2013.12. 1
平成24(ワ)36238 その他 民事訴訟 平成25年11月21日 東京地方裁判所
商号の一部の「MCP」について不競法2条1項1号による差止が認められました。
前記前提事実における原告MCPの施設の種類,所在地及び数に加え,前記(1)認定の原告MCPの営業表示に関する事実,すなわち,業界紙等において掲載された原告MCPの記事や広告の内容や頻度,原告MCPが配布した事業案内や施設案内の内容,配布対象,地域及び数,原告MCPの職員が業界団体の副会長等に就任したこと等からすれば,原告MCPの営業主体性を示すものとして,原告MCP商号は福島県と埼玉県及び群馬県内の,原告MCP標章は福島県内の需要者に広く認識されていると認められるが,いずれも他の地域において広く認識されているとは認め難い。\n
・・・
前記前提事実及び前記1(1)サ認定の事実によれば,原告らは医療介護複合施設の運営管理等を業とし,被告は介護事業者等向けの不動産仲介業や介護,医療施設の設計施工等を業としているのであり,原告らと被告は,いずれも介護や医療に関係する業務を営んでいるから,被告が「メディカルケアプランニング」又は「MEDICAL CARE PLANNING」(小文字の表記を含む。)の名称,被告商号及び被告標章などの営業表\示を使用する行為は,原告メディカルの営業と混同を生じさせ,また,被告が被告商号及び被告標章などの営業表示を使用する行為は,原告MCPの営業と混同を生じさせる。被告は,親会社であるイー・ライフの顧客のみを対象として営業をしているから,混同のおそれはないと主張する。しかしながら,被告が親会社の顧客のみを対象として営業しているものであるとしても,原告らと被告は,いずれも介護や医療に関係する業務を営んでいて,その需要者が重複するから,上記営業表\示を使用する被告の行為が原告らの営業と混同を生じさせることを否定することはできない。被告の上記主張は,採用することができない。
4 そうすると,原告らは,それぞれの営業表示が周知性を獲得した範囲内において,被告の不正競争によって,営業上の利益が侵害されるおそれがあると認められる。以上によれば,原告メディカルの請求は,各種広告,インターネットのホームページ,事業案内,営業用パンフレット,営業用封筒,便せん,社員用名刺及び看板等に表\示する又は新聞雑誌等の記事として掲載させる等の方法で,老人介護に関連する事業の営業表示として,原告メディカル商号に類似する「メディカルケアプランニング」又は「MEDICAL CARE PLANNING」(小文字の表記を含む。)の名称を使用すること,関東地方において原告メディカル標章に類似する被告商号及び被告標章を使用することの差止めを求める限度で理由があり,原告MCPの請求は,上記と同様の方法で,上記事業の営業表\示として,福島県,埼玉県及び群馬県内において原告MCP商号に類似する被告商号及び被告標章を使用すること,福島県内において原告MCP標章に類似する被告商号及び被告標章を使用することの差止めを求める限度で理由がある。
◆判決本文
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2013.10. 1
平成24(ワ)13282 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年09月19日 大阪地方裁判所
形態に特別顕著性なし、周知とは認定できないとして、差止および損害賠償請求は、棄却されました。
前記イでみた原告商品の形態の特徴は,機能に基づくものということができる。しかも,原告が,原告商品の形態について周知性を獲得したと主張する平成22年1月までには,既に,他社のテレビ台が同様の機能\に基づく形態上の特徴を有していたことも認められる(乙1〜6)。これらの商品と原告商品とを対比すると,次のような相違点を認めることができる。すなわち,上部箱の片方についている脚が略円柱ではなく,略直方体である場合や(乙1の商品との対比。なお,乙1の商品については,インターネット上のウェブサイト(楽天市場)において,平成20年9月3日に,購入者によるコメントが投稿されている。),上部箱の側壁が木製板でなく,透明板である場合や(乙2の商品との対比。なお,乙2の商品については,前同様に,平成20年9月24日にコメントが投稿されている。),上部箱の片方についている支持体が2本の脚ではなく,全面板状である場合や(乙3の商品との対比。なお,乙3の商品は,前同様に,平成21年1月24日にコメントが投稿されている。),上部箱の片方についている脚が木製ではなく,金属製である場合(乙4の商品との対比。なお乙4の商品については,前同様に,平成21年7月20日にコメントが投稿されている。)が認められる。しかし,これらの相違点は,家具などの商品を構成する,ありふれた部分の形状に係るものであり,その差異の程度も僅かというべきである。以上によると,原告商品の形態に特別顕著性を認めることは困難であり,その形態についての需要者における認識の程度が,後記(2)の程度であったことを併せ考えると,原告商品の形態が,出所を表示する機能\を有していると認めることはできない。
・・・・
以下の理由から,原告商品の形態が,商品等表示性を獲得するに足りるだけの周知性を獲得していると認めることはできない。\n
ア 販売実績
原告は,平成18年6月から,原告直営店や自社のウェブサイト,デパートのほか,楽天市場やヤフーショッピング内における原告のサイトにおいて,原告商品を販売しており(デパートでの販売は,卸を通じたものであり,それ以外は直販である。),平成22年1月ころまでに約1万5000台を販売したことが認められる。証拠(甲8の1〜18,甲9,19から21,26,28,29)及び弁論の全趣旨によると,前記販売件数は,テレビ台の販売件数としては比較的多いということがいえる。もっとも,テレビ台全体の市場における原告商品の市場占有率等は明らかではない。原告は,原告商品の販売実績が多量であることを裏付ける事情として,楽天市場における販売ランキングの順位についても主張しているが,当該ランキングにおける順位は,販売数量だけを基準としたものでないこと,楽天市場のほかにも,インターネットにおいて家具等を販売するウェブサイトが多数存在していることは当裁判所に顕著な事実である。したがって,楽天市場におけるランキングのみをもって原告商品の知名度等を評価することはできない。そもそも,原告商品は,テレビ台であることから,その耐用年数や家庭での需要台数を考えると,1台購入した者が引き続き購入することは考えにくい商品といえる。イ 広告宣伝等の状況及び購買状況原告が,原告商品について,大がかりな広告宣伝を実施していたことを認めるに足りる証拠があるわけではなく,上記販売件数のうち相当数は,テレビ台の購入希望者が,インターネットや店頭において,他の商品と比較しながら,原告商品を選択していったものであることを否定できない。このことは,上記販売件数が,原告商品の持つ機能やデザインが優れていることに起因すると推測することができるものの,原告商品の形態が予\め購入希望者の意識にどの程度あり,これが,購入希望者にどのような影響を与えているかは不明である。以上によると,原告商品の形態が,商品等表示として出所識別機能\を有するに至るまで,顧客との間で,長年継続的かつ独占的に使用されてきたと認めることはできない。
ウ レビュー件数
確かに,インターネット販売において,原告商品に関するレビューの件数が,他のテレビ台より格段に多いことが認められる(甲16の1〜7,甲21)。しかし,上記レビューの数が,単に同種商品に関するレビューの数より格段に多いということのみをもって,原告商品の形態が,購入者層に広く普及したと認めることは困難というべきである。
◆判決本文
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2013.07.31
平成25(ワ)8943 商号使用差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年07月12日 東京地方裁判所
「株式会社三菱商会」について、周知商品等表示であるとして、商号使用差止が認められました。
甲2,3及び弁論の全趣旨によれば,「三菱」の表示は,原告らいわゆる三菱グループの商品等表\示として著名であることが認められる。被告商号のうち「株式会社」及び「商会」の部分は会社の種類及び事業分野を表す一般名詞であり,商品又は役務の出所識別機能\を有しないから,被告商号の要部は「三菱」の部分というべきところ,これは原告らの商品等表示(「三菱」)と同一である。したがって,被告商号は原告らの著名な商品等表\示と類似し,被告が被告商号を使用する行為は不正競争防止法2条1項2号の不正競争に該当する。被告は,1) スポーツ全般における測定器の販売及び測定事業,2)自動車販売,3)労働者派遣事業,4)飲食店の経営,5)コンサート,イベントの企画,制作等を目的とする株式会社であり(甲1),原告らは,これらと重複する事業目的を有する株式会社であるから(甲5ないし7),原告らは,被告商号その他の「三菱」の文字を含む商号,標章の使用により「営業上の利益を侵害されるおそれがある者」といえる。
◆判決本文
こちらは、「株式会社三菱エステート」に対する商号使用差し止めです。
◆平成25(ワ)5595平成25年07月12日東京地裁
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2013.07. 8
平成24(ワ)9449 不正競争防止法,著作権侵害・損害賠償 不正競争 民事訴訟 平成25年07月02日 東京地方裁判所
ワインの図柄について創作性無しとして請求棄却されました。不正競争行為(1号)にも該当しないと判断されました。
著作権法2条1項1号は,著作物について「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,同条2項は「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする。」と規定している。これらの規定に加え,著作権法が文化の発展に寄与することを目的とするものであること(同法1条),工業上利用することのできる意匠については所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができるとされていることに照らせば,純粋な美術の領域に属しないいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予\定されている図案やひな型などは,鑑賞の対象として絵画,彫刻等の純粋美術と同視し得るといえるような場合を除いては,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。これを本件についてみると,本件図柄は,その外形上明らかに被告のワイナリーの広告等の図柄として作成されたものであり,また,本件各原告看板は,本件図柄を利用して製作された広告看板そのものであって,いずれもいわゆる応用美術の領域に属するものと認められる。そして,本件図柄及び本件各原告看板は,訴求力のある広告効果を持たせるような配色,図柄の形状,字体の選択,各素材の配置等について一定の工夫がされているとはいい得るものの,広告の対象となる被告の名称及び施設の種類を表す文字とグラスの図柄の単純な組合せからなるもので,これらが,社会通念上,鑑賞の対象とされ,純粋美術と同視し得るものであると認めることは困難である。
イ さらに,著作権法上の著作物として保護されるためには「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)であることを要するが,前記著作権法の趣旨に鑑み,ありふれた表\現にすぎないものは,「創作的に表現したもの」には当たらないというべきである。これを本件図柄及び本件各原告看板についてみると,1)ワイナリーの広告看板に「ワイナリー」や「工場見学」という文字,ワイナリーへの方向を示す矢印及び距離,ワイングラスを想起させる図形を表示することは,一般的であると解されること,2)グラスの上及び中に配置した文字のバランスに工夫があるとしても,素材を用いて図柄を作成する上での配置としてありふれたものの域を出ないし,グラスの形状にも,格別の創作性は認められないこと,3)文字のうち「シャトー勝沼」の部分は毛筆体を思わせるやや角張った特徴のある書体であるが,書体の形態は文字の有する情報伝達機能を発揮するため必然的に一定の制約を受けるものであるから,書体に著作物性を認めるためには書体が顕著な特徴を有するといった独創性があることを要するところ,上記文字の書体にそのような独創性があるとは認められないこと,4)広告看板の背景や素材に濃い青色と白色と黄色,あるいはこれらの色と赤色を採用して組み合わせることは,他の看板においても見られるものであって(乙3),ありふれたものにすぎないこと,5)本件図柄及び本件各原告看板を一体として見たとしても,文字と図柄の単純な組合せにすぎず,全体として一つのまとまりのある表現物として創作性を有しているとは認められないことからすれば,著作権法上保護されるに足りる創作性があるということはできないと解される。\n
ウ 以上のとおりであるから,本件図柄及び本件各原告看板は著作権法上の著作物に当たらないと判断することが相当である。
◆判決本文
◆関連事件はこちらです。平成24(ワ)9468
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2013.04.11
平成24(ネ)10067 不正競争行為差止請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成25年03月28日 知的財産高等裁判所
1審は周知商品等表示とは認めませんでしたが、知財高裁は周知性ありと認定しました。\n
控訴人は,創業100余年を数え,その主要事業である車両製造の分野では,国内最大手の会社である。そして,控訴人の表示としては,その商号である「日本車輌製造株式会社」のほか,控訴人表\示(日本車両),「日本車輌」「日本車両製造」「日本車輌製造」「日車両」「日車輌」等があるが,控訴人は,平成8年に,「日本車両」との文字(控訴人表示)とコーポレートマークを組み合わせた社名ロゴマークを策定し,建物看板,展示用のぼり,工事現場等の看板にこれを使用していること,控訴人が製造した鉄道車両には,原則として,その社内の前部又は後部の壁の上段等に,控訴人表\示を記載した銘板が設置されていること,多数の新聞,雑誌で控訴人表示を用いた広告が行われていること,控訴人に関する新聞記事でも,控訴人の表\示として,控訴人表示を用いたものが多数あることなどからすると,控訴人表\示と「日本車輌」との表示の差異について検討するまでもなく,控訴人表\示は,控訴人の営業表示として,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者のほか,広く一般の国民にも認識されており,遅くとも被控訴人が設立された平成21年6月までには,少なくとも周知性を獲得していたということができる。なお,控訴人表\示が表示された各新聞記事は,控訴人が自らその営業表\示として控訴人表示を使用したものではない。しかしながら,不正競争防止法2条1項1号にいう広く認識された他人の営業であることを示す表\示には,営業主体がこれを使用ないし宣伝した結果,当該営業主体の営業であることを示す表示として広く認識されるに至った表\示だけでなく,第三者により特定の営業主体の営業であることを示すものとして用いられ,そのような表示として広く認識されるに至ったものも含まれるものと解するのが相当である(最高裁平成5年(オ)第1507号同年12月16日第一小法廷判決・裁判集民事170号775頁参照)から,上記各新聞記事に基づいて控訴人表\示の周知性を認定することが妨げられるものではない。
(3) 被控訴人の主張について
ア 被控訴人は,控訴人表示は国名を表\す「日本」と,鉄道車両に限られない車両全般を表す「車両」という普通名詞を組み合わせたものであり,識別性がないから,控訴人表\示は,控訴人の営業表示として,需要者の間に広く認識されているとはいえないと主張する。しかしながら,控訴人表\示が普通名詞を組み合わせた表示であるとしても,前記(2)のとおり周知性を獲得するに至っている以上,控訴人表示に識別性がないという被控訴人の主張は失当であり,これを採用することはできない。イ 被控訴人は,被控訴人の事業の需要者と控訴人の事業の需要者は共通するものではなく,また,鉄道業者や鉄鋼生産業者は被控訴人の需要者ではないとして,仮に,控訴人表示が控訴人の需要者には周知でも,被控訴人の需要者には周知でないから,不正競争防止法2条1項1号は適用されない旨主張する。しかしながら,前記のとおり,控訴人表\示は,控訴人の営業表示として,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者のほか,広く一般の国民に認識されているものである以上,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者と被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者との異同にかかわらず,被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者の間における控訴人表\示の周知性が否定されるものではない。のみならず,不正競争防止法2条1項1号にいう「需要者」には,最終需要者に至るまでの各段階の取引業者も含まれると解すべきところ,控訴人は,鉄道車両の製造以外にも,建設機械製造,橋梁建設等を業として行っているから,その取引者,需要者には,鉄道車両を購入する鉄道会社のほか,建設工事業者や橋梁工事等で発生した産業廃棄物の処理業者等も含まれるものと考えられ,一方,鉄道車両の解体,リサイクルを主たる目的とする被控訴人の取引者,需要者には,解体する車両を提供する鉄道会社のほか,リサイクルした製品,解体した鉄等の販売先等が含まれるものと考えられるから,両者の取引者,需要者は,相互に重なり合うか,あるいは,密接な関連性を有するものであるということができる。そうだとすると,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者の間で控訴人表示が広く認識されているものである以上,被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者の間においても,控訴人表\示は広く認識されているというべきである。
◆判決本文
◆原審はこちら。平成23(ワ)7924平成24年07月19日東京地裁
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2013.04. 9
平成23(ワ)30566 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年03月27日 東京地方裁判所
空気清浄加湿機について、不競法2条1項1号の周知形態とは認められないと判断されました。
不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは,人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表\示するものをいい,商品の形態は,商品等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないから,商品の形態自体が不競法2条1項1号に「商品等表\示」に該当するためには,1)商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要するものと解するのが相当である。\n
・・・・
以上のとおり,原告商品における空気吹出口,空気吸込口,エリミネーター点検口及び水槽部点検口等の位置関係,配置,構造は,業務用の空気清浄加湿機という商品の機能\上ないし技術上の制約からくる不可欠の形態ないしは通常選択されるべき形態であって,業務用の空気清浄加湿機の形態として通常ありふれた形態というべきであり,また,原告が主張するその他の原告商品の形態の特徴に関しても,主位的主張及び予備的主張のいずれについても採用することができないから,原告商品の形態に特別顕著性を認めることはできないというべきである。
◆判決本文
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