2019.12. 9
平成30(ネ)10064等 商標権侵害行為差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 令和元年10月10日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ウェブサイトおけるタイトルタグ及びメタタグでの使用が不正競争行為であるかが争われた事件です。1審は、「平成28年11月1日から(タイトルタグ及びメタタグでの使用は15日から)平成29年3月22日までの間に被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグ並びに被告ウェブページに被告標章1及び2を記載した行為は,不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当するが,その他の被告標章1〜3の使用は,同号における商品等表\示の使用とはいえず,商標としての使用ともいえない」と判断しました。
これに対して、知財高裁(2部)は、「(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成30年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。」と判断しました。\n
ア 平成28年11月1日から平成29年3月22日まで
タイトルタグ及びメタタグにおける被告標章1及び2の使用
前提事実(4)アのとおり,一審被告グレイスランドが,平成28年11月15日
から平成29年3月22日までの間,被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及
びメタタグに原判決別紙1−1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載し
ていたこと,その結果,(1)グーグルや楽天市場でキーワード検索した場合に,検
索結果を表示する画面にタイトルとして被告標章1又は2が表\示され,空白部分
を挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ」として
商品の種類が表示され,(2)楽天市場では,タイトルの横に被告商品の画像が表示\nされ,さらに,(3)グーグルでは,場合によって,タイトルの下に被告標章2を含
む「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ 浄水
カートリッジ(標準タイプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確
認の上,お買い求めください。」などの表示がされていたことが認められる。\n上記のような態様で被告標章1及び2を使用した場合,需要者は,独立して表\n示された被告標章1及び2及びその後に空白を挟んで表示されている語句(「取付\n互換性のある交換用カートリッジ」,「浄水器カートリッジ」,「浄水カートリッジ」)や被告標章1及び2の近くにある被告商品の写真から,被告標章1及び2が被告
商品の出所を示していると認識するといえる。
そして,このような表示は,タイトルタグやメタタグの記載によって実現され\nているものであるから,タイトルタグやメタタグに被告標章1及び2を記載する
ことは,被告標章1及び2を,商品を表示する商品等表\示として使用(不競法2
条1項1号)するものと認められる。
被告ウェブページ1〜4における被告標章2の使用
前提事実(5)アのとおり,平成28年11月1日から平成29年3月22日まで
の間,被告ウェブページ1〜4の下方に,原判決別紙2−1のウェブサイトの記
載欄のとおり,上記 と同様に,「タカギ」との被告標章2が表示され,空白部分\nを挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ(標準タ
イプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確認の上,お買い求めく
ださい。」などの被告商品の種類に応じた被告標章2を含む表示(本件記載1)が\nされており,さらにその横には被告商品の写真が表示されていたものと認められ\nる。 本件記載1中に独立して表示された被告標章2\nは,被告標章2の後に空白を挟んで記載された語句や被告標章2の近くにある写
真が示す被告商品の出所を示すものとして用いられているものと認められ,商品
等表示に該当するものであると認められる。\n一審被告らは,「取付互換性のある交換用カートリッジ」や「当製品
はメーカー純正品ではございません」といった記載があること及び被告ウェブペ
ージ1〜4における被告商品の外観写真が一審原告の純正品とは異なるものであ
ることなどを挙げて,タイトルタグ,メタタグ及び被告ウェブページ1〜4にお
いて,被告標章1及び2は,商品の出所を表示するものとして使用されていない\nと主張する。
しかし,「互換性」という用語は,製造販売者が同じ商品間でも用いられるもの
(甲46)である上,「取付互換性」の語の意味は明確ではなく,需要者が「取付
互換性」という語から直ちに被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使
用されていないと認識するとはいえない。
また,「当製品はメーカー純正品ではございません」という記載については,被
告商品が一審原告の製品とは異なることを端的に述べたものではなく分かりにく
い記載となっている上,需要者がウェブサイトの記載を注意深く読むとは限らず,
当該記載が末尾に記載されていることからすると,それが常に認識されるとはい
えないし,被告商品と一審原告の製品との外観上の差異(乙10)についても,
本件浄水器に使用される交換用カートリッジが普段露出しているものではなく,
需要者が被告商品と一審原告製品との外観上の差異を明確に認識できるとは限ら
ないから,需要者が被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使用されて
いないと認識するとはいえない。
したがって,一審被告らの上記主張は上記 の判断を左右するものとはい
えない。
イ 平成29年3月23日以降
平成29年3月23日以降の被告ウェブページ並びにそのタイトルタグ及びメ
タタグにおける被告標章1及び2の使用は,以下のとおり,そのいずれもが出所
表示機能\,自他商品識別機能を有する態様での使用とはいえず,商品等表\示とし
ての使用に該当しない。
平成29年3月23日から同年4月12日まで
前提事実(4)イのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年3月23日か
ら同年4月12日までの間,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原
判決別紙1−2のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その
結果,楽天市場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギに
使用出来る取り付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトル\nが被告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていた
ことが認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場
合にも,「【楽天市場】タカギに使用できる出来る取り付け互換性のある交換用カ
ートリッジ」という被告標章1を含む記載のあるタイトルが表示されるなどして\nいたと認められる。さらに,前提事実(5)イのとおり,被告ウェブページにおいて
は,上記期間,その下方に「タカギに使用出来る取り付け互換性のある交換用カ
ートリッジ」との記載を含む表示がされていたことが認められる。\n上記各表示は,いずれも「タカギ」というカタカナ3文字の後に「に」という\n助詞が付加され,当該商品が一審原告製の本件浄水器に使用できるカートリッジ
であるという,被告商品の商品内容を説明するまとまりのある文章と理解できる
ものである。そうすると,需要者が上記各表示に接したとしても,「タカギ」との\n表示を,当該商品自体の出所を表\示するものとして認識するとは認められない。
したがって,上記各表示における被告標章1及び2の使用が,商品等表\示とし
ての使用に該当するとは認められない。
平成29年4月13日以降
前提事実(4)ウのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年4月13日以
降,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原判決別紙1−3及び1−
4のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その結果,楽天市
場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギの浄水器に使用
できる,取付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトルが被\n告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていること
が認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場合に
も,「【楽天市場】タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある交換用カー
トリッジ」という被告標章1を含む記載があるタイトルが表示されるなどしてい\nると認められる。さらに,前提事実(5)ウのとおり,平成29年4月13日以降,
被告ウェブページにおいては,その下方で「タカギの浄水器に使用できる,取付
け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含む表\示がされるようになって
いることが認められる。
と同様に,「タカギの浄水器に使用できる」という文章は,被告商品が一
審原告製の本件浄水器に使用可能であるという商品内容を説明するものであると\n需要者に理解されるものと認められ,被告商品の出所を表示するものとして使用\nされているとは認められないから,上記各表示における被告標章1及び2の使用\nが,商品等表示の使用に該当するとは認められない。\n
一審原告の主張について
一審原告は,(1)誤認を招きやすいインターネット取引において,キーワード検
索をする需要者は,「タカギ カートリッジ」というキーワードに着目して表示を\n理解してしまう上,検索結果を表示する画面で被告標章1及び2を用いた文章が\n一審原告の製品の写真と共に表示されることからすると,需要者は「タカギ」の\n「カートリッジ」であるという先入観をもって各表示を理解すること,(2)片仮名
で表記されているのが,「タカギ」と「カートリッジ」のみであるところ,片仮名\nは目立ち,語句の切れ目を表示する役割も果たすことからすると,平成29年3\n月23日以降の被告標章1及び2の使用も商品等表示としての使用に当たると主\n張する。
しかし,上記 , で検討した各表示(「タカギに使用出来る取り付け互換性の\nある交換用カートリッジ」,「タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある
交換用カートリッジ」)は,まとまりのある文章として,それが被告商品の説明で
あることが容易に理解できるものであるから,需要者の注意力がそれほど高くな
く,かつ「タカギ カートリッジ」というキーワード検索を経ていて,一審原告
の製品が共に表示されることがあるからといって,需要者が,「タカギ」と「カー\nトリッジ」のみに着目して,一審原告の主張するような先入観をもって上記各表\n示を理解するとは認められない。
また, 必ずしも片仮名が平仮名
や漢字に比して注意を引きつけるとまではいえない。
したがって,一審原告の上記主張は,上記 の判断を左右するものではな
い。
(2) 被告標章3について
ア 前提事実(6)のとおり,平成28年11月1日から平成30年12月2
8日までの間に,被告ウェブページ及び被告ウェブサイト2の冒頭部分には,被
告標章3を含む本件記載2がされていた。
被告標章3である「タカギ社製」は,それが修飾する商品が「タカギ社」の製
造に係るものであること,すなわち,当該商品が一審原告の出所に係ることを示
す語句であるといえる。
そして,被告標章3(タカギ社製)を含む本件記載2は,「タカギ社製 浄水蛇
口の交換用カートリッジを お探しのお客様へ」と3段に分けて記載されている
ものであって,文章の内容だけからしても,「タカギ社製」が,「浄水蛇口」では
なく,「交換用カートリッジ」を修飾していると理解することが可能なものである。\nまた,前提事実(6)のとおり,本件記載2の上方及び下方の2か所に,本件記載
2より明らかに大きなサイズの文字で,より目立つように「交換用カートリッジ」,
「交換用カートリッジ ついに発売!!」などと表示され,かつ,交換用のカー\nトリッジそのものである被告商品の写真画像も併せて表示されているから,それ\nらの表示に接した需要者は,冒頭に独立して記載された「タカギ社製」の文字を,\nカートリッジに結びつけて理解しやすいといえる。
以上に加えて,前記2で検討したとおり,被告標章3(タカギ社製)の要部で
あるタカギの文字部分が家庭用浄水器及びその関連商品の需要者の間で周知なも
のであること並びに需要者の注意力がそれほど高くないことといった事情も併せ
考えると,需要者が,本件記載2の中で独立して最上段に記載されている「タカ
ギ社製」が,本件記載2中の「交換用カートリッジ」を修飾する語句であると理
解することは十分にあり得るものと認められる。\nそうすると,本件記載2中の被告標章3(タカギ社製)は,被告商品について,
商品等表示として使用されているものと認められる。\n
イ 一審被告らは,(1)本件記載2が一連の呼びかけといえる文言であるこ
と,(2)本件記載2の2行目が「浄水蛇口」から始まり,かつ「浄水蛇口」の次に
「の」という助詞が付されていることからすると,需要者は,被告標章3(タカ
ギ社製)は「浄水蛇口」を修飾するものとして理解すると主張する。
しかし,上記(1)について,本件記載2が呼びかけといえる文言であるからとい
って,被告標章3が商品等表示として使用されていないということにはならない\nし,上記(2)についても,一審被告らの主張する事情を考慮しても,上記アのとお
り,需要者が,被告標章3(タカギ社製)が「交換用カートリッジ」を修飾する
語句であると理解することは十分にあり得るということができるから,一審被告\nらの上記主張は採用することができない。
(3) 小括
以上の検討のとおり,(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日ま
での間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ
及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から
平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブペー
ジ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成3
0年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した
行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。\n
・・・・
以上の検討のとおり,本件不競法該当行為がされた期間は,平成28年
11月1日から平成30年12月28日であるところ,一審原告はそのうち平成
28年11月1日から平成30年11月30日までの間の損害賠償を請求してい
る。
証拠(乙26の1〜6,乙27,28,乙29の1・2,乙30,乙31の1
〜7,乙32〜35,乙38の1〜22,乙39の1〜22,乙40の1〜20,
乙41の1〜3,乙43の1〜20)及び弁論の全趣旨によると,上記期間に対
応する各月ごとのパソコン等分利益,パソ\コン等分利益及びスマホ等分利益の合
計額は,別紙2〜4のとおりであると認められる。
また,上記期間に対応する(1)パソコン等分利益の合計額が228万6033円,\n
(2)パソコン等分利益及びスマホ等分利益の合計額が954万0740円であるこ\nとについては当事者間に争いがない。そして,上記パソコン等分利益228万6\n03円については不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当たるものと
認められる(なお,推定の覆滅については(2)で後述する。)。
イ 一審原告は,スマホ等分利益725万4707円(954万0740
円―228万6033円=725万4707円)のうち5%についても「侵害行為
による利益」に含まれると主張する。
しかし,前提事実(3)イのとおり,スマホ・タブレット向けサイト内のウェブペ
ージの最下部には,「表示モード:モバイル|PC」として被告ウェブサイトへの
リンクがあり,スマートフォンやタブレットから仮想店舗へとアクセスした者は,
上記リンクを利用することで,被告ウェブサイトを表示させることができ,また,\nスマホ・タブレット向けサイト内のウェブページの最上部にも「PC」という文
字を○で囲んだ記号が表示されており,同表\示も被告ウェブサイトへのリンクと
なっているものの,このようなスマホ・タブレット向けウェブサイトにおける被
告ウェブサイトへのリンクの表示位置や表\示の態様からすると,同リンクは需要
者が相当注意しないと気付かないような目立たないものである上,スマホ・タブ
レット向けサイトの下方にあるリンクについては,他の表示に隠れてタップでき\nない場合がある(甲87,弁論の全趣旨)。そして,スマホ・タブレット向けウェ
ブサイトと本件訴訟の対象となっている被告ウェブサイトとの間に見やすさや情
報量の点で差があることなどにより,スマートフォン及びタブレット経由で仮想
店舗にアクセスした需要者が敢えて被告ウェブサイトを表示させる積極的な要因\nがあるとも認められない。これらのことからすると,スマホ等分利益が,本件不
競法該当行為によって生じたものとは認められず,一審原告の上記主張は採用す
ることができない。
ウ 以上からすると,不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当
たるのはパソコン等分利益228万6033円のみであると認められる。\n
(2) 不競法5条2項における推定の覆滅については,侵害者が主張立証責任を
負うものであり,侵害者が得た利益と周知な商品等表示の主体が受けた損害との\n相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。
この点について,一審被告らは,(1)被告商品を2回以上購入したリピーターに
よる購入が全体の売上げの約15%を占めているところ,リピーターについては誤
認混同が生じていないこと,(2)被告標章3の表示回数が1回であり,注意書きや\n打ち消し表示が多数されていることからすると,不競法5条2項に基づく推定が\n全て覆滅されると主張する。
ア 上記(1)について,確かに証拠(乙42)によると,被告商品について
リピーターによる購入が一定割合あることは認められるが,リピーターであるか
らといって,そのことから直ちに本件不競法該当行為とは無関係に被告商品を購
入したということはできないから,リピーターによる購入であることを理由とし
て推定の覆滅を認めることはできない。
イ 次に,上記(2)について,前記4(1)ア及び(2)アのとおり,平成28年
11月1日から平成29年3月22日までは,被告ウェブページ1〜4において,
被告標章2が商品等表示として使用され,かつ被告ウェブページ1〜4及び被告\nウェブサイト2の冒頭部分に被告標章3が商品等表示として使用されていた上,\n平成28年11月15日から平成29年3月22日まではタイトルタグ及びメタ
タグにおいて,被告標章1及び2が商品等表示として使用されていたところ,こ\nれに対して,一審被告らが打ち消し表示と主張するものについては,前記5(2)〜
(5)のとおり決して十分なものということはできないから,需要者が本件不競法該\n当行為とは無関係に被告商品を購入したとはいい難く,推定の覆滅は認められな
い。
他方,前記4(1)イのとおり,平成29年3月23日以降,被告ウェブページ並
びにそのタイトルタグ及びメタタグにおいて,被告標章1及び2は,商品等表示\nとしては使用されておらず,前記4(2)アのとおり,被告標章3が被告ウェブペー
ジ1〜6及び被告ウェブサイト2において商品等表示として使用されたのみであ\nるから,本件不競法該当行為とは無関係に被告標章を購入した者も一定数存在し
たものと認められ,一定の推定の覆滅を認めることができる。その割合はこれま
で認定した諸般の事情に照らすと,5割と認めるのが相当である。
(3) 以上からすると,不競法5条2項により一審原告の損害として推定される
べき額は,以下の計算式とおり,119万1757円であると認められ,弁護士
費用としては,本件に表れた一切の事情を勘案して20万円を相当と認める。\nしたがって,一審被告らによる不正競争行為(本件不競法該当行為)によって
一審原告に生じた損害額の合計は,139万1757円(119万1757円+
20万円=139万1757円)であると認められる。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成29(ワ)14637
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2019.12. 1
平成31(ワ)5391 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和元年10月3日 東京地方裁判所
サーボモーターの外形について周知性が認められないとして、不競法2条1項1号の周知商品等表示ではないと判断されました。\n
原告は,原告表示1−1ないし同2−3につき,原告の商品等表\示として
需要者の間に広く認識されている旨を主張する。しかしながら,次のとおり,原告主張に係る各表示は,いずれも原告の商品等表\示として需要者の間に広く認識されているとは認められない。
ア 原告表示1−2及び同2−2について\n
原告主張に係る原告表示1−2及び同2−2は,いずれもサーボモータ\nの外観を示したものであるところ,原告は,これらが単に原告表示1−1\n及び同2−1の型番が表示され,又は原告表\示1−3及び同2−3のラベ
ルが貼付された状態を説明したものにとどまるものではなく,各サーボモ\nータの形態自体が,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されて\nいる旨を主張しているものとして,以下検討する。
この点,不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは,人の業務に係\nる氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営
業を表示するものをいい,しかして,商品の形態は,これに付される商標\n等とは異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではな\nい。そうすると,このような商品の形態自体が不競法2条1項1号の「商
品等表示」に該当するためには,(1)商品の形態が客観的に他の同種商品と
は異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,(2)その形態が特定
の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な広告宣伝や
爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定
の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を\n要するものと解するのが相当である。
これを本件について見るに,原告表示1−2及び同2−2のいずれにつ\nいても,他のサーボモータの形態と対比して客観的に異なる顕著な特徴を
具体的に含んでいることを的確に認めるに足りる証拠はないものであって,
同形態が上記(1)の特別顕著性を有しているとは認められないというべきで
ある。
したがって,原告表示1−2及び同2−2はいずれも不競法2条1項1\n号にいう「商品等表示」に当たるとはいえない。\n
イ その他の表示について\n
原告は,原告表示1−1ないし同2−3の表\示が周知性を有することの
根拠として,原告商品が各種媒体において頻繁に使用例が掲載されている
こと,最大手のオンライン通販市場の売上げランキングにおいて上位を独
占していること,(所在地省略)の小売店での販売実績の上位であること等
を挙げる。
しかしながら,各種媒体における掲載状況や小売店での販売実績につい
ては,これを具体的に認めるに足りる客観的な証拠はなく,また,オンラ
イン通販市場での売上げランキングについても,期間が限定された,断片
的な資料(甲7)が提出されているにすぎず,その他本件全証拠を精査し
ても,原告主張に係るその他の表示(原告表示1−1,同1−3,同2−1\n及び同2−3)の付された商品を見た需要者において,商品の出所が原告で
あると認識する状況になるまでに至っているものと認めるには足りないと
いうべきである。
したがって,原告主張に係るその他の表示は,いずれも原告の商品等表\
示として需要者の間に広く認識されているとは認められず,不競法2条1
項1号にいう「他人の商品等表示(中略)として需要者の間に広く認識さ\nれているもの」に当たるとはいえない。
(2) 類似性,混同のおそれの有無(争点1−2)について
以上の説示によれば,原告の請求はいずれも既に理由がないものであるが,
なお念のため,原告表示1−3及び同2−3と被告表\示1−3及び同2−3
との類似性及び混同のおそれの有無につき検討する。
この点,各表示とも横書き3行の文字列で構\成されており,原告表示1−\n3は1行目が「Towerpro」,2行目が「MG996R」,3行目が「D
IGI HI TORQUE」と表示されているのに対し,被告表\示1−3
は1行目が「TZT」と表示されており,2行目及び3行目は原告表\示1−
3と同様の文字が表示されている。\n また,原告表示2−3は1行目が「TowerPro」,2行目が「MG9\n95」,3行目が「DIGI HI−SPEED」と表示されているのに対し,\n被告表示2−3は1行目が「TZT」と表\示されており,2行目及び3行目
は原告表示2−3と同様の文字が表\示されている。
しかして,商標の類否ないし混同のおそれの有無は,同一又は類似の商品
に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,
記憶,連想等を総合して,その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に
考察して決すべきものであるところ,原告表示1−3と被告表\示1−3及び
原告表示2−3と被告表\示2−3とをそれぞれ対比すると,1行目の表示が\n全く異なる文字列で構成され,この部分の外観,観念,称呼が異なることは\n明らかであり,また,2行目の「MG996R」及び「MG995」や3行
目の「DIGI HI TORQUE」及び「DIGI HI−SPEED」
は一致しているが,これは,上記各表示が使用される商品であるサーボモー\nタの型番や性状を示す部分にすぎないと認められる。
以上に照らし,サーボモータに係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察
すれば,表示全体として,原告表\示1−3と被告表示1−3及び原告表\示2
−3と被告表示2−3とが類似しているとは認め難いというほかなく,混同\nのおそれがあるということもできない。
(3) 以上によれば,被告による被告商品の販売行為等は,不競法2条1項1号
所定の不正競争行為に当たらない。
◆判決本文
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2019.09. 9
平成31(ネ)10002 不正競争行為差止請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 令和元年8月29日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁(4部)は、不競法2条1項1号の不正競争行為と認めました。
1審(東京地裁29部)は、周知性、類似までは認めましたが、「混同を生じさせる行為」とはいえないとして、請求棄却していました。
原告商品の形態は,控訴人が昭和59年に「SBバック」の商品名で原告
商品の販売を開始した当時から,他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を
有していたものであり,その後被告商品の販売が開始された平成30年1月
頃までの約34年間の長期間にわたり,他の同種の商品には見られない形態
として,控訴人によって継続的・独占的に使用されてきたことにより,少な
くとも被告商品の販売が開始された同月頃の時点には,需要者である医療従
事者の間において,特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別
機能を獲得するとともに,原告商品の出所を表\示するものとして広く認識さ
れていたこと,原告商品と被告商品は,同一の形態に近いといえるほど形態
が極めて酷似し,被告商品の形態は,原告商品の形態と類似することは,前
記2(2)ア及び3(1)ウ認定のとおりである。
そして,前記1の認定事実によれば,医療機器の取引プロセス等に係る取
引の実情として,1)医療機関が医療機器を新規に購入する場合,医療従事者
が,医療機器メーカー又は販売代理店の販売担当者から,商品説明会等で当
該医療機器の特色,機能,使用方法等に関する説明を受けた後,臨床現場で\n当該医療機器を1週間ないし1か月程度試行的に使用し,使い勝手,機能性\n等の評価を経た上で新規採用を決定し,医療機器メーカー又は販売代理店に
対して当該医療機器を発注することが一般的であり,一定の病床数を有する
医療機関にあっては,医師,看護師その他の医療スタッフから構成される「材\n料委員会」が開催され,その構成メンバーによる協議を経て,当該医療機器\nの新規採用が決定されているが,一方で,個人病院や病床数が少ない医療機
関にあっては,材料委員会が開催されることなく,医師の意向により新規採
用が決定される場合も少なくないこと,2)医療機関が従前から使用している
医療機器を継続的に購入する場合,各種医療機器の画像,品番,仕様,価格
等が記載された医療カタログに基づいて,医療機器メーカー又は販売代理店
の販売担当者に対して品番等を伝えて発注し,また,インターネット上のオ
ンラインショップで購入する場合があること,3)消耗品等の比較的安価な医
療機器については,医療機関が新規に購入する場合においても,医療カタロ
グに基づいて医療機器メーカー又は販売代理店の販売担当者に対して品番等
を伝えて購入したり,オンラインショップで購入することもあること,4)医
療機関においては,用途が同じであり,容量等が同様の医療機器については,
一種類のみを採用し,新たな医療機器を一つ導入する際には同種同効の医療
機器を一つ減らすという「一増一減ルール」が存在するが,「一増一減ルー
ル」は,主に大学病院,総合病院等の大規模な医療機関において採用されて
おり,小規模の医療機関においては,各医師がそれぞれ使いやすい医療機器
を使用する傾向が強いため,そもそも「一増一減ルール」が採用されていな
い場合があり,また,「一増一減ルール」を採用している医療機関において
も,徹底されずに,医師の治療方針から特定の医師が別の医療機器を指定し
て使用したり,新規の医療機器が採用された後も旧医療機器が併存する期間
があるなど,同種同効の医療機器が複数同時に並行して使用される場合があ
り得ること,5)バーコードで医療機器を特定して発注や在庫管理を行い,ま
た,医療機関で使用される物品の発注,在庫管理,病棟への搬送などのサー
ビス(SPD)を事業者に委託している医療機関もあるが,全ての医療機関
において,このようなバーコードを利用した医療機器の発注,在庫管理やS
PDの委託を行われているわけではなく,SPDの委託率も決して高いもの
ではないこと,6)原告商品及び被告商品は,消耗品に属する医療機器であり,
カタログ販売のほかに,商品画像とともに,品番,型番,価格等掲載された
オンラインショップ(「アスクル」のウェブサイト)による販売が行われて
いることなど,両商品の販売形態は共通していることが認められる。
以上を総合すると,原告商品の形態が,控訴人によって約34年間の長期
間にわたり継続的・独占的に使用されてきたことにより,需要者である医療
従事者の間において,特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識
別機能を獲得するとともに,原告商品の出所を表\示するものとして広く認識
されていた状況下において,被控訴人によって原告商品の形態と極めて酷似
する形態を有する被告商品の販売が開始されたものであり,しかも,両商品
は,消耗品に属する医療機器であり,販売形態が共通していることに鑑みる
と,医療従事者が,医療機器カタログやオンラインショップに掲載された商
品画像等を通じて原告商品の形態と極めて酷似する被告商品の形態に接した
場合には,商品の出所が同一であると誤認するおそれがあるものと認められ
るから,被控訴人による被告商品の販売は,原告商品と混同を生じさせる行
為に該当するものと認められる。
(2) これに対し被控訴人は,1)医療機関においては,多数の医療従事者が関与
し,試用期間を設けて商品の機能や安全性等に着目して慎重に医療機器の選\n定が行われ,製品名や規格等に着目して販売代理店を通じた発注や物品の管
理が行われるのであるから,通常,医療機器の購入に際して,商品の形態に
着目したり,形態を手がかりに商品が購入されることはなく,このことは,
医療機器カタログやオンラインショップを通じて医療機器が購入される場合
であっても同様であること,2)医療機関が臨床での試用や機能性等の評価を\n経て採用した商品を継続購入する場合は,医療機器カタログやオンラインシ
ョップを通じて購入するが,医療機関においては,商品名や品番等により採
用している医療機器と同一の医療機器を発注するよう管理しており,商品の
形態だけを見て発注することはないし,カタログ購入やオンラインショップ
購入の場合でも,これまで医療機関が発注したことのない医療機器が新たに
発注されたときには,必ず医療機関に連絡を行い,試用を勧めることが通常
であること,3)原告商品と被告商品がオンラインショップ等で同一の機会に
販売されることがあったとしても,そもそも,医療従事者は商品形態には着
目しない上,オンラインショップにおいては商品の商品名及び製造販売元等
が明記されているのであるから,医療従事者が,その形態のみから,原告商
品と被告商品の出所を誤認混同することはないこと,4)医療機関においては,
用途が同じであり容量等が同様の医療機器については一種類のみを採用する
という,いわゆる「一増一減ルール」が採用され,一つの医療機関又は診療
科において,原告商品と被告商品が同時に採用されるといった事態は生じ得
ず,医療従事者が原告商品と被告商品を取り違えたり,使用方法を誤るとい
った事態の発生を想定することができないし,仮に単一の医療機関において
同種の複数の医療機器が同時に用いられることがあったとしても,原告商品
及び被告商品にはそれぞれ商品名及び会社名が明確に表示されている上,原\n告商品及び被告商品は,控訴人及び被控訴人のそれぞれが製造販売する専用
のカテーテル以外に接続することができない専用設計品となっており(乙1
3),相互に互換性がなく,このことは添付文書(乙1)等からも確認できる
から,実際の発注や使用において両商品の取り違えが生じることはないこと,
このような取引の実情を踏まえると,需要者である医療従事者において,原
告商品の形態及び被告商品の形態に基づいて商品の出所の同一性について混
同が生ずるおそれはないから,被控訴人による被告商品の販売は,原告商品
と混同を生じさせる行為に該当しない旨主張する。
しかしながら,上記1)ないし3)の点については,前記2(2)ア認定のとおり,
原告商品の形態は,控訴人によって約34年間の長期間にわたり継続的・独
占的に使用されてきたことにより,需要者である医療従事者の間において,
特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得するとと\nもに,原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていたことに照ら\nすと,医療従事者が,原告商品の形態に着目して,医療機器カタログやオン
ラインショップを通じて医療機器が購入する場合もあり得るものと認められ
る。また,前記2(2)イ認定のとおり,バーコードで医療機器を特定して発注
や在庫管理を行い,また,SPDを事業者に委託している医療機関もあるが,
全ての医療機関において,このようなバーコードを利用した医療機器の発注,
在庫管理やSPDの委託が行われているわけではなく,SPDの委託率も決
して高いものではない。
上記4)の点については,前記(1)認定のとおり,小規模の医療機関において
は,そもそも「一増一減ルール」が採用されていない場合があり,また,「一
増一減ルール」を採用している医療機関においても,徹底されずに,医師の
治療方針から特定の医師が別の医療機器を指定して使用したり,新規の医療
機器が採用された後も旧医療機器が併存する期間があるなど,同種同効の医
療機器が複数同時に並行して使用される場合があり得ることからすると,「一
増一減ルール」が存在するからといって,原告商品の形態と極めて酷似する
被告商品の形態に接した場合には,商品の出所が同一であると誤認するおそ
れがあることが否定されるものではない。また,原告商品及び被告商品は,
控訴人及び被控訴人のそれぞれが製造販売する専用のカテーテル以外に接続
することができない専用設計品となっており,その点においては相互に互換
性がないとしても,そのことから直ちに原告商品又は被告商品を購入する際
に両商品の形態が極めて酷似することにより商品の出所が同一であると誤認
するおそれがあることが否定されるものではない。
◆判決本文
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◆平成30(ワ)13381
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2019.07.21
平成31(ネ)10004 販売差止め及び損害賠償等請求控訴事件 意匠権 民事訴訟 令和元年6月27日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
アイマスクおよびレッグウォーマーについて、意匠権侵害なし、不正競争行為にも該当せずとした1審判断を、知財高裁2部は維持しました。1審判決の最後に、対象製品が掲載されています。
ア 本件登録意匠の要部の認定について
(ア) 控訴人は,本件登録意匠は,本件登録意匠美感を有しており,構成\nイウエの各構成は,それぞれが関連しあって一体となり一つの強い意匠的効果を発\n揮しているところ,その製品を購入する際に需要者が最も重要視する部分は,上記
一体となって発揮される美感であり,先端部のビーズではない旨主張する。
しかし,本件登録意匠は,アイマスクのマスク部の両脇より延びる耳かけストラ
ップ部分の部分意匠であり,ストラップ部において,中間部及び先端部の2箇所に
ビーズが現れることは,需要者の印象に大きく残るものであると認められる。これ
に,公知意匠(乙10〜13)も考慮すると,原判決(第3,1,(3),ウ)が認
定するとおり,「耳かけストラップの中間部及び先端部の二箇所にビーズが現れる
形態」(構成イ)を含む本件登録意匠の構\成全体が本件登録意匠の要部であると認
めるのが相当であり,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(イ) 控訴人は,本件意見書は,拒絶理由通知の引用意匠(乙13)と本
件登録意匠との間に実際に存在している相違点を指摘しているにすぎず,要部であ
ると主張したものではないし,本件登録意匠美感を凌駕するほどに強い美感を発揮
していると主張したものではない旨主張する。
しかし,本件意見書が本件登録意匠と引用意匠との相違点(耳掛けストラップの
先端部にもビーズが存する形態)が類否判断の上で重要であることを指摘している
と認められることは,原判決(第3,1,(3),エ)が判示するとおりであって,
本件登録意匠の要部を認定するに当たり考慮することができるというべきである。
したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
イ 公知意匠の認定について
控訴人は,乙11〜13が公知意匠としての適格性を欠いており,また,乙10
〜13の要部が本件登録意匠とは異なる旨主張する。
しかし,乙11〜13を公知意匠とし,これも参酌して本件登録意匠の要部を認
定することができることについては,原判決(第3,1,(3),イ及びウ)が判示
するとおりである。
乙10については,乙10の意匠が本件登録意匠の構成要件イウエの各構\成は有
していないことは認められるが,ストラップの先端部にビーズ形状が現われている
アイマスクの意匠であるから,これをアイマスクの部分意匠(ストラップ部分につ
いての意匠)である本件登録意匠の公知意匠とし,これを参酌して本件登録意匠の
要部を認定することができるというべきである。
また,乙11〜13の物品が本件登録意匠の構成要件イウエの構\成そのものを備
えていないとしても,「アイマスクの左右端の上部又は下部から伸びた紐が左右端
(左右同順)の下部又は上部(上下同順)に到達し,上記紐の中間部の一箇所に物
体が設けられ,上記中間部の物体は,上位紐を束ねており,移動可能である態様」\nを備えているから,これをアイマスクの部分意匠(ストラップ部分についての意匠)
である本件登録意匠の公知意匠とし,これを参酌して本件登録意匠の要部を認定す
ることができるというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 本件登録意匠とイ号意匠の美感の類似性について
控訴人は,両意匠の一部の差異は,共通点の有する美感を陵駕しておらず,全体
としての美感を共通にしているから,両意匠は類似していると主張する。
しかし,両意匠が類似していないことは,原判決(第3,1,(4))が判示する
とおりである。
控訴人は,本件登録意匠のデザインからビーズ一つを削除する改変は,ありふれ
た改変であると主張するが,そうであるとしても,両意匠が類似していることには
ならない。
(2) 不正競争行為該当性について
ア 商品等表示の判断枠組みについて\n
控訴人は,原判決が,商品の形態自体が出所を表示する二次的意味を有し,不正\n競争防止法2条1項1号及び2号にいう「商品等表示」に該当するための要件の一\nつとして,特別顕著性という要件を考慮したことが,明文のない要件のハードルを
過剰に高いものにしたと主張し,顕著性の程度の判断には,類似品が販売されてい
たか否かだけでなく当該類似品が一般に出回っていることを広く需要者一般が通常
認識する態様であったのかどうかも検討すべきであると主張する。
商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有する\nものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至\nる場合があるため,このような商品については,不正競争防止法により,出所表示\n機能が保護されるものであって,そのためには,原判決(第3,2,(1))が判示
するとおり,特別顕著性と周知性が必要であると解される。そして,特別顕著性の
判断に当たっては,当該商品の類似品が一般に出回っているか否かも考慮すること
にはなるものの,当該商品の形態に客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴が
あるか否かを判断するのであるから,必ずしも類似品が一般に出回っていることを
広く需要者一般が認識する必要はないというべきである。
イ 控訴人の商品形態と類似商品があること
(ア) 控訴人は,乙2,3,26及び27の商品は,控訴人及び控訴人の
代理店など当業者においても被控訴人ら主張を受けて初めて認識するに至ったほど
に人知れず発売されていた商品であり,あえてもろもろの検索条件で根気強く検索
を試みなければヒットしないような商品ばかりであると主張する。
しかし,乙3及び27の商品は,日経流通新聞に掲載されたものであることが認
められるし,乙2の商品は,パンジーストアと題するウェブサイトに,平成23年
9月6日付けニュースとして新規発売が紹介されており,乙26の商品も,株式会
社山善のウェブサイトに平成24年10月23日付けで新製品として紹介されてい
るものであるから,控訴人及び控訴人の代理店などの当業者が被控訴人ら主張を受
けて初めて認識するに至ったほどに人知れず発売されていた商品であるとは認めら
れない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできず,これらの商品の
形態を本件原告商品の形態の特別顕著性の判断に当たって考慮することができると
いうべきである。
(イ) また,証拠(乙5,29)及び弁論の全趣旨によると,乙5及び2
9は,いずれも平成30年の発売情報であることが認められる。
しかし,証拠(乙2,3,4,26,27)によると,既に,平成23年〜同2
4年頃には本件特徴又はこれと極めて類似した特徴を有する複数の商品が市販され
ていることが認められるところ,平成30年頃にも,本件特徴又はこれと極めて類
似した特徴を有する複数の商品が市販されているという,乙5及び29によって認
められる事実は,平成23年,同24年頃から平成30年頃までの間,本件特徴又
はこれと類似する特徴を有する商品が継続して多数販売されていたことを裏付ける
ものとなる。乙5及び29は,上記のような意味において,本件原告商品の形態が
特別顕著性を有していたかどうかの判断に用いることができるものである。
なお,仮に,乙4について,株式会社ポーラとの間で控訴人が主張するようなや
り取りがあったとしても,乙4の商品が発売された事実は認められるのであって,
本件原告商品の形態が特別顕著性を有していないとの原判決(第3,2,(2),ウ)
の判断を左右するものではない。
◆判決本文
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◆平成29(ワ)40178
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2019.07.17
平成29(ワ)31572 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和元年6月18日 東京地方裁判所
イッセイミヤケデザインのバッグなどについて、周知商品等表示・著名商品等表\示であると判断されました。なお、あわせて、著作権侵害かも争われましたが、「実用目的で工業的に製作された製品について,その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,・・・上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合がある」と一般基準を述べましたが、本ケースでは著作物性無しと判断されました。
判決文の最後にバックなど形状を示す写真があります。
原告商品は, で述べたとおり,わずかな例外を除いて本件形態
1´を備え,メッシュ生地又は柔らかな織物生地に,相当多数の硬質な三角
形のピースが,2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるよ
うに配置されることにより,中に入れる荷物の形状に応じてピースに覆われ
た表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり,立体\n的で変化のある形状を作り出す。一般的な女性用の鞄等の表面は,布製の鞄\nのように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか,あるいは硬い革
製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないことから
すれば,原告商品の形態は,従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる
特徴を有していたといえる。このことは,新聞や雑誌といったメディアにおいて「画期的なデザインのバッグ」(前記(1)カウ),「シンプルなピースが集
まって 自在に変化するユニークな形」前記(1)カカ),「三角形のパーツをつなぎあわせたフューチャリスティックなデザイン(前記(1)カテ),「特徴
がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別でき」る
前記(1)カセ)などと,そのデザインの独特さ,斬新さが取り上げられ,平
成19年秋にはデザイン性と機能性を併せ持ったアイテムだけを厳選して\n掲載するニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に採\n用されたことからも裏付けられ,原告商品の形態は,これに接する需要者に
対し,強い印象を与えるものであったといえる。
したがって,原告商品の本件形態1´は,客観的に他の同種商品とは異な
る顕著な特徴を有していたといえ,特別顕著性が認められる。
・・・
原告商品1ないし6は,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュック
サック及びトートバッグであり,いずれも物品を持ち運ぶという実用に供され
る目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。
著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を
創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するも\nのをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ,その定義や著作権法の
目的(同法1条)等に照らし,実用目的で工業的に製作された製品について,
その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,その特徴と
は別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないもの
は,「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著\n作物として保護されないが,上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性
を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合
があると解される。
(3) これを原告商品1ないし6についてみるに, のとおり,原告商品1な
いし6は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作さ
れたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原
告商品1ないし6の本件形態1は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する\n三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰める
ように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折
れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変
形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形
が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に
応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状\nに応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き,
鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶ\nために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は,
著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特
徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するた
めの特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備\nえた部分を把握することはできないとするのが相当である。
したがって,原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一な
ものとみることができず,著作物性は認められないから,その余の点について
判断するまでもなく,原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。
◆判決本文
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2019.06.17
平成30(ネ)10081等 不正競争行為差止等請求控訴事件等 不正競争 民事訴訟 令和元年5月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁(2部)は、マリカー事件について、中間判決をしました。論点は色々ありますが、1審の判断がほぼそのままとなっています。
一審被告らは,一審被告会社は,「マリカー」の標準文字からなる本件商標を
有しており,「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから,仮に
被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても,差止請求や損害賠
償請求は認められない旨主張する。
しかし,本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ,
前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M
ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表\示マリカーも,
「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい
て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知\nっていたものと認められる。
これに加え,1)一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と
していたこと,2)平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて
いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状
態!!」と記載されていたこと(甲3,4),3)平成28年8月12日当時に品川
第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ
倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が
同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト
1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて
いたこと(甲6の1,甲35),4)平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト
に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」
と記載されていたこと(甲6の2),5)後記6認定のとおり,一審原告の著名な商
品等表示である原告表\現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行
為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月
2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時
点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ
オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は,
周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利\n用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと
推認することができる。
したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると
主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記
主張は理由がない。
なお,一審被告らは,原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間\nでは周知ではないと主張するが,これまで検討してきたとおり,本件需要者は訪日
外国人に限られないから,一審被告らの主張はその前提を欠いており,採用するこ
とができない。
◆判決本文
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◆平成29(ワ)6293
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2019.01.22
平成30(ワ)13381 不正競争行為差止請求事件 不正競争 民事訴訟 平成30年12月26日 東京地方裁判所(29部)
不競法2条1項1号の不正競争行為について、周知、類似は認めましたが、混同しないとして、不正競争行為に該当しないと判断されました。
これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品は,携帯用ディス
ポーザブル低圧持続吸引器であるSBバックのうちの排液ボトル及び吸引ボトルで
構成されるものであるところ,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器には様々な形\n態のものが存在する中で,SBバックのように主たる構成として2つの透明のボトル\nから構成される形態,取り分け,直方体の排液ボトル,丸みを帯びた略立方体の吸引\nボトル本体及びその上部に取り付けられた球体のゴム球体という形状の異なる3つ
のパーツをまとまりよく一体化して構成されている形態は,平成30年1月頃に被告\n商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態であったのであ
り,吸引方法が異なる蛇腹(バネ)吸引や握り型吸引に属する吸引器はもととより,同
じくバルーン吸引に分類される吸引器であり,株式会社メディコンが製造し,販売す
る「デイボール リリアバック」の形態もSBバックの形態とは,大きく異なってい
る(甲11,25,乙4)。そうすると,原告商品の形態は,1)特別顕著性,すなわち,客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していると認められる。
これに対し,被告は,原告商品は,医療従事者を需要者とする医療機器であり,医
療従事者が,患者の生命及び身体の安全に関わる医療機器を選定するに当たって重視
するのは,当該商品の機能であってその形態ではないことなどから,原告商品の形態\nは,自他識別機能及び出所表\示機能をおよそ備えていない旨を主張する。しかしなが\nら,医療機器であっても,その使用に当たっては商品の形態が使用感や使いやすさ,
利便性等に大きな影響を与えるのであるから,医療機関が商品を選定する際に考慮要
素になると考えられるのであり,このことは,被告が行ったアンケート結果において
も,利便性(乙6の1),使いやすさ(乙6の2,3,9,乙7の2),使い勝手(乙
6の5,7,9,乙8の3),大きさ・寸法(乙6の2,6)等が挙げられていること
から裏付けられている。したがって,原告商品の形態が自他識別機能及び出所表\示機
能をおよそ備えていないということはできない。\nまた,被告は,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器として
の機能及び効用を発揮するために選択されたものであり,同種製品でも採用されてい\nる一般的なありふれた形態を組み合わせたものにすぎない旨を主張する。しかしなが
ら,原告商品を構成する直方体の排液ボトルの形状,略立方体の吸引ボトルの本体及\nびその上部に取り付けられた球体のゴム球それぞれの形態が個々の形態としてあり
ふれた形状であったとしても,原告商品の形態は,これらを組み合わせて一体化した
ものであり,しかも,他の同種製品にはみられない形態であったのであるから,原告
商品の形態がありふれた形態ということはできない。
イ そして,前記認定のとおり,原告は,昭和59年から,SBバックを,その形
態を変更することなく製造し,販売しているところ,SBバックの形態は,平成30
年1月頃に被告商品が販売されるまでは,SBバック以外の製品にはみられない形態
であったこと,平成18年から平成28年までのポータブル低圧持続吸引器国内市場
におけるSBバックの販売数量は同市場において30%程度を占め,業界首位であっ
たこと,原告は,SBバックの販売開始以来,平成14年頃から発行している医療機
器の総合カタログを定期的に更新し,医療機関に頒布してきたほか,少なくとも平成
10年から医療機器の展示会等にSBバックを展示するなど,医療機関に対する説明
会や個別の説明を常時実施してきたこと,SBバックの形態が多数の医療従事者向け
書籍等に掲載されてきたことなどからすれば,原告商品の形態は,2)その形態が原告
によって長期間独占的に使用されてきたことにより,少なくとも被告商品が販売され
た平成30年1月頃には,原告の出所を示すものとして需要者である医療従事者に広
く認識されるに至ったということができる。
これに対し,被告は,原告商品の形態が掲載されている書籍等において,原告商品
の形態のみならず,常に原告の会社名や商品名も併せて記載されていることなどから,
原告商品の形態自体がその形態のみで出所表示機能\を発揮しているのではない旨主
張するが,上記説示のとおり,原告商品の形態は,その形態が原告によって長期間独
占的に使用されてきたことにより周知性を獲得したと認められるのであるから,個別
の表示の態様が原告商品の形態と原告の会社名や商品名とが併せて表\示されていた
としても,上記認定を左右しないというべきである。
ウ さらに,前記認定のとおり,原告商品の形態は,携帯用ディスポーザブル低圧
持続吸引器に様々な形態のものが存在し,排液ボトルや吸引ボトルの形状にも様々な
選択肢がある中で,これらを組み合わせて一体的に構成されたものであるから,商品\nの形態が商品の技術的な機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地の\nない不可避的な構成に由来する場合には該当しないと認められる。\nこれに対し,被告は,原告商品の形態は,単に機能を発揮する観点から選択された\nにすぎず,その機能及び効用を発揮するために必然的,不可避的に採用せざるを得な\nい商品形態である旨を主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,原告商品は,創腔からの滲出液の集液量増加に
伴う吸引圧の変動が小さく,創腔に常に適切な陰圧を負荷できること,採取された滲
出液が逆流する陽圧発生の危険がなく取扱い容易であること,集液ゾーンと陰圧保持
ゾーンが分離され,集液貯留が全て剛性容器で行われるため,使用中は常に集液量測
定を精度良く簡便に行うことができるとともに,途中の吸引再セット時の排液操作が
必要なく,集液を追加できることなどの機能を有しているところ,このような機能\を
有するための構成としては,ボトルの数,形状及び透明性,目盛の形状,排液口の位\n置,大きさ,形状及び色彩,集液ポートの位置及び形状,排液ボトルと吸引ボトルの
連結態様,ゴム球の位置,大きさ,形状及び排気弁の有無等の様々な選択肢があるの
であるから,被告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,原告商品の形態は,少なくとも被告商品が販売された平成30
年1月頃には,不競法2条1項1号にいう商品等表示として需要者の間に広く認識さ\nれたものとなっていたと認められる。
3 争点2(原告商品の形態と被告商品の形態とは類似するか)について
(1) 不競法2条1項1号の「類似」に該当するか否かは,取引の実情の下において,
需要者又は取引者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両
者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである。
(2)これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告商品の形態と被告商品の
形態とは,外観において,主たる構成として排液ボトル及び吸引ボトルの2つのボト\nルを有している点で共通するほか,排液ボトル及び吸引ボトル自体の形状も多数の点
が共通し,その寸法もほぼ共通する。他方,排液ボトルについては,目盛や文字の色
等が相違し,吸引ボトルについては,「吸引ボトル」の文字や,社名,商品名等の文字
の色,ゴム球の色等が相違し,社名や商品名の称呼も相違する。
以上の共通点及び相違点を総合すると,外観上の共通点が極めて多数に上ることに
比して,相違点はいずれも細部の相違であり,色彩の相違も同系色での相違にすぎず,
社名や商品名の表示の相違も全体的な構\成からは一部分にとどまることからすれば
上記共通点は,上記相違点よりも需要者に強い印象を与えるものであると評価するこ
とができる。したがって,原告商品の形態と被告商品の形態については,称呼が相違
するものではあるが,需要者が外観に基づく印象として,両者を全体的に類似のもの
と受け取るおそれがあると認められ,不競法2条1項1号の「類似」に該当すると認
められる。
4 争点3(被告商品の製造販売は,原告商品と混同を生じさせるか)について
原告は,被告商品の形態は,原告の商品等表示である原告商品の形態に酷似するも\nのであるから,被告商品に接した需要者において,被告商品を原告商品又は原告のシ
リーズ商品,原告のグループ会社の商品又は原告のライセンス商品であるとの誤認混
同が生じるおそれが高い旨を主張する。
不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」とは,商品又は役務について出所
が同一であると誤認させ,あるいはその営業につき主体が同一であると誤認させる場
合に限られず,他人の周知の商品等表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他\n人との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業上の関係又は同
一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為も含\nまれると解される。
そこで,これを本件についてみるに,前記認定によれば,原告商品及び被告商品の
取引態様については,専門家である医療従事者が,医療機器の製造販売業者や販売業
者の担当者から,当該医療機器の特色,機能,使用方法等に関する説明を受けて,当\n該医療機器の購入を決め,医療機器専門の販売業者に対して当該医療機器を発注する
というプロセスをたどって取引されているのであり,しかも,多くの医療機関におい
ては,医療機器の使用について,医療機関が医療機器を採用するにあたっては,同種
の医療機器については,一種類のみを採用するという原則的な取扱いであるいわゆる
一増一減のルールが採用されているというのである。そして,原告商品と被告商品に
は商品自体には商品名及び会社名が記載され,それぞれ別々のパンフレット(甲1,
20)が作成されて別々に販売される上,需要者である医療従事者も医療機器に関す
る専門知識を有する者なのであるから,被告商品の販売行為によって需要者である医
療従事者において原告商品と被告商品の出所が同一であると誤認するおそれがある
とは認められない。また,原告及び被告は,医療機器の分野において,相当程度のシ
ェアを有する競合会社であり,ポータブル低圧持続吸引器国内市場における原告のシ
ェアは約30ないし40%,被告のシェアは約5ないし15%である。上記の取引形
態等からすると,需要者である医療従事者において原告と被告が競合関係にあること
を十分に認識している状況であり,原告商品の形態と被告商品の形態が類似している\nことのみから,原告と被告との間に親会社,子会社の関係や系列関係等の緊密な営業
上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信\nするおそれがあるとは認められない。そうすると,被告による被告商品の製造販売行
為が,不競法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に当たると認めることは
できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
◆判決本文
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