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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

著作権その他

令和2(ワ)1667  著作権侵害損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年10月23日  東京地方裁判所

 訴外Bからサーバの運営権を購入した会社に対して、カメラマンが写真の著作物の著作権侵害を理由に114万円の損害賠償を求めました。裁判所は、過失は認めたものの、ライセンス料の算定基準に根拠がないとして、14万円の損害賠償を認めました。

 証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,本件サイトには本件各写真を含 め多数の写真が掲載されており,これらの写真は,「写真の著作物」(著作権 法10条1項8号)又はそれに該当し得るものであったと認めることができ る。そして,被告は,本件各写真を含めた写真をインターネット上で公開す る以上,その著作権又は著作者人格権を侵害していないことについて調査, 確認する義務があったといえる。ところが被告は,本件各写真が著作権,著 作者人格権を侵害していないかについて調査,確認をせずに本件各写真をイ ンターネット上に公開して公衆送信等しており,被告には,少なくとも過失 があったといえる。
(2) 被告は,本件サイト売買を行ったウェブサイトには,「買い手は基本的に 著作権に触れているかどうか把握することは難しい」,「一般的には損害賠償 請求等は,サイトを売った人と著作権違反の警告を出した人の間で行われる」 との記載があり,サイト売買の通例では買い手である被告には損害賠償の支 払義務がなく,また,被告が本件サイトを購入した平成28年2月1日時点 で,掲載されている画像は3万8000点以上にも及び,これらの著作権の 有無を確認するのは実質的に不可能であり,被告には調査義務はないと主張\nする。 しかし,他人の写真を利用する場合にはその著作権又は著作者人格権を侵 害する可能性があるから,被告は,本件各写真を公衆送信等する以上,前記\nの調査,確認をする義務があったといえる。被告が指摘する記載等がウェブ サイトにあったことや本件サイトに多数の写真が掲載されていたことなど被 告が指摘する事情によってこのことは左右されず,被告の上記主張は採用す ることはできない。なお,被告が本件サイト売買を行ったウェブサイトには, 「サイト購入時,著作権には注意すること」,「サイトを購入する時あるいは 売却する時もそうですが,著作権が問題となってトラブルになることがあり ます。使用されている文章や画像,イラスト,アイディアが他の人のマネを していることがあります。」などと記載され(乙1),サイト売買の対象とな るウェブサイトには著作権法上の問題があるものが含まれ得ることが明記さ れていた。
3 争点(5)(損害額)について
(1) 公衆送信権侵害について
ア 証拠(甲7)によれば,協同組合日本写真家ユニオン作成の使用料規程 である本件規程は,同組合が管理の委託を受けた写真の著作物の利用にか かわる使用料を定めるものであり,一般利用目的(宣伝広告を目的とせず, 記事と共に,事柄を説明するために写真の著作物を利用する場合)でウェ ブページの最初のページ以降のページに写真を掲載する使用料は,12か 月以内で2万5000円,1年を超える場合の次年度以降の使用料は1年 当たり1万円とされている。 原告は結婚式における写真撮影を業とするカメラマンであり,本件各写 真は,原告が,依頼を受けて結婚式場において撮影したものであり(前記 前提事実(1)ア,同(2)),カメラマンである原告が業務により作成したもの といえる。そうすると,原告が本件各写真の著作権の行使につき受けるべ き金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)の算定に当たっては, 本件規程の内容を参酌するのが相当である。そして,本件規程の内容に加 えて,被告が遅くとも平成30年12月5日頃までには本件各写真の原告 の公衆送信権(著作権法23条1項)を侵害したこと,本件各写真は令和 2年2月17日に本件各ページから削除されたことその他の本件各写真の 使用態様等に鑑みれば,原告が本件各写真の公衆送信につき受けるべき金 銭の額(著作権法114条3項)は,本件各写真1枚当たり4万円と認め るのが相当である。
イ この点について,原告は,1)撮影した写真1枚当たり8万円で売却して おり(甲6),本件のような長期間の無断使用はその4倍が相当であるこ と,2)本件規程の商用広告目的の写真の使用料が12か月以内で5万円で あることを考慮して損害額を算定すべきであるなどと主張する。 しかしながら,「ご請求書」と題する甲6号証には,「広告写真使用料」 として8万円と記載されているが,当該写真がどのような写真か明らかで はない上に,この1件の利用許諾例の外に原告の写真の使用料を裏付ける 証拠は見当たらないことなどからすれば,本件各写真の使用料が1枚当た り8万円であると認めることはできず,他に原告の上記1)の主張を認める に足りる証拠はない。
また,本件規程の「商用広告目的」とは,「写真に写された物品等を宣 伝するために広告として利用する場合」をいうとされている(本件規程の 第3条)ところ,本件各写真は,結婚式に関係する文章が記載されるなど した本件各ページに掲載されたものであり(前記前提事実 ア,イ),い ずれも本件各写真に写された物品等を宣伝するために広告として本件各ペ ージに掲載されたものとはいえず,本件各写真の使用は,上記「商用広告 目的」には当たらず,原告の上記2)の主張も採用することはできない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用することはできない。

◆判決本文

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令和2(ネ)10018  損害賠償請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和2年10月6日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 著作権侵害の損害額についてPV数に基づく損害を9割控除した点について、1審原告が不服をとして控訴していました。知財高裁は、1審の判断を維持しました。

 一審原告の主張は,原判決が法114条1項ただし書に基づき,本件各漫 画のPV数に本件各同人誌の利益額を乗じた額から9割を控除したことにつ いて,原判決の認定判断の不当を種々の観点からいうものである。 しかしながら,一審原告の主張は採用することができない。その理由は, 次のとおりである。
ア 公衆送信行為による著作権侵害の事案において,法114条1項本文に 基づく損害額の推定は,「受信複製物」の数量に,単位数量当たりの利益 の額を乗じて行うものとされている。そして,本件のように,著作権侵害 行為を組成する公衆送信がインターネット経由でなされた事案の場合, 「受信複製物の数量」とは,公衆送信が公衆によって受信されることによ り作成された複製物の数量を意味するのであるから(法114条1項本 文),単に公衆送信された電磁データを受信者が閲覧した数量ではなく, ダウンロードして作成された複製物の数量を意味するものと解される。と ころが,本件においては,公衆が閲覧した数量であるPV数しか認定する ことができないのであるから,法114条1項本文にいう「受信複製物の 数量」は,上記PV数よりも一定程度少ないと考えなければならない。 また,本件において,一審被告会社は,本件各ウェブサイトに本件各漫 画の複製物をアップロードし,無料でこれを閲覧させていたのに対し,一 審原告は,有体物である本件各同人誌(書籍)を有料で販売していたもの であり,一審被告会社の行為と一審原告の行為との間には,本件各漫画を 無料で閲覧させるか,有料で購入させるかという点において決定的な違い がある。そして,無料であれば閲覧するが,書籍を購入してまで本件各漫 画を閲覧しようとは考えないという需要者が多数存在するであろうことは 容易に推認し得るところである(原判決27頁において認定されていると おり,本件各同人誌の販売総数は,本件各ウェブサイトにおけるPV数の 約9分の1程度にとどまっているが,これも,本件各漫画の顧客がウェブ サイトに奪われていることを示すというよりは,無料であれば閲覧するが, 有料であれば閲覧しないという需要者が非常に多いことを裏付けていると 評価すべきである。)。
イ そうすると,本件各漫画をダウンロードして作成された複製物の数(法 114条1項の計算の前提となる数量)は,PV数よりも相当程度少ない ものと予想される上に,ダウンロードして作成された複製物の数の中にも,\n一審原告が販売することができなかったと認められる数量(法114条1 項ただし書に相当する数量)が相当程度含まれることになるのであるから, これらの事情を総合考慮した上,法114条1項の適用対象となる複製物 の数量は,PV数の1割にとどまるとした原判決の判断は相当である。こ の点につき,一審原告は種々主張しているが,上記の点に照らし,その主 張を採用することはできない。
(2) 一審被告らの主張は,法114条1項に基づく損害額の認定を行うこと自 体の不当をいうものであるが,PV数と受信複製物数の違いを念頭に置いた 上で,更に一審原告が販売できないとする事情を考慮して損害額算定の基礎 となる数量を算定し,これに一審原告の利益額を乗じる手法が不合理である とすべき事情は見当たらないから,法114条1項に基づく損害額の認定は 相当であり,「損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事 実の性質上極めて困難であるとき」として法114条の5を適用する必要は ない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成30(ワ)39343

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平成30(ワ)39343  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年2月14日  東京地方裁判所

 著作権侵害において、公衆送信された数量に,原告の単位数量あたりの利益額を乗じた額を求め,これに販売不可事情を考慮して,数量(9割)を控除した額が損害として認められました。

 被告会社の運営する本件各ウェブサイトは,本件各漫画のような同人誌に 限らず,アニメ,ゲーム,小説など多様なジャンルの作品を掲載し,甲9の 1に「1万冊以上全部無料で読めちゃう」と記載されているように,多量の 作品を無料で閲覧し得ることを特徴とするサイトであると認められる(甲9, 42)。このため,本件各漫画のような同人誌の愛好者にとどまらず,多数 の者が同サイトを訪問し,その際に,購入する意図なく掲載作品を閲覧する ことも少なくないものと推測される。
他方,本件各漫画は,その内容等にも照らし,その需要者の範囲は限定さ れている上,その販売形態は即売会による販売と同人誌の通信販売を手がけ る出版社による委託販売によるものであり,即売会による販売が全体の約3 分の1を占める(甲56)。また,その販売数は,作品の発売後数か月間の 販売数が多く,その後の月間販売数は急激に減少するという傾向が看取され, 一定数の販売が継続するものではない(甲52〜55)。 そして,本件各漫画のPV数と同各漫画の販売実績(甲56)を比較する と,本件各漫画のPV数の合計が11万7318(上記認定に係る1冊分の PV数の合計は7万6738)であるのに対し,本件各漫画の販売総数は8 513冊であり,1冊分のPV数をとってみても,その販売総数はPV数の 約9分の1程度であると認められる。 以上のとおり,本件各ウェブサイトによる閲覧と原告による本件各漫画の 販売とでは,その需要者の範囲,閲覧又は販売する作品の数及び種類等が大 きく異なるほか,本件各漫画は販売直後に多くが販売される傾向にあること や,本件各ウェブサイトは無料で閲覧を可能にするものであり,作品を購入\nする意図なくその内容を閲覧する需要者は少なくないものと考えられ,実際 のところ,同一の漫画についてPV数と販売実績には大きな差があることな どに照らすと,本件各漫画のPV数のうち,原告が販売し得たと認め得る数 量は,その1割であると認めるのが相当である。 638/089638

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令和1(ワ)231 損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年1月31日  東京地方裁判所

 動画サイトにてストリーミング配信された動画データについて、再生数カウンタの数はどのような方法で計測したものか不明であることなどから、40万円の損害賠償が認められました。

(1) 証拠(甲2,4,10〜12)によれば,1)本件サイトの「再生数」は 「9896」との表示がされていること,2)本件著作物の収録時間は120 分であるが,甲4の2には,アップロードされた動画の再生時間が21分0 5秒であるかのような記載があり,被告が自認する限度でも,その再生時間 は50分にすぎないこと,3)本件著作物は,原告のグループ会社が運営する ウェブサイトにおいて有料でインターネット配信されており,これをストリ ーミングで視聴する際の料金が300円(平成28年6月21日時点)とさ れていること,4)原告は,第三者に対し,著作物のストリーミング配信を 「売上総額(消費税抜き)」の38%で許諾した例があることの各事実を認 めることができる。
(2) 原告は,被告がアップロードした動画の再生回数が9896回であること から,これに前記のストリーミング料金である300円の38%を乗じた1 12万8144円が使用料相当損害額であると主張するが,本件サイトに表\n示された「再生数」が,無料会員によるごく短い時間のサンプル動画の視聴 も含まれるのかどうかも含め,どのような方法に基づいて計測されたかは明 らかではない。 また,上記のとおり,本件著作物の収録時間は120分であるのに対し, 被告がアップロードした動画の再生時間は,被告の自認する限りでも50分 であり,その再生時間は本件著作物の収録時間より相当程度短かったものと 認められる。 さらに,原告が使用料率の証拠として提出する契約書等は,平成15年4 月のコンテンツ提供基本契約書に基づき平成21年3月に交わされた覚書で あり,その契約時期は本件著作物のアップロードより相当程度以前のもので あり,その数も1例にすぎないので,これを基礎として本件著作物の利用料 率を定めることは相当ではなく,加えて,上記のストリーミング料金が消費 税を含む金額かどうかも明らかではない。 以上によれば,原告が主張する再生回数,ストリーミング料金及び利用料 率を基礎とし,その計算式に基づいて算定された損害が原告に生じたと直ち に認めることはできないが,他方,上記(1)の認定事実(本件サイトに表示\nされた再生回数,被告がアップロードした動画の再生時間,ストリーミング 料金の額,過去の契約例など)に加え,本件に現れた諸事情を全て総合する と,その損害額は40万円と認めるのが相当である。 なお,被告は,本件著作物は他サイトからの引用であり,著作権侵害の故 意・過失がなかったようにも主張するが,被告は他人の著作物を自らアップ ロードしたのであるから,被告に少なくとも過失があると認められることは 明らかである。

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令和1(ワ)30272  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年6月25日  東京地方裁判所

 発信者情報1(氏名又は名称)は保有していない、発信者情報2は、法4条1項の「発信者情報」に当たらないとして、発信者情報開示請求が棄却されました。

 被告が本件発信者情報1(氏名又は名称)を保有しているかを検討するため, 本件サービスに係る会員登録の情報内容についてみるに,証拠(甲11)によ れば,本件サービスの利用規約には,本件サービスの会員登録希望者は,本件 サービスの利用規約の全てに同意した上,同利用規約及び被告が定める方法に より会員登録をする旨の定めがある(同利用規約第4条1.)ことが認められ るにとどまり,同利用規約(甲11)の内容を全て精査しても,会員登録時に 登録すべき情報内容についての定めはなく,本件サービスを利用するためには 会員登録希望者ないし利用者がその氏名又は名称を登録する必要があることを うかがわせる定めも見当たらない。そうすると,本件登録者において,本件サ ービスの利用規約の定めに従い,本件発信者情報1(氏名又は名称)を登録し て被告に提供したと認めることはできず,その他,被告が本件発信者情報1 (氏名又は名称)を保有していると的確に認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告が本件発信者情報1(氏名又は名称)を保有しているとは 認められない。 この点,原告は,本件サービスを利用してホームページ等を作成するために は,電子メールアドレス等のほかに,氏名又は名称を登録することが必要であ る旨主張する。しかし,本件の具体的事案に即して本件サービスの利用規約の 定めについて具体的に検討しても,本件登録者において,本件発信者情報1を 登録して被告に提供したと認めることができないことは,上記説示のとおりで ある。原告の上記主張は,推測の域を出るものではないというほかなく,採用 することができない
2 争点(2)本件発信者情報は法4条1項の「発信者情報」に当たるか)につい て
(1) 前記1で判示したとおり,本件発信者情報のうち本件発信者情報1(氏 名又は名称)については,被告がこれを保有しているとは認められないから, 本件発信者情報1の開示を求める原告の請求は,争点(2)について判断する までもなく,既に理由がない。 そこで,争点(2)に関しては,本件発信者情報2(電子メールアドレス) の開示を求める原告の請求について判断する。
(2) 法4条1項は,開示請求の対象となる「当該権利の侵害に係る発信者情 報」とは,「氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であ って総務省令で定めるものをいう。」と規定し,これを受けて省令は,その ような情報の一つとして「発信者の電子メールアドレス」と規定する(省令 3号)ところ,法2条4号は,「発信者」とは,「特定電気通信役務提供者 の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不 特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し,又は当該特定電気通 信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信され るものに限る。)に情報を入力した者をいう。」と規定する。 しかして,法が,2条4号により「発信者」を上記のように文言上明記し た趣旨は,法において,他人の権利を侵害する情報を流通過程に置いた者を 明確に定義することにより,それ以外の者であって当該情報の流通に関与し た者である特定電気通信役務提供者の私法上の責任が制限される場合を明確 にするところにある。そうすると,法4条1項を受けた省令3号の「発信者 の電子メールアドレス」の「発信者」についても,法2条4号の規定文言の とおりに,特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体 (当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。) に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入 力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した本 人に限られると解するのが相当である。
(3) そこで,これを前提に,本件について検討する。 前記のとおり,被告が,本件発信者情報2(本件登録者の電子メールア ドレス)を保有していることから,本件登録者は,本件サイトを開設した 際に,被告に対し,電子メールアドレスを提供したといえるものの,前記 1の説示に照らせば,氏名又は名称の提供をしたものとは認められない。 このように,本件サイトの開設に当たり本人情報として氏名又は名称が 提供されず電子メールアドレス等が提供されているような場合,本件登録 者が,真に本件登録者本人の電子メールアドレスを被告に提供したことに は合理的疑いが残るところである。 この点,証拠(甲11)をみても,本件サービスの利用規約には,本件サ ービスの会員は,本件サービスを利用する際に設定する登録情報に虚偽の情 報を掲載してはならない旨定められている(同利用規約第3条2.)ことが 認められるものの,他方,同利用規約(甲11)の内容を全て精査しても, 登録情報の内容が当該会員本人の情報であることを確認するための方法を定 めた定めはなく,かえって,登録情報に虚偽等がある場合や登録された電子 メールアドレスが機能していないと判断される場合には,被告において,本\n件サービスの利用停止等の措置を講じることができる旨の定めが存する(同 録希望者が他人の情報や架空の情報を登録するおそれのあることがうかがわ れるところである。特に,本件の場合,本件サイトは平成13年頃開設され たものである(甲1)ところ,本件サイトには,原告がその頃以降に創作し たほぼ全てのメールマガジンが原告に無断で転載されている(甲2)ことに 照らせば,本件サイトはそのような違法な行為のために開設されたものであ ることがうかがわれるから,本件登録者が本件サイトを開設する際に他人の 電子メールアドレスや架空の電子メールアドレスを登録した可能性を否定し\n難いといわざるを得ない。 そして,その他,本件登録者が本件サービスを利用して本件サイトを開設 する際に登録した電子メールアドレスが本件登録者本人のものであると認め るに足りる証拠はなく,本件登録者が本件サイトを開設する際に登録した電 子メールアドレスが本件登録者本人のものであると認めることは困難という べきである。 そうすると,被告の保有する電子メールアドレス(本件発信者情報2)は, 法2条4項にいう「特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記 録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限 る。)に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装 置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力 した者」の電子メールアドレスであるとはいえず,ひいては,省令3号の

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平成30(ワ)18151  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年6月25日  東京地方裁判所

 著作権について独占的利用権を有するとして、損害賠償請求をしましたが、独占的利用権を有していないとして請求は棄却されました。

 かかる事実経過に鑑みれば,そもそも原告は,本件原告ライセンス契約に 基づいて,本件キャラクターを付すなどにより本件キャラクターを利用した 商品を日本において独占的に販売するなど,自ら当該商品化権を専有してい るという事実状態を生じさせているものではない上,本件原告ライセンス契 約に至る状況等をみても,被告が本件TXBB契約等を通じ日本における当 該キャラクター商品の販売を継続していたという状態であるのに,権利者と されるSMFにおいて,本件原告ライセンス契約により原告の利用権の専有 を確保したと評価される行為がされたとはいえず(SMFは,被告ないしT XBB等に対し,権利侵害に係る警告,利用行為の差止請求や損害賠償請求, 原告からサブライセンスを受けるよう求める通告等をいずれも行っておらず (前記(2)ケ),また,本件訴訟提起の前後を通じても,原告が被告とサブラ イセンス契約の締結交渉を企図する中で,原告から求めがあったにもかかわ らず,原告が本件キャラクターの独占的利用権を有することを書面などによ り明確にする等の具体的な対応を一切とらず,さらに,被告に対し,利用権 を被告と原告の双方に設定した,いわば二重譲渡の状態にあることを認めつ つ被告の利用権を優先させるかのような姿勢を見せていた(前記(2)コ,サ)。), かえって,SMFは,上記契約の更新期前の時期には,被告との間で被告へ の利用権設定に向けての交渉や被告映画の販売交渉等に係る合意を行い,ま た,訴外香港法人に対し本件キャラクターの利用権を付与するなどの状態と なっていたものである。
そうすると,このような本件事案における事実状態をもってしては,権利 者とされるSMFによって,利用権者たる原告の利用権の専有を確保したと 評価されるに足りる行為が行われたとはいえず,SMFによって,原告が, 現にSMFから唯一許諾を受けた者として当該キャラクター商品を市場にお いて販売している状況に準じるような客観的状況が創出されているなど,原 告が契約上の地位に基づいて上記商品化権を専有しているという事実状態が 存在しているということはできないというべきである。 したがって,原告は,被告に対し,独占的利用権が侵害されたとして損害 賠償請求をすることはできないというほかない。
(4) これに対し,原告は,SMFの代表者であったCが,その陳述書(甲7)\nにおいて,原告に独占的利用権を与えたこと,及び本件TXBB契約に基づ いて被告が本件キャラクターを利用する権利はないことを言明していること などから,原告の独占的利用権の侵害による被告の不法行為が成立する旨を 主張する。
しかしながら,前記のとおり,原告において本件TXBB契約が終了した 旨を主張する平成26年12月31日以降,現時点に至るまで,SMFから 被告に対し,本件キャラクターの利用につき警告や法的措置が何ら取られて いないこと,本件訴訟提訴後の平成30年において,被告の組合員の職務執 行者であるDに対し,本件TXBB契約が終了した旨を明確に主張していな いこと,上記Cの陳述書(甲7)以外に,原告に対する本件キャラクターの 独占的利用権の付与を積極的に認める姿勢を明らかにした形跡が全く見当た らないことなどからすれば,権利者とされるSMFにおいて,原告への利用 権設定に当たりその専有を確保したと評価されるに足りる行為を行い上記に 準じる客観的状況を創出しているといえないことに変わりはなく,同人が契 約上の地位に基づいて上記商品化権を専有しているという事実状態が存在し ているということはできないとの前記判断を左右するものではない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない(なお,本件の経 緯に鑑みれば,仮に,SMFが,被告に対し,本件TXBB契約の存続を否 定する趣旨の主張に及ぶことがあったとしても,そのことから,SMFにお いて,原告への利用権設定に当たりその専有を確保したと評価されるに足り る行為を行い上記に準じる客観的状況を創出しているといえることになるも のではなく,原告が契約上の地位に基づいて上記商品化権を専有していると いう事実状態が存在しているということができない本件事案の下において, 原告の被告に対する,独占的利用権が侵害されたことを理由とする損害賠償 請求が肯定されることにはならない。)。

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平成29(ワ)20502等  音楽教室における著作物使用にかかわる請求権不存在確認事件  著作権  民事訴訟 令和2年2月28日  東京地方裁判所(40部)

 音楽教室における演奏について、著作権侵害を構成すると判断しました。
不存在確認訴訟ですので、原告は場合分けをして判断を求めました。東京地裁はすべて、否定しました。主な論点は、「公衆」「聞かせることを目的」「2小節以内の演奏について演奏権が及ぶか」「演奏権の消尽」、「録音物の再生に係る実質的違法性阻却事由」「権利濫用」です。

上記(ア)ないし(オ)のとおり,原告らの音楽教室で演奏される課題曲の 選定方法,同教室における生徒及び教師の演奏態様,音楽著作物の利用 への原告らの関与の内容・程度,著作物の利用に必要な施設・設備の提 供の主体,音楽著作物の利用による利益の帰属等の諸要素を考慮すると, 原告らの経営する音楽教室における音楽著作物の利用主体は原告らで あると認めるのが相当である(なお,原告ら(別紙C)の経営する個人 教室は,生徒の居宅においてレッスンを行っているので,著作物の利用 に必要な施設・設備についての管理・支配は認められないが,原告ら(別 紙C)は原告ら自身が教師として課題曲の選定,レッスンにおける演奏 等をしているので,同原告らが利用する音楽著作物の利用主体は同原告 らであると認められる。)。
・・・
このように,原告らの音楽教室におけるレッスンは,教師が演奏を行って 生徒に聞かせることと,生徒が演奏を行って教師に聞いてもらうことを繰り 返す中で,演奏技術の教授が行われるが,このような演奏態様に照らすと, そのレッスンにおいて,原告ら音楽教室事業者と同視し得る立場にある教師 が,公衆である生徒に対して,自らの演奏を注意深く聞かせるため,すなわ ち「聞かせることを目的」として演奏していることは明らかである。

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平成30(受)1412  発信者情報開示請求事件 令和2年7月21日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

 アップし忘れましてました。
 発信者情報開示事件です。1審では、リツイートはインラインリンクであるので、著作権侵害、人格権侵害に該当しないと判断され、請求は棄却されました。知財高裁(2部)は、著作者人格権侵害があったとして、一部の発信者情報について開示を認めました。最高裁(第3小)も人格権侵害は認めましたが、著作権侵害は否定しました。

 自動公衆送信の主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ,情報 を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成 23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照),本件写真のデータは,流 通情報2(2)のデータのみが送信されていることからすると,その自動公衆送信の 主体は,流通情報2(2)の URL の開設者であって,本件リツイート者らではないと いうべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは,行為の対象,方法,行為 への関与の内容,程度等の諸般の事情を総合的に考慮して,規範的に解釈すべきで あり,カラオケ法理と呼ばれるものも,その適用の一場面であると解される(最高 裁平成23年1月20日判決・民集65巻1号399頁参照)が,本件において, 本件リツイート者らを自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。控訴人は, 本件アカウント3〜5の管理者は,そのホーム画面を支配している上,ホーム画面 閲覧の社会的経済的利益を得ていると主張するが,そのような事情は,あくまでも 本件アカウント3〜5のホーム画面に関する事情であって,流通情報2(2)のデー タのみが送信されている本件写真について,本件リツイート者らを自動公衆送信の 主体と認めることができる事情とはいえない。また,本件リツイート行為によって, 本件写真の画像が,より広い範囲にユーザーのパソコン等の端末に表\示されること となるが,我が国の著作権法の解釈として,このような受け手の範囲が拡大するこ とをもって,自動公衆送信の主体は,本件リツイート者らであるということはでき ない。さらに,本件リツイート行為が上記の自動公衆送信行為自体を容易にしたと はいい難いから,本件リツイート者らを幇助者と認めることはできず,その他,本 件リツイート者らを幇助者というべき事情は認められない。
(ウ) 控訴人は,自動公衆送信にも放送にも有線放送にも当たらない公衆 送信権侵害も主張するが,前記(ア)のとおり自動公衆送信に当たることからすると, 自動公衆送信以外の公衆送信権侵害が成立するとは認められない。
(3) 複製権侵害(著作権法21条)について
前記(2)イのとおり,著作物である本件写真は,流通情報2(2)のデータのみが送 信されているから,本件リツイート行為により著作物のデータが複製されていると いうことはできない。したがって,複製権侵害との関係でも,控訴人が主張する「 ブラウザ用レンダリングデータ」あるいは HTML データ等を「侵害情報」と捉える ことはできず,「ブラウザ用レンダリングデータ」あるいは HTML データ等が「侵 害情報」であることを前提とする控訴人の複製権侵害に関する主張は,採用するこ とができない。
(4) 公衆伝達権侵害(著作権法23条2項)について
著作権法23条2項は,「著作者は,公衆送信されるその著作物を受信装置を用 いて公に伝達する権利を専有する。」と規定する。 控訴人は,本件リツイート者らをもって,著作物をクライアントコンピュータに 表示させた主体と評価すべきであるから,本件リツイート者らが受信装置であるク\nライアントコンピュータを用いて公に伝達していると主張する。しかし,著作権法 23条2項は,公衆送信された後に公衆送信された著作物を,受信装置を用いて公 に伝達する権利を規定しているものであり,ここでいう受信装置がクライアントコ ンピュータであるとすると,その装置を用いて伝達している主体は,そのコンピュ ータのユーザーであると解され,本件リツイート者らを伝達主体と評価することは できない。控訴人が主張する事情は,本件写真等の公衆送信に関する事情や本件ア カウント3〜5のホーム画面に関する事情であって,この判断を左右するものでは ない。そして,その主体であるクライアントコンピュータのユーザーが公に伝達し ているというべき事情も認め難いから,公衆伝達権の侵害行為自体が認められない。 このように公衆伝達権の侵害行為自体が認められないから,その幇助が認められる 余地もない。
(5) 著作者人格権侵害について
ア 同一性保持権(著作権法20条1項) 侵害
前記(1)のとおり,本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている\n画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,\n表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラム や CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり 画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えら れているものではない。 しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表\現したものであって,文 芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう 著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プロ グラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件ア カウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5のよ\nうな画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変された もので,同一性保持権が侵害されているということができる。 この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は, インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為 の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により位置や大きさ などが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件 リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザ ーを改変の主体と評価することはできない(著作権法47条の8は,電子計算機に おける著作物の利用に伴う複製に関する規定であって,同規定によってこの判断が 左右されることはない。)。また,被控訴人らは,本件アカウント3〜5のタイム ラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(1)の画像と同じ画像であるから, 改変を行ったのは,本件アカウント2の保有者であると主張するが,本件アカウン ト3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は,控訴人の著作物である本\n件写真と比較して改変されたものであって,上記のとおり本件リツイート者らによ って改変されたと評価することができるから,本件リツイート者らによって同一性 保持権が侵害されたということができる。さらに,被控訴人らは,著作権法20条 2項4号の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は, 本件アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイート が行われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむ を得ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害\n
本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人\nの氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際して HTML プ ログラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件 アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5の\nような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控\n訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆 への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができ\nる。
ウ 名誉声望保持権(著作権法113条6項)侵害
本件アカウント3〜5において,サンリオのキャラクターやディズニーのキャラ クターとともに本件写真が表示されているからといって,そのことから直ちに,「\n無断利用してもかまわない価値の低い著作物」,「安っぽい著作物」であるかのよ うな誤った印象を与えるということはできず,著作者である控訴人の名誉又は声望 を害する方法で著作物を利用したということはできない。そして,他に,控訴人の 名誉又は声望を害する方法で著作物を利用したものというべき事情は認められない から,本件リツイート者らは,控訴人の名誉声望保持権(著作権法113条6項 )を侵害したとは認められない。
(6) なお,控訴人は,本件アカウント2,4及び5の各保有者が自然人として は同一人物であり,又はこれらの者が共同して公衆送信権を侵害した旨主張するが, そのような事実を認めるに足りる証拠はない。
(7)「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び 「発信者」(同法2条4号)について
前記(5)ア,イのとおり,本件リツイート行為は,控訴人の著作者人格権を侵害す る行為であるところ,前記(5)ア,イ認定の侵害態様に照らすと,この場合には,本 件写真の画像データのみならず,HTML プログラムや CSS プログラム等のデータを 含めて,プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ,本件リツイー ト行為は,その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかであ る。そして,この場合の「発信者」は,本件リツイート者らであるということがで きる。
(8) 争点(2)について
本件アカウント2の流通情報2(3)及び(4)については,流通情報3〜5と同様に, 流通情報2(2)の画像が改変され,控訴人の氏名が表示されていないということが\nできるから,著作者人格権の侵害があるということができる。しかし,本件アカウ ント1の流通情報1(6)及び(7)については,流通情報1(3)の画像と同じものが表示\nされているから,著作者人格権の侵害があると認めることはできない。これらにつ いて著作権の侵害を認めることができないことは,流通情報3〜5と同様である。

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◆平成28(ネ)10101

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◆平成27(ワ)17928

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令和1(ワ)60 損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年11月18日  大阪地方裁判所

 漫画を違法アップロードしていた個人に対して、連帯して約1.6億円の損害賠償が認められました。裁判所は「電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,配信プラットフォームの違いに応じた代表\的な複数の事例の中で,最も低いもので45%である」と認定しました。編集著作者としての講談社が原告です。一部の被告は欠席裁判でした。

 証拠(甲2,13)及び弁論の全趣旨によれば,原告が原告各雑誌を販売してい ること,その本体価格は別紙著作物目録の「本体価格(円)」欄にそれぞれ記載の とおりであることが認められる。 また,証拠(甲25の1〜25の4)によれば,平成27年〜平成30年にそれ ぞれ発行された調査報告書には,電子書籍の価格構造における出版社の利益率は,\n配信プラットフォームの違いに応じた代表的な複数の事例の中で,最も低いもので\n45%であることが認められる。本件各違法アップロード行為の対象となった原告 各雑誌に係る販売利益率がこの割合を下回ることをうかがわせる事情はないから, これが45%であるものとして算定することには十分な合理性がある。\n
(ウ) 逸失利益額
各雑誌に係るファイルごとのダウンロード数並びに雑誌ごとの本体価格及び販売 利益率を乗じると,1億5032万8192円となる。他方,被告P3は,「販売 することができないとする事情」(著作権法114条1項ただし書)について,何 ら主張立証していない。したがって,本件各違法アップロード行為による原告の逸 失利益額は,同額であると認められる。
イ 弁護士費用相当損害額
原告の逸失利益額(上記ア)その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告 らの本件各違法アップロード行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害額は, 1503万2819円と認めるのが相当である。

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平成30(ワ)7538  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年1月14日  大阪地方裁判所(21部)

 ブロンズ像の複製の使用料相当額について、過去の実績である40%は認められませんでしたが、それでも、6作品で6000万円を超える損害額が認定されました。。

 著作権法114条3項は,「著作権者…は,故意又は過失によりその著作権 …を侵害した者に対し,その著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する 額を自己が受けた損害の額として,その賠償を請求することができる。」旨規定し, 使用料相当額の請求を認めるところ,これは,民法709条,著作権法114条1 項及び2項の主張立証が困難な場合であっても,著作権者に最低限の損害賠償を保 証する趣旨であると解されている。 著作権の許諾は,多くの場合,特許権の実施許諾契約の場合に見られるように, 実施権者が,自らの製品の一部に当該特許発明を用いて製造するといった態様では なく,許諾を受けた者が,当該著作物をそのままの形で使用する態様が採られ,他 の著作物による代替も予定されていない。また,本件のような著名な芸術家による\n高価な芸術作品の複製に関する許諾の場合には,大量の複製品の製造及び流通は通 常予定されておらず,許諾を受けた者が制作する複製品の品質の評価が,著作者で\nある芸術家の評価に直接影響することから,許諾に際し,慎重な選考が行われたり, 複製品の製造数量が限定されたり,複製品の価格設定を著作権者が行ったり,比較 的高い料率が設定されたりすることが考えられる。 そうすると,このような場合において,「その著作権…の行使につき受けるべき 金銭の額」,すなわち許諾料相当額は,相手方又は第三者との間における当該著作 権に係る許諾契約における許諾料や,その算定において用いられた事情,あるいは 業界慣行等一般的相場を基礎として,著作物の種類及び性質や,当該著作権の許諾 を受けた者において想定される著作物の利用方法等を考慮し,個別具体的に合理的 な許諾料の額を定めるべきである。
(2)ア 本件において,前記1(4)のとおり,平成元年から平成23年までの間に, 本件各ブロンズ像について,各作品の販売価格を基礎としてその約10ないし4 0%の額の許諾料にて複製の許諾がなされていたこと,具体的な許諾料は,複製品 の制作者との協議の上で最終的に訴外直樹が決定しており,減額はされなかったこ と,前記1(5)のとおり,作品の販売価格についても訴外直樹が原則として値引きを 行わせなかったこと,平成18年ころにおける各作品の販売価格は,上記許諾料が 定められた際に基礎とされた販売価格とほぼ同水準であったこと等が認められる。
イ 一方で,許諾料相当額を算定するにあたっては,許諾を得た者が実際に支払 った許諾料の水準や,著作権が侵害された平成16年ころから平成28年ころまで の間に,許諾を得て複製された訴外直樹の作品が販売された数量,価格を考慮する 必要があるが,平成18年に原告が訴外直樹の著作権を相続した後,どの程度許諾 料を得たかについての証拠は提出されていないし,前記1(5)の平成18年の回顧展 の後に,訴外直樹の作品が,どのような価格で,どのような数量販売されたかにつ いての証拠も提出されていない。 また,「大将の椅子」について,平成23年以降は許諾を受けた者が倒産したた め製造販売されず,他の者に対する許諾もなされていないこと,令和元年における オークションにおける最低入札価格が68万円とされているところ,オークション が中古市場であることや最低入札価格と実際の販売価格との間には相当程度の開き が生じ得ることを考慮しても,同作品につき以前の販売価格(450万円)又はこ れに近い価格で取引が行われているかについては,不明といわざるを得ないし,前 記1(4)アの合意は,訴外直樹と業者との間で,平成元年から平成9年にかけてなさ れたものであることを総合すると,前記1(4)で合意された金額が,著作権侵害期間 である平成16年ころから平成28年ころまでの許諾料相当額としてそのまま妥当 するとすることは困難である。
ウ 他方,前記1(3)のとおり,被告は,無断で製造した本件各ブロンズ像の複製 品を,単価15万円から60万円程度という安価で販売し,鋳造及び着色業者に対 して,1体当たり15万円程度の対価を支払っていることから,複製品の製造によ り得た利益は多額とはいえないと考えられるし,被告から廉価で品質の劣る複製品 を購入した者は,それが禁止されていれば,直ちに高価な正規品を購入したであろ うとの関係も認め難い。 しかし,本件のように,著作権者の側が,一定の水準以下では複製も,複製品の 販売も認めないとしている場合に,無断で複製を行った者がこれを廉価で販売する ことで,侵害者の利益に合わせて許諾料相当額の水準を大きく下落させることは, 前記(1)で述べた,著作権法114条3項の趣旨を没却することになり,相当でない というべきである。
(3) 以上より,本件各ブロンズ像の許諾料相当額については,前記1(4)で認定し た,訴外直樹が,本件各ブロンズ像の販売価格を基礎として,許諾を受ける者との 協議の上で決定した価格を出発点としつつも,前記(2)イで検討した事情を総合して, 以下のとおり,侵害時期に対応する本件各ブロンズ像の許諾料相当額は,前記1(4) の各許諾料の半額とするのが相当であると考えられる。
(1) 「クリスマス・イブ」(小) 30万円
(2) 「パリ祭」 75万円
(3) 「初舞台」 40万円
(4) 「大将の椅子」 90万円
(5) 「トルコの貴婦人」 75万円
(6) 「トスカーナの女」 125万円
(4)まとめ
したがって,上記許諾料に,それぞれ,前記第2の1(2)及び第3の2のとおりの販売数を乗じると,合計6290万円となるところ,これが訴外直樹又は原告の損害額と認められる。
(計算式)30万円×39体+75万円×20体+40万円×16体+90万円×17体+75万円×11体+125万円×5体=6290万円

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平成31(ネ)10018  損害賠償請求本訴,使用料規程無効確認請求反訴控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 著作権侵害について、知財高裁3部は、1審よりも損害額を減額しました。事後的に定められるべき金銭の額としては,「・・・本件基本合意・・・をベースとし,そこに定められた額の約1.5倍が妥当」と基準を示しました。

 以上のとおり,被控訴人は,地上テレビジョン放送事業者から管理 委託を受けた著作権及び著作隣接権の有線放送権に基づき再放送の利用 許諾をするに当たり,ほぼ全てのケーブルテレビ事業者との間で,3者 契約又は2者契約の方式により年間の包括的利用許諾契約を締結し,3 者契約の場合は本件基本合意に基づき,2者契約の場合は本件使用料一 覧(2者契約)に基づき定められた使用料額をケーブルテレビ事業者か ら徴収していることが認められる。 一方,被控訴人と3者契約又は2者契約の方式により年間の包括的利 用許諾契約を締結したケーブルテレビ事業者のうち,本件基本合意に基 づく減額措置(3者契約の場合)又は本件使用料一覧(2者契約)に基 づく減額措置(2者契約の場合)を受けることが可能であるにもかかわ\nらず,減額措置を受けずに,本件使用料規程に定められた区域内再放送 の使用料(1世帯1ch当たり年額120円)及び区域外再放送の使用 料(1世帯1ch当たり年額600円)を支払っている事業者は存在し ない。 そして,控訴人は,適法に同意を得て,又は総務大臣による同意裁定 を得て,毎日放送等6社の地上テレビジョン放送を同時再放送している ものであり,ケーブルテレビ連盟の会員でもあることから,仮に控訴人 が希望すれば,被控訴人との間で,本件基本合意に基づく3者契約又は 本件使用料一覧(2者契約)に基づく2者契約を締結することが可能で\nあって,その場合の再放送使用料は,上記減額措置の適用を受けて,区 域内再放送につき1世帯1ch当たり年額24円(3者契約)又は28 円(2者契約),区域外再放送につき1世帯1ch当たり年額120円 (3者契約)又は144円(2者契約)であり,平成26年度の再放送 使用料については,使用料の50%が軽減されるものと認められる(弁 論の全趣旨)。
以上のような,被控訴人とケーブルテレビ事業者との間で締結された 同時再放送に係る利用許諾契約の内容,控訴人による本件有線放送権の 利用の態様等の事実を考慮すると,上記利用許諾契約の締結に当たり適 用された実績が全くない,本件使用料規程の「年間の包括的利用許諾契 約によらない場合」(3条(2))又は「年間の包括的利用許諾契約を結ぶ 場合」(3条(1))が,著作権法114条4項の「使用料規程のうちその 侵害の行為に係る著作物等の利用の態様について適用されるべき規定」 に該当するものとは認めらない。
(イ) これに対し被控訴人は,(1)使用料規程による使用料の算出方法が複 数あるときは各方法により算出した額のうち最も高い額を請求すること ができるとする著作権法114条4項を設けた趣旨に鑑みれば,「最も 高い額」となる算出方法による許諾実績がなくとも,同項の適用は妨げ られない,(2)実際にも,被控訴人は,著作権等管理事業を開始した平成 26年度以降,年間の包括的利用許諾契約によって区域外再放送を許諾 するに当たり,累計12社(平成27年度10社,同28年度9社,同 29年度9社)の有線テレビジョン放送事業者につき,本件減額措置を 施さずに,有料視聴世帯数に地上テレビジョン放送1波当たり年額60 0円を乗じた額の使用料を徴収している旨主張する。
まず,上記(1)の点について,著作権法114条4項は,同条3項により損害の賠償を請求する場合において,当該著作権等管理事業者が定め る使用料規程により算出した金額をもって,同条3項に規定する金銭の 額とする旨を定めるものである。そして,同条3項は,不法行為による 著作権等侵害の際に著作権者等が請求し得る最低限度の損害額を法定し た規定であるところ,不法行為に基づく損害賠償制度は,被害者に生じ た現実の損害を填補することを目的とするものであるから,現実の損害 が発生しなかった場合には,それを理由とする賠償請求をすることがで きないことは自明である。 これを本件についてみるに,前記(ア)のとおり,被控訴人は,ほぼ全て のケーブルテレビ事業者との間で,3者契約又は2者契約の方式により 年間の包括的利用許諾契約を締結し,3者契約の場合は本件基本合意に 基づき,2者契約の場合は本件使用料一覧(2者契約)に基づき定めら れた使用料額をケーブルテレビ事業者から徴収しており,これらの事業 者のうち,本件基本合意に基づく減額措置又は本件使用料一覧(2者契 約)に基づく減額措置を受けることが可能であるにもかかわらず,これ\nを受けずに,それよりも遥かに高額な,本件使用料規程3条(1)又は(2)に 定められた区域内再放送及び区域外再放送の使用料を支払っている事業 者は存在しない。被控訴人と控訴人との交渉の過程においても,本件基 本合意に基づく3者契約又は本件使用料一覧(2者契約)に基づく2者 契約によることが,当然の前提とされていたものである。
そして,このような被控訴人とケーブルテレビ事業者との間の同時再 放送に係る実際の利用許諾契約における使用料の額,控訴人による本件 有線放送権の利用の態様,控訴人と被控訴人の間の再放送同意に係る利 用許諾契約に関する交渉経緯(前記ア(エ))等によれば,本件における使 用料相当額の算定に当たって,実際の利用許諾契約において用いられた 例がなく,かつ,上記減額措置を受ける場合と比較して使用料が遥かに 高額となる,本件使用料規程3条(1)又は(2)による場合の算定方法を用い ることは,被控訴人に生じた現実の損害の算定方法としてはおよそ非現 実的というべきであり,相当でない。 次に,上記(2)の点について,被控訴人が,累計12社の有線テレビジ ョン放送事業者との間で,本件使用料規程に基づき,区域外再放送の使 用料を1世帯1ch当たり年額600円とする年間の包括的利用許諾契 約を締結し,同規程に基づき算定された金額を徴収していることについ ては,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はない。また,被控訴人の 主張によれば,上記12社はいずれも重複波等の区域外再放送を行った 者であるところ,前記認定の被控訴人とケーブルテレビ事業者との間の 同時再放送に係る利用許諾契約の締結状況に照らすと,上記12社は, 本件基本合意に基づく3者契約又は本件使用料一覧(2者契約)による 2者契約を締結した上で,本件基本合意(1)(3)の定めに基づき,「有料視 聴世帯数×1世帯1chあたり年額600円×区域外再放送(重複波等) ch数」の使用料を支払ったものであると推認される。そして,上記1 2社において,本件基本合意に基づく減額措置(3者契約の場合)又は 本件使用料一覧(2者契約)に基づく減額措置(2者契約の場合)を受 けることが可能であるにもかかわらず,減額措置を受けずに,本件使用\n料規程に定められた区域外再放送の使用料を支払っていることを認める に足りる証拠はない。 したがって,被控訴人の上記各主張を採用することはできない。
ウ 被控訴人は,控訴人が本件有線放送権を侵害したことにより被控訴人が 受けた損害の額として,著作権法114条3項及び4項により算定される 損害額を主張するところ,前記イのとおり,本件において著作権法114 条4項を適用して,本件使用料規程3条(1)又は(2)に基づいて被控訴人の損 害の額を算定することは,相当でない。そこで,同条3項により算定され る被控訴人の損害の額について,以下検討する。 同条3項は,著作権及び著作隣接権侵害の際に著作権者,著作隣接権者 が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定である。また,同項所定の 「その著作権…又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当 する額」については,平成12年法律第56号による改正前は「その著作 権又は著作隣接権の行使につき通常受けるべき金銭の額に相当する額」と 定められていたところ,「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得にな ってしまうとして,同改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。 そして,かかる法改正の経緯に照らせば,著作権及び著作隣接権侵害をし た者に対して事後的に定められるべき,これらの権利の行使につき受ける べき金銭の額は,通常の利用許諾契約の使用料に比べて自ずと高額になる であろうことを考慮すべきである。
これを本件についてみると,前記イ(ア)の被控訴人とケーブルテレビ事 業者との間の同時再放送に係る実際の利用許諾契約における使用料の額, 控訴人による本件有線放送権の利用の態様等の事実に加えて,控訴人と被 控訴人の間の再放送同意に係る利用許諾契約に関する交渉経緯など,本件 訴訟に現れた事情を考慮すると,著作権及び著作隣接権侵害をした者に対 して事後的に定められるべき,本件での利用に対し受けるべき金銭の額は, 被控訴人とケーブルテレビ事業者との間における再放送使用料を現実に 規律していると認められる本件基本合意及び本件使用料一覧(2者契約) をベースとし,そこに定められた額を約1.5倍した額である,区域内再 放送につき1世帯1ch当たり年額36円及び区域外再放送につき1世 帯1ch当たり年額180円とし,平成26年度についてはその半額を下 らないものと認めるのが相当である。

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◆平成28(ワ)28925等

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平成31(ネ)10018  損害賠償請求本訴,使用料規程無効確認請求反訴控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 著作権侵害について、知財高裁3部は、1審よりも損害額を減額しました。事後的に定められるべき金銭の額としては,「・・・本件基本合意・・・をベースとし,そこに定められた額の約1.5倍が妥当」と基準を示しました。

 以上のとおり,被控訴人は,地上テレビジョン放送事業者から管理 委託を受けた著作権及び著作隣接権の有線放送権に基づき再放送の利用 許諾をするに当たり,ほぼ全てのケーブルテレビ事業者との間で,3者 契約又は2者契約の方式により年間の包括的利用許諾契約を締結し,3 者契約の場合は本件基本合意に基づき,2者契約の場合は本件使用料一 覧(2者契約)に基づき定められた使用料額をケーブルテレビ事業者か ら徴収していることが認められる。 一方,被控訴人と3者契約又は2者契約の方式により年間の包括的利 用許諾契約を締結したケーブルテレビ事業者のうち,本件基本合意に基 づく減額措置(3者契約の場合)又は本件使用料一覧(2者契約)に基 づく減額措置(2者契約の場合)を受けることが可能であるにもかかわ\nらず,減額措置を受けずに,本件使用料規程に定められた区域内再放送 の使用料(1世帯1ch当たり年額120円)及び区域外再放送の使用 料(1世帯1ch当たり年額600円)を支払っている事業者は存在し ない。 そして,控訴人は,適法に同意を得て,又は総務大臣による同意裁定 を得て,毎日放送等6社の地上テレビジョン放送を同時再放送している ものであり,ケーブルテレビ連盟の会員でもあることから,仮に控訴人 が希望すれば,被控訴人との間で,本件基本合意に基づく3者契約又は 本件使用料一覧(2者契約)に基づく2者契約を締結することが可能で\nあって,その場合の再放送使用料は,上記減額措置の適用を受けて,区 域内再放送につき1世帯1ch当たり年額24円(3者契約)又は28 円(2者契約),区域外再放送につき1世帯1ch当たり年額120円 (3者契約)又は144円(2者契約)であり,平成26年度の再放送 使用料については,使用料の50%が軽減されるものと認められる(弁 論の全趣旨)。
以上のような,被控訴人とケーブルテレビ事業者との間で締結された 同時再放送に係る利用許諾契約の内容,控訴人による本件有線放送権の 利用の態様等の事実を考慮すると,上記利用許諾契約の締結に当たり適 用された実績が全くない,本件使用料規程の「年間の包括的利用許諾契 約によらない場合」(3条(2))又は「年間の包括的利用許諾契約を結ぶ 場合」(3条(1))が,著作権法114条4項の「使用料規程のうちその 侵害の行為に係る著作物等の利用の態様について適用されるべき規定」 に該当するものとは認めらない。
(イ) これに対し被控訴人は,(1)使用料規程による使用料の算出方法が複 数あるときは各方法により算出した額のうち最も高い額を請求すること ができるとする著作権法114条4項を設けた趣旨に鑑みれば,「最も 高い額」となる算出方法による許諾実績がなくとも,同項の適用は妨げ られない,(2)実際にも,被控訴人は,著作権等管理事業を開始した平成 26年度以降,年間の包括的利用許諾契約によって区域外再放送を許諾 するに当たり,累計12社(平成27年度10社,同28年度9社,同 29年度9社)の有線テレビジョン放送事業者につき,本件減額措置を 施さずに,有料視聴世帯数に地上テレビジョン放送1波当たり年額60 0円を乗じた額の使用料を徴収している旨主張する。
まず,上記(1)の点について,著作権法114条4項は,同条3項により損害の賠償を請求する場合において,当該著作権等管理事業者が定め る使用料規程により算出した金額をもって,同条3項に規定する金銭の 額とする旨を定めるものである。そして,同条3項は,不法行為による 著作権等侵害の際に著作権者等が請求し得る最低限度の損害額を法定し た規定であるところ,不法行為に基づく損害賠償制度は,被害者に生じ た現実の損害を填補することを目的とするものであるから,現実の損害 が発生しなかった場合には,それを理由とする賠償請求をすることがで きないことは自明である。 これを本件についてみるに,前記(ア)のとおり,被控訴人は,ほぼ全て のケーブルテレビ事業者との間で,3者契約又は2者契約の方式により 年間の包括的利用許諾契約を締結し,3者契約の場合は本件基本合意に 基づき,2者契約の場合は本件使用料一覧(2者契約)に基づき定めら れた使用料額をケーブルテレビ事業者から徴収しており,これらの事業 者のうち,本件基本合意に基づく減額措置又は本件使用料一覧(2者契 約)に基づく減額措置を受けることが可能であるにもかかわらず,これ\nを受けずに,それよりも遥かに高額な,本件使用料規程3条(1)又は(2)に 定められた区域内再放送及び区域外再放送の使用料を支払っている事業 者は存在しない。被控訴人と控訴人との交渉の過程においても,本件基 本合意に基づく3者契約又は本件使用料一覧(2者契約)に基づく2者 契約によることが,当然の前提とされていたものである。
そして,このような被控訴人とケーブルテレビ事業者との間の同時再 放送に係る実際の利用許諾契約における使用料の額,控訴人による本件 有線放送権の利用の態様,控訴人と被控訴人の間の再放送同意に係る利 用許諾契約に関する交渉経緯(前記ア(エ))等によれば,本件における使 用料相当額の算定に当たって,実際の利用許諾契約において用いられた 例がなく,かつ,上記減額措置を受ける場合と比較して使用料が遥かに 高額となる,本件使用料規程3条(1)又は(2)による場合の算定方法を用い ることは,被控訴人に生じた現実の損害の算定方法としてはおよそ非現 実的というべきであり,相当でない。 次に,上記(2)の点について,被控訴人が,累計12社の有線テレビジ ョン放送事業者との間で,本件使用料規程に基づき,区域外再放送の使 用料を1世帯1ch当たり年額600円とする年間の包括的利用許諾契 約を締結し,同規程に基づき算定された金額を徴収していることについ ては,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はない。また,被控訴人の 主張によれば,上記12社はいずれも重複波等の区域外再放送を行った 者であるところ,前記認定の被控訴人とケーブルテレビ事業者との間の 同時再放送に係る利用許諾契約の締結状況に照らすと,上記12社は, 本件基本合意に基づく3者契約又は本件使用料一覧(2者契約)による 2者契約を締結した上で,本件基本合意(1)(3)の定めに基づき,「有料視 聴世帯数×1世帯1chあたり年額600円×区域外再放送(重複波等) ch数」の使用料を支払ったものであると推認される。そして,上記1 2社において,本件基本合意に基づく減額措置(3者契約の場合)又は 本件使用料一覧(2者契約)に基づく減額措置(2者契約の場合)を受 けることが可能であるにもかかわらず,減額措置を受けずに,本件使用\n料規程に定められた区域外再放送の使用料を支払っていることを認める に足りる証拠はない。 したがって,被控訴人の上記各主張を採用することはできない。
ウ 被控訴人は,控訴人が本件有線放送権を侵害したことにより被控訴人が 受けた損害の額として,著作権法114条3項及び4項により算定される 損害額を主張するところ,前記イのとおり,本件において著作権法114 条4項を適用して,本件使用料規程3条(1)又は(2)に基づいて被控訴人の損 害の額を算定することは,相当でない。そこで,同条3項により算定され る被控訴人の損害の額について,以下検討する。 同条3項は,著作権及び著作隣接権侵害の際に著作権者,著作隣接権者 が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定である。また,同項所定の 「その著作権…又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当 する額」については,平成12年法律第56号による改正前は「その著作 権又は著作隣接権の行使につき通常受けるべき金銭の額に相当する額」と 定められていたところ,「通常受けるべき金銭の額」では侵害のし得にな ってしまうとして,同改正により「通常」の部分が削除された経緯がある。 そして,かかる法改正の経緯に照らせば,著作権及び著作隣接権侵害をし た者に対して事後的に定められるべき,これらの権利の行使につき受ける べき金銭の額は,通常の利用許諾契約の使用料に比べて自ずと高額になる であろうことを考慮すべきである。
これを本件についてみると,前記イ(ア)の被控訴人とケーブルテレビ事 業者との間の同時再放送に係る実際の利用許諾契約における使用料の額, 控訴人による本件有線放送権の利用の態様等の事実に加えて,控訴人と被 控訴人の間の再放送同意に係る利用許諾契約に関する交渉経緯など,本件 訴訟に現れた事情を考慮すると,著作権及び著作隣接権侵害をした者に対 して事後的に定められるべき,本件での利用に対し受けるべき金銭の額は, 被控訴人とケーブルテレビ事業者との間における再放送使用料を現実に 規律していると認められる本件基本合意及び本件使用料一覧(2者契約) をベースとし,そこに定められた額を約1.5倍した額である,区域内再 放送につき1世帯1ch当たり年額36円及び区域外再放送につき1世 帯1ch当たり年額180円とし,平成26年度についてはその半額を下 らないものと認めるのが相当である。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成28(ワ)28925等

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平成31(ネ)10035等  著作権侵害差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件  著作権  民事訴訟 令和元年9月18日  知的財産高等裁判所  静岡地方裁判所

 カラオケ店舗において、顧客が楽器演奏をすることができました。かかるカラオケ店舗の行為が著作権侵害かが争われました。知財高裁は、演奏権侵害と認定しました。1審はアップされていません。

 被控訴人は使用料規程により使用料を得ているのであるから,使用料規 程に従って算出される使用料相当額をもって,被控訴人の損害と認めるのが 相当である。 これに対し,控訴人らは,使用料規程のうち,入場料もなく無償で行わ れる著作物の演奏に対しても使用料を徴収する規定は,著作権法による保護 の範囲を超えており,憲法上の表現の自由及び幸福追求権などの権利を過度\nに制約するもので,公序良俗に反し無効であるし,本件におけるSUQSU Qでの演奏活動は著作権法の規制の範囲外のものであり,無償の範疇にあっ たと主張する。しかし,演奏権が及ばない場合については著作権法38条1 項が規定するとおりであり,使用料規程の内容に照らし,一般に演奏権が及 ぶ場合について使用料を規定したものであることは明らかであり,著作権の 保護範囲に関する控訴人らの主張は独自の見解であって採用できない。また, 控訴人らの行為が著作権法38条1項により演奏権が及ばない場合に該当し ないことは上記2(7)において説示したとおりであり,控訴人らの行為が著 作権法の規制の範囲外であるとの控訴人らの主張は失当である。 さらに,控訴人らは,使用料規程は具体性,合理性を欠くものであるこ とを主張する。しかし,使用料規程には,社交場として定義される施設にお いて,椅子又は座席以外の客席(客にダンスをさせるための場所を含む。) については面積を1.5m2で除した数を座席数とみなすことを含めた座席数 の算出方法,標準単位料金の算出方法(客1人あたりにつき通常支払うこと を必要とされる税引き後の料金相当額(いずれの名義をもってするかを問わ ない))が定められており,十分に具体性がある。また,著作権等管理事業\n者において締結する著作物の利用許諾契約の性質上,このような座席数及び 標準単位料金を基準に使用料を定めることにも合理性があるというべきであ る。 また,控訴人らは,損害額の算定に当たり,包括的利用許諾契約を締結 する場合の規定によるべきであるとか,本件店舗における生演奏はカラオケ と異ならないから使用料規程の別表7(2)記載の表中の2の区分が適用され\nるべきであるなどと主張するが,いずれも採用できない。
・・・
以上によれば,現SUQSUQに係る平成28年11月1日から 令和元年7月8日までの使用料相当額は139万3548円であり, 弁護士費用としては1割である13万9355円をもって相当と認め るから,その合計額は153万2903円である。
(ウ) 令和元年7月9日以降の損害ないし損失に係る請求について 将来の給付を求める訴えは,あらかじめその請求をする必要がある場 合に限り認められるところ(民訴法135条),継続的不法行為に基づ き将来発生すべき損害賠償請求権については,たとえ同一態様の行為が 将来も継続されることが予測される場合であっても,損害賠償請求権の\n成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具 体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定するこ とができ,かつ,その場合における権利の成立要件の具備については債 権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専ら債務者の立証すべき 新たな権利成立阻却事由の発生として捉えてその負担を債務者に課する のは不当であると考えられるようなものは,将来の給付の訴えを提起す ることのできる請求権としての適格を有しないものと解するのが相当で ある(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決民集35巻10号13 69頁,最高裁平成19年5月29日第三小法廷判決集民224号39 1頁等参照)。 以上によれば,現SUQSUQにおける,控訴審の口頭弁論終結日の 翌日である令和元年7月9日以降の不法行為に基づく損害賠償請求ない し不当利得返還請求に係る訴えは不適法であり,却下を免れない。
(5) 控訴人らの主張について
控訴人らは,被控訴人による実態調査の方法そのものに大きな問題があ り,その調査結果の信憑性は低いと主張するが,そのようにいえないことは 前記1において引用した訂正された原判決説示のとおりである。 使用料規程によれば,座席の配置,実際の売上げや来店者数や椅子の利 用状況により使用料額が変動するものではないから,これらの点についての 控訴人らの主張は採用できない。また,控訴人らの主張する補助椅子がどの ような椅子を指すのかは明らかではないが,甲10,24,25,41,4 2からは,本件店舗の各店の座席数は31〜40席であったものと認めら れ,これを覆すに足りる証拠はない。 控訴人らは,平成29年11月21日から同年12月11日にかけての 利用状況や営業時間についての主張をするが,いずれもこれを裏付ける的確 な証拠はなく,上記認定を左右するものではない。 控訴人らのその余の主張も採用できない。
4 小括
以上によれば,被控訴人の拡張後の請求は,(1)差止請求,(2)金銭請求 のうち,i)控訴人Xにつき,平成20年6月18日から平成28年10月31 日までの著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償金合計から既払金を控除した 残額470万4605円(このうち51万3523円の限度で控訴人Yと連帯 して)及びこれに対する不法行為以後である同年12月14日から支払済みま で民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,ii)控訴人Yにつき,平 成27年12月7日から平成28年10月31日までの著作権侵害の不法行為 に基づく損害賠償金51万3523円及びこれに対する不法行為以後である同 年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支 払(うち,51万3523円及びこれに対する平成28年12月14日から支 払済みまで年5分の割合による金員の限度で控訴人Xと連帯支払),iii)控 訴人らにつき,連帯して,同年11月1日から令和元年7月8日(控訴審口頭 弁論終結日)までの不法行為についての損害賠償金153万2903円の支払 を求める限度で理由があり,同月9日から管理著作物の使用終了に至るまでの 不法行為に基づく損害賠償金又は不当利得金の将来請求に係る部分は不適法で あり,その余の請求は理由がないことになる。
したがって,原判決中,(1)の差止請求を認容した部分,(2)iii)の控 訴人らに対する請求について,令和元年7月9日以降に生ずべき損害賠償金又 は不当利得金の支払を求める訴えを却下した部分は相当である。(2)の i)の 控訴人Xに対する請求に関する部分については,470万4605円(このう ち51万3523円の限度で控訴人Yと連帯して)及びこれに対する平成28 年12月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を超え て認容するのは相当でないから,本件控訴に基づき変更すべきことになる。 (2)の ii)の控訴人Yに対する請求に関する部分については,51万352 3円及びこれに対する同年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割 合による遅延損害金の支払(うち,51万3523円及びこれに対する平成2 8年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で控訴人X と連帯支払)を,(2)の iii)の控訴人らに対する請求のその余の部分につい ては,153万2903円の連帯支払を命じるべきであるから,本件附帯控訴 に基づき変更すべきことになる。また,仮執行宣言については,被控訴人が求 める限度で付するのが相当である。

◆判決本文

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