食品パッケージのデザインについて、周知の商品等表示(不競法2条1項1号)ではないと判断されました。判決文の最後に双方の形状が記載されています。
また,背景の基調色が濃紺色であること自体が商品の出所を表示するものであると認めるに足りる証拠はない。証拠(甲34の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,各食品メーカーは,同種の自社製品につき,同じ形状とレイアウトデザインの包装用袋を採用し,製造者又は販売者を示す標章を記載しつつ,商品ごとに部分的に記載内容や基調色を変えることを,一般的に行っており,そのような一連の商品が多数市場に流通していると認められるところ,一般消費者も,これを認識して購買しており,包装用袋の形状及びレイアウトデザインの特徴,製造者又は販売者を示す標章によって,その商品の出所を識別するのが通常であり,背景の基調色が,前記の各点以上に重要な考慮要素とされているとは考え難い。画像や文字を目立たせるために,黄色に対して青紫色などの反対色を背景に着色することは,一般的には,よく行われる色彩の選択であり,食品ないしサラダの包装用袋の商品表\示において,かかる配色が従前なかったとしても,そのことのみをもって,前記認定を左右するとは認められない。
・・・・
しかしながら,食品において,種々の新製品が開発され,流通に置かれていることは,公知の事実であり,以前に控訴人表示のような表\示がなかったことのみをもって,控訴人表示が自他商品識別力を有するに至るとは考えられない。商品名を表\示の上部などの読みやすい位置に大きく表示し,背景色が濃色の場合は白抜きにすることは,ありふれた表\示であるといわざるを得ないし,食品において,その包装用袋の一部を透明にして内容物を当該袋の外から見られるようにすることも,ありふれた表示である(甲34の1,2)。前記認定のとおり,控訴人表\示の左上の標章の部分を除けば,その余の表示部分が,自他商品識別力を有するに至っているとは認められない。したがって,控訴人の前記主張は,採用できない。\n
◆判決本文
◆原審はこちら。平成27(ワ)28027
図形商標については非類似と認定しましたが、不競法に基づく損害賠償として売り上げの1%が認定されました。
原告は,原告標章1の上下に2本の直線を追加すると,「Z」との文字が浮かび
上がり,被告標章1も,原告標章1を構成する2つの三角形状の図形にそれぞれ3本の白線を追加したものにすぎず,同様に「Z」の文字が浮かび上がるもので,両
者は類似する旨主張する。
しかし,標章の上下に2本の直線を追加すると「Z」の文字が浮かび上がるとい
ったことは,需要者が容易に認識し得るものではないことからすれば,この点が類
否に影響を及ぼすものではない。
原告標章1は,一辺を曲面の凹面で切り取られた赤色の鈍角三角形2つが上下に
凹面が来るように点対称に配置された旗のようなマークであり,被告標章1は,原
告標章1に,対置する底面に平行な3本の白い線を各鈍角三角形部分に入れたもの
であるので,確かに,外周の形態及び色は類似しているといえるが,本体である鈍
角三角形に縞模様が入っているか否かは需要者が容易に区別し得るものであり,相
当異なる印象を与えるものであるから,原告標章1と被告標章1を全体として見比
べると,相当異なるものであることは一見して明らかである。
したがって,被告標章1は,原告標章1とは類似しないというべきである。
3 争点3(被告は被告各標章及び本件ドメインを使用しているか)について
被告が運営する被告2店舗は,原告標章2,7を外壁に掲げた原告店舗の近隣に
あって競業関係にあり,しかも周知商品等表示である原告各標章5ないし7に類似する被告標章11,12を店舗の出入口に掲げていたというのであり,またその店\n舗名に「ゼンシン」という原告及び「全秦グループ」を他から識別する部分を含ん
でいたというのであるから,その開業当初は,需要者である遊戯客に原告店舗ない
し原告との関係につき一定の誤認混同を生じさせたことは優に認められるといえる
(上記ア(オ)dのとおり,取引業者であるが,現に誤認混同していた実例も認められ
ている。)。
しかし,上記ア(エ)によれば,そもそもパチンコ店等の需要者である遊戯客による
店舗選択は,当該パチンコ店等の経営主体がどこであるとか,どのパチンコ店グル
ープの店舗であるかということを重視するのではなく,パチンコやパチスロの台の
機能や機種,出玉感,交換率等の個別店舗の具体的営業内容そのものを主要な選択要素として決せられることが認められ,これからすると当該店舗の営業主体の誤認\n混同が当該店舗の選択,ひいてはその売上げあるいは損害に結び付く関係は薄弱で
あるということができる。
なお上記ア(エ)からは,需要者である遊戯客には,店員の接客態度や店舗が清潔に
清掃されているか等のサービスについても選択時に考慮する要素としている者がい
ることも認められるから,それらの需要者であれば,店舗の営業主体を指し示す営
業表示を手掛かりに当該店舗で受けられるサービスを期待して店舗選択をする可能\
性があることは否定できない。しかし,需要者であるパチンコ店等の遊戯客は,パ
チンコ店を極めて頻回に利用するのが一般的であるというのであるから(週1日の
利用でも年間72日の利用になる。),仮に被告2店舗の需要者の利用が,被告標
章の使用によりもたらされた被告店舗が原告と関係する店舗であるとの誤認混同か
ら始まったとしても,当該店舗のサービスを実際に経験している以上,その後の継
続的利用が原告と被告2店舗との関係についての誤認混同の影響によりもたらされ
ているとは考え難いところである。
そして,そもそも原告店舗及び被告2店舗とも隠岐の島という需要者が限られた
市場の中で他の4店舗とも競合している店舗であるが,被告2店舗のうち,ゼンシ
ン隠岐がもともとあったパーラー隠岐という別店舗の営業実態を実質上承継してい
る関係にあることからすると,被告2店舗の営業が原告店舗の顧客の誤認混同によ
り生じた需要によって継続的に成り立っているとはおよそ考えられず,むしろその
影響は極めて小さいと見る方が合理的である。
なお,本件において被告が被告標章を使用して営業を営んでいるのは隠岐の島の
被告2店舗だけであり,不正競争防止法5条2項で推定されるべき原告の損害は,
被告2店舗の営業の影響を受ける範囲,すなわち,その競合店となる原告店舗にお
いて生じた損害だけが問題となるというべきであるから,被告による被告各標章の
使用態様のうち,隠岐の島の住民において認識されないような岡山県津山市所在の
本件建物の外壁に掲げられた被告標章2,6による標章の使用は原告店舗の営業に
損害を全くもたらさないことは明らかである。
したがって,このような事情を総合考慮すると,本件における被告の得た利益と
原告の受けた損害の関係に不正競争防止法5条2項の推定規定の適用があるとして
も,その推定は99%の限度で覆滅されるというべきである。
なお,原告は,原告店舗と被告2店舗の営業方法の類似性,さらには原告代表者としてのP1の競業避止義務違反さえ問題としているが,そこで問題とされる損害\nは,結局のところ,営業表示の誤認混同に由来する損害ではなく,単に原告店舗の近隣に競合店である被告2店舗が出店されたことから生じる原告店舗の売上減少の\n問題にすぎないから,不正競争防止法2条1項1号の不正競争により生じる損害の
議論としては失当であり,上記認定を左右するものではない。
(4) 上記(1)アのとおり,被告が,被告2店舗で得た利益は合計6億6654万1
348円であるから,原告において損害と推定される額は,666万5413円で
あると認められる。
(5) 不正競争防止法5条3項の適用による損害について
本件で問題とする原告各標章は周知商品等表示であり,これに類似する被告標章7ないし9及び11ないし13の使用の結果,現実的な誤認混同が生じた事実も認\nめられるから,顧客吸引力が全くない商標権の場合と同様の意味での損害不発生を
いう被告の主張は直ちには採用できない。
しかし,上記(2)で検討したとおり,パチンコ店等では,需要者は,主に営業表示以外の営業内容そのものの要素を選択肢として店舗を選択するというのであるか\nら,営業表示により誤認混同が生じたとしても,そのことが店舗選択に与える影響は極めて小さく,しかも,その需要者は店舗を頻回に利用するというのであり,そ\nのような需要者を顧客としてつなぎとめるためには,出玉であるとか交換率である
などのパチンコそのものの営業内容によって他店と競争しなければならないといえ
るから,原告各標章の営業表示に顧客吸引力があるとしても,営業の場面で,これを発揮する余地は限りなく少ないというべきである。\nしたがって,本件において認定できる被告の不正競争に対して原告が受けるべき
金銭の額は極めて少額にとどまるのが相当であり,これを認めるとしても,被告が
不正競争により受けた利益に基づき認定される不正競争防止法5条2項にいう原告
の損害の額を上回ることはないというべきである。
◆判決本文
不競法2条1項1号(周知商品等表示)違反とは認められませんでした。商号「山高工務店」に対して、新会社の商号が「ヤマタカ」で、かつ、社長が元従業員という状況でしたが、裁判所は、そもそも周知ではないとの認定するとともに、不正目的もなしと判断しました。
確かに本件は,原告の元従業員が中心となって活動する被告の事業が,原告
の顧客を奪うことで成立しているように見受けられる事案であり,また事業開始が
そのことを見込んでされたようにも見受けられるが,原告の既存顧客が被告に奪わ
れたとするなら,それはそもそも原告が当該工事を施工できない状態であった上,
他方で被告代表者や被告従業員には原告在職時の施工実績による信用,少なくとも\n人的関係があったからと考えるのが自然であり,そこに原告商号と被告商号の類似
性が貢献している様子は認められず,また被告代表者がそのことを期待して被告商\n号を選択したとも認められない。被告による被告商号の選択使用は,被告代表者が\n供述するように,原告創業者への尊敬の念に由来すると認めるのが相当であって,
会社法8条1項にいう「不正の目的」があったとはおよそ認められない。
エ なお,さらに原告は,被告が原告と同じ行政区に本店を移転した経緯や,そ
の登記手続の手順の不自然さを問題にするが,上記認定したアスベスト除去工事,
ダイオキシン類対策工事等の契約締結過程等の問題からすると,そのことで原告が
主張するような利点があるとは認められないから,上記の点で被告の「不正の目的」
が推認されるわけではない。
また,原告は,被告が掲載した求人誌の求人広告の記載内容も問題にしているが,
同記載中には,旧会社を引き継ぎ4月から新体制で開始した会社であることを説明
して原告とは別会社と理解できる部分もあるし,そもそも,この求人誌は事業者で
はない者を対象として掲載されているのであるから,会社法8条1項の「不正の目
的」を推認する事情とはいえない。
オ 原告は,被告が原告従業員を大量に引き抜いたことにより,原告が従前の業
務であるダイオキシン類対策工事の受注を停止せざるを得なくなったなどと主張し,
この事情をも「不正の目的」を推認させる事情として主張するようであるが,「不正
の目的」は,商号を使用することに関して認められる必要があり,原告のいう事情
は,それ自体で不法行為を主張するのならともかく,商号使用についての「不正の
目的」を推認する事情とは認められない。
◆判決本文
練習用箸の実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態であるとして、不競法2条1項1号の保護を受けられないと判断されました。
不競法2条1項1号の「商品等表示」は,「人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表\示するもの」をいう。商品の形態は,商標等とは異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものでないが,1)商品の形態が客観的にほかの同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,2)その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合(周知性)には,商品の形態自体が商品等表\示に該当する場合もあると解される。
もっとも,実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態についてまで,商品等表示として保護を与えると,同等の機能\を有する複数の商品間の自由な競争を阻害する結果となり相当でないから,実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態については商品等表示に該当しないというべきである。\n(2) そこで検討するに,原告商品は,親指,人差し指及び中指をリングに挿入して箸の使用に適した位置で固定するという機能並びに2本の箸を連結するという機能\を有しており,これにより,箸の使用に習熟していない者が,箸を安定させて,かつ,正しいとされる指の位置で箸を使用する練習ができるという作用効果を有するものであるといえる。そして,正しいとされる箸の持ち方を前提にすれば,2本の箸に対してあるべき親指,人差し指及び中指の位置関係は自ずと決まっているから,それらの指の位置関係を正しい位置に固定するために指を通すリングを使用しようとすると,その位置関係及び箸に対する傾きなども自ずと定まっているものと認められる。
そうすると,原告商品形態のうち,「一対の箸が上端部又は中央より上端側の部分において連結されている連結箸」であることは,2本の箸を連結するという機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態であり,また,連結部位が一対の箸が上端部又は中央より上端側の部分であることは,箸として使用することからすれば当然の選択といえる。次に,「1本の箸は人差指と中指をそれぞれ入れる二つのリングを有し,他方の1本は親指を入れる一つのリングを有する」ことは,親指,人差し指及び中指をリングに挿入することで正しいとされる箸の持ち方に適した位置で固定するという機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態であると認められる。
以上のとおり,原告商品形態は,全体として,指にリングを通すことによって正しいとされる箸の持ち方を練習するための練習用箸の実質的機能を達成するための構\成に由来する不可避的な形態というほかない。
◆判決本文