗弁の成否)について
被告は、原告が「切り抜き動画」制作者による本件各動画の拡散を積極
的に利用して原告チャンネルの登録者数の増加を図り、実際にその恩恵を
享受しているにも関わらず、被告に対して本件各動画の著作権を行使する
ことは権利の濫用に当たる旨を主張する。
しかし、証拠(甲 29)及び弁論の全趣旨によれば、原告が利用する「切
り抜き動画」とは、原告が、特定のウェブサイトで提供されるサービスを
通じて、原告チャンネル上の動画をより個性的に編集して自己のチャンネ
ルに投稿することを希望するクリエイターに対し、その収益を原告に分配
すること等を条件に、当該動画の利用を許諾し、その許諾のもとに、クリ
エイターにおいて編集が行われた動画であると認められる。他方、弁論の
全趣旨によれば、被告は、本件各動画の利用につき、原告の許諾を何ら受
けていないことが認められる。
そうすると、原告が「切り抜き動画」の恩恵を受けているからといって、
被告に対する本件各動画に係る原告の著作権行使をもって権利の濫用に当
たるなどと評価することはできない。他に原告の権利濫用を基礎付けるに
足りる事情はない。したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
2 争点(4)(原告の損害及びその額)
(1) 「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」
ア 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、映像の使用料又は映像からキャ
プチャした写真の使用料に関し、以下の事実が認められる。
(ア) 映像からキャプチャした写真の使用料
NHK エンタープライズが持つ映像・写真等に係る写真使用の場合の素
材提供料金は、基本的には、メディア別基本料金及び写真素材使用料に
より定められるところ(更にこの合計額に特別料率が乗じられる場合も
ある。)、使用目的が「通信(モバイル含む)」の場合の基本料金は 5000
円(ライセンス期間 3 年)、写真素材使用料は、「カラー」、「一般写真」、
「国内撮影」の場合、1 カットあたり 2 万円とされている(甲 12)。
なお、共同通信イメージズも写真の利用料金に関する規定を公表して\nいるが(乙 12)、ウェブサイト利用についてはニュースサイトでの使用
に限ることとされていることなどに鑑みると、本件においてこれを参照
対象とすることは相当でない。
(イ) 映像の使用料
・・・・
イ 本件各動画については、前記「切り抜き動画」に係る利用許諾と原告へ
の収益の分配がされていることがうかがわれるものの、その分配状況その
他の詳細は証拠上具体的に明らかでない。その他過去に第三者に対する本
件各動画の利用許諾の実績はない(弁論の全趣旨)。そこで、原告が本件各
動画の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(法 114 条 3
項)を算定するに当たっては、本件各動画の利用許諾契約に基づく利用料
に類するといえる上記認定の各使用料の額を斟酌するのが相当である。
被告による本件各動画の使用態様は、本件各動画をキャプチャした本件
静止画を本件各記事に掲載したというものである。そうすると、その使用
料相当額の算定に当たっては、映像からキャプチャした写真の使用料を定
める NHK エンタープライズの規定(上記ア(ア))を参照するのが相当とも
思われる。もっとも、当該規定がこのような場合の一般的な水準を定めた
ものとみるべき具体的な事情はない。また、本件各記事は、いずれも、相
秒以上の部分について 500 円(いずれも 1 秒当たりの単価)である(甲 21)。
・・・
当数の静止画を時系列に並べて掲載すると共に、各静止画に補足説明を付
すなどして、閲覧者が本件各動画の内容全体を概略把握し得るように構成\nされたものである。このような使用態様に鑑みると、本件静止画の使用は、
映像(動画)としての使用ではないものの、これに準ずるものと見るのが
むしろ実態に即したものといえる。
そうである以上、原告が本件各動画の著作権の行使につき受けるべき金
銭の額に相当する額(法 114 条 3 項)の算定に当たっては、映像の使用料
に係る各規定(上記ア(イ))を主に参照しつつ、上記各規定を定める主体の
業務や対象となる映像等の性質及び内容等並びに本件各動画ないし原告チ
ャンネルの性質及び内容等をも考慮するのが相当である。加えて、著作権
侵害をした者に対して事後的に定められるべき、使用に対し受けるべき額
は、通常の使用料に比べて自ずと高額になるであろうことを踏まえると、
原告が本件各動画の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額
(法 114 条 3 項)は、合計 200 万円とするのが相当である。
ウ これに対し、被告は、原告が本件各動画の著作権の行使につき受けるべ
き金銭の額に相当する額は著作権の買取価格を上回ることはないことを前
提とし、本件各動画の著作権の買取価格(3 万円)のうち本件各記事にお
いて静止画として利用された割合(2%)を乗じたものをもって、原告の受
けるべき金銭の額である旨を主張する。
もとより、著作物使用料の額ないし使用料率は、当該著作物の市場にお
ける評価(又はその見込み)を反映して定められるものである。しかし、
その際に、当該著作物の制作代金や当該著作物に係る著作権の譲渡価格が
その上限を画するものとみるべき理由はない。すなわち、被告の上記主張
は、そもそもその前提を欠く。
したがって、その余の点につき論ずるまでもなく、この点に関する被告
の主張は採用できない。
(2) 発信者情報開示手続費用
本件のように、ウェブサイトに匿名で投稿された記事の内容が著作権侵害の不法行為を構成し、被侵害者が損害賠償請求等の手段を取ろうとする場合、権利侵害者である投稿者を特定する必要がある。このための手段として、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律により、発信者情報の開示を請求する権利が認められているものの、これを行使して投稿者を特定するためには、多くの場合、訴訟手続等の法的手続を利用することが必要となる。この場合、手続遂行のために、一定の手続費用を要するほか、事案によっては弁護士費用を要することも当然あり得る。そうすると、これらの発信者情報開示手続に要した費用は、当該不法行為による損害賠償請求をするために必要な費用という意味で、不法行為との間で相当因果関係のある損害となり得るといえる。本件においては、前提事実(5)のとおり、原告は、弁護士費用を含め発信者情報開示手続に係る費用として 167 万 440円を要したが、発信者情報開示手続の性質・内容等を考慮すると、このうち20万円をもって被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。これに反する原告及び被告の主張はいずれも採用できない。
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2022.11.28
令和4(ワ)12062 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年11月17日 東京地方裁判所
ファスト映画の配信について総額5億円の損害賠償が認められました。計算は、ライセンス相当額(著作権法114条3項)です。賠償額を含めて被告は原告の主張を全て認めてます。原告は13名であり、合計するとちょうど5億円というのは偶然なのでしょうね。
弁論の全趣旨によれば、YouTubeの利用者がYouTube上でストリーミング形式により映画を視聴するためには所定のレンタル料を支払う必要があることが認められる。再生対象の映画の著作権者は、当該レンタル料から著作権の行使につき受けるべき対価を得ることを予定しているものと理解されることから、本件において、原告らが本件各映画作品に係る著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、YouTube上で視聴する場合の本件各映画作品それぞれのレンタル価格等を考慮して定める金額に、本件各動画のYouTube上での再生数を乗じて算定するのが相当である。
(2)YouTubeにおける本件各映画作品の各レンタル価格(HD画質のもの)は、1作品当たり400〜500円程度であり、400円を下らないこと、うち30%がYouTubeに対するプラットフォーム手数料に充当されること、本件各動画は、それぞれ、約2時間の本件各映画作品を10〜15分程度に編集したものであるものの、本件各映画作品全体の内容を把握し得るように編集されたものであることは、いずれも当事者間に争いがない。これらの事情を総合的に考慮すると、被告らが本件侵害行為によって得た広告収益が700万円程度であること(当事者間に争いがない)を併せ考慮しても、「著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」(法114条3項)は、原告らの主張のとおり、本件各動画の再生数1回当たり200円とするのが相当である。
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2022.10.13
令和2(ワ)3931 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年10月6日 東京地方裁判所
鉄道会社が、新聞記事をスキャンして、社内イントラネットにて閲覧できるようにしていた行為について、複製権侵害・公衆送信権侵害が認められ、約200万円の損害賠償が認められました。被告は、新聞記事は事実の報道なので、著作物無しとも主張しましたが、読みやすく表現しているので創作性ありと認定しました。また、記録が残っていないH30年以前の配信についても、推定認定されています。
ア 平成30年度掲載記事のうちの一部の記事について、被告は、その著作物
性を争っている。
しかしながら、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機
器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業
等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に
関する記事である。そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報
について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど
されており、表現上の工夫がされている。また、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テー\nマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関
係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成している。したがって、平成30年度掲載記事は、\nいずれも創作的な表現であり、著作物であると認められる。
・・・
以上の事実に、平成30年度について被告が本件イントラネットに掲載し
た原告が著作権を有する記事の数が前記 のとおりであることなどの状況
等を考慮すると、平成30年度掲載記事の選別を行ったC証人が選別した平
成28年度及び平成29年度については、被告による著作権侵害が認められ
る記事の総数(自社及び沿線記事に分類した記事及びそれに分類していない
記事の合計)は、これら両年度の枠付き記事(自社及び沿線記事に分類した
記事の一部)の合計である52本の3倍に当たる156本を下らないもので
あると認定するのが相当である。
・・・
原告は、本件個別規定に基づく損害額を主張するところ、上記によれば、原
告においては、少なくも平成20年以降は、本件個別規定を適用して原告が発
行する新聞の記事について利用許諾を検討する体制を整えており、これらの規
定を複数年にわたり、少なくとも1000件程度適用し、これに基づく使用料
を徴収してきた実績があることが認められる。また、本件個別規定には、社内
LAN(イントラネット)での利用を想定した文言がある。他方、本件で問題
になっているイントラネットでの掲載に関して本件個別規定に基づき支払われ
た利用料の額等の実績については不明であり、また、本件個別規定には件数が
多い場合の割引に関する規定もあり、件数が相当に多い場合、どの程度本件個
別規定の本文で定める額が現実に適用されていたかが必ずしも明らかではない。
さらに、本件イントラネットによる新聞記事の掲載は、被告の業務に関連する
最新の時事情報を従業員等に周知することを目的とするものであったことから
すると、掲載から短期間で当該記事にアクセスする者は事実上いなくなると認
められる。これらの事実に加え、本件に係る被告による侵害態様等を総合的に
考慮すると、本件については、原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額
(著作権法114条3項)は、掲載された原告の記事1本について掲載期間に
かかわらず3000円として、原告に同額の損害が生じたものと認めるのが相
当である。
被告は、被告による使用が本件個別規定における「非営利で公共性のある使
用」に当たること、被告が取材対象者に当たる記事も存在することなどを指摘
する。本件個別規定の【割引】、【無料】の項目にはこれらの事情により原告が
無料での利用を許諾することが記載されている。しかし、株式会社である被告
にこれらの規定が適用されたかは明らかではなく、また、上記で定められてい
る取扱いをしなければならないことが一般的であったことを認めるに足りる証
拠はない。また、被告は、本件は本件包括規定によるべきであると主張するが、
本件個別規定について前記 ア、イに認定した事情が認められる状況で、本件
包括規定の存在は、本件個別規定も参酌して上記のとおりの損額の額を認定す
ることの妨げになるものとは認められない。
前記のとおり、平成30年度以前については、遅くとも平成30年3月31
日までに、原告が著作権を有する記事が458本掲載されたと認めるのが相当
であるから、これによる損害は137万4000円となる。平成30年度掲載
記事について、別紙損害金計算表の「掲載月」欄記載の月に対応する「記事数」欄記載の数の記事について侵害が成立すると認められる(なお、原告は、記事\n177、185、215について被告で2本分の記事が掲載されたことを理由
に2本分の損害を計上しているが、単一の記事に係る単一のイントラネットへ
の掲載であることなどからすると、いずれも1本分の損害を計上するのが相当
である。)から、損害額は「損害額」欄記載のとおりとなり、その合計額は、3
9万9000円になる。
◆判決本文
原告新聞社が異なる関連事件です。こちらは約460万円の損害が認められています。
◆令和2(ワ)12348
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2022.07.31
令和1(ワ)26366 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年5月27日 東京地方裁判所
ポスティング業務を行うために住宅地図を購入し、これを適宜縮小して複写し、これにさらに、集合住宅名、ポストの数、配布数、交差点名、道路の状況、配布禁止宅等のポスティング業務に必要な情報を書き込むなどした地図(以下「ポスティング用地図」という。)の原図を作成して、配置していた被告に対して、差止請求と3000万円の損害賠償が認められました。
一般に、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号に
よって、客観的に表現するものであるから、個性的表\現の余地が少なく、文
学、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭
いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨選択及びそ
の表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を\n果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表れ得るものということが\nできる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及びその表\n示の方法を総合して判断すべきものである。
・・・
前記(2)によれば、本件改訂により発行された原告各地図は、都市計画図等
を基にしつつ、原告がそれまでに作成していた住宅地図における情報を記載
し、調査員が現地を訪れて家形枠の形状等を調査して得た情報を書き加える
などし、住宅地図として完成させたものであり、目的の地図を容易に検索す
ることができる工夫がされ、イラストを用いることにより、施設がわかりや
すく表示されたり、道路等の名称や建物の居住者名、住居表\示等が記載され
たり、建物等を真上から見たときの形を表す枠線である家形枠が記載された\nりするなど、長年にわたり、住宅地図を作成販売してきた原告において、住
宅地図に必要と考える情報を取捨選択し、より見やすいと考える方法により
表示したものということができる。したがって、本件改訂により発行された\n原告各地図は、作成者の思想又は感情が創作的に表現されたもの(著作権法\n2条1項)と評価することができるから、地図の著作物(著作権法10条1
項6号)であると認めるのが相当である。また、前記(2)アのとおり、本件改訂より後に更に改訂された原告各地図は、いずれも本件改訂により発行された原告各地図の内容を備えるものであるから、同様に地図の著作物であると認めるのが相当である。なお、本件改訂より前に発行された原告各地図については、原告は、本件訴訟において、被告らにより著作権が侵害された対象として主張していないので(前記第2の4(1)(原告の主張)エ)、著作物性についての検討を要しない(以下においては、「原告各地図」という場合、特に断らない限り、本件改訂以降に発行されたものを指す。)。
(5) これに対して、被告らは、1) 地図に著作物性が認められる場合は一般的に
狭く、住宅地図は他の地図と比較して著作物性が認められる場合が更に制限
される、2) 原告各地図は、江戸時代の古地図や既存の地図、都市計画図に依
拠して作成されたものであり、創作性が発揮される余地は乏しい、3) 原告各
地図は機械的に作成され、正確・精密であるとされることからすると、創作
性が発揮される部分は更に限定され、国土地理院は、2500分の1の縮尺
の都市計画基本図について、著作物性が認められる可能性は低いとの見解を\n示している、4) 過去に作成された住宅地図には家形枠が記載されたものがあ
り、家形枠を用いた表現自体ありふれている、5) 原告は地図作成業務のうち
少なくとも6割を海外の会社に対して発注しており、原告各地図には独自性
がないとして、原告各地図には著作物性が認められないと主張する。
しかし、上記1)については、前記(1)のとおり、地図の著作物性は、記載す
べき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべきものであると\nころ、前記(4)のとおり、原告各地図は、その作成方法、内容等に照らして、
作成者の個性が発現したものであって、その思想又は感情を創作的に表現し\nたものと評価できるから、地図の著作物であると認められる。
上記2)については、原告が古地図や都市計画図等を参照して原告各地図を
作成したものであったとしても、前記(2)アのとおり、原告各地図は、本件改
訂によって、都市計画図等をデータ化したものに、居住者名や建物名、地形
情報、調査員が現地を訪れて調査した家形枠の形状等を書き加えるなどして
作成されたものであり、その結果、前記(2)イの特徴を備えるに至ったもので
あって、このような原告各地図の作成方法、特徴等に照らせば、原告各地図
は、都市計画図等に新たな創作的表現が付加されたものとして、著作物性を\n有していると認められる。
上記3)については、原告各地図が正確・精密であるとしても、前記(1)のと
おり、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法等において創作性を発\n揮する余地はある。また、被告らの指摘する国土地理院の見解(乙63)は、
都市計画基本図について述べたものであり、住宅地図作成会社が作成する住
宅地図一般について述べたものではないし、上記2)について説示したとおり、
原告各地図は、都市計画図等を基図としてデータ化した上、これに種々の情
報を書き加えるなどすることで、住宅地図として完成させたものであるから、
国土地理院の上記見解は原告各地図に当てはまるものではない。さらに、前
記(2)イのとおり、原告各地図は、地図の4辺に目盛りが振られ、当該地図の
上、右上、右、右下、下、左下、左及び左上の各位置にある地図の番号が記
載されており、目的とする地図を検索しやすいものとなっている上、信号機
やバス停等がイラストを用いてわかりやすく表示されたり、建物等の居住者\n名や店舗名等を記載することにより住居表示についてもわかりやすくする工\n夫がされているなどの特徴を有するのに対し、証拠(乙70ないし73)に
よれば、都市計画基本図にはこのような特徴が全くないことが認められ、原
告各地図と都市計画基本図とでは、そもそも性質が異なることから、同列に
論じることはできない。
上記4)については、住宅地図において家形枠を記載することがよくあると
しても、原告各地図における家形枠の具体的な表現がありふれていることを\n認めるに足りる証拠はないから、直ちに原告各地図の著作物性を否定するこ
とはできないというべきである。
上記5)については、原告が原告各地図の作成業務を海外の会社に発注して
いることのみをもって、原告各地図の独自性を否定し、ひいては、その著作
物性を否定することはできないというべきである。
◆判決本文
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2022.07.14
令和4(ネ)10005 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和4年6月29日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
違法ダウンロードサイト「漫画村」に広告を出していた広告代理会社に対して、1審では、1100万円の損害賠償が認められました。知財高裁も同様の判断をしました。
ア 争点1−1(本件行為の幇助行為該当性等)について
・・・
a 控訴人らは、本件行為が本件ウェブサイトの運営者側に対して著作権侵害行
為自体を直接誘発し、又は促進するものではないから幇助行為には当たらないと主
張するが、訂正して引用した原判決の第3の1(2)アのとおり、広告料収入をほとん
ど唯一の資金源とするという本件ウェブサイトの実態を踏まえると、本件行為は、
本件ウェブサイトの運営者において、原告漫画のうち既にアップロードしたものの
掲載を継続するとともに、さらにアップロードする対象を追加することを直接誘発
し、また促進するものというのが相当であるから、控訴人らの上記主張は採用する
ことができない。
上記に関し、控訴人らは、幇助の適用範囲が広がりすぎて不当であるとも主張す
るが、本件ウェブサイトの上記実態を無視して一般論として幇助の範囲が拡大され
ることを前提とした主張にすぎず、また、客観的に幇助行為に該当することから直
ちに幇助行為について不法行為責任を問われるものでもないから、控訴人らの上記
主張も前記認定判断を左右するものではない。
b 控訴人らは、本件行為が既にアップロードされていたものについて、公衆送
信権の侵害行為を助長する行為とはいえないと主張するが、訂正して引用した原判
決の第3の1(2)アのとおり、上記主張も採用することができない。また、本件行為
を幇助行為とみることは本件ウェブサイトの運営自体を公衆送信権侵害行為と捉え
ることである旨をいう控訴人らの主張や、平成13年最判で認められた幇助の解釈
と整合しないとの控訴人らの主張も、本件において判断の前提とすべき事情の理解
を誤るものであって採用できない。
c 控訴人らは、控訴人らが支払っていた広告料が本件ウェブサイトの運営者の
広告料収入のわずかな割合しか占めるものでなかったと主張するが、同主張の前提
となる割合を証拠上直ちに認めるに足りるかという点をおくとしても、前記のよう
に広告料収入がほとんど唯一の資金源であったという本件ウェブサイトの実態に加
え、当該実態に照らすと、最終的に本件ウェブサイトの運営者に支払われる広告料
の金額の多寡にかかわらず広告を本件ウェブサイトに提供するとの行為自体が同運
営者による著作権侵害行為を助長するものであったというべきこと(なお、甲7及
び弁論の全趣旨によると、ウェブサイトの運営者に支払われていた広告料は、掲載
した広告の数等、広告の量によって単純に定められるものではなく、広告として掲
載された商品の広告を見た利用者が商品を購入したことが支払額に影響するなど、
広告の提供の程度と広告料の支払額は直接的に対応するものではなかったことがう
かがわれる。また、広告主が拠出した広告料から広告代理店が差し引く手数料等の
額が多くなればなるほど、ウェブサイトの運営者に支払われる広告料が少なくなっ
ていたことも容易に推測される。)のほか、後記イで認定判断する控訴人らの主観
的態様に照らしても、控訴人らが主張する前記の事情は、共同不法行為者間の求償
に係る問題にすぎず、被控訴人に対する不法行為責任がないことを基礎づける事情
にはならないというべきである。
・・・
イ 争点1−3(控訴人らの故意又は過失の有無)について
・・・
「(ア) まず、1)平成29年に至るまでの間に、広告収入が違法サイトの収入源と
なっていることが大きな問題とされ、広告配信会社の多くにおいても一定の方法で
広告を出したサイトに違法な情報が掲載されていないかを調べるなどの手段を講じ
ていたことや、官民共同の取組として、海賊版サイトを削除するという対策を継続
的に行うほか、周辺対策として広告出稿抑止にも重点的に取り組んでいくことが確
認されていたことが指摘できる。そのような状況において、2)本件ウェブサイトに
ついては、平成29年4月までの時点で、登録不要で完全無料で漫画が読めるとさ
れるサイトであり、検索バナーが必要な程度に大量の漫画が掲載されていることが
一見して分かる状態にあったもので、ツイッター上でも、違法性を指摘するツイー
トが複数されていたところであった。また、3)本件ウェブサイトについては、遅く
とも平成29年5月10日時点において、日本の著作物について、著作権が保護さ
れないという前提で掲載されていること等が閲覧者に容易に分かる状態となってい
た。
控訴人エムエムラボは、「MEDIADII」を利用して本件ウェブサイトに広告
の配信を開始するに当たり、本件ウェブサイトの表題及びURLの提示を受け、運\n用チームにおいて、それらを含む情報に基づいて登録の可否を審査して承諾し、手
動で広告の配信設定をしたものであるところ、前記1)〜3)の事情を踏まえると、遅
くとも平成29年5月までの時点で、控訴人らにおいては、本件ウェブサイトに掲
載された多数の漫画が著作権者の許諾を得ることなく掲載されているものであるこ
とや、そのように違法に掲載した漫画を無料で閲覧させるという本件ウェブサイト
が広告料収入をほぼ唯一の資金源とするものであること、それゆえ控訴人らが本件
ウェブサイトに広告を提供し広告料を支払うことは本件ウェブサイトの運営者によ
る著作権侵害行為を支える行為に他ならないことを、容易に推測することができた
というべきである。
そうすると、控訴人らは、遅くとも平成29年5月時点で、本件ウェブサイトの
運営者に著作権者との間での利用許諾の有無等を確認して適切に対処すべき注意義
務、又は、そもそもそのような確認をするまでもなく本件ウェブサイトの「MED
IADII」への登録を拒絶すべき注意義務(既に本件ウェブサイトの「MEDIA
DII」への登録作業を終えていた場合にはそれに係る契約を解除するなどして対応
すべき注意義務)を負っていたというべきであり、それにもかかわらず、本件行為
を遂行したことについて、控訴人らには少なくとも過失があったと認められる。
上記に関し、控訴人らが平成29年5月時点で上記の注意義務を怠り、その後、
安易に本件行為を継続的に遂行していたことは、控訴人グローバルネットが海賊サ
イト対策の取組を推進していたJIAAの会員であり、また、「MEDIADII」
の利用規約によると本件ウェブサイトが第三者の著作権を侵害するものである場合
にはその利用に係る契約を解除し得る旨が定められていたにもかかわらず、その後、
同年10月31日に控訴人らの取引先に係る違法サイト「はるか夢の址」の運営者
の逮捕が報道されたり、本件ウェブサイトの違法性が社会的により大きく取り上げ
られ、平成30年2月2日には取引先から本件ウェブサイトが海賊版サイトである
と記載した上での問合せを受けたといった事情があった中でも、控訴人らにおいて、
本件ウェブサイトへの「MEDIADII」を利用した広告の提供等の当否について
検討したことが一切うかがわれず、かえって、取引先に対し、「漫画村」という名
称を明記しつつ、同年3月2日には本件ウェブサイトへの広告の掲載が可能である\nと回答したり、同月23日には広告の効果がいいという根拠の一つとして本件ウェ
ブサイトの保有を挙げたりしていたもので、ようやく同年4月13日に本件ウェブ
サイトを名指ししてブロッキングを行うという方針を政府が表明して以降に初めて\n本件ウェブサイトへの配信停止の検討を開始したといった事情によっても裏付けら
れているというべきである。」
◆判決本文
原審はこちら。
◆令和3(ワ)1333
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2022.04.28
平成31(ワ)8969 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年4月22日 東京地方裁判所
ゲーム画面が著作権侵害か否か争われました。前提として裁判管轄についても争われました。後者の裁判管轄は「あり」としましたが、被告は、リンク設定行為をしただけなので、複製及び公衆送信には該当しないと、請求棄却されました。
証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、原告及び被告は、いずれも中国
に住所を置く法人であり、日本に事務所等の拠点を有しないこと、被告ゲー
ムの開発や配信に関する主要な作業は中国において行われたことが認められ
る。これらの事情によれば、本件訴訟に関する証拠が中国に存在することが
うかがわれるから、本件を日本の裁判所で審理した場合には、被告が、本件
訴訟の争点に関する主張立証をする際に、中国語で記載された書類を日本語
に翻訳したり、中国語を話す関係者のために通訳を手配したりするなどの一
定の負担を被り得ることは、否定し難い。
しかし、本件訴訟における原告の請求は、日本国内向けに配信された被告
ゲーム及びそれに関連する画像の複製を差し止め、被告ゲーム等のデータを
削除し、被告ゲームの売上げに基づき著作権法114条2項によって推定さ
れる額の損害を賠償すること等を求めるというものである。そうすると、本
件訴訟における請求の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告
が主張する上記損害は日本において発生したものと解されるから、本件は、
事案の性質上、日本とも強い関連性を有するというべきである。
また、本件訴訟の争点は、前記第2の3及び前記第3のとおり、原告各画
像と被告各画像の表現の同一性ないし類似性(争点2−1)、被告による原\n告画像1に係る著作権侵害の成否(争点2−2)、被告が原告各画像に依拠
して被告各画像を作成したと認められるか否か(争点2−3)、差止め及び
削除請求の必要性(争点3)並びに損害額(争点4)である。この点、上記
争点2−1については、原告各画像と被告各画像の対比や同一性ないし類似
性が認められる部分が創作的な表現であるか否かに関する検討を要するとこ\nろ、それらの点に係る主張立証は、主として原告各画像及び被告各画像自体
に基づいて行うことになる。これに加えて、他の画像に基づき、上記同一性
ないし類似性の認められる部分がありふれた表現であることの主張立証を行\nうことも考えられるが、当該他の画像に関する証拠が中国に存在するとして
も、その性質上、翻訳等の作業は必要とされないであろうから、被告に過大
な負担が生じるとは認め難い。上記争点2−2は、本件リンク設定行為が原
告画像1に係る原告の著作権を侵害するかどうかを、主として日本の著作権
法の解釈、適用によって判断するというものであるから、証拠の所在地が当
該争点の判断において重要な意味を持つものとはいえない。上記争点2−3
に関する証拠としては、原告ゲーム及び被告ゲーム以外のゲーム等の画像及
び公表時期に関する資料、ゲーム制作者の陳述書等が想定されるが、それら\nの全てが中国にのみ所在するとはうかがわれず、立証に際して被告に過大な
負担が生じるとまでは認め難い。上記争点3については、前記第3の3のと
おり、被告ゲームの配信が中止された事実が重要な評価障害事実として主張
立証され得るところ、被告ゲームが日本国内向けに配信されたオンラインゲ
ームであることを踏まえると、上記事実に関する主要な証拠は日本に所在す
るものと認められる。上記争点4についても、上記のとおり、原告が主張す
る損害は日本において発生したものと解されるから、損害額の算定の基礎と
なる主要な証拠は日本に所在するものと考えられる。したがって、本件が日
本で審理されるとしても、本件の重要な争点に係る主張立証に当たり、被告
に過大な負担が生じるとまでは認められない。
(2) これに対し、被告は、1)本件訴訟と当事者、事案及び争点において密接な
関連性が存在する別件中国訴訟が中国の裁判所において係属していること、
2)原告と被告は、当然に、本件訴訟を中国の裁判所に提起することが最も適
切であり、本件が中国の裁判所での解決が図られると想定していたこと、3)
本件訴訟に関する客観的な事実関係は全て中国において発生したこと、4)本
件訴訟の証拠は全て中国国内に存在すること、5)本件を日本の裁判所で審理
する場合には被告に過大な負担を課すること等を根拠として挙げ、本件訴訟
には民事訴訟法3条の9所定の「特別の事情」があると主張する。
しかし、まず、上記1)についてみるに、本件訴訟と別件中国訴訟は、いず
れも原告が当事者であるという点において共通するものの、被告は別件中国
訴訟の当事者の地位にはないから、当事者が完全に一致するものではない。
しかも、別件中国訴訟においては、原告ゲームの中国語版の表現と「C」と\n称するゲームの表現の類否等が争点とされているのであって、被告ゲームの\n表現との類否は争点とされていないばかりか、証拠(甲10)によれば、別\n件中国訴訟において争点とされている原告ゲームの表現はいずれも原告各画\n像とは異なる画像等に係るものであると認められる。そうすると、本件訴訟
と別件中国訴訟の事案及び争点はいずれも大きく相違するものといえるから、
本件訴訟と別件中国訴訟との間に強い関連性があるとまでは認められない。
次に、上記2)についてみるに、上記のとおり、本件訴訟と別件中国訴訟と
の関連性は強くない上、原告ゲームと被告ゲームがいずれも日本国内向けに
配信されたスマートフォン向けのオンラインゲームであることに照らすと、
別件中国訴訟が本件訴訟に先立って中国国内の裁判所に係属していたとして
も、原告ゲームと被告ゲームに関する著作権侵害に関する紛争の解決が中国
の裁判所で図られることが想定されていたとまでは認められない。
さらに、上記3)ないし5)についてみるに、前記(1)のとおり、本件の請求
の内容は日本と密接に関連するものであり、かつ、原告が主張する上記損害
は日本において発生したものと解されることから、本件に関する客観的な事
実関係が全て中国において発生したということはできない。また、前記(1)
のとおり、本件の証拠が専ら中国に存在するとは認められないし、本件を日
本の裁判所が審理するとしても、立証に関して被告に過大な負担を生じさせ
るものとまでは認められない。
したがって、被告の上記1)ないし5)の主張はいずれも理由がない。
(3) 以上の次第で、本件の事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の
所在地、原告を当事者とする中国の裁判所に係属中の訴訟の存在その他の事
情を十分に考慮しても、本件訴訟について、民事訴訟法3条の9所定の「特\n別の事情」があると認めることはできない。
・・・
ア 証拠(甲9、乙15ないし17)及び弁論の全趣旨によれば、本件リン
ク設定行為は、本件動画の表紙画面である被告画像1をリンク先のサーバ\nーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示させるものにすぎず、\n被告は、本件リンク設定行為を通じて、被告画像1のデータを本件ウェブ
ページのサーバーに入力する行為を行っていないものと認められる。そう
すると、前記(2)アのとおり原告画像1を複製したものと認められる被告
画像1を含む本件動画をYouTubeが管理するサーバーに入力、蓄積
し、これを公衆送信し得る状態を作出したのは、本件動画の投稿者であっ
て、被告による本件リンク設定行為は、原告画像1について、有形的に再
製するものとも、公衆送信するものともいえないというべきである。
イ これに対し、原告は、1)本件ウェブページに被告画像1を貼り付ける行\n為も、本件リンク設定行為も、本件ウェブページの閲覧者にとっては、何
らの操作を介することなく被告画像1を閲覧できる点で異なるところはな
いこと、2)本件リンク設定行為は、被告画像1を閲覧者の端末上に自動表\n示させるために不可欠な行為であり、かつ、原告画像1の複製の実現にお
ける枢要な行為といえること、3)本件リンク設定行為をすることにより、
被告ゲームを宣伝し、被告ゲームの販売による多大な利益を得たことを指
摘し、規範的にみて、被告が複製及び公衆送信の主体と認められる旨を主
張する。しかし、上記1)についてみると、単に、本件ウェブページに被告画像1
を貼り付ける等の侵害行為がされた場合と同一の結果が生起したことをも\nって、本件リンク設定行為について、複製権及び公衆送信権の侵害主体性
を直ちに肯定することはできないというべきである。
また、上記2)についてみると、仮に枢要な行為に該当することが侵害主
体性を基礎付け得ると解したとしても、本件リンク設定行為の前の時点で
既に本件動画の投稿者による原告画像1の複製行為が完了していたことに
照らすと、本件リンク設定行為が原告画像1の複製について枢要な行為で
あるとは認め難いというべきである。なお、本件動画は、本件ウェブペー
ジを閲覧する方法によらずとも、本件動画が投稿されたYouTubeの
「D」のページにアクセスすることによっても閲覧することができるから、
本件リンク設定行為が原告画像1の公衆送信にとって枢要な行為であると
も認められない。
さらに、上記3)についてみると、本件全証拠によっても、本件リンク設
定行為により被告がどの程度の利益を得ていたのかは明らかではないから、
その点をもって、被告が原告画像1の複製及び公衆送信の主体であること
を根拠付けることはできない。
したがって、上記1)ないし3)の点を考慮しても、被告を原告画像1の複
製及び公衆送信の主体であると認めることはできず、原告の上記主張は採
用することができない。
ウ また、原告は、仮に被告が著作権侵害の主体であると認められない場合
であっても、少なくとも、被告が本件リンク設定行為により上記著作権侵
害を幇助したものと認められると主張する。
しかし、前記アのとおり、被告による本件リンク設定行為は、被告画像
1をリンク先のサーバーから本件ウェブページの閲覧者の端末に直接表示\nさせるものにすぎず、本件動画の投稿者による被告画像1を含む本件動画
をYouTubeが管理するサーバーに入力・蓄積して公衆送信し得る状
態にする行為と直接関係するものではない。そうすると、本件リンク設定
行為が本件動画の投稿者による複製及び公衆送信行為自体を容易にしたと
はいい難いから、被告による本件リンク設定行為が、被告画像1に係る原
告の著作権(複製権及び公衆送信権)侵害を幇助するものと認めることは
できない。
したがって、被告を原告画像1の複製及び公衆送信の幇助者であると認
めることはできない。
◆判決本文
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2022.04.25
令和3(ネ)10074 債務不存在確認請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和4年4月20日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ファイル共有ソフトBitTorrentによる動画のダウンロードについて訴訟です。損害賠償請求不存在確認訴訟です。知財高裁は、1審とほぼ同額の損害賠償を認めました。ファイル共有ソフトによるダウンロードは、分散しているデータをまとめた完全なファイルのダウンロードが完了すると、その後は、シーダー(ダウンロードさせる者)の責任(共同侵害)も課せられます。\n
イ 一審原告ら(一審原告X6及び一審原告X10を除く。)は、同一審原告らが
本件著作物をアップロードしたことの立証に欠けると主張するが、訂正の上引用し
た原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2(4)のとおり、一審被告
は、BitTorrentを利用して本件著作物をアップロード及びダウンロード
している者のIPアドレスを特定し、プロバイダから、上記IPアドレスに対応す
る契約者の氏名及び住所の開示を受けていることが認められ、証拠(乙13の2・
3・6・7)によると、プロバイダの回答書にIPアドレス並びに一審原告X2、
一審原告X4、一審原告X3、A、一審原告X7、一審原告X9の氏名及び住所の
記載があり、これら一審原告らの氏名及び住所の開示を受ける過程において、IP
アドレスの混同がないことが認められる。なお、Aとの記載が、一審原告X8の行
為に係るものであることについては当事者間に争いがない。また、一審原告X1の
氏名及び住所が記載された株式会社TOKAIコミュニケーションズからの通知書
(乙13の1)には、IPアドレスの記載はないものの、「添付ファイル「接続記録
リスト」 No.49〜58」との記載があり、同記載は、一審被告作成の「調査結果一覧
(株式会社TOKAIコミュニケーションズ)」と題する書面(乙11の1)の49
〜58行目に対応するものと推認され、乙11の1の記載からIPアドレスの特定
ができることから、IPアドレスの混同がないことが認められる。そうすると、前
記(1)のとおり立証がされていないと認められる一審原告X5及び一審原告X11
を除き、一審原告ら(一審原告X6及び一審原告X10を除く。)について、本件著
作物をアップロードしたことについての立証がされていると認めるのが相当である。
(2) 争点1−2(共同不法行為性)について
ア 本件で、一審原告X1らは、本件各ファイルを、BitTorrentを利
用して送信可能な状態におくことで、一審被告の著作権を侵害した。ところで、訂\n正の上引用した原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2(3)のとお
り、BitTorrentを利用してファイルをダウンロードする際には、分割さ
れたファイル(ピース)を複数のピアから取得することになるところ、後掲の証拠
によると、一部のピアのみが安定してファイルの供給源となる一方で、大半のピア
は短時間の滞在時(BitTorrentの利用時)に一時的なファイルの供給源
の役割を担うものとされるが、一審原告X1らは、常にBitTorrentを利
用していたものではないことから、一時的なファイルの供給源の役割を担っていた
と考えられること(甲12、15、21)、あるトラッカーが、特定の時点で把握し
ているリーチャーとシーダーの数は0〜5件程度と、特定時点における特定のファ
イルに着目した場合には必ずしも多くのユーザー間でデータのやり取りがされてい
るものではないこと(乙2〜4、8〜10)、BitTorrentを利用したアッ
プロードの速度は、ダウンロードの速度よりも100倍以上遅く、また、ファイル
の容量に比しても必ずしも大きくなく、例えば本件各ファイルの容量がそれぞれ8.
8GB、7.0GB、2.3GBであるのに照らしても、アップロードの速度は平
均0〜17.6kB/s程度(本件著作物以外の著作物に関するものを含む。)と遅
く、ダウンロードに当たっては、相当程度の時間をかけて、相当程度の数のピアか
らピースを取得することで、1つのファイルを完成させていると推認されること(甲
5、6、乙2〜4、6)がそれぞれ認められる。これらの事情に照らすと、Bit
Torrentを利用した本件各ファイルのダウンロードによる一審被告の損害の
発生は、あるBitTorrentのユーザーが、本件ファイル1〜3の一つ(以
下「対象ファイル」という。)をダウンロードしている期間に、BitTorren
tのクライアントソフトを起動させて対象ファイルを送信可能\化していた相当程度
の数のピアが存在することにより達成されているというべきであり、一審原告X1
らが、上記ダウンロードの期間において、対象ファイルを有する端末を用いてBi
tTorrentのクライアントソフトを起動した蓋然性が相当程度あることを踏\nまえると、一審原告X1らが対象ファイルを送信可能化していた行為と、一審原告\nX1らが対象ファイルをダウンロードした日からBitTorrentの利用を停
止した日までの間における対象ファイルのダウンロードとの間に相当因果関係があ
ると認めるのも不合理とはいえない。
そうすると、一審原告X1らは、BitTorrentを利用して本件各ファイ
ルをアップロードした他の一審原告X1ら又は氏名不詳者らと、本件ファイル1〜
3のファイルごとに共同して、BitTorrentのユーザーに本件ファイル1
〜3のいずれかをダウンロードさせることで一審被告に損害を生じさせたというこ
とができるから、一審原告X1らが本件各ファイルを送信可能化したことについて、\n同時期に同一の本件各ファイルを送信可能化していた他の一審原告X1ら又は氏名\n不詳者らと連帯して、一審被告の損害を賠償する責任を負う。
なお、控訴人(一審原告)らは、原判決が、一審原告X1らが送信可能化した始\n期から終期までの期間のダウンロード数をひとまとめで判断したことが不相当であ
る旨主張するが、原判決は、当該期間のダウンロード数をもってひとまとめの損害
が生じたと認定したものではなく、1ダウンロード当たりの損害額を認定した上で、
当該期間にダウンロードされた本件各ファイルの数を推定して、推定したダウンロ
ード数に応じた損害額を算定しているのであって、この手法は相当である。
イ 控訴人(一審原告)らは、原判決が、一審原告らがBitTorrentの
仕組みを十分認識・理解していたと認定したことについて事実誤認であると主張す\nるところ、訂正の上引用した原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判
断」の1(2)のとおり、控訴人(一審原告)らは、BitTorrentを利用して
ファイルをダウンロードした場合、同時に、同ファイルを送信可能化していること\nについて、認識・理解していたか又は容易に認識し得たのに理解しないでいたもの
と認められ、少なくとも、本件各ファイルを送信可能化したことについて過失があ\nると認めるのが相当である。
そうすると、控訴人(一審原告)らが、本件著作物の送信可能化に関し、不法行\n為責任を負うとした原判決の判断は相当である。
(3) 争点2−1(共同不法行為に基づく損害の範囲)について
ア 一審被告は、本件各ファイルが最初にBitTorrentにアップロード
されて以降の権利侵害の全てについて、一審原告らが責任を負う旨主張するが、一
審原告らと本件各ファイルをアップロードしている他の一審原告ら又は氏名不詳者
との間に共謀があるものでもないのであるから、一審原告らは、BitTorre
ntを利用して本件各ファイルのダウンロードをする前や、BitTorrent
の利用を終了した後においては、本件著作物について権利侵害行為をしていないの
は明らかである。また、本件各ファイルの送信可能化による損害は、1ダウンロー\nドごとに発生すると考えられるところ、一審原告らがBitTorrentの利用
をしていない時期におけるダウンロードについてまで、一審原告らの行為と因果関
係があるなどということはできない。そうすると、一審原告らは、BitTorr
entを利用して本件各ファイルのダウンロードをする前及びBitTorren
tの利用を終了した後については、本件著作物の権利侵害について責任を負わない
というべきであり、一審被告の上記主張は採用できない。
イ 一審原告X1らによる本件各ファイルのアップロードの終期について、別紙
「損害額一覧表」の「終期」欄記載の日(プロバイダからの意見照会を受けた日)\nと認定できるのは、訂正の上引用した原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁
判所の判断」2(3)記載のとおりである。これは、一審原告X1らの陳述書(甲15、
20の1)に基づき認定したものであるが、プロバイダからの意見照会を受けたこ
とで怖くなり、BitTorrentのクライアントソフトを削除したり、Bit\nTorrentの利用を控えるのは通常の行動であり、上記各陳述書の内容に不自
然な点はない。
ウ 一審原告らは、BitTorrentの利用者が、ファイルのアップロード
を24時間継続することはまずないことや、シーダーやピアが数百以上散在してい
ることなどを踏まえ、本件の損害額については、例えば原判決の認定する額の10
0分の1などとして算定すべきと主張する。しかしながら、前記(1)及び(2)に判示
したとおり、一審原告X1らは、BitTorrentを利用して本件各ファイル
をダウンロードしてから、BitTorrentの利用を停止するまでの間の本件
各ファイルのダウンロードによる損害の全額について、共同不法行為者として責任
を負うと認めることが相当である。また、BitTorrentの仕組みに照らす
と、本件各ファイルのダウンロードキャッシュを削除するか、BitTorren
tの利用を停止するまでの間は、一審原告X1らの端末にダウンロード済みの本件
各ファイルが送信可能な状態にあったのであるから、一審原告X1らが本件各ファ\nイルのダウンロードキャッシュを削除したこと又はBitTorrentの利用を
停止したことが認められる時点までは、一審原告X1らの不法行為は継続していた
と認めるのが相当であり、本件では、一審原告X1らが、別紙「損害額一覧表」の\n「終期」欄記載の日よりも前の特定の日に、本件各ファイルのダウンロードキャッ
シュを削除したことを認めるに足りる証拠はない一方で、一審原告X1らが、同別
紙の「終期」に記載の日より後はBitTorrentの利用をしていないことが
認められるから、同日までの間は、一審原告X1らは、本件各ファイルの送信可能\n化による不法行為を継続していたと推認することが相当である。
ところで、一審原告らは、正確なダウンロード数についての立証がない旨指摘す
るが、正確なダウンロード数は不明であるものの、一審原告X1らが本件各ファイ
ルを送信可能化していた期間におけるダウンロード数は、令和元年10月1日から\n令和3年5月18日までの間にダウンロードされた数から、別紙「損害額一覧表」\nの「5)期間中のダウンロード数」のとおりに推計することができるから、本件にお
いては、当該ダウンロード数の限度で立証されているというべきである。
◆判決本文
原審はこちら。
◆令和2(ワ)1573
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2022.02.14
令和3(ワ)1333 著作権 令和3年12月21日 東京地方裁判所
東京地裁47部は、漫画閲覧サイトにおける公衆送信について、被告らの行為が原告漫画の売上減少に寄与した割合は,約1%として、1000万円の損害を認めました。
0.1を乗じているのは、印税(10%)です。
前記認定のとおり,原告漫画1の累計発行部数(紙媒体による書籍,電子書籍及
び複数巻を一つにまとめた新装版を含む。以下同じ。)は約2000万部,原告漫画
2の累計発行部数は約370万部であり,原告漫画の1冊当たりの販売価格は46
2円であって,原告漫画の売上額は,およそ109億4940万円となるところ,
原告漫画の著作権者であると認められる原告が受けるべき使用料相当額は,原告漫
画の上記のような発行部数等に照らし,同売上額の10パーセントと認めるのが相
当である。
ところで,本件ウェブサイトによる原告漫画が無断掲載されたことにより,原告
漫画の正規品の売上が減少することが容易に推察され,原告漫画においても,発売
日翌日に本件ウェブサイト上にその新作が掲載されていたことによれば,新作が無
料で閲覧できることにより,読者の原告漫画の購買意欲は大きく減退するというべ
きである一方,被告らの行為は,本件ウェブサイトによる原告漫画の違法な無断掲
載を,広告の出稿や広告料支払という行為によって幇助したものにとどまること,
原告漫画2の上記累計発行部数は令和2年1月頃までのものであって,本件ウェブ
サイトが閉鎖された平成30年4月より後の期間における原告漫画2の売上げに関
して被告らの行為との間の関連性を認めることができないことその他本件に顕れた
一切の事情に照らして検討すれば,被告らの本件における行為が原告漫画の売上減
少に寄与した割合は,約1パーセントと認めるのが相当である。
これらの事情に鑑みると,本件ウェブサイトによる原告漫画に係る著作権(公衆
送信権)侵害行為を被告らが幇助したことと相当因果関係が認められる原告の損害
額は,1000万円(≒109億4940万円×0.1×0.01)と認めるのが
相当である。
◆判決本文
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2022.01.11
令和2(ワ)1573 債務不存在確認請求事件 著作権 民事訴訟 令和3年8月27日 東京地方裁判所
ファイル共有ソフトの使用者に対して、公衆送信権侵害が認められました。\n
ア 以上のとおり,原告X1,原告X2及び原告X3は本件ファイル1を, 原
告X4,原告X6,原告X7及び原告X8は本件ファイル2を,原告X9及
び原告X10は本件ファイル3を,それぞれ,BitTorrentを通じ
てダウンロードしたものと認められる(以下,ダウンロードを行ったと認め
られる上記各原告を「原告X1ら」という。)。
そして,前記前提事実2(3)のとおり,BitTorrentは,リーチャ
ーが,目的のファイル全体のダウンロードが完了する前であっても,既に所
持しているファイルの一部(ピース)を,他のリーチャーと共有するために
アップロード可能な状態に置く仕組みとなっていることに照らすと,原告X\n1らは,ダウンロードしたファイルを同時にアップロード可能な状態に置い\nたものと認められる。
イ 前記前提事実のとおり,BitTorrentは,特定のファイルをピー
スに細分化し,これをBitTorrentネットワーク上のユーザー間で
相互に共有及び授受することを通じ,分割された全てのファイル(ピース)
をダウンロードし,完全なファイルに復元して,当該ファイルを取得するこ
とを可能にする仕組みであるということができる。\n これを本件に即していうと,原告X1らが個々の送受信によりダウンロー
ドし又はアップロード可能な状態に置いたのは本件著作物の動画ファイル\nの一部(ピース)であったとしても,BitTorrentに参加する他の
ユーザーからその余のピースをダウンロードすることにより完全なファイ
ルを取得し,また,自己がアップロード可能な状態に置いた動画ファイルの\n一部(ピース)と,他のユーザーがアップロード可能な状態に置いたその余\nのピースとが相まって,原告X1ら以外のユーザーが完全なファイルをダウ
ンロードすることにより取得することを可能にしたものということができ\nる。そして,原告X1らは,BitTorrentを利用するに際し,その
仕組みを当然認識・理解して,これを利用したものと認めるのが相当である。
以上によれば,原告X1らは,BitTorrentの本質的な特徴,す
なわち動画ファイルを分割したピースをユーザー間で共有し,これをインタ
ーネットを通じて相互にアップロード可能な状態に置くことにより,ネット\nワークを通じて一体的かつ継続的に完全なファイルを取得することが可能\nになることを十分に理解した上で,これを利用し,他のユーザーと共同して,\n本件著作物の完全なファイルを送信可能化したと評価することができる。\n したがって,原告X1らは,いずれも,他のユーザーとの共同不法行為に
より,本件著作物に係る被告の送信可能化権を侵害したものと認められる。\nウ(ア) これに対し,原告らは,アップロード可能な状態に置いたファイルが全\n体のごく一部であり,個々のピースは著作物として価値があるものではな
いから,原告らの行為は著作権侵害に当たらないと主張するが,上記イで
判示したとおり,原告X1らによる行為は,他のユーザーと共同して本件
著作物を送信可能化したものと評価できるから,原告らの主張は採用する\nことができない。
(イ) 原告らは,ファイルを送信する側は,自らがファイルをアップロード可
能な状態に置いていることを認識していないことも多いと指摘するが,原\n告X1らは,BitTorrentを利用するに当たって,前記前提事実
(3)イ記載のような手続を踏み,各種ファイルやソフトウェアを入手して\nいる以上,BitTorrentの基本的な仕組みを理解していると推認
されるのであって,とりわけ,BitTorrentにおいて,ユーザー
がダウンロードしたファイル(ピース)について同時にアップロード可能\nな状態に置かれることは,その特徴的な点であるから,これを利用した原
告X1らがこの点を認識していなかったとは考え難い。
(ウ) 原告らは,送信可能化権侵害の主張に関し,ユーザー間における本件著\n作物に係るファイルの一部(ピース)の授受を中継した可能性やダウンロ\nードを開始した直後に何らかの事情でダウンロードが停止した可能性が\nあり,原告らが本件著作物を送信可能な状態に置いたと評価することはで\nきないと主張する。
しかし,BitTorrentにおいて,ユーザーがダウンロードした
ファイル(ピース)について同時にアップロード可能な状態に置かれるこ\nとは,前記判示のとおりであり,原告X1らがこれを中継したにすぎない
ということはできず,また,本件各ファイルのダウンロードの開始直後に
ダウンロードが停止したことをうかがわせる証拠もない。
(エ) 原告らは,シーダーとして本件著作物の動画ファイルの配布を行ったも
のではなく,原告X6や原告X10の共有比に照らしても,被告の主張す
るダウンロード総数の全部や主要な部分を惹起したということはできな
いので,民法719条1項前段を適用する前提を欠くと主張する。
しかしながら,そもそも,民法719条1項前段は,個々の行為者が結
果の一部しか惹起していない場合であっても,個々の行為を全体としてみ
た場合に一つの加害行為が存在していると評価される場合に,個々の行為
者につき結果の全部につき賠償責任を負わせる規定であるから,仮に個々
の原告がアップロード可能な状態に置いたデータの量が少なく,結果に対\nする寄与が少なかったとしても,そのことは,原告X1らの共同不法行為
責任を否定する事情にはならないというべきである。
エ 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告X1らが本件各フ
ァイルをアップロード可能な状態に置いた行為は,本件著作物に係る被告の\n送信可能化権を侵害することになる。\n
2 争点2−1(共同不法行為に基づく損害の範囲)について
(1) 被告は,本件著作物の侵害は,本件各ファイルの最初のアップロード以降継
続しており,社会的にも実質的にも密接な関連を持つ一体の行為であることな
どを理由として,原告らがBitTorrentを利用する以前に生じた損害
も含め,令和2年4月2日当時のダウンロード回数について,原告らは賠償義
務を負う旨主張する。しかしながら,民法719条1項前段に基づき共同不法行為責任を負う場合であっても,自らが本件各ファイルをダウンロードし又はアップロード可能な\n状態に置く前に他の参加者が行い,既に損害が発生しているダウンロード行為
についてまで責任を負うと解すべき根拠は存在しないから,被告の上記主張は
採用することはできない。
また,被告は,BitTorrentにアップロードされたファイルは,サ
ーバからの削除という概念がないため,永遠に違法なダウンロードが可能であ\nるとして,現在に至るまで損害は拡大している旨主張する。
しかし,前記前提事実(3)ウのとおり,BitTorrentは,ソフトウェ\nアを起動していなければアップロードは行われないほか,BitTorren
t上や端末の記録媒体からファイルを削除すれば,以後,当該ファイルがアッ
プロードされることはないものと認められる。
そうすると,原告X1らがBitTorrentを通じて自ら本件各ファイ
ルを他のユーザーに送信することができる間に限り,不法行為が継続している
と解すべきであり,その間に行われた本件各ファイルのダウンロードにより生
じた損害については,原告X1らの送信可能化権侵害と相当因果関係のある損\n害に当たるというべきである。他方,端末の記録媒体から本件各ファイルを削
除するなどして,BitTorrentを通じて本件各ファイルの送受信がで
きなくなった場合には,原告X1らがそれ以降に行われた本件各ファイルのダ
ウンロード行為について責任を負うことはないというべきである。
(2) アップロードの始期について
ア 以上を前提に検討するに,証拠(甲6)によれば,原告X6については,
遅くとも平成30年6月4日までには本件ファイル2をアップロード可能\nな状態に置いていたことが認められる。
イ 原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X7,原告X8,原告X
9及び原告X10については,BitTorrentを通じて本件各ファイ
ルのダウンロードを開始した時期は明らかではないものの,証拠(乙11)に
よれば,遅くとも,それぞれ次の各年月日において本件各ファイルをアップ
ロード可能な状態に置いていたことが認められる。\n
(ア) 原告X1 平成30年6月12日
(イ) 原告X2 平成30年6月4日
(ウ) 原告X3 平成30年6月2日
(エ) 原告X4 平成30年6月4日
(オ) 原告X7 平成30年6月12日
(カ) 原告X8 平成30年6月13日
(キ) 原告X9 平成30年6月2日
(ク) 原告X10 平成30年6月9日
(3) アップロードの終期について
ア 乙14及び弁論の全趣旨によれば,原告X1らは,それぞれ,別紙「損害
額一覧表」の「終期」欄記載の各年月日に原告ら代理人に相談をしたことが\n認められるところ,同原告らは既にプロバイダ各社からの意見照会を受け,
著作権者から損害賠償請求を受ける可能性があることを認識していた上,上\n記相談の際に,原告ら代理人からBitTorrentの利用を直ちに停止
すべき旨の助言を受けたものと推認することができるから,同原告らは,そ
れぞれ,遅くとも同日にはBitTorrentの利用を停止し,もって,
本件各ファイルにつきアップロード可能な状態を終了したものと認めるの\nが相当である。
イ これに対し,原告らは,プロバイダ各社からの意見照会を受けた時点で,
直感的にBitTorrentの利用を停止した旨主張するが,プロバイダ
各社から意見照会を受けたからといって,直ちにBitTorrentの利
用停止という行動に及ぶとは限らず,実際のところ,原告X6は,平成30
年10月19日に受領したものの,少なくとも同年11月頃までBitTo
rrentソフトウェアを端末にインストールしていたことがうかがわれ\nる(甲6)。そうすると,プロバイダ各社からの意見照会を受けた時点でB
itTorrentの利用を停止したと認めることはできない。
ウ 以上によれば,原告X1らは,それぞれ,別紙「損害額一覧表」の「期間」\n欄記載の期間中に他のユーザーが本件各ファイルをダウンロードしたこと
により生じた損害の限度で,賠償義務を負うことになる。
(4) ダウンロード数
ア 本件全証拠によっても,上記各期間中に本件各ファイルがダウンロードさ
れた正確な回数は明らかではない。他方で,証拠(乙2〜4,8〜10)に
よれば,令和元年10月1日から令和3年5月18日までの595日間にお
いて,本件ファイル1については501,本件ファイル2については232,
本件ファイル3については910,それぞれダウンロード数が増加している
ことが認められるところ,各原告につき,同期間の本件各ファイルのダウン
ロード数の増加率に,前記(2)・(3)において認定したダウンロードの始期か
ら終期までの日数(別紙「損害額一覧表」の「日数」欄記載のとおり)を乗\nじる方法によりダウンロード数を算定するのが相当である。この計算方法に基づき算定されたダウンロード数は,別紙「損害額一覧表」の「期間中のダウンロード数」欄記載のとおりである。\n
なお,原告らは,乙2〜4記載のコンプリート数(ダウンロード数)と甲
10記載のコンプリート数が大幅に異なることを根拠に,乙2〜4記載のコ
ンプリート数に依拠することは相当ではないと主張するが,コンプリート数
が一致しないのは,参照するトラッカーサーバーが異なることが原因である
と考えられ,上記乙2〜4のコンプリート数に特に不自然・不合理な点はな
い以上,上記各証拠に記載されたコンプリート数に基づいてダウンロード数
を計算することが相当である。
(5) 基礎とすべき販売価格
ア 原告X1らが本件各ファイルをBitTorrentにアップロード可
能な状態に置いたことにより,BitTorrentのユーザーにおいて,\n本件著作物を購入することなく,無料でダウンロードすることが可能となっ\nたことが認められる。これにより,被告は,本件各ファイルが1回ダウンロ
ードされるごとに,本件著作物を1回ダウンロード・ストリーミング販売す
る機会を失ったということができるから,本件著作物ダウンロード及びスト
リーミング形式の販売価格(通常版980円,HD版1270円)を基礎に
損害を算定するのが相当である。
そして,被告は,DMMのウェブサイトにおいて本件著作物のダウンロー
ド・ストリーミング販売を行っているところ,被告の売上げは上記の販売価
格の38%であると認められるので(弁論の全趣旨),本件各ファイルが1回
ダウンロードされる都度,被告は,通常版につき372円(=980×0.
38),HD版につき482円(=1270×0.38)の損害を被ったも
のということができる。
イ 本件ファイル3は通常版の動画ファイルのピースであるのに対し,本件フ
ァイル1及び2はHD版の動画ファイルのピースであることが認められる
ので(弁論の全趣旨),別紙「損害額一覧表」の「価格」欄記載のとおり,\n原告X1,原告X2,原告X3,原告X4,原告X6,原告X7及び原告X
8については482円,原告X9及び原告X10については372円を基礎
として,損害額を計算することが相当である。
ウ 本件各ファイルをダウンロードしたユーザーの中には有料であれば本件
著作物を購入しなかったものも存在するという原告らの指摘や,BitTo
rrentのユーザーと本件著作物の需要者等が異なるという原告らの指
摘も,前記認定を左右するものということはできない。
(6) 以上によれば,原告X1らが被告に対して負うべき損害賠償の額は,それぞ
れ,別紙「損害額一覧表」の「損害額」欄記載のとおりとなる(なお,同別紙\n「5)期間中のダウンロード数」は計算結果を小数第2位まで表示したものであ\nり,「損害額」欄は小数第1位で切り捨てたものである。)。
3 争点2−2(減免責の可否)について
原告らは,原告らにおいて複製物を作成しようという意思が希薄であり,客観
的にも本件著作物の流通に軽微な寄与をしたにすぎないことや,原告らとユーザ
ーとの間の主観的・経済的な結び付きが存在しないことからすれば,関連共同性
は微弱であるとして,損害額につき大幅な減免責が認められるべきである旨主張
するが,原告らの指摘するような事情をもって,前記認定の損害額を減免責すべ
き事情に当たるということはできない。
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2022.01. 3
令和3(ネ)10046 著作者人格権等侵害行為差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和3年12月22日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
一審原告から懲戒請求を受けた弁護士である一審被告Yが自らのブログ上に懲戒請求の内容とともに一審原告の主張に対する反論を掲載しました。これらが著作権侵害なのか、また権利濫用なのかが争われました。1審は被告のブログ掲載の削除を認めました。知財高裁は、これを取り消しました。
本件懲戒請求書は,一審原告が,弁護士会に対し,一審被告Yに対する
懲戒請求をすること,及び懲戒請求に理由があること等を示すために,本
件懲戒請求の趣旨・理由等を記載したものであって,利用者に鑑賞しても
らうことを意図して創作されたものではないから,それによって財産的利
益を得ることを目的とするものとは認められず,その表現も,懲戒請求の\n内容を事務的に伝えるものにすぎないから,全体として,著作物であるこ
とを基礎づける創作性があることは否定できないとしても,独創性の高い
表現による高度の創作性を備えるものではない。\n
イ 一審原告自身の行動及びその影響
本件産経記事は,一審原告による本件懲戒請求の後,産経新聞のニュー
スサイトに掲載されたものであって,本件懲戒請求書の「懲戒請求の理由」
の第3段落全体(4行)を,その用語や文末を若干変えるなどした上で,
かぎ括弧付きで引用していることに加え,証拠(甲2,乙2,6)及び弁
論の全趣旨を総合すれば,一審原告は,産経新聞社に対し,一審被告Yの
氏名に関する情報を含め,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を自
ら提供したものと推認される。
そうすると,一審原告は,産経新聞社に対し,本件懲戒請求書又はその
内容に関する情報を提供し,それに基づいて,本件懲戒請求書の一部を引
用した本件産経記事が産経新聞のニュースサイトに掲載され,その結果,
後記(2)のとおり,一審被告Yが,ブログにより,本件懲戒請求書に記載さ
れた懲戒請求の理由及び本件産経記事の内容に対して反論しなければな
らない状況を自ら生じさせたものということができる。
ウ 保護されるべき一審原告の利益
前記2のとおり,本件懲戒請求書は公表されたものとは認められないか\nら,一審原告は,本件懲戒請求書に関して,公衆送信権により保護される
べき利益として,公衆送信されないことに対する財産的利益を有しており,
公表権により保護されるべき利益として,公表\されないことに対する人格
的利益を有していたものと認められる。
しかし,本件懲戒請求書の性質・内容(前記ア)を考慮すると,一審原
告が本件懲戒請求書に関して有する財産的利益及び人格的利益は,もとも
とそれほど大きなものとはいえない上,一審原告自身の行動及びその影響
(前記イ)を考慮すると,保護されるべき一審原告の上記利益は,一審原
告自身の自発的な行動により,少なくとも産経新聞のニュースサイトに本
件産経記事が掲載された時以降は,相当程度減少していたものと認めるの
が相当である。
(2) 一審被告Yによる本件記事1と本件リンクの目的について
前記第2の2(前提事実)によれば,本件記事1の目的は,本件産経記事
により,一審被告Yに対する本件懲戒請求の事実が報道され,一審被告Yに
対する批判的な論評がされたことから,一審被告Yが,自らの信用・名誉を
回復するため,本件懲戒請求の理由及びそれを踏まえた本件産経記事の報道
内容に対して反論することにあったものと認められる。
ところで,弁護士に対する懲戒請求は,最終的に弁護士会が懲戒処分をす
ることが確定するか否かを問わず,懲戒請求がされたという事実が第三者に
知られるだけで請求を受けた弁護士の業務上又は社会上の信用や名誉を低下
させるものと認められるから,懲戒請求が弁護士会によって審理・判断され
る前に懲戒請求の事実が第三者に公表された場合には,最終的に懲戒をしな\nい旨の決定が確定した場合に,そのときになってその事実を公にするだけで
は,懲戒請求を受けた弁護士の信用や名誉を回復することが困難であること
は容易に推認されるところである。したがって,弁護士が懲戒請求を受け,
それが新聞報道等によって弁護士の実名で公表された場合には,懲戒請求に\n対する反論を公にし,懲戒請求に理由のないことを示すなどの手段により,
弁護士としての信用や名誉の低下を防ぐ機会を与えられることが必要である
と解すべきである。
本件においては,前記(1)イのとおり,一審原告が一審被告Yに対する懲戒
請求をしたことに加え,一審原告が本件懲戒請求書又はその内容に関する情
報を自ら産経新聞社に提供したため,一審被告Yに対して本件懲戒請求がさ
れたことが報道され,広く公衆の知るところになったのであるから,一審被
告Yが,公衆によるアクセスが可能なブログに反論文である本件記事1を掲\n載し,本件懲戒請求に理由のないことを示し,弁護士としての信用や名誉の
低下を防ぐ手段を講じることは当然に必要であったというべきである。した
がって,本件記事1を作成,公表し,本件リンクを張ることについて,その\n目的は正当であったものと認められる。
(3) 本件リンクによる引用の態様の相当性について
ア 上記(1)及び(2)のとおり,一審被告Yは,本件リンクにより,本件懲戒請
求書の全文(ただし,本件懲戒請求書のうち,一審原告の住所の「丁目」
以下及び電話番号が墨塗りされているもの。)を本件記事1に引用したも
のであるが,本件においては,一審原告が自ら産経新聞社に本件懲戒請求
書又はその内容を提供し,産経新聞のニュースサイトに本件産経記事が掲
載されたため,一審被告Yは,弁護士としての信用及び名誉の低下を防ぐ
ために,ブログに反論文である本件記事1を掲載し,懲戒請求に理由のな
いことを示すことが必要となった。
確かに,本件懲戒請求書は未公表の著作物であり,本件産経記事には本\n件懲戒請求書の一部が引用されていたものの,その全体が公開されていた
ものではないが,懲戒請求書の理由の欄には,その全体にわたって,懲戒
請求を正当とする理由の主張が記載されていたから(甲2),一審被告Yと
しては,本件記事1において本件懲戒請求書の要旨を摘示して反論しただ
けでは,自分に都合のよい部分のみを摘示したのではないかという疑念を
抱かれるおそれもあったため,その疑念を払拭し,本件懲戒請求の全ての
点について理由がないことを示す必要があり,そのためには,本件懲戒請
求書の全部を引用して開示し,一審被告Yによる要旨の摘示が恣意的でな
いことを確認することができるようにする必要があったものと認められ
る。
また,一審被告Yは,本件記事1に本件懲戒請求書自体を直接掲載する
のではなく,本件懲戒請求書のPDFファイルに本件リンクを張ることに
よって本件懲戒請求書を引用しており,本件懲戒請求書が,本件記事1を
見る者全ての目に直ちに触れるものでなく,本件懲戒請求書の全文を確認
することを望む者が本件懲戒請求書を閲覧できるように工夫しており,本
件懲戒請求書が必要な限りで開示されるような方策をとっているという
ことができる。
さらに,本件記事 1 は,本件懲戒請求書とは明確に区別されており,本
件懲戒請求に理由のないことを詳細に論じるものであって,その反論の前
提として本件懲戒請求書が引用されていることは明らかであり,仮に主従
関係を考えるとすれば,本件記事1が主であり,本件懲戒請求書はその前
提として従たる位置づけを有するにとどまる。
そして,前記(1)のとおり,一審原告が本件懲戒請求書に関して有する,
公衆送信権により保護されるべき財産的利益,公表権により保護されるべ\nき人格的利益は,もともとそれほど大きなものとはいえない上,一審原告
自らの行動により,相当程度減少していたから,本件懲戒請求書の全部が
引用されることにより一審原告の被る不利益も相当程度減少していたと
認められるばかりか,一審原告は,自らの行為により,本件懲戒請求書又
はその内容を産経新聞社に提供し,本件産経記事の産経新聞のニュースサ
イトへの掲載を招来したものであり,一審原告の上記行為は,本件懲戒請
求があったこと及び本件懲戒請求書の内容を世間に公にするという点に
おいて,一審被告Yの弁護士としての信用及び名誉に関して非常に大きな
影響を与えるものであったと認められる。
イ 以上の点を考慮するならば,一審被告Yが,本件リンクを張ることによ
って本件懲戒請求書の全文を引用したことは,一審原告が自ら産経新聞社
に本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を提供して本件産経記事が産
経新聞のニュースサイトに掲載されたことなどの本件事案における個別的
な事情のもとにおいては,本件懲戒請求に対する反論を公にする方法とし
て相当なものであったと認められる。
(4) 権利濫用の成否
前記(1)のとおり,一審原告が本件懲戒請求書に関して有する,公衆送信権
により保護されるべき財産的利益,公表権により保護されるべき人格的利益\nは,もともとそれほど大きなものとはいえない上,一審原告自身の行動によ
り,相当程度減少していたこと,前記(2)のとおり,本件記事1を作成,公表\nし,本件リンクを張ることについて,その目的は正当であったこと,前記(3)
のとおり,本件リンクによる引用の態様は,本件事案における個別的な事情
のもとにおいては,本件懲戒請求に対する反論を公にする方法として相当な
ものであったことを総合考慮すると,一審原告の一審被告Yに対する公衆送
信権及び公表権に基づく権利行使は,権利濫用に当たり,許されないものと\n認めるのが相当である。
(5)当事者の主張に対する判断
ア 一審原告の主張について
(ア) 一審原告は,一審原告が本件懲戒請求書又はその内容に関する情報
を産経新聞社に提供し,本件懲戒請求書の一部が本件産経記事に引用さ
れたとしても,一審原告の公表権を保護すべき必要性が全くなくなった\nわけではなく,他方,一審被告Yは,本件懲戒請求書の要旨又はその一
部を引用することにより一審原告の懲戒請求に対して反論することが可
能であり,本件懲戒請求書の全部を引用する必要がなかったにもかかわ\nらず,これを全部引用して公表したのであるから,一審原告の一審被告\nYに対する公表権の行使は権利濫用に当たらないと主張する。\n しかし,前記(1)ウのとおり,一審原告が本件懲戒請求書に関して公衆
送信権により保護されるべき財産的利益,公表権により保護されるべき\n人格的利益は,もともとそれほど大きなものとはいえない上,一審原告
自身の行動により相当程度減少していたものと認められる。他方,前記
(3)のとおり,一審被告Yは,一審原告が産経新聞社に本件懲戒請求書又
はその内容を提供し,産経新聞のニュースサイトに本件産経記事が掲載
されたため,弁護士としての信用及び名誉の低下を防ぐために,本件懲
戒請求書の全文を引用して開示した上で反論する必要があったものであ
るから,それらを比較衡量すれば,後者の必要性が前者の必要性をはる
かに凌駕するというべきであるから,たとえ一審原告の公表権を保護す\nべき必要性が全くなくなったわけではないとしても,一審原告の一審被
告Yに対する公表権の行使は権利濫用に該当するというべきである。\nしたがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 一審原告は,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞
社に提供するという一審原告の行為と,本件リンクを張るという一審被
告Yの行為とは,行為の性質やそれによって閲覧可能となる範囲・程度\nが異なり,本件懲戒請求書の内容が拡散する規模は,本件リンクを張る
行為の方が,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞社に
提供する行為よりも圧倒的に大きいから,一審原告による公衆送信権及
び公表権の行使は権利濫用に当たらないと主張する。\n しかし,本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞社に提
供するという一審原告の行為は,産経新聞又はそのニュースサイトによ
って本件懲戒請求に関する情報が報道されることを意図してされたもの
と容易に推認され,実際,産経新聞のニュースサイトに本件産経記事が
掲載されたものであり,産経新聞が大手の一般紙であって,法律に興味
を有する者に限らず広く公衆がその新聞又はニュースサイトを閲読する
ものであることからすると,一審原告の上記行為は,一審被告Yに対す
る本件懲戒請求があったこと及び本件懲戒請求書の内容を世間に公にす
るという点において,一審被告Yの弁護士としての信用及び名誉に関し
て非常に大きな影響を与えるものであったと認められるから,本件懲戒
請求書の内容が拡散する規模において,本件リンクを張る行為の方が,
本件懲戒請求書又はその内容に関する情報を産経新聞社に提供するとい
う一審原告の行為よりも大きいということはできない。
◆判決本文
1審はこちら。
◆令和2(ワ)4481等
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2021.10.19
令和3(ネ)10036 著作権等の侵害に基づく削除等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和3年9月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
原告はイラストと文章をTwitterに投稿しました。被告の行為は原告著作物の公衆送信権、翻案権侵害と訴えました。知財高裁は1審判断を維持しました。
既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,
事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部
分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案に当
たらないことは引用する原判決が説示するとおりである。
本件についてみると,被告イラストは,原告文章と同じく,原作である「O
NE PIECE」に登場するキャラクターの設定に依拠して,身長差のあ
る同性の2人が,壁に掴まりながら特定の体位で性交渉を行うという描写に
おいて,原告文章と同一性を有するにとどまるものであり,こうした描写自
体は,アイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分である。\nそうすると,原告文章を全体として見た場合に一定の創作性が認められる余
地があるとしても,前述のとおり,被告イラストは,原告文章のうちアイデ
アないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分において同一性を有\nするにすぎないのであるから,原告文章の翻案に当たるものでないことは明
らかというべきである。
控訴人は,原告文章の創作性につき前記第2の3(1)のとおり指摘し,被告
イラストは,これらの創作部分が全て描写されているので,原告文章の翻案
に当たる旨主張するが,控訴人の指摘する部分は,いずれも,アイデアない
し表現上の創作性のない部分であるにすぎないし(「ONE PIECE」
に登場するキャラクターの設定については,当然のことながら創作性を認め
ることができない。),その具体的な表現ぶりも,性表\現として平凡かつあ
りふれたものであり,そもそも被告イラストが当該表現部分に依拠して作成\nされたと特定することもできないものといわざるを得ない。
したがって,控訴人の主張は失当というほかない。
(2) 被告文章が原告イラストの翻案に当たるとの点について
被告文章は,原作である「ONE PIECE」に登場するキャラクター
の設定に依拠して,原作に登場する2人の人物が性交渉後に,身長の低く若
い人物(ルフィ)が失禁したと勘違いし,動揺をしている描写設定において,
原告イラストと同一性を有するに止まり,こうした描写設定は,同性間の性
交渉を描写するに当たってのアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創\n作性があるとはいえない部分である。そうすると,原告イラストを全体とし
て見た場合に一定の創作性が認められる余地があるとしても,前述のとおり,
被告文章は,原告イラストのうちアイデアないし着想にすぎないか,表現上\nの創作性がない部分において同一性を有するにすぎないのであるから,原告
イラストの翻案に当たるものでないことは明らかというべきである。
控訴人は,前記第2の3(2)のとおり,被告文章は,原告イラストの最後の
コマの「ルフィ」のセリフを受けて,あたかも連歌のように,直前の状況や
内容を参看し,その背景や情趣,心境を踏まえて,そのポエジーを受け継い
で記載されたものである旨主張するが,独自の見解というほかないものであ
り,控訴人主張のセリフ自体に表現上の創作性を認めることはできないし,\nましてやそのセリフから連歌性やポエジーの存在を認め,被告文章が原告イ
ラストに依拠した翻案に当たるなどと認めることは到底できない。
◆判決本文
原審はこちら
◆令和1(ワ)30833
以下のように判断されています。
まず,原告文章と被告イラストについては,原告文章が言語の著作物で
あるのに対し,被告イラストは基本的には美術の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(身長差の
ある設定の2人の登場人物が,一般的には困難と思われている体位で性行
為を行っている点,性器の状態,及び登場人物の一方が壁につかまろうと
しているという点)につき同一性を有するにとどまるといえる。しかして,
上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告文章の性質・内容に照らし,
内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自体でない部分であるという\nべきである。また,仮に表現自体と捉えられる部分があったとしても,本\n件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅があると認められ制作者の個\n性の表れとして著作物性を肯定することを基礎付けるに足りるものは見当\nたらず,原告文章の性質・内容に照らせば,上記設定を前提とする限り,
これを表現したものとしては平凡かつありふれたものであり,表\現上の創
作性がない部分であるといわざるを得ない。
イ 次に,原告イラストと被告文章については,原告イラストが基本的には
美術の著作物であるのに対し,被告文章は言語の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(2人いる
登場人物の一方が性的行為の際に勘違いをした状況で,他方の登場人物に
対する言動・働きかけに及んでいる点)につき同一性を有するにとどまる
といえる。しかして,これについても,上記説示が同様に当てはまるもの
である。すなわち,上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告イラス
トの性質・内容に照らし,内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自\n体でない部分であるというべきである。また,仮に表現自体と捉えられる\n部分があったとしても,本件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅が\nあると認められ制作者の個性の表れとして著作物性を肯定できることを基\n礎付けるに足りるものは見当たらず,原告イラストの性質・内容に照らせ
ば,上記設定を前提とする限り,これを表現したものとしては平凡かつあ\nりふれたものであり,表現上の創作性がない部分であるといわざるを得な\nい。
ウ 以上によれば,被告イラストは原告文章を翻案したものには当たらず,
また,被告文章は原告イラストを翻案したものには当たらないというべき
である。
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2020.12.25
令和2(ワ)3594 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 令和2年12月17日 東京地方裁判所
プログラムの著作物について、複製、公衆送信されたとして損害賠償が認められました。損害額の認定について、本件プログラムは単独では販売されておらず、コニュニティの入会費用として約25万円がプログラムの価値で、被告は、約25万*7名分が損害と主張しました。東京地裁(46部)はそのうちの1人については、コミュニティへの入会の機会を失ったと認定して、約25万円の損害額が認定されました。
(1) 前記1(1)のとおり,原告は,本件ソフトの配布を原告コミュニティへの入\n会の特典とし,原告コミュニティに入会した者から入会費用を受け取ること
によって,本件ソフトを独占的に利用することができる地位による利益を享\n受していた。ここで,被告が本件各行為により本件ソフトを配布した本件各\n参加者は,いずれも原告コミュニティの紹介,勧誘を受けたが入会しなかっ
たこと(前記1(2))を踏まえると,被告の本件各行為がなかったならば本件
各参加者全員が入会費用を支払って原告コミュニティに入会したことを認め
ることはできない。もっとも,本件各参加者のうちAは,原告コミュニティ
に参加した被告と情報交換をして,被告から本件ソフトの交付を受け,また,\n本件ソフトの配布のために必要な処理等を率先して行うなどしていて,本件\nソフトの価値に強く着目していた者であり,被告の行為がなければ,本件ソ\
フトを入手するために本件ソフトが入会特典である原告コミュニティに参加\nしたと認めることが相当である。そうすると,被告の本件各行為により,原
告は少なくとも本件ソフトが入会特典である原告コミュニティに参加した者\nを1名失ったと認められる。
そして,本件ソフトが入会特典であり本件ソ\フトの再許諾料を含むといえ
る原告コミュニティの入会費用は24万9900円であり,また,本件契約
において,原告がBANANAに対して支払う1回の利用許諾代金が同額で
あり,再利用許諾の代金を含む原告コミュニティの参加費用はその利用許諾
代金を下回らない範囲で設定するとされていたこと(前記第2の1(2)イ)等
に照らすと,原告は,少なくとも同額の損害を被ったものと認められる。
また,原告は,BANANAに対して本件各参加者7人分の利用許諾代金
174万9300円を支払う義務を負っているなどとも主張する。しかし,
被告の本件各行為によって原告に上記の支払義務が発生したことを認めるに
は足りず,原告が被告の本件各行為により同額の損害を被ったとは認められ
ない。
◆判決本文
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2020.10.29
令和2(ワ)1667 著作権侵害損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和2年10月23日 東京地方裁判所
訴外Bからサーバの運営権を購入した会社に対して、カメラマンが写真の著作物の著作権侵害を理由に114万円の損害賠償を求めました。裁判所は、過失は認めたものの、ライセンス料の算定基準に根拠がないとして、14万円の損害賠償を認めました。
証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,本件サイトには本件各写真を含
め多数の写真が掲載されており,これらの写真は,「写真の著作物」(著作権
法10条1項8号)又はそれに該当し得るものであったと認めることができ
る。そして,被告は,本件各写真を含めた写真をインターネット上で公開す
る以上,その著作権又は著作者人格権を侵害していないことについて調査,
確認する義務があったといえる。ところが被告は,本件各写真が著作権,著
作者人格権を侵害していないかについて調査,確認をせずに本件各写真をイ
ンターネット上に公開して公衆送信等しており,被告には,少なくとも過失
があったといえる。
(2) 被告は,本件サイト売買を行ったウェブサイトには,「買い手は基本的に
著作権に触れているかどうか把握することは難しい」,「一般的には損害賠償
請求等は,サイトを売った人と著作権違反の警告を出した人の間で行われる」
との記載があり,サイト売買の通例では買い手である被告には損害賠償の支
払義務がなく,また,被告が本件サイトを購入した平成28年2月1日時点
で,掲載されている画像は3万8000点以上にも及び,これらの著作権の
有無を確認するのは実質的に不可能であり,被告には調査義務はないと主張\nする。
しかし,他人の写真を利用する場合にはその著作権又は著作者人格権を侵
害する可能性があるから,被告は,本件各写真を公衆送信等する以上,前記\nの調査,確認をする義務があったといえる。被告が指摘する記載等がウェブ
サイトにあったことや本件サイトに多数の写真が掲載されていたことなど被
告が指摘する事情によってこのことは左右されず,被告の上記主張は採用す
ることはできない。なお,被告が本件サイト売買を行ったウェブサイトには,
「サイト購入時,著作権には注意すること」,「サイトを購入する時あるいは
売却する時もそうですが,著作権が問題となってトラブルになることがあり
ます。使用されている文章や画像,イラスト,アイディアが他の人のマネを
していることがあります。」などと記載され(乙1),サイト売買の対象とな
るウェブサイトには著作権法上の問題があるものが含まれ得ることが明記さ
れていた。
3 争点(5)(損害額)について
(1) 公衆送信権侵害について
ア 証拠(甲7)によれば,協同組合日本写真家ユニオン作成の使用料規程
である本件規程は,同組合が管理の委託を受けた写真の著作物の利用にか
かわる使用料を定めるものであり,一般利用目的(宣伝広告を目的とせず,
記事と共に,事柄を説明するために写真の著作物を利用する場合)でウェ
ブページの最初のページ以降のページに写真を掲載する使用料は,12か
月以内で2万5000円,1年を超える場合の次年度以降の使用料は1年
当たり1万円とされている。
原告は結婚式における写真撮影を業とするカメラマンであり,本件各写
真は,原告が,依頼を受けて結婚式場において撮影したものであり(前記
前提事実(1)ア,同(2)),カメラマンである原告が業務により作成したもの
といえる。そうすると,原告が本件各写真の著作権の行使につき受けるべ
き金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)の算定に当たっては,
本件規程の内容を参酌するのが相当である。そして,本件規程の内容に加
えて,被告が遅くとも平成30年12月5日頃までには本件各写真の原告
の公衆送信権(著作権法23条1項)を侵害したこと,本件各写真は令和
2年2月17日に本件各ページから削除されたことその他の本件各写真の
使用態様等に鑑みれば,原告が本件各写真の公衆送信につき受けるべき金
銭の額(著作権法114条3項)は,本件各写真1枚当たり4万円と認め
るのが相当である。
イ この点について,原告は,1)撮影した写真1枚当たり8万円で売却して
おり(甲6),本件のような長期間の無断使用はその4倍が相当であるこ
と,2)本件規程の商用広告目的の写真の使用料が12か月以内で5万円で
あることを考慮して損害額を算定すべきであるなどと主張する。
しかしながら,「ご請求書」と題する甲6号証には,「広告写真使用料」
として8万円と記載されているが,当該写真がどのような写真か明らかで
はない上に,この1件の利用許諾例の外に原告の写真の使用料を裏付ける
証拠は見当たらないことなどからすれば,本件各写真の使用料が1枚当た
り8万円であると認めることはできず,他に原告の上記1)の主張を認める
に足りる証拠はない。
また,本件規程の「商用広告目的」とは,「写真に写された物品等を宣
伝するために広告として利用する場合」をいうとされている(本件規程の
第3条)ところ,本件各写真は,結婚式に関係する文章が記載されるなど
した本件各ページに掲載されたものであり(前記前提事実 ア,イ),い
ずれも本件各写真に写された物品等を宣伝するために広告として本件各ペ
ージに掲載されたものとはいえず,本件各写真の使用は,上記「商用広告
目的」には当たらず,原告の上記2)の主張も採用することはできない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用することはできない。
◆判決本文
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2020.09.26
令和1(ワ)231 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和2年1月31日 東京地方裁判所
動画サイトにてストリーミング配信された動画データについて、再生数カウンタの数はどのような方法で計測したものか不明であることなどから、40万円の損害賠償が認められました。
(1) 証拠(甲2,4,10〜12)によれば,1)本件サイトの「再生数」は
「9896」との表示がされていること,2)本件著作物の収録時間は120
分であるが,甲4の2には,アップロードされた動画の再生時間が21分0
5秒であるかのような記載があり,被告が自認する限度でも,その再生時間
は50分にすぎないこと,3)本件著作物は,原告のグループ会社が運営する
ウェブサイトにおいて有料でインターネット配信されており,これをストリ
ーミングで視聴する際の料金が300円(平成28年6月21日時点)とさ
れていること,4)原告は,第三者に対し,著作物のストリーミング配信を
「売上総額(消費税抜き)」の38%で許諾した例があることの各事実を認
めることができる。
(2) 原告は,被告がアップロードした動画の再生回数が9896回であること
から,これに前記のストリーミング料金である300円の38%を乗じた1
12万8144円が使用料相当損害額であると主張するが,本件サイトに表\n示された「再生数」が,無料会員によるごく短い時間のサンプル動画の視聴
も含まれるのかどうかも含め,どのような方法に基づいて計測されたかは明
らかではない。
また,上記のとおり,本件著作物の収録時間は120分であるのに対し,
被告がアップロードした動画の再生時間は,被告の自認する限りでも50分
であり,その再生時間は本件著作物の収録時間より相当程度短かったものと
認められる。
さらに,原告が使用料率の証拠として提出する契約書等は,平成15年4
月のコンテンツ提供基本契約書に基づき平成21年3月に交わされた覚書で
あり,その契約時期は本件著作物のアップロードより相当程度以前のもので
あり,その数も1例にすぎないので,これを基礎として本件著作物の利用料
率を定めることは相当ではなく,加えて,上記のストリーミング料金が消費
税を含む金額かどうかも明らかではない。
以上によれば,原告が主張する再生回数,ストリーミング料金及び利用料
率を基礎とし,その計算式に基づいて算定された損害が原告に生じたと直ち
に認めることはできないが,他方,上記(1)の認定事実(本件サイトに表示\nされた再生回数,被告がアップロードした動画の再生時間,ストリーミング
料金の額,過去の契約例など)に加え,本件に現れた諸事情を全て総合する
と,その損害額は40万円と認めるのが相当である。
なお,被告は,本件著作物は他サイトからの引用であり,著作権侵害の故
意・過失がなかったようにも主張するが,被告は他人の著作物を自らアップ
ロードしたのであるから,被告に少なくとも過失があると認められることは
明らかである。
◆判決本文
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2020.08.13
平成30(受)1412 発信者情報開示請求事件 令和2年7月21日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 知的財産高等裁判所
アップし忘れましてました。
発信者情報開示事件です。1審では、リツイートはインラインリンクであるので、著作権侵害、人格権侵害に該当しないと判断され、請求は棄却されました。知財高裁(2部)は、著作者人格権侵害があったとして、一部の発信者情報について開示を認めました。最高裁(第3小)も人格権侵害は認めましたが、著作権侵害は否定しました。
自動公衆送信の主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ,情報
を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成
23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照),本件写真のデータは,流
通情報2(2)のデータのみが送信されていることからすると,その自動公衆送信の
主体は,流通情報2(2)の URL の開設者であって,本件リツイート者らではないと
いうべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは,行為の対象,方法,行為
への関与の内容,程度等の諸般の事情を総合的に考慮して,規範的に解釈すべきで
あり,カラオケ法理と呼ばれるものも,その適用の一場面であると解される(最高
裁平成23年1月20日判決・民集65巻1号399頁参照)が,本件において,
本件リツイート者らを自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。控訴人は,
本件アカウント3〜5の管理者は,そのホーム画面を支配している上,ホーム画面
閲覧の社会的経済的利益を得ていると主張するが,そのような事情は,あくまでも
本件アカウント3〜5のホーム画面に関する事情であって,流通情報2(2)のデー
タのみが送信されている本件写真について,本件リツイート者らを自動公衆送信の
主体と認めることができる事情とはいえない。また,本件リツイート行為によって,
本件写真の画像が,より広い範囲にユーザーのパソコン等の端末に表\示されること
となるが,我が国の著作権法の解釈として,このような受け手の範囲が拡大するこ
とをもって,自動公衆送信の主体は,本件リツイート者らであるということはでき
ない。さらに,本件リツイート行為が上記の自動公衆送信行為自体を容易にしたと
はいい難いから,本件リツイート者らを幇助者と認めることはできず,その他,本
件リツイート者らを幇助者というべき事情は認められない。
(ウ) 控訴人は,自動公衆送信にも放送にも有線放送にも当たらない公衆
送信権侵害も主張するが,前記(ア)のとおり自動公衆送信に当たることからすると,
自動公衆送信以外の公衆送信権侵害が成立するとは認められない。
(3) 複製権侵害(著作権法21条)について
前記(2)イのとおり,著作物である本件写真は,流通情報2(2)のデータのみが送
信されているから,本件リツイート行為により著作物のデータが複製されていると
いうことはできない。したがって,複製権侵害との関係でも,控訴人が主張する「
ブラウザ用レンダリングデータ」あるいは HTML データ等を「侵害情報」と捉える
ことはできず,「ブラウザ用レンダリングデータ」あるいは HTML データ等が「侵
害情報」であることを前提とする控訴人の複製権侵害に関する主張は,採用するこ
とができない。
(4) 公衆伝達権侵害(著作権法23条2項)について
著作権法23条2項は,「著作者は,公衆送信されるその著作物を受信装置を用
いて公に伝達する権利を専有する。」と規定する。
控訴人は,本件リツイート者らをもって,著作物をクライアントコンピュータに
表示させた主体と評価すべきであるから,本件リツイート者らが受信装置であるク\nライアントコンピュータを用いて公に伝達していると主張する。しかし,著作権法
23条2項は,公衆送信された後に公衆送信された著作物を,受信装置を用いて公
に伝達する権利を規定しているものであり,ここでいう受信装置がクライアントコ
ンピュータであるとすると,その装置を用いて伝達している主体は,そのコンピュ
ータのユーザーであると解され,本件リツイート者らを伝達主体と評価することは
できない。控訴人が主張する事情は,本件写真等の公衆送信に関する事情や本件ア
カウント3〜5のホーム画面に関する事情であって,この判断を左右するものでは
ない。そして,その主体であるクライアントコンピュータのユーザーが公に伝達し
ているというべき事情も認め難いから,公衆伝達権の侵害行為自体が認められない。
このように公衆伝達権の侵害行為自体が認められないから,その幇助が認められる
余地もない。
(5) 著作者人格権侵害について
ア 同一性保持権(著作権法20条1項) 侵害
前記(1)のとおり,本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている\n画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,\n表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラム
や CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり
画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えら
れているものではない。
しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表\現したものであって,文
芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう
著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プロ
グラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件ア
カウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5のよ\nうな画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変された
もので,同一性保持権が侵害されているということができる。
この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は,
インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為
の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により位置や大きさ
などが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件
リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザ
ーを改変の主体と評価することはできない(著作権法47条の8は,電子計算機に
おける著作物の利用に伴う複製に関する規定であって,同規定によってこの判断が
左右されることはない。)。また,被控訴人らは,本件アカウント3〜5のタイム
ラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(1)の画像と同じ画像であるから,
改変を行ったのは,本件アカウント2の保有者であると主張するが,本件アカウン
ト3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は,控訴人の著作物である本\n件写真と比較して改変されたものであって,上記のとおり本件リツイート者らによ
って改変されたと評価することができるから,本件リツイート者らによって同一性
保持権が侵害されたということができる。さらに,被控訴人らは,著作権法20条
2項4号の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は,
本件アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイート
が行われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむ
を得ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害\n
本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人\nの氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際して HTML プ
ログラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件
アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5の\nような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控\n訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆
への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができ\nる。
ウ 名誉声望保持権(著作権法113条6項)侵害
本件アカウント3〜5において,サンリオのキャラクターやディズニーのキャラ
クターとともに本件写真が表示されているからといって,そのことから直ちに,「\n無断利用してもかまわない価値の低い著作物」,「安っぽい著作物」であるかのよ
うな誤った印象を与えるということはできず,著作者である控訴人の名誉又は声望
を害する方法で著作物を利用したということはできない。そして,他に,控訴人の
名誉又は声望を害する方法で著作物を利用したものというべき事情は認められない
から,本件リツイート者らは,控訴人の名誉声望保持権(著作権法113条6項
)を侵害したとは認められない。
(6) なお,控訴人は,本件アカウント2,4及び5の各保有者が自然人として
は同一人物であり,又はこれらの者が共同して公衆送信権を侵害した旨主張するが,
そのような事実を認めるに足りる証拠はない。
(7)「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び
「発信者」(同法2条4号)について
前記(5)ア,イのとおり,本件リツイート行為は,控訴人の著作者人格権を侵害す
る行為であるところ,前記(5)ア,イ認定の侵害態様に照らすと,この場合には,本
件写真の画像データのみならず,HTML プログラムや CSS プログラム等のデータを
含めて,プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ,本件リツイー
ト行為は,その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかであ
る。そして,この場合の「発信者」は,本件リツイート者らであるということがで
きる。
(8) 争点(2)について
本件アカウント2の流通情報2(3)及び(4)については,流通情報3〜5と同様に,
流通情報2(2)の画像が改変され,控訴人の氏名が表示されていないということが\nできるから,著作者人格権の侵害があるということができる。しかし,本件アカウ
ント1の流通情報1(6)及び(7)については,流通情報1(3)の画像と同じものが表示\nされているから,著作者人格権の侵害があると認めることはできない。これらにつ
いて著作権の侵害を認めることができないことは,流通情報3〜5と同様である。
◆判決本文
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◆平成28(ネ)10101
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◆平成27(ワ)17928
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2020.02. 6
令和1(ワ)60 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年11月18日 大阪地方裁判所
漫画を違法アップロードしていた個人に対して、連帯して約1.6億円の損害賠償が認められました。裁判所は「電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,配信プラットフォームの違いに応じた代表\的な複数の事例の中で,最も低いもので45%である」と認定しました。編集著作者としての講談社が原告です。一部の被告は欠席裁判でした。
証拠(甲2,13)及び弁論の全趣旨によれば,原告が原告各雑誌を販売してい
ること,その本体価格は別紙著作物目録の「本体価格(円)」欄にそれぞれ記載の
とおりであることが認められる。
また,証拠(甲25の1〜25の4)によれば,平成27年〜平成30年にそれ
ぞれ発行された調査報告書には,電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,\n配信プラットフォームの違いに応じた代表的な複数の事例の中で,最も低いもので\n45%であることが認められる。本件各違法アップロード行為の対象となった原告
各雑誌に係る販売利益率がこの割合を下回ることをうかがわせる事情はないから,
これが45%であるものとして算定することには十分な合理性がある。\n
(ウ) 逸失利益額
各雑誌に係るファイルごとのダウンロード数並びに雑誌ごとの本体価格及び販売
利益率を乗じると,1億5032万8192円となる。他方,被告P3は,「販売
することができないとする事情」(著作権法114条1項ただし書)について,何
ら主張立証していない。したがって,本件各違法アップロード行為による原告の逸
失利益額は,同額であると認められる。
イ 弁護士費用相当損害額
原告の逸失利益額(上記ア)その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告
らの本件各違法アップロード行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害額は,
1503万2819円と認めるのが相当である。
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2019.11.26
平成30(ワ)14843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年9月18日 東京地方裁判所
写真の著作物が無料でアップロードされたとして、約30万円の損害賠償が認められました。
本件各写真は,本件各商品を販売するために撮影されたものであると認めら
れるところ(甲33),以下のとおり,いずれも,商品の特性に応じて,被写体の
配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,背景\n等の写真の表現上の諸要素につき相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情\nが創作的に表現されているということができる。\n
ア すなわち,本件写真1ないし4は,ト音記号,楽譜又は楽器の柄のネクタイ
を被写体とするものであり,ネクタイの下端部を手前にして波打つように配置され,
背景はネクタイの下端部が配置された写真下部を白色,写真上部を暗い灰色又は黒
色とし,陰影が明確に付されるなどして,ネクタイの柄や質感を視覚的に認識しや
すいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているという
ことができる。
イ 本件写真5ないし10は,弦楽器の柄のコインケース等の商品を被写体とす
るものであり,本件写真5,7,9は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,
本件写真6,8,10は,柄の部分を大きく撮影したものであって,商品の配置の
仕方や陰影の付し方により,商品の質感や弦楽器の柄を視覚的に認識しやすいもの
となっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということがで
きる。
ウ 本件写真11ないし40は,楽器を演奏する動物等の置物を被写体とするも
のであり,本件写真11,14,17,20,23,26,29,32,35,3
8は,商品の前方を正面から撮影したもの,本件写真12,15,18,21,2
4,27,30,33,36,39は,商品の後方を斜め上から撮影したもの,本
件写真13,16,19,22,25,28,31,34,37,40は,動物等
の顔を斜め上から大きく撮影したものであって,背景は緑色,白色又はそれらのグ
ラデーションとし,陰影を付すなどして,動物等の表情や演奏態様等を視覚的に認\n識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされている
ということができる。
エ 本件写真41ないし44は,鍵盤等の柄のフロアマットを被写体とするもの
であり,本件写真41及び43は,四角形状の商品の形態に沿って商品のみを大き
く撮影したもの,本件写真42及び44は,その一部を大きく撮影したものであっ
て,生地の質感や鍵盤等の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販
売用の写真として相応の工夫がされているということができる。
オ 本件写真45ないし50は,写譜用のペンを被写体とするものであり,本件
写真45,47,49は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,本件写真4
6,48,50は,ペンの先端部分を大きく撮影したものであって,商品に光を反
射させ,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の質感や細かい模様を視覚的
に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされて
いるということができる。
カ 本件写真51及び52は,写譜用のペンの替芯(5本)及びそのケースを被
写体とするものであり,ケースから突出する替芯につき長さを変えた状態で大きく
撮影したものであって,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の形状を視覚
的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされ
ているということができる。
キ 本件写真53ないし61は,トランペット等の楽器の柄の黒色クリアファイ
ルを被写体とするものであり,本件写真53,55,57,59は,商品を中央に
配置して全体を撮影し,柄の部分に光を反射させ,背景は黒色を基調とし,陰影を
付すなどしたもの,本件写真54,56,58,60は,柄の部分を大きく撮影し
たものであって,トランペット等の楽器の柄を視覚的に認識しやすいものとなって
おり,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。ま
た,本件写真61は,商品を中央に配置して柄のない方向から全体を撮影したもの
であり,背景を白色と黒色のグラデーションとし,陰影を付すなどして,商品の形
状を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工
夫がされているということができる。
ク 以上のとおり,本件各写真には,商品の販売用の写真として相応の工夫がさ
れており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。\n
(2)被告は,本件各写真が著作物であることを争い,取り分け,本件写真42な
いし44は商品を上から撮影しているだけであり,本件写真45,46,50ない
し52は商品の販売用の写真として一般的なものであるから,これらに創作性が認
められないことは明らかである旨主張するが,前記のとおり,本件各写真には,商
品の販売用の写真として相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的
に表現されているということができるのであって,被告の上記主張は採用すること\nができない。
(3) 以上によれば,本件各写真には創作性が認められ,前記前提事実(2)のとおり,
これらは原告代表者によって原告の発意に基づき職務上作成されたものであるから,\nいずれも,原告の著作物であると認められる。
前記のとおり,被告は,原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害しており,これらについて,少なくとも,過失があると認められるから,不法行為による損害賠償責任を負っているところ,原告は,本件\n各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)として,著作権侵害に
係るものにつき合計46万3800円,著作者人格権侵害に係るものにつき合計4
万6800円の損害が生じたと主張する。
(2) そこで検討すると,前記のとおり,被告は,原告が本件各写真を原告ウェブ
サイトに掲載することによって販売していた本件各商品を,本件各写真と実質的に
同一の被告各写真を被告ウェブサイトに掲載することによって販売していたもので
あり,このような被告各写真の使用態様に加えて,被告各写真の掲載期間は長いも
ので1年6か月にわたること,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,画像素材
の販売業者である「ペイレスイメージズ」のウェブサイトでは,画像素材の単品で
の購入価格が432円から5400円までとされていると認められることなど,本
件訴訟に現れた事情を考慮すると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべ
き金銭の額(著作権法114条3項)は,写真1枚当たり5000円と認めるのが
相当である。もっとも,原告の氏名表示権が侵害されたことによって,別途の財産\n的損害が生じたと認めるに足りない。
(3)ア これに対し,原告は,アマナイメージズの価格表において,画像素材1点\n当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円,使用期間3年までの使用
単価は6万0480円,無断使用した場合には使用料金の200%を請求できると
されていることを主張するが,弁論の全趣旨によれば,アマナイメージズは,画像
素材のレンタルや販売を業とする株式会社であると認められるのに対し,本件各写
真はレンタルや販売を目的として撮影されたものではないから,原告が主張する価
格表について本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損\n害額の算定に当たって大きく考慮することは相当とはいえない。
イ 他方で,被告は,(1)本件各写真の創作性の程度の低さなどに照らせば,販売
用の広告写真1枚当たりの使用料相当額はせいぜい1000円程度である,(2)被告
において学遊社に本件各写真と同じカットでプロカメラマンによる写真撮影の見積
りを依頼したところ,ライティングを施すことを含む見積額が8万円であったから,
本件各写真の使用料相当額に係る損害は高くても合計8万円である旨主張する。
しかしながら,(1)については,前記のとおり,本件各写真は,商品の販売用の写
真として相応の工夫がされているということができるから,創作性の程度が低いこ
とを理由として著作権法114条3項所定の損害額を著しく低額にすべきであると
いうことはできない。
(2)については,証拠(甲41,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,学遊社は,被
告から提供を受けた本件各写真をサンプルとして参照し,本件各写真に対応する6
1カットの写真を半日でまとめて撮影した場合の撮影料を見積もったものと認めら
れるところ,学遊社の見積りは,本件各写真をサンプルとして参照しているため,
被写体の配置,カメラアングル・構図等を検討する必要はなく,また,半日でまと\nめて撮影しているため,複数日にわたって撮影されたと認められる本件各写真と比
べて撮影費用が低額となっているとみる余地があることなどからすれば,見積額が
8万円であるからといって,本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114
条3項所定の損害額が同程度であるということはできない。
(3) そうすると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著
作権法114条3項)は,合計30万5000円(5000円×61枚)であると
認められる。
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2019.10.11
平成30(ワ)5427 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年10月3日 大阪地方裁判所(21部)
作成してもらったウェブサイトを依頼会社が別のサーバに移転して公開しました。これについて、本件の場合、著作権は被告が有するとして、著作権侵害とはならないと判断しました。
本件において,原告は,被告ウェブサイトの公衆送信等の差止め及び削除,並び
に金員の支払を求めているが,その根拠とするところは,一般不法行為等によるも
のを除けば,原告ウェブサイトが原告の著作物であることであり,さらにその理由
として主張するところは,原告が原告ウェブサイトを創作的に制作したこと,及び
原告と被告ピー・エム・エーの契約により,原告ウェブサイトの著作権は原告に属
する旨合意されたことである。
これに対し,被告らは,原告ウェブサイトの著作権は,被告ピー・エム・エーに
帰属するとの黙示の合意があること,原告が原告ウェブサイトを制作したことによ
ってその著作権が原告に帰属することはないこと,原告ウェブサイトの著作権を原
告に帰属させる旨を原告との間で合意した事実はないことを主張し,仮に原告に原
告ウェブサイトの著作権が認められるとしても,本件の経緯において,原告が被告
らに対し,原告ウェブサイトの著作権を主張することは,権利の濫用に当たる旨を
主張する。
そこで,まず,原告が原告ウェブサイトを制作したことにより,原告ウェブサイ
トが原告の著作物と認められるか,次に,原告と被告ピー・エム・エーとの合意に
より,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属すると認められるか,そして,仮に
原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属する場合に,原告が被告らに対し,著作権
を行使することが権利の濫用に当たるかにつき検討する。
(2) 原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属
ア 前記認定したところによれば,被告ピー・エム・エーは,旧ウェブサイトを
訴外彩登に制作させ,訴外ユウシステムに管理を委託していたところ,集客力の向
上のために,まず旧ウェブサイトの本件サーバの移管を原告に委託し,さらにその
保守業務を原告に委託した後,本件制作業務委託契約により,旧ウェブサイトを,
スマートフォンやタブレットに対応できるようにするなど,全面的にリニューアル
することを求めたことが認められるのであって,原告ウェブサイトの制作は,原告
の発意によるものではなく,被告ピー・エム・エーの委託に基づくものであり,原
告が自ら使用することは予定せず,被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用\nすることが予定されていたものということができる。\n
イ 上述のとおり,原告ウェブサイトは,元々被告ピー・エム・エーが訴外彩登
に制作させた旧ウェブサイトを,本件サーバへの移管後にリニューアルしたもので,
前記認定したところによれば,原告ウェブサイトのデザイン,記載内容や色調の基
礎となったのは,リニューアル前の旧ウェブサイトであることが認められる。
また,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイトを制作するにあ
たり,ワードプレス専用のプラグインやフォント,写真を購入したり,ワードプレ
スを利用して,原告ウェブサイトが利用しやすく顧客吸引力があるように構成した\nものと認められるが,一方で,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの株式
スクールとしての企業活動を紹介するものであって,その内容は,基本的に被告ピ
ー・エム・エーに由来するというべきであるし,原告が,被告ピー・エム・エーか
ら,その従業員を通じ,仕様や構成について指示及び要望を聞いて制作したもので\nあることは,前記認定のとおりである。
ウ 原告と被告ピー・エム・エーは,以上の内容・性質を有する原告ウェブサイ
トの制作について,本件制作業務委託契約を締結し,例えば原告ウェブサイトの権
利を原告に留保して,原告が被告ピー・エム・エーに使用を許諾し使用料を収受す
るといった形式ではなく,原告ウェブサイトの制作に対し,対価324万円を支払
う旨を約したのであるから,原告が原告ウェブサイトを制作し,被告ピー・エム・
エーのウェブサイトとして公開された時点で,その引渡しがあったものとして,原
告ウェブサイトに係る権利は,原告が制作したり購入したりした部分を含め,全体
として被告ピー・エム・エーに帰属したと解するのが相当である。
上記解釈は,原告ウェブサイト制作後も,原告が被告ピー・エム・エーに保守業
務委託料の支払を求めていることとも合致する。すなわち,原告ウェブサイトが原
告のものであれば,被告ピー・エム・エーがその保守を原告に委託することはあり
得ず,原告ウェブサイトが被告ピー・エム・エーのものであるからこそ,代金を支
払ってその保守を原告に委託したと考えられるからである。
また,上述のとおり,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの企業として
の活動そのものを内容とするものであるから,原告がこれを自ら利用したり,第三
者に使用を許諾したり,あるいは第三者に権利を移転したりすることはおよそ予定\nされていないというべきであるから,原告ウェブサイトについての権利が原告に帰
属するとすべき合理的理由はない。さらに,原告ウェブサイトについての権利が原
告に帰属するとすれば,被告ピー・エム・エーは,原告の許諾のない限り,原告ウ
ェブサイトの保守委託先を変更したり,使用するサーバを変更するために原告ウェ
ブサイトのデータを移転したりすることはできないことになるが,そのような結果
は不合理といわざるを得ない。
エ 以上より,原告が原告ウェブサイトを制作したことを理由に,原告ウェブサ
イトの著作権が原告に帰属すると考えることはできず,原告ウェブサイトの著作権
は,被告ピー・エム・エーに帰属するものと解すべきである。
(3) 合意による著作権の帰属
ア 本件保守業務委託契約において,同契約に基づいて,原告が制作したウェブ
サイトの著作権その他の権利が原告に帰属する旨の規定(14条2項)があること
は前記認定のとおりである。
しかしながら,本件保守業務委託契約は,訴外彩登が制作した旧ウェブサイトを
本件サーバに移管した後に,その保守業務を被告ピー・エム・エーが原告に委託す
る際に締結されたものであって,原告がウェブサイトを制作完成することは予定さ\nれていないから,上記条項が何を想定したものかは不明といわざるを得ないし,同
条項が,その後に締結された本件制作業務委託契約に当然に適用されるとも解され
ない。
イ 本件制作業務委託契約については,被告ピー・エム・エー名義で作成された
本件注文書の「仕様」欄に,「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利
は,制作者のP1に帰属するものとする。」と記載がある。
しかしながら,被告P3本人の尋問の結果によっても,被告ピー・エム・エーが,
原告と上記記載に係る合意を成立させる趣旨で,本件注文書に上記記載をしたとは
認められないし,他に,原告と被告ピー・エム・エーとの間で上記記載に係る合意
が成立したと認めるに足りる証拠は提出されていない。
ウ 原告ウェブサイトの制作の対価を324万円と定める本件制作業務委託契約
において,制作後の原告ウェブサイトの権利が原告に帰属するとすることが不合理
であることは前記(2)で述べたとおりであり,あえてそのように合意するとすれば,
その合意は明確なものでなければならず,本件においてそのような合意が成立した
と明確に認めるに足りる証拠がないことは上記ア及びイのとおりであるから,被告
ピー・エム・エーと原告の合意によって,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属
したと認めることはできない。
(4) 権利の濫用
ア 本件の事実関係を前提とすると,仮に,原告ウェブサイトの一部に,原告の
著作物と認めるべき部分が存在する場合であったとしても,以下に述べるとおり,
原告が,その部分の著作権を理由に,被告ウェブサイトに対する権利行使をするこ
とは,権利の濫用に当たり許されないというべきである。
イ すなわち,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイト制作後,
その保守管理を行っていたこと,被告ピー・エム・エーは,平成29年秋の時点で,
原告に対する支払を遅滞し,本件サーバの更新料も支払っていなかったこと,本件
サーバを使用継続するには,同年11月30日に最低1万2960円(12か月分)
を支払う必要があったが,被告ピー・エム・エーはこれを徒過したこと,同年12
月12日,本件サーバは凍結され,原告ウェブサイトの利用ができなくなったこと,
被告ピー・エム・エーはその直後に原告に13万8240円を振り込み,原告ウェ
ブサイトを復旧するよう原告に依頼したこと,本件サーバの規約によれば,原告ウ
ェブサイトのようなドメインが失効した場合,利用期限日から30日以内であれば,
更新費用を支払えば復旧可能であること,原告は,同月13日,被告P4に対し,\n原告ウェブサイトのデータは失われ,復旧するには再度制作する必要があり,その
費用は434万円余であると伝えたこと,被告ピー・エム・エーは,原告の提案を
断って,P6に,原告ウェブサイトの復旧を依頼したこと,P6は,原告ウェブサ
イトのデータを利用して被告ウェブサイトを作成し,平成30年1月ころ公開した
こと,以上の事実が認められる。
原告本人尋問及び被告P3本人尋問の結果を総合しても,原告が被告ピー・エム・
エーに対し,本件サーバの更新費用を怠った場合のリスクについて,適切に警告し,
期限を徒過しないよう十分注意したとは認められないし,原告ウェブサイトの利用\nができなくなった直後に被告ピー・エム・エーが金員を原告に振り込み,本件サー
バの規約ではデータの使用が可能な期限内であるのに,原告が,データが失われ復\n旧もできないと説明したことが適切であったことを裏付ける事情や,復旧のために
434万円余もの高額の費用が必要であると説明したことの合理的理由は見出し難
い。かえって証人P6は,サーバが凍結された場合,サーバ会社に料金を支払えば
すぐ復旧することができ,特に作業等をする必要はない旨を証言している。
前記認定したところによれば,原告ウェブサイトは,新たな顧客のために,被告
ピー・エム・エーの事業内容を紹介するのみならず,すでに顧客,会員となった者
に対するサービスの提供も行っているのであるから,原告ウェブサイトの停止は,
被告ピー・エム・エーの企業としての活動を停止することであり,その制作・保守・
管理を行った原告は,当然にこれを了解していた。
ウ 前記イで述べたところによれば,原告ウェブサイトが停止するまでの原告の
行為は,その保守・管理を受託した者として不十分であったというべきであるし,\n原告ウェブサイトの停止後の原告の行為は,原告ウェブサイトの停止が被告ピー・
エム・エーを窮地に追い込むことを知りながら,これを利用して,データは失われ
た,復旧できないと述べて,法外な代金を請求したものと解さざるを得ない。
上述のとおり,原告ウェブサイトの停止は企業としての活動の停止を意味し,既
に検討したとおり,原告ウェブサイトの著作権は全体として被告ピー・エム・エー
に帰属すると解されるのであるから,被告ピー・エム・エーが,法外な代金を請求
された原告との信頼関係は失われたとして,原告の十分な了解を得ることなく,原\n告ウェブサイトのデータを移転するようP6に依頼したとしても,やむを得ないこ
とであると評価せざるを得ない。
エ これらの事情を総合すると,仮に,原告ウェブサイトの一部に原告の著作権
を認めるべき部分が存在していたとしても,本件の事情において,原告がその著作
権を主張して,被告ウェブサイトの利用等に対し権利行使することは,権利の濫用
に当たり許されないというべきである。
(5) 本件動画ウェブサイトについて
前記認定事実のとおり,本件動画ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーがソー\nシャルキャストのサービスを利用して提供していた授業の動画を,被告インタース
テラーが引き継いだ後に,サブドメインを変更したウェブページであって,原告ウ
ェブサイト及び被告ウェブサイトとは,内容も形式も全く異なるものである。
また,原告ウェブサイトと上記動画はもともと関連付けられていなかったところ,
本件サーバ凍結後,原告ウェブサイトから会員専用ウェブページを閲覧することが
できなくなったため,被告ウェブサイト上において,「ログイン」ボタンを押すと
上記動画に遷移するよう設定され,サブドメインの変更に伴いリンク先も本件動画
ウェブサイトに変更されたものである。
したがって,仮に原告ウェブサイトの一部に原告の著作権が認められる場合であ
っても,本件動画ウェブサイトの設定が,原告の著作権(複製権又は翻案権)侵害
となる余地はないといわざるを得ない。
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2019.03.15
平成30(ワ)19731 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 平成31年2月28日 東京地方裁判所
脚を写した写真について著作物性ありとして、東京地裁47部は発信者情報の開示を認めました。該当写真は、判決文中にあります。
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャ\nッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影
の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一
つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば創作性が
認められ,著作物に当たるというべきである。
これを本件についてみると,本件写真2は,別紙写真目録2記載のとおりで
あるところ,フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両
脚とテーブルの一部を主たる被写体とし,大腿部の上方から足先に向けたアン
グルで,右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の
一部を白っぽく見せ,また,当該光線の白色と,テーブル,スリッパ及びショ
ートパンツの白色とが組み合わさることで,脚全体が白っぽくきれいに映るよ
うに撮影されたカラー写真であり,被写体の選択・組合せ,被写体と光線との
関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現において,撮影者の個性が\n表れているものといえる。したがって,本件写真2は,創作的表\現として,写真の著作物であると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 争点2(公衆送信権侵害の成否)
(1) 本質的特徴を感得できるかについて
著作物の公衆送信権侵害が成立するためには,これに接する者が既存の著
作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要する。\nこれを本件についてみると,証拠(甲3の2,9)及び弁論の全趣旨によ
れば,本件画像には,本件写真2の下側の一部がほんの僅かに切り落とされ
ているほかは,本件写真2がそのまま用いられていることが認められる。そ
して,本件画像は,解像度が低く,本件写真と比較して全体的にぼやけたも
のとなっているものの,依然として,上記1で説示した,本件写真2の被写
体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の
総合的な表現の同一性が維持されていると認められる。\nしたがって,本件画像は,これに接する者が,本件写真2の表現上の本質\n的な特徴を直接感得することができるものであると認められる。これに反す
る被告の主張は採用できない。
(2) 本件画像アップロードと本件投稿の関係について
ア 前記前提事実(3),証拠(甲3,5,6,11ないし13)及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 「たぬピク」は,「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメール
を送信すると,当該画像がインターネット上にアップロードされたUR
Lが,送信元のメールアドレス宛てに返信され,当該URLを第三者に
送るなどして,当該画像を第三者と共有することができるサービスであ
る。
(イ) 本件掲示板を含むたぬき掲示板(2ch2(省略))をスマートフォンで
表示する場合には,「たぬピク」により取得した,画像のURLが投稿されると,当該URLが表\示されるのではなく,当該URLにアップロ
ードされている画像自体が表示される仕組みとなっている。これにより,\n当該URLをクリックしなくても,たぬき掲示板上において,他の利用
者と画像を共有することが可能となっている。\n
(ウ) 本件画像は,平成30年3月22日午後11時53分41秒に,「up
@vpic(省略)」宛てにメール送信され,本件画像URL上にアップロ
ードされた(本件画像アップロード)。
(エ) 本件画像URLは,同日午後11時54分46秒に,被告の提供する
インターネット接続サービスを利用して,本件掲示板に投稿された(本
件投稿)。
イ 以上の事実関係を前提に,本件投稿によって公衆送信権の侵害が成立す
るか検討する。
まず,本件画像は,前記ア(ウ)のとおり,本件投稿に先立って,インター
ネット上にアップロードされているが,この段階では,本件画像URLは
「up@vpic(省略)」にメールを送信した者しか知らない状態にあり,いま
だ公衆によって受信され得るものとはなっていないため,本件画像を「up
@vpic(省略)」宛てにメール送信してアップロードする行為(本件画像ア
ップロード)のみでは,公衆送信権の侵害にはならないというべきである。
もっとも,本件においては,前記ア(ウ)及び(エ)のとおり,メール送信に
よる本件画像のアップロード行為(本件画像アップロード)と,本件画像
URLを本件掲示板に投稿する行為(本件投稿)が1分05秒のうちに行
われているところ,本件画像URLは本件画像をメール送信によりアップ
ロードした者にしか返信されないという仕組み(前記ア(ア))を前提とすれ
ば,1分05秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該URLを
入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから,本
件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると
認めるのが相当である。そして,前記ア(イ)のとおり,本件画像URLが本
件掲示板に投稿されることにより,本件掲示板をスマートフォンで閲覧し
た者は,本件画像URL上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる。そうすると,本件投稿自体は,UR
Lを書き込む行為にすぎないとしても,本件投稿をした者は,本件画像を
アップロードし,そのURLを本件掲示板に書き込むことで,本件画像の
データが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから,これを全
体としてみれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る公衆送信権が
侵害されたものということができる。以上の認定に反する被告の主張は採
用できない。
3 小括
以上からすれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る著作権(公衆送
信権)が侵害されたことが明らかであると認められる。また,原告がかかる著
作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには,被告が保有す
る別紙発信者情報目録記載の情報が必要であると認められる。
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2018.07.12
平成28(ワ)32742 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年6月19日 東京地方裁判所(47部)
いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ
る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら
制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に
撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光\n線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな\nらざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって,
撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写\n真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採
用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外
観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ
の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ
り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい\nった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰\nが撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表\nれないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め
られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」
の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ
とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻\nが花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な
っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の\n経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると\nいえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。
これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり,
旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故
一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲
章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア\nン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2
はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択,
表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表\現には筆者の個性が表れ\nているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ
ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に\nは幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表\れて
いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告
の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再
製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と
は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現\nに修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が\n既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作\n成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に
依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\
現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接\n感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ
る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷
判決・民集55巻4号837頁参照)。
被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品
対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制\n作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同
一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体
として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。\nよって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし
7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害
する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保
持権を侵害する。
これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有
するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり,
制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は
採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額
に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争
うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作
品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認
められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日
に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A
が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含\nめて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は
実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には,
故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの
と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力\nがあると認められる。
これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず,
販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く\nと主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告
作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も
指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を
含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする
ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説
明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる
(甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞
を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用
目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後
記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認
められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か
ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示
に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集
の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に
より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす
る事情があると主張する。
そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい
てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は
一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層
に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ
ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ
とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考
えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については,
原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で
ある。
◆判決本文
問題となった著作物は以下です。
◆別紙1
◆別紙2
◆別紙3
◆別紙4
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2018.07. 2
平成29(ワ)39658 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成30年6月7日 東京地方裁判所
イラストについて公衆送信権侵害の損害額として30万円が認められました。ただ、侵害と指摘されても、そのタイミングで通常のライセンス料を払えばすむなら、誰も最初からまじめに契約しようとは考えないですよね。損害賠償が得べかりし利益の補償という考え方は分かりますが、著作権侵害が故意の場合には、懲罰的賠償を可能とするとかできないんでしょうか。
後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,1)原告は,平成29年6月頃,ウェ
ブサイト上に掲載する漫画の制作依頼を受けたところ,この依頼において,
掲載期間を1年間(2年目以降も掲載する場合には契約更新を行う。)とし,
原稿料は,漫画本編は1頁当たり2万円,カラー扉絵は4万円との条件を示
されたこと(甲12),2)原告は,平成28年頃,書籍の表紙用のカラーイラ\nスト(スーツを着て,ペンとメモ帳を持った女性のイラスト)及び当該書籍
中の扉絵4点を制作したところ,原稿料は,表紙のイラストについて3万円,\n扉絵について3000円であったこと(甲14の1・2),3)原告は,平成2
9年の年賀状用のカラーイラスト(餅と鳥を組み合わせたイラスト)を制作
したところ,原稿料は2万4000円であったこと(甲15の1・2),以上
の事実が認められる。
これらの事実に加え,本件各イラストの内容(前提事実 ),本件サイトは
インターネットメディア事業を行うことなどを目的とする被告が運営し,そ
の閲覧数に応じて被告が収入を得るものであること(弁論の全趣旨),その
他本件における諸事情を総合すると,本件各イラストの使用に対し受けるべ
き金額は1年当たり3万円とするのが相当である。
そして,弁論の全趣旨によれば,被告が本件サイト上に本件各イラストを
掲載していた期間は,平成26年7月31日から平成29年6月8日までで
あると認められるから,原告が,本件各イラストの使用に対し受けるべき金
銭の額は合計27万円(1年当たりの使用料3万円×3点×3年分)となる。
イ これに対し,原告は,原告が制作するイラストの使用料は1年当たり10
万円を下らないと主張し,原告本人の陳述書中にも同旨の記載がある(甲1)
が,上記アの認定事実に照らし,原告の主張は採用することはできない。
ウ 他方,被告は,ツイッターのサービス利用規約上,ツイート自体を埋め
込む方法によって他のウェブサイトに掲載することが認められている点
を損害額の算定において考慮すべきであると主張するが,被告の主張を前
提としても,本件における被告の掲載行為が適法となる余地はなく,上記
に述べた本件サイトの性質等に照らしても,被告の上記主張は採用するこ
とができない。
また,被告は,本件各イラストが掲載されていた本件サイトのPV数は
公開後約2か月間に集中しており,その後はほとんど閲覧されていないか
ら,掲載期間全部を損害額算定の根拠することは不当であると主張する。
しかしながら,本件において原告が受けるべき金員の額は,被告による本
件各イラストの掲載行為の内容等を踏まえて算定すべきであるから,被告
の上記主張は採用することができない。
さらに,被告は,原告が本件訴訟提起前に被告に対し本件各イラストの
著作権侵害による損害賠償金として9万円(1点3万円×3点)を請求し
ていたこと,上記ア1)について,漫画の原稿料にはストーリー制作作業に
対する対価も含まれると考えられること,同2)について,書籍の表紙とな\nるイラストと本件各イラストでは完成度が異なることから,いずれも本件
各イラストの使用料相当額の算定資料としては適切ではなく,むしろ,本
件各イラストの性質上,同2)の書籍の扉絵の原稿料(1点3000円)が
算定資料になり得る事例であり,本件各イラストは3点(描かれた場面の
数は合計14枚)であり,構図も3種類程度しかないこと等を踏まえると,\n本件各イラストの使用料は高くても1回2〜3万円程度であると主張す
る。
しかしながら,本件訴訟提訴前に一定の金額を提示したとしてもその金
額が直ちに本件各イラストの使用料相当額であるとはいえない。また,本
件各イラストにおいては,複数の場面が多色カラーで描かれ,各場面に合
わせた説明文も記載されており,これらの場面設定や説明文についても原
告が創作していることを踏まえると,本件各イラストの使用料相当額が,
漫画や書籍の表紙の原稿料と比べて低額になるとはいえず,被告の主張は\n採用することができない。被告は,被告が本件各イラストの掲載によって得た利益は2500円程度に過ぎないとも主張するが,本件サイトの性質等を踏まえても,上記ア
で認定した本件各イラストの使用に対し受けるべき金銭の額が不相当で
あるとはいえない。
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2018.05.22
平成28(ネ)10101 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成30年4月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
発信者情報開示事件です。1審では、リツイートはインラインリンクであるので、著作権侵害に該当しないと判断され、請求は棄却されました。知財高裁(2部)は、著作者人格権侵害があったとして、一部の発信者情報について開示を認めました。
前記(1)のとおり,本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている\n画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,\n表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラム
や CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり
画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えら
れているものではない。
しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表\現したものであって,文
芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう
著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プロ
グラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件ア
カウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5のよ\nうな画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変された
もので,同一性保持権が侵害されているということができる。
この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は,
インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為
の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により位置や大きさ
などが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件
リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザ
ーを改変の主体と評価することはできない(著作権法47条の8は,電子計算機に
おける著作物の利用に伴う複製に関する規定であって,同規定によってこの判断が
左右されることはない。)。
また,被控訴人らは,本件アカウント3〜5のタイム
ラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(1)の画像と同じ画像であるから,
改変を行ったのは,本件アカウント2の保有者であると主張するが,本件アカウン
ト3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は,控訴人の著作物である本\n件写真と比較して改変されたものであって,上記のとおり本件リツイート者らによ
って改変されたと評価することができるから,本件リツイート者らによって同一性
保持権が侵害されたということができる。さらに,被控訴人らは,著作権法20条
4項の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は,本件
アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイートが行
われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむを得
ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害
本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人\nの氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際して HTML プ
ログラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件
アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5の\nような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控\n訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆
への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができ\nる。
・・・
(7) 「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び
「発信者」(同法2条4号について
前記(5)ア,イのとおり,本件リツイート行為は,控訴人の著作者人格権を侵害す
る行為であるところ,前記(5)ア,イ認定の侵害態様に照らすと,この場合には,本
件写真の画像データのみならず,HTML プログラムや CSS プログラム等のデータを
含めて,プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ,本件リツイー
ト行為は,その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかであ
る。そして,この場合の「発信者」は,本件リツイート者らであるということがで
きる。
◆判決本文
一審はこちらです。
◆平成27(ワ)17928
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2017.03.28
平成28(ワ)7393 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成29年3月21日 大阪地方裁判所
引用の目的が正当な範囲内で行なわれるものとはいえないとして、複製・公衆送信侵害と認定されました。
別紙対比表1,2の「被告侵害部分」で特定された原告コンテンツの各記載\nは,その内容や記載の順序,文体等に照らし原告の個性が表出されているものと認\nめられるから,これらはいずれも原告の思想又は感情を創作的に表現したものとし\nて著作権法上の著作物であるということができ,したがって原告は,その作成者と
してその著作権(複製権,公衆送信権)を有するものと認められる。
そして,別紙対比表1,2記載のとおり,被告は,原告コンテンツをそのまま自\nらの本件ウェブページに転載したものであり,不特定多数の者が本件ウェブサイト
にアクセスして本件ウェブページを自由に閲覧することができるものであることか
らすると,被告は,原告の複製権及び公衆送信権を侵害したものというべきである。
(2) 被告は,これら記載の掲載行為は著作権法32条1項の「引用」に該当する
旨主張する。
しかし,被告が引用した原告コンテンツの一部の傍らには,本件記載のようなコ
メントが付されているのであって,既に説示したとおり,これらコメントを付す行
為は,原告製品ひいては原告を批評するという公益を図る目的でされたものとは認
められず,むしろ原告製品ひいては原告の信用を毀損する目的でされた違法な行為
というべきものであり,また売主の説明責任を果たすための正当な行為と認めるこ
ともできないことからすれば,その引用が「公正な慣行に合致するもの」とも「引
用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものともということはできない。
したがって,被告による原告コンテンツの掲載行為を,著作権法32条1項の「引
用」として適法と認めることはできない。
なお,被告は,原告コンテンツはそれ自体経済的価値を有するものとして市場で
取引されるものではないなどと主張するが,その指摘はそうであるとしても,これ
をもって「引用の目的上正当な範囲内で行なわれ」たということはできない。
◆判決本文
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2017.01. 6
平成28(ワ)34083 著作隣接権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成28年12月20日 東京地方裁判所
カラオケ店舗において,カラオケ歌唱を行う様子を動画撮影し,これをYouTubeにアップロードした行為が,レコード製作者の送信可能化権を侵害するとして、差止が認められました。
原告は,業務用通信カラオケ機器の製造販売等を業とする株式会社であり,
業務用通信カラオケ機器「DAM」シリーズの販売を行っている。
原告は,平成28年8月17日に発売された女性ボーカルグループ「Li
ttle Glee Monster」のCDシングル「私らしく生きてみ
たい/君のようになりたい」に含まれる楽曲「私らしく生きてみたい」のカ
ラオケ用音源(以下「本件DAM音源」という。)を作成した。原告は本件
DAM音源につきその音を最初に固定したレコード製作者として送信可能\n化権(著作権法96条の2)を有する。
被告は,カラオケ店舗において,DAMの端末を利用して,上記楽曲のカ
ラオケ歌唱を行い,その際に自身が歌唱する様子を動画撮影し,本件DAM
音源の音が記録された動画を同年9月7日にインターネット上の動画共有サイトである「YouTube」にアップロードした。
◆判決本文
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2016.12.28
平成28(ワ)11697 著作権侵害賠償等請求事件 民事訴訟 平成28年12月15日 東京地方裁判所(46部)
有償講演を無断でネット配信したのが、公衆送信権の侵害として、1万円程度の損害賠償が認められました。原告が求めていたのは「ラスボス登場」という表記が名誉毀損というものですが、それは否定されています。
被告は言語の著作物である本件講演をインターネット上の配信サイトで配信
したものであるから,被告の行為は本件講演に係る各原告の公衆送信権を侵害
する行為に該当する。
これに対し,被告は,本件配信は「時事の事件の報道」(著作権法41条)
に該当するため原告らの著作権が制限され,公衆送信権侵害は成立しない旨主
張する。そこで検討すると,まず,この点に関する被告の前記主張を前提とし
ても,本件講演それ自体が同条にいう「時事の事件」に当たるとみることは困
難である。これに加え,同条は,時事の事件を報道する場合には,当該事件を
構成する著作物等を「報道の目的上正当な範囲内」において「当該事件の報道\nに伴って利用する」限りにおいて,当該著作物についての著作権を制限する旨
の規定である。本件配信は,約3時間にわたり本件講演の全部を,本件コメン
トを付して配信するものであるから,同条により許される著作物の利用に当た
らないことは明らかである。
したがって,本件配信は上記公衆送信権を侵害するものと認められる。
・・・
原告は上記各コメントが原告Aの名誉又は声望を害するものであると主張す
る。そこで判断するに,前記前提となるび弁論の全趣旨によれば,被告による本件講演の利用方法は本件講演の映像及び音声をそのまま公衆送信するというものであり,被告による本件コメントは
本件配信が行われるインターネットの画面上で上記映像の脇に表示されるにと\nどまると認められる。また,「ラスボス」との表現については,「最後のボス」\nを表現すると一応解し得るものであるが,原告らはこれが悪意を込めた用語で\nあると主張するものの,一般的にそのような意味合いで用いられていると裏付
けるに足りる証拠を提出していない。一方,証拠(乙6)及び弁論の全趣旨に
よれば,この表現は人の社会的評価を低下させる趣旨で使用されない場合もあ\nると認められるのであり,本件においても,前後の文脈及び別紙2記載のコメ
ント内容に照らせば,原告Aの講演が本件講演会の見せ場であるという趣旨で
「ラスボス」との表現が使用されたと解する余地もある。さらに,被告による\n上記各コメント以外のコメントも原告Aの社会的評価を低下させるものである
とは解し難い。そうすると,被告による本件講演の利用の方法が原告Aの名誉
又は声望を害するものであったと認めることはできないから,謝罪広告に関す
る原告Aの請求は理由がない。
・・・
そこで,これにより原告らが被った財産的損害の額についてみるに,前記前
提となる事実に加え,証拠(甲1の1及び2,甲3〜5)及び弁論の全趣旨
によれば,本件配信は本件講演会の音声を主としており,本件配信に係る映
像は本件講演会の模様を認識できるものではないこと,原告Dの挨拶は約3
分,原告Cの挨拶は約10分であり,原告B及び原告Aの講演はそれぞれ約
1時間のものであり,その音声が全て配信されたこと,本件講演会の参加費
用は1人当たり1000円であり,被告はこれを支払って本件講演会に参加
したこと,本件配信は誰でも無料で視聴可能であるが,その総視聴者数は4\n37人であったこと,被告は本件配信の際,視聴者から配信時間を延長する
ためのアイテムである「コイン」の提供を受けたのみであり,本件配信によ
り経済的利益を得ていないこと,以上の事実が認められる。これらの事実を
総合すれば,本件講演の公衆送信権侵害による損害額は,原告A及び原告B
につき各6万円,原告Cにつき1万円,原告Dにつき3000円と認めるの
が相当である。なお,原告らは公衆送信権侵害による精神的損害の賠償も求めるが,本件の証拠上,上記損害額に加えて,原告らに賠償を認めるべき精神的損害が生
じたと認めることはできない。
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2016.10.11
平成27(ワ)17928 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 平成28年9月15日 東京地方裁判所
発信者情報開示請求です。争点は、リツイートする行為が著作権侵害かです。裁判所はリツィートの仕組みから判断して、公衆送信には該当しないと判断しました。
前記前提事実(3)ウ及び(4)記載のとおり,本件写真の画像が本件アカウント
3〜5のタイムラインに表示されるのは,本件リツイート行為により同タイ\nムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURLへのインラインリ
ンクが自動的に設定され,同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接\n画像ファイルのデータが送信されるためである。すなわち,流通情報3〜5
の各URLに流通情報2(2)のデータは一切送信されず,同URLからユーザ
ーの端末への同データの送信も行われないから,本件リツイート行為は,そ
れ自体として上記データを送信し,又はこれを送信可能化するものでなく,\n公衆送信(著作権法2条1項7号の2,9号の4及び9号の5,23条1
項)に当たることはないと解すべきである。
また,このようなリツイートの仕組み上,本件リツイート行為により本件
写真の画像ファイルの複製は行われないから複製権侵害は成立せず,画像フ
ァイルの改変も行われないから同一性保持権侵害は成立しないし,本件リツ
イート者らから公衆への本件写真の提供又は提示があるとはいえないから氏
名表示権侵害も成立しない。さらに,流通情報2(2)のURLからユーザーの
端末に送信された本件写真の画像ファイルについて,本件リツイート者らが
これを更に公に伝達したことはうかがわれないから,公衆伝達権の侵害は認
められないし,その他の公衆送信に該当することをいう原告の主張も根拠を
欠くというほかない。そして,以上に説示したところによれば,本件リツイ
ート者らが本件写真の画像ファイルを著作物として利用したとは認められな
いから,著作権法113条6項所定のみなし侵害についても成立の前提を欠
くことになる。
したがって,原告の主張する各権利ともその侵害が明らかであるというこ
とはできない。
これに対し,原告は,本件リツイート行為による流通情報2(2)のURLか
らクライアントコンピューターへの本件写真の画像ファイルの送信が自動公
衆送信に当たり,本件リツイート者らをその主体とみるべきであるから,本
件リツイート行為が公衆送信権侵害となる旨主張する。
そこで判断するに,本件写真の画像ファイルをツイッターのサーバーに入
力し,これを公衆送信し得る状態を作出したのは本件アカウント2の使用者
であるから,上記送信の主体は同人であるとみるべきものである(最三小判
平成23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照)。一方,本件リ
ツイート者らが送信主体であると解すべき根拠として原告が挙げるものにつ
いてみるに,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターユー
ザーにとってリツイートは一般的な利用方法であること,本件リツイート行
為により本件ツイート2は形式も内容もそのまま本件アカウント3〜5の各
タイムラインに表示されており,リツイートであると明示されていることが\n認められる。そうすると,本件リツイート行為が本件アカウント2の使用者
にとって想定外の利用方法であるとは評価できないし,本件リツイート者ら
が本件写真を表示させることによって利益を得たとも考え難いから,これら\nの点から本件リツイート者らが自動公衆送信の主体であるとみることはでき
ない。
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2016.07. 5
平成28(ネ)10026 売掛金請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成28年6月23日 知的財産高等裁判所 水戸地方裁判所 龍ケ崎支部
1審(水戸地裁)では、著作権侵害なしと判断されましたが、知財高裁は、本件電子データの作成および掲載が、複製権および公衆送信権侵害と認定しました。
原審の判決(平成27年(ワ)第24号)はアップされていません。
被控訴人は,仮に被控訴人の行為が著作権侵害に当たるとしても,被控訴
人は,本件ホームページ掲載行為は何ら制限されていなかったと認識してお
り,したがって,被控訴人に故意過失は認められない,また,フリーペーパ
ーという本件冊子の性格や,編集者としての被控訴人の立場,被控訴人は,
控訴人自身がプレスリリースした本件冊子と全く同一のものを電子データ化
して本件ホームページに掲載したにすぎないこと,被控訴人は,平成26年
11月に控訴人から著作権料を請求されるや,僅か1週間足らずの同月7日
に本件ホームページから本件電子データを削除していること等の事情からす
れば,侵害の程度は著しく小さく,被控訴人の行為に違法性はないと主張す
る。
しかし,被控訴人は,本件各写真が控訴人の著作物であることを知りつつ,
これを掲載した本件冊子を,その許諾の範囲を超えて,電子データ化した上,
インターネット上の本件ホームページに掲載したのであるから,控訴人が有
する本件各写真の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害することについて,
少なくとも過失が認められる。
また,本件における被侵害利益(控訴人が有する本件各写真の著作権)や
侵害行為の態様(電子データ化して3か月弱インターネット上の本件ホーム
ページに掲載した)を考慮すれば,被控訴人が指摘する点を踏まえたとして
も,違法性がないとはいえないことは明らかである。
以上によれば,本件ホームページ掲載行為による著作権侵害について被控
訴人の過失及び行為の違法性が認められるというべきであり,これに反する
被控訴人の主張は理由がない。
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2014.04. 1
平成21(ワ)16019 著作権 民事訴訟 平成26年03月14日 東京地方裁判所
データベースの著作物について、創作性が認められ、公衆送信権侵害、複製権侵害が認められました。判決文が260頁をこえてます。損害額も1億円を超えてます。
このように,データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうところ,前記第2,1の前提事実及び前記1で認定した事実によれば,原告CDDBは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能\を持ついわゆるリレーショナル・データベースである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるデータベースであるから,情報の選択又は体系的な構\成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。上記のような観点も踏まえ,原告CDDBのようなリレーショナル・データベースについて情報の選択に創作性があるというためには,データベースの主題,用途やデータベースの提供対象等を考慮して決定された一定の収集方針に基づき収集された情報の中から,更に一定の選定基準に基づき情報を選定することが必要であり,また体系的構\成に創作性があるというためには,収集,選定した情報を整理統合するために,情報の項目,構造,形式等を決定して様式を作成し,分類の体系を決定するなどのデータベースの体系の設定が行われることが必要であると解される。ただし,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構\成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表\れていることをもって足りるものと解される。
(2) 次に,著作物の複製ないし翻案については,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうとされているところ(著作権法2条1項15号),著作物の複製は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表\現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表\現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表\現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないというべきである。データベースについては,情報の選択又は体系的な構\成によって創作性を有するものは,著作物として保護されるものであるところ(著作権法12条の2),上記のとおり,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表\れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものあるが,データベースの著作物として保護されるのはあくまでも,具体的なデータベースに表\現として表れた情報の選択や体系的構\成であって,具体的な表現としての情報の選択や体系的構\成と離れた情報の選択の方針や体系的構成の方針それ自体は保護の対象とはならないというべきである。\n
・・・
前記認定のとおり,原告CDDBは,それまで存しなかった団体旅行の行程検索・行程表作成のため,顧客である旅行業者等からのヒアリングや寄せられた要望等に基づき,出発地,到着地,交通手段,経由地である観光施設,宿泊施設をデータベース化してこれをコンピュータで効率よく検索できるようにするためのデータベースであるところ,上記被告CDDB(当初版・2006年版)と共通するテーブルに関してみると,原告CDDBの「01市区町村テーブル」,「32駅テーブル」,「20ホテル・施設テーブル」,「21観光施設テーブル」,「09地点名テーブル」,「11接続テーブル」及び「10道路テーブル」により,出発地,経由地,目的地に面した道路に関するデータの検索を可能\にし,次に「09地点名テーブル」,「10道路テーブル」,「11接続テーブル」,「12禁止乗換テーブル」,「14区間料金テーブル」及び「15首都高速料金テーブル」により,道路を利用した移動に関する経路探索・料金の算出に必要なデータの検索を可能にしていること,また,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」,「22観光設備備考テーブル」,「05緯度経度テーブル」,「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」及び「08URL分類テーブル」により,ホテル・旅館,観光施設に関する情報を検索することを可能\にしていること,そして,「01市区町村テーブル」及び「02地区・県名テーブル」は,道路と地図を関連付ける情報として,地図から検索をするときに用いられていること,「01市区町村テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」,「21観光施設テーブル」及び「32駅テーブル」には施設等の近辺の道路地点の情報が代表道路地区コードや代表\道路地点番号として格納されており,当該市区町村内にあるこれらの施設や駅などを選ぶことを通じて,「09地点名テーブル」の必要な道路地点を選ぶことができること,観光施設も「21観光施設テーブル」から選択し,絞り込みは,「02地区・県名テーブル」,「01市区町村テーブル」から行うことができること,観光施設の名称は「21観光施設テーブル」に,検索結果の観光施設について,当該観光施設に関する様々の情報は,「22観光施設備考テーブル」に格納されており,観光施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」から参照可能であり,最終的に行程に入れるかどうかを判断することができること,が認められる。また,宿泊施設については,「20ホテル・旅館テーブル」から選択し,地区は「02地区・県名テーブル」,都道府県も同じく「02地区・県名テーブル」,市区町村は「01市区町村テーブル」,地図上の範囲設定は,地図ソ\フトと「05緯度経度テーブル」,「20ホテル・旅館テーブル」により,宿泊種別は「20ホテル・旅館テーブル」,名称は「20ホテル・旅館テーブル」,検索結果の宿泊施設については当該宿泊施設に関する様々な情報,すなわち,和室,洋室の客室数,収容人員,料金,付帯施設,駐車場などが「20ホテル・旅館テーブル」に格納されていて,当該宿泊施設に関するホームページの情報も「06URLアドレステーブル」,「07URL種別テーブル」が対応し,これらを参照して,ユーザーである旅行会社ないしその顧客の判断で行程等を決めることができることが認められる。以上のとおり,これら共通するテーブルについては,いずれも各テーブルを構成するフィールドにつき,原告CDDBと,被告CDDB(当初版・2006年版)とでほとんどが共通し,リレーションのとり方もほぼ共通するものである。そして,両者で共通するこれらの体系的構\成は,原告CDDBの制作者において,それまでのデータベースにはなかった設計思想に基づき構成した原告CDDBの創作活動の成果であり,その共通する部分のみでデータベースとして機能\し得る膨大な規模の情報分類体系であると認められ,データベースとして制作者の個性が表現されているものということができる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの体系的構\成としての創作性を有するものと認めるのが相当である。
・・・・
(ア) 前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とでは,情報項目としてのテーブル,フィールドの設定について,被告CDDB(当初版・2006年版)のテーブル数31個のうちの,28個においてテーブルが一致している。そして,フィールド項目についても,318個のフィールドのうち,252個のフィールドが一致している。(イ) そして,前記のとおり,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)とで一致する,地点名テーブルの道路情報,緯度経度情報,接続テーブル及び禁止乗換テーブルの情報,県範囲定義テーブルの各情報は,いずれも原告CDDBの制作者において,前記認定のとおり,それぞれ選択の幅のある中から一定の選択方針に基づき選定し,あるいは全く任意に番号等設定したものであり,それぞれ創作性を有するものと認められる。(ウ) さらに,原告CDDBにおいては,前記のとおり,旅行会社に対する実情調査等の結果を踏まえ,主たる目的として,大型観光バスによる団体旅行を主眼とした行程表作成のための便宜から,通常使用されるロードマップとは異なる観点である,貸切観光バスが通行するのに適した道路として,都道府県道については約10%,市区町村道では約0.004%程度を選択して「10道路テーブル」に格納し,道路地点として選択した地点における情報も緯度及び経度のデータとして格納することとし,これを大型観光バスが通過するのに適切と考えられる道路のうちの,行程表\を作成する上で必要と考えられる適切な地点である,交差点,インターチェンジ,サービスエリア,パーキングエリア,観光施設,宿泊施設,駅,役所等の代表道路地点とするのに適切な地点を選別し,パソ\コンのマウスを地図上でクリックする方法で選択して,実際に入力したものである。また,施設と関係する代表道路地点の選択においても,施設が存する場所の緯度経度による地点ではなく,大型観光バスでの出入りの観点から,当該施設の近辺の道路地点を選び,当該施設の代表\道路地点として適宜設定している。このように,原告CDDBと被告CDDB(当初版・2006年版)との共通部分である,道路,道路位置,代表道路地点等の選別・選択についても,原告CDDBの制作者による創作活動の成果が表\れており,創作者の個性が表現されているものといえる。したがって,被告CDDB(当初版・2006年版)と共通する上記原告CDDBの部分については,データベースの情報の選択としての創作性を有するものと認めるのが相当である。(エ) そして,これら被告CDDB(当初版・2006年版)が原告CDDBと同一性を有する情報の選択に関する部分も,原告CDDBの創作的表現の本質的特徴を直接感得することのできる同一性が維持されているものというべきである。\n
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2013.07. 9
平成24(ワ)13494 著作者人格権等侵害行為差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年06月28日 東京地方裁判所
警告書、苦情申告書、答弁書をブログに掲載されたことが、公衆送信権侵害となるのかが争われました。苦情申\告書、答弁書については著作物性が認められました。ただし、差止のみで、損害賠償請求については認められませんでした。
(ア) 前記前提事実(2)アのとおり,原告文書1は,原告が,南洋株式会社(通知人)の代理人として,平成23年10月4日,被告Y1に宛てて送付した通知書であり,表題,日付等の記載の後に,通知人の代理人として通知を行う旨及び被告Y1の作成するブログ内に通知人に関し事実に反する内容の記事が掲載されている旨を記載し,上記記事のURLを表\示し,さらに,上記記事の内容が事実に反し通知人の名誉・信用を著しく害し多大な損害が発生しているものである旨,上記記事の削除を求め,削除に応じない場合には仮処分申立てや損害賠償請求等の必要な法的措置をとらざるを得ない旨,以後問合せは通知人本人ではなく通知人代理人にされたい旨を記載したものである。上記原告文書1の本文部分は,上記URLの表\示部分を含めても17行,URLの表示部分を除けば13行からなるものである。
(イ) 原告文書1は,上記のとおり,前提となる事実関係を簡潔に摘示した上で,これに対する法的評価及び請求の内容等を短い表現で記載したものにすぎない。原告文書1の体裁,記載内容,記載順序,文章表\現は,いずれも内容証明郵便による通知書として一般的にみられるものであり,ありふれたものというべきであるから,原告文書1において何らかの思想又は感情が表現されているとしても,上記思想又は感情が創作的に表\現されているものとは認められない。この点,原告は,原告文書1は,用語や言い回しを厳選し,最も適切な表現を慎重に吟味して作成されたものであり,作成者の個性が表\れていると主張するが,原告の主張するような点を原告文書1から表現として感得することはできず,上記主張を採用することはできない。
(ウ) したがって,原告文書1に著作物性は認められない。
イ 原告文書2について
(ア) 前記前提事実(2)イのとおり,原告文書2は,原告が東京行政書士会会長宛てに提出した平成23年10月17日付けの苦情申告書であり,A4版5ページからなる文書である。原告文書2は,表\題,日付等の記載の後に,苦情の趣旨及び苦情の理由を記載し,さらに「第3 最後に」として,「申告者は,…多くの行政書士の方々が本当に真摯に依頼者のために業務に取り組まれていることをよく存じあげております。そのような中で,本件の苦情対象行政書士のごとく,行政書士法違反の非違行為を行う行政書士がごく少数でも存在することは,行政書士全体の社会的信用を貶めるものであり,適正に業務をされておられる大多数の行政書士の方々にも多大な悪影響を及ぼすものであると思います。」などと記載し,東京行政書士会に調査,対応を求める旨と,状況の改善がない場合には対象行政書士の東京都知事に対する懲戒を申\し立てる所存である旨などを記載したものである。
(イ) 原告文書2は,上記のとおり,行政書士会に対する苦情申告書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(日付,申\告者等の形式的記載事項や,申告すべき苦情の内容,事実関係の記載,上記事実関係の法的評価,非違行為に該当する考える理由等)を含むものであるということができる。しかし,苦情の内容,事実関係,その法的評価等に関する点については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,これらをどのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかについては,様々な可能性があるものというべきである。そうすると,原告文書2は,上記のとおり表\現について様々な可能性がある中で,記載の順序や内容,文章表\現を工夫したものということができるのであって,このような点に,作成者の個性の表出がみられるものというべきであり,思想又は感情を創作的に表\現したものに当たるということができる。
(ウ) したがって,原告文書2には著作物性が認められる。
ウ 原告文書3
(ア) 前記前提事実(2)ウのとおり,原告文書3は,被告Y1が東京弁護士会に対し請求した原告の懲戒請求につき,原告が,平成23年11月16日,東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出した答弁書であり,事件番号,表題,日付等の形式的記載事項の表\示の後に,請求の趣旨に対する答弁,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張を記載したものである。被調査人(原告)の主張においては,同人が作成した「かなめくじ」に関するブログ記事が,請求者(被告Y1)の事務所(「かなめ行政書士事務所」)を指したものではないことなどを示す事情として,「かなめくじ」というキャラクターを制作した経緯(「かなめくじ」とは有機物的な気色悪いキャラクターであり,これを「くそキモキャラ」と呼ぶこと,「かなめくじ」とは,「蚊」と「なめくじ」を合体させたものであること,人に嫌悪感をもよおす生き物のうちから,制作が容易でシンプルなデザインであり,かつ,グッズ化に向きやすい形状・性質のものであって,動作や動きの再現が容易であるなどの条件を満たすものとして,軟体動物をモチーフに選んだ上で,これに蚊の羽を合体させることにしたこと,「蚊」と種々の軟体動物の名称を組み合わせてみた結果,語感の響き等から「かなめくじ」を選ぶに至ったことなど)が詳細に記載されている。
(イ) 原告文書3は,上記のとおり,懲戒請求手続において東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出された答弁書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(表題,日付等の形式的記載事項や,懲戒請求理由に対する認否等)を含むものであるということができる。しかし,これらのうち,懲戒請求に至る経緯及び理由に対する認否,被調査人(原告)の主張については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,どのような順序で,どのような表\現により,どの程度記載するかにつき様々な可能性があり得ることは原告文書2と同様であるところ,原告文書3は,これらの点について工夫がみられ,特に被調査人(原告)の主張の内容及び表\現はこの種文書において一般的なものとはいい難いものというべきである。そうすると,原告文書3には,作成者の個性が
表現として表\れているものとみることができる。
(ウ) したがって,原告文書3は思想又は感情を創作的に表現したものに当たり,著作物性が認められる。
(3) 小括
以上のとおり,原告文書1には著作物性が認められないから,原告文書1に係る原告の請求(被告各ブログにおける原告文書1を掲載して使用することの差止請求及び損害賠償請求)については,その余の点について検討するまでもなく理由がない。したがって,原告文書2及び3についてのみ,以下の争点につき検討する。
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2013.07. 1
平成23(ワ)15245 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年06月20日 大阪地方裁判所
ニュースサイトを運営している会社が動画投稿サイトの動画にリンクを張ることが、
公衆送信およびそれに基づく不法行為になるかが争われました。裁判所はいずれも該当しないと判断しました。
原告は,被告において,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックすると,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態にしたことが,本件動画の「送信可能化」(法2条1項9号の5)に当たり,公衆送信権侵害による不法行為が成立する旨主張する。しかし,前記判断の基礎となる事実記載のとおり,被告は,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼\ったにとどまる。この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。したがって,本件ウェブサイトを運営管理する被告が,本件動画を「自動公衆送信」をした(法2条1項9号の4),あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法2条1項9号の5)をしたとは認められない。
(2) 幇助による不法行為の成否
ところで,原告の主張は,被告の行為が「送信可能化」そのものに当たらないとしても,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画にリンクを貼\ることで,公衆送信権侵害の幇助による不法行為が成立する旨の主張と見る余地もある。しかし,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画は,著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らかではない著作物であり,少なくとも,このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。そして,被告は,前記判断の基礎となる事実記載のとおり,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴可能\としたことにつき,原告から抗議を受けた時点,すなわち,「ニコニコ動画」への本件動画のアップロードが著作権者である原告の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちに本件動画へのリンクを削除している。このような事情に照らせば,被告が本件ウェブサイト上で本件動画へリンクを貼ったことは,原告の著作権を侵害するものとはいえないし,第三者による著作権侵害につき,これを違法に幇助したものでもなく,故意又は過失があったともいえないから,不法行為は成立しない。\n
◆判決本文
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2012.03.14
平成21(ワ)34012 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成24年02月23日 東京地方裁判所
(株)グリーが、(株)ディー・エヌ・エーの「釣りゲータウン」についての著作権侵害、不競法違反による差し止め、損害賠償を求めました。東京地裁は、翻案権侵害を認めました。なお、魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、不競法の商品等表示には該当せず、また、寄与度を30%と認定して、被告利益の額の3割の2億を損害として認定しました。
(4) 携帯電話機用釣りゲームにおける魚の引き寄せ画面は,釣り針に掛かった魚をユーザーが釣り糸を巻くなどの操作をして引き寄せる過程を,影像的に表現した部分であり,この画面の描き方については,i)水面より上や水面,水面下のうちどの部分を,どのような視点から描くか,ii)仮に,水面下のみを描くこととした場合,魚の姿や魚の背景をどのように描くか,iii)魚が釣り針に掛かった時から,魚が釣り上げられる又は魚に逃げられるまでの間,魚にどのような動きをさせ,どのような場合に魚を引き寄せやすいようにするか(ユーザーが釣り糸を巻くタイミングをどのように表現するか)などの点において,様々な選択肢が考えられる。原告作品は,この魚の引き寄せ画面について,上記(2)ア(エ)のような具体的表現を採用したものであり,特に,水中に三重の同心円を大きく描き,釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体を動き回らせ,魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくすることによって表\した点は,原告作品以前に配信された他の釣りゲームには全くみられなかったものであり(甲3),この点に原告作品の製作者の個性が強く表れているものと認められる。他方,被告作品の魚の引き寄せ画面は,上記のとおり原告作品との相違点を有するものの,原告作品の魚の引き寄せ画面の表\現上の本質的な特徴といえる,「水面上を捨象して,水中のみを真横から水平方向の視点で描いている点」,「水中の中央に,三重の同心円を大きく描いている点」,「水中の魚を黒い魚影で表示し,魚影が水中全体を動き回るようにし,水中の背景は全体に薄暗い青系統の色で統一し,水底と岩陰のみを配置した点」,「魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の一定の位置に来たときに決定キーを押すと魚を引き寄せやすくするようにした点」についての同一性は,被告作品の中に維持されている。したがって,被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ画面との同一性を維持しながら,同心円の配色や,魚影が同心円上のどの位置にある時に魚を引き寄せやすくするかという点等に変更を加えて,新たに被告作品の製作者の思想又は感情を創作的に表\現したものであり,これに接する者が原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものと認められる。また,これらの事実に加えて,被告作品の製作された時期は原告作品の製作された時期の約2年後であること,被告らは被告作品を製作する際に原告作品の存在及びその内容を知っていたこと(甲1の1,2)を考慮すると,被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ画面に依拠して作成されたものといえ,原告作品の魚の引き寄せ画面を翻案したものであると認められる。
(5) これに対し,被告らは,原告が魚の引き寄せ画面に関して原告作品と被告作品とで同一性を有すると主張する部分は,いずれも,単なるアイデア又は平凡かつありふれた表現にすぎず,創作的表\現とはいえないと主張する。しかしながら,原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面の共通点は,単に,「水面上を捨象して水中のみを表示する」,「水中に三重の同心円を表\示する」,「魚の姿を魚影で表す」などといったアイデアにとどまるものではなく,「どの程度の大きさの同心円を水中のどこに配置し」,「同心円の背景や水中の魚の姿をどのように描き」,「魚にどのような動きをさせ」,「同心円やその背景及び魚との関係で釣り糸を巻くタイミングをどのように表\すか」などの点において多数の選択の幅がある中で,上記の具体的な表現を採用したものであるから,これらの共通点が単なるアイデアにすぎないとはいえない。
・・・
エ 以上のとおり,原告作品と被告作品の画面における素材の選択と配列について両作品が類似する点は,原告が主張画面であると主張する画面と非主要画面であると主張する画面のいずれも,アイデアないし表現上の創作性のない部分において類似するにすぎない。これに加えて,原告の主張する原告作品の主要画面の遷移には上記のとおり創作性が認められないことなどを併せ考えると,被告作品と原告作品における画面の選択と配列及び画面の素材の選択と配列に上記のような類似点があることは,被告作品が原告作品の翻案物であることを何ら根拠付けるものではないというべきである。\n
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2012.02. 2
平成23(ネ)10009 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所
まねきTVの差し戻し判決です。知財高裁は、侵害であると認定しました。部門が4部から3部に変わってます。
公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能\しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たる。また,自動公衆送信の主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。本件について,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被告は,ベースステーションを自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,管理しているから,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被告であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被告である。そして,何人も,被告との関係等を問題にされることなく,被告と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができ,送信の主体である被告からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。したがって,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能\化に当たる。
・・・・
被告は,ベースステーションを「自ら管理するテレビアンテナ」に接続していないと主張する。確かに,被告が自らテレビアンテナを管理している事実は認められないが,被告の事務所内のアンテナ端子を経由してテレビアンテナから放送波を継続的に受信できる状態にしていることに変わりはないから,テレビアンテナを被告自身が管理しているかどうかは,本件における結論を左右するものではない。また,被告は,本件放送がベースステーションに継続的に入力されるようにする「設定」やベースステーションの「管理」を行っていない旨主張する。しかし,被告の主張は失当である。上記認定の事実に加え,被告は,事務所内にベースステーションを設置した後,電源が入っているかを確認し,夏季に空調を28°Cに設定する(乙19)等の行為をしているから,被告は,「設定」や「管理」を行っていると評価すべきである。
◆判決本文
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◆平成19(ワ)5765号
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2012.01.19
平成21(あ)1900 著作権法違反幇助被告事件 平成23年12月19日 最高裁判所第三小法廷 決定 棄却 大阪高等裁判所
刑事事件です。ファイル共有ソフトであるWinnyの配布が、著作権法違反幇助罪に該当しないとした高裁判決は結論において妥当すると判断されました。
刑法62条1項の従犯とは,他人の犯罪に加功する意思をもって,有形,無形の方法によりこれを幇助し,他人の犯罪を容易ならしむるものである(最高裁昭和24年(れ)第1506号同年10月1日第二小法廷判決・刑集3巻10号1629頁参照)。すなわち,幇助犯は,他人の犯罪を容易ならしめる行為を,それと認識,認容しつつ行い,実際に正犯行為が行われることによって成立する。原判決は,インターネット上における不特定多数者に対する価値中立ソフトの提供という本件行為の特殊性に着目し,「ソ\フトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供する場合」に限って幇助犯が成立すると解するが,当該ソ\フトの性質(違法行為に使用される可能性の高さ)や客観的利用状況のいかんを問わず,提供者において外部的に違法使用を勧めて提供するという場合のみに限定することに十\分な根拠があるとは認め難く,刑法62条の解釈を誤ったものであるといわざるを得ない。
(2) もっとも,Winnyは,1,2審判決が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソ\\フトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソ\フトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。新たに開発されるソ\フトには社会的に幅広い評価があり得る一方で,その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば,かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能\性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。かかるソ\フトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。すなわち,ソ\フトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,当該ソ\フトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソ\フトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソ\フトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。\n
◆判決本文
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2011.12.13
平成23(ワ)16905 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年11月29日 東京地方裁判所
着うたを違法配信していたサーバ運営者に、約2億円の損害賠償が認定されました。欠席裁判です。
◆判決本文
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2011.12. 7
平成23(ワ)22642 発信者情報開示請求事件 平成23年11月29日 東京地方裁判所
P2Pを用いて違法公衆送信をしている者を特定するための発信者情報をISPに対して開示請求しました。裁判所はこれを認めました。判決主文は、「平成22年6月26日14時51分9秒ころに「123.227.37.239」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。」というものです。
本件確認試験の結果等によれば,「P2P FINDER」による検索結果,すなわち本件調査結果については,その信用性を疑わせるような事情は見当たらず,信頼を置くことができるものと認められる。したがって,本件調査結果に基づき,前記第2の3[原告らの主張](1)アないしトの事実,すなわち,i) 本件各利用者は,原告各レコードを複製し,この複製に係るファイル(本件各ファイル)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続したこと,ii) そして,本件各利用者は,Gnutella互換ソフトウェアにより,本件各ファイルを,インターネットに接続している,本件各利用者からみて不特定の他の同ソ\フトウェア利用者(公衆)からの求めに応じて,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にしたこと(すなわち,原告らの原告各レコードに係る送信可能化権を侵害したこと),が認められる。\n
◆判決本文
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2011.02. 8
平成20(ワ)11762 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年01月28日 東京地方裁判所
プログラム著作物について、差止、損害賠償が認められました。問題となったプログラムは、被告が原告在職中に作成したものでした。なお、翻案の差止は認められず、実施料相当額は10%と判断されました。
ウ これに対し,被告らは,原告プログラムにおいては,画面上の構成要素を貼\り付け,ボタン等を配置するために必要なプログラムなど,開発ツールであるMicrosoft社の「Visual Studio.net」によって自動生成された部分が相当の分量に及んでおり,これらの部分には創作性がないとした上で,原告プログラムのうちのMainForm.csの原告ソースコードに含まれる各関数を分析すると,別紙5において☆,○又は□の印を記載したものについては,自動生成コードが相当割合を占めることから,創作性が認められない旨を主張する。しかしながら,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる各関数における自動生成コードの占める割合が被告ら主張のとおりであることを前提にしたとしても,少なくとも別紙5において△の印が記載された合計10の関数については,被告ら自身が汎用的でないコードからなるものであることを認めており,創作性が認められることに実質的な争いはないものといえる。また,別紙5において□の印が記載された合計164の関数についても,被告らは,自動生成コードの割合が1割程度にすぎないこと,すなわち,9割程度が自動生成コードではないことを認めているのであり,これらの関数については,少なくとも自動生成コードが相当割合を占めることを理由として創作性を否定することはできないというべきである。この点,被告らは,これらの関数について,汎用的プログラムの組合せであることを理由として創作性が否定されるかのごとく主張するが,汎用的プログラムの組合せであったとしても,それらの選択と組合せが一義的に定まるものでない以上,このような選択と組合せにはプログラム作成者の個性が発揮されるのが通常というべきであるから,被告らの上記主張は採用できない。してみると,被告らの上記主張を前提としても,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる298の関数のうちの約6割(174/298)において,自動生成コードが1割以下にとどまっており,それ以外のコードは,その選択と組合せにおいてプログラム作成者の個性が発揮されていることが推認できるというべきであるから,プログラム著作物としての創作性を優に肯定することができる。エさらに,後記(2)イで認定するとおり,原告プログラムは,主として被告A1がその開発及びプログラミング作業を行ったものであるから,原告プログラムの内容等を最も知悉する者は被告A1にほかならないところ,それにもかかわらず,被告らは,原告プログラムの一部であるMainForm.csの原告ソースコードについて,別紙5に記載した印に基づいて前記第3の1(2)ア記載の程度の概括的な主張をしてその創作性を争うにとどまっており,それ以外の原告プログラムの創作性については,具体的理由に基づいてこれを争う旨の主張は行っていない。しかも,被告A1は,その本人尋問において,自らが行った原告プログラムにおけるソースコードの記述方法について,様々な創意工夫がされていることを自認する供述もしている。前記イ及びウで述べたことに加え,上記のような被告らの訴訟対応や被告A1の本人尋問における供述をも総合すれば,原告プログラムが,全体として創作性の認められるプログラム著作物であることは,優にこれを認めることができる。
・・・
原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。したがって,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づいて被告プログラムの翻案の差止めを求める原告の請求は理由がない。
・・・
そこで,上記会費収入を前提として,原告が原告プログラムについての著作権の行使につき受けるべき金銭の額(使用料相当額)を算定するに,i)社団法人発明協会発行の「実施料率【第5版】」(甲24)に記載されたソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約において定められた実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされ,特にソ\フトウェアにおいて高率契約の割合が高いとされていること,ii)原告プログラムは,原告において,多大な時間と労力をかけて開発されたものであり,かつ,原告の業務の中核となる重要な知的財産であって,競業他社にその使用を許諾することは,通常考え難いものであること,iii)他方,証拠(乙13,被告A1)によれば,被告会社においては,その会員に対し,被告ソフトを公衆送信して使用させることのみならず,被告会社が野村総研から購入した株価や銘柄に関するデータに種々の処理を施したものを提供するサービスや会員に対して電子メールで種々のアドバイスを送信するメールサービスも行っていることから,会員から得られる会費の中には,これらのサービスに対する対価に相当する部分も含まれており,本来,上記会費収入の全額が実施料率算定の基礎となるものではないことといった事情のほか,原告ソ\フト及び被告ソフトの内容,被告らによる侵害行為の態様及びそれに至る経緯,原告と被告らとの関係など本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告らによる平成19年1月から平成22年8月までの著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,上記(ア)の会費収入合計額2045万1200円の約10パーセントに当たる200万円と認めるのが相当である(なお,被告らによる著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,原告の原告ソフトの表\示画面に係る著作権侵害の主張が認められる場合でも,上記金額を超えるものとはいえない。)。
◆判決本文
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2011.01.20
平成21(受)653 著作権侵害差止等請求事件 平成23年01月18日 最高裁第三小
まねきTVについて、著作権侵害無しとの原審が破棄されました。
公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能\\を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
イ そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
ウ これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能\\化に当たるというべきである。
(2) 公衆送信権侵害について
本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。6 以上によれば,ベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しないことのみをもって自動公衆送信装置の該当性を否定し,被上告人による送信可能\\化権の侵害又は公衆送信権の侵害を認めなかった原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。原判決は破棄を免れず,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
◆判決本文
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2010.09.10
平成21(ネ)10078 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年09月08日 知的財産高等裁判所
動画投稿サイトの運営者が侵害主体として認定されました。1審と同様の判断です。
以上からすると,本件サービスにおいて,著作権を侵害する動画を本件サーバに投稿する行為を実際に行っているのは,ユーザであって,控訴人らではない。したがって,ユーザが本件サービスに投稿する動画の中に,本件管理著作物が利用されている場合には,ユーザが当該動画を本件サーバに投稿する行為は,ユーザによる本件管理著作物の複製権侵害に該当することはいうまでもないところである。しかしながら,先に指摘したとおり,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであって,控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配している主体であるところ,ユーザの投稿に対し,控訴人会社から対価が支払われるわけではなく,控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ているものである。しかるところ,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と,約5割に達しているものであり,このような著作権侵害の蓋然性は,動画投稿サイトの実態それ自体や控訴人会社によるアダルト動画の排除を通じて,控訴人会社において,当然に予\想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,控訴人会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採っていない。そうすると,控訴人会社は,ユーザによる複製行為により,本件サーバに蔵置する動画の中に,本件管理著作物の著作権を侵害するファイルが存在する場合には,これを速やかに削除するなどの措置を講じるべきであるにもかかわらず,先に指摘したとおり,本件サーバには,本件管理著作物の複製権を侵害する動画が極めて多数投稿されることを認識しながら,一部映画など,著作権者からの度重なる削除要請に応じた場合などを除き,削除することなく蔵置し,送信可能化することにより,ユーザによる閲覧の機会を提供し続けていたのである。しかも,そのような動画ファイルを蔵置し,これを送信可能\化して閲覧の機会を提供するのは,控訴人会社が本件サービスを運営して経済的利益を得るためのものであったこともまた明らかである。したがって,控訴人会社が,本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。よって,控訴人会社は,本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって,当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。また,本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上,公衆送信(送信可能\化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。以上からすると,本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて,控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして,控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能\化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成20(ワ)21902平成21年11月13日東京地裁
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2010.05.31
平成21(ワ)12854 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年05月28日 東京地方裁判所
雑誌に掲載された患者の手記を病院のサイトに掲載したことが、複製権、公衆送信権侵害であるとして、約40万円の損害賠償が認定されました。引用であるとの主張も認められず。
被告は,本件転載について,著作権法32条1項の「引用」として適法なものである旨主張するが,同項所定の「引用」とは,報道,批評,研究等の目的で自己の著作物中に他人の著作物の全部又は一部を採録するものであって,引用を含む著作物の表現形式上,引用して利用する側の著作物と,引用されて利用される側の著作物を明瞭に区別して認識することができ,かつ,両著作物の間に前者が主,後者が従の関係があるものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和55年3月28日第三小法廷判決・民集34巻3号244頁)。そして,同項の立法趣旨は,新しい著作物を創作する上で,既存の著作物の表\\現を引用して利用しなければならない場合があることから,所定の要件を具備する引用行為に著作権の効力が及ばないものとすることにあると解されるから,利用する側に著作物性,創作性が認められない場合は「引用」に該当せず,同項の適用はないというべきである。(2) これを本件についてみると,・・・以下,数頁にわたって本件記事を掲載するという体裁になっているが,本件記事を除く部分は,いずれも短文の上,内容もおしなべて平凡なものであり,これらについて,被告の思想又は感情を創作的に表現したものとして,著作物性,創作性を認めることは困難である。仮に,これらの部分に著作物性,創作性が肯定される余地があるとしても,その分量,内容からして,引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物との間に,前者が主,後者が従の関係があるものと認めることはできない。したがって,本件転載が著作権法32条1項所定の「引用」として適法であるとすることはできない。\n
◆判決本文
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2009.12.17
平成20(ワ)21902 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年11月13日 東京地方裁判所
動画投稿サイトの運営者に著作権侵害に基づく、差し止め請求が認められました。
「・・被告会社は,同ファイルサーバに対する使用権原に基づき,本件サービスにおいて送受信の対象とされているファイルの所在及び内容を把握でき,必要に応じてファイルの送受信を制限したり,特定の利用者の利用自体を禁止したり,ファイルを削除する等の措置を講じることができるから(甲7,乙1,31,弁論の全趣旨),ライムライト社の管理するファイルサーバも含めて本件サーバを管理支配しているものと認められる。また,被告会社は,前記第2,2前提となる事実(3)アに認定したとおり,その定める独自のユーザインターフェイス環境においてユーザにコンテンツを提供するというコンセプトを有する本件サイトを開設しており(甲7,乙1,弁論の全趣旨),ただ,そのコンテンツがユーザの提供によるというにすぎないところであり,外形的には,被告会社は,少なくとも公衆送信(送信可能化を除く。)はしている。もっとも,複製又は送信可能\化については,後記(2)イ(ア)c(c)のとおり被告会社の代表者である被告A自らが行ったものも一部あるが,それ以外のものについては外形的にはユーザが行っている。また,複製又は送信可能\化される動画ファイルの選択はユーザの任意によるものであり,その結果として,公衆送信される動画ファイルも上記のようにユーザが任意に選択した範囲の中のものに限られるから,公衆送信されるべき動画ファイルの設定それ自体には被告会社は直接には関与していないことになる。したがって,複製及び送信可能化のみならず,公衆送信についても,侵害主体を論じる必要がある。この点,著作権法上の侵害主体を決するについては,当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,これらの観点を踏まえた上で,実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能\な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。・・・・・以上からすると,本件サービスは,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであるところ,被告会社は,このような本件サービスを管理支配している主体であって,実際にも,本件サイトは,本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って,かつ,控え目に侵害率を計算しても,侵害率は49.51%と約5割に達しているものであるところ,このような著作権侵害の蓋然性は被告会社において予想することができ,現実に認識しているにもかかわらず,被告会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採らず,このような行為により利益を得ているものということができる。そうすると,被告会社は,著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引,招来,拡大させてこれにより利得を得る者であって,侵害行為を直接に行う者と同視できるから,本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能\化を含む。)に係る著作権侵害の主体というべきである。」
◆判決本文
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2009.05. 8
◆平成20(ワ)3036 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年04月30日 東京地方裁判所
著作権侵害として、放送局およびこれに放送を依頼した会社が訴えられました。放送局に過失はないと判断されました。
「前記(1)の前提事実によれば,i)被告スカパーは,被告亜太との間で締結した本件委託契約に基づいて,被告亜太が電気通信役務利用放送事業者として本件CS放送サービスで提供する放送番組に係る放送番組送出業務及び運用業務の委託を受けたが,本件委託契約上,被告スカパーが当該放送番組の制作,編集等について関与することは予定されていなかったこと,ii)本件放送のプロセスにおいて,被告スカパーが行った放送番組送出業務は,本件委託契約に基づいて,被告亜太から本件ドラマの信号(ベースバンド信号)を回線を通じて受信し,これを機械的に圧縮符号化し,電気通信事業者であるジェイサットからの委託に基づいて,圧縮符号化された信号を機械的に高次元多重化・変調処理し,ジェイサットの保有する通信衛星へ伝送可能な放送波にした上で,その放送波を通信衛星まで伝送したというものであり,被告亜太から受信した本件ドラマの信号(ベースバンド信号)を瞬時かつ機械的に処理してリアルタイムでそのまま通信衛星に向けて伝送したものであることが認められる。そうすると,本件放送のプロセスにおいて被告スカパーが行った放送番組送出業務は,上記のような機械的な処理であって,被告亜太が制作・編集した放送番組である本件ドラマの内容を公衆によって受信されることを直接の目的として行ったものとはいえないから,被告スカパーが本件放送の主体であると解することはできない。
(イ) 次に,被告スカパーは,本件CS放送サービスを運営し,また,本件委託契約により,被告亜太から運用業務(顧客管理業務,広告宣伝等の普及促進業務等)の委託を受けていたのであるから(前記(1)ア(イ)),被告スカパーは,被告亜太が本件CS放送サービスの785チャンネルで提供する放送番組名や放送番組の内容の一部を認識していたものと認められる。しかし,被告スカパーは,被告亜太が提供する放送番組の制作,編集等について関与していなかったこと(前記(ア))に照らすならば,被告スカパーが,被告亜太から運用業務の委託を受けていたからといって,個々の放送番組の具体的な内容やその著作権の帰属等について十分に知り得る立場にあったとまでいうことはできない。また,本件放送がされた平成17年5月当時,本件CS放送サービスのチャンネル数は合計295であったこと,そのうち,785チャンネルだけをみても1日当たりの放送番組数は40数番組であったこと(前記(1)イ(イ))に照らすならば,本件放送がされた当時の1日当たりの放送番組数はかなりの多数に及んでいたものと推認されるから,被告スカパーが本件CS放送サービスで放送される個々の放送番組の内容の詳細を把握し,当該放送番組を放送した場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認することは極めて困難であったことが認められる。そうすると,被告スカパーは,個別の放送番組の放送前に,その内容に著作権侵害等の法令違反が存在することを現に認識し,あるいは,著作権者等関係者からの警告等を受けるなどして著作権侵害等の法令違反が存在する具体的な可能性を認識していた事情がある場合であれば格別,そのような事情のない場合には,個別の放送番組ごとに,その放送前に,当該放送番組が放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認すべき注意義務を負うものではないと解される。しかるに,本件放送について,被告スカパーが,その放送前に著作権侵害等の法令違反が存在することを現に認識していたことを認めるに足りる証拠はなく,また,被告スカパーは,本件放送前はもとより,本件放送がされた期間中も,原告から,本件ドラマの放送が本件著作権の侵害に当たる旨の通知あるいは警告を受けたことがなかったのであるから(前記(1)ウ(イ)),被告スカパーにおいて,本件放送前に,本件ドラマが放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認すべき注意義務を負っていたものということはできない。」
◆平成20(ワ)3036 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 平成21年04月30日 東京地方裁判所
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2008.12.19
◆平成20(ネ)10059 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成20年12月15日 知的財産高等裁判所
まねきTVの控訴審判決です。地裁判決が維持されました。
「自動公衆送信装置は,公衆によって直接受信され得る送信を行う機能を有する装置でなければならず,その「公衆(不特定又は特定多数の者)によって直接受信され得る送信を行う」ことは,自動公衆送信装置の機能\として必要なのであるから,不特定又は特定多数の者であるかどうかは送信行為者を基準に判断されるべきであり,かつ,仮に,本件サービスにおいて,放送番組を利用者に送信しているのが被控訴人であると仮定したとしても,個々のベースステーションを自動公衆送信装置に擬するのであれば,個々のベースステーションごとに,当該ベースステーションが,被控訴人にとって不特定又は特定多数の者によって直接受信され得る送信を行う機能を有するといえなければならない。そして,上記のとおり,ベースステーションからの送信は,その所有者である利用者が発する指令により,当該利用者が設置している専用モニター又はパソ\コンに対してのみなされるものであり,かつ,上記2(原判決「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」の「2 事実認定」の(4))のとおり,当該利用者(当該ベースステーションの所有者)は,被控訴人との間で,本件サービスに関する契約を締結し,その契約の内容として,当該ベースステーションを被控訴人の事業所(データセンター)に持参又は送付した者であるから,このような者が,被控訴人にとって不特定又は特定多数の者といえないことは明らかである。したがって,個々のベースステーションが,被控訴人にとって不特定又は特定多数の者によって直接受信され得る送信を行う機能を有するものということはできない。
(3) 控訴人らは,ベースステーションを含めた被控訴人のデータセンター内のシステム全体が,一つの特定の構想に基づいて機器が集められ,それらが有機的に結合されて構\築された一つの「装置」となっているから,本件システムは,被控訴人事業所内のシステム全体が一つの自動公衆送信装置を構成しているものであり,被控訴人がこれを一体として管理・支配しているものであるところ,被控訴人が,本件システムを用いて行っている送信は,被控訴人に申\込みを行い,ベースステーションを送付してくる不特定又は多数の者(利用者)に対して行われているものであるから,送信可能化行為に該当するとも主張する。しかしながら,上記のとおり,本件サービスにおいて,利用者の専用モニター又はパソ\コンに対する送信は,各ベースステーションから,各利用者が発する指令により,当該利用者が設置している専用モニター又はパソコンに対してのみなされる(各ベースステーションにおいて,テレビアンテナを経て流入するアナログ放送波は,当該利用者の指令によりデジタルデータ化され,当該放送に係るデジタルデータが,各ベースステーションから当該利用者が設置している専用モニター又はパソ\コンに対してのみ送信される)ものである。そうすると,本件システムにおいて,各ベースステーションへのアナログ放送波の流入に関わるテレビアンテナ,アンテナ線,分配機,ブースター等,また,各ベースステーションからのデジタル放送データをインターネット回線に接続することに関わるLANケーブル,ルーター等は,それぞれが本来は別個の機器であるとしても,その接続関係や役割に有機的な関連性があるということができ,これらを一体として一つの「装置」と考える契機がないとはいえない。
しかしながら,本件サービスに係るデジタル放送データの送信の起点となるとともに,その送信の単一の宛先を指定し,かつ送信データを生成する機器であるベースステーションは,本件システム全体の中において,複数のベースステーション相互間に何ら有機的な関連性や結合関係はなく(例えば,利用者との契約の終了等により,あるベースステーションが欠落したとしても,他のベースステーションには何らの影響も及ぼさない。),かかる意味で,個々のベースステーションからの送信は独立して行われるものであるから,本来別個の機器である複数のベースステーションを一体として一つの「装置」と考える契機は全くないというべきである。したがって,控訴人らの上記主張は,複数のベースステーションを含めて一つの「装置」と理解する前提において失当というべきである。
(4) 控訴人らは,ある装置が自動公衆送信装置に当たるかどうかは,当該装置が有する客観的機能のみによって定まるというべきであるとした上,ベースステーションを用いて送信を行う者から見て不特定又は特定多数の者が,対になる専用モニター又はパソ\コン等を所持しているような場合には,そのベースステーションによって自動公衆送信が行われることになるから,そのような機能を有する装置であるベースステーションは,自動公衆送信装置に当たると主張し,事業者が予\め多数のベースステーションと対応モニターを購入し,その事業所内にベースステーションを設置して必要な設定を施しておき,顧客から申し込みがある都度,対応モニターを顧客に貸与する,というようなサービスを行っている場合をその例として挙げる。しかしながら,控訴人らの挙示する上記の例においても,個々のベースステーションからの送信は,当該事業者との貸借契約(又は貸借を含む契約)を経た特定の者の設置する対応モニターに対してのみなされるだけであり,したがって,仮に,送信の主体が当該事業者であるとしても,個々のベースステーションが,当該事業者にとって不特定又は特定多数の者によって直接受信され得る送信を行う機能\を有するものということはできず,これをもって自動公衆送信装置に当たるということができないことは,上記(2)と同様である。そして,控訴人らの主張に係る「ベースステーションを用いて送信を行う者から見て不特定又は特定多数の者が,対になる専用モニター又はパソコン等を所持しているような場合」として,他にどのような例を想定し得るのかは明らかではないから,控訴人らの上記主張を採用することはできない。(5) 以上のほか,被控訴人が本件システムによって行う本件サービスにおいて,自動公衆送信装置に該当すると認められるものが使用されているとの事実を認めるに足りる証拠はない。そうすると,上記のとおり,「送信可能化」は,自動公衆送信装置の使用を前提とするものであるから,その余の点につき判断するまでもなく,本件サービスにおいて,被控訴人が本件放送の送信可能\化行為を行っているということはできない。
原審はこちらです
◆平成19(ワ)5765 平成20年06月20日 東京地方裁判所
◆平成20(ネ)10059 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権民事訴訟 平成20年12月15日 知的財産高等裁判所
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2008.06.24
◆平成19(ワ)5765 著作権侵害差止等請求事件 著作権民事訴訟 平成20年06月20日 東京地方裁判所
まねきTV(ソニーのベースステーションを多数預かるハウジングサービス)は、公衆送信権侵害とはならないと判断しました。
「上記アないしエで述べたベースステーションの機能,その所有者が各利用者であること,本件サービスを構\成するその余の機器類は汎用品であり,特別なソフトウェアは一切使用されていないことなどの各事情を総合考慮するならば,本件サービスにおいては,各利用者が,自身の所有するベースステーションにおいて本件放送を受信し,これを自身の所有するベースステーション内でデジタルデータ化した上で,自身の専用モニター又はパソ\コンに向けて送信し,自身の専用モニター又はパソコンでデジタルデータを受信して,本件放送を視聴しているものというのが相当である。要するに,本件サービスにおいて,本件放送をベースステーションにおいて受信し,ベースステーションから各利用者の専用モニター又はパソ\コンに向けて送信している主体は,各利用者であるというべきであって,被告であるとは認められない。(3)自動公衆送信装置該当性
ア 前記のとおり,自動公衆送信装置に該当するためには,それが(自動)公衆送信する機能,すなわち,送信者にとって当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者に対する送信をする機能\を有する装置であることが必要である。前記のとおり,本件サービスにおいて,ベースステーションによる送信行為は各利用者によってされるものであり,ベースステーションから送信されたデジタルデータの受信行為も各利用者によってされるものである。したがって,ベースステーションは,各利用者から当該利用者自身に対し送信をする機能,すなわち,「1対1」の送信をする機能\を有するにすぎず,不特定又は特定多数の者に対し送信をする機能を有するものではないから,本件サービスにおいて,各ベースステーションは「自動公衆送信装置」には該当しない。」
◆平成19(ワ)5765 著作権侵害差止等請求事件 著作権民事訴訟 平成20年06月20日 東京地方裁判所
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2007.05.29
◆平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年05月25日 東京地方裁判所
ユーザが所有しているCDを携帯電話用のデータに変換してから、ユーザがサーバにアップすると、これを記憶しておき、当該ユーザがダウンロードするサービス(MYUTA)を行っている業者について、録音および公衆送信の主体が業者であると認定されました。
「本件サービスのいわば入口と出口だけを捉えれば,ユーザのパソコンとユーザの携帯電話という1対1の対応関係といえなくはないが,説明図?Cすなわち本件サーバにおいて音源ファイルが複製されていることに変わりはなく,しかも,本件サーバへの3G2ファイルの蔵置による複製は,本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられる。そして,前記(1)エのとおり,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,複製に係る蔵置のための操作の端緒となる関与をユーザが行い,原告が任意に随時行うものではないが,この蔵置による複製行為そのものは,専ら,原告の管理下において行われている。すなわち,本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は,ユーザがどの楽曲データをアップロードするかを決定して操作するものではあるが,複製の過程はすべて原告が所有し管理する本件サーバにおいて,原告が設計管理するシステムの上で,かつ,原告がユーザに要求する認証手続を経た上でされるものであって,原告の全面的な関与の下にされるものである。そうすると,この過程において,ユーザは複製のための操作の端緒となる関与をしたに留まるものというべきであり,上記の複製行為は,前記(1)カのとおり,それ自体,原告の行為としてとらえるのが相当である・・・本件サーバから音源データを送信しているのは,前記(1)のとおり,本件サーバを所有し管理している原告である。そして,公衆送信とは,公衆によって直接受信されることを目的とする(著作権法2条1項7号の2)から,送信を行う者にとって,当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者であれば,公衆に対する送信に当たることになる。そして,送信を行う原告にとって,本件サービスを利用するユーザが公衆に当たることは,前記(2)のとおりである。なお,本件サーバに蔵置した音源データのファイルには当該ユーザしかアクセスできないとしても,それ自体,メールアドレス,パスワード等や,アクセスキー,サブスクライバーID(加入者ID)による識別の結果,ユーザのパソコン,本件サーバのストレージ領域,ユーザの携帯電話が紐付けされ,他の機器からの接続が許可されないように原告が作成した本件サービスのシステム設計の結果であって,送信の主体が原告であり,受信するのが不特定の者であることに変わりはない。」
◆平成18(ワ)10166 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件 著作権民事訴訟 平成19年05月25日 東京地方裁判所
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2006.08. 7
◆平成18(ヨ)22022 著作隣接権仮処分命令申立事件 平成18年08月04日 東京地方裁判所
ベースステーション(ソニー株式会社の商品名「ロケーションフリーテレビ」の構\成機器)を用いて海外にて日本のテレビ番組の受信するための管理を行っていた債務者に対する公衆送信権の侵害は認められませんでした。
附属書類(本件サービスのシステム構成)
「本件サービスにおいては,?@それに使用される機器の中心をなし,そのままではインターネット回線に送信できない放送波を送信可能なデジタルデータにする役割を果たすベースステーションは,名実ともに利用者が所有するものであり,その余は汎用品であり,本件サービスに特有のものではなく,特別なソ\フトウェアも使用していないこと,?A1台のベースステーションから送信される放送データを受信できるのはそれに対応する1台の専用モニター又はパソコンにすぎず,1台のベースステーションから複数の専用モニター又はパソ\コンに放送データが送信されることは予定されていないこと,?B特定の利用者のベースステーションと他の利用者のベースステーションとは,全く無関係に稼働し,それぞれ独立しており,債務者が保管する複数のベースステーション全体が一体のシステムとして機能しているとは評価し難いものであること,?C特定の利用者が所有する1台のベースステーションからは,当該利用者の選択した放送のみが,当該利用者の専用モニター又はパソコンのみに送信されるにすぎず,この点に債務者の関与はないこと,?D 利用者によるベースステーションへのアクセスに特別な認証手順を要求するなどして,利用者による放送の視聴を管理することはしていないことに照らせば,ベースステーションにおいて放送波を受信してデジタル化された放送データを専用モニター又はパソコンに送信するのは,ベースステーションを所有する本件サービスの利用者であり,ベースステーションからの放送データを受信する者も,当該専用モニター又はパソ\コンを所有する本件サービスの利用者自身であるということができる。そうすると,本件サービスにおけるベースステーションがインターネット回線を通じて専用モニター又はパソコンに放送データを送信することを債務者の行為と評価することは困難というべきであって,かかる送信は,利用者自身が自己の専用モニター又はパソ\コンに対して行っているとみるのが相当である。」
類似案件である録画ネット事件
H17.11.15 知財高裁 平成17(ラ)10007 著作権 民事仮処分事件では、複製権侵害が争われましたが、本件では、複製権侵害は申し立てておらず、公衆送信権侵害のみが申\し立てられました。
◆平成18(ヨ)22022 著作隣接権仮処分命令申立事件 平成18年08月04日 東京地方裁判所
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2005.03. 7
◆H17. 3. 3 東京高裁 平成16(ネ)2067 著作権 民事訴訟事件
刊行された書籍について、インターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」に,上記対談記事が無断で転載されて自動公衆送信されたとして、書籍の著作権者が、掲示板運用者に差止及び損害賠償を求めていました。東京高裁は、請求棄却した原審を破棄し、差止および損害賠償を認めました。
インターネット上においてだれもが匿名で書き込みが可能な掲示板を開設し運営する者は,著作権侵害となるような書き込みをしないよう,適切な注意事項を適宜な方法で案内するなどの事前の対策を講じるだけでなく,著作権侵害となる書き込みがあった際には,これに対し適切な是正措置を速やかに取る態勢で臨むべき義務がある。掲示板運営者は,少なくとも,著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合には,可能\ならば発言者に対してその点に関する照会をし,更には,著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに削除するなど,速やかにこれに対処すべきものである。
(原審・東京地方裁判所平成15年(ワ)第15526号,平成16年3月11日判決)
◆H17. 3. 3 東京高裁 平成16(ネ)2067 著作権 民事訴訟事件
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