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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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令和3(ネ)10036  著作権等の侵害に基づく削除等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 原告はイラストと文章をTwitterに投稿しました。被告の行為は原告著作物の公衆送信権、翻案権侵害と訴えました。知財高裁は1審判断を維持しました。

 既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア, 事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表\現上の創作性がない部 分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案に当 たらないことは引用する原判決が説示するとおりである。
本件についてみると,被告イラストは,原告文章と同じく,原作である「O NE PIECE」に登場するキャラクターの設定に依拠して,身長差のあ る同性の2人が,壁に掴まりながら特定の体位で性交渉を行うという描写に おいて,原告文章と同一性を有するにとどまるものであり,こうした描写自 体は,アイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分である。\nそうすると,原告文章を全体として見た場合に一定の創作性が認められる余 地があるとしても,前述のとおり,被告イラストは,原告文章のうちアイデ アないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分において同一性を有\nするにすぎないのであるから,原告文章の翻案に当たるものでないことは明 らかというべきである。 控訴人は,原告文章の創作性につき前記第2の3(1)のとおり指摘し,被告 イラストは,これらの創作部分が全て描写されているので,原告文章の翻案 に当たる旨主張するが,控訴人の指摘する部分は,いずれも,アイデアない し表現上の創作性のない部分であるにすぎないし(「ONE PIECE」 に登場するキャラクターの設定については,当然のことながら創作性を認め ることができない。),その具体的な表現ぶりも,性表\現として平凡かつあ りふれたものであり,そもそも被告イラストが当該表現部分に依拠して作成\nされたと特定することもできないものといわざるを得ない。 したがって,控訴人の主張は失当というほかない。
(2) 被告文章が原告イラストの翻案に当たるとの点について
被告文章は,原作である「ONE PIECE」に登場するキャラクター の設定に依拠して,原作に登場する2人の人物が性交渉後に,身長の低く若 い人物(ルフィ)が失禁したと勘違いし,動揺をしている描写設定において, 原告イラストと同一性を有するに止まり,こうした描写設定は,同性間の性 交渉を描写するに当たってのアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創\n作性があるとはいえない部分である。そうすると,原告イラストを全体とし て見た場合に一定の創作性が認められる余地があるとしても,前述のとおり, 被告文章は,原告イラストのうちアイデアないし着想にすぎないか,表現上\nの創作性がない部分において同一性を有するにすぎないのであるから,原告 イラストの翻案に当たるものでないことは明らかというべきである。 控訴人は,前記第2の3(2)のとおり,被告文章は,原告イラストの最後の コマの「ルフィ」のセリフを受けて,あたかも連歌のように,直前の状況や 内容を参看し,その背景や情趣,心境を踏まえて,そのポエジーを受け継い で記載されたものである旨主張するが,独自の見解というほかないものであ り,控訴人主張のセリフ自体に表現上の創作性を認めることはできないし,\nましてやそのセリフから連歌性やポエジーの存在を認め,被告文章が原告イ ラストに依拠した翻案に当たるなどと認めることは到底できない。  

◆判決本文

原審はこちら

◆令和1(ワ)30833
以下のように判断されています。
まず,原告文章と被告イラストについては,原告文章が言語の著作物で あるのに対し,被告イラストは基本的には美術の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(身長差の ある設定の2人の登場人物が,一般的には困難と思われている体位で性行 為を行っている点,性器の状態,及び登場人物の一方が壁につかまろうと しているという点)につき同一性を有するにとどまるといえる。しかして, 上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告文章の性質・内容に照らし, 内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自体でない部分であるという\nべきである。また,仮に表現自体と捉えられる部分があったとしても,本\n件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅があると認められ制作者の個\n性の表れとして著作物性を肯定することを基礎付けるに足りるものは見当\nたらず,原告文章の性質・内容に照らせば,上記設定を前提とする限り, これを表現したものとしては平凡かつありふれたものであり,表\現上の創 作性がない部分であるといわざるを得ない。
イ 次に,原告イラストと被告文章については,原告イラストが基本的には 美術の著作物であるのに対し,被告文章は言語の著作物であって,表現の\n形式が異なり,これらを対比すると,両者は,描写対象の設定(2人いる 登場人物の一方が性的行為の際に勘違いをした状況で,他方の登場人物に 対する言動・働きかけに及んでいる点)につき同一性を有するにとどまる といえる。しかして,これについても,上記説示が同様に当てはまるもの である。すなわち,上記描写対象の設定は,その内容自体や,原告イラス トの性質・内容に照らし,内面的思想たるアイデアにすぎず,表現それ自\n体でない部分であるというべきである。また,仮に表現自体と捉えられる\n部分があったとしても,本件各証拠を見ても,上記設定による表現に幅が\nあると認められ制作者の個性の表れとして著作物性を肯定できることを基\n礎付けるに足りるものは見当たらず,原告イラストの性質・内容に照らせ ば,上記設定を前提とする限り,これを表現したものとしては平凡かつあ\nりふれたものであり,表現上の創作性がない部分であるといわざるを得な\nい。
ウ 以上によれば,被告イラストは原告文章を翻案したものには当たらず, また,被告文章は原告イラストを翻案したものには当たらないというべき である。

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