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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権その他

平成30(ネ)10023  著作権侵害差止等本訴請求,損害賠償反訴請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年8月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ドキュメンタリー映画中に、ニュース動画を用いたことが引用に当たるかが争われました。知財高裁は引用には該当しないとした1審判断を維持しました。
 控訴人は,本件映画において,本件使用部分においても,エンドクレジ ットにおいても何ら出所表示をすることなく本件各映像を利用したことが「公正な慣行」に合致しないとして引用の抗弁(著作権法32条1項)を\n認めなかった原判決の認定判断に誤りがあると主張する。 よって検討するに,本件映画において,被控訴人が報道用として編集管 理する本件各映像がその著作権者である被控訴人の名称を全く表示することなく,無許諾で複製して使用されている事実は当事者間に争いがないと\nころ,もともと出所の明示は引用者に課された著作権法上の義務(著作権 法48条1項1号)である上に,本件の場合,本件映画中の控訴人製作部 分と本件使用部分とは,原判決が指摘するとおり,画面比や画質の点にお いて一応区別がされているとみる余地もあり得るとはいえ,映画の中で, これらの部分が明瞭に区別されているわけではなく,その区別性は弱いも のであるといわざるを得ないから,本件使用部分が引用であることを明ら かにするという意味でも,その出所を明示する必要性は高いものというべ きである。また,本件のようなドキュメンタリー映画の場合,その素材と して何が用いられているのか(その正確性や客観性の程度はどのようなも のであるか)は,映画の質を左右する重要な要素であるといえるから,こ の観点からしても,素材が引用である場合には,その出所を明示する必要 性が高いものと考えられる。他方,本件においては,引用する側(本件映 画)も引用される側(本件各映像)も共に視覚によって認識可能な映像であって,字幕表\示等によって出所を明示することは十分可能\であり,かつ,そのことによって引用する側(本件映画)の表現としての価値を特に損なうものとは認められない。これらのことに,原判決が指摘する「公正な使\n用(フェア・ユース)の最善の運用(ベスト・プラクティス)についての ドキュメンタリー映画作家の声明」(乙17)の内容等を併せ考えると, 適法引用として認められるための要件という観点からも,本件映画におい て本件各映像を引用して利用する場合には,その出所を明示すべきであっ たといえ,出所を明示することが公正な慣行に合致し,あるいは,条理に 適うものといえる。そして,このことは,本件映画の総再生時間が2時間 を超えるのに対し,本件各映像を使用する部分(本件使用部分)が合計3 4秒にとどまるといった事情や,本件各映像が番組として編集される前の 映像であるといった事情によっては左右されない。 したがって,控訴人が何ら出所を明示することなく被控訴人が著作権を 有する本件各映像を本件映画に引用して利用したことについては,(単に 著作権法48条1項1号違反になるというにとどまらず)その方法や態様 において「公正な慣行」に合致しないとみるのが相当であり,かかる引用 は著作権法32条1項が規定する適法な引用には当たらない。よって,こ れと同旨をいう原判決の認定判断に誤りがあるとは認められない。 イ これに対し,控訴人は,1)「公正な慣行」の立証責任を利用者の側に負 わせるべきではない,2)本件における引用の抗弁の成否に関しては,被控 訴人が本件各映像の利用を許諾しなかった理由(不許諾理由)こそが考慮 されてしかるべきである,3)エンドクレジットへの掲載は賛辞を意味する という「公正な慣行」が存在するため,控訴人としては,許諾申請が拒否された以上,被控訴人の許諾があったかのような記載を避ける必要があっ\nた,4)そもそも出所を明示していないことを理由に引用の抗弁を退けるこ と自体が誤りである,などと主張する。 しかしながら,次のとおり,上記各主張はいずれも採用できない。 上記1)について,著作権法32条1項は,飽くまで著作権行使の制限規 定である以上,その適用については,基本的に適用を主張する側が要件充 足の主張立証責任を負うものと解するのが相当である

◆判決本文

原審は以下のように判断しました。

◆平成28(ワ)37339
(3) 本件映画と本件各映像(本件使用部分)との関係についてこれをみると,本 件映画は,資料映像・資料写真とインタビューとから構成されるドキュメンタリー映画であり,その中で資料映像として使用されている本件各映像は,テレビ局であ\nる原告の従業員が職務上撮影した報道映像である。 そして,本件映画のプロローグ部分のうち,被告制作部分は,画面比が16:9 の高画質なデジタルビデオ映像であり,他方,本件使用部分は,画面比が4:3で あり,被告制作部分に比して画質の点で劣っているから,被告制作部分と本件使用 部分とは,一応区別されているとみる余地もある。
しかし,本件映画には,本件使用部分においても,エンドクレジットにおいても, 本件各映像の著作権者である原告の名称は表示されていない。被告は,上記のとおり本件映画において原告の名称を表\示しない理由について,映像の出所は劇場用映画などからの引用の場合以外は表記しないとか,資料写真の出所は写真家の名前を伝える必要がある場合に限って表\記するなど,制作上の方針を主張するにとどまり,本件映画のようなドキュメンタリー映画の資料映像として 報道用映像を使用するに際し,当該使用部分においても,映画のエンドクレジット においても著作権者の名称を表示しないことが,「公正な慣行」に合致することを認めるに足りる社会的事実関係を何ら具体的に主張,立証しない。被告が提出する\n乙第17号証は,「公正な使用(フェア・ユース)の最善の運用(ベスト・プラク ティス)についてのドキュメンタリー映画作家の声明」であり,フェアユースに関 する規定を有する米国著作権法を念頭に置いたものであるが,同声明においても, 「歴史的シークエンスにおける著作物の利用」に関し,「この種の利用が公正であ るという主張を支持するためには,ドキュメンタリー作家は以下の点を示すことが できねばならない。」として,「素材の著作権者が適切に明確化されている。」と されており,何らかの方法により素材の著作権者を明確化することを求めているの である。
実質的にみても,資料映像・資料写真を用いたドキュメンタリー映画において, 使用される資料映像・資料写真自体の質は,資料の選択や映画全体の構成等と相俟って,当該ドキュメンタリー映画自体の価値を左右する重要な要素というべきであ\nるし,テレビ局その他の報道事業者にとって,事件映像等の報道映像は,その編集 や報道手法とともに,報道の質を左右する重要な要素であり,著作権法上も相応に 価値が認められてしかるべきものであるから(著作権法10条2項が,報道映像に つき著作物性を否定する趣旨でないことは,その規定上明らかである。),ドキュ メンタリー映画において資料映像を使用する場合に,そのエンドクレジットにすら 映像の著作権者を表示しないことが,公正な慣行として承認されているとは認め難いというべきである。\nそうすると,総再生時間が2時間を超える本件映画において,本件各映像を使用 する部分(本件使用部分)が合計34秒にとどまることを考慮してもなお,本件映 画における本件各映像の利用は,「公正な慣行」に合致して行われたものとは認め られない。 したがって,著作権の行使に対する引用(著作権法32条1項)の抗弁は成立し ない。

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平成28(ワ)32742  著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月19日  東京地方裁判所(47部)

 いろいろ争点はありますが、写真について、著作物性が否定されました。ただ、文章について複製権・翻案権侵害が認められました。損害額は、販売不可事情を考慮して、114条1項(原告単価利益*被告販売数)の7割と認定されました。
 制作工程写真は,別紙「制作工程写真目録」記載のとおり,故一竹によ る「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影したものであるところ,これら 制作工程写真の目的は,その性質上,いずれも制作工程の一場面を忠実に 撮影することにあり,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光\n線との関係等といった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとな\nらざるを得ず,誰が撮影しても同じように撮影されるべきものであって, 撮影者の個性が表れないものというべきである。したがって,制作工程写\n真は,いずれも著作物とは認められない。これに反する原告らの主張は採 用できない。
イ 美術館写真について
美術館写真は,別紙「美術館写真目録」記載のとおり,一竹美術館の外 観又は内部を撮影したものであるところ,これら美術館写真の目的は,そ の性質上,いずれも一竹美術館の外観又は内部を忠実に撮影することにあ り,そのため,被写体の選択,構図の設定,被写体と光線との関係等とい\nった写真の表現上の諸要素はいずれも限られたものとならざるを得ず,誰\nが撮影しても同じように撮影されるべきものであって,撮影者の個性が表\nれないものである。したがって,美術館写真は,いずれも著作物とは認め られない。これに反する原告らの主張は採用できない。
(2) 制作工程文章の著作物性について
制作工程文章は,別紙「制作工程文章目録」記載のとおり,「辻が花染」 の各制作工程を説明したものである。その目的は,各制作工程を説明するこ とにあるため,表現上一定の制約はあるものの,制作工程文章が,同様に「辻\nが花染」の制作工程について説明した故一竹作成の文章(甲41)とも異な っていることに照らしても,各制作工程文章の具体的表現は,その作成者の\n経験を踏まえた独自のものとなっており,作成者の個性が表現されていると\nいえるから,制作工程文章は全体として創作性があり,著作物と認められる。 これに反する被告の主張は採用できない。
(3) 旧HPコンテンツの著作物性について
旧HPコンテンツは,別紙「旧HPコンテンツ目録」記載のとおりであり, 旧HPコンテンツ1は「辻が花染」の歴史的説明,旧HPコンテンツ2は故 一竹と「辻が花染」との関わり,旧HPコンテンツ3はフランス芸術文化勲 章シュヴァリエ章勲章メッセージの和訳,旧HPコンテンツ4はスミソニア\nン国立自然史博物館からの感謝状の和訳である。旧HPコンテンツ1及び2 はいずれも歴史的事実に関する記述ではあるものの,その事実の取捨選択, 表現の仕方には様々なものがあり得,その具体的表\現には筆者の個性が表れ\nているといえるから,創作性があり,著作物と認められる。また,旧HPコ ンテンツ3及び4はいずれも仏語ないし英語の翻訳であるが,翻訳の表現に\nは幅があり,用語の選択や訳し方等その具体的表現に翻訳者の個性が表\れて いるといえるから,創作性があり,著作物と認められる。これに反する被告 の主張は採用できない。
複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再 製することをいうところ(著作権法2条1項15号参照),著作物の複製と は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現\nに修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が\n既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作\n成する行為をいうものと解すべきである。また,翻案とは,既存の著作物に 依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表\ 現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現する\nことにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接\n感得することができる別の著作物を創作する行為をいうものと解すべきであ る(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷 判決・民集55巻4号837頁参照)。 被告作品集130−131頁(甲9)と制作工程文章を別紙「原被告作品 対比表」記載1のとおり比較対照すると,被告作品集130−131頁の制\n作工程に関する各文章は,制作工程文章1ないし7及び9の各文章と全く同 一か,又はほとんど同一であり,一部改変され,相違点はあるものの,全体 として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。\nよって,被告は被告作品集130−131頁において制作工程文章1ないし 7及び9を複製ないし翻案したものと認められ,複製権ないし翻案権を侵害 する。そして,上記改変は著作者の意に反する改変といえるから,同一性保 持権を侵害する。 これに対して,被告は,両各文章は創作性のない部分について同一性を有 するにすぎず,複製にも翻案にも当たらないと主張するが,上記のとおり, 制作工程文章の創作的部分において同一性が認められるから,被告の主張は 採用できない。
原告らは,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集の利益額 に基づき114条1項の適用があると主張するのに対し,被告はこれを争 うため,以下検討する。
(ア) 原告作品集の販売主体及び原告らの販売能力
原告作品集の奥付には「(C)1998 (株)一竹辻が花」と記載され,原告作 品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて販売されていることが認 められる(甲8,29)ところ,訴外一竹辻が花(昭和59年5月8日 に「株式会社オピューレンス」から商号変更)は平成22年まで原告A が代表者を務めていた会社であり(甲50の1及び2),原告工房も含\nめて実質的には原告Aらの経営によるものと認められ,その販売主体は 実質的には原告らとみることができる。また,原告作品集の制作には, 故一竹を引き継いで「辻が花染」を制作する原告Aの関与が大きいもの と考えられることも併せ考慮すれば,原告らには原告作品集の販売能力\nがあると認められる。 これに対し,被告は,そもそも原告らが原告作品集を販売しておらず, 販売能力がないから,被告作品集への114条1項の適用の基礎を欠く\nと主張するが,上記説示に照らして採用できない(なお,被告は,原告 作品集の奥付に「制作(株)便利堂」と記載されていること(甲8)も 指摘するが,この点は販売能力とは関係がない。)。
(イ) 原告作品集と被告作品集の代替性
原告作品集と被告作品集は,その大部分において,着物作品(部分を 含む。)を1頁に大きく配置して紹介するとともに,観賞の対象とする ものであり,そのほかの部分においても,故一竹の略歴,制作工程の説 明,美術館の紹介が記載されており,内容は類似するものと認められる (甲9,51)。また,上記内容の共通性に照らして,着物作品の観賞 を主としつつ,故一竹と「辻が花染」について理解を深めるという利用 目的・利用態様も基本的には同一であると認められる。そうすると,後 記のとおり,販売ルートの違いはあるものの,両作品集には代替性が認 められる。被告は,内容,利用目的・利用態様及び販売ルートの相違か ら,原告作品集と被告作品集には代替性がないと主張するが,上記説示 に照らして採用できない。
(ウ) 以上からすれば,被告作品集の販売に係る損害額について原告作品集 の利益額に基づき著作権法114条1項の適用があるというべきである。
イ 原告らが販売することができないとする事情(推定覆滅事情)
被告は,販売市場の相違,被告の営業努力,被告作品集の顧客吸引力に より,被告作品集の譲渡数量の全数について販売することができないとす る事情があると主張する。 そこで検討するに,原告作品集は訴外一竹辻が花のウェブサイトにおい てインターネット上で販売されている(甲29)のに対し,被告作品集は 一竹美術館のショップ内で販売されており(前記前提事実(4)ア),顧客層 に一定の違いがあると考えられること,また,被告作品集は,美術館のシ ョップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されているこ とにより,販売態様の異なる原告作品集とは顧客誘引力に違いがあると考 えられること,以上の事情を踏まえると,被告作品集の30%については, 原告らが販売することができないとする事情があったと認めるのが相当で ある。

◆判決本文

問題となった著作物は以下です。

◆別紙1

◆別紙2

◆別紙3

◆別紙4

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平成29(ワ)39658  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年6月7日  東京地方裁判所

 イラストについて公衆送信権侵害の損害額として30万円が認められました。ただ、侵害と指摘されても、そのタイミングで通常のライセンス料を払えばすむなら、誰も最初からまじめに契約しようとは考えないですよね。損害賠償が得べかりし利益の補償という考え方は分かりますが、著作権侵害が故意の場合には、懲罰的賠償を可能とするとかできないんでしょうか。
 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,1)原告は,平成29年6月頃,ウェ ブサイト上に掲載する漫画の制作依頼を受けたところ,この依頼において, 掲載期間を1年間(2年目以降も掲載する場合には契約更新を行う。)とし, 原稿料は,漫画本編は1頁当たり2万円,カラー扉絵は4万円との条件を示 されたこと(甲12),2)原告は,平成28年頃,書籍の表紙用のカラーイラ\nスト(スーツを着て,ペンとメモ帳を持った女性のイラスト)及び当該書籍 中の扉絵4点を制作したところ,原稿料は,表紙のイラストについて3万円,\n扉絵について3000円であったこと(甲14の1・2),3)原告は,平成2 9年の年賀状用のカラーイラスト(餅と鳥を組み合わせたイラスト)を制作 したところ,原稿料は2万4000円であったこと(甲15の1・2),以上 の事実が認められる。 これらの事実に加え,本件各イラストの内容(前提事実 ),本件サイトは インターネットメディア事業を行うことなどを目的とする被告が運営し,そ の閲覧数に応じて被告が収入を得るものであること(弁論の全趣旨),その 他本件における諸事情を総合すると,本件各イラストの使用に対し受けるべ き金額は1年当たり3万円とするのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告が本件サイト上に本件各イラストを 掲載していた期間は,平成26年7月31日から平成29年6月8日までで あると認められるから,原告が,本件各イラストの使用に対し受けるべき金 銭の額は合計27万円(1年当たりの使用料3万円×3点×3年分)となる。 イ これに対し,原告は,原告が制作するイラストの使用料は1年当たり10 万円を下らないと主張し,原告本人の陳述書中にも同旨の記載がある(甲1) が,上記アの認定事実に照らし,原告の主張は採用することはできない。
ウ 他方,被告は,ツイッターのサービス利用規約上,ツイート自体を埋め 込む方法によって他のウェブサイトに掲載することが認められている点 を損害額の算定において考慮すべきであると主張するが,被告の主張を前 提としても,本件における被告の掲載行為が適法となる余地はなく,上記 に述べた本件サイトの性質等に照らしても,被告の上記主張は採用するこ とができない。 また,被告は,本件各イラストが掲載されていた本件サイトのPV数は 公開後約2か月間に集中しており,その後はほとんど閲覧されていないか ら,掲載期間全部を損害額算定の根拠することは不当であると主張する。 しかしながら,本件において原告が受けるべき金員の額は,被告による本 件各イラストの掲載行為の内容等を踏まえて算定すべきであるから,被告 の上記主張は採用することができない。
さらに,被告は,原告が本件訴訟提起前に被告に対し本件各イラストの 著作権侵害による損害賠償金として9万円(1点3万円×3点)を請求し ていたこと,上記ア1)について,漫画の原稿料にはストーリー制作作業に 対する対価も含まれると考えられること,同2)について,書籍の表紙とな\nるイラストと本件各イラストでは完成度が異なることから,いずれも本件 各イラストの使用料相当額の算定資料としては適切ではなく,むしろ,本 件各イラストの性質上,同2)の書籍の扉絵の原稿料(1点3000円)が 算定資料になり得る事例であり,本件各イラストは3点(描かれた場面の 数は合計14枚)であり,構図も3種類程度しかないこと等を踏まえると,\n本件各イラストの使用料は高くても1回2〜3万円程度であると主張す る。
しかしながら,本件訴訟提訴前に一定の金額を提示したとしてもその金 額が直ちに本件各イラストの使用料相当額であるとはいえない。また,本 件各イラストにおいては,複数の場面が多色カラーで描かれ,各場面に合 わせた説明文も記載されており,これらの場面設定や説明文についても原 告が創作していることを踏まえると,本件各イラストの使用料相当額が, 漫画や書籍の表紙の原稿料と比べて低額になるとはいえず,被告の主張は\n採用することができない。被告は,被告が本件各イラストの掲載によって得た利益は2500円程度に過ぎないとも主張するが,本件サイトの性質等を踏まえても,上記ア で認定した本件各イラストの使用に対し受けるべき金銭の額が不相当で あるとはいえない。

◆判決本文

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平成28(ネ)10101  発信者情報開示請求控訴事件  著作権  民事訴訟 平成30年4月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 発信者情報開示事件です。1審では、リツイートはインラインリンクであるので、著作権侵害に該当しないと判断され、請求は棄却されました。知財高裁(2部)は、著作者人格権侵害があったとして、一部の発信者情報について開示を認めました。
 前記(1)のとおり,本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている\n画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,\n表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラム や CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり 画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えら れているものではない。 しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表\現したものであって,文 芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう 著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プロ グラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件ア カウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5のよ\nうな画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変された もので,同一性保持権が侵害されているということができる。 この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は, インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為 の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により位置や大きさ などが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件 リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザ ーを改変の主体と評価することはできない(著作権法47条の8は,電子計算機に おける著作物の利用に伴う複製に関する規定であって,同規定によってこの判断が 左右されることはない。)。
また,被控訴人らは,本件アカウント3〜5のタイム ラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(1)の画像と同じ画像であるから, 改変を行ったのは,本件アカウント2の保有者であると主張するが,本件アカウン ト3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は,控訴人の著作物である本\n件写真と比較して改変されたものであって,上記のとおり本件リツイート者らによ って改変されたと評価することができるから,本件リツイート者らによって同一性 保持権が侵害されたということができる。さらに,被控訴人らは,著作権法20条 4項の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は,本件 アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイートが行 われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむを得 ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害
本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人\nの氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際して HTML プ ログラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件 アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5の\nような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控\n訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆 への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができ\nる。
・・・
(7) 「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び 「発信者」(同法2条4号について
前記(5)ア,イのとおり,本件リツイート行為は,控訴人の著作者人格権を侵害す る行為であるところ,前記(5)ア,イ認定の侵害態様に照らすと,この場合には,本 件写真の画像データのみならず,HTML プログラムや CSS プログラム等のデータを 含めて,プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ,本件リツイー ト行為は,その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかであ る。そして,この場合の「発信者」は,本件リツイート者らであるということがで きる。

◆判決本文

一審はこちらです。

◆平成27(ワ)17928

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平成29(ワ)29099  損害賠償等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年4月26日  東京地方裁判所(46部)

 法人格なき社団である「・・高等学校応援団山紫会」を著作権の譲受人として、差止および損害賠償が認められました。著作権法では、社団・財団も「法人」に含まれるとされています(2条6項)。
 上記1のとおり,本件写真の撮影者はAであるから,Aが本件写真の著作者であり,著作権者であったと認められる。そして,証拠(甲3の1,甲4)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成29年4月19日,Aから本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(同日までに発生した請求権)を譲り受けたと認められる。

◆判決本文

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平成27(ワ)21897等  著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月28日  東京地方裁判所

 データが入れられる前のデータベースシステムは、著作権法で保護されるデータベースではないと判断されました。
 原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に 創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる べき旨主張する。 原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事 業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著 作権法2条1項10号の3)とは認められない。 原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉 え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の 主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情 報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって, 辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。 したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に 当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ ベースの著作物ということはできない。

◆判決本文

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平成29(ワ)25465  著作者人格権確認等請求事件  著作権  民事訴訟 平成30年3月26日  東京地方裁判所

 「かっぱえびせん」の「やめられない,とまらない」のキャッチフレーズを考えたのは自分であるとの確認を求めましたが、訴えの利益がないとして却下されました。
 原告は,本件訴えにおいて,原告が本件CMを制作した事実の確認を求めている。 しかし,確認の訴えは,原則として,現在の権利又は法律関係の存在又は不存在 の確認を求める限りにおいて許容され,特定の事実の確認を求める訴えは,民訴法 134条のような別段の定めがある場合を除き,確認の対象としての適格を欠くも のとして,不適法になるものと解される(最高裁昭和29年(オ)第772号同3 6年5月2日第三小法廷判決・集民51号1頁,最高裁昭和37年(オ)第618 号同39年3月24日第三小法廷判決・集民72号597頁等参照)。 したがって,本件訴えのうち,原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴 えは不適法である。 なお,事案に鑑み付言するに,仮に,原告が,本件CMを制作した事実ではなく, 原告が本件CMにつき著作権ないし著作者人格権を有することの確認を求めたとし ても,確認の訴えは,現に,原告の有する権利又はその法律上の地位に危険又は不 安が存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切で ある場合に,その確認の利益が認められるところ(最高裁昭和27年(オ)第68 3号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁参照),前 記前提事実(第2,2),証拠(甲18ないし20,23ないし25,19,乙1, 2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,アストロミュージックから許諾を受けて 本件キャッチフレーズを使用しているにとどまり,本件CMについて被告が著作権 ないし著作者人格権を有するなどとは主張していないから,原告が有する権利又は 法律上の地位に存する危険又は不安を除去するために,本件CMの著作権ないし著 作者人格権の存否につき被告との間で確認判決を得ることが必要かつ適切であると は認め難く,結局,確認の利益を欠くものとして不適法というほかない。
2 争点3(被告は,原告に対し,原告が本件キャッチフレーズを考えた本人で あるとの事実を被告の社内報に掲載する旨を約したか)について
原告は,被告が原告に対し,原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であると の事実を被告の社内報に掲載する旨を約したと主張し,同事実を被告の社内報に掲 載するよう請求するところ,同主張は,原告と被告との間で,被告が同掲載義務を 負うことを内容とする契約が成立した旨を主張するものと解される。 そこで検討するに,原告と被告代表者が平成23年6月頃面会したこと,その後\n程なくして,原告と被告の宣伝課長が面会し,原告の写真を撮影したことは,当事 者間に争いがない。 しかし,原告本人尋問の結果によっても,原告と被告の宣伝課長との面会の場に おいては,被告の社内報に,誰がどのような内容の記事を作成し,いつまでに掲載 するのかなど,記事の掲載をどのように実現させていくかについては,何ら明確に 合意しなかったというのである。そうすると,仮に,原告本人が供述する事実関係 が認められたとしても,それのみをもっては,被告が行うべき給付義務の内容が具 体的に定まっていたとはいえず,原告と被告との間に,法的拘束力を有する契約と して,被告に履行を強制し得るまでの合意があったと評価することは困難である。 また,原告本人尋問の結果によっても,被告のホームページへの掲載が話題とな った形跡はおよそうかがえないから,原告と被告との間に,この点に関する契約が あったとみる余地はない。 したがって,被告の社内報及びホームページに,原告が本件キャッチフレーズを 考えた本人であるとの事実を掲載することを求める原告の請求には理由がない。

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平成27(ワ)21897等  著作権侵害行為差止等請求事件,損害賠償請求反訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年3月28日  東京地方裁判所

 データが蓄積される前のプログラムについては、データベースの著作物とは認められませんでした。
 原告は,原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserv er」は,1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており,データベ ースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構\成している点に 創作性が認められ,2)個々の辞書が,それ単独でも,体系的構成及び情報の選択に\nおいて創作性が認められるから,それ自体が,データベースの著作物と認められる べき旨主張する。 原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事 業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデ\nータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることに\nよりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,この\nような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアであ\nる「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著 作権法2条1項10号の3)とは認められない。 原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉 え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の 主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情 報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって, 辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができる ように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは\n困難である。 したがって,「eBASEserver」は,著作権法上の「データベース」に 当たるものとは認められないから,その創作性につき検討するまでもなく,データ ベースの著作物ということはできない。

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平成29(ネ)233等  損害賠償 著作権使用料請求控訴事件,同附帯控訴事件  著作権  民事訴訟  平成29年12月28日  大阪高等裁判所(8部)

 コンサートの企画運営会社に対して、損害賠償が認められました。被告は実はゴーストライターがいたというS氏です。請求原因は、全ろうの作曲者といううたい文句が虚偽だったというものです。 控訴審では、損害賠償額は、1審よりも、減額されました。理由は、「実施していれば通常得られたであろう利益であれば,不法行為に基づく損害賠償における損害として請求することができる」というものです。
 被控訴人は,この損害項目について,中止された本件公演を実施して いれば被控訴人が得られたであろう利益であるとの趣旨の主張をするが, それは,契約上の履行利益の賠償を求めるものであるから,控訴人が主 張するとおり,不法行為による損害賠償における損害としては請求する ことができない。しかし,同じ逸失利益であっても,前記のとおり,被 控訴人が同時期に他の公演を企画・実施していれば通常得られたであろ う利益であれば,不法行為に基づく損害賠償における損害として請求す ることができると解され,被控訴人の主張はこの趣旨を含むものと解さ れる。
・・・・
以上のとおりであるが,被控訴人が,実施された本件公演から算定し たと主張する,中止した公演の公演利益(4か月分の逸失利益)が42 84万0846円であることからすると,被控訴人の平成21年9月か ら平成24年8月までの間の各年度の4か月分の公演利益と同程度以下 であるということができる(後述するとおり,当裁判所の算定結果に よっても,中止した公演の公演利益は3003万4702円に過ぎな い。)。したがって,中止された本件公演を実施していれば得られたで あろう公演利益をもって,被控訴人が同時期に他の公演を企画・実施し ていれば通常得られる利益として損害を算定することとする。

◆判決本文

◆1審はこちらです。 平成26(ワ)9552等

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