写真の著作物について、職務著作ではないと認定されました。
補助参加人は,原告が補助参加人の業務に従事する者であり,補助参加人のために本件写真を撮影し,また,本件写真は補助参加人名義のもとに公表するものであったから,本件写真の著作者は補助参加人である旨主張する。そこで検討するに,著作権法15条1項は,法人等において,その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し,これが法人等の名義で公表\されるという実態があることに鑑みて,同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものである。同項の規定により法人等が著作者とされるためには,著作物を作成した者が「法人等の業務に従事する者」であることを要する。そして,法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが,雇用関係の存否が争われた場合には,同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきものと解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第216号同15年4月11日第二小法廷判決・裁判集民事209号469頁参照)。イ そして,本件では,原告と補助参加人との間に雇用関係は認められないから,本件写真の撮影当時において,原告が補助参加人の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,補助参加人が原告に対して支払った金銭が労務提供の対価であると評価できるかについて検討する。証拠(甲2の1及び2,甲13,14,丙11)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成16年頃から平成22年7月頃まで,補助参加人の依頼を受けて,写真撮影を行い,撮影した写真フィルムないしデータを納品したこと,撮影のためのデジタルカメラ,レンズ,ストロボ等は原告が自らの費用で準備していたこと,補助参加人は,原告に対し,交通費のほか,報酬(日当名目)として1日2万2000円(平成19年8頃からは2万5000円)を支払っていたこと,報酬の支払時期は,撮影した写真を掲載した書籍の発行後であり,実際の撮影日から4か月程度後であったこと,平成18年(本件写真が撮影された年)において,原告の補助参加人の依頼による撮影日数は108日であり,それによって得た報酬は237万6000円であったことが認められる。以上のとおり,平成18年(本件写真が撮影された年)において,原告は,補助参加人からの依頼を受けて写真撮影の業務を行っていたものの,撮影機材は自ら準備し,写真撮影に当たっても自らの判断でその創作的内容を決定していたことが認められる。補助参加人は,原告に対し,報酬として1日2万2000円を支払っているが,その支払時期は,撮影した写真を掲載した書籍の発行後であり,原告の補助参加人の依頼による撮影日数は108日にすぎない。上記のような業務の態様や報酬の支払状況に照らすと,本件写真の撮影当時において,補助参加人が原告に対して支払った金銭が労務提供の対価であると評価することは困難であり,また,原告が補助参加人の指揮監督下にあったことを認めるに足りる証拠もない。ウ したがって,その余について判断するまでもなく,本件写真の創作が職務著作に当たるとは認められない。
◆判決本文