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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権その他

平成23(ネ)10008 損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成23年12月22日 知的財産高等裁判所

 デジタルチューナのみ搭載のHDDレコーダが著30条2項の私的録音録画補償金の支払いについて争われました。1審では、対象になるとしつつも、法的な支払い義務がないとして、権利者側の請求を棄却しました。これに対して、控訴審では、そもそも対象とならないと判断されました。
 上記のような審議録の記載を総合し,かつ,施行令1条1項1〜3号の規定ぶりにかんがみると,録音について規定された「アナログデジタル変換が行われた」との要件は,多様な録音源(ソース)のうちの主要なものを念頭に置きつつ,対象となる録音機器と媒体の規格に合わせて必要な標本化周波数を特定するために規定されたものと解することができる。アナログデジタル変換が行われた場所が録音機器の内部である必要があるか否かについての文言上の限定はないが,当該録音機器の規格またその対象録音媒体の規格に沿ったアナログデジタル変換が行われることが必要であるということができるのである。施行令1条に,録画についての特定機器が2項として追加された際における「アナログデジタル変換が行われた」との意義についてみても,上記の録音の場合と異なる事情はなく,「アナログデジタル変換が行われた」との要件は,録音・録画機器におけるデジタル録音・録画媒体が採用している標本化周波数を定義づけるために用いられてきたとみるべきである。すなわち,当該録音・録画機器によって録音・録画がされるために所定のアナログデジタル変換が行われることが規定されてきたというべきである。\n

◆判決本文

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平成21(受)602 著作権侵害差止等請求事件 平成23年12月08日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 知的財産高等裁判所

 地裁は著作権侵害なし、高裁は「我が国が未承認国である北朝鮮に対してベルヌ条約上の義務を負担するか否かの問題に帰着するとし,その検討の結果,ベルヌ条約により我が国が北朝鮮の著作物を保護する義務を負うとは認められないから,北朝鮮の著作物は著作権法6条3号所定の著作物に該当しないと判断したことは正当」とした上、「著作物は人の精神的な創作物であり,多種多様なものが含まれるが,中にはその製作に相当の費用,労力,時間を要し,それ自体客観的な価値を有し,経済的な利用により収益を挙げ得るものもあることからすれば,著作権法の保護の対象とならない著作物については,一切の法的保護を受けないと解することは相当ではなく(なお,被控訴人は,著作権法により保護されない著作物の利用については不法行為法上の保護が及ばないとするのが立法者意思である旨主張するが,かかる立法事実を認めることはできない。),利用された著作物の客観的な価値や経済的な利用価値,その利用目的及び態様並びに利用行為の及ぼす影響等の諸事情を総合的に考慮して,当該利用行為が社会的相当性を欠くものと評価されるときは,不法行為法上違法とされる場合があると解するのが相当である。」と判断しました。
 最高裁は、自由競争の範囲を逸脱し,1審原告の営業を妨害するものであるとは到底いえないとして、不法行為に基づく損害も否定しました。
 著作権法は,著作物の利用について,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに,その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で,著作権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,独占的な権利の及ぶ範囲,限界を明らかにしている。同法により保護を受ける著作物の範囲を定める同法6条もその趣旨の規定であると解されるのであって,ある著作物が同条各号所定の著作物に該当しないものである場合,当該著作物を独占的に利用する権利は,法的保護の対象とはならないものと解される。したがって,同条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。
3 これを本件についてみるに,本件映画は著作権法6条3号所定の著作物に該当しないことは前記判示のとおりであるところ,1審原告X1が主張する本件映画を利用することにより享受する利益は,同法が規律の対象とする日本国内における独占的な利用の利益をいうものにほかならず,本件放送によって上記の利益が侵害されたとしても,本件放送が1審原告X1に対する不法行為を構成するとみることはできない。仮に,1審原告X1の主張が,本件放送によって,1審原告X1が本件契約を締結することにより行おうとした営業が妨害され,その営業上の利益が侵害されたことをいうものであると解し得るとしても,前記事実関係によれば,本件放送は,テレビニュース番組において,北朝鮮の国家の現状等を紹介することを目的とする約6分間の企画の中で,同目的上正当な範囲内で,2時間を超える長さの本件映画のうちの合計2分8秒間分を放送したものにすぎず,これらの事情を考慮すれば,本件放送が,自由競争の範囲を逸脱し,1審原告X1の営業を妨害するものであるとは到底いえないのであって,1審原告X1の上記利益を違法に侵害するとみる余地はない。したがって,本件放送は,1審原告X1に対する不法行為とはならないというべきである。\n

◆判決本文
1審、2審はこちらです。

◆平成20年(ネ)第10012号著作権侵害差止等請求控訴事件

◆東京地裁平成18年(ワ)第5640号著作権侵害差止等請求事件

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平成23(ワ)22642 発信者情報開示請求事件 平成23年11月29日 東京地方裁判所 

 P2Pを用いて違法公衆送信をしている者を特定するための発信者情報をISPに対して開示請求しました。裁判所はこれを認めました。判決主文は、「平成22年6月26日14時51分9秒ころに「123.227.37.239」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名,住所及び電子メールアドレスを開示せよ。」というものです。
 本件確認試験の結果等によれば,「P2P FINDER」による検索結果,すなわち本件調査結果については,その信用性を疑わせるような事情は見当たらず,信頼を置くことができるものと認められる。したがって,本件調査結果に基づき,前記第2の3[原告らの主張](1)アないしトの事実,すなわち,i) 本件各利用者は,原告各レコードを複製し,この複製に係るファイル(本件各ファイル)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続したこと,ii) そして,本件各利用者は,Gnutella互換ソフトウェアにより,本件各ファイルを,インターネットに接続している,本件各利用者からみて不特定の他の同ソ\フトウェア利用者(公衆)からの求めに応じて,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にしたこと(すなわち,原告らの原告各レコードに係る送信可能化権を侵害したこと),が認められる。\n

◆判決本文

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平成20(ワ)11762 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成23年01月28日 東京地方裁判所

 プログラム著作物について、差止、損害賠償が認められました。問題となったプログラムは、被告が原告在職中に作成したものでした。なお、翻案の差止は認められず、実施料相当額は10%と判断されました。
ウ これに対し,被告らは,原告プログラムにおいては,画面上の構成要素を貼\り付け,ボタン等を配置するために必要なプログラムなど,開発ツールであるMicrosoft社の「Visual Studio.net」によって自動生成された部分が相当の分量に及んでおり,これらの部分には創作性がないとした上で,原告プログラムのうちのMainForm.csの原告ソースコードに含まれる各関数を分析すると,別紙5において☆,○又は□の印を記載したものについては,自動生成コードが相当割合を占めることから,創作性が認められない旨を主張する。しかしながら,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる各関数における自動生成コードの占める割合が被告ら主張のとおりであることを前提にしたとしても,少なくとも別紙5において△の印が記載された合計10の関数については,被告ら自身が汎用的でないコードからなるものであることを認めており,創作性が認められることに実質的な争いはないものといえる。また,別紙5において□の印が記載された合計164の関数についても,被告らは,自動生成コードの割合が1割程度にすぎないこと,すなわち,9割程度が自動生成コードではないことを認めているのであり,これらの関数については,少なくとも自動生成コードが相当割合を占めることを理由として創作性を否定することはできないというべきである。この点,被告らは,これらの関数について,汎用的プログラムの組合せであることを理由として創作性が否定されるかのごとく主張するが,汎用的プログラムの組合せであったとしても,それらの選択と組合せが一義的に定まるものでない以上,このような選択と組合せにはプログラム作成者の個性が発揮されるのが通常というべきであるから,被告らの上記主張は採用できない。してみると,被告らの上記主張を前提としても,MainForm.csの原告ソースコードについては,そこに含まれる298の関数のうちの約6割(174/298)において,自動生成コードが1割以下にとどまっており,それ以外のコードは,その選択と組合せにおいてプログラム作成者の個性が発揮されていることが推認できるというべきであるから,プログラム著作物としての創作性を優に肯定することができる。エさらに,後記(2)イで認定するとおり,原告プログラムは,主として被告A1がその開発及びプログラミング作業を行ったものであるから,原告プログラムの内容等を最も知悉する者は被告A1にほかならないところ,それにもかかわらず,被告らは,原告プログラムの一部であるMainForm.csの原告ソースコードについて,別紙5に記載した印に基づいて前記第3の1(2)ア記載の程度の概括的な主張をしてその創作性を争うにとどまっており,それ以外の原告プログラムの創作性については,具体的理由に基づいてこれを争う旨の主張は行っていない。しかも,被告A1は,その本人尋問において,自らが行った原告プログラムにおけるソースコードの記述方法について,様々な創意工夫がされていることを自認する供述もしている。前記イ及びウで述べたことに加え,上記のような被告らの訴訟対応や被告A1の本人尋問における供述をも総合すれば,原告プログラムが,全体として創作性の認められるプログラム著作物であることは,優にこれを認めることができる。
・・・
原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。したがって,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づいて被告プログラムの翻案の差止めを求める原告の請求は理由がない。
・・・
そこで,上記会費収入を前提として,原告が原告プログラムについての著作権の行使につき受けるべき金銭の額(使用料相当額)を算定するに,i)社団法人発明協会発行の「実施料率【第5版】」(甲24)に記載されたソフトウェアを含む「電子計算機・その他の電子応用装置」の技術分野における外国技術導入契約において定められた実施料率に関する統計データによれば,平成4年度から平成10年度までのイニシャル・ペイメント条件がない契約における実施料率の平均は33.2パーセントとされ,特にソ\フトウェアにおいて高率契約の割合が高いとされていること,ii)原告プログラムは,原告において,多大な時間と労力をかけて開発されたものであり,かつ,原告の業務の中核となる重要な知的財産であって,競業他社にその使用を許諾することは,通常考え難いものであること,iii)他方,証拠(乙13,被告A1)によれば,被告会社においては,その会員に対し,被告ソフトを公衆送信して使用させることのみならず,被告会社が野村総研から購入した株価や銘柄に関するデータに種々の処理を施したものを提供するサービスや会員に対して電子メールで種々のアドバイスを送信するメールサービスも行っていることから,会員から得られる会費の中には,これらのサービスに対する対価に相当する部分も含まれており,本来,上記会費収入の全額が実施料率算定の基礎となるものではないことといった事情のほか,原告ソ\フト及び被告ソフトの内容,被告らによる侵害行為の態様及びそれに至る経緯,原告と被告らとの関係など本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,被告らによる平成19年1月から平成22年8月までの著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,上記(ア)の会費収入合計額2045万1200円の約10パーセントに当たる200万円と認めるのが相当である(なお,被告らによる著作権侵害について,原告が受けるべき使用料相当額は,原告の原告ソフトの表\示画面に係る著作権侵害の主張が認められる場合でも,上記金額を超えるものとはいえない。)。

◆判決本文

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平成21(ワ)40387 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成22年12月27日 東京地方裁判所 

 デジタルチューナのみ搭載のHDDレコーダが著30条2項の私的録音録画補償金の支払いについて争われました。裁判所は対象になるとしつつも、法的な支払い義務がないとして、権利者側の請求を棄却しました。
 被告は,法30条2項の私的録音録画補償金制度の趣旨について,私的録音・録画が,従来のように「零細なもの」であれば補償金制度は不要であったのに,デジタル技術の発達普及等によって,「広範かつ大量,さらに高品質の複製」としてされ得る状況となりつつあったことが,著作権者等への代償措置として私的録音録画補償金制度が導入された主たる根拠であるとの前提に立った上で,デジタル放送においては,著作権保護技術によって複製を制限することが可能であり,現に,地上デジタル放送においては,平成16年4月5日からコピー・ワンス,さらに平成20年7月4日からダビング10による複製の制限が行われており,このような著作権保護技術の下では,広範かつ大量に高品質の複製は行われ得ないことになるのであるから,かかる著作権保護技術が導入されたデジタル放送のみを録画することが可能\な「アナログチューナー非搭載DVD録画機器」には,前記のような私的録音録画補償金制度の趣旨は妥当しないとし,この点を,アナログチューナー非搭載DVD録画機器が特定機器に含まれないことの根拠として主張する。しかしながら,被告の上記主張は,以下のとおり採用することができない。(a) まず,被告の上記主張が,著作権保護技術によって複製が制限された状況下における私的録音又は私的録画の場合には,およそ法30条2項の私的録音録画補償金制度の趣旨が妥当しないことを前提とするものであるとすれば,以下に述べるとおり,私的録音録画補償金制度が導入された平成4年法改正に係る経過に照らし,そのような前提自体が誤りといわざるを得ない。
・・・
以上のような平成4年法改正に係る経過からすれば,同改正においては,少なくともデジタル録音機器に関しては,既に著作権保護技術によって複製の制限が行われているという実態を踏まえ,これと両立する制度として私的録音録画補償金制度が導入されたものと認められる。したがって,著作権保護技術によって複製が制限された状況下における私的録音又は私的録画の場合には,およそ法30条2項の私的録音録画補償金制度の趣旨が妥当しないとはいえない。
 このように,法104条の5においては,特定機器の製造業者等において「しなければならない」ものとされる行為が,具的的に特定して規定されていないのであるから,同条の規定をもって,特定機器の製造業者等に対し,原告が主張するような具体的な行為(すなわち,特定機器の販売価格に私的録画補償金相当額を上乗せして出荷し,利用者から当該補償金を徴収して,原告に対し当該補償金相当額の金銭を納付すること(以下「上乗せ徴収・納付」という。))を行うべき法律上の義務を課したものと解することは困難というほかなく,法的強制力を伴わない抽象的な義務としての協力義務を課したものにすぎないと解するのが相当である。そして,このような解釈は,法104条の5の文言において,あえて「協力」という抽象的な文言を用いることとした立法者の意思にも適合するものといえる。すなわち,仮に立法者において原告が主張するように特定機器の販売価格に私的録画補償金相当額を上乗せして出荷し,利用者から当該補償金を徴収して,指定管理団体に対し,当該補償金相当額の金銭を納付することを特定機器の製造業者等に法律上義務づける意思があったのであれば,そのような具体的な作為義務の内容を特定して規定すれば足りたのであり,かつ,そのような規定とすることが立法技術上困難であるともいえないのに,そのような規定とすることなく,あえて「協力」という抽象的な文言を用いるにとどまったということは,特段の事情がない限り,立法者には,上記のような法律上の具体的な作為義務を課す意思がなかったことを示すものということができる。イ以上のとおり,法104条の5が規定する特定機器の製造業者等の協力義務は,原告が主張するような法律上の具体的な義務と解することはできないものというべきである。

◆判決本文

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