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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権存続期間

平成21(ネ)10050 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成22年06月17日 知的財産高等裁判所

 旧著作権法下における映画の著作権の存続期間について、本事案については創作に関与した者であると判断しました。
 旧著作権法6条は,著作物の存続期間を定めた規定であるものと解されるが,同条につき,さらに,法人等の団体が著作者となり得ることを前提とした規定であると解することも可能である。そして,新著作権法における職務著作の規定の実質的な根拠とされた,法人等における著作物の創作実態及び利用上の便宜の必要性等の事情(甲5の80ないし81頁参照)は,旧著作権法の下においても,程度の差こそあれ存在していたものと推認できることからすれば,同法6条によって,直ちに,著作者として表\示された映画製作会社がその映画の著作者となると帰結されるものでないとしても,旧著作権法の下において,実際に創作活動をした自然人ではなく,団体が著作者となる場合も一応あり得たものというべきである。特に,映画制作においては,非常に多くの者が関与し,その外延が不明なことが通常であり,それら多数の者の複雑な共同作業によって映画が完成するものであるが,その関与者の関与の時期,程度,態様等も,映画によって千差万別であって,このような性質を有する映画については,映画会社がその著作者となり,原始的にその著作権を取得したものと観念するのが,各関与者の意図に合致する場合もあったものと想像され,新著作権法15条1項所定の要件と同様の要件を備え,映画会社が原始的に著作者となるべきものと認める映画も相当数あったのではないかと思われる。(5) この見地から,本件各映画についてみるに,新著作権法15条1項所定の要件が充たされているかは,具体的には,・・・前記(2)アないしウのとおり,本件映画1,3の各オープニングの冒頭部分において,新東宝の標章や「新東宝映画」との表示がされ,各ポスターにも,新東宝の標章とともに,「新東宝興業株式会社配給」ないし「新東宝の良心特作」との記載があり,・・も大きく表\示されていることを考慮すると,原告や新東宝が,自社の制作名義の下に本件各映画を公表したとはいい得るが,自社を著作者とした映画として公表\したとまでいい得るか,必ずしも断じ難いものがある。そのほかの要件については,本件では,必要な証拠が十分に提出されていないため,確たることは不明であるといわざるを得ない。そうすると,旧著作権法下において,本件各映画が著作物として保護を受けることは明らかであるところ,その著作者としては,原告ないし新東宝と本件各監督を含む多数の自然人とのいずれと認めるのが合理的であるかについては,新著作権法15条1項の要件が証拠不十\分のため,認められないとすれば,本件各映画の著作権は,本件各監督を含む多数の自然人に発生したものといわざるを得ない。そして,本件各監督を含む多数の自然人が著作者であると認めた場合には,いったん本件各監督等が各映画の著作権を取得しながら,その後,映画公開までの間に,原告又は新東宝に同著作権を黙示的に譲渡したと認められるかが問題となるところ,前記(2)セのとおり,新東宝・原告間では,著作権譲渡につき正式な契約書が存在するにもかかわらず,本件各監督と原告ないし新東宝との間の著作権の移転については,何ら証拠が提出されていない。しかしながら,監督については,前記(2)シで認定したように,原告は,テレビ放送への利用許諾等で対価を得た場合,原告もその会員である社団法人日本映画製作者連盟と,本件各監督もその組合員であった協同組合日本映画監督協会との間の申合せに従い,監督等に対し追加報酬を支払い,また,原告が放送への利用許諾等をした際には,協同組合日本映画監督協会に対しその旨を通知し,同協会は,監督等の組合員に対しその旨を連絡していることを考えると,映画製作会社は映画監督につき著作者の一人として処遇していることが窺われる。以上のように考えると,映画監督に限っては,映画公開までの間に原告又は新東宝に対し監督を務めることとなった法律関係に基づいて,自己に生じた著作権を譲渡したものと認定することができる。\n

◆判決本文

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