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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

周知表示(不競法)

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和6(ネ)10031  不正競争行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和6年10月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

日本国内のウェブサイトで、海外における「Sushi Zanmai」のお店紹介することが、日本の商標権侵害・不正競争行為に該当するかが争われました。 1審では、商標権侵害を認め、差止、損害賠償(約600万円)が認められました。知財高裁は、商標としての使用ではない、商品等表示でもない、仮に商標としての使用であると考えた場合でも、日本国内で提供される役務についての使用ではないとして、 これを取り消しました。

(2) 被告各表示の商標法2条3項8号該当性について
前記(1)の本件ウェブサイトの構成と記載内容によれば、以下に述べるとお り、本件ウェブサイトは、全体として、被告を含むダイショーグループが東 南アジアにおいて日本食を提供する飲食店チェーンを展開するとともに、そ こで提供するための鮮度の高い良質な食材を日本から輸出する事業を営んで いることを紹介するものであると認められるから、被告各表示を付した本件 各ウェブページについても、本件すし店の「役務に関する広告」に当たると 認めることはできない。
ア 「事業内容」のページ(前記(1)ウ)は、説明項目の記載順が「食材・食 品の輸出/提案」、「加工・流通」、「物産展・地域振興」、最後に1 0の飲食店チェーンの一つに被告各表示を付した「店舗開発・メニュー 開発」となっており、それぞれ相応な分量の説明と写真があり、冒頭の 「食材・食品の輸出/提案」の末尾は、食材の海外輸出を検討する日本 国内の事業者に向けた呼びかけとなっている。そうすると、これに続く 「加工・流通」、「物産展・地域振興」、「店舗開発・メニュー開発」 は、輸出先の国における流通経路の川下に関する事業内容を順次紹介す ることにより、海外輸出を検討している国内の事業者に向けて、ダイシ ョーグループを通じた輸出の利点を記載したものといえる。
イ このような食材の輸出に関連する内容は、前記(1)のとおり本件ウェブサ イトの随所にみられ、特に「海外輸出をお考えの方」のページ(前記(1) カ)は、食材の海外輸出を検討する国内事業者に向けたものであること が明らかである。
ウ これに対し、被告各表示を付した部分は、上記「事業内容」のページに おいては、ページの最後に被告各表示と簡潔な説明文及び英文ウェブサ イトへのリンクがあるにとどまり、ページ全体に占める割合は少なく、 具体的なメニューの内容、価格、店舗の所在場所といった、一般消費者 に向けて本件すし店の役務の内容を知らせる内容は乏しい(これらの情 報は、リンクされた英文ウェブサイト(乙37)に掲載されていること が推認される。)。しかも、被告各表示は、ダイショーグループが展開 している飲食店チェーンを紹介した部分に掲載されている10種類の飲 食店(その中には簡潔な説明文中にシンガポールやクアラルンプールの 店舗であることが明記されているものもある。)の一つにすぎない。そ して、同ページの記載内容からも、本件すし店が東南アジアに所在する ことは比較的容易に読み取ることができる。 トップページ(前記(1)ア)において被告各表示を用いた部分をみても、 英文ウェブサイトへのリンクがないことを除いては「事業内容」のペー ジと同じであり、ページ全体に占める割合が多いとはいえず、10種類 の飲食店チェーンの一つとして店舗情報が提供されていることは、前記 「事業内容」のページと同様である。 さらに、上記の「事業内容」のページや「ダイショーグループとは」 のページ(前記(1)イ)をみれば、本件すし店が東南アジアに所在するこ と、日本法人である被告が国内からの食材の輸出の事業を営んでいるこ とは、比較的容易に読み取ることができる。
エ これに対し、原告は、本件各ウェブページの被告各表示が、ダイショー グループの事業内容として本件すし店の役務を「広く世間に告げ知らせる」 ことを目的として使用されていること、その役務に係る出所表示機能、自 他商品識別機能等を果たす態様で使用されていることは明らかであるから、 本件すし店の「役務に関する広告」に該当する旨主張する。 しかし、前記の本件ウェブサイトの構成と記載内容によれば、被告各表 示を用いた部分が本件すし店の役務を「広く世間に告げ知らせる」とい う一面があることを全く否定することはできないとしても、全体からみ ると、本件各ウェブページは日本からの食材の輸出という役務の広告と いうべきであって、被告各表示を用いた部分は、ダイショーグループが 展開する他の飲食店チェーンの紹介と併せて、国内の事業者に対し、ダ イショーグループを通じて輸出した場合の食材の使用先や使用状況を明 らかにし、これにより被告との間で食材の輸出取引を行うための誘因と する目的で使用されているというべきである。 このような使用態様については、本件すし店の役務に係る出所表示機能、 自他商品識別機能等を果たす態様で使用されていると評価することはで きない。
・・・
ク 以上によれば、被告各表示は、その態様に照らし、食材の海外輸出を検 討する国内事業者に向けた本件各ウェブページの中で、被告の事業を紹 介するために使用されているにすぎず、本件すし店を日本国内の需要者 に対し広告する目的で使用されたものではなく、現にそのような効果が 生じている証拠もない。 したがって、本件ウェブページ掲載行為は、「本件すし店の役務に関 する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行為」として商 標法2条3項8号に該当するものということはできない。
(3) 被告各表示と原告各商標権の侵害について
仮に、原告が主張するとおり、被告各表示の使用が本件すし店の存在を日 本国内に広く知らしめるという点において「広告」に該当し、商標的使用に 該当すると考えた場合でも、以下のとおり、被告各表示は、日本国内におけ る役務の提供について使用されているものではないから、原告各商標権を侵 害するものではない。 ア すなわち、被告各表示は、日本語で記載された本件各ウェブページに掲 載されているから、これが本件すし店の広告に該当すると考えたときは、 日本国内において商標法2条3項8号に該当する行為がされたものと一応 いうことができる。
イ しかるところ、前記のとおり、本件各ウェブページは、食材の海外輸出 を検討する国内事業者に向けたものであると認められ、被告各表示は、本 件各ウェブページの中でダイショーグループが海外で日本の食材を用いた 飲食店チェーンを展開していることを示す際に使用されている。本件各ウ ェブページには、本件すし店の具体的なメニューの内容、価格など、一般 消費者に向けて本件すし店の役務を知らせる内容は一切記載されておらず、 「事業内容」のページの被告各表示の下のリンクから誘導されるのは英文 のページのウェブサイトである。
ウ また、証拠(乙17、21)及び弁論の全趣旨によれば、本件すし店は、 日本国外(シンガポール、マレーシア)で飲食物の提供等の役務を提供し ていることが認められ、シンガポールやマレーシアで商標登録されている 被告各表示(甲8、乙14、15。商標権者はスーパースシである。)は、 現地でその役務を提供するに当たり、使用されている標章である。本件す し店が、日本国内で同様の役務を提供している事実は認められない。
エ そうすると、被告各表示は、本件すし店の日本国内における役務の提供 について用いられているものではない。被告各表示を見た日本国内の消費 者が被告各表示により役務の提供の出所を誤認したとしても、本件すし店 が日本で役務を提供していない以上、その誤認の結果(原告の店であると 誤認して、本件すし店から指定役務の提供を受けること)は、常に日本の 商標権の効力の及ばない国外で発生することになるはずであり、日本国内 で原告各商標権の出所表示機能が侵害されることはない。なお、証拠(甲 10、11)によれば、クアラルンプールの本件すし店に入店する際、こ れを原告の支店であると誤認した日本人がいた事実が認められるが、当該 出所の誤認が本件各ウェブページの被告各表示を閲覧した結果生じたもの であることを認める証拠はない上、出所の誤認が国外で発生していること に変わりはないから、当該事実は、前記判断を左右するに足りるものでは ない。
オ もともと、一国において登録された商標は、他の国において登録された 商標から独立したものとされており(パリ条約6条1項及び3項)、かつ、 いわゆる属地主義の原則により、商標権の効力は、その登録された国内に 限られるものと解される。外国において適法に登録された商標である被告 各表示が当該外国における指定役務の提供を表示するため本件各ウェブペ ージ上で使用された場合において、原告各商標権に基づき被告各表示の使 用差止等を認めることは、実質的にみて、原告各商標の国内における出所 表示機能等が侵害されていないにもかかわらず、外国商標の当該外国にお ける指定役務表示のための適法な使用を日本の商標権により制限すること と同様の結果になるから、商標権独立の原則及び属地主義の原則の観点か らみても相当ではないというべきである。
・・・
以上によれば、原告の主張を考慮しても、本件各ウェブページは、日本か らの食材の輸出という役務の広告というべきであり、仮に被告各表示を本件 すし店の役務の広告であると考えた場合でも、当該役務は国外で提供される 役務であるから、原告各商標の国内における出所保護機能を害するものでは ない。
・・・
(1) 前記2のとおり、本件各ウェブページにおいて、被告各表示は、日本から の食材の輸出という被告の事業に関連する情報の一つを示すために使用され ていると認められるから、他人の商品等表示と同一又は類似の商品等表示を 使用し、出所表示機能、自他商品識別機能等を果たす態様で使用されている と評価することはできない。また、仮に、被告各表示が、本件すし店の提供 する役務を表示するために使用されていると考えたとしても、当該役務は日 本国内の役務ではなく、国外で提供される役務であるから、日本国内におい て、出所表示機能、自他商品識別機能等を果たす態様で使用されていると評 価することはできない。
そうすると、本件ウェブページ掲載行為は、被告各表示を商品等表示とし て「使用」するもの(不競法2条1項1号)に当たらないから、その余の点 を判断するまでもなく、不競法2条1項1号に基づく原告の請求は、理由が ない。

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1審はこちら。

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令和5(ネ)10111  不正競争行為差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和6年9月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 イス(TRIPP TRAPP)の類似品に対して、商品等表示も認められず、著作権の適用なしと判断された控訴審判決です。知財高裁も同様の判断をしました。\n

そこで検討すると、被告各製品の形態は、別紙「被告各製品の形態」記載 の構成aから構\成fまで(以下、単に「構成 a」などという。)のとおりで あり、これによると、被告各製品は、本件顕著な特徴を構成している特徴1) から特徴3)までとの対比において、左右一対の側木の2本脚であり、かつ、 座面板及び足置板が左右一対の側木の間に床面と平行に固定されており(特 徴1))、左右方向から見て、側木が床面から斜めに立ち上がっており、側木 の下端が脚木の前方先端の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面 に接していることによって、側木と脚木が約66度の鋭角による略L字型の 形状を形成している(特徴2))が、側木の内側に溝は形成されておらず、側 木の後方部分に、固定部材と結合してネジ止めするための円形状の穴が多数 形成され、座面板及び足置板を側木の間で支持する支持部材、支持部材を側 木の間において掛け渡された状態で側木に固定する固定部材及びネジ部材を 備え、2本の側木後方に設けられた穴と固定部材を結合した状態でネジ部材 を閉めることで、支持部材と固定部材によって側木を前後から挟持して押圧 し、支持部材を側木に固定しており(構成f)、原告らの商品等表\示の特徴 3)を備えていないものと認められる。
なお、その他の形態上の諸要素を考慮しても、被告各製品は、側木及び脚 木からなる2本脚、背板、座面板及び足置板、横木のほかネジ部材、支持部 材、固定部材等から構成され、脚木は一直線であるが、側木は一直線ではな\nく、側木の上端部分は床面と垂直に折れ曲がっており、2本脚が、正面視で 床面に垂直で相互に平行となるように配置され、側木と脚木の結合部分から 離れた脚木中央部に横木が配置され、中央部に楕円形の穴が形成されている 背板は側木の最上部に配置され、座面板と足置板は楕円形の短辺を切り落と したような曲線的形状とされ、ネジ部材、支持部材及び固定部材等により側 木に固定されていることから、被告各製品の形態においては、曲線的な要素 とともに、座面板及び足置板の支持部分に複数の部材が利用され、その安定 性が特徴的となっており、その印象も、原告製品における、直線的な形態が 際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象とは異なるものとなっている。 よって、原告製品全体の形態の特徴である本件顕著な特徴について、被告各 製品は、これを備えていないものと認められる。
(3) したがって、被告各製品は、本件顕著な特徴を備えていないから、取引の 実情の下において、取引者、需要者が、両者の外観、称呼、又は観念に基づ く印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれ があるものということはできない。よって、原告らの商品等表示と被告各製\n品の形態が類似すると認めることはできない。
・・・
著作権法2条2項は、「美術の著作物」には「美術工芸品」を含むものとする旨規定しており、同項の美術工芸品は実用的な機能と切り離して独立の美的鑑賞の対象とすることができるようなものが想定されていると考えられるのであって、同項の規定は、それが例示規定であると解した場合でも、いわゆる応用美術に著作物性を認める場合の要件について前記のように解する一つの根拠となるというべきである。\n
(2) 以上を踏まえ、本件について検討すると、原告製品については、特徴1)か ら特徴3)まで及び側木と脚木をそれぞれ一直線とするデザインという本件顕 著な特徴があり、これにより原告製品の直線的な形態が際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象を与えるものとなっていると認められることは、 前記のとおりである。しかし、本件顕著な特徴は、2本脚の間に座面板及び 足置板がある点(特徴1))、側木と脚木とが略L字型の形状を構成する点\n(特徴2))、側木の内側に形成された溝に沿って座面板等をはめ込み固定す る点(特徴3))からなるものであって、そのいずれにおいても高さの調整が 可能な子供用椅子としての実用的な機能\そのものを実現するために可能な複\n数の選択肢の中から選択された特徴である。また、これらの特徴により全体 として実現されているのも椅子としての機能である。したがって、本件顕著\nな特徴は、原告製品の椅子としての機能から分離することが困難なものであ\nる。すなわち、本件顕著な特徴を備えた原告製品は、椅子の創作的表現とし\nて美感を起こさせるものではあっても、椅子としての実用的な機能を離れて\n独立の美的鑑賞の対象とすることができるような部分を有するということは できない。また、原告製品は、その製造・販売状況に照らすと、専ら美的鑑 賞目的で制作されたものと認めることもできない。それのみならず、仮に、 原告製品の本件顕著な特徴について、独立の美的鑑賞の対象となり得るよう な創作性があると考えたとしても、前記のとおり、被告各製品は、本件顕著 な特徴を備えていないから、原告製品の形態が表現する、直線的な形態が際\n立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象とは異なるものとなっているの であって、被告各製品から原告製品の表現上の本質的な特徴を直接感得する\nことはできない。そうすると、結局、本件において、著作権侵害は成立しないといわざるを得ない。

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令和5(ワ)70654  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年7月8日  東京地方裁判所

書籍の題号が、不競法2条1項1号又は2号に定める商品等表示に該当するかが争われました。裁判所は、該当しないと判断しました。問題となった題号は「牧野日本植物圖鑑」です。

(1) 不競法2条1項1号及び2号は、「商品等表示」につき、人の業務に係る\n氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を 表示するものと定義している。そうすると、同各号にいう「商品等表\示」と は、商品又は営業を表示するものであるから、出所表\示機能を有するものに\n限られるというべきである。そして、書籍には発行者等の表示が付されるの\nが通例であり、書籍の出所は、一般に上記発行者等の表示が示すものである\nから、書籍の題号は、その書籍の内容を示すものにすぎず、出所表示機能\を 有するものとはいえない。
そうすると、書籍の題号は、特段の事情がない限り、同各号にいう「商品 等表示」に該当しないと解するのが相当である。\nこれを本件についてみると、証拠(甲2ないし10、19)及び弁論の全 趣旨によれば、「牧野日本植物圖鑑」という本件題号は、牧野執筆に係る日 本の植物図鑑という書籍の内容を端的に示すものにすぎず、牧野という執筆 者に特徴があるのは格別、書籍の題号としてはありふれたものであるから、 本件題号には出所を示すような顕著な特徴はない。 そして、証拠(乙1、2)及び弁論の全趣旨によれば、一般に題号を同じ くする書籍であっても、別々の発行者等により発行されているものも少なか らず存在することが認められる。当該認定に係る取引の実情に鑑みると、本 件題号に接した需要者又は取引者が、これを書籍の出所を示すものとして直 ちに理解するものとはいえない。 これらの事情を踏まえると、本件題号は、出所表示機能\を有するものとは いえず、上記特段の事情があるものと認めることはできない。
したがって、本件題号は、不競法2条1項1号又は2号にいう「商品等表\n示」に該当するものと認めることはできない。 のみならず、被告書籍についてみると、仮に「牧野日本植物圖鑑」という 牧野執筆に係る植物図鑑が全国的に知られていたという立場を採用したとし ても、本件全証拠によっても、原告が本件図鑑を出版していた事実までも全 国的に知られているものとして著名であると認めるに足りない。 他方、仮に、原告が本件図鑑を出版していた事実が、一部の専門家や研究 者の間で周知であるという立場を採用したとしても、前記前提事実及び証拠 (甲19)によれば、被告書籍の表紙には、本件題号の左下欄に「三四郎書\n館」という発行所を示す表示が付されていることからすると、被告書籍に接\nした需要者又は取引者は、被告書籍の発行所が、原告ではなく「三四郎書館」 であると理解するのは明らかである。 そうすると、被告書籍の出版は、本件図鑑との混同を生じさせる行為とは いえないことは、明らかである。

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令和4(ワ)4104  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年12月23日  東京地方裁判所

漏れていたのでアップします。取引の際にそもそも製品の形態自体に着目して購入しない場合には、不競法2条1項1号の商品等表示には該当しないと判断されました。\n

(1) 不競法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示(人の業務に係る氏名、\n商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示\nするものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表示を使用等する\nことをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定は、周知な 商品等表示の有する出所表\示機能を保護するという観点から、周知な商品\n等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧\n客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保するものと解 される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有す\nる場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能\ を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態が商標 等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を発揮するような特 段の事情がない限り、商品等表示には該当しないというべきである。そう\nすると、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴 (以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、2)特定の事業者に よって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強 力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所 を表示するものとして周知(以下「周知性」という。)であると認められ\nる特段の事情がない限り、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当し\nないと解するのが相当である。 そして、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のも\nのと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止するという同号の上記趣旨 目的に鑑みると、商品の形態が、取引の際に出所表示機能\を有するもので はないと認められる場合には、特定の出所を表示するものとして特別顕著\n性又は周知性があるとはいえず、上記商品の形態は、不競法2条1項1号 にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\n
(2) これを本件についてみると、前記認定事実によれば、1)本件製品は、中 圧B供給用ガス遮断弁であるところ、その国内における需要者は、ガスボ イラーメーカーやガスバーナーメーカーの専門業者約30社に限られ、一 般消費者が店頭において商品を見比べて購入するという性質の製品ではな いこと、2)本件製品は、その性質上、高度の安全性が求められる製品であ り、不具合があると、多大な損失が生ずる可能性があるため、需要者であ\nる専門業者は、購入に当たって、製品の安全性、信頼性を重視しているこ と、3)現に、需要者は、2〜3年かけてテストを繰り返しながら慎重に製 品の採否を検討するのであり、その検討のためには、製品内部の動作や構\n造についても詳細な情報を要求するのが通例であること、4)被告製品自 体、原告製品の機能やアフターサービスに対する需要者の要望を受けて、\n原告製品の互換品として開発されるに至ったものであること、5)被告製品 の価格は、約50万円と高額であり、原告製品も同程度であると推認され ること、6)原告自身、原告製品に関する宣伝広告に当たって、原告製品の 形態上の特徴それ自体を強調しておらず、被告においても、被告製品の形 態をセールスポイントとするものではないこと、以上の事実が認められ る。
上記認定事実によれば、本件製品の需要者は、約30社の専門業者に限 られるのであり、当該専門業者は、長期間費やし製品をテストするなどし て、専ら安全性、信頼性の観点から本件製品を購入していることが認めら れることからすると、需要者である本件製品の専門業者は、取引の際にそ もそも製品の形態自体に着目して本件製品を購入するものとはいえない。 上記認定に係る本件製品の取引の実情に鑑みると、原告製品の形態は、 一定程度の周知性があるとしても、出所表示機能\を有するものではなく、 不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当であ\nる。 仮に、原告製品の形態が商品等表示に該当するという見解に立ったとし\nても、上記認定に係る本件製品の取引の実情を踏まえると、需要者である 本件製品の専門業者は、長期間費やし製品をテストするなどして、専ら安 全性、信頼性の観点から本件製品を購入しているのであるから、当該需要 者において原告製品と被告製品の誤認混同が生じないことは、明らかであ る。 したがって、被告が被告製品を製造又は販売する行為は、不競法2条1 項1号の不正競争行為に該当するものと認めることはできない。

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令和4(ワ)70009  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年5月15日  東京地方裁判所

 神棚の形状について、周知の商品形態なので、不正競争行為であると主張しましたが、周知性無しと判断されました。

(2) 原告が主張する原告神棚板の特徴1)から7)のうち、特徴7)は、商品の機能を\nいうものであり、また、特徴6)も金具の形状を問題とするものではなく商品の 機能をいうものといえる。このような機能\自体が商品の形態による商品等表示\nとなることはないと解される。
特徴1)から5)のうち、特徴1)から3)は壁面に取り付け可能な棚としては基本\n的な形態のものであることがうかがわれ、また、特徴4)、5)も、商品の一部分 の特徴で、かつ、それぞれの形態自体は独特のものとはいえないことがうかが われる。もっとも、本件証拠上、原告神棚板の販売が開始された平成16年よ り前の同種の商品の形態についての証拠はない。しかし、仮に、特徴1)から5) の組合せが他の同種の商品と異なる顕著な特徴であったと認められるとしても、 後記(3)のとおり、原告神棚板の特徴1)から5)の組合せが原告の出所を示すもの として周知になったことはなく、遅くとも令和2年10月までに原告神棚板の 形態が原告の出所を示すものとして周知となっていたとの原告の主張には理由 がない。
(3) 原告が主張する原告神棚板の特徴が原告の出所を示すものとして周知になっ ていたか否かについて検討する。
平成27年4月には、NHKの番組で原告神棚板が取り上げられた。しかし、 他に、全国的なテレビ番組で原告神棚板が取り上げられたことがあったことを 認めるに足りず、この一回の放送によって、原告神棚板の特徴1)から5)の組合 せが原告の出所を示すものとして需要者に周知になったとはいえない。また、 原告の神棚が写っている写真が、日刊紙、雑誌等に掲載されたことが認められ るが、それらは合計数回であり、これらによって、原告神棚板の特徴1)から5) の組合せが原告の出所を示すものとして需要者に周知になったとはいえない。 さらに、原告神棚板は、ホームセンター、神具店、仏具店、神社、原告の直 営店及びオンラインショップで販売されていた。主な販売先であるホームセン ターでは、原告の商品が多く取り扱われ(原告代表者は、ホームセンターの実\n店舗での原告の神棚、神具の展示、販売のシェアは70%を下回ることはなく、 80%を超えていると推計している。甲122)、原告の商品が、まとまって 展示、販売されている店舗もあった。しかし、原告は、神棚や関係する商品と して多種類の商品を販売していて、ホームセンターでもそのような多種類の商 品が販売されていた。原告神棚板は、原告が販売する複数の種類の神棚のうち の一つであり、その展示、販売に際しても、多種類の商品の中の一つとして展 示、販売されているのであって、原告神棚板の上記特徴が他の同種の商品とは 異なることを述べる宣伝文言によって強調されて展示、販売されていることも 認めるには足りない。これらからすると、原告神棚板の展示、販売によって、 原告神棚板の特徴1)から5)の組合せが原告の出所を示すものとして需要者に周 知になったとはいえない。
また、前記1(3)によれば、原告が主張する特徴1)から5)のうちの複数の特徴 を備える神棚板も販売されていて、原告が主張する特徴のいくつかやその組合 せについては原告が長期間独占的に使用していたと認めることもできない。 以上によれば、原告神棚板について、各報道や公刊物の記載、展示、販売に よって原告神棚板の特徴1)から5)の組合せが原告の出所を示すものとして需要 者に周知になったとは認められず、また、報道等の回数の少なさや、展示、販 売の際も多種類の商品の一つとして展示、販売されているにすぎないことから も、関係する事情を総合して考慮しても、原告神棚板の特徴1)から5)の組合せ が、原告の出所を示す表示として周知になったことはないと認められる。\n

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令和3(ワ)11358  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年3月19日  東京地方裁判所

被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業を行う会社で、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイショーグループ各社への輸出を行っていました。ダイショーグループは、シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レストラン」などの店舗を展開していました。本件各ウェブページは、日本語によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブページであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スーパースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載されていました。裁判所は、指定商品・役務が類似する、&商標も類似するとして、差止と約600万円の損害賠償を認めました。また、不正競争行為にも該当すると判断されています。
原告は「すしざんまい」です。

ア 本件各掲載行為のうち本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為について\n
前提事実(1)イ及びウ、(4)ア、証拠(甲4、23ないし25)並びに弁 論の全趣旨によれば、原告各商標の指定役務は「すしを主とする飲食物 の提供」であること、被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業 を行う株式会社であり、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイシ ョーグループ各社への輸出を行っていること、ダイショーグループは、 シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レスト ラン」などの店舗を展開していること、本件各ウェブページは、日本語 によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブペ ージであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スー パースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載さ\nれており、被告各表示とともに「手頃な価格で幅広い客層が楽しめる回\n転寿司。厳選した食材と豊富なメニューで、人気を集めています。」と の説明が掲載されていることが認められる。 このような事情からすれば、本件各ウェブページにおける被告各表示\nは、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲 載されたものであり、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に 係るものといえるから、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務\nとは類似するものといえる。 そして、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、\n「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法によ り提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当するといえ、被告は原 告各商標を「使用」したものと認められる。
被告の主張について
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の 提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の 使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、 あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\) や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の 品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各 表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。 そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の 有無を左右するものではないというべきである。
・・・・
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の 提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の 使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、 あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\) や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の 品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各 表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。 そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の 有無を左右するものではないというべきである。
イ 本件各掲載行為のうち本件各アカウント写真として被告表示2を掲載し\nた行為について
前提事実(1)ウ、証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、スー パースシは、マレーシアにおいて本件すし店を展開していること、本件各 アカウントは、本件すし店に係るアカウントであることが認められるが、 本件全証拠によっても、被告が本件各アカウントを管理していると認める ことはできない。
したがって、本件各アカウント写真の掲載行為については、被告が行っ たものと認めることができないから、被告が原告各商標を「使用」したと はいえない。
なお、本件では、不競法違反に関して被告が原告各表示と類似の商品等\n表示を「使用」(不競法2条1項1号)したといえるか(争点2−3)も\n問題となっているが、上記で説示したとおり、本件各アカウント写真の掲 載行為は被告が行ったとは認められないから、被告が原告各表示と類似の\n商品等表示を「使用」したともいえない。\n
・・・
商標法38条2項による損害額の算定について
商標法38条2項は、商標権者等が侵害行為による損害の額を立証するこ とが困難であることから、その立証を容易にするために設けられたものであ ると解される。そうすると、同項の適用が認められるためには、侵害者によ る侵害行為がなかったならば商標権者等が利益を得られたであろうという事 情が存在する必要があるものと解される。
証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、原告はマレーシアにおいてすし 店を展開していないことが認められるところ、本件全証拠によっても、日本 国内における原告すし店とマレーシアにおける本件すし店の市場が競合する と認めることはできないから、被告による侵害行為(本件各ウェブページに 被告各表示を掲載した行為)がなかったならば原告(原告すし店)が利益を\n得られたであろうという事情が存在すると認めることはできない。 したがって、本件では、商標法38条2項を適用することはできない。
(2) 商標法38条3項よる損害額の算定について
ア 前提事実(5)のとおり、平成26年から令和5年までの被告の本件すし 店に対する売上げは合計1億4475万8151円である。 そして、証拠(甲44、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、株式会社 帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用 の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤル ティ料率に関する実態把握〜」には、商標権における使用料率(ロイヤ ルティ料率)全体の平均値は2.6パーセント、第43類「飲食物の提 供及び宿泊施設の提供」に関する平均値は3.8パーセントであると記 載されていることが認められる。 この点について、前提事実(1)のとおり、被告は、スーパースシを含め たダイショーグループ各社に対して、日本で仕入れた食材の輸出を行っ ているところ、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載すること\nによって本件すし店(スーパースシ)の売上げが増加した場合、それに 伴って被告の本件すし店に対する売上げ(輸出)も増加する関係にある ものと認められる。
他方で、前記(1)で説示したとおり、日本国内における原告すし店とマ レーシアにおける本件すし店の市場が競合すると認めることはできない ことに照らすと、本件各ウェブページへの被告各表示の掲載が被告の売\n上げに与えた影響は限定的なものであったことがうかがわれる。 このような事情に加え、本件各ウェブページにおける被告各表示は遅\nくとも平成26年12月頃から相当長期にわたって掲載されていたと認 められること(前提事実(4)及び弁論の全趣旨)及び商標権侵害があった 場合に事後的に定められるべき登録商標の使用に対し受けるべき金銭の 額は通常の使用料と比べて高額となることを考慮すると、被告による原 告各商標の使用に対し原告が受けるべき金銭の額に相当する額を算定す るための使用料率については、3.8パーセントと認めるのが相当であ る。 そうすると、上記の金銭の額は、被告の本件すし店に対する売上げで ある1億4475万8151円に使用料率3.8パーセントを乗じた5 50万0809円であると認められる。
イ これに対し、原告は、前記アの金銭の額を算定するに当たっては、被 告が被告各表示を被告各ウェブサイトに掲載することにより自己の取引\n上の信頼を高めて事業全般に及ぶメリットを享受していることから、被 告の全売上高をその基礎とすべきであると主張する。 しかしながら、上記の金銭の額を算定する際に基礎とすべきは、侵害 行為に関する売上高であると解されるところ、別紙被告ウェブページ目 録記載のとおり、本件各ウェブページに掲載された被告各表示は本件す\nし店に関するものであり(甲4及び弁論の全趣旨)、それを超えて被告の 事業全体に関するものであると認めるに足りる証拠はないから、原告の 上記主張は採用できない。

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令和5(ワ)70139  著作権侵害差止請求事件  著作権  民事訴訟 令和5年12月7日  東京地方裁判所

木枯し紋次郎の作者の遺族が、口に長い竹の楊枝をくわえた長脇差を携えた渡世人の図形について、木枯し紋次郎をイメージさせるとして、著作権侵害、不競法2条1項1号該当性を争いました。裁判所は、抽象的アイデアであると判断しました。

さらに念のため、本件渡世人に係る記述自体をみても、原告ら主張に係る 本件渡世人は、1)通常より大きい三度笠を目深にかぶり、2)通常よりも長い 引き回しの道中合羽で身を包み、3)口に長い竹の楊枝をくわえ、4)長脇差を 携えた渡世人というものである。そして、証拠(乙1ないし15)及び弁論 の全趣旨によれば、渡世人が、三度笠を目深にかぶり、引き回しの道中合羽 で身を包み、長脇差を携えていたというのは、江戸時代の渡世人の姿として ありふれた事実をいうものであり、口に長い竹の楊枝をくわえるという部分 を更に加えたとしても、これがアイデアとして独自性を有するかどうかは格 別、著作権法で保護されるべき創作的表現という観点からすれば、その記述\n自体は明らかにありふれたものである。仮に、本件渡世人に対しその後本件 テレビ作品で加えられた表現をもって二次的著作物とする原告らの主張に立\nって、「通常より大きい」三度笠で、「通常よりも長い」道中合羽で身を包 んでいるという記述を加えて更に検討したとしても、これらの記述も同じく 極めてありふれたものであり、原告らの上記主張の当否を判断するまでもな く、本件渡世人に係る上記記述は、全体として、ありふれた事実をありふれ た記述で江戸時代の渡世人をいうものにすぎず、これを創作的表現であると\n認めることはできない。
・・・・
不正競争防止法2条1項1号又は2号にいう「商品等表示」とは、人の業務\nに係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営 業を表示するものをいう。\nこれを本件についてみると、原告ら主張に係る商品等表示とは、前記1)ない し4)の特徴を備えた本件渡世人に係る表示をいうところ(第1回口頭弁論調書\n参照)、本件渡世人がありふれた江戸時代の渡世人をいうにすぎないことは、 上記において説示したとおりであり、本件渡世人に係る表示は、そもそも不正\n競争防止法2条1項1号又は2号にいう「商品等表示」に該当するものとはい\nえない。
仮に、原告らの主張が、本件渡世人の図柄又は写真に「紋次郎」という名称 が付された表示をいうものとしても、商品等表\示として具体的な特定を欠くの みならず、一般に「紋次郎」という名称は、本件書籍、本件漫画作品、本件テ レビ作品及び本件映画作品に登場する中心人物を示す、いわゆるキャラクター に関する識別情報であり、本来的に商品又は営業の出所表示機能\を有するもの ではない。そして、本件全証拠をもっても、原告ら主張に係る上記表示が、キ\nャラクターに関する識別情報を超えて、原告らの営業を表示する二次的意味を\n有するものと認めるに足りず、まして原告ら主張に係る上記表示が、原告らの\n営業等を表示するものとして周知著名であるものとは、本件全証拠\nを踏まえても、明らかに認めるに足りない。
のみならず、証拠(乙20ないし28)及び弁論の全趣旨によれば、被告図 柄は昭和52年に、「紋次郎いか」は昭和57年に、「げんこつ紋次郎」は平 成20年に、それぞれ商標登録を受け、被告がこれらの商標を付するなどして 被告商品を販売し、その信用を長年にわたり蓄積してきた実情及び実績を踏ま えると、仮に原告らの主張に立ったとしても、原告らの営業等と誤認混同を生 ずるおそれを直ちに認めることはできず、これを覆すに足りる証拠はない。 そうすると、仮に上記キャラクターに関する識別情報に一定の財産的価値が 化体していたとしても、実在の人物としてパブリシティ権侵害をいうなら格別、 被告が被告図柄を付して被告商品を製造販売する行為は、不正競争防止法2条 1項1号又は2号に掲げる「不正競争」に該当するものとはいえない。 したがって、原告らの主張は、いずれも採用することができない。

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令和5(ワ)70276 不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年1月30日  東京地方裁判所

 エッセイの題号について、周知商品等表示かが争われました。裁判所は、周知性が認められないとして請求棄却しました。\n

(2) 原告表示の周知性について\n
ア 原告書籍の需要者について
原告書籍の需要者については、証拠(甲 5、9、10、15)及び弁論の全趣旨によれ ば、原告書籍が一般的な書店及び書籍販売サイトで販売されていること、電子書籍 の有料配信が行われていること、原告書籍の新聞広告が全国紙、地方紙及びスポー ツ紙に広く掲載されたこと、一般向けのウェブ記事で紹介されたことなどに鑑みる と、原告書籍は、広くノンフィクション・エッセイに関心を有する者を需要者とす るとみるのが相当である。これに反する被告の主張は採用できない。
イ 原告書籍の販売実績等について
原告書籍の販売実績に関し、原告は、シリーズとしての原告書籍の累計発行部数 は 46 万部以上である旨を主張する。これを裏付けるに足りる的確な証拠はないも のの、令和 4 年 月 31 日付け「DIAMOND online」の記事(甲 の 1)では、同 年 4 月時点での原告書籍(コミカライズ版 2 作を含む。)の発行部数は累計 40.4 万 部とされ、また、原告書籍 1(交通誘導員ヨレヨレ日記)は「7 万 6000 部のベスト セラー」と紹介されている。令和 2 年 8 月 29 日付け「幻冬舎 GOLD ONLINE」の 記事(甲 の 2)にも、原告書籍 1 につき、「昨年 7 月に発刊するや、1 年余りで 7 万 6000 部を突破した。」と紹介されている。さらに、令和 4 年 月 6 日付け「中央公論.jp」の記事(甲 の 3)では、原告書籍の累計発行部数は 4万部と紹介さ れている。なお、書籍の一般的な流通形態に鑑みると、販売実績は、発行部数以下 ではあるものの、これに比較的近い数字であることが合理的に推認される。また、 原告書籍は、インターネット上で電子書籍として販売ないし有料配信されているこ ともうかがわれる。
ウ 原告書籍の宣伝広告等について
前記のとおり、原告書籍についてはインターネット上に複数の紹介記事が掲載さ れているほか、証拠(甲 9)及び弁論の全趣旨によれば、別紙「原告書籍の広告実 績」のとおり、令和元年 7 月〜令和 年 4 月の間、毎月のように原告書籍に関する 新聞広告が全国紙、地方紙及びスポーツ紙に広く掲載されていたことが認められる。 もっとも、新聞広告につき仔細にみると、令和 2 年 1 月までは原告書籍 1 のみの 広告であり、原告書籍 2 以降は、それぞれの書籍が発売されるたびに個別に又は既 刊の原告書籍と共に広告が掲載された。その広告には「3 段 8 割」がかなりの割合 を占めるところ、「3 段 8 割」とは、新聞の 1 面下部にある文字だけの書籍広告欄を 指すものと理解される(甲 の 3)。「全 段」、「段 2 割」といった広告も少なからず見受けられるが、これらは基本的に原告書籍を含む原告の発行する複数の書籍 を一括して掲載したものとみられる。その具体的態様は必ずしも詳らかではないも のの、仮に令和 年 3 月 2 日付け読売新聞に掲載された広告(甲 8)と類似するも のであるとすると、原告書籍の各表紙と共通する一部のイラスト及びコメントは掲\n載されているものの、掲載された原告書籍の全てにつき、原告書籍の表紙(甲 3) にみられる原告表示の要素全部が掲載されてはいない。上記広告掲載の直近に発売\nされた原告書籍 12 については、原告書籍 12 の表紙(甲 3)と同一書体による題号 並びに同一内容のイラスト及びコメントが示されているものの、原告書籍 12 の表\n紙とは配置(コメントの一部につき、縦書きか、横書きか)が異なり、表紙が白色\nを基調とするものであることをうかがわせる記載等はなく、さらに、原告書籍 12 の 表紙には存在しない読者等のコメントの記載がある。すなわち、「全 段」の新聞広 告において、原告表示の表\紙における要素の全て(1)〜4))が表紙と同じ配置で掲\n載されていることを認めるに足りる証拠はない。
エ 以上の事情を総合的に考慮すると、原告書籍については、仮に原告主張のと おりシリーズ累計発行部数が 46 万部であったとしても、その需要者が広くノンフ ィクション・エッセイに関心を有する者であることをも踏まえると、原告書籍それ 自体が周知といえるほどの販売実績があるとまではいい難い。その点を措くとして も、その販売期間はシリーズを通算しても 4 年半程度に過ぎず、原告表示につき原\n告によって長期間独占的に使用されたものとは認められない。また、その宣伝広告 の実情等をみても、極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により、需要者で あるノンフィクション・エッセイに関心を有する者において、原告表示をもって、\nこれを有する原告書籍の出所が特定の事業者である原告(ないし「原告書籍の発行 者」)であることを表示するものとして周知になっていたとは認められない。\n以上より、原告表示は、一般消費者にとって、原告書籍の出所として原告を表\示 するものとして周知になっているものとはいえないから、「商品等表示」に該当する\nとはいえず、また、「需要者の間に広く認識されている」ということもできない。

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令和5(ワ)73  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年12月14日  大阪地方裁判所

厚底ソールの形状について、特別顕著性なし、周知性なしとして、不競法2条1項1号の周知商品等表\示に該当しないと判断されました。具体的なソール形状などは不明です。\n

原告ソール1が、合成樹脂を用いた厚底ソ\ールであり、原告主張の特徴1な いし特徴4の形態を備えていること、一部の溝の形状が略コの字状となってい ることについては、当事者間に争いがない。そこで、これらの形態やその組み 合わせが、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴といえるか、以下検討 する。
ア 合成樹脂を用いた厚底のソールであるとの形態について\n証拠(乙20)によれば、イタリアのVibram社(ソールのメーカー)\nが、原告商品1の販売の相当前である昭和59年(1984年)にカジュア ルシューズ向けの合成樹脂(EVA)製の超軽量ソールの製造を開始したこ\nとが認められるところ、合成樹脂製のソールの厚みを厚くすることが製造技\n術上困難であるような事情は見当たらない(令和5年7月時点では、複数の 他社から合成樹脂製の厚底ソールを使用した婦人靴が販売されていた(乙2\n1、22)。)。そうすると、合成樹脂を用いた厚底ソールである形態が、従来\nの同種商品と異なる形態とはいえない。
イ 特徴1(靴底裏面に複数の縦溝1及び横溝2、3を有することで、裏面視 において全体として略格子状のイメージを奏すること)について
証拠(乙7の1、7の3ないし7の6)によれば、原告商品の販売開始前 に、複数の他社から靴底裏面に複数の縦溝と横溝が施されて全体として略格 子状の形態の靴底の意匠登録出願がされ、その後、いずれも意匠登録がされ たことが認められるから、特徴1の形態はありふれた形態というべきである。 また、ソールの溝の深さを深くすることによって排水機能\や防滑機能が実現\nされることは一般的な知見といえる(乙8)から、特徴1の形態は技術的機 能に由来する形態といえる。\n
ウ 特徴2(靴底裏面の前方部分に、i)左右一対の2本の前記縦溝1と、i i)左右端から形成され前記各縦溝1とそれぞれ交差し、先端(中央側端部) 同士が対向する左右3対の前記横溝2と、iii)前記左右3対の横溝2よ りもつま先側において左端から右端にかけて形成される横溝3とが配され ていること)について
証拠(乙7の1、7の4、7の5)によれば、原告商品の販売開始前に、 複数の他社から靴底裏面の中央より前方(つま先)部分に概ね2本の縦溝と、 左右端から形成され上記縦溝と交差し、先端同士が対向する左右3ないし5 対の横溝と、同横溝よりつま先側において左端から右端に形成される横溝と が配された靴底の意匠登録出願がされ、その後いずれも意匠登録されたこと が認められる。また、上記横溝の数を原告ソール1の「横溝2」のように3\n対とすることに特別な意義があると解する理由は見当たらない。そうすると、 特徴2の形態は、ありふれた形態というべきである。また、特徴2の形態は、 上記イと同様の理由から、技術的機能に由来する形態ともいえる。\n
エ 特徴3(靴底裏面において、つま先部分から指の付け根に相当する部分に、 横方向に伸びる畝状の複数の段部4を有し、この段部4が、後方につれて裏 面側に傾斜するテーパー面4aを有すること)について 証拠(乙7の4、7の6、10の1、10の5)によれば、原告商品の販 売開始前に、複数の他社から、1)つま先から指の付け根付近に複数の横方向 の段部が配され、2)この段部が後方につれて裏面側に傾斜するテーパー面を 有する靴底の意匠登録出願がされ、その後いずれも意匠登録されたことが認 められる(ただし、乙7の4の登録意匠の靴底には、上記2)の構成は含まれ\nていない。)。そうすると、特徴3に係る形態は、ありふれた形態というべき である。
オ 特徴4(靴底裏面において、踵に相当する部分に、横方向に伸びる畝状の 複数の段部5を有し、この段部5が、後方につれて表面側に傾斜するテーパ\nー面5aを有すること)について
証拠(乙7の4、10の5)によれば、原告商品の販売開始前に、複数の 他社から、靴底裏面の踵に相当する部分に横方向に伸び、後方につれて表面\n側に傾斜するテーパー面を有する複数の段部が配された靴底の意匠登録出 願がされ、その後いずれも意匠登録されたことが認められる。そうすると、 特徴4に係る形態は、ありふれた形態というべきである。
カ 一部の溝の形状が略コの字状となっているとの形態について 当該形態は、原告の主張によっても、原告代表者の名字の頭文字「F」を\nなぞったデザインの一つにすぎない。また、当該形態が施された範囲は、親 指から薬指にかけた部分及び小指部分であって、原告ソール1全体の約6分\nの1程度と非常に狭く(甲5)、需要者が着目するとは解し難い。
キ 以上によれば、原告ソール1の形態は、客観的に他の同種商品とは異なる\n顕著な特徴を有するとはいえないから、原告ソール1の形態に特別顕著性が\nあると認めることはできず、原告の主張は理由がない。
(3) 周知性又は著名性について
なお、周知性について、念のため検討する。 原告は、原告商品の販売開始後、1)平成30年以降に複数の展示会に原告商 品を出展したことや、2)多数の業界雑誌や業界外雑誌に原告商品が紹介された こと、3)国内直営店舗や複数のECサイトで原告商品が販売されたこと、4)平 成28年以降の原告の靴製品の売上高が伸び、業界内で上位となったことなど から、原告ソール1が令和2年秋頃には周知になったと主張する。\n しかしながら、そもそも原告主張の原告商品の販売開始時期をその通り認定 できないことは前記のとおりであるが、原告ソール1の需要者は、婦人靴の購\n入を検討する一般消費者(及びその取引業者)であるところ、当該需要者は、 靴全体のデザイン(中でも人目を引くアッパーの部分)や着用感に着目し、仮 にソールに注意を払うとしても、その注意はおおむね機能\的な観点で向けられ るものと解され、ソールの形態や材質それ自体から出所を認識するとの一般的\nな経験則は認め難いものと解されるから、原告主張の事情は直ちに原告ソール\n1が周知であることを基礎づけるものではない。
その上で検討すると、上記1)については、各展示会に原告商品が出展された としても、原告ソール1がどのように展示されていたかは明らかではない。\n上記2)については、令和2年5月号から令和4年1月号の業界雑誌「フット ウェア・プレスFW」には原告ソール1の画像が掲載されているが(甲22の\n2ないし22の22)、同誌は一般消費者向けの媒体としての性質は薄いもの と認められるうえ、原告商品が掲載された業界外雑誌(甲26、28、30(い ずれも枝番を含む。))は、大半において通信販売の媒体としてのものであって、 商品それ自体を紹介するものとは性質を異にするうえ、原告ソール1は掲載さ\nれておらず、掲載されている場合でも掲載範囲は小さく(甲24の1ないし2 4の4、26の1ないし26の4、28の1、28の2、30の1、30の2、 32)、需要者が原告ソール1の形態に着目するとは解し難い。\n上記3)については、原告の国内直営店舗数は10店舗にとどまる(甲53)。 また、複数のECサイトに原告ソール1を用いた商品が掲載されているが、原\n告ソール1の画像が掲載されていない例も多数存在するうえ、掲載されている\n場合も、複数の商品画像中の3枚目以降に掲載されているから、需要者が原告 ソール1の形態に着目するとはいえない。また、ECサイトに掲載された原告\nソール1を用いた商品は、原告とは異なる他社ブランド名で販売されているも\nのが多く、このような掲載方法によって、掲載されたソールが原告のソ\ールで あると需要者が認識するとはいえない(甲44の1ないし47の6、弁論の全 趣旨)。
上記4)については、原告の主張を前提としても、業界内における売上高が 極めて上位にあるものとはいえない。 以上によれば、原告ソール1の形態が周知であると認めることはできず、\n他に、本件証拠上、原告ソール1の形態が周知性又は著名性を有すると認め\nるに足りる証拠はない。

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令和5(ワ)3171  損害賠償請求事件  その他  民事訴訟 令和5年12月11日  東京地方裁判所

芸能事務所が契約解除となったタレントの写真をホームページに掲載することは、\nパブリシティ権、肖像権の侵害とはならず、不競法2条1項1号の不正競争行為にも該当しないと判断されました。

1 争点1(パブリシティ権侵害の有無)について
(1)肖像等を無断で使用する行為は、1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象 となる商品等として使用し、2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等 に付し、3)肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する 顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害する ものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である(最高裁平成 21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2 号89頁)。
これを本件についてみると、前提事実並びに証拠(甲11、乙1、7)及 び弁論の全趣旨によれば、芸能プロダクションである被告は、被告に所属す\nるタレントを紹介するために、そのホームページにおいて、他の所属タレン トと併せて原告の氏名及び肖像写真(本件写真等1)をトップページに掲載 するとともに、原告のプロフィール及び肖像写真(本件写真等2)を所属タ レントのページに掲載したことが認められる。
上記認定事実によれば、被告は、所属タレントを紹介する被告のホームペ ージにおいて、原告が被告に所属する事実を示すとともに、原告に関する人 物情報を補足するために、本件写真等を使用したことが認められる。
そうすると、本件写真等は、商品等として使用されるものではなく、商品 等の差別化を図るものでもなく、商品等の広告として使用されるものともい えない。 したがって、被告が本件写真等を使用する行為は、専ら原告の肖像等の有 する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず、パブリシティ権を侵害 するものと認めることはできない。
(2)これに対し、原告は、本件写真等の掲載は原告の肖像写真等を写真集等に 利用する行為と同視し得ると主張し、また、被告が取引先を介して原告の肖 像写真等を広告等に利用する行為と同視し得る旨主張する。 しかしながら、本件写真等は、被告が所属タレントを紹介するために使用 されたにすぎないことは、上記において説示したとおりである。 そうすると、本件写真等が写真集等や広告等に利用されたといえないこと は明らかである。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができ ない。
2 争点2(肖像権侵害の有無)について
(1)肖像は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するも のとして、みだりに自己の容ぼう等を撮影等されず、又は自己の容ぼう等を 撮影等された写真等をみだりに公表されない権利を有すると解するのが相当\nである(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷 判決・刑集23巻12号1625頁、最高裁平成15年(受)第281号同 17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁、前掲最高 裁平成24年2月2日判決各参照)。他方、人の容ぼう等の撮影、公表が正\n当な表現行為、創作行為等として許されるべき場合もあるというべきである。\nそうすると、容ぼう等を無断で撮影、公表等する行為は、1)撮影等された 者(以下「被撮影者」という。)の私的領域において撮影し又は撮影された 情報を公表する場合において、当該情報が公共の利害に関する事項ではない\nとき、2)公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合におい\nて、当該情報が社会通念上受忍すべき限度を超えて被撮影者を侮辱するもの であるとき、3)公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合\nにおいて、当該情報が公表されることによって社会通念上受忍すべき限度を\n超えて平穏に日常生活を送る被撮影者の利益を害するおそれがあるときなど、 被撮影者の被る精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超える場合に限り、 肖像権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当で ある。
(2)これを本件についてみると、前記認定事実によれば、被告は、所属タレン トを紹介する被告のホームページにおいて、原告が被告に所属する事実を示 すとともに、原告に関する人物情報を補足するために、本件写真を使用した ものである。そして、証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば、本件写真 の内容は、白色無地の背景において、原告の容ぼうを中心として正面から美 しく原告を撮影したものであることが認められる。 そうすると、本件写真は、私的領域において撮影されたものではなく、原 告を侮辱するものでもなく、平穏に日常生活を送る原告の利益を害するもの ともいえない。 したがって、被告が本件写真を使用する行為は、原告の肖像権を侵害する ものと認めることはできない。 これに対し、原告は、自らの意思に反して芸能事務所の所属タレントとし\nて肖像が利用された場合には、精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超 える場合に当たる旨主張する。しかしながら、原告は、肖像権侵害を主張す るものの、肖像に化体しこれに紐づけられた法律上保護される利益(民法7 09条参照)を具体的に特定して主張するものではなく、主張自体失当とい うほかない。仮に、原告の主張を前提としても、前記前提事実によれば、本 件契約に係る解除が有効であるとする別件訴訟の棄却判決が、令和5年4月 18日に確定したところ、被告は、同日には、自社のホームページから、本 件写真を削除したことが認められる。そうすると、原告の主張を十分に斟酌\nしても、本件契約の解除の有効性が訴訟で争われていた事情を考慮すれば、 その間に本件写真を掲載した行為が、受忍限度を超える侮辱ということはで きず、その他に、原告主張に係る精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を 超えることを裏付ける的確な証拠はない。したがって、原告の主張は、採用 することができない。
3 争点3(不正競争防止法2条1項1号該当性)について
不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」とは、人の業務に係る氏\n名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示\nするものをいう。
これを本件についてみると、原告の氏名又は肖像は、原告を示す人物識別情 報であり、本来的に商品又は営業の出所表示機能\を有するものではない。そし て、前記前提事実によれば、原告は、芸能プロダクションである被告に所属す\nる一タレントであったにすぎず、原告自身がプロダクション業務等を行ってい た事実を認めるに足りない。そして、本件全証拠をもっても、原告の氏名又は 肖像が、その人物識別情報を超えて、原告自身の営業等を表示する二次的意味\nを有するものと認めることはできず、まして、原告の氏名及び肖像が、タレン トとしての原告自身の知名度とは別に、原告自身の営業等を表示するものとし\nて周知であるものとは、明らかに認めるに足りない。 したがって、原告の氏名又は肖像が周知な商品等表示に該当するものと認め\nることはできない。
これに対し、原告は、原告の氏名又は肖像が商品の出所又は営業の主体を示 す表示である旨主張するものの、原告は、芸能\プロダクションである被告に所 属する一タレントであったにすぎず、本件全証拠によっても、原告自身が営業 等の主体である事実を認めるに足りないことは、上記において説示したとおり である。したがって、原告の主張は、不正競争防止法2条1項1号にいう「商 品等表示」を正解するものとはいえず、採用することができない。\n

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令和5(ネ)10048  販売差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年11月9日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

ブーツ「Dr.Martens」について、原審は、商標権侵害と不競法の周知商品等表示に該当するとして、差止を認めました。1審被告は控訴しましたが、知財高裁も周知商品等表示に該当すると判断しました。

これに対し、控訴人は、黒を含む暗色系のウェルトと明るい色合いの縫 合糸との組合せによって明暗のコントラストを演出する靴製品にさしたる個 性や特異性はない旨主張する。確かに「黒色のウェルトと明るい黄色の糸の ステッチ」という形態だけを単独で取り上げれば、靴製品のパーツ(ウェル ト、ステッチ糸)において普通に使用されることが想定される、ありふれた 色彩のうちの任意の組合せにとどまるものであり、それだけから特別顕著性 を認めることは、過剰な独占を認める結果になり相当でない。黒と明るい黄 色とのコントラストによってウェルトステッチが明瞭に視認できるという効 果があるにしても、控訴人の主張するとおり、これに類する明暗のコントラ ストが採用されている靴製品は他にも普通に見受けられるところ(乙32、 33)である。
しかし、本件において、被控訴人は、被控訴人商品を「被控訴人主張形態 (ア)ないし(ク)の形態的特徴を全て有するもの」として定義し(原判決別紙 「原告商品目録」)、これらの「形態上の特徴を全て備える被控訴人商品の 全体の形態」が被控訴人の周知の商品等表示であるとして、不競法2条1項\n1号の不正競争に係る請求を組み立てているところである(原判決15頁2 3行目〜24行目)。
当裁判所は、被控訴人のこの主張を前提に、黄色のウェルトステッチ(形 態(ア))だけでなく、形態(ア)〜(ク)を全て備える被控訴人商品の全体の形態 が商品等表示に該当するかどうかを検討し、そのような観点から、被控訴人\n商品の特別顕著性を肯定したものである。控訴人の主張は、黄色のウェルト ステッチ(形態(ア))だけに着目した議論としては首肯できるにしても、当裁判所の上記判断を左右するものではない。
(4) なお、これに関連して、原審の判断について付言しておく。
原審は、被控訴人商品が備える形態のうち、黄色のウェルトステッチ(形 態(ア))だけを取り上げて、これが周知の商品等表示に当たると判断してい\nるところ、この判断は、控訴人が控訴理由で批判しているとおり、弁論主義 に反するものであったといわざるを得ない。もっとも、被控訴人は、当審に おいて、原審の判断は被控訴人の主張と異なるものではないとの趣旨を述べ ているから、その瑕疵は治癒されていると解されるが、実体判断として採用 できないことは上述のとおりである。
3 被控訴人商品の形態の周知の商品等表示該当性その2(周知性の有無)に\nついて
(1) 上記1の認定事実のとおり、被控訴人商品を含む「1460 8ホール ブーツ」は、昭和60年以降現在に至るまで、被控訴人の日本子会社である ドクターマーチンジャパンを通じて我が国において販売されていること、そ の販売チャンネルは、同社の運営する実店舗72店舗及び公式オンラインス トアのほか、靴小売りチェーン、セレクトショップ等の正規取扱店が含まれ ること、「1460」シリーズの売上げは、令和3年度だけで10万足近く、 販売額で14億円余りに上ること、ドクターマーチンジャパンは、ファッ ション雑誌を中心に「ドクターマーチン」の広告を継続的に掲出しており、 被控訴人商品の写真が掲載されたものもあること、被控訴人商品は、雑誌等 メディアにも再三取り上げられており、その中には、「一目でドクターマー チンだとわかる黄色のウェルトステッチやロゴ入りのヒールループなど…も 特徴」、「ドクターマーチンのトレードマークともいえるイエローステッチ」 など、特に形態(ア)に具体的に言及し、これがドクターマーチンのブーツの 最大の特徴であるとの趣旨のコメントをするものが多いことが認められる。
さらに、被控訴人の依頼により行われたアンケート調査(本件被控訴人 調査)では、「店舗、通信販売サイト、雑誌等で革靴やブーツを見たり、過 去1年以内に革靴やブーツを購入した15歳から59歳までの全国の男女」 を対象に(1019人から回答)、被控訴人商品の写真を示した上で、当該 写真のように靴の外周に沿って黄色のステッチのある革靴やブーツはどこの ブランドの商品だと思うかと質問したところ、「ドクターマーチン」を想起 できた者は、30.7%(自由回答式)〜37.6%(選択式)であったと いうのである(前記引用に係る認定事実)。 以上によれば、形態(ア)〜(ウ)の特徴を備える被控訴人商品の形態は、需 要者の間に広く認識されており、周知の商品等表示に該当するものと優に認\nめられる。
(2) これに対し、アンケートの対象者を「15歳から69歳までの全国の男 女」とする本件控訴人調査の結果では、アンケートで示された写真から「ド クターマーチン」を想起できた者は全回答者の5.47%などとされている (乙15〜18)ところ、控訴人は、これは周知性を否定するものであり、 アンケートの対象者として、控訴人各商品及び被控訴人商品の需要者である 一般消費者を広く対象とする本件控訴人調査の結果を採用すべきであると主 張する。
しかし、本件控訴人調査は、被控訴人商品の全体の形態を示すことなく、 ウェルト、黄色のウェルトステッチ及びアウトソールが写っている部分のみ\nを切り取った写真を示して質問が行われている(乙15の2〔2頁〕)とこ ろ、被控訴人商品全体の形態の周知性が問題となっている本件において、適 切な質問方法とはいえない。また、需要者の範囲に関しても、革靴又はブー ツに関心のある消費者という属性を求めるのが適切というべきであり、この 点、本件被控訴人調査の対象者はやや絞りすぎ(特に「過去 1 年以内」の要 件)のきらいはあるものの、本件控訴人調査よりは、実際の需要者に近い対 象者の選定になっていると評価できる。

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原審はこちら。

◆令和2(ワ)31524
#知財 #訴訟 #不競法 #不正競争行為 #周知

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令和3(ワ)31529  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和5年9月28日  東京地方裁判所

イス「TRIPP TRAPP」について、デッドコピーではない場合に、商品等表示に該当するのか、著作権侵害かが争われました。東京地裁(40部)は、前者については、原告らの主張する本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、原告製品のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に特定するものとはいえないと判断しました。また、後者については、著作権侵害についても翻案ではないと判断されました。
最後に、原告製品と被告製品の写真があります。

ア 商品の形態に係る「商品等表示」の特定について\n
不競法2条1項1号又は2号は、他人の周知又は著名な商品等表示(人の\n業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品 又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表\示 を使用等することをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定 は、周知著名な商品等表示の有する出所表\示機能を保護するという観点から、\n周知著名な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤\n認混同させて顧客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保 するものと解される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的\n意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所 表示機能\を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態 が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を発揮するよ うな特段の事情がない限り、商品等表示には該当せず、仮にこれに該当した\n場合であっても、商品の形態は本来的には商品の出所表示機能\を有するもの ではないのであるから、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表\n示部分は、取引の実情等によって時間的にも場所的にも変わり得るものとい える。
そうすると、原告らが商品の形態の商品等表示該当性を主張する場合には、\n商品等表示として権利範囲を画する部分がそれ自体不明確であることに鑑\nみると、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に\n特定する必要があるものと解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成 17年(ネ)第10068号同17年7月20日判決参照)。
これを本件についてみると、原告らは、主位的に、原告製品全体の形態が 商品等表示に該当する旨主張して、商品の形態のうち出所表\示機能を発揮す\nるという部分を明確に特定していないことからすると、原告らの主位的主張 は、上記において説示したところに照らし、主張自体失当というほかない。 他方、原告らは、予備的に、原告製品の形態のうち、出所表\示機能を発揮す\nるという部分が本件形態的特徴であるという限度で特定して主張している ため、本件形態的特徴が商品等表示に該当するかどうか、以下検討する。\n
イ 本件形態的特徴の「商品等表示」該当性について\n
前記アのとおり、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有す\nる場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能\を 有するものではないから、不競法2条1項1号又は2号の規定の趣旨に鑑み ると、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\ を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないという\nべきである。 そうすると、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特 徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、2)特定の事業者に よって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強力 な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表\n示するものとして周知であると認められる特段の事情がない限り、不競法2 条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当であ\nる。
そして、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると主張\nされた表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品の形態が\n商品等表示に該当しないときであっても、上記表\示が全体として商品等表示\nに該当するとして、上記一部の商品を販売等する行為まで不正競争に該当す るとすれば、出所表示機能\を発揮しない商品形態までをも保護することにな るから、上記規定の趣旨に照らし、かえって事業者間の公正な競争を阻害す るというべきである。のみならず、不競法2条1項1号又は2号により使用 等が禁止される商品等表示は、登録商標とは異なり、公報等によって公開さ\nれるものではないから、その要件の該当性が不明確なものとなれば、表現、\n創作活動等の自由を大きく萎縮させるなど、社会経済の健全な発展を損なう おそれがあるというべきである。
そうすると、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると\n主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態\nが商品等表示に該当しないときは、上記表\示は、全体として不競法2条1項 1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\nこれを本件についてみると、前記認定事実、検証の結果(検証調書参照) 及び前記認定に係る子供用椅子の販売状況によれば、原告製品は、1)左右一 対の側木の2本脚であり、かつ、座面板及び足置板が左右一対の側木の間に 床面と平行に固定されている点(特徴1))、2)左右方向から見て、側木が床 面から斜めに立ち上がっており、側木の下端が、脚木の前方先端の斜めに切 断された端面でのみ結合されて直接床面に接していることによって、側木と 脚木が約66度の鋭角による略L字型の形状を形成している点(特徴2))と いう本件形態的特徴のほか、3)座面板と足置板を側木内側にはめ込んで固定 することによって、これらの部材を直接固定し、その余の固定部材を省いた 点(特徴3))、4)前後方向からみて、座面板、足置板、横木及び背板と、側 木が垂直に交わっており、側木内側の小さな略半円形状の溝部分を除き、直 線的要素が強調されている点(特徴4))、5)左右方向からみて、側木につい ては、これを一直線とし、その上端の2隅を直角とし、脚木についても、こ れを一直線とし、その先端側と後端側の各2隅の角度を略左右対称とした点 (特徴5))、6)上下方向からみて、身体に接触する曲線状の背板並びにこれ に対応する座面板及び足置板の後部波状部分を除き、座面板と足置板の前部 を直線状の形状とし、その2隅を直角とした点(特徴6))に特徴があるもの と認められる。
そうすると、原告製品は、これらの各特徴を全て組み合わせることによっ て、身体に接触する背板部分及びこれに対応する座面板及び足置板の後部波 状部分を除き、側木、脚木、横木、座面板、足置板及び背板という椅子を構\n成すべき最小限の要素を直線的に配置し、究極的にシンプルでシャープな印 象を与える直線的構成美を空間上に形成したという限度において、形態とし\nての特徴があるものと認められる。
他方、本件形態的特徴は、図面又は写真で特定されるものではなく(意匠 法6条、24条、意匠法施行規則3条各参照)、上記にいう特徴1)及び特徴 2)を文字で特定されるにとどまるものである。そのため、本件形態的特徴は、 それ自体複数の商品形態を含むところ、本件形態的特徴には、原告らが主張 するとおり被告各製品が含まれるほか、側木が曲線を含む形態、座面板や足 置板が曲線の形態その他の直線的構成美を欠く多種多様な形態を含むもの\nであるから、原告製品が形成する直線的構成美を欠く非類似の商品形態を広\n範かつ多数含むものである。しかも、原告らの主張によれば、本件形態的特 徴(特徴1)及び特徴2))は、本件形態的特徴のみに限るというのではなく、 例えば特徴3)が付加された形態も、本件形態的特徴に含むというものである から、本件形態的特徴は、座面板と足置板を固定するための複雑な部材を採 用する形態その他の究極的にシンプルな構成美を欠く多種多様な形態を含\nむものである。
したがって、本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、 商品形態が商品等表示として認められる場合を限定する不競法2条1項1\n号又は2号の上記趣旨目的に鑑みると、原告らは、原告製品のうち出所表示\n機能を発揮する商品等表\示部分を明確に特定するものとはいえない。 のみならず、原告らにおいて本件形態的特徴をそのまま具備すると主張す る被告各製品についてみても、被告各製品は、座面板及び足置板を固定する ために、支持部材、丸みを帯びた固定部材及び略円形のネジ部材を設ける構\n成を採用し、特徴3)を有するものではない。そのため、被告各製品は、需要 者に対し、椅子全体として安定して使いやすい印象を与えるものの、複雑な 上記構成によって、究極的にシンプルな印象を与える直線的構\成美を欠くも のといえる。しかも、被告各製品は、前後方向からみると、背板中央に楕円 形の大きな穴が形成されており、かつ、固定部材を側木にネジ止めするため、 側木には円形状の穴が多数形成されていることからすると、被告各製品は、 直線的でシャープな印象を明らかに損なうものである。さらに、被告各製品 は、左右方向からみても、側木上部が床面と略垂直方向に折れ曲がっており、 一直線の側木で構成される原告製品の直線的でシャープな印象とは、全体と\nして大きく異なる印象を与えている。加えて、被告各製品は、上下方向から みても、座面板及び足置板の前部及び後部が端部から緩やかな曲線状に形成 されており、椅子全体として柔らかい印象を与えるものであるから、座面板 及び足置板の前部が直線で構成される原告製品の直線的でシャープな印象\nとは明らかに異なるものである。
これらの印象の相違を踏まえると、被告各製品は、座面板及び足置板の固 定において複数の部材を利用する点において、原告製品のような究極的にシ ンプルな印象を与えるものではなく、かつ、曲線的形状を数多く含む点にお いて、原告製品のような直線的でシャープな印象を与えるものではない。 したがって、直線的構成美を造形表\現する原告製品の高いデザイン性に鑑 みると、少なくとも被告各製品の形態は、究極的にシンプルでシャープな印 象を与える直線的構成美を欠くものであるから、原告らの出所を表\示するも のであると認めることができないことは明らかである。 以上によれば、本件形態的特徴に含まれる被告各製品の形態は、明らかに 原告製品の商品等表示に該当しないことからすると、本件形態的特徴は、全\n体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと認\nめるのが相当である。

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令和4(ネ)2081  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年4月27日  大阪高等裁判所

 釣り具(浮き)の形について、不正競争行為(周知商品等表示の使用)かが争われました。大阪地裁(21部)は、特別顕著性無しとして、請求を棄却しました。大阪高裁も同様です。

控訴人は、需要者は、うきの選択に際してその形状の微細な差に着目して 商品選択をするから、特別顕著であるといえるためには、かけ離れた特異な 形態を備えている必要はなく、他のうきにはない形態を備えていれば足りる と主張する。
しかし、証拠(甲155、156、乙26、証人P2(原審)、控訴人代 表者(原審)、被控訴人代表\者(原審))及び弁論の全趣旨によると、釣り 具のうきの形態は、時代によって変化してきているが、その変化は、他の商 品一般に見られるような需要喚起のための装飾的観点からのものではなく、 より良い釣果を上げるための技術的工夫がうきの形態に反映され、徐々に改 良されていった結果であると認められるところ、より良い釣果を求めてうき に対して加えられる技術的工夫は、機能及び効用の側面等から自ずと一定の\n範囲に収れんすることになるため、商品ごとの形態の差は細部に及ぶ上、そ の差は微細なものになることが認められる。 そうすると、需要者が、より多くの釣果を求めて釣り具の選択をする際、 その形状や色彩を釣り具の性能を推知する資料として観察するとしても、も\nともと形態の差が細部に及ぶ微細なものである上、そもそも外観から観察し てうきの性能の優劣自体を判断することには自ずと限度があることから(控\n訴人が自立うきの性能を決する上で重要である旨主張する錘の量及び錘の位\n置は、うきの形態からは分からないはずのものである。)、結局、需要者は、 棒うき、円錐うき等といったうきの種類を商品形態によって見分けるとして も、その中で、さらに微細な商品形態の差に依拠して商品選択をするとは考 えられず、それよりも、釣り仲間や雑誌等の情報から得られる商品やその製 造者の評判ないし評価を主に参考にして商品を選択しているものと考えられ る。そうすると、上記のような商品群の中における商品選択の在り方を前提 にして、商品形態に特別顕著性があるといえるためには、他のうきとはかけ 離れた特異な形態であることが必要であって、これに反する前提に立つ控訴 人の主張は採用できない。そして、原告商品が他社のうきとはかけ離れた特 異な形態であるとも認められないから、その商品形態に特別顕著性があると いうことは到底できない。
また、控訴人は、原告商品に用いられた色彩にも特徴があるように主張す るが、その付された色彩は、明らかに釣り人が遠方から見て判別が容易な色 が選択されており、その色彩は、そのような目的において採用され得る色彩 の中でありふれたものにすぎないから、その彩色部分が他のうきと少し異な っていたからといって原告商品の色彩が出所表示機能\を有するようになった とは到底認められない。
(2) なお、補正の上引用した原判決「事実及び理由」欄の第3の2(3)エ(原判 決21頁10行目から同頁26行目まで)の記載に係る認定事実及び甲16 3の1ないし121、甲165の1ないし27によれば、原告商品の製作者 である控訴人の前代表者のP1は、クロダイ(チヌ)釣りの世界で「名人」\nと称され、多くの雑誌で特集が組まれる程度に同業界で著名な人物であり、 原告商品がそのP1が製作したうきであるという事実も多くの雑誌で紹介さ れている事実が認められるから、原告商品は、P1が製作したうきとして釣 り愛好家の間で知られている商品であること自体は認められる。しかし、前 記のとおり、需要者は、主に商品やその製造者の評判ないし評価を参考にし て商品を選択すると考えられることからすると、需要者は、原告商品を、そ の商品名を手掛かりとして、有名なP1が製作したうきであると認識した上 で他の商品から識別して認識するものと考えられる(現に原告商品自体のみ ならず、そのパッケージには、P1が製作したうきであることが一目で分か るよう行書体からなる「遠矢」の文字が記載されており、これによって他社 の商品であるうきと識別されていると認められる。)。 そうすると、周知性という点では、原告商品について、これを認める余地 があるが、それはあくまで「遠矢」ないし「遠矢うき」という商品名と結び ついて知られているものと認めるのが合理的であって、その商品形態の周知 性を裏付けるものではないというべきである。
(3) したがって、原告商品1ないし11の形態は不競法2条1項1号に規定す る「商品等表示」に該当するとは認められないから、不競法2条1項1号該\n当を前提とする控訴人の被控訴人に対する請求は理由がないというほかない。

◆判決本文

一審はこちら。

◆令和2(ワ)4530

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令和2(ワ)31524  販売差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年3月24日  東京地方裁判所

ブーツ「Dr.Martens」について、商標権侵害と不競法の周知商品等表示に該当するとして、差止が認められました。商標は「AirWair WITH Bouncing SOLES」(ロゴ化)「WITH BOUNCING SOLES」(標準文字)です。商標はブーツの足入れ口にタグのようにつけられてました。

2 争点1−1(原告商標1と被告標章が同一又は類似であるか)について
(1) 原告商標1について
原告商標1の外観は、別紙商標権目録1の登録商標欄記載のとおりであり、 黒地に、左半分部分に手書き風の字体で「AirWair」と、右半分部分の上部に 約4文字分の間隔を空けてゴシック体で「WITH」及び「SOLES」と、右半分部 分の下部に下向きの弧を描くように丸みを帯びた字体で「Bouncing」と、い ずれもオレンジ色がかった黄色の英文字が配されて構成されるものである。\n原告商標1の上記記載から、「エアウェアウィズバウンシングソールズ」と\nの称呼が生じると認められる。 また、「AirWair」は原告の社名であるものの造語と解されるから、原告の 社名を知っている者においては当該部分から原告の社名である「AirWair」と の観念が生じるものの、原告の社名を知らない者においては当該部分から特 定の観念が生じない。そして、「Bouncing」及び「SOLES」は、それぞれ英語 で「弾む」及び「靴底(ソール)」との意味を有することからすると、原告商\n標1の上記記載から、「弾む履き心地のソールを持つ AirWair」又は「弾む履 き心地のソールを持つ」との観念が生じると認められる。\n
(2) 被告標章について
被告標章は、別紙被告標章目録記載のとおり、黒地に、左半分部分に手書 き風の字体で「AirWair」と、右半分部分の上部に約1ないし2文字分の間隔 を空けてゴシック体風の字体で「WITH」及び「SOLES」と、右半分部分の下部 に概ね水平に「Bouncing」と、いずれも黄色の英文字が配されて構成される\nものである。もっとも、被告標章は、被告商品1のヒールループに付されて いるものであるところ、当該ヒールループが履き口の踵部分に深く縫い付け られているため、需要者が通常の使用状況において視認できるのは、 「AirWair」の「Ai」を除いた部分に限られる(甲44・1、5頁)。したが って、原告商標1との類否を判断するに当たっては、被告標章のうち「Ai」 を除いた部分(以下「被告標章対比部分」という。)を対象として対比するの が相当である。被告標章対比部分の記載から「アールウェアウィズバウンシングソールズ」との称呼が生じると認められる。\n
また、「rWair」のうち、「Wair」は「用いる」や「費やす」との意味を有す る英単語であるが、我が国の一般人にとってなじみのある語ではない上、冒 頭に「r」が付されているため、「rWair」が何かしらの意味を有する語である と理解できないと解されるから、当該部分から特定の観念が生じない。そし て、前記(1)のとおり、「Bouncing」及び「SOLES」は、それぞれ英語で「弾む」 及び「靴底(ソール)」との意味を有することからすると、被告標章対比部分\nの記載から、「弾む履き心地のソールを持つ」との観念が生じると認められる。\n
(3) 原告商標1と被告標章対比部分との対比
原告商標1と被告標章対比部分の外観を比較すると、文字の色味に違いが あるほか、「Ai」の有無、「WITH」と「SOLES」との間隔の幅、「Bouncing」の 字体と配置に差異があるものの、いずれも黒地に黄色味の文字で「rWair」、 「WITH Bouncing SOLES」と記載されている点において共通しており、両者 の外観は類似していると認められる。
また、原告商標1と被告標章対比部分の称呼を比較すると、両者は、「ウェ アウィズバウンシングソールズ」の点において共通しているものの、原告商\n標1の冒頭が「エア」であるのに対し、被告標章対比部分の冒頭が「アール」 である点に差異がある。もっとも、原告商標1及び被告標章対比部分の文字 部分はいずれも英語で表記されており、「エア」も「アール」も英語風に発音\nするものと理解できるから、「エア」と「アール」の称呼上の違いは実質的に 「エ」の有無にとどまり、両者の差異はほとんどないといえる。したがって、 原告商標1と被告標章対比部分の称呼は類似していると認められる。 さらに、原告商標1と被告標章対比部分の観念を比較すると、前者は「弾 む履き心地のソールを持つ AirWair」との観念も生じるものの、両者とも「弾 む履き心地のソールを持つ」との観念が生じる点で共通している。したがっ\nて、原告商標1と被告標章対比部分の観念は類似していると認められる。
(4) 小括
以上のとおり、原告商標1と被告標章対比部分は、外観、称呼及び観念に おいて類似するものと認められ、原告商標1と被告標章対比部分を含む被告 標章とが同一又は類似の商品に使用された場合には、商品の出所について混 同を生じるおそれがあるといえるから、両者は類似しているものと認められ る。また、前提事実(5)のとおり、被告商品1は、ブーツであることから、原告 商標権1の指定商品に含まれる第25類「履物」と同一であると認められる。したがって、被告標章が付された被告商品1を販売等した被告の行為は、原告商標権1を侵害するというべきである。
3 争点2−1(原告商品の形態が原告の周知な商品等表示であるか)について\n
(1) 商品の形態と商品等表示該当性\n
・・・
以上によれば、靴の外周に沿って、アッパーとウェルトを縫合してい る糸がウェルトの表面に一つ一つの縫い目が比較的長い形状で露出し、\nかつ、ウェルトステッチに明るい黄色の糸が使用されており、黒色のウ ェルトとのコントラストによって黄色のウェルトステッチが明瞭に視認 できるという原告商品の形態(ア)は、少なくとも被告が被告商品2を販売 した令和2年の時点において、原告の商品等表示として周知となってい\nたと認められる。

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令和4(ネ)10098  不正競争防止法による差止請求、損害賠償請求と書類提出命令請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 シーリングライトの形状について、周知商品等表示または商品形態模倣に該当するかが争われました。東京地裁(29部)は、いずれも否定しました。知財高裁も同様です。

商品の形態は、本来的には商品の機能・効用の発揮や美観の向上等の見地\nから選択されるものであり、商品の出所を表示するものではないが、特定の\n商品の形態が、他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し、かつ、その 形態が長期間継続的、独占的に使用され、又は短期間でも効果的な宣伝広告 等がされた結果、特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機 能を獲得するとともに、需要者の間に広く認識されるに至ることがあり得る\nところであって、こうした商品の形態は、不競法2条1項1号によって保護 される他人の周知な商品等表示に該当するものと解される。\n
前記認定事実によれば、控訴人が日本国内で販売してきた原告各製品は、 平成22年以降発売されているところ、原告各製品を構成するもののうち、\n本体部分(発光部分、台座等)は、世代製品ごとに構成が異なるものである\nが、シェード部分の形状は、各世代製品間で共通しており、控訴人が開設し たオンラインショップのウェブページ上でも、原告各製品の構成のうち、シ\nェード部分の形状が他社製品と違う点を強調している(前記1 イ)ように、 その外観であるシェード部分に特徴的な商品の形態があるといえる。
他方で、原告各製品の第1世代製品を開始した平成22年から遅くとも被 控訴人が被告各製品を日本国内で発売を開始した平成30年10月までの間 における原告各製品の販売数量は明らかではなく、また、原告各製品の特徴 的部分であるシェード部分のうち、少なくとも、原告製品2は、レ・クリン ト社が製造及び発売するモデル30と類似のプリーツ状のシェードであって、 独占的にその形状が使用されてきたものとはいい難い。
これらの点を措くにしても、周知な商品等表示というためには、前記 の とおり、原告各製品が原告の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲\n得するとともに、需要者の間に広く認識されるに至ることが必要であるとこ ろ、これらの点を認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。控訴人は、長 期間にわたり原告各製品に係る広告宣伝を行った旨主張し、Faceboo kで行ったとする広告に関する資料(甲46)を提出するが、そのとおりで あるとしても、そもそも宣伝をすれば足りるというものではなく、宣伝等の 結果、遅くとも被告各製品が発売された平成30年10月の時点で、需要者 において原告各製品のシェードの形状が控訴人の商品であることを認識する に至ったことを証明する必要があるのであるから、控訴人の主張、立証は当 を得ないものというほかない。したがって、その他の点について判断するま でもなく、原告各製品の商品の形態が不競法2条1項1号に規定する「商品 等表示」に該当するとは認められない。\n
以上によれば、原告各製品の形態が不競法2条1項1号の周知な商品等表\n示に該当するものとして、被控訴人による被告各製品の販売が同号の不正競 争行為に当たることを前提とした控訴人の請求は、いずれも理由がない。

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1審はこちらです。

◆令和3(ワ)3418

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令和4(ネ)10095等  損害賠償請求控訴事件,同附帯控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和5年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

不競法2条1項1号の不正競争について、販売経路が異なるので混同生じないと主張しましたが、知財高裁も認めませんでした。

なお、控訴人は、控訴人による控訴人商品の販売行為のうち、需要者が、特定 の販売チャネル(医療機器カタログやオンラインショップに掲載された商品画像等 を通じて被控訴人商品の形態と極めて酷似する控訴人商品の形態に接した場合)を 経由したときに限り、不正競争行為に該当する旨主張する。
そこで検討するに、不競法2条1項1号が他人の周知の商品等表示と同一又は類似の商品等表\示を使用することを不正競争と定めた趣旨は、周知な商品等表示の主\n体である他人の商品又は営業との混同を生じさせる具体的な危険性がある行為を禁 止することにより、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得することを防止し、もって周知な商品等表\示が有する営業上の信用を保護し、事業者間の公正な競争を確保することにある。そして、 同号の「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」に当たると解されるために、 現実に混同が生じたことを要するものではなく、混同のおそれがあれば足り(最高 裁昭和44年(オ)第912号同年11月13日第一小法廷判決・裁判集民事97 号273頁参照)、また、同行為は、他人の周知の商品等表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と上記他人とを同一の商品又は営業の主体として誤信させる\n行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な 営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含するものと解される(最高裁昭和57年(オ)第658号\n同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082頁、最高裁平成7年 (オ)第637号同10年9月10日第一小法廷判決・裁判集民事189号857 頁参照)。
本件についてみると、被控訴人商品の形態は、約34年間の長期間にわたり継続 的かつ独占的に使用されてきたことにより、需要者である医療従事者にとって、被 控訴人商品の出所を表示するものとして認識されるに至り、控訴人商品の販売が開始された平成30年1月頃の時点において、不競法2条1項1号所定の周知の商品\n等表示に該当するものであったと認められるところ、控訴人は、周知の商品等表\示 である被控訴人商品の形態と酷似した形態を有し、かつ、被控訴人商品と同一目的 において、同一の使用方法により使用される控訴人商品を、被控訴人商品と同一の 需要者に対し販売しており、需要者は、控訴人又はその販売代理店から控訴人商品 の実物を伴う説明を受けたり、カタログやオンラインショップに掲載された控訴人 商品の写真等を見たりすることによって、控訴人商品が被控訴人商品と同一又はほ ぼ同一の形態であると認識し、被控訴人商品の形態に化体された被控訴人の営業上 の信用により購入動機を形成し、控訴人商品を購入していたものと推認される。こ れらの事情を総合すると、控訴人商品の形態を認識した需要者をして、被控訴人商 品と混同させるおそれや、被控訴人商品の主体である被控訴人と、控訴人との間に 何らかの緊密な営業上の関係が存すると誤信させるおそれが具体的に存していたと いうべきである。そして、控訴人商品の販売がいかなる販売経路によるものであっ たとしても、需要者は、控訴人商品を購入するに当たり、周知の商品等表示である被控訴人商品の形態と酷似した控訴人商品の形態を認識することができるから、混\n同のおそれが存することは、販売経路によって異なるとはいえない。 また、差止請求がされる場合と損害賠償請求がされる場合において、不正競争行 為の成立する範囲を別異に理解すべき理由はない。

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令和4(ワ)2188等  不正競争行為差止等請求  不正競争  民事訴訟 令和5年1月23日  大阪地方裁判所

不競法2条1項1号の周知商品等表示ではないとして、逆に、被告商品が原告商品を模造した違法なものであることを摘示する部分は「虚偽の事実」に該当する(不競法2条1項21号)に該当すると判断されました。

原告形態A、同B及び同Cは、いずれもその形態を特定するのに必要とさ れるスピーカー・アンプ内蔵型マイクの全体形状及びこれを構成する各パー\nツの具体的な形状、寸法、位置関係といった構成要素を何ら具体的に特定す\nるものではなく、その構成要素の一部についてのみ抽象的、断片的に指摘す\nるにとどまるものである。加えて、スピーカー部がマイク下部の竿体内に組 み込まれた形態(原告形態A)は、抽象的な位置関係のみをいうのであれば、 そのような配置をしようとすれば避けられない形態であるし(そのように配 置すること自体はアイディアであって、商品等表示とは性質を異にする。)、\nストラップを通すリングがあること(原告形態B)や、端子カバーを開閉可 能につけること(原告形態C)は、いずれも落下防止や端子の汚損等の防止\nのために行われるありふれた工夫であって、出所表示として機能\するものと は到底考えられない。
原告は、原告形態Aないし同Cを組み合わせた全体的な形状が一般的なワ イヤレスマイク(ハンド型)と同様の円筒状様の形態であることを指摘して いるにとどまり、円筒形状であることを超えて、その全体形状及び各構成要\n素について何ら具体的に特定するものではない。したがって、原告形態Aな いし同C及びその組み合わせが、商品等表示として機能\するものとして特定 されているとはいい難い。 この点を措くとしても、原告商品はスピーカー・アンプ内蔵型のマイクで あり、原告は、原告商品をマイクとして広告宣伝していること(甲9の1〜 9の13)に照らすと、スピーカーが内蔵されているか否かにかかわらず、 マイク全般が原告商品の同種商品に該当するものと認められる。そうである ところ、マイク自体が、実用品であって、需要者がその形態等を鑑賞するた めのものではないことに加え、原告が主張するとおり、原告商品は、全体的 な形状が一般的なワイヤレスマイク(ハンド型)と同様の形態とするもので あるから、原告商品が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(特別顕 著性)を有さないことは明らかである。 以上から、原告形態Aないし同C及びこれらを組み合わせた形態が原告の 「商品等表示」に該当するものとは認められない。\n
(2) したがって、本訴請求に係るその余の点を判断するまでもなく、原告の本 訴請求は理由がない。
2 反訴請求について
(1) 争点2−1(本件表示の内容が「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」\n(不競法2条1項21号)に該当するか)について 本件表示は、原告が、原告商品を模造した被告商品を販売している被告に\n対して販売の中止と損害賠償を求める訴えを提起した旨を摘示するものであ る。この点、「模造」とは、「実物に似せて造ること」を意味し(乙3)、 その言葉自体、本物でない、まがいものを作出するといった否定的に捉え得 るものであることに加え、訴えを提起したという表現は、本件表\示の全体の 文意からすれば、相手方が違法行為に及んでいることを摘示するものと解さ れるから、これに接した閲覧者は、被告が、原告商品を違法に模造した被告 商品を販売していると認識するものと認められる。また、本件表示が掲載さ\nれた時期や記載内容に加え、本訴請求のほか、原告が被告に対して原告商品 に関する訴えを提起したことをうかがわせる証拠はないことに照らすと、本 件表示中の訴えの提起は、本訴請求を指していると解される。\n そうであるところ、前記1のとおり、本訴請求には理由がなく、その他、 被告商品が原告商品を違法に模造したことを裏付ける証拠はないから、本件 表示のうち、被告商品が原告商品を模造した違法なものであることを摘示す\nる部分は「虚偽の事実」に該当するものと認めるのが相当である。そして、 本件表示を閲覧した者は、被告商品が違法な模造商品であると認識し、本件\n表示は、被告商品の市場価値を明らかに低下させるものといえるから、被告\nの「営業上の信用を害する」ものと認めるのが相当である。 以上から、本件表示は「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」に該当\nする。これに反する原告の主張は採用できない。

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令和4(ネ)10051 不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和4年12月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

赤い靴底のハイヒールで有名なルブタンが赤い靴底の販売差止、損害賠償を求めました。1審は請求棄却、知財高裁も同じく、混同なし、です。

このように、被告商品と原告商品は、価格帯が大きく異なるものであ って市場種別が異なる。また、女性用ハイヒールの需要者の多くは、実 店舗で靴を手に取り、試着の上で購入しているところ、路面店又は直営 店はいうまでもなく、百貨店内や靴の小売店等でも、その区画の商品の ブランドを示すプレート等が置かれていることが多いので、ブランド名 が明確に表示されているといえ、しかも、それぞれの靴の中敷きにはブ\nランドロゴが付されていることから、仮に、被告商品の靴底に付されて いる赤色が原告表示と類似するものであるとしても、こうした価格差や\n女性用ハイヒールの取引の実情に鑑みれば、被告商品を「ルブタン」ブ ランドの商品であると誤認混同するおそれがあるといえないことは明 らかというべきである。
また、普段は被告商品のような手ごろな価格帯の女性用ハイヒールを 履く需要者の中には、場面に応じて原告商品のような高級ブランド品を 購入することもあると考えられるが、こうした需要者は、原告商品が高 級ブランド(控訴人らが主張するように「ルブタン」がラグジュアリー ブランドであり、日本だけではなく世界中の著名人や芸能人が履くとい\nうイメージがあればなおさらである。)であることに着目し、試着の上で 慎重に購入するものと考えられるから、被告商品が原告商品とその商品 の出所を誤認混同されるおそれがあるとはいえない。
なお、原告商品及び被告商品ともに、公式オンラインショップだけで はなく、二次流通品を含め、ECサイトで販売されていることもあり、 原告商品の二次流通品の中には価格帯が大きく下げられて販売される こともあるが、公式オンラインショップでの売上げ実績は全体の売上げ 規模からして僅少であって(そのことは、需用者の多くが実際に商品を 試着して購入していることを示すものである。)、それぞれのブランド専 用のサイトであるし、また、公式オンラインショップ以外のサイトでは、 商品の画像だけではなく、商品の詳細な説明において、ブランドや靴の 状態が説明されているから、こうした流通形態があり、仮に、被告商品 の靴底に付されている赤色が原告表示と類似するものであるとしても、\n被告商品が原告商品と誤認混同のおそれがあるとはいえない。
エ 加えて、近時では、高価格帯のブランドが価格帯の異なるブランドとコ ラボレーションした商品が販売されることもあるが、その商品にはそれぞ れのブランドのロゴが付されており(前記1 エ)、その商品がコラボレー ション商品であることが需用者にとって一目で分かるようになっている (そうでなければ、コラボレーション商品として企画し、販売する意味は ないともいえよう。)。そうすると、仮に、被告商品の靴底に付された赤色 が原告表示に類似するとしても、被告商品にはそうしたコラボレーション\n商品であることを示すようなロゴはないから、需要者が、被告商品が控訴 人らのライセンス商品又は控訴人らとの間で何らかの提携関係を有する 商品であると誤認混同するおそれがあるともいえない。
これに対して、控訴人らは、前記第2の3 ウ aのとおり、被告商品も 原告商品と同じ高価格帯の商品であることを前提として、店舗又はオンライ ンショップで原告商品と被告商品の双方が販売されていることがあり得ると し、ブランド毎に区別して展示されていない場合等では、需要者が販売され ているブランド名を意識しないまま購入することがあり得る旨主張する。 しかし、原告商品は最低でも8万円、10万円を超えるものも少なくない のに対して、被告商品は、1万6000円から1万7000円の価格帯であ るから、これだけの価格差がある商品形態において、仮に店舗又はオンライ ンショップで原告商品と被告商品が並べて陳列されており、一部店舗でブラ ンド毎に区別して展示されていないことがあるとしても、実店舗では、靴の デザイン性だけではなく、実際に手に取って試着することが多く、ECサイ トでは、ブランド名や商品の状態が詳細に説明されているといった取引の実 情に鑑みれば、需要者が、被告商品の靴底に原告赤色と類似する色を使用し ているからといって、被告商品の出所が「ルブタン」のブランドであると誤 認混同するとはいえない。したがって、控訴人らの主張は理由がない。 以上のとおり、仮に、被告商品の靴底に付された赤色が原告表示に類似す\nるとしても、原告表示を付した原告商品であると誤認混同するおそれ(広義\nの混同を含む。)があるとはいえないから、原告表示が不競法2条1項1号に\n規定する「他人の商品等表示」に該当するか否かについて判断するまでもな\nく、被告商品の販売等が同号の「不正競争」に当たるとはいえない。 そうすると、被告商品の販売等が不競法2条1項1号の「不正競争」に当 たることを前提とした控訴人らの請求は、その前提を欠くものであるから、 その他の争点について判断するまでもなく理由がない。
3 争点2(原告表示の周知著名性)について\n
前記1の認定事実によれば、控訴人Xは、会社を設立以後、全世界に店舗 を展開して、原告表示を付した高価格帯の女性用ハイヒール(原告商品)を\n販売し、数多くの著名人や芸能人に愛用され、また、日本でも、平成10年\n以降は路面店等のショップで販売が開始されて、年間30億円を超える売り 上げを誇り、数多くの雑誌、メディア等で原告表示は「レッドソ\ール」とし て取り上げられ、一定の需要者には「靴底が赤い」女性用ハイヒールは「ル ブタン」のブランドを指すものと認識されているといえる。 しかし他方で、靴底が赤色の女性用ハイヒールは、原告商品以外にも少な からず我が国においては流通しており(前記1 )、女性用ハイヒールの靴底 に赤色を付した商品形態を控訴人らが独占的に使用してきたものとはいえな い。
また、本件アンケートは、東京都、大阪府、愛知県に居住し、特定のショ ッピングエリアでファッションテム又はグッズを購入し、ハイヒール靴を履 く習慣のある20歳から50歳までの女性を対象としたものであるが、本件 アンケート結果によると、靴底が赤いハイヒール靴を見たことがないものを 含め、原告表示を「ルブタン」ブランドであると想起した回答者は、自由回\n答と選択式回答を補正した結果で51.6%程度にとどまる(なお、本件ア ンケート調査結果では、赤いハイヒール靴を見たことがある人に限定して認 識率を評価するのが適切であるとするが、本件アンケート調査は、主要都市 で、しかも、ファッション関係にそれなりに関心のあるハイヒール靴を履く 習慣のある女性を対象としたものであり、その当否についても疑義がある上、 そこから更にこうした限定を付すことは明らかに相当でない。)。この結果に よれば、原告表示は、一定程度の需要者に商品出所を認識されているとはい\nえるが、それが著名なものに至っているとまでは評価することができない。 そうすると、原告表示が不正競争防止法2条1項2号に規定する「他人の\n著名な商品等表示」であるとはいえないから、そうであることを前提とした\n

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◆平成31(ワ)11108

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令和4(ネ)10010 商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和4年8月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

商標権者は、商標「小野派一刀流」指定役務41類「剣道を主とする古武道の教授」を保有しています。被控訴人(1審被告)は「小野派一刀流剣術」を使用していました。1審(は、商標的使用には当たらないと判断しました。また不競法についても、「商品等表示」の「使用」に当たらず、控訴人の周知な商品等表\示を認めることはできないと判断しました。知財高裁は原審維持しました。

ア 控訴人は、日本の伝統芸能や古武道における流派の意義、そして「小野派一\n刀流」の流派名の意義等を主張して、「小野派一刀流」は、流派の教え・系統を指す とともに、宗家を長とし門人によって構成される本流流派を継承する集団(団体)を\n指し、両者は密接不可分の関係にあるから、流派名としての「小野派一刀流」の使用 は、同時に集団(団体)としての「小野派一刀流」を想起させるもので、需要者が提 供される役務の出所を認識し得るような態様での使用に当たる旨を主張する。 しかし、本件全証拠によっても、日本の伝統芸能一般又はそのうち古武道一般に\nおいて、一つの流派について一つの集団(団体)しか存在しないという事情は認めら れない。この点、例えば、古武道振興会の「加盟流派」のページ(本件ウェブページ。 甲3の1)には、「荒木流拳法(K)」(代表はK)及び「荒木流拳法(L)」(代\n表はL)として、「荒木流拳法」という流派名を冠する加盟流派が代表\を異にして二 つ掲載されており、同様に「神道夢想流杖術」、「夢想神伝流居合術」及び「柳生心 眼流兵法」についても、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載\nされている。また、古武道協会のウェブサイトにおける「各流派の紹介」のページ (甲33の1)にも、「天神真揚流柔術(新座市)」と「天神真揚流柔術(川越市)」 とが掲載されている。
そうすると、控訴人の主張するように、流派名と当該流派を継承する集団(団体) との間に密接な関係があることを前提としても、当該密接な関係により流派名が想 起させる集団(団体)が、直ちに特定の役務の提供等の一主体となるような特定の団 体であるということはできず、それは、当該流派を継承する複数の団体を含み得る より抽象的な集団にすぎないとみるのが相当である。 そして、本件全証拠をもってしても、「小野派一刀流」が古武道の流派の名称であ るということを前提にしてもなお、それが特定の役務の提供等の一主体となるよう な当該流派を継承する特定の団体を指すものであると認めるに足りず、「小野派一 刀流」について上記と異なって解すべき事情は認められない。 したがって、流派名としての「小野派一刀流」の使用が同時に集団(団体)として の「小野派一刀流」を想起させるものであるとの控訴人の前記主張は、訂正して引用 した原判決の第4の1における、本件標章使用が被控訴人らによる商標的使用であ るとは認められないという判断を左右するものではないというべきである。
イ 控訴人は、本件標章使用1)について、本件常識(小野派一刀流の教え・系統と これを継承してきた集団(団体)とが密接不可分であり、本流が宗家を長とし門人に よって構成される集団(団体)において継承されてきたこと、中でも正統は広範かつ\n強大な権限を有する宗家一人に継承されること)のほか、「小野派一刀流剣術」の名 称と共に「代表」等として被控訴人Y1が掲載されているという態様を特に指摘し\nて、本件標章使用1)が商標的使用に当たる旨を主張する。 しかし、訂正して引用した原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)で認 定説示したとおり、「加盟流派」について掲載した本件ウェブページの記載の形式や 内容からすると、そこにおける「小野派一刀流剣術」の名称やその「代表」等の記載\nに接した者においては、その名称は古武道振興会において加盟を認められている古 武道の流派の一つの名称であって、併記された代表者の氏名及び連絡先もあくまで\nそのような流派の代表者及び連絡先として古武道振興会が把握しているものの記載\nであると理解するとみるのが合理的である(なお、前記アで指摘したとおり、本件 ウェブページには、同一の流派名を冠する加盟流派が代表を異にして複数掲載され\nている例があるところ、「小野派一刀流剣術」については代表を異にする同名とみら\nれる加盟流派が他に記載されていないことから、その記載に接した者においては、 加盟流派としては単一のものと理解することにはなるが、他方で、上記の例がある ことが同時に容易に看取できることからすると、「小野派一刀流剣術」に係る「代表」\n等の記載が、古武道振興会の加盟流派、換言すると古武道振興会の認識を離れて、客 観的に、流派としての「小野派一刀流剣術」の唯一の宗家や当該宗家から代表と称す\nることを許諾された者を示すものであると直ちに認識するとまではいえない。)。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)からすると、本件ウェ ブページの記載に当たり、古武道振興会は、自律的に定めた「日本古武道振興会規 約」における会員に関する定めに基づき、会員資格や代表会員の資格の受継につい\nて判断しているもので、Bの死去後の受継の問題についても、平成30年度第1回 常任理事会において、自律的に判断がされたものとみられる(なお、その判断の前提 とされた事実関係について、本件証拠に照らし、明白な誤認があったというべき事 情や被控訴人らから古武道振興会を欺罔するような説明がされたといった事情も認\nめられない。)。そのような判断に基づいてされたとみられる本件ウェブページにお ける「小野派一刀流剣術」に係る記載(なお、古武道振興会規約は、古武道振興会 のウェブサイトにも掲載されていることが窺われる(甲3の1〜3)。)をもって、 当該流派に係る特定の団体が提供する何らかの役務の出所を認識し得るような態様 で被控訴人らが表示をしたものと認めることもできない。\n
したがって、「小野派一刀流剣術」の名称と共に「代表」等として被控訴人Y1が\n掲載されているという態様を特に指摘しての控訴人の前記主張は、訂正して引用し た原判決の第4の1(2)(本件標章使用1)について)の判断に影響を与えるものでは ない。控訴人が主張する本件常識も、前記アで説示した点に照らし、同判断を左右し ない。
ウ 控訴人は、本件標章使用2)について、「小野派一刀流剣術(G) Y1(東京 都)」との記載が太字でされていることや演武者名とは別に記載されていること、並 んで記載された流派について記載されている者が当該流派の宗家であることが需要 者に周知であること、本件常識や本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会 が主催等するものであること等を特に指摘して、本件標章使用2)が商標的使用に当 たる旨を主張するが、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と 認められないことは、訂正して引用した原判決の第4の1(3)(本件標章使用2)につ いて)で認定説示したとおりである。
前記アで説示した点に照らし、本件常識は、本件標章使用2)が被控訴人らによる 被告商標の商標的使用と認められないとの判断を左右するものではない。 また、訂正して引用した原判決の第4の1(1)(認定事実)のとおり、本件標章使 用2)がされた武道大会等は古武道振興会が主催等したものであること、古武道振興 会が主催する大会において使用されるパンフレットやめくりは、本件ウェブページ に掲載されている加盟流派の情報と同様に、古武道振興会に既に登録されている情 報に基づき、古武道振興会が主体となって作成、掲示、配布等するものであること (これは、古武道振興会が主催以外の態様で関与した武道大会等についても同様と 推認され、この推認を覆す事情はない。)や、本件標章使用2)に係るパンフレット の記載内容等を踏まえると、前記イで説示したのと同様、控訴人が指摘するその余 の点も、本件標章使用2)が被控訴人らによる被告商標の商標的使用と認められない との判断に影響を与えるものではないというべきである(なお、控訴人が指摘する 点のうち、本件標章使用2)に係る武道大会等は古武道振興会が主催等するものであ るという点は、むしろ、同判断の根拠となり得るものといえる。この点、本件全証拠 をもってしても、古武道振興会が、古武道の各流派の正当性について有権的に判断 する団体であるといった事情や、古武道の流派が加盟し得る唯一の団体であるとい った事情は見受けられない。控訴人の主張は、ひっきょう、被控訴人Y1について受 継を認めたという古武道振興会の判断を論難するものにすぎないというべきであ る。)。

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令和3(ワ)3418 不正競争  民事訴訟 令和4年8月26日  東京地方裁判所

 シーリングライトの形状について、周知商品等表示または商品形態模倣に該当するかが争われました。東京地裁(29部)は、いずれも否定しました。

(1) 不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは、「人の業務に係る氏名、\n商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示す\nるもの」をいうところ、商品の形態は、「商標」等とは異なり、本来的には 商品の出所を表示するものではないが、商品の形態自体が特定の出所を表\示 する二次的意味を有するに至る場合がある。そして、このように商品の形態 自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し、「商品等表\示」に該当する ためには、その形態が「商標」等と同程度に不競法による保護に値する出所 表示機能\を発揮し得ること、すなわち、1) 商品の形態が客観的に他の同種商 品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、2) その形態が 特定の事業者によって長期間独占的に利用され、又は極めて強力な宣伝広告 や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定 の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要\nすると解するのが相当である。
(2) そこで、まず、原告各製品の第4世代製品の形態が有する特徴について検 討する。
証拠(甲1、2、27、28)及び弁論の全趣旨によれば、原告製品1、 2及び4のシェード部分の形状は、白色のポリプロピレンの平板を、中心部 から放射状に多数の山又は谷ができるように鋭角又は湾曲に折り畳み、これ を一層又は大きさの異なる複数層となるように配置した形状をしており、原 告製品3のシェード部分の形状は、多数の白色のポリプロピレンの平板を湾 曲に折り畳み、全体としてバラ様の略円形に整えた形状をしていることが認 められ、いずれの製品も、一般的なシーリングライト(甲22、32ないし 35、乙22)のシェード部分の形状とは異なる特徴を有しているといえる。 しかし、シーリングライトのシェード部分は、その外観を構成する主たる構\ 造である一方で、その実用目的である発光機能を直接担う部材ではないこと\nから、シーリングライトを設置する場所に合わせて、様々なデザインとする ことが可能であると考えられ(証拠(乙3、4)によれば、実際に、様々な\n形状のシェード部分を有するライトが販売されていることが認められる。)、 このようなシェード部分の性質に照らせば、原告各製品のシェード部分の形 状が他の同種商品と比べて顕著に異なることを基礎付ける事情を認めるに足 りる証拠はないというほかない。 また、前記前提事実(2)エのとおり、第4世代製品の本体部分の形状は、フ ラットな円形の台座に三つのU字型LEDモジュールが磁石で取り付けられ るなどし、台座側面に換気孔が設けられ、調光調温機能の付いたリモコンが\n付属するものであるが、一般的なシーリングライト(甲24、25、32な いし35、乙22)の本体部分の形状と比較して、特徴的なものとはいえな い。
(3) 次に、原告各製品の第4世代製品の形態の周知性について検討する。 前記前提事実(2)のとおり、第4世代製品のシェード部分は、第1世代製品 から変更がなく、第1世代製品の販売が開始された平成22年から既に10 年以上が経過しているが、原告各製品のこれまでの販売数を認めるに足りる 証拠はなく、Yahoo!等の媒体やFacebook等のSNSによる原 告各製品に係る宣伝広告の期間、内容及び効果を認めるに足りる証拠もない (Facebookで行ったとする広告に関する資料(甲46)を見ても、 具体的にどのような広告がどの程度行われたのかは明らかでない。)。また、 前記前提事実(2)エのとおり、第4世代製品の本体部分について、改良が加え られて販売が開始されたのは平成30年からであり、上記シェード部分ほど 時間が経過していない上、通常、シェード部分によって隠れているため、需 要者の注意を惹くことも少ないといえる。 さらに、証拠(乙17ないし19)によれば、1943年に創業した、デ ンマークのレ・クリント社が製造販売するシーリングライトは、そのシェー ド部分が、白色の平板を中心部から放射状に多数の山又は谷ができるように 鋭角に折り畳み、これを一層又は大きさの異なる複数層となるように配置し た形状をしていることが認められ、少なくとも原告製品1、2及び4のシェ ード部分とかなり似通っているということができる。このような事情からす ると、原告各製品のシェード部分の形状が、長年にわたり、原告により独占 的に利用されていたとは認め難い。 そして、他に原告各製品の形態が原告の出所を表示するものとして周知に\nなっていることを認めるに足りる証拠はない。
(4) 以上を総合すると、原告各製品の第4世代製品の形態が、不競法2条1項 1号の「商標」等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を発揮 し得るとは認められないから、同号の「商品等表示」に該当するとは認めら\nれない。したがって、被告が被告各製品を販売したことは不競法2条1項1号の不 正競争には該当しない。
2 争点2(原告が「営業上の利益」(不競法3条、4条)を侵害された者に該当 するか)について
(1) 不競法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し 渡し、輸入するなどの行為が不正競争に該当すると規定するが、この趣旨は、 費用及び労力を投下して商品を開発し、これを市場に置いた者が、一定期間、 投下した費用等を回収することを容易にして、商品化への誘因を高めるため、 費用及び労力を投下することなく商品の形態を模倣する行為を規制しようと したものと解される。 したがって、同号の不正競争であるとして差止め等を請求することができ る「営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者」(同法3条 1項)及び「営業上の利益を侵害」された者(同法4条)とは、自ら費用及 び労力を投下して商品を開発し、これを市場に置いた者をいうと解するのが 相当である。
(2) この点、証拠(甲36ないし42、48)によれば、原告が、パーツメー カーとの間で、ライトに取り付ける安定器やリモコンへの印字方法等に関す るメッセージのやり取りをしたことが認められる。しかし、これらが原告各 製品に係るやり取りかは明らかではない上、これらのやり取りの大半(甲3 8ないし42)は、原告各製品の第4世代製品の販売が開始された平成30 年(前記前提事実(2)エ)よりも後の令和元年12月にされたものであり、そ の他のやり取り(甲36、37)はいつされたものかが明らかでない。
また、台座に係る設計図(甲50)が存在するものの、原告各製品に係る ものであるかは明らかでないし、マスキング部分に続いて「有限公司」との 記載があり、原告以外の法人の名称が記載されていたとも考えられることか ら、原告自身がこれを作成したとは認められない。 さらに、証拠(甲14、15、乙1ないし4、23)によれば、原告各製 品に付属するリモコンには、原告のブランド名である「A」と印字されては いるが、当該リモコンそのものは、中国のオンラインモールにおいて、誰で も購入することができることが認められることからすると、そのようなリモ コンに原告のブランド名が印字されていることをもって、原告が原告各製品 を開発したことを裏付けるものとはいえない。
一方で、本件中国法人を経営するBの陳述書(乙20)には、本件中国法 人は、被告各製品及びこれとデザインの似たシーリングライトを製造してい ること、これらのシーリングライトは約20年前にヨーロッパの会社が開発 したモデルの一つであり、それ以降、中国の多くの工場で類似する製品が製 造されていること、本件中国法人は、特定の顧客との間で独占販売契約を締 結することなく、各社に対して上記シーリングライトを販売していることが 記載されており、この記載内容は、原告が本件中国法人に対して原告各製品 を発注し、被告がGlobee(Hongkong)Limitedを介し て本件中国法人から被告各製品の供給を受けていること(弁論の全趣旨)、 被告各製品が原告各製品とそれぞれほぼ同一の形状をしていること(前記前 提事実(3)イ)と合致しており、一定程度、信用することができるといえる。 そうすると、原告各製品や被告各製品と同様のシーリングライトが本件中国 法人により製造販売されていたことがうかがわれる。 そして、他に、原告が自ら費用及び労力を投下して、原告各製品を開発し て市場に置いたことを認めるに足りる証拠はない。
以上によれば、原告各製品の第4世代製品について、原告は、自らの費用 及び労力を投下してこれを開発して市場に置いた者とは認められないから、 原告各製品につき不競法2条1項3号の不正競争によって「営業上の利益を 侵害され、又は侵害されるおそれがある者」(同法3条1項)及び「営業上 の利益を侵害」された者(同法4条)であるとして、被告による被告各製品 の販売の差止め及び被告に対する損害賠償を請求することができない。

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令和2(ワ)4530 不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年8月25日  大阪地方裁判所

 釣り具(浮き)の形について、不正競争行為(周知商品等表示の使用)かが争われました。大阪地裁(21部)は、特別顕著性無しとして、請求を棄却しました。

(1) 法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示と同一又は類似の商品等表\示 を使用等することをもって不正競争に該当すると規定しており、これは、周知な商 品等表示の有する出所表\示機能を保護する観点から、周知な商品等表\示に化体され た他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止 し、事業者間の公正な競争等を確保する趣旨と解される。そして、色彩を含む商品 の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等と\nは異なり、本来的には商品の出所表示機能\を有するものではないから、その形態が 商標等と同程度に不正競争防止法による保護に値する出所表示機能\を発揮するよう な特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないというべきである。そうする\nと、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(特別顕著性) を有しており、かつ、2)特定の事業者によって長期間にわたり独占的に利用され、 又は短期間であっても極めて強力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品 が特定の事業者の出所を表示するものとして周知である(周知性)と認められる特\n段の事情がない限り、法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが\n相当である。
(2) 特別顕著性
ア これを本件についてみると、まず、原告商品1〜11は、釣り用のうきとし て、もっぱら釣果を得るための実用品であり、その性能を発揮するために形態が工\n夫されているものであって、基本的には、需要者が形状や色彩等のデザインを鑑賞 するためのものではない。また、使用時にはそのボディの大半が水中に隠れている 状態であり、実際の性能は外観のみでは判断し難いから、釣りをする一般的な需要\n者においては、購入時に、釣果に関する自らの経験や評判ないし価格を参考に選択 しているものと考えられ、少なくともボディの色や形状を主に観察して違いを見極 めるような商品ではないから、ボディの形態をもって特別顕著性があるというため には、他のうきとはかけ離れた特異な形態を備えている必要がある。 そして、前記認定事実によれば、昭和50年代に原告代表者が開発した「遠矢う\nき」の形態であり、原告商品に共通する形態でもある「B ボディ下部に膨らみが あり」、「D そのボディ上部に上方向にゴム管が突き出ており」、「E ボディ最 太部からボディ下端にかけて円錐状に窄まっており」、「F ボディ下端に金属製 の環が突き出ており」、「G ボディ上部、ボディの長手方向中央付近及びボディ の最太部の下方にそれぞれ二重線が引かれている」形態は、昭和57年7月30日 に登録された意匠であり、平成9年7月30日に意匠権の存続期間が満了し、それ 以降は当該形態について意匠権による独占は認められなくなっていたことが明らか である(なお、前記実用新案権についてはそれ以前に存続期間が満了していること が明らかである。)ところ、ZF 形態に係る原告商品1〜3の発売以前から、「B 木製黒色のボディ下部に膨らみがあり」、「C そのボディ上部に黄白色の樹脂塗 装がなされ」、「D そのボディ上部に上方向に黒色のゴム管が突き出ている」各 特徴の1つ又は2つを備えた棒うきが各メーカーから複数種類販売されていたこと が認められる。また、ボディの大きさについても、ボディ全長が10cm台〜20cm 台のものが存在し、ボディ最太部の直径も10mm台のものが存在したことが認めら れる。そうすると、ZF 形態は、その発売以前に存在した他のうきとかけ離れた特 異な形態を備えているとはいえず、特別顕著性が認められない。
また、SP 形態は、前記認定事実のとおり、従前の「2号」や「180s」等の 「遠矢うき」の形態を引き継いだ ZF 形態の特徴を維持しつつ、円錐うきに慣れた 需要者にも受け入れやすくするために開発されたものであって、原告商品12を含 めて「遠矢グレスペシャル」として販売されているものであり、客観的な形態も、 原告商品1〜9のボディ全長を数cm短く(原告商品10、11)又は長く(原告商 品12)、最太部の直径を2mm程度太くしたにすぎないから、ZF 形態のバリエー ションの一種というべきであって、ZF 形態と同様に特別顕著性があるとは認めら れない。
イ 原告は、ZF 形態及び SP 形態を備えた商品は、被告商品の登場まで他に存在 せず、被告商品以外の模倣品は短期間で市場から消えたと主張する。 しかしながら、原告において原告商品1〜3のボディ上部に黄白色の樹脂塗装を し始めたのは、原告の従来の遠矢うきと製造工程において区別するためであったと いうのであるから、ZF 形態のうち、「C ボディ上部の樹脂塗装」以外は従来から 存在した形態であることが明らかである。そして、前記認定事実のとおり、ボディ 上部に黄白色の樹脂塗装をしたうきが原告商品1〜12の発売以前から複数存在し ており、ボディ上部に黄白色の樹脂塗装をすることは何ら特異な配色とはいえない から、従来から存在する形態に黄白色の樹脂塗装を加えたからといって、特別顕著 性が備わるとはいえない。
また、前記認定事実のとおり、ZF 形態及び SP 形態と共通する特徴を備えた商品 は、原告商品1〜3の発売以前から複数存在し、商品カタログに掲載されているに もかかわらず全く販売されなかったとは考え難い上、原告代表者において、「遠矢\nうき」の模倣品が大量に出回った時期があったことを認めており、平成2年頃にお いてもなお、原告が類似品と認識するような商品が大量に出回っていることを前提 に、遠矢の名入りの有無で区別するよう注意を呼び掛ける広告をし、平成19年以 降も継続的に類似品が出回っている旨の広告をしていたのであるから、被告商品以 外の ZF 形態及び SP 形態を備えた商品が全て短期間で市場から消えたとは到底考え られない。 そうであれば、被告商品販売開始時において、ZF 形態ないし SP 形態と同一又 は類似する特徴を備えた商品は複数存在し、これらの形態はありふれたものとなっ ていたというべきである。 なお、原告は、個別の同種商品について、ZF 形態及び SP 形態と一部共通する特 徴を備えているとしても、特徴の全部が同一ではない旨主張するが、前記のよう に、うきの形態に特別顕著性があるというためには、他のうきとはかけ離れた特異 な形態であるといえる必要があり、形態上の特徴が同一又は類似の同種商品が存在 すれば、特別顕著性は認められないというべきである。

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令和3(ネ)2663 意匠権侵害差止等請求控訴事件  意匠権  民事訴訟 令和4年6月1日  大阪高等裁判所

 控訴審(大阪高裁)も、1審と同じく非類似と判断しました。なお、不競法については、特別顕著な形態ではないと判断しました。

ア 具体的構成態様D/dにおける差異点について\n
1審原告は、原審が、円筒状中空本体の形状に関する差異点2)の与える印 象について、差異点3)と逆の認定をしたことについて、主観的な印象であり、 その理由が不明であると主張する。しかし、原告意匠の要部である具体的構\n成態様D3、被告意匠の具体的構成態様d3を対比した結果である差異点2) についてみると、前者は、円筒状中空本体が円周部(周辺部)まで厚みがあ ることから(十分な体積を感じることができる。)、存在感を感じさせると認\n定することに合理性があり、一方、後者の側面の厚みは、円周部(周辺部) に行くに従い、薄くなっていることから、すっきりとした印象を与えるとい える。上記と同様に原審が認定した差異点3)は、円筒状中空本体の中空部の 直径と本体の直径との違いであって、差異点2)とは異なる差異点であるから、 「すっきりした印象」が逆に認定されたからといって不合理ということはで きない。
また、1審原告は、差異点2)、3)が微差であると主張するが、差異点2)に つき、原告意匠では円筒状であるのに対し、被告意匠では、上半分が略梯形 状で、その形状の違いは大きく、微差ということはできない。また、差異点 3)についても、需要者の注意を最も引く部分である円筒状中空本体の下面部 に占める、中空部(ファンガード部分に相当する。)と透光部の割合の大小が 相当に異なることになるから、微差ということはできない。 なお、点灯した場合、差異点が明確でなくなることがあったとしても、需 要者は、常に点灯した状態で看取するわけではなく、上述した点が左右され ることはない。1審原告の主張は採用することができない。
イ 具体的構成態様E/eについて\n
1審原告は、原審が、原告意匠の要部である具体的構成態様E3、被告意\n匠の具体的構成態様e3を認定した上で指摘する差異点Aが微差であり、む\nしろ、円形板から放射状に多数のファンガードが面一に形成されているとい う全体的な印象の方が強いという。確かに、原審の認定した上記具体的構成\n態様(E3/e3)によると、1審原告が主張するとおり、いずれの意匠も、 多数のファンガードが円筒状中空部下面とほぼ面一に形成されているという 印象は受けるものの、このような形態を備えた先行意匠が存在することが認 められ(乙14〜16、乙17の1・2)、多数のファンガードが存在するこ とや、略面一であることもって特徴的ということはできない。むしろ、ファ ンガードの形状が直線的であるか、曲線的(渦巻き状)であるかについての 差異点は、より強い印象を与えるというべきであり、上記差異点を微差とい うことはできない。 なお、1審原告は、点灯した状態では、上記の差異点について、認識され なくなると主張するが、前記アのとおり、常に点灯した状態で看取されるわ けではない。1審原告の主張は採用することができない。
ウ 具体的構成態様H/hについて\n
1審原告は、原審が、原告意匠の要部である具体的構成態様H3、被告意\n匠の具体的構成態様h3を認定した上で指摘する差異点6)が微差という。 しかし、原審の認定した上記具体的構成態様(H3/h3)によると、側\n面視の本体に対して透光部の占める割合は、原告意匠(約3分の1)と被告 意匠(約4分の3)とで相当に異なっており、この違いは異なる印象を与え るということができ、微差ということはできない。また、前記アのとおり、 被告意匠では円筒状中空本体側面の上半分が略梯形状であって、その部分の 与える印象が異なるため、原告意匠と被告意匠の側面における透光部の占め る割合(高さ)を、上記略梯形状を含めた円筒状中空本体側面に対する下面 からの高さとして、単純に比較することもできない。 なお、1審原告は、点灯した状態では、上記の差異点について、認識され なくなると主張するが、前記アのとおり、常に点灯した状態で看取されるわ けではなく、1審原告の主張を採用することはできない。
エ 具体的構成態様I/iについて\n
1審原告は、原審が、原告意匠の要部である具体的構成態様I3(ただし、\n口金部を除く。)、被告意匠の具体的構成態様i3(ただし、シーリングプラ\nグを除く。)を認定した上で、その差異点8)、9)から受けるとした印象につい て、支柱体は天井から吊り下げられる部位に関するものであり、しかも、支 柱体の下部には円筒状中空本体が存在するのであるから、支柱体が独立して、 原審が認定した印象を与えることはない旨主張する。しかし、円筒状中空本 体を天井から吊り下げる部位である支柱体は、同中空本体直径の約5分の1 (原告意匠)ないし約3分の1(被告意匠)という相当の存在感を示すもの であり、円筒状中空本体が上方突出体をもって角度調整可能であって下方の\nみを向いているものでもないことをも考えると、支柱体が天井と円筒状中空 本体に挟まれたものであったとしても、その支柱体から受ける印象は、原審 が認定するとおりであるというべきであって、1審原告の主張は採用するこ とができない。
オ まとめ
以上によると、1審原告が当審において主張する差異点は微差ということ はできない。そして、前記(1)で補正した上で原判決を引用して説示したとお り、要部を踏まえた原告意匠と被告意匠の共通点及び差異点を総合的に考慮 すると、原告意匠の構成は、平面視(底面視)が円形である点を除き、全体\n的に直線的で、すっきりとして洗練された印象を与えるのに対し、被告意匠 の構成は、全体的に存在感を示しつつも、柔らかく安定感のある印象を与え\nるものであって、これらの印象がそれぞれの意匠全体に与える影響は強く、 原告意匠と被告意匠に接した需要者は、両意匠から異なる印象を強く感じる ものとみられる。 したがって、原告意匠と被告意匠とは、基本的構成態様においておおむね\n共通するものの、具体的構成態様における差異点がその共通点により生ずる\n美感を凌駕し、全体として需要者の視覚を通じて起こさせる美感を異にする というべきであって、被告意匠は、原告意匠と類似するとはいえない。 このことは、原告意匠と被告意匠とで意匠の要部としての基本的構成態様\n(2か所)が全て共通していることを十分に参酌しても、判断が左右される\nものではなく、1 審原告の主張を採用することはできない。

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◆令和2(ワ)10386

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平成31(ワ)11108  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和4年3月11日  東京地方裁判所

 赤い靴底のハイヒールで有名なルブタンがコピー品の差止、損害賠償を求めました。裁判所は、被告ハイヒールはマニュキュアのような光沢がある赤色ではないとして、請求を棄却しました。

 不競法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示(人の業務に係る氏名、\n商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示す\nるものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表示を使用等すること\nをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定は、周知な商品等 表示の有する出所表\示機能を保護するという観点から、周知な商品等表\示に 化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得す る行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保するものと解される。そし て、商品の形態(色彩を含むものをいう。以下同じ。)は、特定の出所を表\n示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的に は商品の出所表示機能\を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みる と、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を 発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないというべ\nきである。そうすると、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる 顕著な特徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、2)特定の 事業者によって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極 めて強力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の 出所を表示するものとして周知(以下、「周知性」といい、特別顕著性と併\nせて「出所表示要件」という。)であると認められる特段の事情がない限り、\n不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\n
そして、商品に関する表示が複数の商品形態を含む場合において、その一\n部の商品形態が商品等表示に該当しないときであっても、上記商品に関する\n表示が全体として商品等表\示に該当するとして、その一部の商品を販売等す る行為まで不正競争に該当するとすれば、出所表示機能\を発揮しない商品の 形態までをも保護することになるから、上記規定の趣旨に照らし、かえって 事業者間の公正な競争を阻害するというべきである。のみならず、不競法2 条1項1号により使用等が禁止される商品等表示は、登録商標とは異なり、\n公報等によって公開されるものではないから、その要件の該当性が不明確な ものとなれば、表現、創作活動等の自由を大きく萎縮させるなど、社会経済\nの健全な発展を損なうおそれがあるというべきである。そうすると、商品に 関する表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態が商\n品等表示に該当しないときは、上記商品に関する表\示は、全体として不競法 2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\n
これを本件についてみると、原告表示は、別紙原告表\示目録記載のとおり、 原告赤色を靴底部分に付した女性用ハイヒールと特定されるにとどまり、女 性用ハイヒールの形状(靴底を含む。)、その形状に結合した模様、光沢、 質感及び靴底以外の色彩その他の特徴については何ら限定がなく、靴底に付 された唯一の色彩である原告赤色も、それ自体特別な色彩であるとはいえな いため、被告商品を含め、広範かつ多数の商品形態を含むものである。
そして、前記認定事実及び第2回口頭弁論期日における検証の結果(第2 回口頭弁論調書及び検証調書各参照)によれば、原告商品の靴底は革製であ り、これに赤色のラッカー塗装をしているため、靴底の色は、いわばマニュ キュアのような光沢がある赤色(以下「ラッカーレッド」という。)であっ て、原告商品の形態は、この点において特徴があるのに対し、被告商品の靴 底はゴム製であり、これに特段塗装はされていないため、靴底の色は光沢が ない赤色であることが認められる。そうすると、原告商品の形態と被告商品 の形態とは、材質等から生ずる靴底の光沢及び質感において明らかに印象を 異にするものであるから、少なくとも被告商品の形態は、原告商品が提供す る高級ブランド品としての価値に鑑みると、原告らの出所を表示するものと\nして周知であると認めることはできない。そして、靴底の光沢及び質感にお ける上記の顕著な相違に鑑みると、この理は、赤色ゴム底のハイヒール一般 についても異なるところはないというべきである。
したがって、原告表示に含まれる赤色ゴム底のハイヒールは明らかに商品\n等表示に該当しないことからすると、原告表\示は、全体として不競法2条1 項1号にいう商品等表示に該当しないものと認めるのが相当である。\n
のみならず、前記認定事実によれば、そもそも靴という商品において使用 される赤色は、伝統的にも、商品の美感等の観点から採用される典型的な色 彩の一つであり、靴底に赤色を付すことも通常の創作能力の発揮において行\nい得るものであって、このことはハイヒールの靴底であっても異なるところ はない。そして、原告赤色と似た赤色は、ファッション関係においては国内 外を問わず古くから採用されている色であり、現に、前記認定事実によれば、 女性用ハイヒールにおいても、原告商品が日本で販売される前から靴底の色 彩として継続して使用され、現在、一般的なデザインとなっているものとい える。そうすると、原告表示は、それ自体、特別顕著性を有するものとはい\nえない。また、前記認定事実によれば、日本における原告商品の販売期間は、 約20年にとどまり、それほど長期間にわたり販売したものとはいえず、原 告会社は、いわゆるサンプルトラフィッキング(雑誌編集者、スタイリスト、 著名人等からの要望又は依頼に応じて、これらの者が雑誌の記事、メディア での撮影等で使用するため原告商品を貸し出すという広告宣伝方法をいう。) を行うにとどまり、自ら広告宣伝費用を払ってテレビ、雑誌、ネット等によ る広告宣伝を行っていない事情等を踏まえても、極めて強力な宣伝広告が行 われているとまではいえず、原告表示は、周知性の要件を充足しないという\nべきである。したがって、原告表示は、そもそも出所表\示要件を充足するも のとはいえず、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当するものとはい\nえない。
(3) また、前記認定事実によれば、原告商品は、最低でも8万円を超える高価 格帯のハイヒールであって、靴底のラッカーレッド及びその曲線的な形状に 加え、靴の形状、ヒールの高さその他の形態上の顕著なデザイン性を有する 商品であるのに対し、被告商品は、手頃な価格帯の赤色ゴム底のハイヒール であることからすると、ハイヒールの需要者は、両商品の出所の違いをそれ 自体で十分に識別し得るものと認めるのが相当である。さらに、いわゆる高\n級ブランドである原告商品のような靴を購入しようとする需要者は、その価 格帯を踏まえても、商品の形態自体ではなく、商標等によってもその商品の 出所を確認するのが通常であって、原告商品、被告商品とも、中敷や靴底に ブランド名のロゴが付されているのであるから、需要者は当該ロゴにより出 所の違いを十分に確認することができる。しかも、原告商品のような高級ブ\nランド品を購入しようとする需要者は、自らの好みに合った商品を厳選して 購入しているといえるから、旧知の靴であれば格別、現物の印象や履き心地 などを確認した上で購入するのが通常であるといえ、上記の事情を踏まえて も、このような場合に誤認混同が生じないことは明らかである。 このような取引の実情に加え、原告商品と被告商品の各形態における靴底 の光沢及び質感における顕著な相違に鑑みると、原告商品と被告商品とは、 需要者において出所の混同を生じさせるものと認めることはできない。 そうすると、被告商品の販売は、不競法2条1項1号にいう不正競争に明 らかに該当しないものと認められる。

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令和3(ネ)10083  著作権侵害差止等請求控訴事件  著作権  民事訴訟 令和4年3月23日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。知財高裁2部は、1審の判断を維持しました。

ア 控訴人は,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面との一致箇所をひとまとまり として捉えて創作性を判断すべきこと,ビジネスソフトウェアのディスプレイ(表\ 示画面をいう趣旨と解される。)における表現の創作性については丁寧な検討が必\n要であること,控訴人表示画面について表\現上主要な箇所は2)データ分析等画面(単 品詳細情報画面,日別画面,他店舗在庫表示画面,定期改正入力画面,リクエスト\n管理画面)であり,そこには表現上の工夫が多数散りばめられていることなどを主\n張する。
しかし,被控訴人製品の各表示画面から控訴人製品の各表\示画面の本質的な特徴 を感得することはできず,被控訴人表示画面に接する者が全体として控訴人表\示画 面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるとは認められないことは,\n訂正して引用した原判決の第4の1で認定判断したとおりである。 控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の対比に係る判断は,同1(3)のとおりであ って,控訴人表示画面と被控訴人表\示画面の共通する部分をひとまとまりにして検 討することによって,上記判断が左右されるものではない。ビジネスソフトウェア\nのディスプレイ(表示画面)における表\現の創作性について丁寧な検討が必要であ るという一般論の主張も,上記判断に影響しない。控訴人が2)データ分析等画面に 多数散りばめられていると主張する表現上の工夫のうち,発注操作を行う欄の配色\nについては,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているといえる程度の特徴\nを有するものとは認められず,同欄の位置や詳細情報を画面の下方に配置すること は,書店業務を効率的に行うという観点から通常想定される範囲内のものである。 控訴人の主張する2)データ分析等画面における素材の選択及び配列における選択の 幅についても,訂正して引用した原判決の第4の1(4)で判断したとおりである。
イ 控訴人は,控訴人製品の表示画面と被控訴人製品の表\示画面に共通性が多数 認められること,操作ガイダンスの文字列に一致が何か所もあることなどを主張す るが,それらの主張は,訂正して引用した原判決の第4の1の認定判断を左右する ものではない。
(2) 争点4(不正競争防止法違反の有無)に関する控訴人の補充主張について
ア 控訴人は,控訴人表示画面の特別顕著性に関し,需要者を書店ユーザーに限\n定すべきこと,控訴人製品がその表示画面に顕著な特徴を有することを主張するが,\n控訴人表示画面の特徴に関しては訂正して引用した原判決の第4の1(3)及び(4)で 認定判断したとおりであり,控訴人表示画面に特別顕著性が認められないことは,\n同3で判断したとおりである。控訴人の主張するように控訴人製品の需要者を書店 に限定したとしても,上記の認定判断は左右されない。
イ 控訴人は,周知性についても主張するところ,控訴人製品のシェアについて 控訴人が当審で追加提出した証拠(甲83の1・2,甲84)を含む本件全証拠を もってしても,控訴人の主張するシェアを認めるに足りない。なお,仮に,控訴人 製品が相応のシェアを占めているとしても,そのことから直ちに,控訴人表示画面\nの周知性が認められるものともいえない。 また,控訴人は,控訴人製品の宣伝・広報活動について主張するが,当該活動に ついて控訴人が追加提出した証拠(甲85〜91)を含む本件全証拠をもってして も,当該活動は一定の期間及び範囲に限定して認められるにすぎず,また,その内 容をみても,当該活動において控訴人表示画面が媒体に表\示されていたものではな いから,控訴人表示画面の周知性を裏付けるものとはいえない。\n控訴人のその他の主張も,訂正して引用した原判決の第4の3(2)における控訴 人表示画面の周知性が認められない旨の判断を左右するものではない。\n

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◆平成30(ワ)28215

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令和2(ワ)31138等  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年1月28日  東京地方裁判所

 原告は、登録商標「ライスパワー」「RICE POWER」を、被告は登録商標「いいべさーホワイトライスパワー」をそれぞれ保有していました。被告は「ホワイトライスパワー」「WHITE RICE POWER」を使用しており、これらが商標権侵害・不正競争行為に該当するのかが争われました。裁判所は商標権侵害・不正競争行為であるとして、差止および17万円の損害賠償を認めました。

被告主張表示1について\n
被告主張表示1は,「IIBESA」,「いいべさー」,「ホワイトライ\nスパワー」の3段の文字列からなり,「ホワイトライスパワー」の部分 は,黒字の背景に白文字の表示となっており,「いいべさー」,「いいべ\nさー」,「ほわいとらいすぱわー」との称呼が生じる。そして,「いいべ さー」とは,東北地方の方言で「いいでしょう」という意味を持ち, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」との観念が生じるも のといえる。
このように,被告主張表示1の外観において,「IIBESA」,「い\nいべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示され\nており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示\nになっており,他とは区別されている。そして,その観念については, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり, 「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分) を修飾しており,「白い米の力」の部分が需要者の注意を引きつけるも のといえる。また,その称呼についても「いいべさー」,「いいべさー」, 「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一連のものと一読 するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じるといえる。 加えて,被告主張表示1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライス\nパワー」部分は,需要者である化粧品に関心のある一般の消費者に原告 勇心酒造の出所を示すものとして周知の表示であった(前記3(1))。そ して,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品の部類に属するものと いえるところ,化粧品類の取引においては,一般に,「ホワイト」とは, その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効果を謳う品質や効能\表示\nに用いられるものとして,広く使用されているといえ,このような化粧 品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の部分は,その商品の品質, 効能,色彩を表\示するものと理解し得るものといえる。これらによれば, 本件においては,「ホワイトライスパワー」のうち,「ライスパワー」の 部分が周知の表示として需要者に強い印象を与え,このこととの関係に\nおいて,「ホワイト」の部分は,その「ライスパワー」の品質,効能,\n色彩を示すものと理解し得て,その場合には識別力を有しないか,又は 識別力の弱い部分であるというべきであり,一般の消費者は,「ライス パワー」部分に着目するといえる。
このように,被告主張表示1の外観や観念,称呼に加えて,「ライス\nパワー」部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の実\n情に照らせば,被告主張表示1において強く支配的な印象を与えるのは,\n「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分で あるというべきである。 したがって,被告主張表示1については,原告各表\示と被告主張表示\n1の「ライスパワー」部分の類似性を検討するのが相当である。 そうすると,原告表示1と,被告主張表\示1の「ライスパワー」部分 は,外観,称呼,観念において同一であり,原告表示2及び3と被告主\n張表示1の「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であると\nいえるから,原告各表示と被告主張表\示1は,両者を全体的に類似のも のとして受け取るおそれがあるといえ,類似しているといえる。
・・・
原告各表示と被告各表\示が類似していることに加えて,原告商品及び被告各 商品はいずれ化粧品の部類に属し,取引者及び需要者は共通のものといえる ことなどに照らせば,被告が原告各表示と類似する被告各表\示を付して被告 各商品の販売等することは,需要者に他人である原告の商品と混同を生じさ せる行為といえる。 したがって,被告が被告各表示を使用した商品を販売等する行為は,不競法\n2条1項1号の不正競争に該当する行為といえる。
・・・
被告主張標章1について
被告主張標章1は,被告主張表示1と同一の構\成であり,「IBESA」,「いいべさー」,「ホワイトライスパワー」の3段の文字列からなり, 「ホワイトライスパワー」の部分は,黒字の背景に白文字の表示となっ\nており,「いいべさー」,「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」との 称呼が生じる。そして,「いいべさー」とは,東北地方の方言で「いい でしょう」という意味を持ち,「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白 い米の力」との観念が生じるものといえる。 このように,被告主張標章1の外観において,「IIBESA」,「い いべさー」,「ホワイトライスパワー」の部分は3段に分かれて表示され\nており,「ホワイトライスパワー」の部分は黒字の背景に白文字の表示\nになっており,他とは区別されている。そして,その観念については, 「いいでしょう」,「いいでしょう」,「白い米の力」というものであり, 「いいでしょう」は「白い米の力」(ホワイトライスパワーの文字部分) を修飾しており,「ホワイトライスパワー」の文字部分が需要者の注意 を引きつけるものといえる。また,その称呼についても「いいべさー」, 「いいべさー」,「ほわいとらいすぱわー」というものであり,これを一 連のものと一読するのは冗長であり,各部分について格別に称呼が生じ るといえる。
加えて,被告主張標章1の「ホワイトライスパワー」のうち「ライス パワー」部分は,化粧品に関心のある一般の消費者に,原告勇心酒造の 出所を示す表示として周知の表\示といえ,需要者に強い印象を与えると いえる(前記3(1))。また,原告商品及び被告各商品は,ともに化粧品 の部類に属するものといえるところ,化粧品類の取引においては,「ホ ワイト」とは,一般に,その商品の色彩を表示するもの又は肌の美白効\n果を謳う品質や効能表\示に用いられるものとして,広く使用されている といえ,このような化粧品類の取引の実情に鑑みれば,「ホワイト」の 部分は,その商品の品質,効能,色彩を表\示するものと理解し得るもの といえる。これらによれば,本件においては,「ホワイトライスパワー」 のうち,「ライスパワー」の部分が周知の表示として需要者に強い印象\nを与え,このこととの関係において,「ホワイト」の部分は,その「ラ イスパワー」の品質,効能,色彩を示すものと理解し得て,その場合に\nは識別力を有しないか,又は識別力の弱い部分であるというべきであり, 一般の消費者は,「ライスパワー」部分に着目するといえる。
このように,被告主張標章1の外観や観念,称呼に加えて,「ライス パワー」の部分が需要者に周知の表示といえることや化粧品類の取引の\n実情に照らせば,被告主張標章1で強く支配的な印象を与える部分は, 「ホワイトライスパワー」の文字部分のうちの「ライスパワー」部分で あるというべきである。 したがって,被告主張標章1については,原告各表示と,被告主張標\n章1の「ライスパワー」部分との類否を検討するのが相当である。そう すると,原告商標1と,被告主張標章1の「ライスパワー」部分は,外 観,称呼,観念において同一であり,原告商標2と被告主張標章1の 「ライスパワー」部分は,称呼,観念において同一であるといえる。そ して,原告勇心酒造と原告創研は,原告各商標の持つ出所識別機能等を\n保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価する ことができ(前記認定事実(4)),実質的には同一の表示による商品化事\n業を一体として営む関係にあるといえることに鑑みれば,上記「ライス パワー」部分が同一である場合,原告各商標と被告主張標章1は,類似 しているということが相当である。
・・・
カ 被告は,1)被告主張標章1ないし4が全体としてまとまりよく表示され\nており,称呼も冗長ではなく,よどみなく一連に称呼できることから,全 体を一体として理解すべきである,2)「ホワイトライスパワー」のうち 「ホワイトライス」とは白米を指すことから,「ホワイト」の部分だけを 分離して判断することはできないなどと主張するが,これらの被告の主張 を採用することができないのは,前記4(3)キのとおりである。
キ 以上のとおり,原告各商標と被告主張標章1ないし4及び被告標章5な いし8は類似しているといえる。そして,被告主張標章1ないし4は, 「ホワイトライスパワー」又は「White Rice Power」と いう被告標章1ないし4の文字列を含むことからすれば,原告各商標と被 告標章1ないし4は類似しているといえる。したがって,原告各商標と被 告各標章は類似しているといえる。

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令和3(ネ)10025 損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和4年1月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 交換用カートリッジの記載が不競法2条1項1号の周知の商品等表示に該当するかが争われました。知財高裁1部は、該当しないとした1審判断を維持しました。

ア(ア) 本件アマゾンサイトのウェブページ(本件切替え画像)において, 別紙3(2)のとおり,交換用カートリッジのイメージ画像の左上部に被告 表示2が,その下の中央部に「待望の」,「交換用カートリッジ」,「つい に発売!!」との本件三段書き表\示が,被告表 示2の左上部に小さく表\ 示された複数の画像が,その上に青色の文字で「【ノーブランド品】タカ ギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある交換用カートリッジ...」 との表示が掲載されていた。 
本件切替え画像は,交換用カートリッジのイメージ画像及び本件三段 書き表示の「交換用カートリッジ」,「ついに発売!!」の文字部分から, イメージ画像に表\示された交換用カートリッジの商品の販売広告である ことを理解できる。
また,被告表示2は, 
「タカギ社製
浄水蛇口の交換用カートリッジを
お探しの皆様へ」
と青色の文字で3段書きに表示してなるものである。 
被告表示2の上段の「タカギ社製」の文字部分(被告標章)及び中段 の「浄水蛇口の交換用カートリッジ」の文字部分の2段の記載部分は,\n販売広告の対象商品と関連付けたものとして理解できる。そして,2段 の上記記載部は,その構成態様から,「タカギ」が製造した「交換用カー トリッジ」を表\示したものと読み取ることが可能 であり,また,「タカギ」\nが製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カートリッジ」を表示した ものと読み取ることも可能\であると一応考えられる。 一方で,被告表示2の左上部に小さく表\ 示された複数の画像の上に青 色の文字で「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け互 換性のある交換用カートリッジ...」との表示は,販売広告の対象商品が 「ノーブランド品」であって,「タカギ」が製造した「浄水器」に使用で\nきる「交換用カートリッジ」であることを説明したものと理解できる。 そして,1)「ノーブランド品」とは,ブランドを掲げずに一般名称の みを記した商品を意味するものと解されること,2)原告表示(黒色のゴ シック体の「タカギ」の表\示)は,家庭用浄水器及びその関連商品を購 入しようとする需要者の間において,控訴人の業務に係る商品を表示す るものとして周知となっており(前記1(1)イ),家庭用浄水器及びその 関連商品のブランド名として理解されていたことに鑑みると,控訴人製 の純正品の交換用カートリッジについて「ノーブランド品」と表示する ことは通常考えられないというべきであるから,本件切替え画像に接し\nた需要者は,「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け 互換性のある交換用カートリッジ...」との表示は,販売広告の対象商品 が控訴人製の純正品とは異なる商品であることを示したものと理解する\nものと認められる。 そうすると,「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付 け互換性のある交換用カートリッジ...」との表示は,被告表\ 示2の上段 の「タカギ社製」の文字部分(被告標章)及び中段の「浄水蛇口の交換 用カートリッジ」の文字部分の2段の記載部分が「タカギ」が製造した 「交換用カートリッジ」(控訴人製の純正品)を表示したものと読み取る ことを否定する打ち消し表\示としての機能 を有するものと認められる。\nしたがって,本件アマゾンサイトの本件切替え画像の被告表示2に接 した需要者は,被告表\示2の上段の「タカギ社製」の文字部分(被告標 章)及び中段の「浄水蛇口の交換用カートリッジ」の文字部分の2段の 記載部分は,「タカギ」が製造した「浄水蛇口」に適合する「交換用カー トリッジ」を表示したものと理解するものと認められる。 
(イ) 以上によれば,被告表示2における被告標章の使用によって,被告 商品が控訴人製の純正品であると需要者に誤認させて,被告商品の出所\nが控訴人又は控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれが あるものと認めることはできないし,また,その営業主体が控訴人又は 控訴人の関連会社であるとの混同を生じさせるおそれがあるものと認 めることはできない。
イ(ア) これに対し控訴人は,本件アマゾンサイトアンケート調査の結果に よれば,「ノーブランド品」と掲げ,かつ,「タカギの浄水器に使用でき る、取付け互換性のある交換用カートリッジ」と表示されていたとして も,「タカギ」が製造・販売元であると認識する回答者の数は,「タカギ」\nが製造・販売元ではないと認識する回答者の数を上回っており,また, 原告製浄水器を使用したことがある需要者に着目すると,3分の1を超 える需要者は「タカギ」が製造元であると認識していることに照らすと, 「【ノーブランド品】タカギの浄水器に使用できる、取付け互換性のある 交換用カートリッジ」との表示が,被告商品が「タカギ」が製造・販売 する商品ではないと需要者が認識する表\示(打ち消し表 示)であるとい\nうことはできないなどとして,上記調査結果から,本件切替え画像に接 した大多数の需要者は,被告標章を含む被告表示2から,「タカギ」 が被告商品の製造・販売元であると認識する旨主張する。\nそこで検討するに,証拠(甲23ないし25)によれば,本件アマゾ ンサイトアンケート調査は,本件アマゾンサイトに掲載された被告表示 2についての需要者の認識を確認することを目的とし,控訴人がGMO\nリサーチに委託し,2021年(令和3年)4月27日,20歳以上9 9歳以下のオンラインショッピング利用経験者を調査対象者とし,別紙 4(3)の本件アマゾンサイトの商品ページに掲載されている商品の画像及 びその説明文(本件アマゾンサイト画像1)),別紙4(4)の本件アマゾンサ イトの商品ページに掲載されている商品の画像(本件アマゾンサイト画 像2))を提示して,調査対象者が,画像を見ながら質問に回答するオン ラインリサーチを実施し,それぞれの画像につき各500名の回答(回 答者の重複はない。)を得て,その回答結果を集計したものであることが 認められる。
しかるところ,前記1(3)ア(ア)認定のとおり,原告商品の需要者は,家 庭用浄水器及びその関連商品を購入しようとする者であり,原告製浄水 器の交換用カートリッジである被告商品の需要者も,これと同様である ところ,本件アマゾンサイトアンケート調査の調査対象者は,20歳以 上99歳以下のオンラインショッピング利用経験者であって,その中に は,家庭用浄水器及びその関連商品を購入しようとする者以外の者が含 まれている点において,本件アマゾンサイトアンケート調査の結果は, 需要者の認識を正確に反映したものとはいえない。 また,本件アマゾンサイトアンケート調査で調査対象者に提示された 画像は,本件切替え画像全体ではなく,そのうちの被告表示2のみの画 像(本件アマゾンサイト画像2))であり,交換用カートリッジの購入を 検討する需要者が実際に接する画像と異なることに照らすと,本件アマ ゾンサイトアンケート調査の結果から,需要者の認識を確認すること は困難であるというべきである。 したがって,その余の点について検討するまでもなく,控訴人の上記 主張は,採用することができない。
(イ) また,控訴人は,甲18の報告書記載のとおり,本件アマゾンサイト の被告標章に接した複数の顧客から被告商品を控訴人製の純正品である と勘違いして購入した旨のクレームを受けたことを根拠として挙げて, 被告標章の使用によって,被告商品が控訴人製の純正品であると需要者 に誤認させた旨主張する。 しかしながら,甲18の報告書に記載されている「顧客」が本件アマ ゾンサイトで被告商品を購入した者であるかどうかは不明であり,その 数も僅かであることに照らすと,甲18の報告書の記載から,被告標章 の使用によって,被告商品が控訴人製の純正品であると需要者に誤認さ せたものと認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 前記ア及びイによれば,被控訴人グレイスランドが本件アマゾンサイト で被告商品の広告に被告表示2を掲載した行為による被告標章(「タカギ 社製」の表\示)の使用が,控訴人の商品又は営業と混同を生じさせる行為 に該当するものと認めることはできないから,控訴人の前記主張は,理由 がない。
(3) 小括
以上のとおり,被控訴人グレイスランドが本件アマゾンサイトで被告商品 の広告に被告表示2を掲載した行為による被告標章の使用は,控訴人の商品 又は営業と混同を生じさせる行為に該当するものと認められないから,不競\n法2条1項1号の不正競争行為に該当しない。

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平成30(ワ)28215 著作権侵害差止等請求事件  著作権  民事訴訟 令和3年9月17日  東京地方裁判所

 コンピュータソフトの画面について、著作物性、不競法2条1項1号の商品等表示に該当するかが争われました。本件ではいずれも否定されましたが、一般論としては「ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形態と同様,・・特別顕著性,かつ,・・周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。」と 認定されています。

 以上のとおり,原告表示画面と被告表\示画面の共通する部分は,いずれも アイデアに属する事項であるか,又は,書店業務を効率的に行うに当たり必 要な一般的な指標や情報にすぎず,各表示項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表\現においても,創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない上,両製品の配色の差違等により,利用者が画面全体から受ける印象も相当異なるというべきである。そ\nして,被告表示画面について,他に原告表\示画面の本質的特徴を直接感得し 得ると認めるに足りる証拠はない。
(4) 表示画面の選択や相互の牽連関係における創作性の有無・程度
ア 原告は,表示画面の牽連性に関し,原告製品は,画面の最上部にメニュータグを常時表\示し,どの画面からも次の業務に移行できるようにしている点や,画面の中央にサブメニュー画面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にしている点などに独自性があると主張する。 しかし,画面の最上部にメニュータグを常時表示し,そのいずれの画面からも次の業務に移行できるようにすることや,画面の中央にサブメニュー画\n面を用意し,画面遷移なしに表示することを可能\にすることは,利用者の操 作性や一覧性あるいは業務の効率性を重視するビジネスソフトウェアにおいては,ありふれた構\成又は工夫にすぎないというべきであり,原告製品における表示画面相互の牽連性に特段の創作性があるということはできない。
イ また,原告は,原告製品が補充発注画面や自動計算機能を備えていることをもって他社にはない独自性があると主張するが,在庫の変動に伴い商品を\n補充して発注することや,定期改正数を自動計算することなどは,一般的な 書店業務の一部であり,原告製品の補充発注(条件設定)画面及び補充発注 (入力)画面に表示された項目の名称の選択,配列順序及びそのレイアウトなどの具体的な表\現において,創作者の思想又は感情が創作的に表現されて\nいるということはできないことは,前記(3)ケ及びコで判示のとおりである。
ウ したがって,原告製品は,表示画面の選択や画面相互の牽連性において独自性又は創作性があるとの原告主張は採用し得ない。\n
・・・
(1) 原告は,被告製品の表示画面が不競法2条1項1号の規定する不正競争行為に該当すると主張するところ,ビジネスソ\フトウェアの表示画面は,商品の形\n態と同様,1)当該表示画面が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その表示画面が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な広告宣伝や爆発的な販売実績等により,\n需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表\示」に該当すると解するのが相当である。
(2) 周知性について
原告は,原告表示画面が,遅くとも平成25年末までには,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと主張するが,以下のとおり,理由がない。\nア 原告製品の販売数や市場占有率に関し,原告は,原告のシステム製品は出 版社市場でトップシェアを占めており,原告製品は既に全国の小売書店10 00店舗に向けて販売・採用されていると主張するが,原告商品の導入件数, 市場規模,原告製品の市場占有率を客観的に示す証拠は提出されていない。
イ また,原告は,業界新聞である「文化通信BB」において原告製品が紹介 されたことを指摘するが,「文化通信BB」の発行部数等は明らかではなく, その記事の内容は原告製品を紹介する内容を含むものの,原告製品の表示画面は一切掲載されていない(甲18)。\n同様に,原告は,日販が平成25年8月1日付け業界新聞において書店向 けPOSレジと原告製品を連携させることを発表し,系列の書店1000店に合計1300台を販売することを表\明したと主張するが,同記事で導入が表明されているのはPOSレジであり,原告製品が書店に導入されたことを裏付けるものではない上,同記事には原告製品の表\示画面は一切表示されて\nいない(乙23)。
ウ さらに,原告は,「文化通信」及び「新文化」のウェブサイトの上段に,バ ナー広告を掲載したことや,「BOOK EXPO」や「書店大商談会」に出 展し,広報を行っていることを根拠に,原告表示画面には周知性がある旨主張する。\n しかし,証拠(乙22)によれば,文化通信社のウェブサイト上に掲載さ れたバナー広告は,「BOOK ANSWERシリーズ」という製品名を表示するものにすぎず,原告製品の表\示画面は一切示されていない。また,「BOOK EX PO」や「書店大商談会」への出展についても,その規模や具体的な出展・ 宣伝態様などは一切明らかではない。
エ 以上によれば,原告画面表示が,遅くとも平成25年末までに,出版業界及び書店業界において広く認識されていたと認めることはできない。\n
(3) 特別顕著性について
原告は,原告表示画面には特別顕著性が認められる旨主張し,その根拠として,1)業務統合型のシステムを構築するという設計思想に基づき,仕入部門で使用するメニューと店売部門で使用するメニューが統合されている点や,2)発 注に当たって,商品分析の画面から一旦発注画面に移行することなく,商品分 析の画面から即発注することができる点,3)帳票を作成するという発想がなく, 画面上に表示して見るということを基本にしている点,4)独自の用語を用いて いる点に,他社製品にはない原告製品の独創的な特徴がある旨主張する。
しかし,上記1)〜3)の点は,いずれも,原告製品の設計思想や機能としての独自性を指摘するものにすぎず,表\示画面自体の顕著な特徴を基礎付けるものということはできない。また,上記4)の点についても,原告製品の表示画面に用いられた用語は,一般的な書店業務に用いられているものがほとんどであり,\n画面全体の特別顕著性を基礎付けるに足りる独創的を有すると認めることは できない。
したがって,原告表示画面が同種製品と異なる顕著な特徴を有しているということはできない。\n
(4) 以上のとおり,原告表示画面には,周知性及び特別顕著性のいずれも認められないから,原告表\示画面が「商品等表示」に該当するということはできない。\nしたがって,その余の点を判断するまでもなく,不正競争防止法に関する原 告の主張についても理由がない。

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令和1(ワ)11673  差止請求等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和3年9月3日  東京地方裁判所

 女性用下着の形状について、周知著名商品等表示ではないと判断されましたが、不競法2条1項3号の形態模倣であるとして、約2億円の損害賠償が認められました。

 原告は,原告商品は形態1)ないし7)を組み合わせたものであり,原告 商品全体の形態と同一又は類似の商品は見当たらないから,他の同種商 品と識別し得る特徴を有すると主張する。 しかし,原告商品の販売が開始された当時,原告商品が備える形態1) ないし7)の全てを備えるブラジャー又はナイトブラが販売されていたこ とを認めるに足りる証拠はないものの,前記(1)ウ(ア)のとおり,形態1) ないし7)のうちの3つ又は4つを備える商品AないしGが存在していた。 そうすると,原告商品の販売開始時点では,既に,原告商品の形態に似 通った商品が複数販売されていたということができる。しかも,前記(ア) のとおり,原告商品の形態1)ないし7)は,いずれも他の商品とは異なる 顕著な特徴とは認められないから,当該商品には認められないが原告商 品には認められる形態上の特徴により,需要者であるブラジャー又はナ イトブラの購入に関心がある一般消費者が出所の違いを識別することが できるとはいえない。そして,形態1)ないし7)を組み合わせることによ り上記需要者の注意を特に惹くことになる事情も見当たらないことから すると,形態1)ないし7)を組み合わせた原告商品の形態が他の同種の商 品とは異なる顕著な特徴を有していると認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 周知性について
前記(1)イ(ア)のとおり,原告商品は平成28年9月12日に販売が開始 されたところ,原告商品の形態につき周知性が確立したと原告が主張する 平成29年12月までに約1年4か月,被告商品1の販売が開始された平 成30年10月まででも約2年1か月しか経過していない。そして,前記 (1)ウ(ア)のとおり,原告商品の販売が開始される前から,原告商品が備え る形態1)ないし7)のうち複数を有するブラジャー又はナイトブラが販売さ れており,原告商品の形態が原告によって長期間独占的に利用されたとは 認められない。
・・・
商品の形態を比較した場合,問題とされている商品の形態に他 人の商品の形態と相違する部分があるとしても,当該相違部分についての 改変の内容・程度,改変の着想の難易,改変が商品全体の形態に与える効 果等を総合的に判断した上で,その相違がわずかな改変に基づくものであ って,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な 相違にとどまると評価されるときには,当該商品は他人の商品と実質的に 同一の形態というべきである。
イ 被告商品1について
(ア) 前記(1)アのとおり,被告商品1は,原告商品が備える形態1)ないし7) を全て備え,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,全体的なデザイ ンはほぼ同一であるといえる。 被告商品1と原告商品の間には相違点1)が認められるが,別紙2原告 商品目録記載の写真のとおり,原告商品のカップ部の中央に付けられた リボンはごく小さな装飾にすぎず,そのようなリボンを取り外すという 改変については,その程度はわずかであり,着想することが困難である とはいえず,商品全体の形態に与える効果もほとんどないといえる。 また,被告商品1と原告商品の間には相違点2)が認められるが,別紙 1被告商品目録記載1の写真のとおり,左右の前身頃を構成する3枚の\n生地のうち最下部にある生地が被告商品全体に占める面積はそれほど大 きいものではなく,他の部分の布地と同系色であってレース生地の存在 が際立つものではない上,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,原 告商品と被告商品1とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成は同一といってよいことからすると,相違点2)は,需 要者であるブラジャー又はナイトブラの購入に関心がある一般消費者に 対し,原告商品よりもレース生地が比較的多いという印象を与えるにと どまるから,被告商品1の上記部分をレース生地とすることが商品全体 の形態に与える効果は小さいといえる。さらに,前記1(2)イのとおり, ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふれた形態であり,上記 部分を無地の生地からレース生地に置き換える着想が困難であるともい えない。
そうすると,相違点1)及び2)は,いずれもわずかな改変に基づくもの であり,商品の全体的形態に与える変化は乏しく,商品全体から見て些 細な相違にとどまるといえるから,被告商品1は原告商品と実質的に同 一の形態であると認めるのが相当である。 (イ) 前記(ア)のとおり,被告商品1と原告商品は実質的に同一の形態であり, 前記前提事実(2)及び(3)アのとおり,被告商品1の販売が開始された平 成30年10月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開 始されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品1を独自 に開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被 告は原告商品の形態に依拠して被告商品1を作り出したと推認するのが 相当である。
(ウ) 以上によれば,被告商品1は,原告商品の「商品の形態」を「模倣し た商品」であると認められる。
・・・
また,被告商品2と原告商品の間には相違点5)が認められるが,別紙 1被告商品目録記載2の写真のとおり,被告商品2も,被告商品1と同 様,レース生地の色合いが他の部分の布地と同系色であって,レース生 地の存在が際立つものではなく,被告商品2では,被告商品1よりレー ス生地が多く用いられているものの,そのレース生地が肩紐部や背部と いった比較的注目することが多くないと考えられる部分に用いられてお り,一方で,同写真と別紙2原告商品目録記載の写真を見比べると,原 告商品と被告商品2とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成はほぼ同一であるといえることからすると,この改変\nが商品全体の形態に与える効果は大きくないというべきである。さらに, 前記1(2)イのとおり,ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふ れた形態であり,被告商品2の相違点5)に係る部分を無地の生地からレ ース生地に置き換える着想が困難であるとはいえない。 被告商品2と原告商品の間には相違点6)が認められるが,ホックが4 段階であるか3段階であるかの違いにすぎず,ホックを連結する段階数 を増やすという改変を着想することは容易であり,そのような改変が商 品全体の形態に与える効果は小さいといえる。 そうすると,相違点3)ないし6)は,いずれもわずかな改変に基づくも のであり,商品の全体的形態に与える変化は大きくなく,商品全体から 見て些細な相違にとどまるといえるから,被告商品2は原告商品と実質 的に同一の形態であると認めるのが相当である。
(イ) 前記(ア)のとおり,被告商品2と原告商品は実質的に同一の形態であり, 前記前提事実(2)及び(3)イのとおり,被告商品2の販売が開始された平 成31年2月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開始 されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品2を独自に 開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被告 は原告商品の形態に依拠して被告商品2を作り出したと推認するのが相 当である。
・・・
不競法5条2項の侵害者が侵害行為により受けた利益の額は,侵害者の侵 害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製 造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額で あると解するのが相当である。 辞任前の被告訴訟代理人が作成した一覧表(甲54)によれば,被告が被\n告商品1を販売したことにより,1億5794万円の売上げがあり,商品原 価として2650万円,カード決済料金として552万7900円及び送料 原価として2650万円を要したこと,被告が被告商品2を販売したことに より,1億4254万5320円の売上げがあり,商品原価として2873 万7640円,カード決済料金として498万9086円及び送料原価とし て2391万7000円を要したことが認められる。
そして,弁論の全趣旨 によれば,上記の商品原価,カード決済料金及び送料原価は,いずれも被告 各商品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認められる。 他方で,上記一覧表(甲54)には,被告商品1につき広告費として73\n20万5070円,人件費420万円及び販売システム費用789万700 0円,被告商品2につき広告費として7063万0834円,人件費630 万円及び販売システム費用712万7266円を要したかのような記載があ る。しかし,被告が上記広告費を支出してどのような内容の広告をしたのか, それが被告各商品に係るものであったかは,証拠上明らかではないし,上記 人件費及び販売システム費用がいかなる目的で支出されたかも証拠上明らか でないから,これらの費用は,被告各商品の製造販売に直接関連して追加的 に必要となった経費とは認められない。
したがって,被告が被告商品1を販売したことによる利益の額は9941 万2100円(=1億5794万円−2650万円−552万7900円− 2650万円)であると,被告商品2を販売したことによる利益の額は84 90万1594円(=1億4254万5320円−2873万7640円− 498万9086円−2391万7000円)であると,それぞれ認められ る。
(2) 本件訴訟に現れた全ての事情を勘案すると,本件訴訟の弁護士費用相当の 損害額は,被告商品1につき994万1210円,被告商品2につき849 万0159円と認めるのが相当である。
(3) したがって,被告が被告各商品を販売したことにより原告が被った損害額 は,合計2億0274万5063円である。

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令和2(ネ)10040  損害賠償請求控訴事件  商標権  民事訴訟 令和2年12月17日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 バーキンタイプのバッグ販売について、不競法2条1項1,2号違反とした1審判断が維持されました。

c 取引の実情
控訴人は,被控訴人商標が付された被控訴人商品と,控訴人商品等 は,価格,品質,商品名及びロゴ等の点で異なるので,取引の実情に 照らして,控訴人商品等と被控訴人商標は誤認混同を生ずることはな く,類似しない旨主張する。 しかし,被控訴人商標が付された被控訴人商品と,控訴人商品等が, 価格,品質,商品名及びロゴ等の点で異なるとしても,そのことから 直ちに,取引の実情に照らして,控訴人商品等の形状と被控訴人商標 が誤認混同を生ずることがないとはいえないし,類似性が否定される ことはない。被控訴人商品の新品は,被控訴人の直営店舗や専門店等 を通じて店舗又はインターネット上で販売されており,それらの販路 の数は比較的限定されているものの(弁論の全趣旨),高級ブランド バッグである被控訴人商品の中古品については,中古市場が成立して おり,店舗及びインターネット上で活発に取引がされている一方で(公 知の事実),控訴人商品等も新品は店舗(甲1,2,弁論の全趣旨) 及びインターネット上で販売され(原判決第2の2(1)イ(原判決3頁 14行目ないし19行目)),中古品もインターネット上で取引され ており(甲51〜61),このように,被控訴人商品と控訴人商品等 は,新品及び中古品のいずれについても市場に共通性があると認めら れる。また,中古品については,被控訴人商品であっても品質は新品 に比べて劣化しており,価格も新品よりは低廉である上,一般に中古 品は,ある期間使用された後に譲渡されるため,出所や商品名が新品 のように明確にされていない場合や,品質,商品名及びロゴの有無等 を十分に確認することなく取引が行われている場合(特にインターネ\nット上の取引の場合)が少なくないから(弁論の全趣旨),価格,品 質,商品名及びロゴによって被控訴人商品と控訴人商品等が明確に区 別されるとはいい難く,被控訴人商品の中古品が市場において活発に 取引されていることからすると,被控訴人商品と控訴人商品等の混同 の可能性が具体的に存在すると認められる。そうすると,前記a,b\nのとおり,控訴人商品等(控訴人商品及びバーキンタイプのバッグ) は被控訴人商標と外観上類似するから,価格,品質,商品名及びロゴ に相違があることを考慮しても,被控訴人商標を付した被控訴人商品 と控訴人商品等は具体的な取引において誤認混同のおそれがあるもの と認められる。したがって,取引の実情に照らして,控訴人商品等の 形状は被控訴人商標と誤認混同を生ずるおそれがあり,類似するもの と認められる。
・・・
(4) 争点4(被控訴人の損害)について
ア 控訴人商品等の販売個数について
(ア) 控訴人は,遅くとも平成22年8月11日以降,バーキンタイプの バッグを販売しており(甲41,弁論の全趣旨),平成30年2月14 日には,控訴人の店舗を訪問した被控訴人関係者に対して,控訴人商品 を販売した(甲1,乙34)ことからすると,控訴人は,対象期間(平 成22年8月11日から平成30年2月14日までの期間)において控 訴人商品等を販売していたものと認められる。そして,控訴人は,バー キンタイプのバッグを平成22年夏か秋頃に中国の業者から100個仕 入れ,それがバーキンタイプのバッグの最後の仕入れであったこと,そ の100個のバーキンタイプのバッグについて,被控訴人商標権の登録 がされた直後の平成23年10月頃の在庫は30個程度であったが,控 訴人はその頃からバザーに出品するなどして在庫処分を開始しており, 平成25年4月には在庫処分をほぼ終了し,平成26年1月か2月頃に, 最後の1点を販売したことを主張しており(本判決による補正後の原判 決第2の4(4)【被告の主張】ア(イ)(原判決13頁6行目ないし12行 目)),これらの控訴人の主張は,バーキンタイプのバッグの販売及び その前提としての仕入れという,控訴人に不利益な事実に関する主張で あるから,その主張に係る事実があったものと認めることができる。そ うすると,控訴人は,対象期間中に,少なくとも100個の控訴人商品 等を販売したものと認めるのが相当である。
(イ) これに対し,控訴人は,平成22年8月11日の時点においてバー キンタイプのハンドバッグが100個存在したという証拠はなく,平成 30年2月14日に誤って被控訴人関係者に有償譲渡したバッグは平 成22年頃に仕入れたバッグではなく,控訴人商品等をチャリティーバ ザーで販売したのは販売利益を寄付するためであったから,対象期間中 に少なくとも100個の控訴人商品等を販売したことはないと主張す る。 しかし,前記(ア)のとおり,控訴人は,バーキンタイプのバッグを平 成22年夏か秋頃に100個仕入れたことが認められ,仮に平成30年 2月14日に被控訴人関係者に有償譲渡した控訴人商品が平成22年 頃に仕入れたバッグではないとしても,控訴人が平成30年2月14日 時点において被控訴人商品に形態の類似した控訴人商品を譲渡してい たことからすると,控訴人が対象期間(平成22年8月11日から平成 30年2月14日までの期間)において,平成22年に仕入れたバーキ ンタイプのバッグや控訴人商品を含めて,控訴人商品等を,実際には1 00個を超えて販売した可能性があるとしても,少なくとも100個販\n売したことは,これを認めることができる。また,控訴人が控訴人商品 等の一部をチャリティーバザーで販売し,その利益の一部を寄付したと しても,それは控訴人が利益を得たことを否定する事情にはならず(寄 付は,利益の処分と評価すべきものであって,利益そのものを否定する 事情には当たらない。),控訴人が販売利益を寄付したことを裏付ける 客観的な証拠もないから,いずれにせよ,控訴人は控訴人商品等を10 0個販売したことにより利益を得たものと推認される。
イ 控訴人商品等の販売に係る限界利益率について
控訴人は,控訴人商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず, 購入した際の領収証等の資料はないと主張し,また,バーキンタイプのバ ッグの仕入れに関する資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みで あると主張して,これを提出しない。さらに,控訴人は,バーキンタイプ と同程度の販売価格のハンドバッグの仕入価格は販売価格の55%程度 であったから,バーキンタイプのバッグの仕入価格も販売価格の55%程 度であったと主張し,販売価格の55%の価格でハンドバッグの仕入れを 行ったことを裏付ける証拠として乙31(平成29年1月の取引の納品書) を提出する。しかし,乙31は,どのような態様の商品の仕入れに係るも のか明らかでなく,平成22年に中国の業者から100個仕入れたと認め られるバーキンタイプのバッグとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異な るから,乙31により,バーキンタイプのバッグの仕入価格が販売価格の 55%程度であったことは認められず,その他に,これを裏付ける証拠は ない。控訴人がその他の経費として主張する梱包費用,送料については, 具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な証拠はない。
そこで限界利益率について検討すると,上記のとおり,控訴人の主張に よっても,仕入価格が販売価格の55%を上回ることはない。また,控訴 人は,バッグ等の販売を業として行っており,控訴人商品等の仕入れ,販 売,経費等に関する資料を所持し,その内容を把握しているのが自然であ ると解されるにもかかわらず,これらを提出せず,その内容を明らかにせ ず,そのため,経費等も具体的に立証されていない。このように,控訴人 が,被控訴人主張の利益率(60%)を否認しながら,関連性の乏しい証 拠のほかは,本来提出されてもおかしくない証拠を含め,何ら証拠を提出 していないことからすると,控訴人は控訴人商品等の販売により相当高率 の利益を得たと疑われてもやむを得ない側面があること,及び60%とい う利益率が有名ブランドを模したバッグの販売による利益率として不当 に高いとは考えられないことなどの事情を併せ考えると,控訴人商品等の 販売による限界利益率を60%と認定することについて,これが高率に過 ぎるとして不当とする根拠はない。これらの事情を考慮すると,控訴人商 品等の販売による控訴人の限界利益は,平均して販売価格の60%であっ たものと認めるのが相当である。

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◆平成31(ワ)9997

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令和2(ネ)10034  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和2年11月4日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 「協同組合ビジネスサポート」に対して、「ビジネスサポート協同組合」が不競法2条1項1号による差止を求めました。知財高裁(2部)は、1審と同様に、周知要件を満たさないと判断しました。

2 争点1(控訴人表示が,控訴人の商品等表\示として需要者の間に広く認識 されているか)について
(1)ア 前記1のとおり,控訴人は,中小企業等協同組合法に基づいて設立さ れた事業協同組合であり,その組合員の資格は,前記1(1)アで認定した控訴人の 地区内の中小規模の事業者に限られ,一方,被控訴人も中小企業等協同組合法に基 づいて設立された事業協同組合であり,その組合員の資格は,前記1(2)で認定し た被控訴人の地区内の中小規模の事業者に限られる。 また,控訴人の事業内容は,前記1(1)アのとおり,高速道路割引ETCカード 事業,各種備品や消耗品,車両燃料等の共同購買事業,外国人実習生受入事業等で あるから,控訴人に加入する可能性のある事業者は,これらの事業に関心のある事\n業者であると認められ,一方,被控訴人の事業は,前記1(2)のとおり,高速道路 割引ETCカード事業,車両燃料等の共同購買事業,情報提供事業等であるから, 被控訴人に加入する可能性のある事業者は,これらの事業に関心のある事業者であ\nると認められる。 したがって,控訴人に加入する可能性のある事業者のうち被控訴人のそれと重な\nる事業者は,前記1(1)アで認定した控訴人の地区のうち北海道を除く25の都府 県内の中小規模の事業者であると認められる。
イ 不正競争防止法2条1項1号にいう「営業」は,取引社会における事 業活動と評価できるものを指す(最高裁平成17年(受)第575号同18年1月 20日第二小法廷判決・民集60巻1号137頁)ところ,本件においては,控訴 人及び被控訴人が行う上記1(1),(2)の各事業は,上記「営業」ということができ るものである。そして,控訴人の事業の需要者には,控訴人の組合員となって控訴 人の上記1(1)アの事業を行う可能性のある上記アの事業者及び同事業の取引の相\n手方となる可能性のある者を含むというべきであり,その範囲は,かなり広く,被\n控訴人の事業者と重なる範囲もかなり広いということができる。
ウ 前記1(1)アのとおり,控訴人の組合員数は342事業者あるいは2 94事業者であるが,この数は,上記の需要者の範囲からすると極めて僅かなもの であるといえる。また,控訴人の事業に関する取引高等の控訴人の事業規模を示す 証拠は提出されていないが,控訴人の上記の組合員数からすると,その規模も小さ いものと推認される。
また,前記1(1)イのとおり,控訴人が行っている宣伝,広告は,ホームページ の開設,パンフレットの交付によっており,上記の方法のほか,千葉信用金庫及び 商工中金に紹介してもらう方法も用いているが,これら以外の方法で宣伝,広告を していることを認めるに足る的確な証拠はないことからすると,控訴人の宣伝,広 告の規模,程度は極めて小さなものであり,また,その効果も極めて小さいもので あるというべきである。 以上からすると,控訴人が,平成6年3月から,自己の名称として,控訴人表示\n又は「関東ビジネスサポート」の表示を使用していることを考慮しても,控訴人表\ 示が控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されていると認めることはで\nきない。
(2) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,組合員が多種多様な業種で構成されていることから,控訴人\n表示は多様な業界で周知となっていると主張するが,前記1(1)アのとおり,控訴 人の組合員数は342事業者あるいは294事業者であり,この数は多種多様な業 種の事業者の数からすると極めて僅かな数であるから,控訴人表示が多様な業界で\n周知となっているとは認められない。
イ 控訴人は,同業の事業協同組合で構成された互助団体に加入し,中心的\nな活動を行っていること(甲20)から,控訴人表示は周知となっていると主張す\nる。 しかし,控訴人が上記の互助団体においていかなる活動を行っているのか,また, どのような成果を挙げたか等についての証拠はないことを考慮すると,控訴人の上 記主張事実から,控訴人表示が周知となったと認めることはできない。\n
ウ 控訴人は,控訴人表示の需要者は,高速道路を業に伴って頻繁に利用し,\n長距離移動を日常的に行い,利用料金の割引を受けようとする事業者に限定される と主張する。 しかし,控訴人の事業の需要者は,前記(1)イ認定のとおりであって,高速道路 割引ETCカード事業にのみ関心のある事業者だけであると認めることはできない。
エ 控訴人は,商工中金等の金融機関がその顧客に控訴人を紹介していると ころ,このことは,控訴人の信用度が高く,控訴人の名称が浸透していることを示 していると主張する。 しかし,仮に,控訴人の商工中金等に対する信用度が高いとしても,そのことか ら直ちに控訴人表示が周知であると認めることはできず,控訴人の上記主張は理由\nがない。
オ 控訴人は,控訴人と被控訴人との間で混同が生じていると主張し,その 具体例として,1)控訴人の顧客会社に被控訴人から電話勧誘があり,同顧客会社は, 被控訴人を控訴人と勘違いしたこと,2)控訴人の同業の事業協同組合から,その組 合員に控訴人から執拗な電話勧誘があったとの苦情が申し立てられたが,上記の電\n話勧誘は被控訴人によるものであるのに控訴人によるものと勘違いをしていたこと, 3)被控訴人に対する苦情を控訴人に申し立ててきた事業者がいたこと,4)控訴人を 被控訴人であると間違えて,控訴人に電話がかかってきたこと(以上につき,甲 8),5)被控訴人にすべき振込みを間違えて控訴人にしてきたこと(甲32),6)被 控訴人の組合員から,控訴人を被控訴人と間違えて,問合せの電話がかかってきた こと,7)控訴人が依頼している業者が,被控訴人のホームページを控訴人のものと 混同したこと(甲33)などを指摘する。 しかし,5),6)については,被控訴人の取引先や組合員が相手を間違えたという にすぎず,また,1),7)については,控訴人の取引先が相手を間違えたというにす ぎず,いずれも,控訴人表示が周知であることの根拠になるものということはでき\nない。 また,2)〜4)については,これらの事実があるとしても,そのことから,直ちに 控訴人表示の周知性を推認させるということはできない。\nしたがって,控訴人の上記主張は理由がない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆令和1(ワ)14303
1審は下記のように前置きをして、判断しています。 「法人の名称は,法人の事業又は営業全体を表す点で,個別の商品\nや役務を表す商標と区別されるものであって,当該事業又は営業との関係で\nみて一般的名称といえる性質を有するものもあり得るところ,そのような法 人の名称は,自他識別力を欠くか,自他識別力が極めて弱いものというべき 20 であるから,当該名称の使用の時期が相当程度に長くその浸透度も極めて大 きいことなどから商品等表示該当性を獲得したといえるなどの事情がない限\nり,それが法人の営業等を表示するものとして需要者の間に広く認識される\nに至っているものと認めて周知性を肯定することは,極めて困難といわなけ ればならない。

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令和1(ワ)19889  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年3月18日  東京地方裁判所

 fashionブランドのセレクトショップ「SHIPS」と同じマッチングサイトの名称を使用していた被告に対して、差止と20万円の損害賠償が認められました。

原告ブランドに係る商品の需要者は,衣料品を中心とするファッション全 般に関心を有する一般消費者であると解されるところ,前記認定のとおり, 1)原告の店舗数及びその展開地域,2)オンラインショップも運営しているこ となど,その販売態様,3)原告の商品の売上高及び来店者数,4)セレクトシ ョップ分野における原告の地位(三大ブランドの一つ),5)雑誌,カタログ, フリーペーパー等における宣伝・広告の状況,6)フェイスブック,ツイッタ ー,インスタグラムにおけるフォロワー数などの事情を総合すると,原告表\n示は,被告表示の使用が開始された平成31年4月時点において,需要者等\nの間において,原告の商品等表示に当たるものとして,周知であったと認め\nられる。
(2) これに対し,被告は,原告商品の売上高や店舗数,UNITED ARR OWS,BEAMS,ユニクロ,しまむらなどの同業他社に比して少ないこ とを指摘する。 しかし,原告商品の売上高や店舗数が,原告より更に規模が大きい同業他 社と比較して小さいとしても,そのことは原告ブランドが需要者等の間で周 知であるとの認定を妨げるものではない。前記認定のとおり,原告は,アパ レルの一つの分野として確立しているセレクトショップ分野において,BE AMS及びUNITED ARROWSとともに,三大セレクトショップの 一つと評価されており,その店舗は,著名百貨店,主要ターミナル駅の駅ビ ル,大型路面店などを中心に,全国に展開され,売上高(平成31年2月期) も245億7502万円に上ることなどを考慮すると,原告表示が周知であ\nると認められることは前記判示のとおりである。
(3) 被告は,「知恵蔵」の出版が10年以上前であることなどを指摘し,原告 が挙げる書籍は周知性を基礎付けるものではないと主張するが,前記1(2) のとおり,アパレル業界に関する書籍及び「知恵蔵」などの一般書籍は,出 版時期を問わず,いずれも,原告がセレクトショップの大手であるとの認識 を示している上,上記1で認定した原告ブランドの宣伝・広告状況などにも 照らすと,原告がセレクトショップとして需要者等によく知られているとい う「知恵蔵」に記載された状況は,平成31年4月時点においても変わりが ないというべきである。
(4) 被告は,原告による広告宣伝について,他社の広告費との比較や実際の広 告効果の定量的な主張・立証がないと主張するが,前記1(3)(4)記載のとお り,原告ブランドの雑誌等における紹介の状況,SNSにおけるフォロワー の数,創業40周年の際の宣伝・広告状況(全国主要駅におけるポスター広 告,新聞における全面広告等),プロサッカーにおけるスポンサー企業とし ての宣伝・広告状況など,原告による広告・宣伝の内容,量等に照らすと, 他企業の広告費との比較を要することなく,原告表示は需要者等の間で周知\nであると認めることができる。
(5) 被告は,被告サイトの利用者向けに実施したアンケート調査の結果によれ ば,回答者341名のうち,原告表示を知らなかった者は297名に及ぶこ\nとを理由として,原告表示が周知ということはできないと主張する。\n しかし,被告の行ったアンケート調査調査は,その対象者が被告サイトの 利用者であり,被告サイトにより提供されるサービスの性質,内容等に照ら すと,その利用者層は一定の限定された範囲にとどまるものと考えられ,そ の調査結果が必ずしも原告ブランドに係る商品の需要者の認識を反映してい るとはいい難い。そうすると,上記調査結果は,原告表示が需要者等の間で\n周知であるとの結論を左右しないというべきである。
(6) 以上のとおり,原告表示は,少なくとも周知性を有するものであって,不\n正競争防止法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されているもの」に当 たるというべきである。
3 争点2(混同のおそれの有無)について
(1) 不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」には,他人の周 知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と当該他人とを同一\n営業主体として誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会 社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業\nを営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含すると解さ れる(最高裁平成7年(オ)第637号同10年9月10日第一小法廷判 決・集民189号857頁,最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年 5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,前記認定(5)及び(6)のとおり,1)原告は,原 告表示を含むブランド名を用いて,アパレル分野に限らず,自動車のメンテ\nナンスやカスタム,生活雑貨の販売などの事業も手掛けていること,2)原告 は,原告表示を用いて,異業種の他企業との間で,多数のコラボレーション\n企画を実施しており,そのことは需要者等に相応に認識されていたものと推 認されること,3)原告は,原告表示を用いて,福祉分野を始めとする社会的\nな活動にも参加しており,公式サイトにおいて,「コンプライアンス,LG BT,ダイバーシティなどについての啓蒙」に取り組んでいる旨を表明して\nいることが認められる。 これによれば,被告サイトに原告表示と類似する被告表\示を使用すること は,原告と被告との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係などの緊 密な営業上の関係があり,又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属\nする関係が存すると需要者等に誤信させる行為であって,原告の商品又は営 業と「混同を生じさせる行為」というべきである。
(3) これに対し,被告は,原告の属するアパレル分野と被告の属するマッチン グサイトの分野とは,全くの異業種であり,業種の隔たりが大きいと主張す るが,原告自身が,障害者を始めとするマイノリティや福祉に対する支援活 動を積極的に行っていることは前記判示のとおりであり,また,アパレルメ ーカーがマッチングアプリとの協業プロジェクトを実施した事例や,セクシ ャルマイノリティの間で人気の出会い系アプリがアパレルラインを発表した\n事例があると認められること(甲65)に照らすと,アパレル分野とマッチ ングサイトの分野とが全くの異業種であるということはできない。
(4) また,被告は,原告は他の企業の知名度を借りたコラボレーションをして いるにすぎないと主張するが,原告が他の分野で事業自体を展開していない としても,他業種の企業とコラボレーションをし,原告表示の付された商品\n等を提供することとなれば,需要者等は,原告と被告との間に子会社等の関 係があるなどの誤信をするおそれがあることに変わりはないというべきであ る。
(5) 被告は,被告の実施したアンケート調査結果も根拠として,被告サイトが 原告によって運営されていると誤信することはないと主張するが,前記判示 のとおり,被告の行ったアンケート調査結果が原告ブランドの需要者等の認 識を反映しているとは必ずしもいうことはできないので,同アンケート調査 結果を根拠にして混同のおそれがないということはできないが,同調査結果 によっても,セレクトショップ「SHIPS」を知っている者の2割以上に 混同が生じていることによれば,被告表示に接した需要者等が上記の混同を\nする可能性は高いというべきである。\n
(6) したがって,被告の行為は,原告の商品又は営業と「混同を生じさせる行 為」に当たる。
4 争点3(営業上の利益の侵害の有無)について
原告は,昭和52年に「SHIPS 銀座店」を開設して以来,その店舗を 拡大し,平成31年3月頃までに,全国19都道府県に約70店舗を展開する に至っており,原告ブランドには長年にわたる使用により信用力が形成されて いると解されるところ,被告による被告表示の使用は,原告ブランドの信用力\nに依拠し,その意に反してこれと類似の被告表示を使用するものであり,原告\nブランドの信用力を希釈化若しくは毀損するものであるということができる。 したがって,被告の行為は,原告の営業上の利益を侵害し,これを侵害する おそれのある行為であると認められる。
5 争点4(故意・過失の有無及び損害額)について
(1) 被告は,被告以外にも「シップス」又は「SHIPS」の名称を用いる事 業者が存在することなどを理由として,被告には過失がなかったと主張する が,「SHIP」等の名称を用いる業者が他に存在するとしても,そのこと をもって過失の存在が否定されるものではない。被告は,原告表示の存在を\n知りつつ,被告サイトに被告表示を使用したものであり,原告表\示の周知性 や原告表示との類似性を容易に認識し得たものと認められるので,被告には\n少なくとも過失が存在したものというべきである。
(2) そして,本件訴訟の難易度,審理の経過,認容する請求の内容その他本件 において認められる諸般の事情を考慮すると,被告による不正競争行為と相 当因果関係にある弁護士費用相当額は20万円とするのが相当である。

◆判決本文

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平成31(ワ)9997  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和2年6月3日  東京地方裁判所

 バーキンタイプのバッグについて、バーキンバックの立体商標に基づく商標権侵害、不競法違反として、約300万の損害賠償が認められました。信用毀損として100万円と残りは侵害者利益です。

原告は,被告において,対象期間中に,被告商品等を少なくとも100個販売し たと主張するところ,前記第2の2(5)のとおり,被告は平成22年8月11日には バーキンタイプのバッグを販売し,平成30年2月14日には被告商品を販売した ことのほか,被告において,バーキンタイプのバッグは一度に100個単位で仕入 れ,最後の仕入れは平成22年夏ないし秋頃に100個仕入れたものであった,最 後に仕入れた商品は全て販売した旨主張していることからすれば,原告の主張する とおり,被告は,対象期間中に,少なくとも100個の被告商品等を販売したもの と認めるのが相当である。
イ 被告商品等の販売価格
前記第2の2(5)のとおり,被告商品は,平成30年2月に2万8080円(税抜 価格2万6000円)で販売されたものであることに加え,バーキンタイプのバッ グの販売価格に関する当事者双方の主張,被告が保管期間の経過により廃棄済みと してバーキンタイプのバッグの販売に関する資料を提出していないことなどの本件 の審理に現れた事情を総合すれば,被告商品等の1個当たりの販売価格は,平均す ると,被告商品の販売価格と同じく税抜価格2万6000円程度であったものと認 めるのが相当である。
ウ 被告商品等の総販売額
被告は前記イの税抜価格に消費税を付して被告商品等を販売していたところ(甲 1,弁論の全趣旨),被告の総販売額を算定するに当たって適用すべき消費税率につ いては,被告がバーキンタイプのバッグの販売を平成26年2月頃までに終了した と主張していることや平成30年2月14日に販売された被告商品のほかに平成2 6年3月以降に被告商品等が販売されたことを示す証拠がないことを踏まえ,販売 に係る100個のうち99個については平成26年2月までの5%とし,1個につ いては8%とすることが相当である。 そして,前記ア及びイによれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告 は,以下のとおり,合計273万0780円の売上を上げたものと認めるのが相当 である。
2万7300円(税抜価格2万6000円+5%の消費税分)×99個+2万8 080円(税抜価格2万6000円+8%の消費税分)×1個=273万0780 円
エ 被告商品等の販売に係る限界利益率
(ア) 仕入費用
被告は,被告商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず,購入した際 の領収証等の資料もないと主張し,また,バーキンタイプのバッグの仕入れに関す る資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みであるとして,これを提出してい ない。 被告は,バーキンタイプのバッグの仕入価格について,同程度の価格のハンドバ ッグの仕入価格が販売価格の55%程度であったから,バーキンタイプのバッグの 仕入価格も同様であったと主張し,販売価格の55%の価格で仕入れを行った平成 29年1月の取引の納品書(乙31)を提出するが,被告が平成22年に中国のハ ンドバッグ製造業者から100個単位で仕入れたと主張するバーキンタイプのバッ グとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異なり,どのような商品の仕入れであった かも明らかではないから,上記の納品書に係る取引は,バーキンタイプのバッグの 仕入価格が販売価格の55%であったことを裏付けるものとはいえず,その他,被 告が主張する仕入価格を裏付ける的確な証拠はない。
(イ) その他の経費 被告が,その他の経費として主張するバザーへの寄付金,梱包費用,送料につい ては,具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な資料はない。
(ウ) 限界利益率
このような被告の主張立証の状況を含めた弁論の全趣旨によれば,被告商品等の 販売による被告の限界利益は,原告の主張するように,平均して販売価格の60% 程度であったものと認めるのが相当である。
オ 被告が賠償すべき利益の額
以上によれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告には,以下のとお り,少なくとも163万8468円の限界利益が発生したものと認めるのが相当で あり,同額が,不競法5条2項により被告が賠償すべき損害額となる。 273万0780円×60%=163万8468円
(2) 信用毀損による無形損害について
前記2及び前記(1)で検討したところからすれば,原告商品は,高級ブランドであ る原告を代表する高級バッグとして著名なものであり,そのほとんどが1個100万円を超える価格で販売される高級品であったところ,被告は,原告商品と類似す\nる形態を持ちながら,原告商品には使用されない合成皮革等の安価な素材が使用さ れた被告商品等を,原告商品と比べて著しい廉価の1個2万7300円程度で,平 成22年8月から平成30年2月までの期間に少なくとも100個販売したもので ある。
したがって,被告商品等の販売という不正競争によって,原告は原告商品に係る 信用を毀損されたものというべきであり,原告商品の形態と類似する外見のハンド バッグが被告以外の業者によっても販売されていること(乙1〜17)といった被 告の主張する事情を考慮しても,被告商品等の販売に係る,信用毀損による無形損 害の額は100万円を下らないというべきである。

◆判決本文

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令和1(ワ)7786  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年8月27日  大阪地方裁判所

 京都市立芸術大学が、「1 京都市立芸術大学、2京都芸術大学、3 京都芸大、4 京芸、5 Kyoto City University of Arts」が周知・著名であるとして、「京都造形芸術大学」から「京都芸術大学」への変更使用の中止を求めた事件で、大阪地裁は、1京都市立芸術大学については周知であるとは認めたものの、京都芸術大学とは混同しないと判断し、原告の請求を棄却しました。

ア 原告表示1について\n
前記(第2の2(1),第3の1)認定の各事実に加え,証拠(甲3,5,9の2 及び9の3,21,22,29,36)及び弁論の全趣旨によれば,原告大学は, その母体の設立からは140年,現在の名称となってからでも50年以上という長 期にわたり,京都市に所在して芸術教育を実施し,文化勲章受章者を含む多数の芸 術家を輩出している。また,原告大学は,京都市内にギャラリー(@KCUA)を設 置し,同所にて展覧会等の催事を繰り返し実施するとともに,京都市内において, 案内チラシ等に原告表示1を付すなどして展覧会や演奏会を主催し,また,地下鉄\n駅構内その他京都市内の人目に付きやすい場所に,原告表\示1を付して作品を展示 し,さらに,京都市内において児童その他市民向けの芸術教育活動等を行ってきた ことが認められる。 これらの事情のほか,京都府及びその近隣府県の範囲における交通や新聞等によ る報道の実情等に鑑みると,京都府及びその近隣府県に居住する一般の者が,原告 大学を表示するものとして原告表\示1を目にする機会は,相当に多いものと合理的 に推認される。 そうすると,原告表示1は,原告大学を表\示するものとして需要者に広く認識さ れており,周知のものといってよい。これに反する被告の主張は採用できない。
イ 原告表示2〜4について\n
(ア) 前記1認定の各事実によれば,原告表示2〜4については,例えば原告大\n学の卒業生や受験指導組織といった特定の属性を有する層で原告表示3又は4が比\n較的多数使用されているといった例もあるものの,程度の差こそあれ,原告表示1\nと比較してその使用頻度はいずれも少ないといえる。 しかも,原告大学を示す略称又は通称として,原告表示2〜4のほか,「京都市\n立芸大」,「市立芸大」,「市芸」その他様々なものが使用されている。原告大学 の正式名称(原告表示1と同一のもの)のうち,「京都」(又は「京」),「芸\n術」(又は「芸」)及び「大学」(又は「大」)は,大学の名称としては,所在 地,中核となる研究教育内容及び高等教育機関としての種類を示すものとして,い ずれもありふれたものである。加えて,原告大学の中心的な活動場所等が京都市で あること,このため,原告大学の略称等が使用される地域的範囲としても,京都市 又は京都府であることが必然的に多くなり,「京都」(又は「京」)は敢えて明示 せずとも文脈上暗黙の了解事項となりやすいと推察されることなどに鑑みると,略 称等に「市立」(又は「市」)が含まれ,「京都」(又は「京」)が省略されるこ とも,当然起こり得ることといってよい。原告の設置主体である京都市及び京都市 長や原告大学関係者が,原告大学を示すものとして,自ら「市立」(又は「市」) を含む略称等を使用する例が少なからず見られること,インターネット上又は書籍 としての地図においても,原告大学については「市立」が含まれる表示が使用され\nていることも,この文脈において合理的に理解し得る。 そもそも,このように多種多様な略称等を生じ,それぞれが一定程度使用されて いること自体,原告大学の略称等として各表示それ自体が有する通用力がいずれも\nさほど高くないことをうかがわせる。同一の文書等の中で,原告表示1と共に使用\nされる例が多いことも,同様に,原告表示2〜4の略称等としての通用力の低さを\nうかがわせる。 しかも,原告表示2〜4と同一の表\示が,原告大学ではなく被告大学を示す表示\nとして使用される例も,相応に見受けられる。 他方,原告表示2〜4が,それぞれ,原告表\示1を想起させることを介して,又 はこれを介さずに,原告大学を想起させるものとして広く知られていることをうか がわせるに足る具体的な証拠はない。
(イ) これに対し,原告は,原告表示2〜4についても原告大学の表\示として周 知であり,また,これらと同一の表示が被告大学を指すものとして使用される例は\n誤記であるなどと主張する。 しかし,上記(ア)の事情のほか,仮に原告表示2〜4が原告大学の略称等として\n周知であるとすれば,そのような誤記が多数生ずるはずはないし,そもそも,作成 主体を異にする者の間で同様の誤記が頻発すると考えることは合理性に乏しい。そ の他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用でき ない。
(ウ) 以上より,原告表示2〜4については,原告の商品等表\示として需要者の 間に広く知られたもの,すなわち周知のものということはできない。
・・・
イ 前記(3)イ(ア)のとおり,原告表示1のうち,「京都」,「芸術」及び「大\n学」の各部分は,大学の名称としては,所在地,中核となる研究教育内容及び高等 教育機関としての種類を示すものとして,いずれもありふれたものである。このた め,これらの部分の自他識別機能又は出所表\示機能はいずれも乏しい。他方,\n「(京都)市立」の部分は,大学の設置主体を示すものであるところ,日本国内の 大学のうちその名称に「市立」を冠するものは原告大学を含め11大学,「市立」 ではなく「市」が含まれるものを含めても13大学にすぎず,しかも,京都市を設 置主体とする大学は原告大学のみである(乙2)。このような実情に鑑みると,原 告表示1のうち「(京都)市立」の部分の自他識別機能\又は出所表示機能\は高いと いうべきである。 また,その名称に所在地名を冠する大学は多数あり,かつ,正式名称を構成する\n所在地名,設置主体,中核となる研究教育内容及び高等教育機関としての種類等の うち一部のみが相違する大学も多い(乙1)。このため,需要者は,複数の大学の 名称が一部でも異なる場合,これらを異なる大学として識別するために,当該相違 部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しないのが取引の実情と見られる。 そうすると,原告表示1の要部は,その全体である「京都市立芸術大学」と把握\nするのが相当であり,殊更に「京都」と「芸術」の間にある「市立」の文言を無視 して「京都芸術大学」部分を要部とすることは相当ではない。この点に関する原告 の主張は採用できない。 また,本件表示の要部については,上記のとおり「京都」,「芸術」及び「大\n学」のいずれの部分も自他識別機能又は出所表\示機能が乏しいことから,これらを\n組み合わせた全体をもって要部と把握するのが適当である。
ウ 原告表示1と本件表\示とは,その要部を中心に離隔的に観察すると,「市 立」の有無によりその外観及び称呼を異にすることは明らかである。観念について も,「市立」の部分により設置主体が京都市であることを想起させるか否かという 点で,原告表示1と本件表\示とは異なる。取引の実情としても,前記イのとおり, 需要者は,複数の大学の名称が一部でも異なる場合,これらを異なる大学として識 別するために,当該相違部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しない。 そうすると,原告表示1と本件表\示とは,取引の実情のもとにおいて,取引者又 は需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から全体的に 類似のものとして受け取るおそれがあるとはいえない。そうである以上,原告表示\n1と本件表示とは,類似するものということはできない。\n

◆判決本文

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平成30(ワ)2715 名称使用差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和2年3月25日  東京地方裁判所

「望月」の使用が不正競争行為(周知の営業表示)に該当するかが争われました。東京地裁(29部)は、該当すると判断しました。\n

原告の事業活動が営業に該当するか
前記・・・アの認定事実によれば,原告を含む太左衛門が 行う事業活動は,長唄囃子の演奏や指導等の文化芸術活動としての性格を有するもの ではあるが,他方において,これらの活動から出演料,名取料等の一定の対価を収受 するなどしていることからすれば,経済上の収支計算の上に立って経済秩序の一環と して行われる事業活動としての性格をも有するものといえる。したがって,原告を含 む太左衛門が行う事業活動は,法2条1項1号の「営業」に該当すると認められる。
(2)「望月」の表示が被告らにとって他人の周知な営業表\示に該当するか
ア 太左衛門は,代々,望月流の家元を称し,古くは芝居囃子において活躍し,その後は自ら演奏会等に出演して長唄囃子を演奏する活動,その門弟等に技芸を伝授し,指導する活動,門弟に対して「望月」の姓を冠した名取名を認許して免状を発行する活動,長唄囃子の保存,普及活動等を行い,出演料,授業料, 名取料といったこれらに対する対価を得てきたものである。 そして, エのとおり,昭和41年9月25日発行の本件名鑑においては, 長唄の流派の一つとして望月家の項目が設けられ,十世家元として太左衛門の名が冒\n頭に挙げられ,望月流の説明内容として,初世左吉や初世太左吉が太左衛門の門弟な いしは門弟筋の人物であることや,「浪花町派」,「森下派」及び「田圃派」が望月流内の3大支流であることなどが記載されていることからすれば,本件名鑑においては, 太左衛門が望月流一門全体を代表する家元として紹介されているということができ\nる。実際に, 十代目太左衛門は,昭和48年及びそれ以降,左武\n郎,左太郎,左喜三郎,左之助及び左喜蔵ら,本件名鑑において「森下派」に属する とされたものか又は現在「森下派」に属すると主張している者らについても名取名の 認許をするなど,望月流一門全体を代表することを示す行動をとっている。\n
さらに,前記・・・は,平成5年6月27日,尾上梅幸 や市村羽左衛門らの歌舞伎役者,芳村五郎治ら他流派の長唄演奏者らの出演の下,十\n一代目家元として九代目望月太左衛門追善囃子演奏会を2回にわたり歌舞伎座で開 催したが,その際の松竹株式会社の会長の挨拶に,十一代目太左衛門につき「流祖こ\nのかた二百数十年の歴史と伝統をうけつぐ望月流の家元太左衛門」と,九代目太左衛\n門につき「九世家元」との記載があり,・・・襲名を紹介する平成5年7月9日付けの東京新聞夕刊の記事には,「望月流は・・・,初代太左衛門以来,太左衛門の名で家元が引き継がれてきた。」との記載があり,同年8月の歌舞伎座での歌舞伎公演の筋書における松竹株式会社会長の挨拶には「太左衛門 の名跡は望月流の家元として二百数十年にわたり囃子方の世界で重きをなしてまい\nりました」などとの記載が,七代目尾上梅幸の挨拶には「望月流の家元太左衛門の名 跡を,この度長左久さんが継承し,十二代目望月太左衛門を名乗ることとなりました。」との記載がそれぞれあり,原告が,平成6年6月に,宗家家元十\二代目望月太左衛門 として,尾上梅幸や市村羽左衛門らの歌舞伎役者,杵屋喜三郎ら他流派の長唄演奏者 らの出演の下,十代目望月太左衛門追善襲名披露演奏会を歌舞伎座で開催した際には,\nそのプログラムに掲載された松竹株式会社会長,日本芸術文化振興会理事長及び仙台 市長のお祝いには,太左衛門について望月流の家元である旨言及する記載がそれぞれ ある。北國新聞も,同月8日,原告につき望月流の家元と記載した記事を掲載してい る。
・・・のとおり,平成9年1月には伝統芸能紙及び関西芸能\紙が,平成15年4月には北國新聞が2回,それぞれ,原告につき望月流の家元と記載した記事を掲載したり,歌舞 伎音楽専従者協議会のウェブサイトにおいて,原告につき「望月流十二代目家元」と\n紹介しているほか,前記1 ア及びイのとおり,平成16年には,四世左吉の襲名の 際に,「十二代目家元望月太左衛門」名義での原告の挨拶を含む挨拶状が送付された\nほか,原告が四世左吉や左之助の門弟らに対し,名取名を認許し,前記1 エのとお り,長唄協会が,平成28年頃に,原告を望月流の代表者として取り扱っている。\n
以上によれば,太左衛門は,代々,望月流の家元を称し,演奏会等に出演して長唄 囃子を演奏する活動等を行い,昭和41年頃には,本件名鑑において,望月流一門全 体を代表する家元として紹介されるに至り,かつ,実際に昭和48年及びそれ以降に\n太左衛門が望月流一門全体を代表する家元であることを示す行動をとってきたほか,\n平成5年6月ないし8月及び平成6年6月には,太左衛門が望月流の家元である旨が 新聞記事において紹介され,上記の各演奏会において,太左衛門が望月流の家元であ る旨を含む上記の各挨拶がプログラム等に掲載される状況にあったということがで きる。さらに,それ以降も,原告は,自らが望月流一門全体を代表する家元であるこ\nとを示す行動をとり,新聞記事等においても同様の紹介がされたほか,長唄協会も同 様の認識を有しているということができる。
以上に加え 流派の運営を統括する地位にある者を指すことに照らすと,遅くとも原告が十二代目太左衛門を襲名した後である平成6年6月までには,太左衛門が,望月流一門全体の家元として本件需要者の間で広く認識されるに至り,それ以降も現在に至るまで,本件需要者の間で広く同様に認識されていたと認めるのが相当である。\n
イ ・・・おいては,家元が門弟に対して名取名を認許するところ,名取名は「望月」の姓を冠したものであ り,名取に取り立てられた者は,以後自らの活動を行うにつきこの「望月」の姓を冠 した名取名を表示し使用することが許されることに照らすと,望月流の名取名におけ\nる「望月」姓は,名取に取り立てられた個人の芸名としての性格を有するだけではな く,同時に,家元による望月流の営業活動を示すものであるということができるから, 「望月」の表示は,望月流の家元としての原告の営業表\示に該当するというべきであ る。

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平成29(ワ)3428  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年12月24日  東京地方裁判所

 旧2CHの元管理人による新2CH(5チャンネル)に対する商標権侵害・不競法防止法事件です。裁判所は一部の商標について商標権侵害を認めました。

 前記認定事実によれば,本件電子掲示板は,(1)平成11年に開設され,平 成12年に西鉄バスジャック事件の犯人とされる少年が同掲示板に犯行予告\nを書き込むなどの出来事もあって社会的に注目を集めるようになり,平成1 4年頃には利用者が急激に増加し(前記2(2)ア,ウ,エ),(2)平成16年及 び平成17年には本件電子掲示板に掲載された投稿をほぼそのまま出版した 「電車男」が話題となり,インターネットに係る複数の賞を受賞し,これが ネットニュースで報道され(前記2(2)カ),(3)平成18年頃には,本件電子 掲示板の名称である「2ちゃんねる」という言葉がマスコミにおいて頻繁に 登場したり,本件電子掲示板内において使用される用語が一般の雑誌におい ても使われたり,電子掲示板を利用しない一般人の間でも本件電子掲示板が 話題に上ったりするようになった(前記2(2)キ)。 これらによれば,本件電子掲示板のトップページ等に表示されていた被告\n標章1及び2は,遅くとも,平成18年には,本件電子掲示板に係る役務を 表示するものとして,全国の需要者の間に広く認識されるに至ったと認める\nことができる。そして,平成25年3月当時,本件電子掲示板の月間の閲覧 数が29億にのぼるとして「日本語圏最大級のネットコミュニティ」などと 宣伝されていたことに照らせば(前記2(2)ス),原告商標1及び2が出願さ れた平成25年1月25日及び平成26年3月27日においても,上記周知 性が維持,継続していたものと認められる。
(4)ア
本件電子掲示板に係る役務を誰が提供していたかについてみると,原告 は,本件電子掲示板を開設した者であり,管理人と呼ばれたこともあり, 平成26年3月まで,本件電子掲示板の広告収入を間接又は直接に受領し ていた(前記2(2)ア,カ,キ,セ)。また,そのように受領した広告収入 の一部をNTテクノロジー社に渡していた(前記2(2)エ)。他方,原告は, 平成21年以降,ブログや「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」と題する書 籍等において,自ら積極的に,本件電子掲示板を第三者に譲渡したとか, 本件電子掲示板の管理人を退き,アドバイザーか1ユーザーであるなどと 公言していた(前記2(2)ク,コ,シ)。また,平成21年1月2日以降, 本件ドメイン名に係るWhois 情報において,本件証拠上,原告に特に関係 が深いと考えられる会社(東京プラス社やブラジル社)や原告は,登録者 や運営名に関する連絡先,登録サービス提供者等のいずれにも登録されて いない(前記2(3))。 NTテクノロジー社は,平成11年頃から本件電子掲示板のサーバの提 供や関係する掲示板の開設を新たに行うなどしており,その後も,利用者 が増大した本件電子掲示板のサーバの管理や関係するソフトウェアのプロ\nグラミング等を単独で又は被告と共にしていた(前記2(2)イ,エ,オ)。 また,NTテクノロジー社は,平成14年頃には本件電子掲示板の閲覧の 利便性を向上させるソフトウェアを開発してこれを本件電子掲示板の利用\n者に販売し,その多額の売上げを原告を介さずに自ら取得していた(前記 2(2)イ,エ)。NTテクノロジー社は東京プラス社を介して原告から本件 電子掲示板の広告料の一部の送金を受けていて,その送金額は平成14年 頃は少なくとも当面は月額2万ドルとされていたところ,それに関する契 約書はなく,送金額は変動し,実際に送金された総額は相当の多額であり, また,NTテクノロジー社が求めた増額に任意に応じてその送金がされた こともうかがわれる(前記2(2)エ,テ)。そして,少なくとも平成17年 5月以降,本件ドメイン名に係るWhois 情報において,NTテクノロジー 社(NTテクノロジー社の設立者のジムを含む。)は,単に技術面に関す る連絡先としてだけでなく,継続して,運営面に関する連絡先や登録サー ビス提供者として登録されていた(前記2(3))。被告は,平成16年頃よ り,本件電子掲示板の管理に直接携わるソフトウェアのプログラミング等\nの業務を担うようになり(前記2(2)オ),平成24年5月3日に本件ドメ イン名を取得して本件ドメイン名の登録者となり,遅くとも平成26年2 月19日から本件電子掲示板のトップページ等に被告標章1及び2を表示\nして使用し,その使用は平成29年9月30日まで継続し(前提事実(5), 前記2(3)カ),本件証拠上,平成26年3月5日には,本件電子掲示板の トップページの下に会社名,所在地等が表示され,平成30年4月当時の\n「5ちゃんねる」と題する電子掲示板のトップページには,本件電子掲示 板を被告から譲り受けたと解される記載が表示されていた(前記2(2)タ, ツ)。
本件電子掲示板は,多種の掲示板から構成された巨大掲示板サイトであ\nり,その性質上,サーバの管理,新たな掲示板や機能の導入,それらの維\n持,改善等の運営は極めて重要である。また,平成14年頃には利用者が 急激に増加していたのであり,遅くともその頃以降,それらの管理,運営 等が占める役割には非常に大きいものがあった。そして,それらの管理, 運営等は,平成11年以降,NTテクノロジー社が単独で又は被告と共に 担っていた。この点について,原告が前記2(2)テ記載の別件訴訟において 提出した陳述書中には,NTテクノロジー社は東京プラス社からサーバの 管理業務を受託したにすぎない旨の記載があるが(甲21),上記の事実 関係に照らせば,NTテクノロジー社が単に原告等の委託を受けてその指 示等に基づいて管理業務を行っていたのみであるというのは不合理という ほかない。原告が平成26年2月19日まで本件電子掲示板の役務の提供 を行っていたといえるかは措くとして,少なくとも,NTテクノロジー社 は,遅くとも平成14年以降は,自ら主体的に本件電子掲示板に係る役務 の提供を行っており,本件電子掲示板に係る役務を自己の役務として提供 していたと認めるのが相当である。そして,被告も,平成16年以降,N Tテクノロジー社とともに本件電子掲示板の役務の提供をしており,少な くとも平成26年2月19日から平成29年9月30日までの間,本件電 子掲示板に係る役務を自己の役務として提供しており,遅くとも被告が本 件ドメイン名を取得した平成24年5月3日頃に,NTテクノロジー社か ら,本件電子掲示板の運営に係る事業の譲渡等を受けるなどして,その地 位を承継したと認めるのが相当である。
イ 商標法32条の先使用権は,識別性を備えるに至った商標の先使用者に よる使用状態を保護し,もって,先使用者が当該商標に蓄積した信用を同 人において享受することを可能にするものである。前記先使用権の趣旨に\n照らせば,当該商標を主体的に自己の業務として提供する役務を表示する\nものとして使用してその商標の持つ出所,品質等について信用を蓄積した 者やその者から当該事業の承継を受けた者は,先使用権の他の要件を満た せば先使用権を有するといえる。 被告標章1及び2は,遅くとも平成14年頃以降は,少なくとも,NT テクノロジー社において主体的に自己の業務として提供していたといえる 本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして使用され,遅くとも平成\n18年頃には周知性を獲得し,その後も,NTテクノロジー社は被告標章 1及び2を表示して同役務の提供を継続したため,上記周知性が維持・継\n続されたといえる。被告は,遅くとも平成24年5月3日頃に,NTテク ノロジー社から本件電子掲示板の運営に係る事業の承継を受けるなどして その地位を承継し,本件商標1及び2の登録出願当時(本件商標1につき 平成25年1月25日,本件商標2につき平成26年3月27日),継続 して被告標章1及び2を使用して本件電子掲示板に係る役務を自己の業務 として提供していたから,被告標章1及び2は,上記時点において,被告 の業務である本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして周知であっ\nたと認められる。また,被告は,平成29年9月30日まで,自己の業務 を行う意図で被告標章1及び2を表示した本件電子掲示板に係る役務を提\n供したと認めることが相当である。
ウ 不正競争の目的なくある特定の標章を表示する役務を複数の者が共同し\nて提供していた場合,その複数の者の間で紛争が生じた後であっても,少 なくとも,主体的に自己の役務として自ら役務を提供して当該表示の持つ\n出所,品質等について信用を蓄積するために果たした役割が主要といえる 者が,紛争後も提供した当該役務が従前と同様のものであった場合,その 者による当該標章の使用は,前記の先使用権の制度趣旨に照らし,不正競 争の目的なくされているとするのが相当である。そして,前記に照らせば, NTテクノロジー社は,不正競争の目的なく本件電子掲示板に係る役務を 主体的に自らの役務として提供して,当該表示の持つ出所,品質等につい\nて信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる。平成26年2月 19日にはそれまで本件電子掲示板に関与していた東京プラス社及び原告 が本件電子版のサーバにアクセスできなくなったところ,東京プラス社及 び原告の同時点までの本件電子掲示板への関与の内容には不明な部分もあ るが,NTテクノロジー社と共に上記提供を行ったか,NTテクノロジー 社から本件電子掲示板に係る事業の承継を受けるなどしてその地位を承継 した被告は,平成26年2月19日以降も本件電子掲示板に係る役務をそ れまでと同様に提供していたことがうかがえ,NTテクノロジー社の果た した上記の役割に照らせば,同日以降平成29年9月30日までの間,被 告標章1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして,不正\n競争の目的なく使用したと認めることが相当である。
エ 以上によれば,平成26年2月19日から平成29年9月30日までの 間,被告は,本件商標1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するも\nのとして使用することについて,先使用権を主張することができる。

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平成30(ワ)8414  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 令和元年12月18日  東京地方裁判所

 高輝度LEDペンライト「キンブレ」について、被告製品の販売は不競法2条1項1号の不正競争行為に該当すると判断されました。

 事案に鑑み,争点(2)から検討するに,原告製品形態が,不競法2条1項1 号に該当するには,(1)商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特 徴を有しており(特別顕著性),かつ,(2)その形態が特定の事業者によって長 期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等によ り,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するも\nのとして周知になっていること(周知性)を要すると解されるが,以下の理由 から,原告製品形態は上記要件を満たすものというべきである。
(1) 特別顕著性
ア 原告製品が以下の形態を備えていることは,当事者間に争いがない。
(1) 「持ち手部分」と,光を発する「ライト部分」と,その間の「リング 部分」とで構成され,「リング部分」はメッキが施されている。\n
(2) ライト部分の先端にメッキの外カバーを付けており,リング部分のメ ッキと合わせて同一色,統一感のあるデザインとしている。
(3) 全体のフォルムは円柱状のシンプルな形態とし,ライト部分及び持ち 手部分の側面は,どの角度から見ても,平らな直線又はなだらかな曲線 によりそれぞれ外縁が形成され、突起物や階段状又は鋭角な部分が存在 しない。ただし,メッキ仕様のリング部分だけは,ライト部分,持ち手 部分を外側から覆う外観となり,一回り径が太くなっている。
(4) 持ち手部分は,真ん中でなだらかに凹型となる曲線を描き,底面部の 角は丸みを帯びており,正面視,背面視において瓢箪型である。\n
(5) ライト部分先端の外カバーも,凸状に丸みを帯びており,正面視,背 面視において円弧を描く球状である。
(6) 全体の長さが約25センチメートルで,そのうちライト部分は約15 センチメートル,持ち手部分とリング部分を合わせて約10センチメー トル,ライト部分の太さは直径約3センチメートルである。
(7) 持ち手部分の底面部に,発光・消灯及び発光色の切替えを行うスイッ チボタンが設置され,側面部にはスイッチを設置していないか,あるい は,スイッチを設置する場合でも,外観上その存在がわからないような スイッチとする。
イ 原告製品1が発売された平成24年4月当時に存在した同種製品は,上 記1(6)ア記載のとおりであるが,甲18の写真撮影報告書,甲17等に よれば,このうち,「大電光改」及び「CHEER LIGHT」は,原 告製品に比べて細くて小さいペンライトであり,いずれもリング部分が太 くなっている形態をしている点などにおいて,原告製品の形態と異なる。 また,「大電光煌」は持ち手部分が太くて,製品全体の長さにおけるラ イト部分の割合が原告製品より小さく,ライト部分の先端は半円球状であ る点などにおいて,原告製品の形態と異なる。 さらに,「ネオンスティック」は製品全体の長さにおける持ち手部分の 割合が原告製品より小さく,持ち手部分に設けられたボタンが特徴的であ る点で,「カラフルビーム」はライト部分が先端に向けて細くなっており, 持ち手部分に円形のダイヤルが取り付けられている点において,原告製品 の形態と異なる。 加えて,これらの同種製品は,いずれも,リング部分及びライト部分の 先端に同一色のメッキが施されておらず,持ち手部分にスイッチ等が設け られているなど,全体的に凹凸があって統一感のない印象を与えるもので ある。
ウ これに対して,原告製品は,全体的に丸みの帯びた円柱状のシンプルな 形態であり,ライト部分からリング部分、持ち手部分を通じて、全体とし て凸凹感のない直線又は曲線により外縁が形成されている点(形態(3))に 特徴がある。 また,原告製品のリング部分にはメッキが施されるとともに,ライト部 分の先端にも同一色のメッキの外カバーが付けられており,リング部分の メッキとライト部分先端のメッキの金属的な光沢は,原告製品に他社の製 品にはないデザイン上のアクセントを与えているということができる(形 態(1),(2))。さらに,原告製品の持ち手部分は,その真ん中がなだらかな曲線から形 成される凹型となっており,底面部の角は丸みを帯びている上,ライト 部分先端の外カバーも,凸状に丸みを帯びて円弧を描く球状であり,更 に側面部にスイッチボタンもないことが,全体として,柔らかくシンプ ルな印象を与えているということができる(形態(4),(7))。加えて,原告製品の全体の長さは約25センチメートルと他社の多くの製品より長く,ライト部分と持ち手部分の長さのバランスも良く,全体の長さとライト部分の太さの割合も均衡がとれているとの印象を与えるものである(形態(6))。
以上のとおり,原告製品形態(1)〜(7)は,平成24年4月当時の同種製品 にはない形態上の特徴であるということができ,更に,これらの特徴があ いまって,製品全体として,同種製品とは異なる顕著な特徴を備えている ということができる。
エ これに対し,被告は,形態(1)〜(7)は,いずれもありふれたものであると 主張する。
(ア) しかし,形態(1),(2)については,上記のとおり,平成24年4月当時 のペンライトのリング部分及びライト部分の先端に同一色のメッキを 施しているものはなく,また,ペンライトを使用する上で,その構成\n部分に金属的な装飾を加える必然性はないのであるから,同各形態は 原告製品に特徴的なものというべきである。
(イ) 被告は,形態(3)に関し,ペンライトのライト部分が円柱状であるのは 特別なことではなく,平成24年4月当時の同種製品も,丸みを帯び た円柱状のシンプルな形態であったと主張する。 しかし,原告製品は,単にライト部分が円柱状であるのみならず,全 体的に丸みの帯びた円柱状のシンプルな形状をしており,ライト部分 からリング部分、持ち手部分を通じて、全体として凸凹感のない直線 又は曲線により外縁が形成されている点に特徴があり,かかる特徴は 同種製品には見られないものである。
(ウ) 被告は,形態(4)に関し,持ち手部分の中央付近をなだらかにへこませ るデザインは公知であったこと,形態(5)に関し,ペンライトの先端に 外カバーを設けたり,その先端を球状にすることは,特別なことでは ないこと,形態(6)に関し,原告製品の長さはコンサート等のイベント における規制に従ったものにすぎず,その太さも特別なものではない こと,形態(7)に関し,底面部のスイッチは,底から見ない限り視認で きないので,識別力を生じさせないことなどを指摘する。しかし,原告製品は,持ち手部分の中央部分をなだらかにへこませるとともに,ペンライトの先端の外カバーを球状にし,更に持ち手部分の側面にスイッチを側面に設けないことにより,全体として,なだら かな曲線と直線から形成されるすっきりとして統一感のある輪郭が形 成され,全体として柔らかくシンプルな印象を与えるのであり,こう した特徴は同種製品には見られないものである。そうすると,上記の 個々の形態が公知であることなどを理由として,原告製品形態があり ふれたものであるということはできない。
(エ) 被告は,平成24年10月に発売されたルミエースや同年12月に発 売されたカラフルサンダー110などに原告製品形態と共通する特徴 が見られると主張するが,これらの製品は,原告製品1及び2の後に 発売されたものであるから,同各製品の発売時点では原告製品の形態 は同業者の間では知られていたのであり,原告製品形態も参考にしな がらデザインされた可能性が高い。これらの製品が原告製品形態と同\n様の特徴を有するとしても,そのことをもって原告製品形態の特別顕 著性は否定されるものではないというべきである。
(オ) 被告は,ペンライトという製品は,その性質上,外見を重視するので はなく,輝度や色などの機能を重視して選択される製品であるから,\nこの観点からしても,原告製品形態には特別顕著性はないと主張する。 しかし,ペンライトは,その用途・性状に一定の制限があるとしても, 種々のデザインを工夫し得ることは同種製品のデザインとの対比から も明らかであり,また,ペンライトの需要者が,趣味・嗜好に強い興 味・関心を示すいわゆる「オタク」を中心とする者であることに鑑み ても,これらの需要者は,機能のみならずデザインにもこだわりを持\nって購入するペンライトの選択をすると考えるのが自然である。
オ 以上によれば,原告製品形態は特別顕著性を有するということができる。
(2) 周知性
ア 前記1(2)のとおり,原告製品1(キングブレードMAX)及び同2 (キングブレードX10)は,平成24年4月に原告製品1の販売が開始 されて以降,同年10月までに,両製品で累計●(省略)●本,●(省略) ●円を売り上げたとの事実を認めることができる。 平成25年ころにおいて,国民的アイドルとされるアイドルグループの CDの売上が,複数枚購入を含め合計56万枚程度であり(甲38),平 成26年8月に開催された日本最大級とされるアニメソングのライブの3\n日間の延べ来場者数が8万人程度であったと認められること(甲37)を 考慮すると,わずか6か月という短期間のうちに●(省略)●本の売上げ があったことは,趣味嗜好に強い関心を有するいわゆる「オタク」を需要 者とするこの種の製品としては「爆発的」と評価し得る売れ行きであった ということができる。
イ また,前記1(3)のとおり,原告製品は,平成24年10月,テレビ番 組に使用され,それを見た視聴者が,同番組において使用されたペンライ トの商品名については紹介がされていなかったにもかかわらず,原告製品 であると認識し,ツイッター上で,「みんなキンブレ振ってる」などとツ イートしたとの事実によれば,そのころには,需要者において,原告製品 形態を有する商品は原告製品であって,原告を出所とすることを表示する\nものとして,広く知られていたと認めるのが相当である。
ウ さらに,前記1(4)のとおり,原告製品2(キングブレードX10)は, 平成25年2月,アマゾンのおもちゃのベストセラーの3位にランクイン したとの事実が認められるが,このランキングは,ペンライト又はそれに 類する商品間のランキングではなく,おもちゃ全体におけるランキングで あることに照らすと,原告製品は同時点において既に需要者に広く知られ していたものと認められる(甲21の4)。 以上によれば,原告製品形態は,平成24年10月時点において,また, 遅くとも平成25年1月までに,原告の出所を表示するものとして,周知\n性を獲得していたというべきである。
エ これに対し,被告は,原告製品が,平成24年10月以後も売れ行きを 伸ばしている事実を指摘し,そのことから逆に,平成24年時点の市場占 有率はそれほど高くなかったと主張するが,平成24年4月から10月ま での売上本数や売上高等に照らし,同月時点において原告製品形態が需要 者に広く知られていたと認められることは前記判示のとおりであり,平成 25年以降に更に売上げが増加したことは,上記認定を左右するものでは ない。また,被告は,原告製品が多く売れたのは,原告製品形態のデザイン性 が着目されたからではなく,高輝度という機能に需要があったためである\nと主張するが,原告製品の需要者が機能のみならず,デザインも重視して\nペンライトを購入したと考えるのが自然であることは前記判示のとおりで ある。さらに,被告は,原告の製品の中には原告製品目録に掲げられていない ものもあり,また,原告製品の中にも原告製品形態の一部を満たさない種 類のものがあると主張するが,原告製品の主力は原告製品目録記載の製品 であり,その他の製品が原告製品形態の一部を満たしていなかったとして も,原告製品形態の周知性が否定されるものではない。加えて,被告は,需要者は,原告製品をその形態によって識別しているのではなく,キングブレードという名称とともに,そのロゴ及びマークによって原告製品と識別していたものであると主張するが,テレビ番組の視聴者が,同番組において使用されたペンライトの形態を見て原告製品であ ると認識したことは前記判示のとおりであり,需要者はその形態により原 告製品と識別し得たというべきである。
オ 以上によれば,原告製品形態は,平成24年10月時点において,また, 遅くとも平成25年1月までに,周知性を獲得したものと認められる。
3 争点(3)(原告製品と被告製品との混同のおそれの有無)
(1) 被告製品は,原告製品形態の全てを備えるのみならず,原告製品のX10 シリーズのバージョン2以降のものと基本的に同一の形状及び大きさを有す るのであるから,需要者が被告製品を原告製品と混同するおそれがあるもの と認められる。
(2) これに対し,被告は,原告製品と被告製品の名称が異なることなどを理由 に,混同のおそれを否定するが,需要者は,インターネットに掲載された商 品の形態を見てその出所を識別することも少なくないと考えられ,また,商 品名は新商品が発売されるたびに異なった名称が付されることもあるのであ るから,製品の名称が異なることから直ちに混同のおそれがないということ はできない。
(3) また,被告は,需要者は,知識が豊富な「オタク」であるから,ロゴやマ ーク,機能や価格帯などから製品を原告製品から被告製品を識別すると主張\nするが,一口に「オタク」といっても,その知識や経験は様々であり,需要 者にはコンサートなどの各種イベントへの参加者なども含まれるのであるか ら,需要者の性質から,当然に,製品の機能や価格帯により出所を識別する\nことができるということはできない。
(4) 以上のとおり,需要者が被告製品を原告製品と混同するおそれはあるとい うべきである。 したがって,被告製品は,需要者の間に広く認識された原告の商品等表示\n(原告製品形態)と類似するものであり,原告製品と混同を生じさせるもの であるということができるので,被告製品を販売する行為は,不競法2条1 項1号の不正競争行為に該当する。

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令和1(ネ)1635 不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和2年2月14日  大阪高等裁判所

 ガラス瓶の形状が周知商品形態であると主張しましたが、顕著性および周知性ともに否定されました。形状の写真などは判決文および別紙にはありませんので不明です。

 前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の2(2)におい て説示するとおり,控訴人は,食調瓶として,SSシリーズの細口瓶を 開発し,そのうち5種類のシリーズからなる原告商品は,縦長ですっき りしているが,安定感に乏しい印象を与えるものということができる (更に原告商品1から13までについては,その首部と胴部の接続部分 の形状から,肩が張った印象を与えるという点でも共通する。)。 これに対し,他のメーカーの食調瓶にも,縦長ですっきりしているが, 安定感に乏しい印象を呈する細口瓶(甲15の「調味料M200角」, 「ST150」,「ST150PP」,甲16の「SLD150A−H C」,甲18の「ゴージャス」シリーズ,甲19の「サエ」シリーズ, 「スイト」シリーズ)があると認められるところ,控訴人は,前記第2 の5(1)アのとおり,これらの食調瓶の形態が,原告商品の形態に類似し ないと主張し,原告商品の特徴を有する他業者の同種商品と,原告商品 との形状の違いを詳細に指摘する。 しかし,原告商品の形態による商品表示性は,上記5種類のシリーズ\nからなる原告商品に共通する特徴をもって特定されるところ,控訴人の 指摘する形状の違いがあるからといって,異なる印象を与えるとは認め られない。 なお,控訴人は,原告商品と,前述した特徴を有する他業者の同種商 品との間で,首部から肩部に係る傾斜角度(肩の張り方)が大きく異な ると主張するが,肩の張り方が異なることによって受ける印象の違いは, 縦長で安定感に乏しいという特徴の有無によって受ける印象の違いに比 べ,大きいとはいえない。 以上によると,控訴人が指摘する形状の違いがあるからといって,原 告商品の形態の特別顕著性が基礎づけられるものでもない。
イ 原告商品の形態の周知性について
控訴人は,原告商品の形態の周知性に関して,前記第2の5(1)イのと おり主張する。 しかし,控訴人が主張する直近の累計販売本数に係るデータに依った としても,一般瓶市場における原告商品の販売実績等が圧倒的であった 等の状況は認めるに足りないし,高級品市場に限れば,原告商品は相当 のシェアを有しているとの主張についても,これを裏付ける資料等はな い。また,過去に原告商品が出展された展示会における展示・陳列の様 子(甲41)に照らしても,控訴人がSSシリーズの複数の下位シリー ズの一部にまたがる原告商品を,改めて一つのシリーズとして構成し直\nすなどして宣伝していたというような事情を認めることはできない。 そうすると,控訴人のシェアや宣伝活動の状況からみて,原告商品の 形態が,特定の事業者の出所を表示するものとして周知となっていると\nいうこともできない。
(2) 混同のおそれの有無
控訴人は,前記第2の5(2)のとおり,被控訴人の営業活動や商社のカタ ログやウェブサイトにおける掲載内容から,被告商品を控訴人の商品と混同 するおそれがあると主張する。 しかし,前記1で補正の上引用した原判決「事実及び理由」第4の2(4) において説示するとおり,原告商品の形態をもって,商品等表示と認めるこ\nとができない以上,被告商品の形態が原告商品の形態と類似しているからと いって,被控訴人が被告商品を製造,販売する行為が,不正競争防止法2条 1項1号に該当するとはいえない。 なお,被控訴人が,不特定多数の需要者に対しても営業活動をしていると しても,その取引態様からすると,その相手方にとって,被告商品の製造・ 販売者が被控訴人であることは明らかであるから,控訴人の商品と混同する おそれがあるということはできない。 また,食品メーカー等がカタログやウェブサイトを閲覧してガラス瓶の購 入を検討することがあるとしても,それらの需要者が,当該ガラス瓶が自社 で製造する調味料等の内容物の充填工程や商品梱包等の工程に容器として適 合するか否かを確認等することなく,その購入を決定することは考えにくい。 そうすると,上記カタログ等の掲載態様をもって,混同のおそれがあると いう控訴人の主張も採用できない。
(3) アンケート調査結果について
ア 本件アンケートに関する事実関係(甲42〜44)
(ア) 本件アンケートの対象者,質問内容等
控訴人は,前記第2の5(3)アのとおり,原告商品及び被告商品を含 むガラス瓶の写真5点を示して,その製造者及びそのように製造者を 特定した理由を質問するという本件アンケートを,東京・大阪・名古 屋のガラス製品協同組合の加入者のうちの58社を対象として実施し た。このうち何らかの回答を返したものは16社である。
(イ) 上記16社の回答内容は,前記第2の5(3)イのとおりである。
イ 検討
(ア) アンケート対象者の選定について,母集団となった上記各地域のガ ラス製品共同組合の加入者は,原告商品及び被告商品の取引者に当た ると解される。 しかし,上記組合の加入者の中から,対象者58社をどのようにし て選定したのかは明らかではない。また,本件アンケートの各質問の 形式がいわゆるオープンクエスチョンとなっていることを踏まえても, 上記のような対象者に対して,原告商品2点及び被告商品2点を含む ガラス瓶の写真5点を示して製造者を回答させるというアンケートを 実施することが,原告商品や被告商品の形態のみから,その出所を特 定し得るかを判定するものとして有用といえるのか疑問がある。
(イ) 回答者は,上記アンケート対象者58社のうち16社にすぎない。 そして,被告商品5(質問1),原告商品2(質問2),被告商品9(質 問4)及び原告商品12(質問5)について,それぞれ,その製造者を いずれも控訴人であると回答したのは,順に8社,9社,5社及び7 社に過ぎず,このような少数の取引者が,上記各商品の製造者を控訴 人と回答したからといって,これらの商品に係る形態がその出所を示 すものとして周知となっていると評価することはできない。
(ウ) また,他社製品に関する質問3(調味料M200角の製造者)につ いての回答内容は,2社が控訴人,2社が日本山村硝子,12社が不 明(白紙を含む。)というものである。控訴人は,原告商品と日本山 村硝子の製品を区別できなかったのが2社のみというが,12社が回 答できなかったことに照らすと,これをもって,原告商品の形態に特 別顕著性を認めることはできない。
(エ) 上記回答内容によれば,被告商品5及び被告商品9について,製造 者を特定して回答した全員(順に8社,5社)が,その製造者を控訴 人と誤ったことが認められる。 しかし,食調瓶である原告商品及び被告商品の取引態様(認定事実 (2),前記(2))に照らせば,少数の取引者が上記のように誤った回答 をしたからといって,被告商品の形態が原告商品に類似することによ り混同が生じるおそれがあるということもできない。

◆判決本文

1審はこちら

◆平成29(ワ)12720

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平成29(ネ)10068等  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年2月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。1審では、実用新案権による独占状態に由来する周知性かが争われました。1審はそれ以降も、独占状態が継続しているとして周知性を認めました。知財高裁は、「知的財産権の存在による独占状態は,知的財産権の存続期間が経過することにより解消し,知的財産権の存続期間中の独占状態に基づき生じた周知性も,存続期間満了後の期間の経過に伴って漸減し,存続期間満了後相当期間が経過した後は,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響は払拭されたものと評価することができる。」と判断しました。

 控訴人は,仮に第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があ ったとしても,現実に参入者との間で競争が生じない限り,知的財産権による独占 状態の影響が払拭されたと評価することはできないと主張する。 しかし,知的財産権の存在による独占状態は,知的財産権の存続期間が経過する ことにより解消し,知的財産権の存続期間中の独占状態に基づき生じた周知性も, 存続期間満了後の期間の経過に伴って漸減し,存続期間満了後相当期間が経過した 後は,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響は払拭されたものと評 価することができる。 そして,被告商品の販売を開始した平成24年12月までの間に,原告商品のう ちS−O型については,実用新案権1の存続期間が満了した昭和54年6月23日 から約30年間,原告商品のうちL型,M型,S型については,実用新案権2の存 続期間が満了した昭和57年12月4日から約30年間,原告商品のうちS−II 型,LL型,L−II型については,実用新案権3の存続期間が満了した平成9年2 月26日から約15年間が経過しており,第三者が同種競合製品をもって市場に参 入する機会が十分にあったと評価し得ることは,前記1のとおり補正して引用する\n原判決の判示するとおりである。 また,控訴人は,被控訴人による原告商品の宣伝広告が実用新案権の存続期間満 了の前後を通じて基本的に変化がない旨を指摘するが,商品の形態の商品等表示性\nの要件である周知性を基礎付ける宣伝広告が,知的財産権の存続期間満了の前後を 通じて同様のものであったからといって,そのことが周知性を否定する根拠となる ものではないことは明らかである。 そして,原告商品について,実用新案権の存続期間満了後における広告・宣伝 や,継続的・独占的な大量の製造・販売により,遅くとも平成24年までには原告 商品の形状が出所を表示するものとして周知又は著名であるとの事情が認められる\nことは,前記1のとおり補正して引用する原判決の判示するとおりである。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)24688
「特許権や実用新案権等の知的財産権の存在により独占状態が生じ,これ に伴って周知性ないし著名性が生じるのはある意味では当然のことであり, これに基づき生じた周知性だけを根拠に不競法の適用を認めることは,結 局,知的財産権の存続期間経過後も,第三者によるその利用を妨げてしま うことに等しく,そのような事態が,価値ある情報の提供に対する対価と して,その利用の一定期間の独占を認め,期間経過後は万人にその利用を 認めることにより,産業の発達に寄与するという,特許法等の目的に反す ることは明らかである。もっとも,このように,周知性ないし著名性が知 的財産権に基づく独占により生じた場合でも,知的財産権の存続期間が経 過した後相当期間が経過して,第三者が同種競合製品をもって市場に参入 する機会があったと評価し得る場合など,知的財産権を有していたことに 基づく独占状態の影響が払拭された後で,なお原告製品の形状が出所を表\n示するものとして周知ないし著名であるとの事情が認められる場合であれ ば,何ら上記特許法等の目的に反することにはならないから,不競法2条 1項1号の適用があるものと解するのが相当である。」

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平成30(ネ)10064等  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年10月10日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 ウェブサイトおけるタイトルタグ及びメタタグでの使用が不正競争行為であるかが争われた事件です。1審は、「平成28年11月1日から(タイトルタグ及びメタタグでの使用は15日から)平成29年3月22日までの間に被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグ並びに被告ウェブページに被告標章1及び2を記載した行為は,不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当するが,その他の被告標章1〜3の使用は,同号における商品等表\示の使用とはいえず,商標としての使用ともいえない」と判断しました。  これに対して、知財高裁(2部)は、「(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成30年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。」と判断しました。\n

ア 平成28年11月1日から平成29年3月22日まで
タイトルタグ及びメタタグにおける被告標章1及び2の使用
前提事実(4)アのとおり,一審被告グレイスランドが,平成28年11月15日 から平成29年3月22日までの間,被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及 びメタタグに原判決別紙1−1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載し ていたこと,その結果,(1)グーグルや楽天市場でキーワード検索した場合に,検 索結果を表示する画面にタイトルとして被告標章1又は2が表\示され,空白部分 を挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ」として 商品の種類が表示され,(2)楽天市場では,タイトルの横に被告商品の画像が表示\nされ,さらに,(3)グーグルでは,場合によって,タイトルの下に被告標章2を含 む「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ 浄水 カートリッジ(標準タイプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確 認の上,お買い求めください。」などの表示がされていたことが認められる。\n上記のような態様で被告標章1及び2を使用した場合,需要者は,独立して表\n示された被告標章1及び2及びその後に空白を挟んで表示されている語句(「取付\n互換性のある交換用カートリッジ」,「浄水器カートリッジ」,「浄水カートリッジ」)や被告標章1及び2の近くにある被告商品の写真から,被告標章1及び2が被告 商品の出所を示していると認識するといえる。 そして,このような表示は,タイトルタグやメタタグの記載によって実現され\nているものであるから,タイトルタグやメタタグに被告標章1及び2を記載する ことは,被告標章1及び2を,商品を表示する商品等表\示として使用(不競法2 条1項1号)するものと認められる。
被告ウェブページ1〜4における被告標章2の使用
前提事実(5)アのとおり,平成28年11月1日から平成29年3月22日まで の間,被告ウェブページ1〜4の下方に,原判決別紙2−1のウェブサイトの記 載欄のとおり,上記 と同様に,「タカギ」との被告標章2が表示され,空白部分\nを挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ(標準タ イプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確認の上,お買い求めく ださい。」などの被告商品の種類に応じた被告標章2を含む表示(本件記載1)が\nされており,さらにその横には被告商品の写真が表示されていたものと認められ\nる。 本件記載1中に独立して表示された被告標章2\nは,被告標章2の後に空白を挟んで記載された語句や被告標章2の近くにある写 真が示す被告商品の出所を示すものとして用いられているものと認められ,商品 等表示に該当するものであると認められる。\n一審被告らは,「取付互換性のある交換用カートリッジ」や「当製品 はメーカー純正品ではございません」といった記載があること及び被告ウェブペ ージ1〜4における被告商品の外観写真が一審原告の純正品とは異なるものであ ることなどを挙げて,タイトルタグ,メタタグ及び被告ウェブページ1〜4にお いて,被告標章1及び2は,商品の出所を表示するものとして使用されていない\nと主張する。 しかし,「互換性」という用語は,製造販売者が同じ商品間でも用いられるもの (甲46)である上,「取付互換性」の語の意味は明確ではなく,需要者が「取付 互換性」という語から直ちに被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使 用されていないと認識するとはいえない。 また,「当製品はメーカー純正品ではございません」という記載については,被 告商品が一審原告の製品とは異なることを端的に述べたものではなく分かりにく い記載となっている上,需要者がウェブサイトの記載を注意深く読むとは限らず, 当該記載が末尾に記載されていることからすると,それが常に認識されるとはい えないし,被告商品と一審原告の製品との外観上の差異(乙10)についても, 本件浄水器に使用される交換用カートリッジが普段露出しているものではなく, 需要者が被告商品と一審原告製品との外観上の差異を明確に認識できるとは限ら ないから,需要者が被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使用されて いないと認識するとはいえない。 したがって,一審被告らの上記主張は上記 の判断を左右するものとはい えない。
イ 平成29年3月23日以降
平成29年3月23日以降の被告ウェブページ並びにそのタイトルタグ及びメ タタグにおける被告標章1及び2の使用は,以下のとおり,そのいずれもが出所 表示機能\,自他商品識別機能を有する態様での使用とはいえず,商品等表\示とし ての使用に該当しない。
平成29年3月23日から同年4月12日まで
前提事実(4)イのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年3月23日か ら同年4月12日までの間,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原 判決別紙1−2のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その 結果,楽天市場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギに 使用出来る取り付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトル\nが被告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていた ことが認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場 合にも,「【楽天市場】タカギに使用できる出来る取り付け互換性のある交換用カ ートリッジ」という被告標章1を含む記載のあるタイトルが表示されるなどして\nいたと認められる。さらに,前提事実(5)イのとおり,被告ウェブページにおいて は,上記期間,その下方に「タカギに使用出来る取り付け互換性のある交換用カ ートリッジ」との記載を含む表示がされていたことが認められる。\n上記各表示は,いずれも「タカギ」というカタカナ3文字の後に「に」という\n助詞が付加され,当該商品が一審原告製の本件浄水器に使用できるカートリッジ であるという,被告商品の商品内容を説明するまとまりのある文章と理解できる ものである。そうすると,需要者が上記各表示に接したとしても,「タカギ」との\n表示を,当該商品自体の出所を表\示するものとして認識するとは認められない。 したがって,上記各表示における被告標章1及び2の使用が,商品等表\示とし ての使用に該当するとは認められない。
平成29年4月13日以降
前提事実(4)ウのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年4月13日以 降,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原判決別紙1−3及び1− 4のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その結果,楽天市 場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギの浄水器に使用 できる,取付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトルが被\n告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていること が認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場合に も,「【楽天市場】タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある交換用カー トリッジ」という被告標章1を含む記載があるタイトルが表示されるなどしてい\nると認められる。さらに,前提事実(5)ウのとおり,平成29年4月13日以降, 被告ウェブページにおいては,その下方で「タカギの浄水器に使用できる,取付 け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含む表\示がされるようになって いることが認められる。 と同様に,「タカギの浄水器に使用できる」という文章は,被告商品が一 審原告製の本件浄水器に使用可能であるという商品内容を説明するものであると\n需要者に理解されるものと認められ,被告商品の出所を表示するものとして使用\nされているとは認められないから,上記各表示における被告標章1及び2の使用\nが,商品等表示の使用に該当するとは認められない。\n
一審原告の主張について
一審原告は,(1)誤認を招きやすいインターネット取引において,キーワード検 索をする需要者は,「タカギ カートリッジ」というキーワードに着目して表示を\n理解してしまう上,検索結果を表示する画面で被告標章1及び2を用いた文章が\n一審原告の製品の写真と共に表示されることからすると,需要者は「タカギ」の\n「カートリッジ」であるという先入観をもって各表示を理解すること,(2)片仮名 で表記されているのが,「タカギ」と「カートリッジ」のみであるところ,片仮名\nは目立ち,語句の切れ目を表示する役割も果たすことからすると,平成29年3\n月23日以降の被告標章1及び2の使用も商品等表示としての使用に当たると主\n張する。 しかし,上記 , で検討した各表示(「タカギに使用出来る取り付け互換性の\nある交換用カートリッジ」,「タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある 交換用カートリッジ」)は,まとまりのある文章として,それが被告商品の説明で あることが容易に理解できるものであるから,需要者の注意力がそれほど高くな く,かつ「タカギ カートリッジ」というキーワード検索を経ていて,一審原告 の製品が共に表示されることがあるからといって,需要者が,「タカギ」と「カー\nトリッジ」のみに着目して,一審原告の主張するような先入観をもって上記各表\n示を理解するとは認められない。 また, 必ずしも片仮名が平仮名 や漢字に比して注意を引きつけるとまではいえない。 したがって,一審原告の上記主張は,上記 の判断を左右するものではな い。
(2) 被告標章3について
ア 前提事実(6)のとおり,平成28年11月1日から平成30年12月2 8日までの間に,被告ウェブページ及び被告ウェブサイト2の冒頭部分には,被 告標章3を含む本件記載2がされていた。 被告標章3である「タカギ社製」は,それが修飾する商品が「タカギ社」の製 造に係るものであること,すなわち,当該商品が一審原告の出所に係ることを示 す語句であるといえる。 そして,被告標章3(タカギ社製)を含む本件記載2は,「タカギ社製 浄水蛇 口の交換用カートリッジを お探しのお客様へ」と3段に分けて記載されている ものであって,文章の内容だけからしても,「タカギ社製」が,「浄水蛇口」では なく,「交換用カートリッジ」を修飾していると理解することが可能なものである。\nまた,前提事実(6)のとおり,本件記載2の上方及び下方の2か所に,本件記載 2より明らかに大きなサイズの文字で,より目立つように「交換用カートリッジ」, 「交換用カートリッジ ついに発売!!」などと表示され,かつ,交換用のカー\nトリッジそのものである被告商品の写真画像も併せて表示されているから,それ\nらの表示に接した需要者は,冒頭に独立して記載された「タカギ社製」の文字を,\nカートリッジに結びつけて理解しやすいといえる。 以上に加えて,前記2で検討したとおり,被告標章3(タカギ社製)の要部で あるタカギの文字部分が家庭用浄水器及びその関連商品の需要者の間で周知なも のであること並びに需要者の注意力がそれほど高くないことといった事情も併せ 考えると,需要者が,本件記載2の中で独立して最上段に記載されている「タカ ギ社製」が,本件記載2中の「交換用カートリッジ」を修飾する語句であると理 解することは十分にあり得るものと認められる。\nそうすると,本件記載2中の被告標章3(タカギ社製)は,被告商品について, 商品等表示として使用されているものと認められる。\n
イ 一審被告らは,(1)本件記載2が一連の呼びかけといえる文言であるこ と,(2)本件記載2の2行目が「浄水蛇口」から始まり,かつ「浄水蛇口」の次に 「の」という助詞が付されていることからすると,需要者は,被告標章3(タカ ギ社製)は「浄水蛇口」を修飾するものとして理解すると主張する。 しかし,上記(1)について,本件記載2が呼びかけといえる文言であるからとい って,被告標章3が商品等表示として使用されていないということにはならない\nし,上記(2)についても,一審被告らの主張する事情を考慮しても,上記アのとお り,需要者が,被告標章3(タカギ社製)が「交換用カートリッジ」を修飾する 語句であると理解することは十分にあり得るということができるから,一審被告\nらの上記主張は採用することができない。
(3) 小括
以上の検討のとおり,(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日ま での間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ 及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から 平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブペー ジ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成3 0年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した 行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。\n
・・・・
以上の検討のとおり,本件不競法該当行為がされた期間は,平成28年 11月1日から平成30年12月28日であるところ,一審原告はそのうち平成 28年11月1日から平成30年11月30日までの間の損害賠償を請求してい る。 証拠(乙26の1〜6,乙27,28,乙29の1・2,乙30,乙31の1 〜7,乙32〜35,乙38の1〜22,乙39の1〜22,乙40の1〜20, 乙41の1〜3,乙43の1〜20)及び弁論の全趣旨によると,上記期間に対 応する各月ごとのパソコン等分利益,パソ\コン等分利益及びスマホ等分利益の合 計額は,別紙2〜4のとおりであると認められる。 また,上記期間に対応する(1)パソコン等分利益の合計額が228万6033円,\n
(2)パソコン等分利益及びスマホ等分利益の合計額が954万0740円であるこ\nとについては当事者間に争いがない。そして,上記パソコン等分利益228万6\n03円については不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当たるものと 認められる(なお,推定の覆滅については(2)で後述する。)。
イ 一審原告は,スマホ等分利益725万4707円(954万0740 円―228万6033円=725万4707円)のうち5%についても「侵害行為 による利益」に含まれると主張する。 しかし,前提事実(3)イのとおり,スマホ・タブレット向けサイト内のウェブペ ージの最下部には,「表示モード:モバイル|PC」として被告ウェブサイトへの リンクがあり,スマートフォンやタブレットから仮想店舗へとアクセスした者は, 上記リンクを利用することで,被告ウェブサイトを表示させることができ,また,\nスマホ・タブレット向けサイト内のウェブページの最上部にも「PC」という文 字を○で囲んだ記号が表示されており,同表\示も被告ウェブサイトへのリンクと なっているものの,このようなスマホ・タブレット向けウェブサイトにおける被 告ウェブサイトへのリンクの表示位置や表\示の態様からすると,同リンクは需要 者が相当注意しないと気付かないような目立たないものである上,スマホ・タブ レット向けサイトの下方にあるリンクについては,他の表示に隠れてタップでき\nない場合がある(甲87,弁論の全趣旨)。そして,スマホ・タブレット向けウェ ブサイトと本件訴訟の対象となっている被告ウェブサイトとの間に見やすさや情 報量の点で差があることなどにより,スマートフォン及びタブレット経由で仮想 店舗にアクセスした需要者が敢えて被告ウェブサイトを表示させる積極的な要因\nがあるとも認められない。これらのことからすると,スマホ等分利益が,本件不 競法該当行為によって生じたものとは認められず,一審原告の上記主張は採用す ることができない。
ウ 以上からすると,不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当 たるのはパソコン等分利益228万6033円のみであると認められる。\n
(2) 不競法5条2項における推定の覆滅については,侵害者が主張立証責任を 負うものであり,侵害者が得た利益と周知な商品等表示の主体が受けた損害との\n相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。 この点について,一審被告らは,(1)被告商品を2回以上購入したリピーターに よる購入が全体の売上げの約15%を占めているところ,リピーターについては誤 認混同が生じていないこと,(2)被告標章3の表示回数が1回であり,注意書きや\n打ち消し表示が多数されていることからすると,不競法5条2項に基づく推定が\n全て覆滅されると主張する。
ア 上記(1)について,確かに証拠(乙42)によると,被告商品について リピーターによる購入が一定割合あることは認められるが,リピーターであるか らといって,そのことから直ちに本件不競法該当行為とは無関係に被告商品を購 入したということはできないから,リピーターによる購入であることを理由とし て推定の覆滅を認めることはできない。
イ 次に,上記(2)について,前記4(1)ア及び(2)アのとおり,平成28年 11月1日から平成29年3月22日までは,被告ウェブページ1〜4において, 被告標章2が商品等表示として使用され,かつ被告ウェブページ1〜4及び被告\nウェブサイト2の冒頭部分に被告標章3が商品等表示として使用されていた上,\n平成28年11月15日から平成29年3月22日まではタイトルタグ及びメタ タグにおいて,被告標章1及び2が商品等表示として使用されていたところ,こ\nれに対して,一審被告らが打ち消し表示と主張するものについては,前記5(2)〜 (5)のとおり決して十分なものということはできないから,需要者が本件不競法該\n当行為とは無関係に被告商品を購入したとはいい難く,推定の覆滅は認められな い。
他方,前記4(1)イのとおり,平成29年3月23日以降,被告ウェブページ並 びにそのタイトルタグ及びメタタグにおいて,被告標章1及び2は,商品等表示\nとしては使用されておらず,前記4(2)アのとおり,被告標章3が被告ウェブペー ジ1〜6及び被告ウェブサイト2において商品等表示として使用されたのみであ\nるから,本件不競法該当行為とは無関係に被告標章を購入した者も一定数存在し たものと認められ,一定の推定の覆滅を認めることができる。その割合はこれま で認定した諸般の事情に照らすと,5割と認めるのが相当である。 (3) 以上からすると,不競法5条2項により一審原告の損害として推定される べき額は,以下の計算式とおり,119万1757円であると認められ,弁護士 費用としては,本件に表れた一切の事情を勘案して20万円を相当と認める。\nしたがって,一審被告らによる不正競争行為(本件不競法該当行為)によって 一審原告に生じた損害額の合計は,139万1757円(119万1757円+ 20万円=139万1757円)であると認められる。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)14637

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平成31(ワ)5391  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和元年10月3日  東京地方裁判所

 サーボモーターの外形について周知性が認められないとして、不競法2条1項1号の周知商品等表示ではないと判断されました。\n

 原告は,原告表示1−1ないし同2−3につき,原告の商品等表\示として 需要者の間に広く認識されている旨を主張する。しかしながら,次のとおり,原告主張に係る各表示は,いずれも原告の商品等表\示として需要者の間に広く認識されているとは認められない。
ア 原告表示1−2及び同2−2について\n
原告主張に係る原告表示1−2及び同2−2は,いずれもサーボモータ\nの外観を示したものであるところ,原告は,これらが単に原告表示1−1\n及び同2−1の型番が表示され,又は原告表\示1−3及び同2−3のラベ ルが貼付された状態を説明したものにとどまるものではなく,各サーボモ\nータの形態自体が,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されて\nいる旨を主張しているものとして,以下検討する。 この点,不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは,人の業務に係\nる氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営 業を表示するものをいい,しかして,商品の形態は,これに付される商標\n等とは異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではな\nい。そうすると,このような商品の形態自体が不競法2条1項1号の「商 品等表示」に該当するためには,(1)商品の形態が客観的に他の同種商品と は異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,(2)その形態が特定 の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な広告宣伝や 爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定 の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を\n要するものと解するのが相当である。 これを本件について見るに,原告表示1−2及び同2−2のいずれにつ\nいても,他のサーボモータの形態と対比して客観的に異なる顕著な特徴を 具体的に含んでいることを的確に認めるに足りる証拠はないものであって, 同形態が上記(1)の特別顕著性を有しているとは認められないというべきで ある。 したがって,原告表示1−2及び同2−2はいずれも不競法2条1項1\n号にいう「商品等表示」に当たるとはいえない。\n
イ その他の表示について\n
原告は,原告表示1−1ないし同2−3の表\示が周知性を有することの 根拠として,原告商品が各種媒体において頻繁に使用例が掲載されている こと,最大手のオンライン通販市場の売上げランキングにおいて上位を独 占していること,(所在地省略)の小売店での販売実績の上位であること等 を挙げる。 しかしながら,各種媒体における掲載状況や小売店での販売実績につい ては,これを具体的に認めるに足りる客観的な証拠はなく,また,オンラ イン通販市場での売上げランキングについても,期間が限定された,断片 的な資料(甲7)が提出されているにすぎず,その他本件全証拠を精査し ても,原告主張に係るその他の表示(原告表示1−1,同1−3,同2−1\n及び同2−3)の付された商品を見た需要者において,商品の出所が原告で あると認識する状況になるまでに至っているものと認めるには足りないと いうべきである。 したがって,原告主張に係るその他の表示は,いずれも原告の商品等表\ 示として需要者の間に広く認識されているとは認められず,不競法2条1 項1号にいう「他人の商品等表示(中略)として需要者の間に広く認識さ\nれているもの」に当たるとはいえない。
(2) 類似性,混同のおそれの有無(争点1−2)について
以上の説示によれば,原告の請求はいずれも既に理由がないものであるが, なお念のため,原告表示1−3及び同2−3と被告表\示1−3及び同2−3 との類似性及び混同のおそれの有無につき検討する。 この点,各表示とも横書き3行の文字列で構\成されており,原告表示1−\n3は1行目が「Towerpro」,2行目が「MG996R」,3行目が「D IGI HI TORQUE」と表示されているのに対し,被告表\示1−3 は1行目が「TZT」と表示されており,2行目及び3行目は原告表\示1− 3と同様の文字が表示されている。\n また,原告表示2−3は1行目が「TowerPro」,2行目が「MG9\n95」,3行目が「DIGI HI−SPEED」と表示されているのに対し,\n被告表示2−3は1行目が「TZT」と表\示されており,2行目及び3行目 は原告表示2−3と同様の文字が表\示されている。 しかして,商標の類否ないし混同のおそれの有無は,同一又は類似の商品 に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象, 記憶,連想等を総合して,その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に 考察して決すべきものであるところ,原告表示1−3と被告表\示1−3及び 原告表示2−3と被告表\示2−3とをそれぞれ対比すると,1行目の表示が\n全く異なる文字列で構成され,この部分の外観,観念,称呼が異なることは\n明らかであり,また,2行目の「MG996R」及び「MG995」や3行 目の「DIGI HI TORQUE」及び「DIGI HI−SPEED」 は一致しているが,これは,上記各表示が使用される商品であるサーボモー\nタの型番や性状を示す部分にすぎないと認められる。 以上に照らし,サーボモータに係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察 すれば,表示全体として,原告表\示1−3と被告表示1−3及び原告表\示2 −3と被告表示2−3とが類似しているとは認め難いというほかなく,混同\nのおそれがあるということもできない。
(3) 以上によれば,被告による被告商品の販売行為等は,不競法2条1項1号 所定の不正競争行為に当たらない。

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平成31(ネ)10002  不正競争行為差止請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和元年8月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(4部)は、不競法2条1項1号の不正競争行為と認めました。
 1審(東京地裁29部)は、周知性、類似までは認めましたが、「混同を生じさせる行為」とはいえないとして、請求棄却していました。

 原告商品の形態は,控訴人が昭和59年に「SBバック」の商品名で原告 商品の販売を開始した当時から,他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を 有していたものであり,その後被告商品の販売が開始された平成30年1月 頃までの約34年間の長期間にわたり,他の同種の商品には見られない形態 として,控訴人によって継続的・独占的に使用されてきたことにより,少な くとも被告商品の販売が開始された同月頃の時点には,需要者である医療従 事者の間において,特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別 機能を獲得するとともに,原告商品の出所を表\示するものとして広く認識さ れていたこと,原告商品と被告商品は,同一の形態に近いといえるほど形態 が極めて酷似し,被告商品の形態は,原告商品の形態と類似することは,前 記2(2)ア及び3(1)ウ認定のとおりである。
そして,前記1の認定事実によれば,医療機器の取引プロセス等に係る取 引の実情として,1)医療機関が医療機器を新規に購入する場合,医療従事者 が,医療機器メーカー又は販売代理店の販売担当者から,商品説明会等で当 該医療機器の特色,機能,使用方法等に関する説明を受けた後,臨床現場で\n当該医療機器を1週間ないし1か月程度試行的に使用し,使い勝手,機能性\n等の評価を経た上で新規採用を決定し,医療機器メーカー又は販売代理店に 対して当該医療機器を発注することが一般的であり,一定の病床数を有する 医療機関にあっては,医師,看護師その他の医療スタッフから構成される「材\n料委員会」が開催され,その構成メンバーによる協議を経て,当該医療機器\nの新規採用が決定されているが,一方で,個人病院や病床数が少ない医療機 関にあっては,材料委員会が開催されることなく,医師の意向により新規採 用が決定される場合も少なくないこと,2)医療機関が従前から使用している 医療機器を継続的に購入する場合,各種医療機器の画像,品番,仕様,価格 等が記載された医療カタログに基づいて,医療機器メーカー又は販売代理店 の販売担当者に対して品番等を伝えて発注し,また,インターネット上のオ ンラインショップで購入する場合があること,3)消耗品等の比較的安価な医 療機器については,医療機関が新規に購入する場合においても,医療カタロ グに基づいて医療機器メーカー又は販売代理店の販売担当者に対して品番等 を伝えて購入したり,オンラインショップで購入することもあること,4)医 療機関においては,用途が同じであり,容量等が同様の医療機器については, 一種類のみを採用し,新たな医療機器を一つ導入する際には同種同効の医療 機器を一つ減らすという「一増一減ルール」が存在するが,「一増一減ルー ル」は,主に大学病院,総合病院等の大規模な医療機関において採用されて おり,小規模の医療機関においては,各医師がそれぞれ使いやすい医療機器 を使用する傾向が強いため,そもそも「一増一減ルール」が採用されていな い場合があり,また,「一増一減ルール」を採用している医療機関において も,徹底されずに,医師の治療方針から特定の医師が別の医療機器を指定し て使用したり,新規の医療機器が採用された後も旧医療機器が併存する期間 があるなど,同種同効の医療機器が複数同時に並行して使用される場合があ り得ること,5)バーコードで医療機器を特定して発注や在庫管理を行い,ま た,医療機関で使用される物品の発注,在庫管理,病棟への搬送などのサー ビス(SPD)を事業者に委託している医療機関もあるが,全ての医療機関 において,このようなバーコードを利用した医療機器の発注,在庫管理やS PDの委託を行われているわけではなく,SPDの委託率も決して高いもの ではないこと,6)原告商品及び被告商品は,消耗品に属する医療機器であり, カタログ販売のほかに,商品画像とともに,品番,型番,価格等掲載された オンラインショップ(「アスクル」のウェブサイト)による販売が行われて いることなど,両商品の販売形態は共通していることが認められる。 以上を総合すると,原告商品の形態が,控訴人によって約34年間の長期 間にわたり継続的・独占的に使用されてきたことにより,需要者である医療 従事者の間において,特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識 別機能を獲得するとともに,原告商品の出所を表\示するものとして広く認識 されていた状況下において,被控訴人によって原告商品の形態と極めて酷似 する形態を有する被告商品の販売が開始されたものであり,しかも,両商品 は,消耗品に属する医療機器であり,販売形態が共通していることに鑑みる と,医療従事者が,医療機器カタログやオンラインショップに掲載された商 品画像等を通じて原告商品の形態と極めて酷似する被告商品の形態に接した 場合には,商品の出所が同一であると誤認するおそれがあるものと認められ るから,被控訴人による被告商品の販売は,原告商品と混同を生じさせる行 為に該当するものと認められる。
(2) これに対し被控訴人は,1)医療機関においては,多数の医療従事者が関与 し,試用期間を設けて商品の機能や安全性等に着目して慎重に医療機器の選\n定が行われ,製品名や規格等に着目して販売代理店を通じた発注や物品の管 理が行われるのであるから,通常,医療機器の購入に際して,商品の形態に 着目したり,形態を手がかりに商品が購入されることはなく,このことは, 医療機器カタログやオンラインショップを通じて医療機器が購入される場合 であっても同様であること,2)医療機関が臨床での試用や機能性等の評価を\n経て採用した商品を継続購入する場合は,医療機器カタログやオンラインシ ョップを通じて購入するが,医療機関においては,商品名や品番等により採 用している医療機器と同一の医療機器を発注するよう管理しており,商品の 形態だけを見て発注することはないし,カタログ購入やオンラインショップ 購入の場合でも,これまで医療機関が発注したことのない医療機器が新たに 発注されたときには,必ず医療機関に連絡を行い,試用を勧めることが通常 であること,3)原告商品と被告商品がオンラインショップ等で同一の機会に 販売されることがあったとしても,そもそも,医療従事者は商品形態には着 目しない上,オンラインショップにおいては商品の商品名及び製造販売元等 が明記されているのであるから,医療従事者が,その形態のみから,原告商 品と被告商品の出所を誤認混同することはないこと,4)医療機関においては, 用途が同じであり容量等が同様の医療機器については一種類のみを採用する という,いわゆる「一増一減ルール」が採用され,一つの医療機関又は診療 科において,原告商品と被告商品が同時に採用されるといった事態は生じ得 ず,医療従事者が原告商品と被告商品を取り違えたり,使用方法を誤るとい った事態の発生を想定することができないし,仮に単一の医療機関において 同種の複数の医療機器が同時に用いられることがあったとしても,原告商品 及び被告商品にはそれぞれ商品名及び会社名が明確に表示されている上,原\n告商品及び被告商品は,控訴人及び被控訴人のそれぞれが製造販売する専用 のカテーテル以外に接続することができない専用設計品となっており(乙1 3),相互に互換性がなく,このことは添付文書(乙1)等からも確認できる から,実際の発注や使用において両商品の取り違えが生じることはないこと, このような取引の実情を踏まえると,需要者である医療従事者において,原 告商品の形態及び被告商品の形態に基づいて商品の出所の同一性について混 同が生ずるおそれはないから,被控訴人による被告商品の販売は,原告商品 と混同を生じさせる行為に該当しない旨主張する。 しかしながら,上記1)ないし3)の点については,前記2(2)ア認定のとおり, 原告商品の形態は,控訴人によって約34年間の長期間にわたり継続的・独 占的に使用されてきたことにより,需要者である医療従事者の間において, 特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得するとと\nもに,原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていたことに照ら\nすと,医療従事者が,原告商品の形態に着目して,医療機器カタログやオン ラインショップを通じて医療機器が購入する場合もあり得るものと認められ る。また,前記2(2)イ認定のとおり,バーコードで医療機器を特定して発注 や在庫管理を行い,また,SPDを事業者に委託している医療機関もあるが, 全ての医療機関において,このようなバーコードを利用した医療機器の発注, 在庫管理やSPDの委託が行われているわけではなく,SPDの委託率も決 して高いものではない。
上記4)の点については,前記(1)認定のとおり,小規模の医療機関において は,そもそも「一増一減ルール」が採用されていない場合があり,また,「一 増一減ルール」を採用している医療機関においても,徹底されずに,医師の 治療方針から特定の医師が別の医療機器を指定して使用したり,新規の医療 機器が採用された後も旧医療機器が併存する期間があるなど,同種同効の医 療機器が複数同時に並行して使用される場合があり得ることからすると,「一 増一減ルール」が存在するからといって,原告商品の形態と極めて酷似する 被告商品の形態に接した場合には,商品の出所が同一であると誤認するおそ れがあることが否定されるものではない。また,原告商品及び被告商品は, 控訴人及び被控訴人のそれぞれが製造販売する専用のカテーテル以外に接続 することができない専用設計品となっており,その点においては相互に互換 性がないとしても,そのことから直ちに原告商品又は被告商品を購入する際 に両商品の形態が極めて酷似することにより商品の出所が同一であると誤認 するおそれがあることが否定されるものではない。

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◆平成30(ワ)13381

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平成31(ネ)10004  販売差止め及び損害賠償等請求控訴事件  意匠権  民事訴訟 令和元年6月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 アイマスクおよびレッグウォーマーについて、意匠権侵害なし、不正競争行為にも該当せずとした1審判断を、知財高裁2部は維持しました。1審判決の最後に、対象製品が掲載されています。

ア 本件登録意匠の要部の認定について
(ア) 控訴人は,本件登録意匠は,本件登録意匠美感を有しており,構成\nイウエの各構成は,それぞれが関連しあって一体となり一つの強い意匠的効果を発\n揮しているところ,その製品を購入する際に需要者が最も重要視する部分は,上記 一体となって発揮される美感であり,先端部のビーズではない旨主張する。 しかし,本件登録意匠は,アイマスクのマスク部の両脇より延びる耳かけストラ ップ部分の部分意匠であり,ストラップ部において,中間部及び先端部の2箇所に ビーズが現れることは,需要者の印象に大きく残るものであると認められる。これ に,公知意匠(乙10〜13)も考慮すると,原判決(第3,1,(3),ウ)が認 定するとおり,「耳かけストラップの中間部及び先端部の二箇所にビーズが現れる 形態」(構成イ)を含む本件登録意匠の構\成全体が本件登録意匠の要部であると認 めるのが相当であり,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(イ) 控訴人は,本件意見書は,拒絶理由通知の引用意匠(乙13)と本 件登録意匠との間に実際に存在している相違点を指摘しているにすぎず,要部であ ると主張したものではないし,本件登録意匠美感を凌駕するほどに強い美感を発揮 していると主張したものではない旨主張する。 しかし,本件意見書が本件登録意匠と引用意匠との相違点(耳掛けストラップの 先端部にもビーズが存する形態)が類否判断の上で重要であることを指摘している と認められることは,原判決(第3,1,(3),エ)が判示するとおりであって, 本件登録意匠の要部を認定するに当たり考慮することができるというべきである。 したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
イ 公知意匠の認定について 控訴人は,乙11〜13が公知意匠としての適格性を欠いており,また,乙10 〜13の要部が本件登録意匠とは異なる旨主張する。 しかし,乙11〜13を公知意匠とし,これも参酌して本件登録意匠の要部を認 定することができることについては,原判決(第3,1,(3),イ及びウ)が判示 するとおりである。 乙10については,乙10の意匠が本件登録意匠の構成要件イウエの各構\成は有 していないことは認められるが,ストラップの先端部にビーズ形状が現われている アイマスクの意匠であるから,これをアイマスクの部分意匠(ストラップ部分につ いての意匠)である本件登録意匠の公知意匠とし,これを参酌して本件登録意匠の 要部を認定することができるというべきである。 また,乙11〜13の物品が本件登録意匠の構成要件イウエの構\成そのものを備 えていないとしても,「アイマスクの左右端の上部又は下部から伸びた紐が左右端 (左右同順)の下部又は上部(上下同順)に到達し,上記紐の中間部の一箇所に物 体が設けられ,上記中間部の物体は,上位紐を束ねており,移動可能である態様」\nを備えているから,これをアイマスクの部分意匠(ストラップ部分についての意匠) である本件登録意匠の公知意匠とし,これを参酌して本件登録意匠の要部を認定す ることができるというべきである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 本件登録意匠とイ号意匠の美感の類似性について 控訴人は,両意匠の一部の差異は,共通点の有する美感を陵駕しておらず,全体 としての美感を共通にしているから,両意匠は類似していると主張する。 しかし,両意匠が類似していないことは,原判決(第3,1,(4))が判示する とおりである。 控訴人は,本件登録意匠のデザインからビーズ一つを削除する改変は,ありふれ た改変であると主張するが,そうであるとしても,両意匠が類似していることには ならない。
(2) 不正競争行為該当性について
ア 商品等表示の判断枠組みについて\n
控訴人は,原判決が,商品の形態自体が出所を表示する二次的意味を有し,不正\n競争防止法2条1項1号及び2号にいう「商品等表示」に該当するための要件の一\nつとして,特別顕著性という要件を考慮したことが,明文のない要件のハードルを 過剰に高いものにしたと主張し,顕著性の程度の判断には,類似品が販売されてい たか否かだけでなく当該類似品が一般に出回っていることを広く需要者一般が通常 認識する態様であったのかどうかも検討すべきであると主張する。 商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有する\nものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至\nる場合があるため,このような商品については,不正競争防止法により,出所表示\n機能が保護されるものであって,そのためには,原判決(第3,2,(1))が判示 するとおり,特別顕著性と周知性が必要であると解される。そして,特別顕著性の 判断に当たっては,当該商品の類似品が一般に出回っているか否かも考慮すること にはなるものの,当該商品の形態に客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴が あるか否かを判断するのであるから,必ずしも類似品が一般に出回っていることを 広く需要者一般が認識する必要はないというべきである。
イ 控訴人の商品形態と類似商品があること
(ア) 控訴人は,乙2,3,26及び27の商品は,控訴人及び控訴人の 代理店など当業者においても被控訴人ら主張を受けて初めて認識するに至ったほど に人知れず発売されていた商品であり,あえてもろもろの検索条件で根気強く検索 を試みなければヒットしないような商品ばかりであると主張する。 しかし,乙3及び27の商品は,日経流通新聞に掲載されたものであることが認 められるし,乙2の商品は,パンジーストアと題するウェブサイトに,平成23年 9月6日付けニュースとして新規発売が紹介されており,乙26の商品も,株式会 社山善のウェブサイトに平成24年10月23日付けで新製品として紹介されてい るものであるから,控訴人及び控訴人の代理店などの当業者が被控訴人ら主張を受 けて初めて認識するに至ったほどに人知れず発売されていた商品であるとは認めら れない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできず,これらの商品の 形態を本件原告商品の形態の特別顕著性の判断に当たって考慮することができると いうべきである。
(イ) また,証拠(乙5,29)及び弁論の全趣旨によると,乙5及び2 9は,いずれも平成30年の発売情報であることが認められる。 しかし,証拠(乙2,3,4,26,27)によると,既に,平成23年〜同2 4年頃には本件特徴又はこれと極めて類似した特徴を有する複数の商品が市販され ていることが認められるところ,平成30年頃にも,本件特徴又はこれと極めて類 似した特徴を有する複数の商品が市販されているという,乙5及び29によって認 められる事実は,平成23年,同24年頃から平成30年頃までの間,本件特徴又 はこれと類似する特徴を有する商品が継続して多数販売されていたことを裏付ける ものとなる。乙5及び29は,上記のような意味において,本件原告商品の形態が 特別顕著性を有していたかどうかの判断に用いることができるものである。 なお,仮に,乙4について,株式会社ポーラとの間で控訴人が主張するようなや り取りがあったとしても,乙4の商品が発売された事実は認められるのであって, 本件原告商品の形態が特別顕著性を有していないとの原判決(第3,2,(2),ウ) の判断を左右するものではない。

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◆平成29(ワ)40178

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平成29(ワ)31572  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和元年6月18日  東京地方裁判所

 イッセイミヤケデザインのバッグなどについて、周知商品等表示・著名商品等表\示であると判断されました。なお、あわせて、著作権侵害かも争われましたが、「実用目的で工業的に製作された製品について,その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,・・・上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合がある」と一般基準を述べましたが、本ケースでは著作物性無しと判断されました。
判決文の最後にバックなど形状を示す写真があります。

 原告商品は, で述べたとおり,わずかな例外を除いて本件形態 1´を備え,メッシュ生地又は柔らかな織物生地に,相当多数の硬質な三角 形のピースが,2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるよ うに配置されることにより,中に入れる荷物の形状に応じてピースに覆われ た表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり,立体\n的で変化のある形状を作り出す。一般的な女性用の鞄等の表面は,布製の鞄\nのように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか,あるいは硬い革 製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないことから すれば,原告商品の形態は,従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる 特徴を有していたといえる。このことは,新聞や雑誌といったメディアにおいて「画期的なデザインのバッグ」(前記(1)カウ),「シンプルなピースが集 まって 自在に変化するユニークな形」前記(1)カカ),「三角形のパーツをつなぎあわせたフューチャリスティックなデザイン(前記(1)カテ),「特徴 がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別でき」る 前記(1)カセ)などと,そのデザインの独特さ,斬新さが取り上げられ,平 成19年秋にはデザイン性と機能性を併せ持ったアイテムだけを厳選して\n掲載するニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に採\n用されたことからも裏付けられ,原告商品の形態は,これに接する需要者に 対し,強い印象を与えるものであったといえる。 したがって,原告商品の本件形態1´は,客観的に他の同種商品とは異な る顕著な特徴を有していたといえ,特別顕著性が認められる。
・・・
 原告商品1ないし6は,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュック サック及びトートバッグであり,いずれも物品を持ち運ぶという実用に供され る目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。  著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を 創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するも\nのをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ,その定義や著作権法の 目的(同法1条)等に照らし,実用目的で工業的に製作された製品について, その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,その特徴と は別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないもの は,「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著\n作物として保護されないが,上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性 を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合 があると解される。
(3) これを原告商品1ないし6についてみるに, のとおり,原告商品1な いし6は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作さ れたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原 告商品1ないし6の本件形態1は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する\n三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰める ように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折 れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変 形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形 が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に 応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状\nに応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き, 鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶ\nために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は, 著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特 徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するた めの特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備\nえた部分を把握することはできないとするのが相当である。 したがって,原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一な ものとみることができず,著作物性は認められないから,その余の点について 判断するまでもなく,原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。

◆判決本文

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平成30(ネ)10081等  不正競争行為差止等請求控訴事件等  不正競争  民事訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁(2部)は、マリカー事件について、中間判決をしました。論点は色々ありますが、1審の判断がほぼそのままとなっています。

 一審被告らは,一審被告会社は,「マリカー」の標準文字からなる本件商標を 有しており,「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから,仮に 被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても,差止請求や損害賠 償請求は認められない旨主張する。 しかし,本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ, 前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表\示マリカーも, 「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知\nっていたものと認められる。
これに加え,1)一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と していたこと,2)平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状 態!!」と記載されていたこと(甲3,4),3)平成28年8月12日当時に品川 第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ 倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が 同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト 1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて いたこと(甲6の1,甲35),4)平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」 と記載されていたこと(甲6の2),5)後記6認定のとおり,一審原告の著名な商 品等表示である原告表\現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行 為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月 2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時 点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は, 周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利\n用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと 推認することができる。
したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると 主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記 主張は理由がない。
なお,一審被告らは,原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間\nでは周知ではないと主張するが,これまで検討してきたとおり,本件需要者は訪日 外国人に限られないから,一審被告らの主張はその前提を欠いており,採用するこ とができない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)6293

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平成30(ワ)13381  不正競争行為差止請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年12月26日  東京地方裁判所(29部)

 不競法2条1項1号の不正競争行為について、周知、類似は認めましたが、混同しないとして、不正競争行為に該当しないと判断されました。
 これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品は,携帯用ディス ポーザブル低圧持続吸引器であるSBバックのうちの排液ボトル及び吸引ボトルで 構成されるものであるところ,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器には様々な形\n態のものが存在する中で,SBバックのように主たる構成として2つの透明のボトル\nから構成される形態,取り分け,直方体の排液ボトル,丸みを帯びた略立方体の吸引\nボトル本体及びその上部に取り付けられた球体のゴム球体という形状の異なる3つ のパーツをまとまりよく一体化して構成されている形態は,平成30年1月頃に被告\n商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態であったのであ り,吸引方法が異なる蛇腹(バネ)吸引や握り型吸引に属する吸引器はもととより,同 じくバルーン吸引に分類される吸引器であり,株式会社メディコンが製造し,販売す る「デイボール リリアバック」の形態もSBバックの形態とは,大きく異なってい る(甲11,25,乙4)。そうすると,原告商品の形態は,1)特別顕著性,すなわち,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していると認められる。 これに対し,被告は,原告商品は,医療従事者を需要者とする医療機器であり,医 療従事者が,患者の生命及び身体の安全に関わる医療機器を選定するに当たって重視 するのは,当該商品の機能であってその形態ではないことなどから,原告商品の形態\nは,自他識別機能及び出所表\示機能をおよそ備えていない旨を主張する。しかしなが\nら,医療機器であっても,その使用に当たっては商品の形態が使用感や使いやすさ, 利便性等に大きな影響を与えるのであるから,医療機関が商品を選定する際に考慮要 素になると考えられるのであり,このことは,被告が行ったアンケート結果において も,利便性(乙6の1),使いやすさ(乙6の2,3,9,乙7の2),使い勝手(乙 6の5,7,9,乙8の3),大きさ・寸法(乙6の2,6)等が挙げられていること から裏付けられている。したがって,原告商品の形態が自他識別機能及び出所表\示機 能をおよそ備えていないということはできない。\nまた,被告は,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器として の機能及び効用を発揮するために選択されたものであり,同種製品でも採用されてい\nる一般的なありふれた形態を組み合わせたものにすぎない旨を主張する。しかしなが ら,原告商品を構成する直方体の排液ボトルの形状,略立方体の吸引ボトルの本体及\nびその上部に取り付けられた球体のゴム球それぞれの形態が個々の形態としてあり ふれた形状であったとしても,原告商品の形態は,これらを組み合わせて一体化した ものであり,しかも,他の同種製品にはみられない形態であったのであるから,原告 商品の形態がありふれた形態ということはできない。
イ そして,前記認定のとおり,原告は,昭和59年から,SBバックを,その形 態を変更することなく製造し,販売しているところ,SBバックの形態は,平成30 年1月頃に被告商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態 であったこと,平成18年から平成28年までのポータブル低圧持続吸引器国内市場 におけるSBバックの販売数量は同市場において30%程度を占め,業界首位であっ たこと,原告は,SBバックの販売開始以来,平成14年頃から発行している医療機 器の総合カタログを定期的に更新し,医療機関に頒布してきたほか,少なくとも平成 10年から医療機器の展示会等にSBバックを展示するなど,医療機関に対する説明 会や個別の説明を常時実施してきたこと,SBバックの形態が多数の医療従事者向け 書籍等に掲載されてきたことなどからすれば,原告商品の形態は,2)その形態が原告 によって長期間独占的に使用されてきたことにより,少なくとも被告商品が販売され た平成30年1月頃には,原告の出所を示すものとして需要者である医療従事者に広 く認識されるに至ったということができる。 これに対し,被告は,原告商品の形態が掲載されている書籍等において,原告商品 の形態のみならず,常に原告の会社名や商品名も併せて記載されていることなどから, 原告商品の形態自体がその形態のみで出所表示機能\を発揮しているのではない旨主 張するが,上記説示のとおり,原告商品の形態は,その形態が原告によって長期間独 占的に使用されてきたことにより周知性を獲得したと認められるのであるから,個別 の表示の態様が原告商品の形態と原告の会社名や商品名とが併せて表\示されていた としても,上記認定を左右しないというべきである。
ウ さらに,前記認定のとおり,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧 持続吸引器に様々な形態のものが存在し,排液ボトルや吸引ボトルの形状にも様々な 選択肢がある中で,これらを組み合わせて一体的に構成されたものであるから,商品\nの形態が商品の技術的な機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地の\nない不可避的な構成に由来する場合には該当しないと認められる。\nこれに対し,被告は,原告商品の形態は,単に機能を発揮する観点から選択された\nにすぎず,その機能及び効用を発揮するために必然的,不可避的に採用せざるを得な\nい商品形態である旨を主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,原告商品は,創腔からの滲出液の集液量増加に 伴う吸引圧の変動が小さく,創腔に常に適切な陰圧を負荷できること,採取された滲 出液が逆流する陽圧発生の危険がなく取扱い容易であること,集液ゾーンと陰圧保持 ゾーンが分離され,集液貯留が全て剛性容器で行われるため,使用中は常に集液量測 定を精度良く簡便に行うことができるとともに,途中の吸引再セット時の排液操作が 必要なく,集液を追加できることなどの機能を有しているところ,このような機能\を 有するための構成としては,ボトルの数,形状及び透明性,目盛の形状,排液口の位\n置,大きさ,形状及び色彩,集液ポートの位置及び形状,排液ボトルと吸引ボトルの 連結態様,ゴム球の位置,大きさ,形状及び排気弁の有無等の様々な選択肢があるの であるから,被告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,原告商品の形態は,少なくとも被告商品が販売された平成30 年1月頃には,不競法2条1項1号にいう商品等表示として需要者の間に広く認識さ\nれたものとなっていたと認められる。
3 争点2(原告商品の形態と被告商品の形態とは類似するか)について
(1) 不競法2条1項1号の「類似」に該当するか否かは,取引の実情の下において, 需要者又は取引者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両 者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである。
(2)これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品の形態と被告商品の 形態とは,外観において,主たる構成として排液ボトル及び吸引ボトルの2つのボト\nルを有している点で共通するほか,排液ボトル及び吸引ボトル自体の形状も多数の点 が共通し,その寸法もほぼ共通する。他方,排液ボトルについては,目盛や文字の色 等が相違し,吸引ボトルについては,「吸引ボトル」の文字や,社名,商品名等の文字 の色,ゴム球の色等が相違し,社名や商品名の称呼も相違する。 以上の共通点及び相違点を総合すると,外観上の共通点が極めて多数に上ることに 比して,相違点はいずれも細部の相違であり,色彩の相違も同系色での相違にすぎず, 社名や商品名の表示の相違も全体的な構\成からは一部分にとどまることからすれば 上記共通点は,上記相違点よりも需要者に強い印象を与えるものであると評価するこ とができる。したがって,原告商品の形態と被告商品の形態については,称呼が相違 するものではあるが,需要者が外観に基づく印象として,両者を全体的に類似のもの と受け取るおそれがあると認められ,不競法2条1項1号の「類似」に該当すると認 められる。
4 争点3(被告商品の製造販売は,原告商品と混同を生じさせるか)について
原告は,被告商品の形態は,原告の商品等表示である原告商品の形態に酷似するも\nのであるから,被告商品に接した需要者において,被告商品を原告商品又は原告のシ リーズ商品,原告のグループ会社の商品又は原告のライセンス商品であるとの誤認混 同が生じるおそれが高い旨を主張する。 不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」とは,商品又は役務について出所 が同一であると誤認させ,あるいはその営業につき主体が同一であると誤認させる場 合に限られず,他人の周知の商品等表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他\n人との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業上の関係又は同 一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為も含\nまれると解される。 そこで,これを本件についてみるに,前記認定によれば,原告商品及び被告商品の 取引態様については,専門家である医療従事者が,医療機器の製造販売業者や販売業 者の担当者から,当該医療機器の特色,機能,使用方法等に関する説明を受けて,当\n該医療機器の購入を決め,医療機器専門の販売業者に対して当該医療機器を発注する というプロセスをたどって取引されているのであり,しかも,多くの医療機関におい ては,医療機器の使用について,医療機関が医療機器を採用するにあたっては,同種 の医療機器については,一種類のみを採用するという原則的な取扱いであるいわゆる 一増一減のルールが採用されているというのである。そして,原告商品と被告商品に は商品自体には商品名及び会社名が記載され,それぞれ別々のパンフレット(甲1, 20)が作成されて別々に販売される上,需要者である医療従事者も医療機器に関す る専門知識を有する者なのであるから,被告商品の販売行為によって需要者である医 療従事者において原告商品と被告商品の出所が同一であると誤認するおそれがある とは認められない。また,原告及び被告は,医療機器の分野において,相当程度のシ ェアを有する競合会社であり,ポータブル低圧持続吸引器国内市場における原告のシ ェアは約30ないし40%,被告のシェアは約5ないし15%である。上記の取引形 態等からすると,需要者である医療従事者において原告と被告が競合関係にあること を十分に認識している状況であり,原告商品の形態と被告商品の形態が類似している\nことのみから,原告と被告との間に親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業 上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信\nするおそれがあるとは認められない。そうすると,被告による被告商品の製造販売行 為が,不競法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に当たると認めることは できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

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平成29(ワ)6293  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年9月27日  東京地方裁判所

 任天堂のマリカー関連の判決です。原告表現物は周知の商品等表\示であるとして、差止および1000万円の損害賠償が認められました。
 本件動画1ないし16は,インターネット上の動画共有サービスで あるYouTubeにアップロードされたものであり,本件動画1ないし3, 5ないし12及び16については,その冒頭において被告会社が行う本 件レンタル事業に関する動画であることが表示されている。また,本件\n動画4は本件レンタル事業に係る利用者がコスチュームを着用して公道 カートを運転する様子が撮影された動画であり,本件動画13及び14 は本件レンタル事業について紹介するテレビ番組の当該紹介部分を切り 取って作成された動画であり,本件動画15は本件ロゴ等がペイントさ れた公道カートを運転する本番組の当該部分を切り取って作成された動画であり,いずれも被告会社あるいは関係団体が,本件レンタル事業を広く紹介するために動画共有 サービスにアップロードしたものと認められる。 そして,被告がその役務である本件レンタル事業を紹介する動画にお いて,原告の商品等表示といえる原告表\現物と類似の表示がされた場合,\nその表示は,少なくとも被告会社が提供している役務に関する広告にお\nいて営業の出所を示す表示としてされたということができる。\n 本件動画1ないし16においては,いずれも原告表現物の特徴の一部\nを備えたコスチューム(被告標章第2の1ないし10のいずれかのコス チューム)を着用した人物が表示されていること,これらの人物はいず\nれも公道カートに乗車していること,「マリオ」,「ルイージ」,「ヨ ッシー」,「クッパ」がカートの運転手となるゲームシリーズ「マリオ カート」が日本及び全世界において相当の出荷本数を有すること(前記 2(1)イ(ア)),これらの動画の冒頭に「MARICAR」などという表示がさ\nれていたことからすれば,これらのコスチュームを着用した動画上の人 物は,本件レンタル事業の需要者をして,ゲームシリーズ「マリオカー ト」のキャラクターである「マリオ」,「ルイージ」,「ヨッシー」, 「クッパ」を連想させ,上記各人物と,本件レンタル事業の需要者にお いて周知の商品等表示である原告表\現物とを類似のものと受け取らせ, その商品等表示と被告会社が行っている役務に関連性があると誤認させ,\n被告会社と原告との間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原 告から使用許諾を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。 (オ) コスチュームを着用した被告従業員

前記(イ)及び(ウ)のとおり,本件マリオコスチューム,本件ルイージコ スチューム,本件ヨッシーコスチューム及び本件クッパコスチューム (被告標章第2の1ないし10の各コスチューム)は原告表現物の特徴\nの一部を備えるところ,これらを着用し,カートツアーの先導者として 「MARICAR」「MariCar」といった被告標章第1を表示する公道カートに\n乗車することは,前記(ウ)と同様の理由により,需要者をして,ゲーム シリーズ「マリオカート」のキャラクターである「マリオ」,「ルイー ジ」,「ヨッシー」及び「クッパ」を連想させ,その先導者と,本件レ ンタル事業の需要者の間において周知の商品等表示である原告表\現物と を類似のものと受け取らせ,被告会社と原告との間に同一の営業を営む グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存する と誤信させるおそれがある。
(カ) 本件マリオ人形
本件マリオ人形(被告標章第2の11の人形)は,原告表現物マリオ\nの特徴を全て備えており,原告表現物マリオと類似するといえる。\n そして,本件マリオ人形が設置されている被告会社の店舗において本 件レンタル事業が行なわれていること,「マリオ」等がカートの運転手 となるゲームシリーズ「マリオカート」が日本及び全世界において相当 の出荷本数を有すること(前記2(1)イ(ア))からすると,同設置行為は, 少なくとも提供している役務に関する広告において営業の出所を示す表\n示としてされたものといえ,原告表現物マリオが本件レンタル事業の需\n要者において周知の原告の商品等表示であることから,被告会社と原告\nとの間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原告から使用許諾 を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。
ウ 以上によれば,被告が,被告標章第2を使用して行った本件宣伝行為 (本件写真1の表示を除く,以下同じ。)は,原告の周知の商品等表\示と 類似する標章を商品等表示として使用しているものであり,これに接した\n需要者に対し,被告会社と原告との間に,原告と同一の商品化事業を営む グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存するも のと誤信させるものと認められる。
・・・
4 不競法に基づく本件ドメイン名の使用差止及び登録抹消請求の可否
(1) 争点7(本件ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争 に該当するか否か)について
ア 本件ドメイン名と原告文字表示の類否
原告の特定商品等表示である原告文字表\示マリカーと,本件各ドメイン 名の類否について ,本件ドメイン名のうち「.jp」,「.co.jp」及び 「.com」部分は多くのドメイン名に共通して用いられるものであるから, 出所を表示する機能\を有する部分は「maricar」又は「fuji-maricar」であり,同部分が本件各ドメイン名の要部と認められる。このうち「maricar」部分については,前記2(1)イで述べたとおり,原告文字表示マリカーと類似すると認められる。\nまた,「fuji-maricar」について,前記のとおり「maricar」部分が原 告文字表示マリカーと類似し,「fuji-」の部分は「maricar」に付加され たものと受け取ることができるものであり,「fuji-maricar」も,原告文 字表示マリカーと類似するものといえる。\n したがって,本件ドメイン名はいずれも原告文字表示マリカーと類似す\nる。
イ 図利加害目的の有無
前記2(1)イ(イ)で述べたとおり,原告文字表示マリカーは,被告会社が\n設立された平成27年6月4日の相当程度以前である平成22年頃から, 原告の販売するゲームシリーズ「マリオカート」の略称として,ゲームに 関心を有する需要者の間で全国的に知られており,被告会社がこれを認識 していなかったとは認め難いこと,被告会社は,本件訴訟提起前の平成2 9年2月23日当時,本件ドメイン名1ないし3を使用して開設したサイ ト(被告会社サイト,品川店サイト1,河口湖店サイト)において,「マ リオカート」シリーズに登場する主要キャラクターである「マリオ」「ル イージ」等のコスチュームを着用した利用者が公道カートを運転するとい う本件レンタル事業のサービス内容を写真等と共に宣伝し,「みんなでコ スプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増。」と記載しており,被 告会社の意図が,原告の「マリオカート」シリーズにおけるゲームの世界 を現実世界で体験することを売りにして顧客を惹きつけようとするもので あったと推認できることからすれば(甲6の1ないし3),被告会社は, 原告文字表示マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用することにより,\n同文字表示が有する高い知名度を利用し,原告の公認あるいは協力の下で\n本件レンタル事業を営んでいるかのような外観を作出し,不当に利益を上 げる目的があったものと認めることができる。 したがって,本件各ドメイン名の使用につき,「不正の利益を得る目的」 を有していたと認めることができる。 ウ 小括
以上によれば,被告会社は,本件レンタル事業の宣伝行為のために,不 正の利益を得る目的をもって,原告の特定商品等表示である原告文字表\示 マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用したと認められるから,同行 為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当する。
5 著作権法に基づく原告表現物の複製又は翻案の差止請求並びに本件写真等\nの抹消及び廃棄請求の可否
(1) 争点10(複製又は翻案の差止請求の可否及び範囲)について
 原告は,請求の趣旨第4項において,原告表現物の複製又は翻案の差止\nめを求め,請求の趣旨第5項において,原告表現物の複製物又は翻案物の\n自動公衆送信又は送信可能化の差止めを求めている。\n 原告表現物を複製又は翻案する行為には,広範かつ多様な行為があると\nころ,原告の請求は,絵画の著作物である原告表現物を絵画上複製すると\nいう行為がされていない本件において,差止めの対象となる行為を具体的 に特定することなく,広範かつ多様な態様な行為のすべてを差止めの対象 とするものといえ,自動公衆送信又は送信可能化の差止めについても,そ\nの差止めの対象自体を複製物又は翻案物とすることから,同様のものとい える。このような無限定な内容の行為について,被告会社がこれを行うお それがあるものとして差止めの必要性を認めるに足りる立証はされていな い。原告の前記請求には理由がない。
(2) 争点9(本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に\n当たるか否か)及び争点11(本件各コスチュームが原告表現物の複製物\n又は翻案物に当たるか否か)について
本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか\n否か(争点9)については,これらが複製物又は翻案物に当たることを前 提とする請求である請求の趣旨第4項,第5項に係る請求が前記3(1)の 理由により認められないため,判断するに及ばない。 また,原告は,請求の趣旨第11項において,本件各コスチュームが原 告表現物の複製物又は翻案物に当たることを前提として会社である被告会\n社にその貸与の禁止を求めている。本件各コスチュームである別紙貸与物 目録記載1ないし6の各コスチュームは,それぞれ,被告標章第2の2, 3,5,6,8,10のコスチュームである。ここで,不競法に基づく請 求の趣旨第6項に係る請求には被告会社がこれらのコスチュームを使用 (貸与)することの禁止を求める請求が含まれると解され,この部分は, 請求の趣旨第11項に係る請求と選択的併合の関係に立つと解される。前 記3のとおり,不競法に基づき被告会社がこれらのコスチュームの貸与を することが禁止されることによって,請求の趣旨第11項に係る請求につ いて判断をするに及ばなくなるから,本件各コスチュームが原告表現物の\n複製物又は翻案物に当たるか否か(争点11)は判断するには及ばない。

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平成29(ワ)9989  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年7月19日  大阪地方裁判所(26部)

 商標権侵害、不競法2条1項1号で差止を求めました。大阪地裁は、図形の部分に識別性が有り、文字「マタニティベルト」には識別力無しと商標権侵害を否定しました。また、不競法については、被告の使用形態が、「なが〜く使える マタニティベルト」という一連の語として使用されていないので類似しないと判断しました。判決の後ろに原告、被告の商品表示があります。\n
 次に,「なが〜く使える」の出所識別標識力について検討するに,妊 産婦用商品の販売に際して,出産前だけ又は出産後だけに限らずその両方の期間に またがって使用できる商品であることの宣伝文句として,「産前産後」も「長く使 える」や「長〜く使える」という商品表示が原告商品や被告各商品以外の妊産婦向\n5 けの商品の宣伝にも多くの例でされてきていること(本件事実経過一覧表の青色で\n着色した部分参照)に照らせば,「なが〜く使える」の語は,出産前だけでなく出 産後も長期間使用できるという商品の性質を指す語として,出所識別標識力がない と認めるのが相当である(このことは,当事者間に争いがない。)。
(ウ) そうすると,「なが〜く使える マタニティベルト」との原告表示は,\nこのような商品の性質を表す語と商品の普通名称を組み合わせた語にすぎないから,\nそれが原告商品の商品表示として周知性を獲得したとしても,その出所識別標識力\nは,「なが〜く使える マタニティベルト」という一連の語としてのみ認められる ものというべきである。
(2) 被告各商品の商品表示との類否\n被告各商品パッケージの構成(別紙被告商品パッケージ目録参照)は,別紙被告\n商品表示目録(被告主張)記載1及び2のとおりのものであり,被告商品1の商品\n表示については,リング状の図形(左半分は赤色,右半分は青色)の中に,1段目\nに「長〜く使える」の文字を,2段目に「ピジョン」の文字を,3段目に「産前産 後」の文字(産前は赤色,産後は青色)を,4段目に「マタニティ」の文字を,5 段目に「ベルト」の文字を,6段目に「助産師推奨」の文字を配して構成されてお\nり,被告商品2の商品表示については,1段目に「ピジョン」の文字を,2段目に\n「長〜く使える」の文字を,3段目に「産前産後」の文字(他の文字より大きく, かつ,連結した色の異なる2つの円形図形中に表示されている。)を,4段目に\n「マタニティベルト」の文字を配して構成されている,とそれぞれ認められる。\nこのような被告各商品パッケージの構成を被告各商品の商品表\示として捉える場 合,被告各商品の商品表示は,「長〜く使える」「マタニティベルト」の各語のほ\nかに,少なくとも「ピジョン」,「産前産後」の語が付加されている上,「ピジョ ン」の語は,育児用品等の製造販売を業とする被告が販売する商品の出所識別標識 として,取引者ないし需要者の間で広く認識された著名な表示である(「ピジョ\nン」や「PIGEON」の商標が日本有名商標集に掲載されていること〔乙42〕 や,原告被告双方から書証として提出された妊産婦向け雑誌の質,量は,これを裏 付けるに十分なものである。)から,原告表\示の出所識別標識力が「なが〜く使え る マタニティベルト」という一連の語としてのみ認められることを考慮すると, 両者は称呼及び外観を異にしており,類似するとはいえない。
また,原告が主張するとおり,被告各商品が「長〜く使える産前産後マタニティ ベルト」として宣伝広告され,紹介されていること(甲22及び25の各号,乙3 9の5ないし7)から,その商品表示を「長〜く使える産前産後マタニティベル\nト」として捉える場合であっても,原告表示の出所識別標識力が「なが〜く使える\nマタニティベルト」という一連の語としてのみ認められることを考慮すると,やは り両者は称呼及び外観を異にしており,類似するとはいえない。 したがって,いずれにせよ,被告各商品の商品表示が原告表\示と類似するとはい えない。 なお,被告各商品の商品表示を「長〜く使えるマタニティベルト」と捉えること\nについては,被告各商品パッケージの構成において「産前産後」の文字が「長〜く\n使える」の文字と「マタニティベルト」の文字との間に他と比べて大きく目立つ態 様で配置されていることや,被告各商品の上記宣伝広告や紹介においても「長〜く 使える産前産後マタニティベルト」との表示が使用されていることから,「長〜く\n使える」の文字と「マタニティベルト」の文字のみを抽出・連結して,「長〜く使 えるマタニティベルト」を被告各商品の商品表示と捉えることはできない。\n

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平成29(ワ)14637  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年7月26日  東京地方裁判所

 ウェブサイトにおけるタイトルタグ、メタタグとしての使用形態について、一部の使用形態は、商品を表示する商品等表\示であるとして、不正競争行為(2条1項1号)に該当すると判断されました。
平成28年11月1日から(タイトルタグ及びメタタグでの使用は15 日から)平成29年3月22日までの間の被告ウェブページのタイトルタ グ及びメタタグ並びに被告ウェブページにおける被告標章1及び2の使用 )について
証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によれば,被告グレイスランドは,平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに別紙1−1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載したこと,その記載によって「楽天市場」のウェブサイトで「タカギ」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した場合の検索結果の表示画面において,被告商品の写真が表\示されるとともにその横に「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ浄水器カートリッジ 浄水カートリッジ(標準タイ...」といった,被告商品の種類に対応したタイトル(上記タイトルタグ冒頭の【楽天市場】を省略した記載の冒頭部分又は上記メタタグの記載の冒頭部分と同一内容のもの)が表示されたこと,それらのタイトルの下には「グレイスランド」,「楽天市場店」と表\示されたこと,それらのタイトル部分を選択することで当該種類の被告商品を販売する被告ウェブページに移動することができたこと,その検索結果の表示画面においては上記のほかにタイトルタグに記載された説明は表\示されず,メタタグに記載された説明も表示されなかったことの各事実が認められる。\n
また,証拠(甲18)及び弁論の全趣旨によれば,上記の平成28年1 1月15日から平成29年3月22日までのタイトルタグ及びメタタグの 記載により,一般の検索サイト(Google)において「タカギ」,「浄 水器」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した場合の検索 結果の表示画面に「【楽天市場】タカギ 取付互換性のある交換用カート リッジ 浄水器カートリッジ..」といった被告商品の種類に対応したタイ トルが表示され,その下に上記タイトルより小さい文字で被告商品の種類\nに対応して「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カー トリッジ 浄水カートリッジ(高除去タイプ)※当製品はメーカー純正品 ではございません。ご理解の上,お買い求めください。」といった表示が\nされたこと,それらのタイトル部分を選択することで当該種類の被告商品 を販売する被告ウェブページに移動することができたこと,その検索結果 の表示画面のタイトル部分には上記表\示のほかにはタイトルタグに記載さ れた説明は表示されなかったことの各事実が認められる。\n 以上のとおり,平成28年11月15日から平成29年3月22日まで の間,タイトルタグ及びメタタグの記載によって,検索結果を表示するウ\nェブサイトにおいて,タイトルとして被告標章1又は2が表示され,その\n後に空白部分があり,さらにその後に商品の品名が表示されたり,説明と\nして被告標章2が表示され,その後に空白部分があり,さらにその後に商\n品の品名や説明が表示されたりした。このような態様での被告標章1及び\n2の使用は,写真や品名で説明される商品の出所を示すものであると認め ることが相当である。そして,タイトルタグやメタタグにおける記載によ って,ウェブサイトにおいて上記のような表示がされ,同サイトを閲覧し\nた者もその表示を見ることができることに照らすと,タイトルタグやメタ\nタグにおいて,被告標章1及び2は,商品を表示する商品等表\示として使 用(不競法2条1項1号)されたものと認められる。また, とおり,被告ウェブページにおいて,被告商品を購入するために商品選択 をする部分にも,別紙2−1のウェブサイトの記載欄のとおり,上記と同 様に,「タカギ」との被告標章2が表示され,その後に空白部分があり,\nさらにその後に商品の品名や説明が表示されており,これらの表\示も商品 の出所を示すものであると解するのが相当である。 これに対し,被告らは,「取付互換性のある交換用カートリッジ」,「当 製品はメーカー純正品ではございません」等といった表示があることや被\n告ウェブページ上における被告商品の外観写真が原告の純正品とは異なる ものであることなどを挙げて,タイトルタグ,メタタグ,被告ウェブペー ジにおいて,被告標章1及び2は商品の出所を表示するものとして使用さ\nれていない旨主張する。しかし,上記のとおり,被告標章1及び2の後に 空白部分があり,さらにその後に商品の品名等が記載されているという表\n示の態様,「互換性」という用語は製造販売者が同じ商品間でも用いられ ること(甲46),検索結果の表示画面において表\示される内容やそこで の説明の文字の大きさ,当該商品の性質やウェブページでの表示であるこ\nとに鑑み需要者は全ての記載を注意深く観察しない可能性が相当程度ある\nことなどに照らし,被告らの主張は採用することができない。
イ 平成29年3月23日以降の被告ウェブページのタイトルタグ及びメタ タグ並びに被告ウェブページにおける被告標章1及び2の使用(前提事実 及び 並びに証拠(甲20ないし22)及び弁論の全趣旨によれば,被告グレイスランドは,平成29年3月23日以降,被告ウェブ ページのタイトルタグ及びメタタグに別紙1−2(同年4月12日まで) 並びに同1−3及び1−4(同月13日から)のタイトルタグ欄及びメタ タグ欄のとおり記載したこと,その記載によって「楽天市場」のウェブサ イトで「タカギ」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した 場合の検索結果の表示画面に被告商品の写真及びその横に「タカギに使用\n出来る取り付け互換性のある交換用カートリッジ(標準タイプ)※ はメーカー純正...」,「【標準タイプ1本パック】タカギの浄水器に使用で きる,取付け互換性のある交換用カートリッジ。...」といった被告商品 の種類に対応したタイトル(上記タイトルタグ冒頭の【楽天市場】を省略 した記載の冒頭部分又は上記メタタグの記載の冒頭部分と同一内容のもの) が表示されたこと,それらのタイトルの下には「グレイスランド」,「楽天\n市場店」との表示がされたこと,それらのタイトル部分を選択することで\n当該種類の被告商品を販売する被告ウェブページに移動することができた こと,その検索結果の表示画面には上記表\示のほかにはタイトルタグに記 載された説明は表示されず,メタタグに記載された説明も表\示されなかっ たことの各事実が認められる。以上のとおり,平成29年3月23日以降, タイトルタグ及びメタタグの記載によって,検索結果を示すウェブサイト に上記のとおりの表示がされ,また,ウェブサイトによっては,検索結果\nの表示画面に別紙1−2,1−3,1−4のメタタグ欄記載の説明が表\示 されることになったと推認されるが,それらにおいては,いずれも「タカ ギ」というカタカナ3文字の後に「に」又は「の」という助詞が付加され, 当該商品が原告商品に対応するものであるという,商品内容を説明するま とまりのある文章が表示されている。\nそして,このような表示内容に照らせば,需要者が上記の表\示に接した場合には,それらにおける「タカギ」との表示は,当該商品が対応する商品を示すものであると受け取り,当該商品自体の出所を表\示するものであると受け取ることはないと認められる。 そうすると,平成29年3月23日以降のタイトルタグ及びメタタグにお いて,被告標章1及び2は不競法2条1項1号にいう商品等表示として使\n用されたものとはいえない。

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平成28(ワ)10736  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年2月27日  東京地方裁判所(46部)

 ポケフラットという折りたたみ傘について、周知と認定され、差止と140万円の損害賠償が認められました。
 一般的な折り畳み傘は,折り畳んで包袋に入れた状態において円筒形の形 態をしているのに対し,原告商品の形態は,折り畳んで包袋に入れた状態に おいて,原告商品形態を有しているところ,当該形態によって,原告商品は, 全体的に薄く扁平な板のような形状を有することが認められ,円筒形でない だけでなく,それが全体的に薄く,扁平な板のような形状である点で,一般 的な折り畳み傘の形状とは明らかに異なる特徴を有しているといえる。 そして,上記 のとおり,原告商品の広告では原告商品が薄いことが強調 されたこと(上記 ウ ),発売から間もない平成17年1月頃に日本経済 新聞社が主催する2004年日経優秀製品・サービス賞の優秀賞及び日経産 業新聞賞を受賞し,原告商品の形態が説明された上で「新しい時代に先駆け た独創的な新製品」との評価を受けたこと(上記 カ),新聞,雑誌,テレビ 番組等の多数のメディアにおいて原告商品が取り上げられたところ,そこで は原告商品が薄いことが強調されていること(上記 エ),そもそも原告商 品の形態がそれまでの商品の形態とは明らかに異なる原告商品形態である ことから上記のような多数の媒体で取り上げられたと考えられること,一般 消費者もインターネット上の商品販売サイト等に原告商品が薄いとの原告 商品形態を強調する感想を多く書き込んでいること(上記 オ)などからす ると,原告商品は需要者に対し,全体的に薄く扁平な板のような形状を有す る商品であるという強い印象を与えるものといえる。そうすると,原告商品形態は,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していたといえ,原告商品形態には特別顕著性があるといえる。
イ これに対し,被告は,原告商品の他にも折り畳んで包袋に入れた状態が薄 く扁平な板のような形状となる折り畳み傘(乙5(乙15〜17は乙5の折 り畳み傘の写真である。),7,18〜21)や折り畳んだときの形状が薄く 扁平な板のような形状になる折り畳み傘の骨組み(乙10,11,13)が 存在し,このうち,乙第5号証及び乙第7号証の商品は原告商品が販売され るより前から販売されていたこと,折り畳んだときの傘の骨組みが直方体と なる形状の実用新案登録及び特許出願もされていた(乙1〜4)ことから, 薄く扁平な板のような形状を有する折り畳み傘はありふれた形態であって 原告商品形態に特別顕著性はない旨主張する。
しかし,原告商品が販売される前から,一定の形状の折り畳み傘の骨組み が存在し,また,骨組みの形状に関する実用新案登録等がされていたとして も,それは骨組みに関するものであって,それを利用した折り畳み傘の形態 は不明であり,折り畳み傘の形態としての原告商品形態の特別顕著性の有無 を直ちに左右するものとはいえない。また,被告が指摘する商品(乙5,7, 18〜21)には,折り畳んで包袋に入れた状態が円筒形ではなく,直方体 に似た形状を有するものもある。しかし,被告が指摘する商品はいずれも販 売数量及び売上高は明らかになっておらず,市場において広く流通している 商品であると認めるに足りる証拠はないこと,乙第5号証及び乙第7号証の 商品は既に販売が終了していること(乙6,8,41)などからすると,上 記各商品によって,原告商品形態がありふれており,他の商品と識別し得る 特徴を有しないとはいえない。

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平成29(ワ)5423  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年3月26日  東京地方裁判所(29部)

 少し前の判決ですが漏れていたのでアップします。中古購入した原告商品の一部を組み込んだ別の商品を製作しました。裁判所は、不競法の著名商品等表示であるとして、約170万円の存在賠償を認めました。判決文の最後に、被告商品が掲載されています。
 被告は,被告は被告各商品に原告標章の一部を使用したが,それは飽くまでデザイ ンとしての使用であり,原告標章と同一又は類似のものを商品等表示として使用した\n商品を販売等していない旨主張するので検討する。
不正競争防止法2条1項2号の趣旨は,著名な商品等表示について,その顧客吸引\n力を利用するただ乗りを防止するとともに,その出所表示機能\及び品質表示機能\が稀 釈化により害されることを防止するところにあると解されるから,同号の不正競争行 為というためには,単に他人の著名な商品等表示と同一又は類似の表\示を商品に付し ているというだけでは足りず,それが商品の出所を表示し,自他商品を識別する機能\ を果たす態様で用いられていることを要するというべきである。 これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告はバッグ類,袋物及び被服等 で知られる世界的に著名な高級ブランドを擁するフランス法人であるところ,原告標 章は,1896年から現在まで原告商品に使用されて世界的に広く知られる標章であ り,原告商品にのみ付され,大規模かつ継続的な宣伝広告により,著名性を有するも のであることからすれば,高い出所識別機能を有する商品等表\示として使用されてい るものである。そして,その使用態様は,商品に応じて原告モノグラム表示の一部を\n切り取って商品に付されて使用されるという特徴を有しており,必ずしも「LOUI S VUITTON」との文字商標を必要とはしていない。
被告標章1ないし7は,原告標章を構成する原告記号aないしdと同一の記号によ\nり構成され,その配置も原告標章と同一なものの一部分であり,被告標章8は,被告\n記号eや,被告記号aないしdをカラーにした点が異なるが,それらの記号が原告標 章と同一の配置とされたものの一部分であり,被告各商品に応じて被告各標章の一部 を切り取って商品に付されて使用されている。 このような被告各標章の使用態様からすると,被告各標章は出所識別機能を有する\n態様で用いられているものと認められ,デザインとしての使用であり商品等表示とし\nて使用ではない旨の被告の主張は採用できない。

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平成28(ワ)30183  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年5月11日  東京地方裁判所(40部)

 「SAPIX 8月マンスリー」「SAPIX生のための復習用教材」「SAPIX今週の戦略ポイント Daily Support」)等と使用することは、自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられていないので、不競法2条1項1号の「使用」には該当しないと判断されました。
 原告は,不競法2条1項1号にいう「使用」の意義について,自他識別力 のある使用といえるかどうかは独立の要件ではなく,営業主体の混同のおそ れの有無の判断において考慮すべき要素にすぎないと主張する。しかし,同 号は,人の業務に係る商品又は営業(以下「商品等」という。)の表示につ\nいて,その商品等の出所を表示して自他商品等を識別する機能\,その品質を 保証する機能及びその顧客吸引力を保護し,事業者間の公正な競争を確保す\nることを趣旨とするものであるから,同号にいう「使用」というためには, 単に他人の周知の商品等表示と同一又は類似の表\示を商品等に付しているの みならず,その表示が商品等の出所を表\示し,自他商品等を識別する機能を\n果たす態様で用いられていることを要するというべきである。
ア 本件表示1〜3
これを前提として,被告のホームページ上の本件表示1〜3について検\n討するに,前記認定のとおり,被告のホームページには,そのヘッダー部 に被告学習塾の名称が表示され,またメインコンテンツ部には「中学受験\nドクターのプロ講師による」との記載があるのであるから,同ホームペー ジに掲載されたサービスの提供主体が被告であることは明らかである。 また,メインコンテンツ部の最上部の囲み枠に「塾別!今週の戦略ポイ ント」「SAPIX・日能研・四谷早稲アカの授業の要点を毎週解説!」\nなどと記載されていることによれば,被告が原告学習塾のみならず他の大 手学習塾の授業の解説を行っていることは容易に理解し得る。 その上で,本件表示1〜3をみると,本件表\示1(「SAPIX 8月 マンスリー」)は,その表示がされたバナー内の他の記載と併せ考慮する\nと,被告の行うライブ解説の対象が原告学習塾のマンスリーテストである と理解し得るのであり,その解説の主体が原告又はその子会社等であるこ とを表示するものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは\n認められない。
次に,本件表示2(「SAPIX生のための復習用教材」)についても,\n原告学習塾に通う生徒のための復習教材を被告が販売していると理解し得 るのであり,その教材の販売主体が原告又はその子会社等であることを表\n示するものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは認めら れない。 さらに,本件表示3(「SAPIX今週の戦略ポイント Daily Support」) についても,解説等の対象が原告学習塾の教材であることを意味するにす ぎず,その教材の販売主体が原告又はその子会社等であることを表示する\nものではなく,またそのように誤認されるおそれがあるとは認められない。  以上によれば,本件表示1〜3は,いずれも,商品等の出所を表\示し, 自他商品等を識別する機能を果たす態様で用いられているものということ\nはできない。

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平成28(ワ)6074  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成30年4月17日  大阪地方裁判所

 周知標章「堂島ロール」に基づく不競法2条1項1号に基づいて、約3400万円の損害賠償が認められました。被告標章は「堂島プレミアムロール」です。損害額は被告の1つあたりの利益*箱数から判断されました。被告は冷凍としてスーパーなど販売していましたが、混同すると判断されました。
 被告標章1及び4である「堂島プレミアムロール」は,「堂島」,「プレミアム」,「ロール」の3語で構成されているが,この\nうち,「プレミアム」との語は,優れたあるいは高品質なものを意味する語であり, 商品が優れたり,高品質なものであったりすることを表現するため商品名に「プレ\nミアム」という文字が付加される例も多い(乙C7の1,2,乙C8の1参照)こ とが一般的に認められるから,「プレミアム」の部分は,これと結合する他の単語 で表示される商品の品質を表\すものと理解され,商品の出所識別機能があるものと\nは認められない。他方,「堂島」は地名,「ロール」は「ロールケーキ」の普通名 詞の略称を表す語であるが,「プレミアム」が上記のとおり,品質を示す意味しか\n有しないことからすると,「プレミアム」を挟んで分離されているものの,被告標 章1及び4からは,プレミアムな,すなわち高品質な「堂島ロール」との観念が生 じ,これは原告の商品等表示として周知である「堂島ロール」の観念と類似してい\nるといえるし,また称呼も同様に類似しているといえる。 そうすると,被告標章1及び4と原告標章とは,被告標章4のみならず字体に特 徴のある被告標章1を含め,取引者,需要者が外観,称呼又は観念の同一性に基づ く印象,記憶,連想等から,両者を全体として類似のものとして受け取るおそれが あるというべきである。
ウ また被告標章2については,「(株)堂島プレミアム」と「プレミアムロー ル」との語を2段重ねで一体的に表示したものであるが,「(株)」というのは会\n社の種類を示す株式会社の略語にすぎないから,これ自体に出所識別機能は認めら\nれない。そこで,これを除くと,被告標章2は,「堂島プレミアム」と「プレミア ムロール」が2段重ねで一体化している表示であるが,上段,下段で重複して使用\nされている「プレミアム」という語は,上記で判示したとおり,独自の出所識別機 能を有しない語であるし,また取引の現場では長い名称の商品名は略して称呼され,\n観念されることが多いと考えられるから,繰り返される「プレミアム」の部分は一 単語に省略され,さらにそれ自体の出所識別機能がないことも合わさって,「堂島\nプレミアム,プレミアムロール」から,「堂島」と「ロール」という2語が需要者 に強く印象付けられると考えられる。したがって,被告標章2からは被告標章1及 び4についてみたのと同様,プレミアムな,すなわち高品質な「堂島ロール」とい う観念が生じるということができ,これは原告の商品等表示として周知である「堂\n島ロール」の観念と類似しているといえる。 また,称呼の点も,同様に「ドウジマプレミアムロール」との称呼が生じるとい えるから,原告標章の「ドウジマロール」との称呼と類似しているといえる。 そうすると,被告標章2と原告標章とは,取引者,需要者が外観,称呼又は観念 の同一性に基づく印象,記憶,連想等から,両者を全体として類似のものとして受 け取るおそれがあるというべきである。
エ さらに被告標章3は,被告標章2の上段部分の「(株)堂島プレミアム」部分 を,下段の「プレミアムロール」より小さな文字で表示しているものであるが,上\n下段の一体性を損なうほど,文字の大きさに差はないから,被告標章2と同様の理 由から,取引者,需要者は被告標章3と原告標章を類似のものと受け取るおそれが あるということができる。
オ 被告標章5は,被告標章2及び3の「(株)」の部分を「株式会社」,「(株)」 又は同部分に相当する部分がないものとしている標章であるが(ただし,2段重ね という限定はない。),「(株)」については既に説示したとおりであり,「株式会 社」についても,単なる会社の種類を表示する語にすぎないから,これが全くない\n場合も含め,被告標章5と原告標章が類似しているといってよいことは,上記ウ, エで説示したところと同じである。
カ 以上のとおり,被告標章は,いずれも原告標章と類似しているものと認めら れる。
・・・
P1は,被告会社設立時のただ一人の取締役として代表取締役を務め,平成\n26年8月1日まで,その職にあったが,その間,被告標章1を使用した被告商品 をP3に委託して製造し,P4に販売していた(甲3)。
イ P1が代表取締役を務めている間に,被告会社は,原告から平成24年11\n月14日付け及び同年12月13日付けの内容証明郵便で,被告標章1の使用が不 正競争行為に当たる旨の警告を受け,被告会社は被告標章1の使用を平成25年4 月頃に止め,その後,被告標章2を使用した被告商品を販売するようになった。な お,被告標章2を使用した被告商品の一括表示には,被告商品の箱記載の商品名で\nある被告標章2とは異なる被告標章4が記載されていた(甲24)。
ウ P2は,平成26年8月1日付けで被告会社の取締役に就任するともに代表\n取締役に就任し,同日,P1は,被告会社の代表取締役及び取締役を辞任した。ま\nた,被告会社は,同日付けで本件所在地をリーガロイヤルホテル大阪の住所地に移 転する旨の登記をした(甲3,甲23)。
エ 原告は,同年9月29日付けで,被告会社宛てに変更後の被告標章2の使用 も不正競争行為に当たる旨警告する内容証明郵便を送付したが,リーガロイヤルホ テル大阪の住所地へは郵送できなかった(甲22,甲24)。
オ 被告会社は,平成27年4月頃,被告標章2の使用を止め,同月頃から被告 商品に被告標章3を使用するようになった。
・・・
(2) 以上よりP1及びP2の会社法429条1項の損害賠償責任の有無について 検討するに,P1は,原告標章が周知となった後に設立された被告会社の唯一の取 締役であり,代表取締役として原告標章に類似する被告標章1を使用して,その唯\n一の事業である被告商品の販売事業を遂行していたものであり,その間,原告から 不正競争である旨の警告を受けるも,使用標章を類似の範囲にある被告標章2に変 更するに留めて同事業を継続させていたものである。 そしてP2は,平成26年8月1日にP1に替わって取締役に就任すると同時に 代表取締役に就任し,上記事業の遂行責任者となった者であるが,就任と同時に,\nその本店所在地を,リーガロイヤルホテル大阪の所在地に移転登記するなど,被告 商品の販売事業者を対外的に不明な状態にし,また原告が仮処分命令を申し立てた\n後も,これを争って,その販売を継続して事業を遂行し,本件仮処分命令が発令さ れた後も,販売先であるP4においては被告商品の販売を継続していた。 したがって,以上によれば,P1及びP2は,ともに被告会社が違法行為となる 不正競争行為に該当する事業を取締役として積極的に遂行したものとして,その職 務を行うことについて悪意とまで断ずることができなくとも,少なくとも重大な過 失があったことが認められるから,会社法429条1項に基づき,その在任期間に 上記不正競争により原告に生じた損害を賠償する責任があるものというべきである。
・・・
以上より,被告会社が,被告商品を販売したことにより受けた利益の額は,上記 ア認定の被告商品1個当たりの利益の額145円に上記イ認定の販売数量23万6 280個乗じて認定される3426万0600円であると認められる。

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平成29(ネ)10083  不正競争行為差止請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴人は、無印良品のユニット棚について、他人の意匠権侵害となる商品であるので、権利濫用であると追加主張しましたが、否定されました。なお、時期に後れたかの論点については、時期に後れているが、訴訟の簡潔を遅延させるものではないと判断されました。
1 時機に後れた攻撃防御方法について 被控訴人は,控訴人の当審における各主張及び各証拠の提出が時機に後れた攻撃 防御方法であるとして,当該攻撃防御方法の却下の申立てをした。\nそこで検討するに,控訴人の上記各主張及び各証拠は,原審口頭弁論終結時まで に容易に提出し得たものと認められるから,時機に後れたものというほかない。し かしながら,当該攻撃防御方法の内容に照らすと,実質的には,控訴人の原審にお ける従前の主張を補充的に繰り返すものにすぎず,これにより訴訟の完結を遅延さ せることになるものとは認められない。 したがって,被控訴人の上記申立ては,却下するのが相当である。\n
・・・・
控訴人は,被控訴人の請求は公正な競争秩序の維持を目的とする不正競争防止法 の趣旨に反するものであって,明らかにクリーンハンズ原則に反する請求であり, 権利の濫用であると主張する。 そこで検討するに,現行法上,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法, 著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し, 一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その 反面として,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約 することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内 容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にして いる(最高裁平成13年(受)第866号,第867号同16年2月13日第二小 法廷判決・民集58巻2号311頁)。 上記各法律の趣旨,目的に鑑みると,不正競争防止法2条にいう不正競争によっ て利益を侵害された者が他人の意匠権を侵害する事実が認められる場合であっても 当該意匠権の侵害行為は意匠法が規律の対象とするものであるから,当該事実のみ によっては,直ちに被控訴人が不正競争によって利益を害された者による不正競争 防止法に規定する請求権の行使を制限する理由とはならないと解するのが相当であ る。 これを本件についてみると,仮に,被控訴人商品が訴外株式会社ヤマグチの意匠 権を侵害していたとしても(なお,控訴人は,侵害の有無について,被控訴人商品 の形態が要部において上記意匠権と類似している点のみを主張する。),上記のとお り,このような事実のみによっては,直ちに不正競争防止法に規定する請求権の行 使を制限する理由とはならないというべきである。かえって,前記引用に係る原判 決の認定事実によれば,控訴人商品は,被控訴人商品形態の形態的特徴1)ないし6) を全て模倣するものであって,控訴人商品を販売する行為は,被控訴人商品の出所 について混同を明らかに生じさせることからすれば,事業者間の公正な競争を確保 するという不正競争防止法の趣旨,目的に鑑みると,競争秩序を著しく乱すもので あって,これを規制する必要性が高いものといえる。 そうすると,被控訴人による差止請求及び廃棄請求は,権利の濫用に当たらない と認めるのが相当である。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成28(ワ)25472

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平成28(ワ)39582  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年9月28日  東京地方裁判所

 業務用ハカリの形状について、不競法2条1項1号にいう「商品等表示」ではないと判断されました。理由は、一部の形状については、独占性を認めてくれましたが、周知まではとはいえない、そして、原告主張の部分は、ありふれている、というものです。
 不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」とは,「人の業務に係る\n氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を 表示するもの」をいうところ,商品の形態は,商標等と異なり,本来的には\n商品の出所を表示する目的を有するものではないが,商品の形態自体が特定\nの出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。そして,商品の形\n態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し,不正競争防止法2条1項\n1号にいう「商品等表示」に該当するためには,1)商品の形態が客観的に他 の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その 形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣 伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品 が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)\nを要すると解するのが相当である。
・・・
以上のとおり,被告商品の販売が開始された平成27年2月時点ま でに,奥側から手前側に向かって下方向に緩やかに傾斜した計量台とい う構成を備えている重量検品ピッキングカートや,奥側から手前側に向\nかって下方向に緩やかに傾斜した台を備えているピッキングカートが相 当数存在し,その他にも,ショッピングカート等において,被収容物を 収容するためのかご等を載置する部分を奥側から手前側に向かって下方 向に緩やかに傾斜させる構造も従来から多数存在したものである。これ\nらの事実によれば,重量検品ピッキングカートにおいて,「上下段にピ ッキングされた商品を入れるコンテナ,段ボール,トレイ等を置く計量 台が作業者の奥側から手前側に向かって下方向に緩やかに前傾し,」と いう構成(本件特徴1)’)は,ごくありふれた構成というべきであり,\nそれが,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴であるとは到底認 められない。
・・・
以上のとおり,被告商品の販売が開始された平成27年2月時点ま でに,先端を略半円状ないしそれに近い形状に上向きに湾曲させた2本 の(独立した)把持部という構成を備えている重量検品ピッキングカー\nトやピッキングカートが相当数存在し,その他にも,ベビーカーにおい て,把持部の先端が上向きの略半円状ないしそれに近い形状となってい る構成も多数存在するものである。これらの事実によれば,重量検品ピ\nッキングカートにおいて,「カート上段の左右端に設置された2本の把 持部の先端が略半円状に上向きに湾曲している」という構成(本件特徴\n2))も,ごくありふれた構成というべきであり,それが,客観的に他の\n同種商品とは異なる顕著な特徴であるとは到底認められない。
エ 特別顕著性についての小括
上記イ及びウのとおり,本件特徴1)’及び2)は,いずれもありふれた形 態というべきであり,客観的に他の同種商品と異なる顕著な特徴とはいえ ない。なお,ありふれた形態を併せただけでは,顕著な特徴とはいえない し,そもそも,上記イ及びウのとおり,本件特徴1)’及び2)の両方を備え る他の同種製品も,被告製品の販売開始時までに存在している(株式会社 イシダの「さいまるカート」(乙4及び乙5),株式会社IHIエスキュ ーブの「計量検品ピッキングカート(4ハカリ)」(乙6),株式会社椿 本チエインの「つばきクイックカート」(乙11))。 したがって,原告の主張を善解してもなお,原告商品の形態は,客観的 に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているということはできず, 不正競争防止法2条1項1号の商品等表示には当たらない。\n(なお,上記認定のとおり,本件特徴1)’及び2)は,原告により独占的に 使用されてきたとは認められないし,また,原告の製造販売する重量検品 ピッキングカートに係るカタログ(甲1〜4)及び広告記事等(甲5の1 ないし12,6,17〜50)においても,本件特徴1)’及び2)が商品の 特徴として強調されているとは認められないから,これらの事情によれば, 本件特徴1)’及び2)が原告の商品等表示として周知になっているとも認め\nられない。)

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平成28(ワ)25472  不正競争行為差止請求事件  不正競争 平成29年8月31日  東京地方裁判所(46部)

 無印良品の棚について、不競法2条1項1号の商品等表示であると認定されました。判決文の最後に、原告・被告の商品が記載されています。
 原告商品は,外観が別紙原告商品目録記載の各図のとおりのものであ り,原告商品形態1)〜6)を有する。すなわち,原告商品は,組立て式の 棚として,側面の帆立(原告商品形態1)),棚板の配置(原告商品形態 3)),背側のクロスバー(原告商品形態4))が特定の形態を有するほか, 帆立の支柱が直径の細い棒材を2本束ねたものであるという特徴的な形 態(原告商品形態2))を有し,また直径の細い棒材からなる帆立の横桟 及びクロスバー(原告商品形態5))も特定の形態を有するもので,それ らを全て組合せ,かつ,全体として,上記の要素のみから構成される骨\n組み様の外観を有するもの(原告商品形態6))である。このような原告 商品形態は原告商品全体にわたり,商品を見た際に原告商品形態1)〜6) の全てが視覚的に認識されるものであるところ,原告は,原告商品の形 態的特徴として原告商品形態1)〜6)が組み合わされた原告商品形態を主 張するので,以下,上記原告商品形態が他の同種商品と識別し得る顕著 な特徴を有するか否かを検討する。
ここで,原告商品及び同種の棚の構成要素として,帆立,棚板,クロ\nスバー,支柱等があるところ,これらの要素について,それぞれ複数の 構成があり得て(前記(1)ケ),また,それらの組合せも様々なものがあ り,さらに,上記要素以外にどのような要素を付加するかについても選 択の余地がある。原告商品は,原告商品と同種の棚を構成する各要素に\nついて,上記のとおりそれぞれ内容が特定された形態(原告商品形態1) 〜5))が組み合わされ,かつ,これに付加する要素がない(原告商品形 態6))ものであるから,原告商品形態は多くの選択肢から選択された形 態である。そして,原告商品形態を有する原告商品は,帆立の支柱が直 径の細い棒材を2本束ねたという特徴的な形態に加えクロスバーも特定 の形態を有し,細い棒材を構成要素に用いる一方で棚板を平滑なものと\nし,他の要素を排したことにより骨組み様の外観を有する。原告商品は, このような形態であることにより特にシンプルですっきりしたという印 象を与える外観を有するとの特徴を有するもので,全体的なまとまり感 があると評されることもあったものであり(同キ),原告商品全体とし て,原告商品形態を有することによって需要者に強い印象を与えるもの といえる。このことに平成20年頃まで原告商品形態を有する同種の製 品があったとは認められないこと(同ク)を併せ考えると,平成16年 頃の時点において,原告商品形態は客観的に明らかに他の同種商品と識 別し得る顕著な特徴を有していたと認めることが相当である。 イ 被告は,原告商品形態1)〜6)のうちの各個別の形態を取り上げ,それら がありふれた形態であり,原告商品が他の同種の商品と識別し得る特徴を 有しない旨主張する。
しかし,前記アに述べたところに照らし,原告商品形態が他の同種の商 品と識別し得る特徴を有するといえるか否かを検討する際は,原告商品形 態1)〜6)のうちの個別の各形態がありふれている形態であるか否かではな く,原告商品形態1)〜6)の形態を組み合わせた原告商品形態がありふれた 形態であるかを検討すべきである。したがって,原告商品形態1)〜6)のう ちの各個別の形態にありふれたものがあることを理由として原告商品形態 が商品等表示とならなくなるものではない。\nまた,被告は,原告商品形態1)〜6)のうちの各個別の形態について,特 有の機能等を得るために不可避的に採用せざるを得ない形態である旨主張\nする。しかし,上記各個別の形態について,原告商品形態とは異なる構成\nを採ることができ(前記(1)ケ),かつ,原告商品形態が上記各個別の形態 の組合せからなることに照らせば,原告商品形態が特定の機能等を得るた\nめに不可避的に採用せざるを得ない構成であるとの被告の主張は採用する\nことができない。
ウ 原告商品は平成9年1月頃から販売されたところ,被告は,原告商品形 態を備えた商品が平成元年頃から日本国内で販売されていたことを主張す る。 前記(1)クのとおり,平成元年頃から,少なくとも原告商品形態2),3)及 び5)を備えた「ETAGAIR」という名称の商品が販売された。しかし, 当該商品は,少なくとも,帆立について一方向に斜めの棒が含まれ,背面 にクロスバーがなく,原告商品形態1),4)を備えず,原告商品形態を備え ているとはいえない。そして,このことから上記商品と原告商品の外観上 の特徴は異なるといえるのであって,上記商品の販売の事実によって,原 告商品形態がありふれたものであるとか,他の商品と識別し得る特徴とは ならないということはできない。
 エ 被告は,原告商品のほかにも原告商品形態を有する商品が販売されてい ると主張して,原告商品形態には,識別力がない旨主張する。 しかし,上記で被告が主張する商品について認められる事実は前記(1)ク のとおりであり,その商品の販売が開始された時期は早くても平成20年 頃である。したがって,平成20年より前に原告商品形態がありふれたも のであったことを認めるに足りない。そして,後記(4)のとおり,原告商品 形態は,平成16年頃には,原告の商品であることを示す識別力を有した と認められる。また,被告が指摘する商品は,年間の売上高も原告商品と 比べて多くなく,製造販売期間も長いとはいえず,現在では販売を終了し たものもある。そうすると,原告商品形態が平成16年頃に原告の商品を 示すものとしての識別力を有した後,上記商品によって,原告商品形態が ありふれたものになり,他の商品と識別し得る特徴を有することがなくな ったとはいえない。

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平成27(ワ)24688  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年6月28日  東京地方裁判所

 不規則充填物(化学工場等の充填塔と呼ばれる装置の内部に充填され塔内でのガス吸収操作などを行うための部材)について、周知商品等表示に該当すると認定されました。
 不競法2条1項1号の趣旨は,周知な商品等表示の有する出所表\示機能\nを保護するため,周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自\n己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止することにより,同 法の目的である事業者間の公正な競争を確保することにある。 商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的\nを有するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的\n意味を有するに至る場合がある。そして,このように商品の形態自体が特 定の出所を表示する二次的意味を有し,不競法2条1項1号にいう「商品\n等表示」に該当するためには,1)商品の形態が客観的に他の同種商品とは 異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その形態が特定 の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や 爆発的な販売実績等により(周知性),需要者においてその形態を有する 商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていることを\n要すると解するのが相当である。
イ これを本件について検討するに,前記第2の2(2)及び上記第4の1(1) アないしオによれば,原告製品は,原告主張に係る原告製品の形態的特徴 のうち,1)中央リングと中央リングの周囲から外側に向かって放射状に延 伸する多数の周辺リングからなり,これら周辺リングと中央リングとは略 直交するように一体化されている形状について共通した特徴を有している 点,2)原告商品のうちL型,M型,S型については,上記1)に加えて,周 辺リングの外側を外周リングで囲繞する構成を付加した形状を有する点,\n3)原告商品のうちS−II型,LL型,L−II型については,上記1)及び2) に加えて,隣接する周辺リング同士を連結部材で連結するとともに,周辺 リングの一部には外環リングと直交する半径方向に縦棒を付加した構造を\n有する点がそれぞれ認められ,当該形態は,上記(1)カの他の充填物とは明 らかに異なる特徴を有していることからすれば,上記に掲げた点において, 特別顕著性が認められる。 さらに,上記(1)アないしオによれば,原告製品はいずれも,日本国内に おいて,1)販売開始当初の頃から,その形状を撮影した写真等と共に,全 国的に宣伝広告され,文献や業界誌にも多数掲載されていたことが認めら れ,2)また,需要者である不規則充填物の購入者間において需要が高く, 直接の販売あるいは代理店を通じて,相当多数が販売されてきたものと推 認できる。したがって,周知性が認められる。
 ウ この点に関し被告は,不規則充填物は,商品の陳列棚に陳列される物と は異なり,技術評価も経た上で採用に至るものであることからすれば,原 告商品の形態が商品等表示として需要者に認識されるような取引形態では\nない旨主張する。 しかし,原告商品の形態が多数の広告,文献,雑誌等に写真や図付きで 紹介されているものが多いこと,実際の注文においても,不規則充填物の 形状に基づいて見積り依頼がされる場合があること(甲108)からすれ ば,不規則充填物の取引形態が被告の主張のとおりの取引形態であると認 めることはできず,原告商品について,需要者がその形態を認識していな いとみることはできない。

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平成28(ワ)37209  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年6月22日  東京地方裁判所

 不競法2条1項1号の不正競争に該当するとして、差止などを請求しましたが、原告の商品等表示は一地方であり、被告が当該地域で店舗をやる予\定もないので、周知か否かを検討することなく、請求棄却されました。
 原告らは,アロマテラピーサロンの需要者の間では原告ら表示が全国的に\n周知である旨主張する。 しかし,前記前提となる事実 及び 並びに前記 の各認定事実によれば, 原告ら営業が行われている範囲は帯広市及び帯広市に隣接するA町にとどま り,原告第一ホテルによるアロマテラピーに関する施術等の提供先やセミナ ーの実施先も帯広市内に所在するものであること,原告らサロン甲ホテル店 の開業に関する記事は十勝地方の地方紙に掲載されたのみであること,原告\nらサロンに関する広告が掲載された媒体は十勝地方,その中でも帯広市及び\nA町に多く配布されている生活情報誌であり,全国的に配布されているもの でないこと,原告らサロンに関する記事が全国誌に掲載されたのは1誌に1 回であること,上記全国誌や旅行会社のウェブサイトにおける原告らサロン についての記載は付随的なものにすぎないことが明らかである。なお,原告 らは,原告ら表示の周知性を基礎付ける事実として,原告らサロンのプロデ\nューサーが著名であることや乙が多くの取材を受けたことなども主張してい るが,これらは原告らサロンや原告ら表示の周知性に直ちに結びつくもので\nはないから,この点に関する原告らの主張は失当である。 これらの事情に照らせば,原告ら表示は,十\勝地方以外の地域のアロマテ ラピーサロンの利用者に広く知られていたとは認められない。そして,被告 は全国に店舗を展開して営業を行っているものの,十勝地方においては営業\nを行っておらず(前記前提となる事実 イ),十勝地方に店舗を設ける具体\n的な予定があるといった事情もうかがわれない。そうすると,原告ら表\示が 十勝地方において周知であるかについて検討するまでもなく,被告が原告ら\nとの関係において不正競争防止法2条1項1号に該当する不正競争を行って いるとは認められない。

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平成28(ネ)10058  不正競争行為差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成28年10月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 食品パッケージのデザインについて、周知の商品等表示(不競法2条1項1号)ではないと判断されました。判決文の最後に双方の形状が記載されています。
また,背景の基調色が濃紺色であること自体が商品の出所を表示するものであると認めるに足りる証拠はない。証拠(甲34の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,各食品メーカーは,同種の自社製品につき,同じ形状とレイアウトデザインの包装用袋を採用し,製造者又は販売者を示す標章を記載しつつ,商品ごとに部分的に記載内容や基調色を変えることを,一般的に行っており,そのような一連の商品が多数市場に流通していると認められるところ,一般消費者も,これを認識して購買しており,包装用袋の形状及びレイアウトデザインの特徴,製造者又は販売者を示す標章によって,その商品の出所を識別するのが通常であり,背景の基調色が,前記の各点以上に重要な考慮要素とされているとは考え難い。画像や文字を目立たせるために,黄色に対して青紫色などの反対色を背景に着色することは,一般的には,よく行われる色彩の選択であり,食品ないしサラダの包装用袋の商品表\示において,かかる配色が従前なかったとしても,そのことのみをもって,前記認定を左右するとは認められない。
・・・・
しかしながら,食品において,種々の新製品が開発され,流通に置かれていることは,公知の事実であり,以前に控訴人表示のような表\示がなかったことのみをもって,控訴人表示が自他商品識別力を有するに至るとは考えられない。商品名を表\示の上部などの読みやすい位置に大きく表示し,背景色が濃色の場合は白抜きにすることは,ありふれた表\示であるといわざるを得ないし,食品において,その包装用袋の一部を透明にして内容物を当該袋の外から見られるようにすることも,ありふれた表示である(甲34の1,2)。前記認定のとおり,控訴人表\示の左上の標章の部分を除けば,その余の表示部分が,自他商品識別力を有するに至っているとは認められない。したがって,控訴人の前記主張は,採用できない。\n

◆判決本文

◆原審はこちら。平成27(ワ)28027

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平成27(ワ)2504  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年10月13日  大阪地方裁判所

 図形商標については非類似と認定しましたが、不競法に基づく損害賠償として売り上げの1%が認定されました。
 原告は,原告標章1の上下に2本の直線を追加すると,「Z」との文字が浮かび 上がり,被告標章1も,原告標章1を構成する2つの三角形状の図形にそれぞれ3本の白線を追加したものにすぎず,同様に「Z」の文字が浮かび上がるもので,両 者は類似する旨主張する。 しかし,標章の上下に2本の直線を追加すると「Z」の文字が浮かび上がるとい ったことは,需要者が容易に認識し得るものではないことからすれば,この点が類 否に影響を及ぼすものではない。 原告標章1は,一辺を曲面の凹面で切り取られた赤色の鈍角三角形2つが上下に 凹面が来るように点対称に配置された旗のようなマークであり,被告標章1は,原 告標章1に,対置する底面に平行な3本の白い線を各鈍角三角形部分に入れたもの であるので,確かに,外周の形態及び色は類似しているといえるが,本体である鈍 角三角形に縞模様が入っているか否かは需要者が容易に区別し得るものであり,相 当異なる印象を与えるものであるから,原告標章1と被告標章1を全体として見比 べると,相当異なるものであることは一見して明らかである。 したがって,被告標章1は,原告標章1とは類似しないというべきである。
3 争点3(被告は被告各標章及び本件ドメインを使用しているか)について
 被告が運営する被告2店舗は,原告標章2,7を外壁に掲げた原告店舗の近隣に あって競業関係にあり,しかも周知商品等表示である原告各標章5ないし7に類似する被告標章11,12を店舗の出入口に掲げていたというのであり,またその店\n舗名に「ゼンシン」という原告及び「全秦グループ」を他から識別する部分を含ん でいたというのであるから,その開業当初は,需要者である遊戯客に原告店舗ない し原告との関係につき一定の誤認混同を生じさせたことは優に認められるといえる (上記ア(オ)dのとおり,取引業者であるが,現に誤認混同していた実例も認められ ている。)。 しかし,上記ア(エ)によれば,そもそもパチンコ店等の需要者である遊戯客による 店舗選択は,当該パチンコ店等の経営主体がどこであるとか,どのパチンコ店グル ープの店舗であるかということを重視するのではなく,パチンコやパチスロの台の 機能や機種,出玉感,交換率等の個別店舗の具体的営業内容そのものを主要な選択要素として決せられることが認められ,これからすると当該店舗の営業主体の誤認\n混同が当該店舗の選択,ひいてはその売上げあるいは損害に結び付く関係は薄弱で あるということができる。 なお上記ア(エ)からは,需要者である遊戯客には,店員の接客態度や店舗が清潔に 清掃されているか等のサービスについても選択時に考慮する要素としている者がい ることも認められるから,それらの需要者であれば,店舗の営業主体を指し示す営 業表示を手掛かりに当該店舗で受けられるサービスを期待して店舗選択をする可能\ 性があることは否定できない。しかし,需要者であるパチンコ店等の遊戯客は,パ チンコ店を極めて頻回に利用するのが一般的であるというのであるから(週1日の 利用でも年間72日の利用になる。),仮に被告2店舗の需要者の利用が,被告標 章の使用によりもたらされた被告店舗が原告と関係する店舗であるとの誤認混同か ら始まったとしても,当該店舗のサービスを実際に経験している以上,その後の継 続的利用が原告と被告2店舗との関係についての誤認混同の影響によりもたらされ ているとは考え難いところである。 そして,そもそも原告店舗及び被告2店舗とも隠岐の島という需要者が限られた 市場の中で他の4店舗とも競合している店舗であるが,被告2店舗のうち,ゼンシ ン隠岐がもともとあったパーラー隠岐という別店舗の営業実態を実質上承継してい る関係にあることからすると,被告2店舗の営業が原告店舗の顧客の誤認混同によ り生じた需要によって継続的に成り立っているとはおよそ考えられず,むしろその 影響は極めて小さいと見る方が合理的である。 なお,本件において被告が被告標章を使用して営業を営んでいるのは隠岐の島の 被告2店舗だけであり,不正競争防止法5条2項で推定されるべき原告の損害は, 被告2店舗の営業の影響を受ける範囲,すなわち,その競合店となる原告店舗にお いて生じた損害だけが問題となるというべきであるから,被告による被告各標章の 使用態様のうち,隠岐の島の住民において認識されないような岡山県津山市所在の 本件建物の外壁に掲げられた被告標章2,6による標章の使用は原告店舗の営業に 損害を全くもたらさないことは明らかである。 したがって,このような事情を総合考慮すると,本件における被告の得た利益と 原告の受けた損害の関係に不正競争防止法5条2項の推定規定の適用があるとして も,その推定は99%の限度で覆滅されるというべきである。 なお,原告は,原告店舗と被告2店舗の営業方法の類似性,さらには原告代表者としてのP1の競業避止義務違反さえ問題としているが,そこで問題とされる損害\nは,結局のところ,営業表示の誤認混同に由来する損害ではなく,単に原告店舗の近隣に競合店である被告2店舗が出店されたことから生じる原告店舗の売上減少の\n問題にすぎないから,不正競争防止法2条1項1号の不正競争により生じる損害の 議論としては失当であり,上記認定を左右するものではない。
(4) 上記(1)アのとおり,被告が,被告2店舗で得た利益は合計6億6654万1 348円であるから,原告において損害と推定される額は,666万5413円で あると認められる。
(5) 不正競争防止法5条3項の適用による損害について
本件で問題とする原告各標章は周知商品等表示であり,これに類似する被告標章7ないし9及び11ないし13の使用の結果,現実的な誤認混同が生じた事実も認\nめられるから,顧客吸引力が全くない商標権の場合と同様の意味での損害不発生を いう被告の主張は直ちには採用できない。 しかし,上記(2)で検討したとおり,パチンコ店等では,需要者は,主に営業表示以外の営業内容そのものの要素を選択肢として店舗を選択するというのであるか\nら,営業表示により誤認混同が生じたとしても,そのことが店舗選択に与える影響は極めて小さく,しかも,その需要者は店舗を頻回に利用するというのであり,そ\nのような需要者を顧客としてつなぎとめるためには,出玉であるとか交換率である などのパチンコそのものの営業内容によって他店と競争しなければならないといえ るから,原告各標章の営業表示に顧客吸引力があるとしても,営業の場面で,これを発揮する余地は限りなく少ないというべきである。\nしたがって,本件において認定できる被告の不正競争に対して原告が受けるべき 金銭の額は極めて少額にとどまるのが相当であり,これを認めるとしても,被告が 不正競争により受けた利益に基づき認定される不正競争防止法5条2項にいう原告 の損害の額を上回ることはないというべきである。

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平成27(ワ)5281  商号使用差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年8月23日  大阪地方裁判所

 不競法2条1項1号(周知商品等表示)違反とは認められませんでした。商号「山高工務店」に対して、新会社の商号が「ヤマタカ」で、かつ、社長が元従業員という状況でしたが、裁判所は、そもそも周知ではないとの認定するとともに、不正目的もなしと判断しました。
 確かに本件は,原告の元従業員が中心となって活動する被告の事業が,原告 の顧客を奪うことで成立しているように見受けられる事案であり,また事業開始が そのことを見込んでされたようにも見受けられるが,原告の既存顧客が被告に奪わ れたとするなら,それはそもそも原告が当該工事を施工できない状態であった上, 他方で被告代表者や被告従業員には原告在職時の施工実績による信用,少なくとも\n人的関係があったからと考えるのが自然であり,そこに原告商号と被告商号の類似 性が貢献している様子は認められず,また被告代表者がそのことを期待して被告商\n号を選択したとも認められない。被告による被告商号の選択使用は,被告代表者が\n供述するように,原告創業者への尊敬の念に由来すると認めるのが相当であって, 会社法8条1項にいう「不正の目的」があったとはおよそ認められない。 エ なお,さらに原告は,被告が原告と同じ行政区に本店を移転した経緯や,そ の登記手続の手順の不自然さを問題にするが,上記認定したアスベスト除去工事, ダイオキシン類対策工事等の契約締結過程等の問題からすると,そのことで原告が 主張するような利点があるとは認められないから,上記の点で被告の「不正の目的」 が推認されるわけではない。 また,原告は,被告が掲載した求人誌の求人広告の記載内容も問題にしているが, 同記載中には,旧会社を引き継ぎ4月から新体制で開始した会社であることを説明 して原告とは別会社と理解できる部分もあるし,そもそも,この求人誌は事業者で はない者を対象として掲載されているのであるから,会社法8条1項の「不正の目 的」を推認する事情とはいえない。
オ 原告は,被告が原告従業員を大量に引き抜いたことにより,原告が従前の業 務であるダイオキシン類対策工事の受注を停止せざるを得なくなったなどと主張し, この事情をも「不正の目的」を推認させる事情として主張するようであるが,「不正 の目的」は,商号を使用することに関して認められる必要があり,原告のいう事情 は,それ自体で不法行為を主張するのならともかく,商号使用についての「不正の 目的」を推認する事情とは認められない。

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平成26(ワ)29417  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年2月5日  東京地方裁判所

 練習用箸の実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態であるとして、不競法2条1項1号の保護を受けられないと判断されました。
 不競法2条1項1号の「商品等表示」は,「人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表\示するもの」をいう。商品の形態は,商標等とは異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものでないが,1)商品の形態が客観的にほかの同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合(周知性)には,商品の形態自体が商品等表\示に該当する場合もあると解される。 もっとも,実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態についてまで,商品等表示として保護を与えると,同等の機能\を有する複数の商品間の自由な競争を阻害する結果となり相当でないから,実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態については商品等表示に該当しないというべきである。\n(2) そこで検討するに,原告商品は,親指,人差し指及び中指をリングに挿入して箸の使用に適した位置で固定するという機能並びに2本の箸を連結するという機能\を有しており,これにより,箸の使用に習熟していない者が,箸を安定させて,かつ,正しいとされる指の位置で箸を使用する練習ができるという作用効果を有するものであるといえる。そして,正しいとされる箸の持ち方を前提にすれば,2本の箸に対してあるべき親指,人差し指及び中指の位置関係は自ずと決まっているから,それらの指の位置関係を正しい位置に固定するために指を通すリングを使用しようとすると,その位置関係及び箸に対する傾きなども自ずと定まっているものと認められる。 そうすると,原告商品形態のうち,「一対の箸が上端部又は中央より上端側の部分において連結されている連結箸」であることは,2本の箸を連結するという機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態であり,また,連結部位が一対の箸が上端部又は中央より上端側の部分であることは,箸として使用することからすれば当然の選択といえる。次に,「1本の箸は人差指と中指をそれぞれ入れる二つのリングを有し,他方の1本は親指を入れる一つのリングを有する」ことは,親指,人差し指及び中指をリングに挿入することで正しいとされる箸の持ち方に適した位置で固定するという機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態であると認められる。 以上のとおり,原告商品形態は,全体として,指にリングを通すことによって正しいとされる箸の持ち方を練習するための練習用箸の実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態というほかない。

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平成27(ワ)2587等  不正競争防止法違反行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成27年12月10日  東京地方裁判所

 不競法2条1項1号に該当するとする流布行為は、営業誹謗行為であると認定されました。
 上記事実関係によれば,原告各製品の形態は,従来の同種製品に比し,無色透明のガラス製で,パイプに多数のスリットを並設した点においてそれなりの独自性を有するということができるが,原告各製品が大量に販売されたとは認められず(年間平均900本程度であり,市場規模や占有率は証拠上明らかでないが,これを多数と評価すべき事情があることはうかがわれない。),原告各製品の形態上の特徴を強調した宣伝広告ないし販売活動がされたと認めるべき証拠もない。そうすると,原告各製品の形態が需要者の間においてその出所を表示するものとして認識されていたとは認められないから、原告の主張する前記(1)1)〜3)の形態が法2条1項1号にいう商品等表示に当たるということはできない。\n
・・・・
 被告は,原告による本件文書の送付により被告各製品の売上げが激減し,逸失利益は100万円を下らない旨主張する。 そこで判断するに,証拠(甲1,乙12,13,28,29)及び弁論の全趣旨によれば,1) 本件文書は平成26年11月頃に原告各製品を取り扱う問屋十数件及び小売店約400店に送付されたこと,2) 上記問屋及び小売店の多くは被告の製品も取り扱っていること,3) 被告各製品の販売本数は,平成26年9月及び10月には合計約500本(月250本程度)であったが,同年11月から平成27年7月までの販売本数は合計約300本(月33本程度)であったこと,4) 平成26年9月に複数回被告各製品を購入しながら,その後一切の購入を止めたり,数か月間注文を控えたりした取引先が複数あること,5) 被告における被告各製品の仕入れ及び販売価格は,被告製品1が約640円及び約1000円,被告製品2が約610円及び約950円であること,以上の事実が認められる。 上記事実関係によれば,上記3)の本件文書の送付前後での販売本数の減少の少なくとも一部は本件文書の送付を原因とするものとみるのが相当である。そして,これによる被告の損害額は20万円(販売本数の減少1000本,1本当たりの利益200円)と認めることができ,これを上回る損害額を認めるに足りる証拠はない。

◆判決本文

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平成26(ネ)10005  商標権侵害行為差止等請求控訴事件  商標権  民事訴訟 平成26年12月17日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 不競法2条1項1号の不正競争として約3000万円の損害賠償が認められました。原審はなぜか欠席裁判で原告(被控訴人)の主張通り1億円を超える損害が認定されています。判決文もアップされていません。
 前記1(2)において認定したとおり,複数の控訴人の直営店が,東京都内,名古屋市内,石川県金沢市内など主要都市圏に散在しており,さらに,控 訴人の製造,販売に係る商品の取扱店舗が,全国各地に多数存在すること(甲9の1,甲33,乙46から乙49),2)平成22年に作成された控訴人の公式カタログ(乙39)及び平成23年以降に刊行されたファッション雑誌や控訴人の宣伝冊子(乙44から乙49,乙105から乙109)には,控訴人の製造,販売に係る商品が多数紹介されていること,3)控訴人と同様の業務を営む被控訴人会社は,平成24年の秋から平成25年の夏までの約1年間で合計2万着余りの商品を販売していること(甲34)によれば,控訴人は,本件損害賠償請求期間中,少なくとも1万着の商品を販売したものと認められる。 そして,証拠(甲34,乙44,乙45,乙47,乙105)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人の販売する商品の平均単価は,販売点数が比較的多いものと推認できるティーシャツの価格帯に鑑みて,3万円程度と認めるのが相当であり,また,利益率は30パーセント程度であるものと推認できる。 以上によれば,本件損害賠償請求期間中における控訴人の製造,販売に係る商品の売上高は,おおよそ3億円であり(3万円×1万着)であり,その30パーセントである9000万円程度の利益を得たものと推計できる。 (イ) そして,上記利益に対する控訴人標章の寄与度は,控訴人標章が頭蓋骨と骨を組み合わせた特徴ある態様であり,商品購入者の大半を占めるものと考えられるスカルファッションの愛好者に対して,相当の顧客誘引力を有するものと考えられることに鑑み,3割をもって相当と認める。 したがって,不競法5条2項に基づく被控訴人会社の損害額は,前述した9000万円の3割,すなわち,2700万円と認めるのが相当である。 (ウ) そして,本件事案の性質,内容,認容額等に鑑み,300万円をもって弁護士費用及び弁理士費用相当額の損害と認める。

◆判決本文

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平成26(ネ)10024  損害賠償等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成26年10月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 全国共通お食事券は、原告の商品等表示ではないとした1審判決が維持されました。
 しかし,控訴人も自認するとおり,控訴人商品を指し示す表示として,「全国共通お食事券」という語が単独で使用されたことはなく,同語は,常に「ジェフグルメカード」という語や控訴人商品の券面画像と併記されて使用されてきたものである。また,併記の具体的形態をみても,取引者及び一般消費者が最も直接的に控訴人商品の表\示として目にする控訴人商品の券面(表面)においては,上段の「ジェフグルメカード」の文字の方が「全国共通お食事券」の文字の約1.5倍の大きさの目立つ文字で表\記された上(原判決別紙控訴人商品記載のとおり),中央部の大きい図形標章も「グルメカード」という文字を表したものとなっており,その下部にも「ジェフグルメカード」とさらに記載され(原判決第3の1(1)ア(ア)),控訴人商品の販売に際して顧客に配布される加盟店リストないし加盟店一覧表の表\紙にも,平成24年6月までは同様に「ジェフグルメカード」という表示の方が「全国共通お食事券」よりも約1.5倍の大きさの文字で表\記されており(甲122の1ないし3,甲123の1ないし16),「全国共通お食事券」の語よりも看る者の注意を惹くものとなっている。そして,前記のとおり,「全国共通お食事券」という語は,「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」程度の意味と理解されるものであるから,これを看た者をして,そのような控訴人商品の品質を記述的に説明したものと認識させる表示であり,そもそも控訴人商品の発売当初から平成5年頃までは,控訴人商品の商品等表\示の一部としても使用されていなかった語であるのに対し(発売当初は,控訴人商品の券面上の表示は「お食事券」であった。甲125,135),「ジェフグルメカード」という名称は,そのような記述的な表\示ではなく,控訴人商品の発売元(出所)である控訴人会社名を含む,自他識別力を有するものであり,控訴人商品を表示する商標として発売当初から現在まで単体でも使用されているものである(控訴人商品の裏面の注意書きの表\題は,「ジェフグルメカードのご使用について」と記載されており〔甲20〕,控訴人商品の販売の際に用いられる専用封筒及び封印シールにも「ジェフグルメカード」の表示があるのみで,「全国共通お食事券」の語は表\示されていない〔乙13〕。平成12年6月以降頃からの加盟店リストにも「ジェフグルメカード加盟店情報」,「『ジェフグルメカード』のお買い求めはこちらで」などと記載されている〔甲123の4ないし20〕。また,控訴人のウエブサイト上においては,控訴人商品を「ジェフグルメカード」との表記のみで表\示している部分がある〔乙12の1・2〕。さらに,平成10年7月の日本経済新聞社のブランド認知度調査は,「ジェフグルメカード」をブランド名として行われた〔原判決32頁13ないし16行目〕。)。以上の事実からすれば,「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」が併記されている表示を見た取引者及び需要者としては,「全国共通お食事券」とは,控訴人商品の記述的,説明的な表\示であり,「ジェフグルメカード」の表示の方が控訴人商品の出所を示すものと認識するものと認められる。\n したがって,控訴人の使用によっても,取引者及び需要者が,「全国共通お食事券」という語が単独で控訴人商品についての出所を示す商品等表示であると認識するものとは認められない。
(イ) 控訴人の上記主張1)については,確かに,控訴人加盟店ステッカーにおいては,「全国共通お食事券」の方が大きく,赤字に白抜きの目立つ表示となっており(原判決第3の1(1)ア(イ)),また,控訴人が指摘する控訴人商品の広告(甲18の1・3・6,甲106,110,112,115,116)においては,「全国共通お食事券」の方が大きい字体で表示されている。しかし,控訴人加盟店ステッカーにおいても,「全国共通お食事券」が単体で使用されているものではなく,「ジェフグルメカード」の文字標章及び図形標章がその上下に表\示されているし,上記「全国共通お食事券」の方が大きい表示となっている広告例は数例にとどまる上,「全国共通お食事券」が単体で使用されている例ではないことからすれば,控訴人が主張する事実を考慮しても,上記認定判断が左右されるものとはいえない(なお,控訴人が当審で提出した証拠〔甲115,116〕によれば,第一生命保険株式会社が平成24年5月から7月の間に実施したキャンペーンのチラシ上においては,被控訴人商品が「ぐるなびギフトカード(全国共通お食事券)」と表\示されていたのに対し,控訴人商品については「全国共通お食事券(ジェフグルメカード)」との表示がされていたことが認められる。しかし,同表\示も,「全国共通お食事券」の語を単独で使用するものではなく,控訴人商品の画像及び「全国約35,000店舗の加盟店でご利用可能な『全国共通お食事券』です」との説明とともに表\示されていることからすれば,同表示中の「全国共通お食事券」の語は,控訴人商品の説明的な記載にすぎないと解するのが相当である。また,そもそも,同チラシの初稿においては,控訴人商品は単に「ジェフグルメカード」とのみ表\示されていたのに,その後上記のとおりの表示に変更されていること,同チラシは,本件を本案事件とする控訴人の被控訴人に対する仮処分命令申\立事件の申立時期(平成24年6月)と近接した時期に作製されていること(乙1,22)からすれば,上\nチラシ上の表示は,控訴人が初稿確認後に表\示内容の修正を指示したことによるものと推認されるから,同チラシの記載をもって,「全国共通お食事券」という表示が単独で控訴人商品を示すものとして取引者及び需要者に広く認識されていたとも認められない。)。\n控訴人の上記主張4)の控訴人商品の宣伝,広告の内容についても,「全国共通お食事券」の表示は常に「ジェフグルメカード」という文字の表\示又は「ジェフグルメカード」との記載がある控訴人商品の券面(表面)字体の画像と共に用いられており,上記1)で控訴人が挙げたものを除いては,「全国共通お食事券」の語の方が看る者の目を惹く表示態様ともなっておらず(なお,控訴人が指摘する一部のテレビ放送〔甲119〕では,そもそも「全国共通食事券」と表\示されている。),「全国共通お食事券」の語が単独で控訴人商品の商品等表示であることを示すものとはなっていないことからすれば,上記認定判断を左右するものとはいえない。\nその他,控訴人の上記主張2)は,上記認定に係る控訴人商品の券面の表示態様を前提とすると,その発行枚数が「全国共通お食事券」の語単独での自他商品識別性の上記認定を左右するものとはいえず,控訴人の上記主張3),5)も,「全国共通お食事券」の語が取引者及び需要者に対する自他商品の識別力を客観的に有するに至ったかについての認定を左右するものではない。控訴人の上記主張6)についても,取違えの内容は,全国の控訴人商品の加盟店で,被控訴人商品の販売から平成25年7月までの間に合計14件,控訴人商品を顧客から誤って提示され,又は受領したという報告を受けたという程度のものであり(甲49の1・2,甲63ないし66,74,77,79,80),「全国共通お食事券」が控訴人商品を表示するものとして広く一般的に認識されていたことを証するものとはいえない。その他,上記認定判断を覆すに足りる証拠はない。\nしたがって,控訴人の上記各主張を採用することはできない。」

◆判決本文
 

◆1審はこちら。平成25(ワ)1062

◆無効審判の審取もあります。平成26(行ケ)10067

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平成25(ワ)28860  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟  平成26年8月29日  東京地方裁判所

 書籍の題号は、不競法2条1項2号の商品等表示は該当しないと判断されました。
 書籍の題号は,普通は,出所の識別表示として用いられるものではなく,その書籍の内容を表\示するものとして用いられるものである。そして,需要者も,普通の場合は,書籍の題号を,その書籍の内容を表示するものとして認識するが,出所の識別表\示としては認識しないものと解される。 もっとも,書籍の題号として用いられている表示であっても,使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は営業であることを認識することができるような自他識別力又は出所識別機能\を備えるに至ったと認められるような特段の事情がある場合については,商品等表示性を認めることができ\n ることもあり得ると解される(大阪高裁平成20年(ネ)第1700号・同年10月8日判決[「時効の管理」事件]参照)。
(2) 原告による「巻くだけダイエット」の使用について
これを本件についてみると,証拠によれば,原告書籍が出版される前から,「巻くだけダイエット」を題号に用いた・・・が出版されており,・・・が紹介されていること(甲17)が認められる。

◆判決本文

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平成25(ワ)31446  商標権 民事訴訟 平成26年05月21日 東京地方裁判所 

 エルメスのバックの立体商標について商標権侵害が認定されました。不競法2条1項1,2号も認定されています。
 原告商標は立体商標であるところ,上記類否の判断基準は立体商標においても同様にあてはまるものと解すべきであるが,被告標章は一部に平面標章を含むため,主にその立体的形状に自他商品役務識別機能を有するという立体商標の特殊性に鑑み,その外観の類否判断の方法につき検討する。立体商標は,立体的形状又は立体的形状と平面標章との結合により構\成されるものであり,見る方向によって視覚に映る姿が異なるという特殊性を有し,実際に使用される場合において,一時にその全体の形状を視認することができないものであるから,これを考案するに際しては,看者がこれを観察する場合に主として視認するであろう一又は二以上の特定の方向(所定方向)を想定し,所定方向からこれを見たときに看者の視覚に映る姿の特徴によって商品又は役務の出所を識別することができるものとすることが通常であると考えられる。そうであれば,立体商標においては,その全体の形状のみならず,所定方向から見たときの看者の視覚に映る外観(印象)が自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たすことになるから,当該所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似する場合には,原則として,当該立体商標と当該平面商標との間に外観類似の関係があるというべきであり,また,そのような所定方向が二方向以上ある場合には,いずれの所定方向から見たときの看者の視覚に映る姿にも,それぞれ独立に商品又は役務の出所識別機能\が付与されていることになるから,いずれか一方向の所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似していればこのような外観類似の関係があるというべきであるが,およそ所定方向には当たらない方向から立体商標を見た場合に看者の視覚に映る姿は,このような外観類似に係る類否判断の要素とはならないものと解するのが相当である。そして,いずれの方向が所定方向であるかは,当該立体商標の構成態様に基づき,個別的,客観的に判断されるべき事柄であるというべきである。
(2) これを本件について検討するに,原告標章,被告標章はいずれも,内部に物を収納し,ハンドルを持って携帯するハンドバックに係るものであるから,ハンドルを持って携帯した際の下部が底面となり,この台形状の底面の短辺と接続し,ハンドルが取り付けられていない縦長の二等辺三角形の形状を有する面が側面となることはそれぞれ明らかである。そして,その余の面のうち,蓋部,固定具が表示されている大きな台形状の面が正面部に該当し,かつこの正面部には,その対面側に相当する背面部とは異なり,装飾的要素をも備えた蓋部,ベルト,固定具が表\示されており,ハンドルを持って携帯した際に携帯者側に向かって隠れる背面部とは異なって外部に向き,他者の注意を惹くものであるから,この正面部は,少なくとも所定方向の一つに該当するものと解される。これは,被告の開設したインターネットショッピングサイトにおいて,いずれもこの正面部を含む写真が表示されていることのほか,各商品の紹介においては,全てこの正面部のみが表\示されていることも,正面部が所定方向であることを裏付けるものであるということができる。〔甲1〕そして,この正面部から観察した場合,原告標章と被告標章とは,本体正面の形状において底辺がやや長い台形状であり,上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する蓋部が表示されていること,前記蓋部上に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベルトが表\示されていること,前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央にて同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成した固定具が表示されていること,前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定する左右一対の補助固定具が表\示されていること,上部に円弧状をなす一対のハンドルが表示され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように表\示されていること,以上の点においていずれも共通しており,原告標章と被告標章とは,所定方向である正面から見たときに視覚に映る姿が,少なくとも近似しているというべきであり,両者は外観類似の関係にあるということができる。被告標章は,原告標章では立体的構成とされている蓋部,左右一対のベルトとこれを固定する左右一対の補助固定具,先端にリング状を形成した固定具,ハンドルの下部(正面部と重なりベルト付近まで至る部分)について,これらの質感を立体的に表\現した写真を印刷して表面に貼\付した平面上の構成とされているところ,これを正面から見た場合に上記共通点に係る視覚的特徴を看取できるものというべきである。一方,上部及び側面方向から被告標章を観察した場合には,原告標章では立体的に表\現された上記蓋部等が立体的でないことは看て取れるものの,上部及び側面は,いずれも所定方向には該当せず,上記所定方向から観察した場合の外観の類否に影響するものではない。
(3) そして,原告商標ないし被告標章において,何らかの観念ないし称呼が生じ,これらが著しく相違するものとも認められない。
(4) 以上によれば,被告標章は原告商標と類似しているということができ,被告につき,過失の存在の推定を覆すに足る事情も認められない(商標法39条,特許法103条)。
(5) この点に関して被告は,被告各商品につき,そのデザインは写真として似ているかもしれないが,素材や価格などで明確に区別できる等と主張するが,本件全証拠によっても,上記所定方向である正面から観察した場合に,被告標章が原告標章と類似するとの判断を覆すに足る事実は何ら認めることができないし,商品の出所の誤認混同をきたすおそれがないものとも認められない。

◆判決本文

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平成25(ワ)18665 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年04月17日 東京地方裁判所 

不競法2条1項1号および3号を主張しましたが、周知性および類似性いずれも否定されました。対象商品は下記にあります。

◆添付資料1

◆添付資料2
 以上を前提に検討すると,原告各商品の発売時から原告が周知の商品等表示性を獲得したと主張する平成23年9月末日までの原告各商品の販売期間は,原告商品6については約半年,その余の商品については約2か月であるにとどまり,原告が長期間独占的に原告各商品の形態を使用していたとはいえない。また,原告の主張するチラシ掲載や雑誌掲載等の多くは平成23年9月末日より後のものであり,同日までのウェブサイトの閲覧者数等も明らかではないから,これらは同日までに周知の商品等表\\\示性を獲得したとの原告の主張を裏付けるには足りない。さらに,被告が被告各商品の販売を開始したとされる平成24年12月までの宣伝広告等の実績及び原告の主張するウェブサイトの閲覧者数を考慮するとしても,まず,原告各商品のうちマスメディアに取り上げられたのは原告商品1,5及び6のみであるというのであるから(別紙「各マスメディアに取り上げられた実績」参照),原告商品2〜4についてはその形態が周知であると認めることはできない。また,原告商品1が雑誌に取り上げられたのは1回のみであり(甲42),周知性を認めることは困難である。さらに,原告商品6は平成23年12月から平成24年11月までの間に7回,原告商品5は同年3月から8月までの間に4回,それぞれ雑誌に取り上げられているが,いすれも他社の商品が同一頁で紹介されていること,パスタの保存やオムレツの作成の簡易化という機能面を重視した記事となっていること(甲33〜42)からすれば,読者に対してこれら商品の形態を印象付けるものとは解し難い。これに加え,これらの雑誌の発行部数は明らかにされていないこと,原告が上記ウェブサイト以外に原告各商品の宣伝広告を行ったとの立証がないことを勘案すると,原告各商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているとしても,平成23年9月末日ないし被告各商品の販売開始までの間に,原告の商品等表\\\示として周知になったと認めることはできない。
(2) さらに,原告各商品の形態と被告各商品の形態の類似性について検討しても,後記2(1)イ及びウにおいて認定判断するとおり,原告各商品と被告各商品の形態には明らかな相違点が複数あり,需要者に対し異なる印象を与えるものである。したがって,原告各商品と被告各商品の形態が類似するということはできない。
・・・・
以上によれば,原告各商品と被告各商品の形態は,基本的な部分(上記イに丸付き数字で摘示した部分)に共通点があるものの,これらの点は,電子レンジで半熟卵を作る,レモンを搾るなどの機能を果たすためにそのような形態が選択されたとみることができる。他方,両商品には,例えば,原告商品1と被告商品1であれば蓋部材の形状や底面側の脚部の有無,原告商品2と被告商品2であれば半円形がキノコ形かという側面側から観察した形状,原告商品3と被告商品3であれば平面体の形状及び指サックの有無など,具体的な形態において一見して識別することのできる明らかな相違点が複数ある。そして,これらの相違点は全体的形態に与える変化が乏しいささいな相違にとどまるとは到底いえないものであるから,両者の形態が類似するとはいえないと判断するのが相当である。したがって,被告各商品が原告各商品の形態を模倣した商品であるということはできない。\nエ これに対し,原告は,被告各商品の販売を許容することは新商品の開発者を保護するという不正競争防止法2条1項3号の趣旨に照らし許されないと主張するが,同号は商品の具体的形態を保護するものであって商品の機能やアイデアを保護するものではないから,具体的形態に大きな相違点があると認められる本件において,同号の不正競争行為を認めることはできない。\n

◆判決本文

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平成25(ワ)8040 著作権侵害行為差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成26年04月17日 東京地方裁判所

 デザインチェアーについて著作権による保護、および不競法の周知営業表示による保護、いずれも否定されました。
 原告製品は工業的に大量に生産され,幼児用の椅子として実用に供されるものであるから(弁論の全趣旨),そのデザインはいわゆる応用美術の範囲に属するものである。そうすると,原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能\を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である。本件についてこれをみると,原告製品は,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,幼児の成長に合わせて,部材G(座面)及び部材F(足置き台)の固定位置を,左右一対の部材Aの内側に床面と平行に形成された溝で調整することができるように設計された椅子であって,その形態を特徴付ける部材A及び部材Bの形状等の構成(なお,原告製品の形態的特徴については後記2参照)も,このような実用的な機能\を離れて見た場合に,美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えているとは認め難い。したがって,そのデザインは著作権法の保護を受ける著作物に当たらないと解される。また,応用美術に関し,ベルヌ条約2条7項,7条4項は,著作物としての保護の条件等を同盟国の法令の定めに委ねているから,著作権法の解釈上,上記の解釈以上の保護が同条約により与えられるものではない。よって,原告らの著作権又はその独占的利用権の侵害に基づく請求は理由がない。
2 争点(2)(不競法2条1項1号の不正競争行為該当性)について
(1) 争点(2)ア(周知性のある商品等表示該当性)について
ア 不競法2条1項1号は,商品等表示として商品の形態を例示していないところ,それは,商品の形態は,一次的には商品の機能\・効用の発揮や美観の向上等の見地から選択されるものであって,商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないことによるものと解される。そうすると,商品の形態であっても,それが他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有している場合には,二次的に商品の出所を表\示する機能を有することもあり,それが,長期間継続的かつ独占的に使用されたり,短期間であっても強力に宣伝広告されたりした結果,出所識別機能\を獲得した場合には,周知性のある商品等表示に当たるものと解される。イ この見地から,まず,原告製品が他の同種製品と識別し得る顕著な形態的特徴を有するか否かについて検討する。
・・・
これに対し,原告製品は,部材Aが部材B前方の斜めに切断された端面でのみ結合されており,座面から部材Aに伝えられる力が,上記端面のみにかかり,視覚的に不安定さを感じさせる構成となっている。それだけに,原告製品の形態は,必要最小限の部材以外の部材は使用しないという,シンプル,スタイリッシュかつシャープな印象を与えるものである。このように,原告製品の第1の形態的特徴が視覚的にシンプルな印象を与えることは,別紙4「原告製品についての宣伝広告等」の「原告製品の特徴に関する記載内容」欄のとおり,原告製品を紹介する記事においても多く言及されているところであり,原告製品の重要な形態的特徴ということができる。一方,証拠(乙12,13,15)及び弁論の全趣旨によれば,座面を4本の脚で支えるのではなく,左右一対の略L字状ないしそれに近い形状をした側面の部材をもって座面を支え,その上方に背もたれを設けた椅子が市販等されていたことが認められる。ただし,これらの椅子は,原告製品ほどシンプルな印象を与えるものではなく,また,側面の部材に床面と平行な溝を形成したものでもない。そうすると,第1の形態的特徴及び第2の形態的特徴のいずれか一方ないしそれに近い形態的特徴を備えた椅子は他に存在するものの,これら双方を兼ね備えたものが原告製品以外に存在すると認めることはできない。
(ウ) 以上によれば,原告製品は,第1の形態的特徴と第2の形態的特徴とを組み合せた点において,従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有しているから,原告製品の形態が需要者の間に広く認識されているものであれば(なお,被告は周知性について争うものの,具体的な反論はしていない。),その形態は不競法2条1項1号にいう周知性のある商品等表示に当たり,同号所定の不正競争行為の成立を認める余地があるので,以下,被告製品の形態が原告製品の形態に類似するか否かについて検討する。\n

◆問題のデザインチェアーです

◆判決本文

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平成25(ワ)1062 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年01月24日 東京地方裁判所

一部の表示「全国共通お食事券」が商品等表\示であるかが争われました。裁判所はこれを否定しました。
 前提事実(2),(3)によれば,被告商品である「ぐるなびギフトカード全国共通お食事券」の販売が開始された平成23年9月15日の時点で,原告商品である「ジェフグルメカード 全国共通お食事券」の販売が開始(平成4年12月1日)されてから19年近くを経過しており,その間,他に「全国共通お食事券」の名称を使用した他の種類の券が発行されていたことは証拠上認められない。そして,原告商品のみが販売されていた約19年の間に,原告商品は約1億4000万枚発行されたものと認められる。したがって,1年間の平均でみると年間約740万枚が販売されたことになる。上記の販売により原告商品は相当程度の知名度を獲得していたとみられるが,そのことと,「全国共通お食事券」が単独で原告主張の意味及び品質を有するものとして,原告商品が周知であったこととは異なる。上記アのとおり,原告の商品等表示として単独で「全国共通お食事券」の表\示の使用があったとは認められず,原告の商品等表示としては,「ジェフグルメカード 全国共通お食事券」,「全国共通お食事券 ジェフグルメカード」が使用されていたと認められるから,原告商品を購入,取得した取引者及び一般消費者は,原告商品の識別力を有する標章としては,「ジェフグルメカード」をまず認識するのが通常であると解される。したがって,「全国共通お食事券」の名称が,「ジェフグルメカード」の名称とは別に,原告主張の意味及び品質を有するものとして識別力を有するというためには,取引者及び一般消費者に対してその認識を促すような特別の宣伝広告等がされ,取引者及び一般消費者が広くそのことを認識する必要があるというべきである。そこで,この点について検討するに,原告商品の券面(表面)には,取引者及び一般消費者が,「全国共通お食事券」を原告主張の意味及び品質を有するものと認識できるような内容の宣伝広告の記載はない。券面(裏面)には,「全国のジェフグルメカード取扱加盟店にて額面金額と等額で取扱商品とお引換え(販売)いたします。加盟店は加盟店マークの表\示のあるお店及び弊社ホームページをご覧ください。」との記載がある(甲20)。以上の記載からは,原告が主張するような意味及び品質を認識することはできない。原告商品が販売される際には,原告商品の取扱店舗を知らせるための加盟店リスト(甲47)が配布される。その表紙には「有効期限はございませんので,お好きな時にご利用いただけるとっても便利なギフトです。」との記載があり,加盟店の一覧が付されている。そして,加盟店一覧の加盟店名には,例えば,「ガスト」,「神戸屋レストラン」等のフランチャイズ店全体を記載したとみられる表\記があるものの,その上部には,「一部利用いただけない店舗がございますのでご了承ください。」との記載がある。これらの記載からは,原告が原告商品の品質保証の内容である,有効期限がないということを認識することが可能であるが,それが加盟店一覧表\の表紙に小さな文字で記載されているのみであるため,実際にどれだけの一般消費者がそれによって原告の主張する内容を認識するものかは必ずしも明らかではなく,また,それ以外の原告の品質保証の点については,必ずしも加盟店リストから認識できるものではない。原告の平成4年11月頃作成の会社案内(甲2)には,「『食』を通じ,感動と出会いを。こころの時代の,幸福な物語を紡ぐために。」,「『こころの時代』と呼ばれる21世紀への大きな流れは,いま,『食』に楽しく暖かなコミュニケーションのライフステージとしての役割を求めはじめています。…『食』が人々のこころを結び,幸福な物語を紡ぎつづけていく,そのために。」等の記載があり,原告商品の特徴として,「市場規模,選択性,広範囲の店舗網 モチベーションの多彩さ 日常的,手軽さ,利便性」が挙げられ,「『ジェフグルメカードにしかできないこと』として,利便性の高さ,信頼感,気軽さが挙げられている(甲2)。しかし,この会社案内の内容がどの程度,取引者及び一般需要者に認識されているかは不明である。

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平成24(ワ)36238  その他 民事訴訟 平成25年11月21日 東京地方裁判所

 商号の一部の「MCP」について不競法2条1項1号による差止が認められました。
 前記前提事実における原告MCPの施設の種類,所在地及び数に加え,前記(1)認定の原告MCPの営業表示に関する事実,すなわち,業界紙等において掲載された原告MCPの記事や広告の内容や頻度,原告MCPが配布した事業案内や施設案内の内容,配布対象,地域及び数,原告MCPの職員が業界団体の副会長等に就任したこと等からすれば,原告MCPの営業主体性を示すものとして,原告MCP商号は福島県と埼玉県及び群馬県内の,原告MCP標章は福島県内の需要者に広く認識されていると認められるが,いずれも他の地域において広く認識されているとは認め難い。\n
・・・
前記前提事実及び前記1(1)サ認定の事実によれば,原告らは医療介護複合施設の運営管理等を業とし,被告は介護事業者等向けの不動産仲介業や介護,医療施設の設計施工等を業としているのであり,原告らと被告は,いずれも介護や医療に関係する業務を営んでいるから,被告が「メディカルケアプランニング」又は「MEDICAL CARE PLANNING」(小文字の表記を含む。)の名称,被告商号及び被告標章などの営業表\示を使用する行為は,原告メディカルの営業と混同を生じさせ,また,被告が被告商号及び被告標章などの営業表示を使用する行為は,原告MCPの営業と混同を生じさせる。被告は,親会社であるイー・ライフの顧客のみを対象として営業をしているから,混同のおそれはないと主張する。しかしながら,被告が親会社の顧客のみを対象として営業しているものであるとしても,原告らと被告は,いずれも介護や医療に関係する業務を営んでいて,その需要者が重複するから,上記営業表\示を使用する被告の行為が原告らの営業と混同を生じさせることを否定することはできない。被告の上記主張は,採用することができない。
4 そうすると,原告らは,それぞれの営業表示が周知性を獲得した範囲内において,被告の不正競争によって,営業上の利益が侵害されるおそれがあると認められる。以上によれば,原告メディカルの請求は,各種広告,インターネットのホームページ,事業案内,営業用パンフレット,営業用封筒,便せん,社員用名刺及び看板等に表\示する又は新聞雑誌等の記事として掲載させる等の方法で,老人介護に関連する事業の営業表示として,原告メディカル商号に類似する「メディカルケアプランニング」又は「MEDICAL CARE PLANNING」(小文字の表記を含む。)の名称を使用すること,関東地方において原告メディカル標章に類似する被告商号及び被告標章を使用することの差止めを求める限度で理由があり,原告MCPの請求は,上記と同様の方法で,上記事業の営業表\示として,福島県,埼玉県及び群馬県内において原告MCP商号に類似する被告商号及び被告標章を使用すること,福島県内において原告MCP標章に類似する被告商号及び被告標章を使用することの差止めを求める限度で理由がある。

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平成24(ワ)13282 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年09月19日 大阪地方裁判所 

 形態に特別顕著性なし、周知とは認定できないとして、差止および損害賠償請求は、棄却されました。
 前記イでみた原告商品の形態の特徴は,機能に基づくものということができる。しかも,原告が,原告商品の形態について周知性を獲得したと主張する平成22年1月までには,既に,他社のテレビ台が同様の機能\に基づく形態上の特徴を有していたことも認められる(乙1〜6)。これらの商品と原告商品とを対比すると,次のような相違点を認めることができる。すなわち,上部箱の片方についている脚が略円柱ではなく,略直方体である場合や(乙1の商品との対比。なお,乙1の商品については,インターネット上のウェブサイト(楽天市場)において,平成20年9月3日に,購入者によるコメントが投稿されている。),上部箱の側壁が木製板でなく,透明板である場合や(乙2の商品との対比。なお,乙2の商品については,前同様に,平成20年9月24日にコメントが投稿されている。),上部箱の片方についている支持体が2本の脚ではなく,全面板状である場合や(乙3の商品との対比。なお,乙3の商品は,前同様に,平成21年1月24日にコメントが投稿されている。),上部箱の片方についている脚が木製ではなく,金属製である場合(乙4の商品との対比。なお乙4の商品については,前同様に,平成21年7月20日にコメントが投稿されている。)が認められる。しかし,これらの相違点は,家具などの商品を構成する,ありふれた部分の形状に係るものであり,その差異の程度も僅かというべきである。以上によると,原告商品の形態に特別顕著性を認めることは困難であり,その形態についての需要者における認識の程度が,後記(2)の程度であったことを併せ考えると,原告商品の形態が,出所を表示する機能\を有していると認めることはできない。
・・・・
以下の理由から,原告商品の形態が,商品等表示性を獲得するに足りるだけの周知性を獲得していると認めることはできない。\n
ア 販売実績
原告は,平成18年6月から,原告直営店や自社のウェブサイト,デパートのほか,楽天市場やヤフーショッピング内における原告のサイトにおいて,原告商品を販売しており(デパートでの販売は,卸を通じたものであり,それ以外は直販である。),平成22年1月ころまでに約1万5000台を販売したことが認められる。証拠(甲8の1〜18,甲9,19から21,26,28,29)及び弁論の全趣旨によると,前記販売件数は,テレビ台の販売件数としては比較的多いということがいえる。もっとも,テレビ台全体の市場における原告商品の市場占有率等は明らかではない。原告は,原告商品の販売実績が多量であることを裏付ける事情として,楽天市場における販売ランキングの順位についても主張しているが,当該ランキングにおける順位は,販売数量だけを基準としたものでないこと,楽天市場のほかにも,インターネットにおいて家具等を販売するウェブサイトが多数存在していることは当裁判所に顕著な事実である。したがって,楽天市場におけるランキングのみをもって原告商品の知名度等を評価することはできない。そもそも,原告商品は,テレビ台であることから,その耐用年数や家庭での需要台数を考えると,1台購入した者が引き続き購入することは考えにくい商品といえる。イ 広告宣伝等の状況及び購買状況原告が,原告商品について,大がかりな広告宣伝を実施していたことを認めるに足りる証拠があるわけではなく,上記販売件数のうち相当数は,テレビ台の購入希望者が,インターネットや店頭において,他の商品と比較しながら,原告商品を選択していったものであることを否定できない。このことは,上記販売件数が,原告商品の持つ機能やデザインが優れていることに起因すると推測することができるものの,原告商品の形態が予\め購入希望者の意識にどの程度あり,これが,購入希望者にどのような影響を与えているかは不明である。以上によると,原告商品の形態が,商品等表示として出所識別機能\を有するに至るまで,顧客との間で,長年継続的かつ独占的に使用されてきたと認めることはできない。
ウ レビュー件数
確かに,インターネット販売において,原告商品に関するレビューの件数が,他のテレビ台より格段に多いことが認められる(甲16の1〜7,甲21)。しかし,上記レビューの数が,単に同種商品に関するレビューの数より格段に多いということのみをもって,原告商品の形態が,購入者層に広く普及したと認めることは困難というべきである。

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平成25(ワ)8943 商号使用差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年07月12日 東京地方裁判所

 「株式会社三菱商会」について、周知商品等表示であるとして、商号使用差止が認められました。
 甲2,3及び弁論の全趣旨によれば,「三菱」の表示は,原告らいわゆる三菱グループの商品等表\示として著名であることが認められる。被告商号のうち「株式会社」及び「商会」の部分は会社の種類及び事業分野を表す一般名詞であり,商品又は役務の出所識別機能\を有しないから,被告商号の要部は「三菱」の部分というべきところ,これは原告らの商品等表示(「三菱」)と同一である。したがって,被告商号は原告らの著名な商品等表\示と類似し,被告が被告商号を使用する行為は不正競争防止法2条1項2号の不正競争に該当する。被告は,1) スポーツ全般における測定器の販売及び測定事業,2)自動車販売,3)労働者派遣事業,4)飲食店の経営,5)コンサート,イベントの企画,制作等を目的とする株式会社であり(甲1),原告らは,これらと重複する事業目的を有する株式会社であるから(甲5ないし7),原告らは,被告商号その他の「三菱」の文字を含む商号,標章の使用により「営業上の利益を侵害されるおそれがある者」といえる。

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 こちらは、「株式会社三菱エステート」に対する商号使用差し止めです。

◆平成25(ワ)5595平成25年07月12日東京地裁

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平成24(ワ)9449 不正競争防止法,著作権侵害・損害賠償 不正競争 民事訴訟 平成25年07月02日 東京地方裁判所

 ワインの図柄について創作性無しとして請求棄却されました。不正競争行為(1号)にも該当しないと判断されました。
 著作権法2条1項1号は,著作物について「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,同条2項は「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする。」と規定している。これらの規定に加え,著作権法が文化の発展に寄与することを目的とするものであること(同法1条),工業上利用することのできる意匠については所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができるとされていることに照らせば,純粋な美術の領域に属しないいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予\定されている図案やひな型などは,鑑賞の対象として絵画,彫刻等の純粋美術と同視し得るといえるような場合を除いては,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。これを本件についてみると,本件図柄は,その外形上明らかに被告のワイナリーの広告等の図柄として作成されたものであり,また,本件各原告看板は,本件図柄を利用して製作された広告看板そのものであって,いずれもいわゆる応用美術の領域に属するものと認められる。そして,本件図柄及び本件各原告看板は,訴求力のある広告効果を持たせるような配色,図柄の形状,字体の選択,各素材の配置等について一定の工夫がされているとはいい得るものの,広告の対象となる被告の名称及び施設の種類を表す文字とグラスの図柄の単純な組合せからなるもので,これらが,社会通念上,鑑賞の対象とされ,純粋美術と同視し得るものであると認めることは困難である。
イ さらに,著作権法上の著作物として保護されるためには「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)であることを要するが,前記著作権法の趣旨に鑑み,ありふれた表\現にすぎないものは,「創作的に表現したもの」には当たらないというべきである。これを本件図柄及び本件各原告看板についてみると,1)ワイナリーの広告看板に「ワイナリー」や「工場見学」という文字,ワイナリーへの方向を示す矢印及び距離,ワイングラスを想起させる図形を表示することは,一般的であると解されること,2)グラスの上及び中に配置した文字のバランスに工夫があるとしても,素材を用いて図柄を作成する上での配置としてありふれたものの域を出ないし,グラスの形状にも,格別の創作性は認められないこと,3)文字のうち「シャトー勝沼」の部分は毛筆体を思わせるやや角張った特徴のある書体であるが,書体の形態は文字の有する情報伝達機能を発揮するため必然的に一定の制約を受けるものであるから,書体に著作物性を認めるためには書体が顕著な特徴を有するといった独創性があることを要するところ,上記文字の書体にそのような独創性があるとは認められないこと,4)広告看板の背景や素材に濃い青色と白色と黄色,あるいはこれらの色と赤色を採用して組み合わせることは,他の看板においても見られるものであって(乙3),ありふれたものにすぎないこと,5)本件図柄及び本件各原告看板を一体として見たとしても,文字と図柄の単純な組合せにすぎず,全体として一つのまとまりのある表現物として創作性を有しているとは認められないことからすれば,著作権法上保護されるに足りる創作性があるということはできないと解される。\n
ウ 以上のとおりであるから,本件図柄及び本件各原告看板は著作権法上の著作物に当たらないと判断することが相当である。

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◆関連事件はこちらです。平成24(ワ)9468

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平成24(ネ)10067 不正競争行為差止請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成25年03月28日 知的財産高等裁判所 

 1審は周知商品等表示とは認めませんでしたが、知財高裁は周知性ありと認定しました。\n
 控訴人は,創業100余年を数え,その主要事業である車両製造の分野では,国内最大手の会社である。そして,控訴人の表示としては,その商号である「日本車輌製造株式会社」のほか,控訴人表\示(日本車両),「日本車輌」「日本車両製造」「日本車輌製造」「日車両」「日車輌」等があるが,控訴人は,平成8年に,「日本車両」との文字(控訴人表示)とコーポレートマークを組み合わせた社名ロゴマークを策定し,建物看板,展示用のぼり,工事現場等の看板にこれを使用していること,控訴人が製造した鉄道車両には,原則として,その社内の前部又は後部の壁の上段等に,控訴人表\示を記載した銘板が設置されていること,多数の新聞,雑誌で控訴人表示を用いた広告が行われていること,控訴人に関する新聞記事でも,控訴人の表\示として,控訴人表示を用いたものが多数あることなどからすると,控訴人表\示と「日本車輌」との表示の差異について検討するまでもなく,控訴人表\示は,控訴人の営業表示として,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者のほか,広く一般の国民にも認識されており,遅くとも被控訴人が設立された平成21年6月までには,少なくとも周知性を獲得していたということができる。なお,控訴人表\示が表示された各新聞記事は,控訴人が自らその営業表\示として控訴人表示を使用したものではない。しかしながら,不正競争防止法2条1項1号にいう広く認識された他人の営業であることを示す表\示には,営業主体がこれを使用ないし宣伝した結果,当該営業主体の営業であることを示す表示として広く認識されるに至った表\示だけでなく,第三者により特定の営業主体の営業であることを示すものとして用いられ,そのような表示として広く認識されるに至ったものも含まれるものと解するのが相当である(最高裁平成5年(オ)第1507号同年12月16日第一小法廷判決・裁判集民事170号775頁参照)から,上記各新聞記事に基づいて控訴人表\示の周知性を認定することが妨げられるものではない。
(3) 被控訴人の主張について
ア 被控訴人は,控訴人表示は国名を表\す「日本」と,鉄道車両に限られない車両全般を表す「車両」という普通名詞を組み合わせたものであり,識別性がないから,控訴人表\示は,控訴人の営業表示として,需要者の間に広く認識されているとはいえないと主張する。しかしながら,控訴人表\示が普通名詞を組み合わせた表示であるとしても,前記(2)のとおり周知性を獲得するに至っている以上,控訴人表示に識別性がないという被控訴人の主張は失当であり,これを採用することはできない。イ 被控訴人は,被控訴人の事業の需要者と控訴人の事業の需要者は共通するものではなく,また,鉄道業者や鉄鋼生産業者は被控訴人の需要者ではないとして,仮に,控訴人表示が控訴人の需要者には周知でも,被控訴人の需要者には周知でないから,不正競争防止法2条1項1号は適用されない旨主張する。しかしながら,前記のとおり,控訴人表\示は,控訴人の営業表示として,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者のほか,広く一般の国民に認識されているものである以上,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者と被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者との異同にかかわらず,被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者の間における控訴人表\示の周知性が否定されるものではない。のみならず,不正競争防止法2条1項1号にいう「需要者」には,最終需要者に至るまでの各段階の取引業者も含まれると解すべきところ,控訴人は,鉄道車両の製造以外にも,建設機械製造,橋梁建設等を業として行っているから,その取引者,需要者には,鉄道車両を購入する鉄道会社のほか,建設工事業者や橋梁工事等で発生した産業廃棄物の処理業者等も含まれるものと考えられ,一方,鉄道車両の解体,リサイクルを主たる目的とする被控訴人の取引者,需要者には,解体する車両を提供する鉄道会社のほか,リサイクルした製品,解体した鉄等の販売先等が含まれるものと考えられるから,両者の取引者,需要者は,相互に重なり合うか,あるいは,密接な関連性を有するものであるということができる。そうだとすると,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者の間で控訴人表示が広く認識されているものである以上,被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者の間においても,控訴人表\示は広く認識されているというべきである。

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◆原審はこちら。平成23(ワ)7924平成24年07月19日東京地裁
 

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平成23(ワ)30566 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年03月27日 東京地方裁判所

 空気清浄加湿機について、不競法2条1項1号の周知形態とは認められないと判断されました。
不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは,人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表\示するものをいい,商品の形態は,商品等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないから,商品の形態自体が不競法2条1項1号に「商品等表\示」に該当するためには,1)商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要するものと解するのが相当である。\n
・・・・
以上のとおり,原告商品における空気吹出口,空気吸込口,エリミネーター点検口及び水槽部点検口等の位置関係,配置,構造は,業務用の空気清浄加湿機という商品の機能\上ないし技術上の制約からくる不可欠の形態ないしは通常選択されるべき形態であって,業務用の空気清浄加湿機の形態として通常ありふれた形態というべきであり,また,原告が主張するその他の原告商品の形態の特徴に関しても,主位的主張及び予備的主張のいずれについても採用することができないから,原告商品の形態に特別顕著性を認めることはできないというべきである。

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平成24(ワ)3604 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年12月20日 大阪地方裁判所 

 自動車のホイールについて、不競法2条1項1号の商品等表示ではないと判断されました。商品形態模倣(同3号)についても否定されました。
 証拠(甲4〜甲83の1・2)によれば,平成22年3月以降,自動車用品に関する複数の月刊誌において,原告商品を紹介する1〜4頁の記事や,原告商品に関する2又は4頁の自社広告及び他社による原告商品を含む商品広告が掲載されたものと認めることができる。しかしながら,月刊誌に数頁の紹介記事や広告が掲載されたからといって,そのことのみをもって,商品表示として需要者の間に広く認識されているなどとは到底いうことができない。上記各雑誌の発行部数,販売地域等に関する主張立証も全くない上,上記各雑誌には,原告商品以外にも被告商品を含む多数の同種商品が掲載されている。他に,原告商品の販売数量,売上高,同種商品の市場における原告商品の市場占有率など,この点に関する原告の主張を裏付ける主張立証は全くない。したがって,原告商品の形態が,商品表\示として需要者の間に広く認識されているとは認めることができないから,その余の点について判断するまでもなく,法2条1項1号に基づく原告の請求にも理由がない。

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平成24(ネ)10069 不正競争行為差止請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成24年12月26日 知的財産高等裁判所

 不競法2条1項1号の周知商品等表示であると争いましたが、該当しないとした1審判決が維持されました。
 以上によれば,控訴人商品の共通形態のうち,耳と鼻に掛ける眼鏡タイプの形態からなるルーペであり,そのレンズ部分は一対のレンズを並べた形態であり,眼鏡に重ね掛けができるという点については,従前,他社製品にもみられたものであるということができ,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているということはできない。なお,控訴人商品の共通形態のうち,レンズ部分が「眼鏡の重ね掛けができる程度に十分に大きい」一対のレンズを並べた形態である点については,エッシェンバッハ社や池田レンズ等の他社製品であるルーペに,全く同一のものは見当たらない。しかし,前記1(4)のとおり,一対のレンズを眼鏡の上から重ね掛けするという発想の商品もみられるところであり,また,「眼鏡タイプのルーペ」として種々の形態のものが販売され,流通しており,そのレンズの大きさも様々であることに照らすと,控訴人商品のレンズが「眼鏡の重ね掛けができる程度に十分に大きい」一対のレンズを並べた形態であることによって,需要者において控訴人商品につき格段の強い印象が生じるものとはいえない。よって,上記レンズの大きさの点を理由として,控訴人商品の共通形態が,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有することになるということはできない。\n

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平成23(ワ)5742 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月08日 大阪地方裁判所 

 不競法2条1項1号、2号(周知商品等表示、著名商品等表\示)による差止請求権は存在しないと認定されました。
 本件ドイツ特許及び本件米国特許の各公報(乙20,21の各1・2)及び前記1で認定の事実経過によれば,被告製品の形態は,簡便かつ効果的に巻き爪などを矯正するという技術的な機能実現のために得られたものであることが認められ,かかる機能\的な意味合いを有しない特徴的部分は見当たらない。そのため,被告製品の形態は,機能実現のために他に選択の余地がないものとまでいえるかはともかく,需要者との関係で,巻き爪矯正具としての機能\という意味を超えて識別力を持ち得る余地の小さい形態であるといえる。また,被告製品は,店頭販売などされておらず,需要者が直接その形態を見て商品選択することは想定できない上,証拠として提出されている上記多数の宣伝媒体を精査しても,巻き爪矯正施術の過程や被告製品を爪に装着した状態,あるいは,被告製品の一部を写真や図面で表示したものはあるものの,別紙被告製品図のような被告製品全体の形態が分かるように表\\示されているものは見当たらない(「Derma」と題する医学雑誌の2004年5月号[乙32]本文には,被告製品の形態全体が写った写真が掲載されているが,あくまで爪矯正処置法の医学的解説の一環としての掲載であり,商品等表示性の根拠とすることは困難である。)。一方で,前記認定のとおり,被告製品については,もっぱら「VHO」の文字標章が「商品等表\示」として使用されてきた。これらの事情からすれば,被告製品の形態が,被告製品の出所表示として使用されてきたとはいえないし,そのような機能\を果たしている実態があるともいえない。以上を総合して考えれば,被告製品の形態が,巻き爪矯正具の機能の観点から選択されたという意味を超え,「商品等表\示」たり得るだけの識別力を有するに至ったとはいえないものである。
(2)小括
したがって,原告製品の形態は被告製品の形態と同一ではあるものの,そもそも被告製品の形態は,「商品等表示」に該当しないため,不正競争防止法2条1項1号(周知表\示混同惹起行為)に基づく被告の主張は採用できない。

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平成23(ワ)15990 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年09月13日 大阪地方裁判所

 「阪急住宅株式会社」について、阪急グループとの広義の混同が生ずるとして、商号抹消が認められました。
 被告は,昭和33年から被告商号と実質的に同一の営業表示を用いて営業活動を継続してきた旨主張する。しかしながら,被告が自らの営業活動及び宣伝の状況を立証するものとして提出した京都新聞社発行の新聞広告(乙1ないし8)は,昭和43年から昭和50年までのものに限られている。被告代表\者作成名義の買受証明書(乙9),商談申込書(乙10),取り纏め依頼書(乙11)及び経過報告書(乙12)と題する各書面についても,その作成経緯は不明であり,各書面に記載された日付も平成17年9月16日(乙9),平成18年3月3日(乙10),平成20年4月30日(乙11),同年5月12日(乙12)というものであり,昭和51年から平成16年までの営業の継続を裏付けるものではない。かえって,被告の商業登記簿謄本によれば,被告は,昭和53年9月29日京都地方裁判所において和議開始の決定を受けたことが認められ,証拠(甲13の1・2)によれば,被告は,平成2年11月26日,宅地建物取引業の免許を取得した後,平成13年10月29日,同免許を失効し,平成23年1月19日に再度免許を取得したことが認められる。そして,P1作成の陳述書(乙13)によっても,上記免許失効の前後から,P2が代表\取締役に就任するまでの間,被告が営業活動を行った形跡は窺えない。また,平成6年から8年にかけても,P1は,営業活動を行うことができない状態にあり,他の誰が営業活動に携わっていたかも不明であり,営業に関する具体的な供述もない。以上によると,少なくとも上記の間,被告は,休眠状態にあり,被告商号を営業表示として使用することはなかったことが窺える。そうすると,被告は,平成6年5月1日以前から,被告商号を営業表\示として使用することを継続していたとは認めることができず,原告営業表示が著名になる前から被告商号を使用する者であるともいえない。3 法2条1項1号に関するその余の争点について前記2において,仮に,被告が平成6年5月1日以前から,被告商号を営業表示として使用することを継続していたとしても,次のとおり,被告の行為は,法2条1項1号に該当するということができる。\n

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平成23(ワ)37057 発信者情報開示請求事件 商標権 民事訴訟 平成24年06月28日 東京地方裁判所

 あるサイトにおける表示が、商標権侵害、不正競争行為(2条1項1号)に該当するとして、これを根拠として、プロ責法4条1項に基づき、レンタルサーバ運営者に発信者情報の開示が認められました。
 上記(1)の認定事実によれば,平成23年8月までには,原告商品等表示は原告の営業を表\示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められる。(3) 本件各標章の要部は,「PLUS」あるいは「Plus」の部分であって,本件各標章は周知の原告商品等表示に類似するから(このことは,被告も認めるところである。),本件ウェブページ上でその営業を表\示するものとして本件各標章を使用する行為は,不競法2条1項1号に該当し,原告の営業と混同を生じさせるものということができる。そして,本件において,特段の事情があることは窺えないから,本件ウェブページ上で本件各標章を使用する行為によって原告の営業上の利益が侵害されたものと認められる。(4) 被告のレンタルサーバは,インターネット上で不特定の者に対する送信をするのであるから,本件ウェブページに掲載された情報の流通によって原告の権利が侵害されたことは明らかである。2 上記1に判示したところによれば,原告が損害賠償請求権を行使するためには,被告のレンタルサーバに本件ウェブページの情報を記録した者の発信者情報が必要であるから,原告にはその開示を受けるべき正当な理由があると認められる。

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平成23(ワ)10113 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年04月19日 大阪地方裁判所

 不競法2条1項1号の商品等表示に該当しないと判断されました。
 前記イ及びウで検討したところによれば,原告商品を全体としてみたときに,特徴2及び3について,商品表示として他の商品と識別しうる独自の特徴とはいえない。 また,前記アのとおり,特徴1のうち,i) 上部に開口部となる凸状の緩やかなカーブがある蓋部と,ii)前面凹状の緩やかなカーブがある錠付き扉という各特徴については,個別にみると,それぞれ同種の商品にみられるありふれた特徴である。さらに,乙8ないし11並びに丙1及び2によれば,上記i)及びii)の両方を備えた郵便受けも,原告商品の他に複数存在することが認められる。 したがって,原告商品の形態は,全体としてみても,他の同種の商品と識別しうる独自の特徴を備えているということができない。(2)以上のとおり,原告商品の形態が他の同種の商品と識別しうる独自の特徴を備えているとは認めることができないし,後記2のとおり,原告商品の形態について特定の者の商品であることを示す表示として需要者の間に広く認識されるに至っているとも認めることができない。\n

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平成19(ワ)11489等 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成23年12月15日 大阪地方裁判所 

 経緯からして「他人の商品等表示」ではないとしたものの、不法行為による損害賠償が認められました。また、一部の表\示(被告表示1−5及び1−7)を付して販売する行為は不競法2条1項13号の不正競争に該当すると認定されました。
 以上のような原告,被告ら及び協和興材の関係並びに需要者の認識を踏まえると,本件商品に付された原告表示1ないし4は,本件商品の製造販売に関与する原告,被告ら及び協和興材の三者の出所表\示として,需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
エ これに対し,原告は,被告らは,原告が協和興材を通じて本件商品を販売するための中間業者として中間マージンを得ていただけの存在にすぎないから,原告表示1ないし4の各表\示に被告ら独自の業務上の信用が化体する余地はなく,これらの表示が被告らの出所表\示となることはあり得ないかのように主張する。しかし,本件外箱の表示,広告宣伝時の表\示など,需要者が直截,目にする部分において,被告らが本件商品の製造販売において独立した商品等主体として関わっている旨が表示されているのであるから,需要者としては,当然,被告らも本件商品の出所の主体であると理解するであろうし,現実の取引においても,本件商品の総発売元である協和興材と直接の取引関係にあるのは原告ではなく被告らであって,被告らが,本件商品の販売において独立した主体的立場を有していることは明らかである。また,被告P1は,その屋号を「グリッタージャパン」とし,「GOLD Glitter」の文字商標の登録までしていたことからしても,本件商品の販売において,積極的な役割を果たしていたといえる(なお,原告は,これらについて被告P1が原告に無断で行ったと主張するが,これらの事実から,少なくとも,被告P1が,本件商品の販売において,自らの屋号を「グリッタージャパン」とし,対外的にそのような屋号の事業体として認識されるだけの利害関係を有していたことは否定できないから,無断であったか否かは,この場面では問題とならないというべきである。)。よって,原告表示1ないし4が被告らの出所表\示となることはあり得ないとする原告の主張は失当である。
オ 以上によれば,原告表示1ないし4は,不正競争防止法2条1項1号の周知商品表\示であると認められるものの,その出所識別機能は原告,被告P1(被告会社設立以降は被告会社)及び協和興材の三者について生じており,被告会社にとって「他人の」周知商品表\示であるとは認められないから,被告会社が,その製造販売する商品に原告表示1ないし4と同一ないし類似する被告表\示1−1ないし1−4,1−6を付したとしても,これをもって,不正競争防止法2条1項1号の不正競争を構成するものと認めることはできないというべきである。\n

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平成22(ワ)38566 不正競争行為差止請求事件 平成23年06月30日 東京地方裁判所

 所定のフォームが印刷された薬袋は、不競法の商品等表示には該当しないと判断されました。
 薬袋の表面の上部ないし上端部を除いた部分に,内用薬,外用薬ないし頓服薬の別,患者名,薬名,薬の用法,病院名等を記載することや,横書きの薬袋の場合に,「内用薬」,「外用薬」,「頓服薬」などと記載されたすぐ下の部分に,患者名を記載する欄を設け,その下の部分に,薬名や薬の用法等を記載する欄を設けること,さらに,これらの記載欄が目立つように,患者名の記載欄を四隅の角が丸みを帯びた横長の略長方形の枠で囲んだり,薬袋の横幅にあわせた略正方形の枠で薬の用法等の記載欄を囲み,その枠内を網掛け技法によって着色したりすることなどは,原告が原告製プリンター用の薬袋を販売する以前ないし原告が同薬袋の販売を始めたのと同時期のころから,しばしば見られたものであり,その後も,現在に至るまで,複数の会社から,これらと同様の多数の種類の薬袋が販売されていることは前記認定のとおりである。このように,原告製品模様は,他社製品にも多く見られるありふれた形態であるというべきであり,原告製品サイズと原告製品模様とを合わせても,ありふれたものというほかない。したがって,原告製品サイズ及び原告製品模様は,不競法2条1項1号の「商品等表\示」には該当しない。

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平成22(ワ)13602 損害賠償請求事件 平成23年06月23日 大阪地方裁判所

 半紙について不競法2条1項1号の周知商品等表示性はないと判断されました。
 「一葉」(半懐紙版,半紙版)の商品形態が,上記の観点から商品等表示性を取得しているか検討すべきところ,以下のとおり「一葉」(半懐紙版,半紙版)の商品形態として原告の主張する色彩や模様の選択,50枚を一組として販売している点については,いずれも独自の特徴であるとはいえず,その商品形態に商品等表\示性を認めることはできない。ア すなわち,「一葉」(半懐紙版,半紙版)には,原告の主張するとおり比較的落ち着いた色合いの色彩(小豆色,灰色,緑灰色,橙色及び濃緑灰色)が選択されているといえるが,証拠(乙10ないし12)によれば,市販されている他の書道用和紙(商品名「蜻蛉」,「花衣」,「草まくら」)においても,全く同一ではないにせよ,概ね同じ系統の色彩が選択されていると認められる(商品名「蜻蛉」[乙10]では,灰色系,緑色系,橙色系の色彩が,商品名「花衣」[乙11]では,緑色系の色彩が,商品名「草まくら」[乙12]では,緑色系の色彩がそれぞれ選択されている。)。したがって「一葉」(半懐紙版,半紙版)に用いられた色彩は,書道用和紙としては一般的なものといえ,これらの色彩の選択をもって,他の同種商品と比較して独自の特徴であると認めることはできない。・・・・したがって,「一葉」(半懐紙版,半紙版)の商品形態には商品等表示性があるものと認めることはできないから,原告の不正競争防止法に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。\n

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平成21(ワ)6755 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年12月16日 大阪地方裁判所 

 原告の商品陳列デザインが、不競法2条1項1号、2号にいう周知又は著名な原告の営業表示であるかが争われました。裁判所は営業表\示ではないと判断しました。
 商品陳列デザインは,売場という営業そのものが行われる場に置かれて来店した需要者である顧客によって必ず認識されるものであるから,本来的な営業表示ではないとしても,顧客によって当該営業主体との関連性において認識記憶され,やがて営業主体を想起させるようになる可能\性があることは一概に否定できないはずである。したがって,商品陳列デザインであるという一事によって営業表示性を取得することがあり得ないと直ちにいうことはできないと考えられる。
ウ ただ,商品購入のため来店する顧客は,売場において,まず目的とする商品を探すために商品群を中心として見ることによって,商品が商品陳列棚に陳列されている状態である商品陳列デザインも見ることになるが,売場に居る以上,それと同時に什器備品類の配置状況や売場に巡らされた通路の設置状況,外部からの採光の有無や照明の明暗及び照明設備の状況,売場そのものを形作る天井,壁面及び床面の材質や色合い,さらには売場の天井の高さや売場の幅や奥行きなど平面的な広がりなど,売場を構成する一般的な要素をすべて見るはずであるから,通常であれば,顧客は,これら見たもの全部を売場を構\成する一体のものとして認識し,これによって売場全体の視覚的イメージを記憶するはずである。そうすると,商品陳列デザインに少し特徴があるとしても,これを見る顧客が,それを売場における一般的な構成要素である商品陳列棚に商品が陳列されている状態であると認識するのであれば,それは売場全体の視覚的イメージの一要素として認識記憶されるにとどまるのが通常と考えられるから,商品陳列デザインだけが,売場の他の視覚的要素から切り離されて営業表\示性を取得するに至るということは考えにくいといわなければならない。したがって,もし商品陳列デザインだけで営業表示性を取得するような場合があるとするなら,それは商品陳列デザインそのものが,本来的な営業表\示である看板やサインマークと同様,それだけでも売場の他の視覚的要素から切り離されて認識記憶されるような極めて特徴的なものであることが少なくとも必要であると考えられる。
・・・
したがって,原告商品陳列デザイン1ないし3が顧客に認識記憶されるとしても,それは,売場全体に及んでいる原告店舗の特徴に調和し,売場全体のイメージを構成する要素の一つとして認識記憶されるものにとどまると見るのが相当であり,顧客が,これらだけを売場の他の構\成要素から切り離して看板ないしサインマークのような本来的な営業表示(原告における「西松屋」の文字看板や,デザインされた兎のマーク)と同様に捉えて認識記憶するとは認め難いから,原告商品陳列デザイン1ないし3が,いずれもそれだけで独立して営業表\示性を取得するという原告の主張は採用できないといわなければならない。またしたがって,この原告商品陳列デザイン1ないし3を,いくら組み合わせてみたとしても,同様のことがいえるから,原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザイン及び原告商品陳列デザイン1ないし3を全て組み合わせた商品陳列デザインについても,営業表示性を取得することはないというべきである。\n

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平成22(ネ)10015 輸入販売差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成22年11月29日 知的財産高等裁判所

 不競法2条1項1号、2号違反について、1審は請求棄却、2審も原判決維持しました。原告はアディダスジャパン(株)です。
 控訴人は,商品に付された状態の原告標章と被告各標章とを離隔的に観察すると,原告標章は,黒色の地の上に等間隔に配した白い複数の平行する直線と,当該直線と約60度の角度で交わる等間隔に配した白い複数の平行する直線とから成るなどといった構成であるのに対し,被告各標章は,褐色又は黒色の地の上に,等間隔に配した白い複数の平行する直線(直線1)と,直線1と約60度の角度で交わる等間隔に配した薄い緑がかった茶色の複数の平行する直線(直線2)とから成るなどといった構\成であるから,基本的な構成,すなわち,等間隔で平行に配した直線と,かかる直線と約60度の角度で交わる等間隔で平行に配した直線とから成るという点において共通し,また,各直線の輪郭がはっきりせず,にじんだ印象を与えるなどの共通点があるので,原告標章と被告各標章とは類似する旨主張する。しかし,原判決14頁9行目以下の(1)アでの認定のとおり,原告標章は,同じ大きさの3つの杉綾(ヘリンボーン)を組み合わせて「Y」字型としたモチーフ(一模様の単位)を連続して配して成り,各杉綾は白色,薄茶色,濃い茶色の色彩のものである。そして,これを付した商品(甲23の1〜7,11,12及び16〜18)を離隔的に観察した場合,確かに,色彩の組合せからして白色の杉綾部分が目立つが,あくまで,白色の杉綾が連続的に多数配されているとの印象を受けるにとどまり,白い複数の平行な直線同士が60度の角度で交わる模様であるとの印象は受けない。また,被告各標章は,原判決14頁26行目以下の(1)イ及び16頁20行目以下の(2)イでの認定のとおり,同じ大きさの3つの葉を配して扇形状としたモチーフを連続して配して成り,それぞれの葉は,白色,黄緑色,茶色の色彩のものである。そして,これを付した商品(甲21の1及び2,23の8〜18,乙30)を離隔的に観察した場合,白色と黄緑色の葉が目立ち,このうち複数の白色の葉は直線的に連続して配されているとの印象を受けるものの,複数の黄緑色の葉については,個々の葉の上端と下端とを結んだ線を仮定した場合,それらの線が少しずつずれており,これらが直線上に配されているとの印象は受けない。さらに,仮に原告標章の白色の杉綾部分が複数連なって直線を構\成しているとの印象を受けるとしても,原告標章では,直線を構成するのが長方形であって,同じ幅の線が続く印象を受けるのに対し,被告各標章では,白色の直線を構\成するのが葉であって,幅の変化(凹凸)が大きいので,控訴人が主張する「直線」から受ける印象も,原告標章と被告各標章とで異なっている。

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平成20(ワ)25956 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年09月17日 東京地方裁判所

 角質除去具について不競法2条1項1号の周知商品等表示と認定されました。
 前記イ及びウを総合すると,原告商品は,その販売が開始された平成18年9月26日当時,前記イ(ア)の形態において,同種商品と識別し得る独自の特徴を有していたものであり,かつ,販売開始後平成19年11月26日ころまでの約1年2か月の間に,多くの全国的な雑誌,新聞,テレビ番組等で繰り返し取り上げられて,原告商品の形態が写真や映像によって紹介されるなど効果的な宣伝広告等がされるとともに,原告商品の販売数も販売開始当初から飛躍的に増加し,平成19年11月の時点では約89万本に達し,美容雑貨の全国的なヒット商品としての評価が定着するに至ったものと認められる。上記認定事実によれば,原告商品の上記形態は,遅くとも平成19年11月26日ころまでには,全国の美容雑貨関係の取引業者及び美容に関心の高い女性を中心とした一般消費者の間において,特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得するとともに,原告商品を表\示するものとして需要者である上記取引業者及び一般消費者の間に広く認識されるに至ったものと認めるのが相当である。したがって,原告商品の上記形態は,原告の周知の商品等表示(不競法2条1項1号)に該当するというべきである。\n

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平成21(ワ)16809等 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年04月23日 東京地方裁判所

 不競法2条1項1号の周知の表品等表\示には該当しないと判断されましたが、民法上の不法行為であるとして140万円の損害賠償が認められました。
 原告は,平成19年8月ころ,Yahoo!及びGoogle において「樹液シート」又は「樹液シート格安」による検索をしたところ,原告店舗が最上位に表示された(甲22,23)旨の主張をするが,検索サイトにおける検索結果の順位は,検索用語として何を設定するかによって大きく変動し得るものであり,実際,「樹液シート格安」に代えて,「樹液シート激安」,「樹液シートデトックス」,「足裏樹液シート」などの用語で検索すると,原告店舗は最上位には表\示されない(上位にすら表示されないこともある。)のであるから(乙15,17,18,21,23,24,原告代表\\者本人),このような検索結果の順位をもって本件標章が周知であるというには,根拠が薄弱であるといわざるを得ない。
・・・・本件販売は,前記第2の2(4)のとおり,被告Aが,平成19年10月ころまでに,楽天市場オークション,ヤフーオークション及びビッダーズオークションに「樹液ドットコム」というインターネット商店を出店し,被告会社の委託を受けて,本件標章を付した樹液シート(原告がOEM供給元を被告会社とは別の製造業者に変更したことによって,被告会社の元に残った在庫品)を廉価で販売したというものである。そして,本件標章に化体された信用の主体として認識され得る立場にあったのは原告であり,他方,被告会社は,名翔からの注文に応じて本件標章の付された樹液シート(袋詰めされる前の半製品)を製造し,これを名翔に卸売りしていたにすぎないもので,被告会社にとって,本件標章は「他人の」標章に当たるものであることは上記1に認定判断したとおりである。そうすると,被告らによる本件販売は,OEM供給先である原告の信用が化体された本件標章が付された樹液シート在庫品の残りを被告らが原告に無断で販売したというもので,OEM商品の横流しともいうべき行為であり,公正な競業秩序を破壊する著しく不公正な行為と評価できるから,民法上の一般不法行為(共同不法行為)を構成するものと認めるのが相当である。\n

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平成21(ネ)10059 損害賠償請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成22年04月13日 知的財産高等裁判所

 知財高裁は、「天然オリゴ糖」は普通名称であるとして、不競法2条1項1号の周知表品等表\示には当たらないと判断しました。
「寒天オリゴ糖」という表示は普通名称であって,原則として,自他識別機能\ないし出所表示機能\を有するものではないから,それを商品に使用しても,商品等表示性を有するものではないというべきである。(3) この点について,控訴人は,同人が「寒天オリゴ糖」という商品名を健康食品それ自体の名称として使用した初めてかつ唯一の営業主体であって,平成12年5月の販売開始以来,新聞や雑誌,時刻表に広告を掲載し,インターネットや地下鉄,看板などでも広範に広告を展開するなどの大々的な広告活動を行ってきたことからすれば,仮に「寒天オリゴ糖」が原材料を表\す普通名称であったとしても,例外的に,控訴人商品の「寒天オリゴ糖」という表示について自他識別機能\ないし出所表示機能\を取得するに至っている旨主張する。しかしながら,全証拠を精査しても,控訴人が,「寒天オリゴ糖」という商品名を健康食品それ自体の名称として使用した初めてかつ唯一の営業主体であったことを認めるに足りる証拠はない。かえって,上記認定のとおり,「寒天オリゴ糖」という名称は,被控訴人の前身である宝酒造の研究成果の発表及びそれに続く商品の開発の過程で,新聞記事などにより需要者に認識されるようになったものと認められるから,需要者には「寒天オリゴ糖」を商品化したのは宝酒造であるとの認識が広がっていたものと認められるのであり,証拠(甲3)によれば,控訴人が健康食品としての寒天に注目したきっかけも,上記宝酒造の研究成果を聞知したことによるものであると認められるから,控訴人を,「寒天オリゴ糖」という商品名を健康食品それ自体の名称として使用した初めてかつ唯一の営業主体と認めることはできないというべきである。\n

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平成18(ワ)8794 不正競争行為差止等 意匠権 民事訴訟 平成21年12月10日 大阪地方裁判所

 不正競争防止法2条1項1号の商品形態には当たらないと判断されました。
 原告は,原告商品1の形態をもってその商品表示であると主張する。商品の形態は,それ自体として,直ちに当該商品の出所を表\\示するものではない。しかし,当該商品の形態が他の商品とは異なる独自の特徴を有しており,かつ,その形態が特定の者によって長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも極めて強力な宣伝広告活動や圧倒的な販売実績等があって,需要者において当該形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知となっている場合には,当該商品等の形態をもって,不正競争防止法2条1項1号の保護の対象となる商品表\\示と解することができる。そこで,かかる観点から,原告商品1の形態が周知商品表示性を獲得しているかどうかについて検討する。・・・・そこで検討するに,原告商品1Aの販売が開始された平成15年8月4日より前に,自動車の助手席前方に取り付けて使用するフロントテーブルにおいて,上下2段のテーブルを設け,上段テーブルは下段テーブルの右側に設置された支持脚により支持され,またドリンクホルダー用の円形の貫通部分が長手方向に間隔を置いて2箇所設ける形態は,周知なものであり,ありふれた形態であったことが認められる。そして,かかる形態は,原告商品1に接した需要者が認識する原告商品1の基本的な形態というべきであり,それでもなお原告商品1の形態をもって商品表\\示性を有するというためには,他の部分において相当程度特徴的な構成を備えていることを要するというべきである。この点,原告は前記のとおり原告商品1の形態上の特徴を主張するが,下段テーブルにコースターを設けること,上段テーブル及び下段テーブルの外周面に銀色のモールを設けること,下段テーブル上面に凹みを設けることそれ自体については,いずれも原告商品1Aの販売開始前に採用例があることが認められる。また,原告商品1における上記コースター,モール及び凹み部分の形態を見ても,それらの形態において他の商品と際だって異なる特徴的な形態が採用されているとも認め難い。なお,原告は,上記採用例について,原告が当時販売していたフロントテーブルの形態を模倣したものであると主張する。しかし,原告が当時販売していたと推認されるフロントテーブル(甲18の資料2の2枚目右列上から3番目の「フロントテーブルII )には,」少なくとも小物置きのための凹みは形成されておらず,この点において上記採用例が「フロントテーブルII」の形態を模倣したものということはできないのであり,他に,上記採用例が原告のフロントテーブルを模倣したものと認めるに足りる証拠はない。これに対し,原告が原告商品1の特徴の一つとして主張する「フランジが銀色のカップホルダ用装飾リング」について,原告商品1Aの販売開始前に,フロントテーブルのドリンクホルダーに装飾リングが設けられたものは見受けられない。しかし,他方で,原告商品1Aにはそもそも装飾リングが設けられておらず,原告商品1Bには装飾リングが設けられているものの保持部材は設けられておらず,原告商品1Cに至ってようやく保持部材付きの装飾リングが設けられているのであり,原告商品1は,装飾リングの形態において,大きく変遷しているのである。そうである以上,装飾リングの形態をもって,原告商品1の商品表示性の根拠たる独自の形態上の特徴と認めることはできない。オ 以上より,原告商品1は他の商品とは異なる商品形態を有していること自体は否定できないものの,その独自性は低いといわざるを得ない。\n

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平成21(ワ)657 商標使用差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成21年11月12日 東京地方裁判所

 「朝バナナダイエット」を含む題号の本について、商標権侵害、不競法違反は成立しないと判断されました。
 ところで,商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには,登録商標と同一又は類似の第三者の標章が,単に形式的に指定商品又はこれに類似する商品等に表示されているだけでは足りず,その商品の出所を表\示し自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されていることを要するものと解すべきである。前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表\示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表\示として不自然な印象を与えるとはいえない表示を用いて記載されているといえる。そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表\示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表示であると理解するものと解される。なお,被告書籍の題号のうち,「朝バナナ」の文字部分は,「ダイエット成功のコツ40」の部分に比べて大きく記載されており,被告書籍の題号中当該部分が強調されているといえる。しかしながら,「朝バナナ」という用語は,朝食時にバナナと水を摂取することを基本とするダイエット方法として知られる「朝バナナダイエット」を略称した用語として一般に知られていること(甲7ないし18,30,32,34ないし40,42),両部分は統一感のあるデザイン,色調で記載されていることに照らせば,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」という部分を,原告の出版活動と関連させて理解するというよりは,むしろ,被告書籍が「朝バナナダイエット」に関する内容の書籍であることを強調する部分であると理解するものと考えられる。(4)以上によれば,被告書籍のカバーや表\紙等における被告標章の表示は,被告標章を,単に書籍の内容を示す題号の一部として表\示したものであるにすぎず,自他商品識別機能ないし出所表\示機能を有する態様で使用されていると認めることはできないから,本件商標権を侵害するものであるとはいえない。・・・自己の商品表\示中に,他人の商品等表示が含まれていたとしても,その表\示の態様からみて,専ら,商品の内容・特徴等を叙述,表現するために用いられたにすぎない場合には,他人の商品等表\示と同一又は類似のものを使用したと評価することはできない。前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表\示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表示として不自然な印象を与えるとはいえない表\示を用いて記載されているといえる。そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表\示であると理解するものと解され,被告標章を含む被告書籍の題号は,専ら,被告書籍の内容を表現するために用いられたものであると認めるのが相当である。」\n

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平成21(ワ)3556 名称使用差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所

 「投資事業有限責任組合」が「東京証券取引所」の略称である「東証」と混同のおそれがあると判断されました。
ウ 不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」とは,他人 の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と他人とを同一\n営業主体として誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会 社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業\nを営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含し,混同を 生じさせる行為というためには両者間に競争関係があることを要しないと解 される(前記最高裁昭和59年5月29日第三小法廷判決,前記最高裁平成 10年9月10日第一小法廷判決等参照)。 そして,前記イのとおり,被告名称「東証投資事業有限責任組合」と原告 の営業表示である「東証」は,類似すると認められ,また,被告の業務が株\n式会社の設立に際して発行する株式の取得及び保有等であり,原告の業務が 有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を行うための市場施設の提供等で あって(前記⑴のとおり,当事者間に争いがない。),その業務内容には密接 な関連性があると認められるから,原告被告間に直接の競争関係があるとは 8 いえないとしても両者間に,「いわゆる親会社,子会社の関係や系列関係など の緊密な営業上の関係が存すると誤信させる」ものであることは明らかであ る。 したがって,請求原因(2)イ(ウ)は,認めることができる。 (3) 請求原因(3)ウは,当事者間に争いがなく,また,証拠(甲9)及び弁論の 全趣旨によれば,請求原因(3)ア及びイの事実が認められるから,原告は,被告 による被告名称の使用により,少なくとも,営業上の利益を侵害されるおそれ があると認めることができる。

◆平成21(ワ)3556 名称使用差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所
 

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◆平成20(ワ)2305 不正競争行為差止請求事件 不正競争 民事訴訟 平成21年05月14日 東京地方裁判所

 有名フランス料理店を経営する原告が,不競法2条1項1号に基づき、店名と同じ名称のワインを広告販売することの差し止めを求めました。東京地裁は、周知性を有しないとして請求を棄却しました。
 「以上のとおり,本件において原告が挙げる上記各証拠は,それのみでは各原告表示の周知性を立証するに足りる証拠とはいえず,また,これらを併せ考慮しても,各原告表\示の識別力が弱いこと,各掲載における各原告表示の表\記の大きさ,表記方法等に鑑みれば,各原告表\示が全国的な一般消費者に周知であることを認めるに足りないといわざるを得ない。・・・そして,上述のとおり,原告が各原告表示の周知性の立証として提出する証拠は,いずれも,原告自身が広告宣伝活動を行ったというものではなく,上記各媒体からの取材に応じるなどして,原告レストランが紹介されたというものにすぎないから,一定期間にわたって継続的に各原告表\示が多数の一般消費者に認識される形態で広告宣伝活動が行われたわけでもない。(6)以上検討したところによれば,本件全証拠によっても,各原告表示が,被告商品の需要者である,全国的な一般消費者の間に広く認識されているものであることを認めるに足りない。」

◆平成20(ワ)2305 不正競争行為差止請求事件 不正競争 民事訴訟 平成21年05月14日 東京地方裁判所

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◆平成19(ワ)35028 営業表示使用差止等請求事件 不正競争民事訴訟 平成20年09月30日 東京地方裁判所

 営業表示「東急」が、営業表\示「TOKYU」、「tokyu」と類似するかが争われました。
  「これに対し原告は,「東急」の営業表示が著名であることを考慮すれば,「とうきゅう」という称呼を通じて営業表\示として観念される語は「東急」だけであるから,「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示と「東急」の営業表示とは,称呼を通じて観念的に類似している旨主張する。しかし,?@被告は,昭和51年8月30日に設立後,現在まで32年以上にわたり,「藤久建設株式会社」(読み方・「とうきゅうけんせつかぶしきかいしゃ」)の商号で,宮城県石巻市及びその周辺の地域において建物建築工事,ガーデニング工事等の請負等の取引を行っていること(前記(2)ア(ア))からすれば,石巻市及びその周辺の地域では,「とうきゅう」との称呼から営業主体としての被告を想起する者も相当数存在するものとうかがわれること,?A加えて,大分県大分市内では,東九興産株式会社が,約38年間営業活動を行い,その商号の「東九」の部分を「とうきゅう」と称していること(乙13,弁論の全趣旨),岩手県盛岡市内では,昭和63年に設立された株式会社とうきゅう商事が営業活動を行っていること(乙14,弁論の全趣旨),岡山県倉敷市内では,株式会社東久ストアが営業活動を行い,その商号の「東久」の部分を「とうきゅう」と称していること(弁論の全趣旨)に照らすならば,「とうきゅう」という称呼に基づいて想起し得る営業主体は,全国の各地域ごとの取引の実情に応じて,原告及び東急グループ以外のものも含まれることは明らかであるから,「とうきゅう」という称呼を通じて観念される営業表示が「東急」だけであるとの原告の主張は採用することができない。」

◆平成19(ワ)35028 営業表示使用差止等請求事件 不正競争民事訴訟 平成20年09月30日 東京地方裁判所

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◆平成18(ワ)17357  商標権 民事訴訟 平成19年05月31日 東京地方裁判所

  不競法2条1項1号に基づく損害賠償として、約1300万円が認められました。
   「本件における不正競争行為は,被告標章を使用して営業したことであるところ,被告は,資本金450万円(前記1(3)イ),社員は,代表者(営業も行っている。),営業専任の従業員1名,女子事務員1名,その他サポート役の従業員が4名の合計7人(乙5),年間の総売上額が平成15年度が1億2214万5173円(乙6),平成16年度が1億3153万7179円(乙7),平成17年度が1億0542万0779円(乙8)と比較的小規模な会社である・・・。そして,その業務は,コンピュータシステム等の企画・開発販売等であるが,中でも被告標章を使用したビデオ/CDレンタルショップ向けのPOSシステムの販売がほぼ100パーセントを占める(乙5)。以上の被告の不正競争行為にかんがみれば,被告の営業に伴う費用,すなわち,被告の損益計算書(乙6ないし8)において売上原価並びに販売費及び一般管理費として計上されているものは,すべて被告の不正競争行為に必要な費用であり,同行為と相当な因果関係のある費用としてこれを控除すべきである(損益計算書において営業外費用として計上されているものは,不正競争行為に必要な費用であるとはいえず,これと相当な因果関係のある費用とは認められないから,控除の対象とすべきではない。)。したがって,被告がその不正競争行為により得た利益の額は,その損益計算書における営業利益の額と等しいと認められるところ,その営業利益の額は,・・・である(乙8)。よって,被告が,平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間にその不正競争行為により得た利益の額は,上記営業利益額の合計である1191万2588円であり,それが,不正競争防止法5条2項に基づき,原告の損害の額と推定される。」

◆平成18(ワ)17357  商標権 民事訴訟 平成19年05月31日 東京地方裁判所

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◆平成16(ワ)18090 不正競争行為差止等請求事件 平成18年07月26日 東京地方裁判所

  腕時計(ROLEX)について、各要素の組合せからなる全体の形態は,不正競争防止法2条1項1号及び2号の商品等表示性を有すると判断されました。
  「(ア) 前記認定の事実によれば,原告各製品の各要素の組合せからなる全体の形態は,形態自体が極めて特殊で独特であり,その形態だけで商品等表示性を認めることができる場合には当たらないが,同種製品と区別し得る形態的特徴を有しており,これに前記の原告各製品の販売状況及び雑誌等での紹介の実情等を考慮すると,上記の各要素の組合せからなる全体の形態は,原告各製品が原告の製造販売に係るものであることを示す商品等表\示に該当するということができる。 (イ) 原告は,原告各製品の形態のうち,共通形態A及び共通形態Bについても,原告の出所を示す商品等表示に当たる旨主張する。しかし,前記(2)エに認定した事実を考慮すると,共通形態A及び共通形態Bのみでは,いまだ原告の商品等表示に当たると認めることはできない。(ウ) 被告らは,原告各製品の各要素の形状はありふれた形状又は機能上通常選択される形状であり,特別顕著性がなく,各要素の組合せによる全体の形態も特徴がないので,商品等表\示性がない旨主張する。 しかしながら,ある機能を達成するために,いくつかの選択肢があるのが普通である。例えば,針には,時刻を示すという機能\から形態に制約があるといっても,いくつかの選択肢があるし,塗料がたれないようにするためには,ベンツ針以外の形態も選択が可能である。また,原告各製品から各要素を取り出せば,他社製品の中にそれと同一又は類似の形状を見いだすことができること(前記(2)エ(サ))からすると,原告各製品の各要素の形態はありふれた形状であるといわざるを得ないが,原告各製品の各要素の組合せからなる全体の形態と同一又は類似の組合せからなる他社製品はさほど見いだせないこと(前記(2)エ)からすると,数ある形状の中から選択された各要素の組合せからなる原告各製品の全体の形態は,形態的特徴を有するものというべきである。」

◆平成16(ワ)18090 不正競争行為差止等請求事件 平成18年07月26日 東京地方裁判所

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◆H15.11.11 東京地裁 平成14(ヨ)22155 不正競争 民事仮処分事件

 「マクロスゼロ」などの標章を付したアニメDVD,ビデオの販売差し止めの仮処分事件です。争点は、「超時空要塞マクロス」等の表示が商品等表\示(不競法2条1項1,2号)に該当するかです。裁判所は、「商品等表示」に該当しないと判断しました。
 「(2) テレビ放映用映画ないし劇場用映画については,映画の題名(タイトル)は,不正競争防止法2条1項1号,2号所定の「商品等表示」に該当しないものと解するのが相当である。けだし,映画の題名は,あくまでも著作物たる映画を特定するものであって,商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体を識別する表\示として認識されるものではないから,特定の映画が人気を博し,その題名が視聴者等の間で広く知られるようになったとしても,当該題名により特定される著作物たる映画の存在が広く認識されるに至ったと評価することはできても,それにより特定の商品や営業主体が周知ないし著名となったと評価することはできないからである。本件において,債権者は,本件テレビアニメの題名「超時空要塞マクロス」及び本件劇場版アニメの題名「超時空要塞/マクロス」が周知ないし著名となり,その結果,本件各表示が債権者の商品等表\示として周知ないし著名となったと主張するが,これらの題名は,著作物であるアニメーション映画自体を特定するものであって,商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体としての映画製作者等を識別する機能を有するものではないから,不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「商品等表\示」に該当しない。」

      

◆H15.11.11 東京地裁 平成14(ヨ)22155 不正競争 民事仮処分事件

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◆H15. 7.24 名古屋地裁 平成15(ワ)828 不正競争 民事訴訟事件

 刺繍糸の色番号が商品表示に当たるかが争われました。裁判所は、これを認めませんでした。
  「原告は,長年,原糸の製造販売を業としているところ,かねてから多種類の色の刺しゅう糸を番号によって容易に特定,識別し得るように,色の種類ごとに4桁の数字から成る色番号(本件色番号)を付し,それを刺しゅう糸を巻いた紙管に表示し,さらに本件色番号を同系色が近い位置になるように配列した色見本帳を作成している事実が認められ,これによれば,原告の刺しゅう糸を購入しようとする需要者は,原告(若しくは原告の商品のみを取り扱う業者)に対して,ある色番号を示すことにより,必要な色の刺しゅう糸を特定,識別することが可能\となっていると推認できる。 しかしながら,他方,前掲各証拠等によれば,原告が用いている本件色番号は,原告が製造販売する刺しゅう糸の色の種類ごとに付された4桁の数字(700種類)であって,その前後に何らの表記がなく,その字体にも格別特色があるわけではなく,その配列等についても同系色についておおよそ近似した数字を付してあるにとどまり,その表\示に独特の工夫をこらして案出されたものとはいえないことが認められる。そうすると,本件色番号は,つまるところ,単なる4桁の数字が色の種類に応じて付されているに止まるから,両者の対応関係には取引上の有用性が存在するものの,個々の色番号自体にいわゆる特別顕著性を認めることはできない。したがって,本件色番号について,他の第三者の商品とを区別するに足りる自他識別力(特別顕著性)ないし出所表示機能\を有すると認めることはできない。」

◆H15. 7.24 名古屋地裁 平成15(ワ)828 不正競争 民事訴訟事件

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◆H15. 2.20 東京地裁 平成13(ワ)2721 不正競争 民事訴訟事件

  登録商標「マイクロシルエット」の使用は、周知標章である「マイクロダイエット」との混同が生ずるとして不競法2条1項1号、2号にて、差止、損害賠償を求めていた事件で、その主張が認められました。
 被告は登録商標の使用であると抗弁しましたが、裁判所は、「訴外Aは,原告サニーヘルスに従業員として在職中に,原告商品が好調な売れ行きを示し,原告標章が周知の商品等表示となっていることを認識しながら,これと類似する被告登録商標につき商標登録出願をしたものであり,原告標章の周知性にただ乗りする意図の下に上記商標登録出願をしたものと認められる。そして,被告ホルスは,原告標章が周知の商品等表\示となっていることを認識しながら,訴外Aからこれと類似する被告登録商標の商標登録を受ける権利を譲り受けたものであり,また,その際,同被告は,原告標章が周知の商品等表示となった後に被告登録商標が出願されたことを認識していたか,又は知り得べきものでありながら過失によって知らなかったものと認められる。上記のような各事情に照らせば,被告ホルスが商標権者として被告登録商標を使用する行為は権利濫用に該当するものであり,本件訴訟において,不正競争防止法2条1項1号,2号を理由とする原告らの請求に対し,登録商標使用の抗弁を主張することもまた,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。」として、かかる抗弁を認めませんでした。
 同じ様な判断が、◆H12.10.12 大阪地裁 平成10(ワ)9655 商標権 民事訴訟事件
にありました。こちら4条1項11号違反です。

 

◆H15. 2.20 東京地裁 平成13(ワ)2721 不正競争 民事訴訟事件

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◆H14.12.19 大阪地裁 平成13(ワ)10905 不正競争 民事訴訟事件

  商品「マグライト」の類似品は販売する行為は、不正競争防止法2条1項1号(他人の商品等表示)に該当するかが争われた事件です。
   裁判所は、「「商品の形態が他の商品と識別し得る独特の特徴を有し、かつ、商品の形態が、長期間継続的かつ独占的に使用されるか、又は、短期間であっても商品の形態について強力な宣伝広告等により大量に販売されて使用されたような場合には、商品の形態が特定の者の商品を示す商品表示として出所識別性を取得し、需要者の間で広く認識されるに至ることがあり得、そのような場合には、商品の形態が不正競争防止法2条1項1号の商品表\示として保護されるものと解される。」と判断して、輸入・販売差し止めと1349万7590円(弁護士費用、調査費用含む)の損害賠償を認めました。  ちなみに、問題となった形態は、指定商品を「懐中電灯」とする立体商標の登録出願がなされましたが、指定商品との関係では、その商品の形状として通常採用し得る立体的形状からなるものとして、拒絶されています。この点について、裁判所は、「・・・上記出願に係る標章が、特許庁において商標としての自他商品識別機能を有しないと判断されたからといって、原告商品の商品形態に不正競争防止法2条1項1号の商品表\示性があるとする前記認定を左右するものではない。」と判断しました。

 

◆H14.12.19 大阪地裁 平成13(ワ)10905 不正競争 民事訴訟事件

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