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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

公衆送信

平成28(ワ)11697  著作権侵害賠償等請求事件  民事訴訟 平成28年12月15日  東京地方裁判所(46部)

 有償講演を無断でネット配信したのが、公衆送信権の侵害として、1万円程度の損害賠償が認められました。原告が求めていたのは「ラスボス登場」という表記が名誉毀損というものですが、それは否定されています。
 被告は言語の著作物である本件講演をインターネット上の配信サイトで配信 したものであるから,被告の行為は本件講演に係る各原告の公衆送信権を侵害 する行為に該当する。 これに対し,被告は,本件配信は「時事の事件の報道」(著作権法41条) に該当するため原告らの著作権が制限され,公衆送信権侵害は成立しない旨主 張する。そこで検討すると,まず,この点に関する被告の前記主張を前提とし ても,本件講演それ自体が同条にいう「時事の事件」に当たるとみることは困 難である。これに加え,同条は,時事の事件を報道する場合には,当該事件を 構成する著作物等を「報道の目的上正当な範囲内」において「当該事件の報道\nに伴って利用する」限りにおいて,当該著作物についての著作権を制限する旨 の規定である。本件配信は,約3時間にわたり本件講演の全部を,本件コメン トを付して配信するものであるから,同条により許される著作物の利用に当た らないことは明らかである。 したがって,本件配信は上記公衆送信権を侵害するものと認められる。
・・・
原告は上記各コメントが原告Aの名誉又は声望を害するものであると主張す る。そこで判断するに,前記前提となるび弁論の全趣旨によれば,被告による本件講演の利用方法は本件講演の映像及び音声をそのまま公衆送信するというものであり,被告による本件コメントは 本件配信が行われるインターネットの画面上で上記映像の脇に表示されるにと\nどまると認められる。また,「ラスボス」との表現については,「最後のボス」\nを表現すると一応解し得るものであるが,原告らはこれが悪意を込めた用語で\nあると主張するものの,一般的にそのような意味合いで用いられていると裏付 けるに足りる証拠を提出していない。一方,証拠(乙6)及び弁論の全趣旨に よれば,この表現は人の社会的評価を低下させる趣旨で使用されない場合もあ\nると認められるのであり,本件においても,前後の文脈及び別紙2記載のコメ ント内容に照らせば,原告Aの講演が本件講演会の見せ場であるという趣旨で 「ラスボス」との表現が使用されたと解する余地もある。さらに,被告による\n上記各コメント以外のコメントも原告Aの社会的評価を低下させるものである とは解し難い。そうすると,被告による本件講演の利用の方法が原告Aの名誉 又は声望を害するものであったと認めることはできないから,謝罪広告に関す る原告Aの請求は理由がない。
・・・
そこで,これにより原告らが被った財産的損害の額についてみるに,前記前 提となる事実に加え,証拠(甲1の1及び2,甲3〜5)及び弁論の全趣旨 によれば,本件配信は本件講演会の音声を主としており,本件配信に係る映 像は本件講演会の模様を認識できるものではないこと,原告Dの挨拶は約3 分,原告Cの挨拶は約10分であり,原告B及び原告Aの講演はそれぞれ約 1時間のものであり,その音声が全て配信されたこと,本件講演会の参加費 用は1人当たり1000円であり,被告はこれを支払って本件講演会に参加 したこと,本件配信は誰でも無料で視聴可能であるが,その総視聴者数は4\n37人であったこと,被告は本件配信の際,視聴者から配信時間を延長する ためのアイテムである「コイン」の提供を受けたのみであり,本件配信によ り経済的利益を得ていないこと,以上の事実が認められる。これらの事実を 総合すれば,本件講演の公衆送信権侵害による損害額は,原告A及び原告B につき各6万円,原告Cにつき1万円,原告Dにつき3000円と認めるの が相当である。なお,原告らは公衆送信権侵害による精神的損害の賠償も求めるが,本件の証拠上,上記損害額に加えて,原告らに賠償を認めるべき精神的損害が生 じたと認めることはできない。

◆判決本文

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平成27(ワ)17928  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年9月15日  東京地方裁判所

 発信者情報開示請求です。争点は、リツイートする行為が著作権侵害かです。裁判所はリツィートの仕組みから判断して、公衆送信には該当しないと判断しました。
 前記前提事実(3)ウ及び(4)記載のとおり,本件写真の画像が本件アカウント 3〜5のタイムラインに表示されるのは,本件リツイート行為により同タイ\nムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURLへのインラインリ ンクが自動的に設定され,同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接\n画像ファイルのデータが送信されるためである。すなわち,流通情報3〜5 の各URLに流通情報2(2)のデータは一切送信されず,同URLからユーザ ーの端末への同データの送信も行われないから,本件リツイート行為は,そ れ自体として上記データを送信し,又はこれを送信可能化するものでなく,\n公衆送信(著作権法2条1項7号の2,9号の4及び9号の5,23条1 項)に当たることはないと解すべきである。 また,このようなリツイートの仕組み上,本件リツイート行為により本件 写真の画像ファイルの複製は行われないから複製権侵害は成立せず,画像フ ァイルの改変も行われないから同一性保持権侵害は成立しないし,本件リツ イート者らから公衆への本件写真の提供又は提示があるとはいえないから氏 名表示権侵害も成立しない。さらに,流通情報2(2)のURLからユーザーの 端末に送信された本件写真の画像ファイルについて,本件リツイート者らが これを更に公に伝達したことはうかがわれないから,公衆伝達権の侵害は認 められないし,その他の公衆送信に該当することをいう原告の主張も根拠を 欠くというほかない。そして,以上に説示したところによれば,本件リツイ ート者らが本件写真の画像ファイルを著作物として利用したとは認められな いから,著作権法113条6項所定のみなし侵害についても成立の前提を欠 くことになる。 したがって,原告の主張する各権利ともその侵害が明らかであるというこ とはできない。 これに対し,原告は,本件リツイート行為による流通情報2(2)のURLか らクライアントコンピューターへの本件写真の画像ファイルの送信が自動公 衆送信に当たり,本件リツイート者らをその主体とみるべきであるから,本 件リツイート行為が公衆送信権侵害となる旨主張する。 そこで判断するに,本件写真の画像ファイルをツイッターのサーバーに入 力し,これを公衆送信し得る状態を作出したのは本件アカウント2の使用者 であるから,上記送信の主体は同人であるとみるべきものである(最三小判 平成23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照)。一方,本件リ ツイート者らが送信主体であると解すべき根拠として原告が挙げるものにつ いてみるに,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターユー ザーにとってリツイートは一般的な利用方法であること,本件リツイート行 為により本件ツイート2は形式も内容もそのまま本件アカウント3〜5の各 タイムラインに表示されており,リツイートであると明示されていることが\n認められる。そうすると,本件リツイート行為が本件アカウント2の使用者 にとって想定外の利用方法であるとは評価できないし,本件リツイート者ら が本件写真を表示させることによって利益を得たとも考え難いから,これら\nの点から本件リツイート者らが自動公衆送信の主体であるとみることはでき ない。

◆判決本文

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平成28(ネ)10026  売掛金請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成28年6月23日  知的財産高等裁判所  水戸地方裁判所  龍ケ崎支部

 1審(水戸地裁)では、著作権侵害なしと判断されましたが、知財高裁は、本件電子データの作成および掲載が、複製権および公衆送信権侵害と認定しました。 原審の判決(平成27年(ワ)第24号)はアップされていません。
 被控訴人は,仮に被控訴人の行為が著作権侵害に当たるとしても,被控訴 人は,本件ホームページ掲載行為は何ら制限されていなかったと認識してお り,したがって,被控訴人に故意過失は認められない,また,フリーペーパ ーという本件冊子の性格や,編集者としての被控訴人の立場,被控訴人は, 控訴人自身がプレスリリースした本件冊子と全く同一のものを電子データ化 して本件ホームページに掲載したにすぎないこと,被控訴人は,平成26年 11月に控訴人から著作権料を請求されるや,僅か1週間足らずの同月7日 に本件ホームページから本件電子データを削除していること等の事情からす れば,侵害の程度は著しく小さく,被控訴人の行為に違法性はないと主張す る。 しかし,被控訴人は,本件各写真が控訴人の著作物であることを知りつつ, これを掲載した本件冊子を,その許諾の範囲を超えて,電子データ化した上, インターネット上の本件ホームページに掲載したのであるから,控訴人が有 する本件各写真の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害することについて, 少なくとも過失が認められる。 また,本件における被侵害利益(控訴人が有する本件各写真の著作権)や 侵害行為の態様(電子データ化して3か月弱インターネット上の本件ホーム ページに掲載した)を考慮すれば,被控訴人が指摘する点を踏まえたとして も,違法性がないとはいえないことは明らかである。 以上によれば,本件ホームページ掲載行為による著作権侵害について被控 訴人の過失及び行為の違法性が認められるというべきであり,これに反する 被控訴人の主張は理由がない。

◆判決本文

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