2019.11.26
平成30(ワ)14843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年9月18日 東京地方裁判所
写真の著作物が無料でアップロードされたとして、約30万円の損害賠償が認められました。
本件各写真は,本件各商品を販売するために撮影されたものであると認めら
れるところ(甲33),以下のとおり,いずれも,商品の特性に応じて,被写体の
配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,背景\n等の写真の表現上の諸要素につき相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情\nが創作的に表現されているということができる。\n
ア すなわち,本件写真1ないし4は,ト音記号,楽譜又は楽器の柄のネクタイ
を被写体とするものであり,ネクタイの下端部を手前にして波打つように配置され,
背景はネクタイの下端部が配置された写真下部を白色,写真上部を暗い灰色又は黒
色とし,陰影が明確に付されるなどして,ネクタイの柄や質感を視覚的に認識しや
すいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているという
ことができる。
イ 本件写真5ないし10は,弦楽器の柄のコインケース等の商品を被写体とす
るものであり,本件写真5,7,9は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,
本件写真6,8,10は,柄の部分を大きく撮影したものであって,商品の配置の
仕方や陰影の付し方により,商品の質感や弦楽器の柄を視覚的に認識しやすいもの
となっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということがで
きる。
ウ 本件写真11ないし40は,楽器を演奏する動物等の置物を被写体とするも
のであり,本件写真11,14,17,20,23,26,29,32,35,3
8は,商品の前方を正面から撮影したもの,本件写真12,15,18,21,2
4,27,30,33,36,39は,商品の後方を斜め上から撮影したもの,本
件写真13,16,19,22,25,28,31,34,37,40は,動物等
の顔を斜め上から大きく撮影したものであって,背景は緑色,白色又はそれらのグ
ラデーションとし,陰影を付すなどして,動物等の表情や演奏態様等を視覚的に認\n識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされている
ということができる。
エ 本件写真41ないし44は,鍵盤等の柄のフロアマットを被写体とするもの
であり,本件写真41及び43は,四角形状の商品の形態に沿って商品のみを大き
く撮影したもの,本件写真42及び44は,その一部を大きく撮影したものであっ
て,生地の質感や鍵盤等の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販
売用の写真として相応の工夫がされているということができる。
オ 本件写真45ないし50は,写譜用のペンを被写体とするものであり,本件
写真45,47,49は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,本件写真4
6,48,50は,ペンの先端部分を大きく撮影したものであって,商品に光を反
射させ,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の質感や細かい模様を視覚的
に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされて
いるということができる。
カ 本件写真51及び52は,写譜用のペンの替芯(5本)及びそのケースを被
写体とするものであり,ケースから突出する替芯につき長さを変えた状態で大きく
撮影したものであって,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の形状を視覚
的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされ
ているということができる。
キ 本件写真53ないし61は,トランペット等の楽器の柄の黒色クリアファイ
ルを被写体とするものであり,本件写真53,55,57,59は,商品を中央に
配置して全体を撮影し,柄の部分に光を反射させ,背景は黒色を基調とし,陰影を
付すなどしたもの,本件写真54,56,58,60は,柄の部分を大きく撮影し
たものであって,トランペット等の楽器の柄を視覚的に認識しやすいものとなって
おり,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。ま
た,本件写真61は,商品を中央に配置して柄のない方向から全体を撮影したもの
であり,背景を白色と黒色のグラデーションとし,陰影を付すなどして,商品の形
状を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工
夫がされているということができる。
ク 以上のとおり,本件各写真には,商品の販売用の写真として相応の工夫がさ
れており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。\n
(2)被告は,本件各写真が著作物であることを争い,取り分け,本件写真42な
いし44は商品を上から撮影しているだけであり,本件写真45,46,50ない
し52は商品の販売用の写真として一般的なものであるから,これらに創作性が認
められないことは明らかである旨主張するが,前記のとおり,本件各写真には,商
品の販売用の写真として相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的
に表現されているということができるのであって,被告の上記主張は採用すること\nができない。
(3) 以上によれば,本件各写真には創作性が認められ,前記前提事実(2)のとおり,
これらは原告代表者によって原告の発意に基づき職務上作成されたものであるから,\nいずれも,原告の著作物であると認められる。
前記のとおり,被告は,原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害しており,これらについて,少なくとも,過失があると認められるから,不法行為による損害賠償責任を負っているところ,原告は,本件\n各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)として,著作権侵害に
係るものにつき合計46万3800円,著作者人格権侵害に係るものにつき合計4
万6800円の損害が生じたと主張する。
(2) そこで検討すると,前記のとおり,被告は,原告が本件各写真を原告ウェブ
サイトに掲載することによって販売していた本件各商品を,本件各写真と実質的に
同一の被告各写真を被告ウェブサイトに掲載することによって販売していたもので
あり,このような被告各写真の使用態様に加えて,被告各写真の掲載期間は長いも
ので1年6か月にわたること,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,画像素材
の販売業者である「ペイレスイメージズ」のウェブサイトでは,画像素材の単品で
の購入価格が432円から5400円までとされていると認められることなど,本
件訴訟に現れた事情を考慮すると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべ
き金銭の額(著作権法114条3項)は,写真1枚当たり5000円と認めるのが
相当である。もっとも,原告の氏名表示権が侵害されたことによって,別途の財産\n的損害が生じたと認めるに足りない。
(3)ア これに対し,原告は,アマナイメージズの価格表において,画像素材1点\n当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円,使用期間3年までの使用
単価は6万0480円,無断使用した場合には使用料金の200%を請求できると
されていることを主張するが,弁論の全趣旨によれば,アマナイメージズは,画像
素材のレンタルや販売を業とする株式会社であると認められるのに対し,本件各写
真はレンタルや販売を目的として撮影されたものではないから,原告が主張する価
格表について本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損\n害額の算定に当たって大きく考慮することは相当とはいえない。
イ 他方で,被告は,(1)本件各写真の創作性の程度の低さなどに照らせば,販売
用の広告写真1枚当たりの使用料相当額はせいぜい1000円程度である,(2)被告
において学遊社に本件各写真と同じカットでプロカメラマンによる写真撮影の見積
りを依頼したところ,ライティングを施すことを含む見積額が8万円であったから,
本件各写真の使用料相当額に係る損害は高くても合計8万円である旨主張する。
しかしながら,(1)については,前記のとおり,本件各写真は,商品の販売用の写
真として相応の工夫がされているということができるから,創作性の程度が低いこ
とを理由として著作権法114条3項所定の損害額を著しく低額にすべきであると
いうことはできない。
(2)については,証拠(甲41,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,学遊社は,被
告から提供を受けた本件各写真をサンプルとして参照し,本件各写真に対応する6
1カットの写真を半日でまとめて撮影した場合の撮影料を見積もったものと認めら
れるところ,学遊社の見積りは,本件各写真をサンプルとして参照しているため,
被写体の配置,カメラアングル・構図等を検討する必要はなく,また,半日でまと\nめて撮影しているため,複数日にわたって撮影されたと認められる本件各写真と比
べて撮影費用が低額となっているとみる余地があることなどからすれば,見積額が
8万円であるからといって,本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114
条3項所定の損害額が同程度であるということはできない。
(3) そうすると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著
作権法114条3項)は,合計30万5000円(5000円×61枚)であると
認められる。
◆判決本文
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2019.10.11
平成30(ワ)5427 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 令和元年10月3日 大阪地方裁判所(21部)
作成してもらったウェブサイトを依頼会社が別のサーバに移転して公開しました。これについて、本件の場合、著作権は被告が有するとして、著作権侵害とはならないと判断しました。
本件において,原告は,被告ウェブサイトの公衆送信等の差止め及び削除,並び
に金員の支払を求めているが,その根拠とするところは,一般不法行為等によるも
のを除けば,原告ウェブサイトが原告の著作物であることであり,さらにその理由
として主張するところは,原告が原告ウェブサイトを創作的に制作したこと,及び
原告と被告ピー・エム・エーの契約により,原告ウェブサイトの著作権は原告に属
する旨合意されたことである。
これに対し,被告らは,原告ウェブサイトの著作権は,被告ピー・エム・エーに
帰属するとの黙示の合意があること,原告が原告ウェブサイトを制作したことによ
ってその著作権が原告に帰属することはないこと,原告ウェブサイトの著作権を原
告に帰属させる旨を原告との間で合意した事実はないことを主張し,仮に原告に原
告ウェブサイトの著作権が認められるとしても,本件の経緯において,原告が被告
らに対し,原告ウェブサイトの著作権を主張することは,権利の濫用に当たる旨を
主張する。
そこで,まず,原告が原告ウェブサイトを制作したことにより,原告ウェブサイ
トが原告の著作物と認められるか,次に,原告と被告ピー・エム・エーとの合意に
より,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属すると認められるか,そして,仮に
原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属する場合に,原告が被告らに対し,著作権
を行使することが権利の濫用に当たるかにつき検討する。
(2) 原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属
ア 前記認定したところによれば,被告ピー・エム・エーは,旧ウェブサイトを
訴外彩登に制作させ,訴外ユウシステムに管理を委託していたところ,集客力の向
上のために,まず旧ウェブサイトの本件サーバの移管を原告に委託し,さらにその
保守業務を原告に委託した後,本件制作業務委託契約により,旧ウェブサイトを,
スマートフォンやタブレットに対応できるようにするなど,全面的にリニューアル
することを求めたことが認められるのであって,原告ウェブサイトの制作は,原告
の発意によるものではなく,被告ピー・エム・エーの委託に基づくものであり,原
告が自ら使用することは予定せず,被告ピー・エム・エーの企業活動のために使用\nすることが予定されていたものということができる。\n
イ 上述のとおり,原告ウェブサイトは,元々被告ピー・エム・エーが訴外彩登
に制作させた旧ウェブサイトを,本件サーバへの移管後にリニューアルしたもので,
前記認定したところによれば,原告ウェブサイトのデザイン,記載内容や色調の基
礎となったのは,リニューアル前の旧ウェブサイトであることが認められる。
また,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイトを制作するにあ
たり,ワードプレス専用のプラグインやフォント,写真を購入したり,ワードプレ
スを利用して,原告ウェブサイトが利用しやすく顧客吸引力があるように構成した\nものと認められるが,一方で,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの株式
スクールとしての企業活動を紹介するものであって,その内容は,基本的に被告ピ
ー・エム・エーに由来するというべきであるし,原告が,被告ピー・エム・エーか
ら,その従業員を通じ,仕様や構成について指示及び要望を聞いて制作したもので\nあることは,前記認定のとおりである。
ウ 原告と被告ピー・エム・エーは,以上の内容・性質を有する原告ウェブサイ
トの制作について,本件制作業務委託契約を締結し,例えば原告ウェブサイトの権
利を原告に留保して,原告が被告ピー・エム・エーに使用を許諾し使用料を収受す
るといった形式ではなく,原告ウェブサイトの制作に対し,対価324万円を支払
う旨を約したのであるから,原告が原告ウェブサイトを制作し,被告ピー・エム・
エーのウェブサイトとして公開された時点で,その引渡しがあったものとして,原
告ウェブサイトに係る権利は,原告が制作したり購入したりした部分を含め,全体
として被告ピー・エム・エーに帰属したと解するのが相当である。
上記解釈は,原告ウェブサイト制作後も,原告が被告ピー・エム・エーに保守業
務委託料の支払を求めていることとも合致する。すなわち,原告ウェブサイトが原
告のものであれば,被告ピー・エム・エーがその保守を原告に委託することはあり
得ず,原告ウェブサイトが被告ピー・エム・エーのものであるからこそ,代金を支
払ってその保守を原告に委託したと考えられるからである。
また,上述のとおり,原告ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーの企業として
の活動そのものを内容とするものであるから,原告がこれを自ら利用したり,第三
者に使用を許諾したり,あるいは第三者に権利を移転したりすることはおよそ予定\nされていないというべきであるから,原告ウェブサイトについての権利が原告に帰
属するとすべき合理的理由はない。さらに,原告ウェブサイトについての権利が原
告に帰属するとすれば,被告ピー・エム・エーは,原告の許諾のない限り,原告ウ
ェブサイトの保守委託先を変更したり,使用するサーバを変更するために原告ウェ
ブサイトのデータを移転したりすることはできないことになるが,そのような結果
は不合理といわざるを得ない。
エ 以上より,原告が原告ウェブサイトを制作したことを理由に,原告ウェブサ
イトの著作権が原告に帰属すると考えることはできず,原告ウェブサイトの著作権
は,被告ピー・エム・エーに帰属するものと解すべきである。
(3) 合意による著作権の帰属
ア 本件保守業務委託契約において,同契約に基づいて,原告が制作したウェブ
サイトの著作権その他の権利が原告に帰属する旨の規定(14条2項)があること
は前記認定のとおりである。
しかしながら,本件保守業務委託契約は,訴外彩登が制作した旧ウェブサイトを
本件サーバに移管した後に,その保守業務を被告ピー・エム・エーが原告に委託す
る際に締結されたものであって,原告がウェブサイトを制作完成することは予定さ\nれていないから,上記条項が何を想定したものかは不明といわざるを得ないし,同
条項が,その後に締結された本件制作業務委託契約に当然に適用されるとも解され
ない。
イ 本件制作業務委託契約については,被告ピー・エム・エー名義で作成された
本件注文書の「仕様」欄に,「全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利
は,制作者のP1に帰属するものとする。」と記載がある。
しかしながら,被告P3本人の尋問の結果によっても,被告ピー・エム・エーが,
原告と上記記載に係る合意を成立させる趣旨で,本件注文書に上記記載をしたとは
認められないし,他に,原告と被告ピー・エム・エーとの間で上記記載に係る合意
が成立したと認めるに足りる証拠は提出されていない。
ウ 原告ウェブサイトの制作の対価を324万円と定める本件制作業務委託契約
において,制作後の原告ウェブサイトの権利が原告に帰属するとすることが不合理
であることは前記(2)で述べたとおりであり,あえてそのように合意するとすれば,
その合意は明確なものでなければならず,本件においてそのような合意が成立した
と明確に認めるに足りる証拠がないことは上記ア及びイのとおりであるから,被告
ピー・エム・エーと原告の合意によって,原告ウェブサイトの著作権が原告に帰属
したと認めることはできない。
(4) 権利の濫用
ア 本件の事実関係を前提とすると,仮に,原告ウェブサイトの一部に,原告の
著作物と認めるべき部分が存在する場合であったとしても,以下に述べるとおり,
原告が,その部分の著作権を理由に,被告ウェブサイトに対する権利行使をするこ
とは,権利の濫用に当たり許されないというべきである。
イ すなわち,前記認定したところによれば,原告は,原告ウェブサイト制作後,
その保守管理を行っていたこと,被告ピー・エム・エーは,平成29年秋の時点で,
原告に対する支払を遅滞し,本件サーバの更新料も支払っていなかったこと,本件
サーバを使用継続するには,同年11月30日に最低1万2960円(12か月分)
を支払う必要があったが,被告ピー・エム・エーはこれを徒過したこと,同年12
月12日,本件サーバは凍結され,原告ウェブサイトの利用ができなくなったこと,
被告ピー・エム・エーはその直後に原告に13万8240円を振り込み,原告ウェ
ブサイトを復旧するよう原告に依頼したこと,本件サーバの規約によれば,原告ウ
ェブサイトのようなドメインが失効した場合,利用期限日から30日以内であれば,
更新費用を支払えば復旧可能であること,原告は,同月13日,被告P4に対し,\n原告ウェブサイトのデータは失われ,復旧するには再度制作する必要があり,その
費用は434万円余であると伝えたこと,被告ピー・エム・エーは,原告の提案を
断って,P6に,原告ウェブサイトの復旧を依頼したこと,P6は,原告ウェブサ
イトのデータを利用して被告ウェブサイトを作成し,平成30年1月ころ公開した
こと,以上の事実が認められる。
原告本人尋問及び被告P3本人尋問の結果を総合しても,原告が被告ピー・エム・
エーに対し,本件サーバの更新費用を怠った場合のリスクについて,適切に警告し,
期限を徒過しないよう十分注意したとは認められないし,原告ウェブサイトの利用\nができなくなった直後に被告ピー・エム・エーが金員を原告に振り込み,本件サー
バの規約ではデータの使用が可能な期限内であるのに,原告が,データが失われ復\n旧もできないと説明したことが適切であったことを裏付ける事情や,復旧のために
434万円余もの高額の費用が必要であると説明したことの合理的理由は見出し難
い。かえって証人P6は,サーバが凍結された場合,サーバ会社に料金を支払えば
すぐ復旧することができ,特に作業等をする必要はない旨を証言している。
前記認定したところによれば,原告ウェブサイトは,新たな顧客のために,被告
ピー・エム・エーの事業内容を紹介するのみならず,すでに顧客,会員となった者
に対するサービスの提供も行っているのであるから,原告ウェブサイトの停止は,
被告ピー・エム・エーの企業としての活動を停止することであり,その制作・保守・
管理を行った原告は,当然にこれを了解していた。
ウ 前記イで述べたところによれば,原告ウェブサイトが停止するまでの原告の
行為は,その保守・管理を受託した者として不十分であったというべきであるし,\n原告ウェブサイトの停止後の原告の行為は,原告ウェブサイトの停止が被告ピー・
エム・エーを窮地に追い込むことを知りながら,これを利用して,データは失われ
た,復旧できないと述べて,法外な代金を請求したものと解さざるを得ない。
上述のとおり,原告ウェブサイトの停止は企業としての活動の停止を意味し,既
に検討したとおり,原告ウェブサイトの著作権は全体として被告ピー・エム・エー
に帰属すると解されるのであるから,被告ピー・エム・エーが,法外な代金を請求
された原告との信頼関係は失われたとして,原告の十分な了解を得ることなく,原\n告ウェブサイトのデータを移転するようP6に依頼したとしても,やむを得ないこ
とであると評価せざるを得ない。
エ これらの事情を総合すると,仮に,原告ウェブサイトの一部に原告の著作権
を認めるべき部分が存在していたとしても,本件の事情において,原告がその著作
権を主張して,被告ウェブサイトの利用等に対し権利行使することは,権利の濫用
に当たり許されないというべきである。
(5) 本件動画ウェブサイトについて
前記認定事実のとおり,本件動画ウェブサイトは,被告ピー・エム・エーがソー\nシャルキャストのサービスを利用して提供していた授業の動画を,被告インタース
テラーが引き継いだ後に,サブドメインを変更したウェブページであって,原告ウ
ェブサイト及び被告ウェブサイトとは,内容も形式も全く異なるものである。
また,原告ウェブサイトと上記動画はもともと関連付けられていなかったところ,
本件サーバ凍結後,原告ウェブサイトから会員専用ウェブページを閲覧することが
できなくなったため,被告ウェブサイト上において,「ログイン」ボタンを押すと
上記動画に遷移するよう設定され,サブドメインの変更に伴いリンク先も本件動画
ウェブサイトに変更されたものである。
したがって,仮に原告ウェブサイトの一部に原告の著作権が認められる場合であ
っても,本件動画ウェブサイトの設定が,原告の著作権(複製権又は翻案権)侵害
となる余地はないといわざるを得ない。
◆判決本文
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2019.03.15
平成30(ワ)19731 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 平成31年2月28日 東京地方裁判所
脚を写した写真について著作物性ありとして、東京地裁47部は発信者情報の開示を認めました。該当写真は、判決文中にあります。
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャ\nッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影
の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一
つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表\れていれば創作性が
認められ,著作物に当たるというべきである。
これを本件についてみると,本件写真2は,別紙写真目録2記載のとおりで
あるところ,フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両
脚とテーブルの一部を主たる被写体とし,大腿部の上方から足先に向けたアン
グルで,右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の
一部を白っぽく見せ,また,当該光線の白色と,テーブル,スリッパ及びショ
ートパンツの白色とが組み合わさることで,脚全体が白っぽくきれいに映るよ
うに撮影されたカラー写真であり,被写体の選択・組合せ,被写体と光線との
関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現において,撮影者の個性が\n表れているものといえる。したがって,本件写真2は,創作的表\現として,写真の著作物であると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 争点2(公衆送信権侵害の成否)
(1) 本質的特徴を感得できるかについて
著作物の公衆送信権侵害が成立するためには,これに接する者が既存の著
作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要する。\nこれを本件についてみると,証拠(甲3の2,9)及び弁論の全趣旨によ
れば,本件画像には,本件写真2の下側の一部がほんの僅かに切り落とされ
ているほかは,本件写真2がそのまま用いられていることが認められる。そ
して,本件画像は,解像度が低く,本件写真と比較して全体的にぼやけたも
のとなっているものの,依然として,上記1で説示した,本件写真2の被写
体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の
総合的な表現の同一性が維持されていると認められる。\nしたがって,本件画像は,これに接する者が,本件写真2の表現上の本質\n的な特徴を直接感得することができるものであると認められる。これに反す
る被告の主張は採用できない。
(2) 本件画像アップロードと本件投稿の関係について
ア 前記前提事実(3),証拠(甲3,5,6,11ないし13)及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 「たぬピク」は,「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメール
を送信すると,当該画像がインターネット上にアップロードされたUR
Lが,送信元のメールアドレス宛てに返信され,当該URLを第三者に
送るなどして,当該画像を第三者と共有することができるサービスであ
る。
(イ) 本件掲示板を含むたぬき掲示板(2ch2(省略))をスマートフォンで
表示する場合には,「たぬピク」により取得した,画像のURLが投稿されると,当該URLが表\示されるのではなく,当該URLにアップロ
ードされている画像自体が表示される仕組みとなっている。これにより,\n当該URLをクリックしなくても,たぬき掲示板上において,他の利用
者と画像を共有することが可能となっている。\n
(ウ) 本件画像は,平成30年3月22日午後11時53分41秒に,「up
@vpic(省略)」宛てにメール送信され,本件画像URL上にアップロ
ードされた(本件画像アップロード)。
(エ) 本件画像URLは,同日午後11時54分46秒に,被告の提供する
インターネット接続サービスを利用して,本件掲示板に投稿された(本
件投稿)。
イ 以上の事実関係を前提に,本件投稿によって公衆送信権の侵害が成立す
るか検討する。
まず,本件画像は,前記ア(ウ)のとおり,本件投稿に先立って,インター
ネット上にアップロードされているが,この段階では,本件画像URLは
「up@vpic(省略)」にメールを送信した者しか知らない状態にあり,いま
だ公衆によって受信され得るものとはなっていないため,本件画像を「up
@vpic(省略)」宛てにメール送信してアップロードする行為(本件画像ア
ップロード)のみでは,公衆送信権の侵害にはならないというべきである。
もっとも,本件においては,前記ア(ウ)及び(エ)のとおり,メール送信に
よる本件画像のアップロード行為(本件画像アップロード)と,本件画像
URLを本件掲示板に投稿する行為(本件投稿)が1分05秒のうちに行
われているところ,本件画像URLは本件画像をメール送信によりアップ
ロードした者にしか返信されないという仕組み(前記ア(ア))を前提とすれ
ば,1分05秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該URLを
入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから,本
件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると
認めるのが相当である。そして,前記ア(イ)のとおり,本件画像URLが本
件掲示板に投稿されることにより,本件掲示板をスマートフォンで閲覧し
た者は,本件画像URL上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる。そうすると,本件投稿自体は,UR
Lを書き込む行為にすぎないとしても,本件投稿をした者は,本件画像を
アップロードし,そのURLを本件掲示板に書き込むことで,本件画像の
データが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから,これを全
体としてみれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る公衆送信権が
侵害されたものということができる。以上の認定に反する被告の主張は採
用できない。
3 小括
以上からすれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る著作権(公衆送
信権)が侵害されたことが明らかであると認められる。また,原告がかかる著
作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには,被告が保有す
る別紙発信者情報目録記載の情報が必要であると認められる。
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