2024.10.17
令和5(ネ)10111 不正競争行為差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和6年9月25日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
イス(TRIPP TRAPP)の類似品に対して、商品等表示も認められず、著作権の適用なしと判断された控訴審判決です。知財高裁も同様の判断をしました。\n
そこで検討すると、被告各製品の形態は、別紙「被告各製品の形態」記載
の構成aから構\成fまで(以下、単に「構成 a」などという。)のとおりで
あり、これによると、被告各製品は、本件顕著な特徴を構成している特徴1)
から特徴3)までとの対比において、左右一対の側木の2本脚であり、かつ、
座面板及び足置板が左右一対の側木の間に床面と平行に固定されており(特
徴1))、左右方向から見て、側木が床面から斜めに立ち上がっており、側木
の下端が脚木の前方先端の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面
に接していることによって、側木と脚木が約66度の鋭角による略L字型の
形状を形成している(特徴2))が、側木の内側に溝は形成されておらず、側
木の後方部分に、固定部材と結合してネジ止めするための円形状の穴が多数
形成され、座面板及び足置板を側木の間で支持する支持部材、支持部材を側
木の間において掛け渡された状態で側木に固定する固定部材及びネジ部材を
備え、2本の側木後方に設けられた穴と固定部材を結合した状態でネジ部材
を閉めることで、支持部材と固定部材によって側木を前後から挟持して押圧
し、支持部材を側木に固定しており(構成f)、原告らの商品等表\示の特徴
3)を備えていないものと認められる。
なお、その他の形態上の諸要素を考慮しても、被告各製品は、側木及び脚
木からなる2本脚、背板、座面板及び足置板、横木のほかネジ部材、支持部
材、固定部材等から構成され、脚木は一直線であるが、側木は一直線ではな\nく、側木の上端部分は床面と垂直に折れ曲がっており、2本脚が、正面視で
床面に垂直で相互に平行となるように配置され、側木と脚木の結合部分から
離れた脚木中央部に横木が配置され、中央部に楕円形の穴が形成されている
背板は側木の最上部に配置され、座面板と足置板は楕円形の短辺を切り落と
したような曲線的形状とされ、ネジ部材、支持部材及び固定部材等により側
木に固定されていることから、被告各製品の形態においては、曲線的な要素
とともに、座面板及び足置板の支持部分に複数の部材が利用され、その安定
性が特徴的となっており、その印象も、原告製品における、直線的な形態が
際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象とは異なるものとなっている。
よって、原告製品全体の形態の特徴である本件顕著な特徴について、被告各
製品は、これを備えていないものと認められる。
(3) したがって、被告各製品は、本件顕著な特徴を備えていないから、取引の
実情の下において、取引者、需要者が、両者の外観、称呼、又は観念に基づ
く印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれ
があるものということはできない。よって、原告らの商品等表示と被告各製\n品の形態が類似すると認めることはできない。
・・・
著作権法2条2項は、「美術の著作物」には「美術工芸品」を含むものとする旨規定しており、同項の美術工芸品は実用的な機能と切り離して独立の美的鑑賞の対象とすることができるようなものが想定されていると考えられるのであって、同項の規定は、それが例示規定であると解した場合でも、いわゆる応用美術に著作物性を認める場合の要件について前記のように解する一つの根拠となるというべきである。\n
(2) 以上を踏まえ、本件について検討すると、原告製品については、特徴1)か
ら特徴3)まで及び側木と脚木をそれぞれ一直線とするデザインという本件顕
著な特徴があり、これにより原告製品の直線的な形態が際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象を与えるものとなっていると認められることは、
前記のとおりである。しかし、本件顕著な特徴は、2本脚の間に座面板及び
足置板がある点(特徴1))、側木と脚木とが略L字型の形状を構成する点\n(特徴2))、側木の内側に形成された溝に沿って座面板等をはめ込み固定す
る点(特徴3))からなるものであって、そのいずれにおいても高さの調整が
可能な子供用椅子としての実用的な機能\そのものを実現するために可能な複\n数の選択肢の中から選択された特徴である。また、これらの特徴により全体
として実現されているのも椅子としての機能である。したがって、本件顕著\nな特徴は、原告製品の椅子としての機能から分離することが困難なものであ\nる。すなわち、本件顕著な特徴を備えた原告製品は、椅子の創作的表現とし\nて美感を起こさせるものではあっても、椅子としての実用的な機能を離れて\n独立の美的鑑賞の対象とすることができるような部分を有するということは
できない。また、原告製品は、その製造・販売状況に照らすと、専ら美的鑑
賞目的で制作されたものと認めることもできない。それのみならず、仮に、
原告製品の本件顕著な特徴について、独立の美的鑑賞の対象となり得るよう
な創作性があると考えたとしても、前記のとおり、被告各製品は、本件顕著
な特徴を備えていないから、原告製品の形態が表現する、直線的な形態が際\n立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象とは異なるものとなっているの
であって、被告各製品から原告製品の表現上の本質的な特徴を直接感得する\nことはできない。そうすると、結局、本件において、著作権侵害は成立しないといわざるを得ない。
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2024.09. 2
令和3(ワ)29242 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和6年7月17日 東京地方裁判所
著名性は認められましたが、その時期が被告の使用時よりも後であるとされて、不正競争行為とは認定されませんでした。
2 争点1−4(原告表示等が著名になる前から被告表\示等を不正の目的でなく
使用しているか)について
(1) 前記1のとおり、原告表示等が著名な原告の商品等表\示となった時期は、
早くとも令和3年7月頃であったと認められる。
これに対し、前提事実(3)のとおり、被告が被告表示等の使用を始めたのは、令和2年4月以前であるから、被告は、原告表\示等が著名になる前から被告表示等を使用していると認められる。
(2) 不競法19条1項5号(令和6年3月31日以前の行為については令和5
年法律第51号による改正前の同項4号)所定の「不正の目的」とは、不正
の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう(同
項2号)。そこで、前記(1)の被告による被告表示等の使用について、このような目的でなくされたと認められるか否かが問題となる。\nア まず、被告は、被告表示等のうち使用開始が最も遅い被告表\示4の使用
を始めた令和2年4月時点においても、いまだ原告表示等を認識していなかったと主張するので、そのような事実が認められるか否かを検討する。\n
(ア) この点について、D及び被告の従業員であるE(以下「E」という。)
は、上記被告の主張に沿う証言をする(証人D、証人E)。
そこで、上記各証言の信用性について検討すると、前提事実(3)及び前
記1のとおり、被告が被告表示4の使用を始めた令和2年4月時点で、原告表\示等が著名であったとは認められない上、前記1(1)ア(別紙原告
展示一覧表参照)のとおり、原告の作品の展示は、会場が美術館であったり、展示名に「芸術」、「アート」、“DESIGNERS”、“DESIGN”、「遊園地」
との文言が含まれていたりする展示が多く、美術、芸術の分野や遊園地
に関心を有しない者は、原告の作品の展示にも原告表示等にも注意を払わなかった可能\性があるところ、本件証拠上、D及びEが、これらの分野に特に関心を有していたことはうかがわれない。確かに、被告所在地
と同一都道府県内においても、平成27年7月から同年8月にかけて、
「京セラドーム大阪スカイホール」において“Learn & Play! teamLab
Future Park”と題する展示、平成28年3月から同年6月にかけて、
「ひらかたパークイベントホール」において「チームラボアイランド
踊る!美術館と、学ぶ!未来の遊園地」と題する展示、平成30年7月
から同年9月にかけて、「あべのハルカス美術館」において「チームラボ
学ぶ!未来の遊園地」と題する展示がそれぞれされていることが認めら
れる(前記1(1)ア(別紙原告展示一覧表参照))。しかし、最も来館者数の多い「あべのハルカス美術館」における展示についてみても、当該美\n術館は、被告所在地の至近にあるとはいえないし、来館者が●(省略)
●にとどまること、開催場所が美術館であること、展示名に「未来の遊
園地」とあることから、美術や遊園地に関心がない者は、当該展示に関
心を抱かず、注意を払わないと考えられるところ、D及びEも同様であ
った可能性がある。
さらに、「チーム」は、競技・仕事などの分隊との意味を有する英単語
“team”の片仮名表記、「ラボ」は、医療に関わる実験室、研究室、薬品などの製造所の意味を有する英単語“laboratory”の片仮名表記を略したもの又は英単語“labo”の片仮名表記であって、“team”、“laboratory”
及び“labo”は、いずれもよく知られた英単語であること、予防医学支援、労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業等を目的とする会社であ\nる被告(前提事実(1)イ)の商号として、これらの英単語を利用すること
は自然であるといえるから、Dが原告表示等を認識することなく被告表\
示等に思い至ったとしても、特段不合理ではないというべきである。
以上の検討によれば、D及びEの上記各証言は信用することができ、他方、本件全証拠によっても、それらの信用性を否定するに足りる事情は認められない。
(イ) なお、証拠(甲1576)によれば、被告は、被告アカウントから原
告アカウントをフォローしたことが認められるから、その際、原告表示等を認識したと認められるものの、その時期を認めるに足りる証拠はな\nい。しかも、被告アカウントから原告アカウントをフォローするためには、
その前に被告アカウントを作成する必要があるから、被告が当該フォロ
ーの際に原告表示等を認識したとしても、それは被告が被告表\示4の使
用を始めた後ということになる。
(ウ) このほか、被告アカウントから原告アカウントのフォローがされた時
点より前に、被告が原告表示等を認識していたことをうかがわせる証拠がないことを考慮すると、被告は、被告表\示等の使用を始めた時点において、原告表示等を認識していなかったと認めるのが相当である。\n
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2024.08.26
令和5(ワ)70654 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和6年7月8日 東京地方裁判所
書籍の題号が、不競法2条1項1号又は2号に定める商品等表示に該当するかが争われました。裁判所は、該当しないと判断しました。問題となった題号は「牧野日本植物圖鑑」です。
(1) 不競法2条1項1号及び2号は、「商品等表示」につき、人の業務に係る\n氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を
表示するものと定義している。そうすると、同各号にいう「商品等表\示」と
は、商品又は営業を表示するものであるから、出所表\示機能を有するものに\n限られるというべきである。そして、書籍には発行者等の表示が付されるの\nが通例であり、書籍の出所は、一般に上記発行者等の表示が示すものである\nから、書籍の題号は、その書籍の内容を示すものにすぎず、出所表示機能\を
有するものとはいえない。
そうすると、書籍の題号は、特段の事情がない限り、同各号にいう「商品
等表示」に該当しないと解するのが相当である。\nこれを本件についてみると、証拠(甲2ないし10、19)及び弁論の全
趣旨によれば、「牧野日本植物圖鑑」という本件題号は、牧野執筆に係る日
本の植物図鑑という書籍の内容を端的に示すものにすぎず、牧野という執筆
者に特徴があるのは格別、書籍の題号としてはありふれたものであるから、
本件題号には出所を示すような顕著な特徴はない。
そして、証拠(乙1、2)及び弁論の全趣旨によれば、一般に題号を同じ
くする書籍であっても、別々の発行者等により発行されているものも少なか
らず存在することが認められる。当該認定に係る取引の実情に鑑みると、本
件題号に接した需要者又は取引者が、これを書籍の出所を示すものとして直
ちに理解するものとはいえない。
これらの事情を踏まえると、本件題号は、出所表示機能\を有するものとは
いえず、上記特段の事情があるものと認めることはできない。
したがって、本件題号は、不競法2条1項1号又は2号にいう「商品等表\n示」に該当するものと認めることはできない。
のみならず、被告書籍についてみると、仮に「牧野日本植物圖鑑」という
牧野執筆に係る植物図鑑が全国的に知られていたという立場を採用したとし
ても、本件全証拠によっても、原告が本件図鑑を出版していた事実までも全
国的に知られているものとして著名であると認めるに足りない。
他方、仮に、原告が本件図鑑を出版していた事実が、一部の専門家や研究
者の間で周知であるという立場を採用したとしても、前記前提事実及び証拠
(甲19)によれば、被告書籍の表紙には、本件題号の左下欄に「三四郎書\n館」という発行所を示す表示が付されていることからすると、被告書籍に接\nした需要者又は取引者は、被告書籍の発行所が、原告ではなく「三四郎書館」
であると理解するのは明らかである。
そうすると、被告書籍の出版は、本件図鑑との混同を生じさせる行為とは
いえないことは、明らかである。
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2024.05. 1
令和3(ワ)11358 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和6年3月19日 東京地方裁判所
被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業を行う会社で、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイショーグループ各社への輸出を行っていました。ダイショーグループは、シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レストラン」などの店舗を展開していました。本件各ウェブページは、日本語によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブページであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スーパースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載されていました。裁判所は、指定商品・役務が類似する、&商標も類似するとして、差止と約600万円の損害賠償を認めました。また、不正競争行為にも該当すると判断されています。
原告は「すしざんまい」です。
ア 本件各掲載行為のうち本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為について\n
前提事実(1)イ及びウ、(4)ア、証拠(甲4、23ないし25)並びに弁
論の全趣旨によれば、原告各商標の指定役務は「すしを主とする飲食物
の提供」であること、被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業
を行う株式会社であり、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイシ
ョーグループ各社への輸出を行っていること、ダイショーグループは、
シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レスト
ラン」などの店舗を展開していること、本件各ウェブページは、日本語
によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブペ
ージであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スー
パースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載さ\nれており、被告各表示とともに「手頃な価格で幅広い客層が楽しめる回\n転寿司。厳選した食材と豊富なメニューで、人気を集めています。」と
の説明が掲載されていることが認められる。
このような事情からすれば、本件各ウェブページにおける被告各表示\nは、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲
載されたものであり、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に
係るものといえるから、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務\nとは類似するものといえる。
そして、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、\n「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法によ
り提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当するといえ、被告は原
告各商標を「使用」したものと認められる。
被告の主張について
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の
提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお
らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の
使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、
あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ
の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する
ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\)
や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の
品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した
とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け
たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各
表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に
おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。
そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の
有無を左右するものではないというべきである。
・・・・
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の
提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお
らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の
使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、
あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ
の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する
ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\)
や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の
品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した
とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け
たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各
表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に
おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。
そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の
有無を左右するものではないというべきである。
イ 本件各掲載行為のうち本件各アカウント写真として被告表示2を掲載し\nた行為について
前提事実(1)ウ、証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、スー
パースシは、マレーシアにおいて本件すし店を展開していること、本件各
アカウントは、本件すし店に係るアカウントであることが認められるが、
本件全証拠によっても、被告が本件各アカウントを管理していると認める
ことはできない。
したがって、本件各アカウント写真の掲載行為については、被告が行っ
たものと認めることができないから、被告が原告各商標を「使用」したと
はいえない。
なお、本件では、不競法違反に関して被告が原告各表示と類似の商品等\n表示を「使用」(不競法2条1項1号)したといえるか(争点2−3)も\n問題となっているが、上記で説示したとおり、本件各アカウント写真の掲
載行為は被告が行ったとは認められないから、被告が原告各表示と類似の\n商品等表示を「使用」したともいえない。\n
・・・
商標法38条2項による損害額の算定について
商標法38条2項は、商標権者等が侵害行為による損害の額を立証するこ
とが困難であることから、その立証を容易にするために設けられたものであ
ると解される。そうすると、同項の適用が認められるためには、侵害者によ
る侵害行為がなかったならば商標権者等が利益を得られたであろうという事
情が存在する必要があるものと解される。
証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、原告はマレーシアにおいてすし
店を展開していないことが認められるところ、本件全証拠によっても、日本
国内における原告すし店とマレーシアにおける本件すし店の市場が競合する
と認めることはできないから、被告による侵害行為(本件各ウェブページに
被告各表示を掲載した行為)がなかったならば原告(原告すし店)が利益を\n得られたであろうという事情が存在すると認めることはできない。
したがって、本件では、商標法38条2項を適用することはできない。
(2) 商標法38条3項よる損害額の算定について
ア 前提事実(5)のとおり、平成26年から令和5年までの被告の本件すし
店に対する売上げは合計1億4475万8151円である。
そして、証拠(甲44、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、株式会社
帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用
の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤル
ティ料率に関する実態把握〜」には、商標権における使用料率(ロイヤ
ルティ料率)全体の平均値は2.6パーセント、第43類「飲食物の提
供及び宿泊施設の提供」に関する平均値は3.8パーセントであると記
載されていることが認められる。
この点について、前提事実(1)のとおり、被告は、スーパースシを含め
たダイショーグループ各社に対して、日本で仕入れた食材の輸出を行っ
ているところ、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載すること\nによって本件すし店(スーパースシ)の売上げが増加した場合、それに
伴って被告の本件すし店に対する売上げ(輸出)も増加する関係にある
ものと認められる。
他方で、前記(1)で説示したとおり、日本国内における原告すし店とマ
レーシアにおける本件すし店の市場が競合すると認めることはできない
ことに照らすと、本件各ウェブページへの被告各表示の掲載が被告の売\n上げに与えた影響は限定的なものであったことがうかがわれる。
このような事情に加え、本件各ウェブページにおける被告各表示は遅\nくとも平成26年12月頃から相当長期にわたって掲載されていたと認
められること(前提事実(4)及び弁論の全趣旨)及び商標権侵害があった
場合に事後的に定められるべき登録商標の使用に対し受けるべき金銭の
額は通常の使用料と比べて高額となることを考慮すると、被告による原
告各商標の使用に対し原告が受けるべき金銭の額に相当する額を算定す
るための使用料率については、3.8パーセントと認めるのが相当であ
る。
そうすると、上記の金銭の額は、被告の本件すし店に対する売上げで
ある1億4475万8151円に使用料率3.8パーセントを乗じた5
50万0809円であると認められる。
イ これに対し、原告は、前記アの金銭の額を算定するに当たっては、被
告が被告各表示を被告各ウェブサイトに掲載することにより自己の取引\n上の信頼を高めて事業全般に及ぶメリットを享受していることから、被
告の全売上高をその基礎とすべきであると主張する。
しかしながら、上記の金銭の額を算定する際に基礎とすべきは、侵害
行為に関する売上高であると解されるところ、別紙被告ウェブページ目
録記載のとおり、本件各ウェブページに掲載された被告各表示は本件す\nし店に関するものであり(甲4及び弁論の全趣旨)、それを超えて被告の
事業全体に関するものであると認めるに足りる証拠はないから、原告の
上記主張は採用できない。
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2024.02. 9
令和5(ワ)73 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和5年12月14日 大阪地方裁判所
厚底ソールの形状について、特別顕著性なし、周知性なしとして、不競法2条1項1号の周知商品等表\示に該当しないと判断されました。具体的なソール形状などは不明です。\n
原告ソール1が、合成樹脂を用いた厚底ソ\ールであり、原告主張の特徴1な
いし特徴4の形態を備えていること、一部の溝の形状が略コの字状となってい
ることについては、当事者間に争いがない。そこで、これらの形態やその組み
合わせが、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴といえるか、以下検討
する。
ア 合成樹脂を用いた厚底のソールであるとの形態について\n証拠(乙20)によれば、イタリアのVibram社(ソールのメーカー)\nが、原告商品1の販売の相当前である昭和59年(1984年)にカジュア
ルシューズ向けの合成樹脂(EVA)製の超軽量ソールの製造を開始したこ\nとが認められるところ、合成樹脂製のソールの厚みを厚くすることが製造技\n術上困難であるような事情は見当たらない(令和5年7月時点では、複数の
他社から合成樹脂製の厚底ソールを使用した婦人靴が販売されていた(乙2\n1、22)。)。そうすると、合成樹脂を用いた厚底ソールである形態が、従来\nの同種商品と異なる形態とはいえない。
イ 特徴1(靴底裏面に複数の縦溝1及び横溝2、3を有することで、裏面視
において全体として略格子状のイメージを奏すること)について
証拠(乙7の1、7の3ないし7の6)によれば、原告商品の販売開始前
に、複数の他社から靴底裏面に複数の縦溝と横溝が施されて全体として略格
子状の形態の靴底の意匠登録出願がされ、その後、いずれも意匠登録がされ
たことが認められるから、特徴1の形態はありふれた形態というべきである。
また、ソールの溝の深さを深くすることによって排水機能\や防滑機能が実現\nされることは一般的な知見といえる(乙8)から、特徴1の形態は技術的機
能に由来する形態といえる。\n
ウ 特徴2(靴底裏面の前方部分に、i)左右一対の2本の前記縦溝1と、i
i)左右端から形成され前記各縦溝1とそれぞれ交差し、先端(中央側端部)
同士が対向する左右3対の前記横溝2と、iii)前記左右3対の横溝2よ
りもつま先側において左端から右端にかけて形成される横溝3とが配され
ていること)について
証拠(乙7の1、7の4、7の5)によれば、原告商品の販売開始前に、
複数の他社から靴底裏面の中央より前方(つま先)部分に概ね2本の縦溝と、
左右端から形成され上記縦溝と交差し、先端同士が対向する左右3ないし5
対の横溝と、同横溝よりつま先側において左端から右端に形成される横溝と
が配された靴底の意匠登録出願がされ、その後いずれも意匠登録されたこと
が認められる。また、上記横溝の数を原告ソール1の「横溝2」のように3\n対とすることに特別な意義があると解する理由は見当たらない。そうすると、
特徴2の形態は、ありふれた形態というべきである。また、特徴2の形態は、
上記イと同様の理由から、技術的機能に由来する形態ともいえる。\n
エ 特徴3(靴底裏面において、つま先部分から指の付け根に相当する部分に、
横方向に伸びる畝状の複数の段部4を有し、この段部4が、後方につれて裏
面側に傾斜するテーパー面4aを有すること)について
証拠(乙7の4、7の6、10の1、10の5)によれば、原告商品の販
売開始前に、複数の他社から、1)つま先から指の付け根付近に複数の横方向
の段部が配され、2)この段部が後方につれて裏面側に傾斜するテーパー面を
有する靴底の意匠登録出願がされ、その後いずれも意匠登録されたことが認
められる(ただし、乙7の4の登録意匠の靴底には、上記2)の構成は含まれ\nていない。)。そうすると、特徴3に係る形態は、ありふれた形態というべき
である。
オ 特徴4(靴底裏面において、踵に相当する部分に、横方向に伸びる畝状の
複数の段部5を有し、この段部5が、後方につれて表面側に傾斜するテーパ\nー面5aを有すること)について
証拠(乙7の4、10の5)によれば、原告商品の販売開始前に、複数の
他社から、靴底裏面の踵に相当する部分に横方向に伸び、後方につれて表面\n側に傾斜するテーパー面を有する複数の段部が配された靴底の意匠登録出
願がされ、その後いずれも意匠登録されたことが認められる。そうすると、
特徴4に係る形態は、ありふれた形態というべきである。
カ 一部の溝の形状が略コの字状となっているとの形態について
当該形態は、原告の主張によっても、原告代表者の名字の頭文字「F」を\nなぞったデザインの一つにすぎない。また、当該形態が施された範囲は、親
指から薬指にかけた部分及び小指部分であって、原告ソール1全体の約6分\nの1程度と非常に狭く(甲5)、需要者が着目するとは解し難い。
キ 以上によれば、原告ソール1の形態は、客観的に他の同種商品とは異なる\n顕著な特徴を有するとはいえないから、原告ソール1の形態に特別顕著性が\nあると認めることはできず、原告の主張は理由がない。
(3) 周知性又は著名性について
なお、周知性について、念のため検討する。
原告は、原告商品の販売開始後、1)平成30年以降に複数の展示会に原告商
品を出展したことや、2)多数の業界雑誌や業界外雑誌に原告商品が紹介された
こと、3)国内直営店舗や複数のECサイトで原告商品が販売されたこと、4)平
成28年以降の原告の靴製品の売上高が伸び、業界内で上位となったことなど
から、原告ソール1が令和2年秋頃には周知になったと主張する。\n しかしながら、そもそも原告主張の原告商品の販売開始時期をその通り認定
できないことは前記のとおりであるが、原告ソール1の需要者は、婦人靴の購\n入を検討する一般消費者(及びその取引業者)であるところ、当該需要者は、
靴全体のデザイン(中でも人目を引くアッパーの部分)や着用感に着目し、仮
にソールに注意を払うとしても、その注意はおおむね機能\的な観点で向けられ
るものと解され、ソールの形態や材質それ自体から出所を認識するとの一般的\nな経験則は認め難いものと解されるから、原告主張の事情は直ちに原告ソール\n1が周知であることを基礎づけるものではない。
その上で検討すると、上記1)については、各展示会に原告商品が出展された
としても、原告ソール1がどのように展示されていたかは明らかではない。\n上記2)については、令和2年5月号から令和4年1月号の業界雑誌「フット
ウェア・プレスFW」には原告ソール1の画像が掲載されているが(甲22の\n2ないし22の22)、同誌は一般消費者向けの媒体としての性質は薄いもの
と認められるうえ、原告商品が掲載された業界外雑誌(甲26、28、30(い
ずれも枝番を含む。))は、大半において通信販売の媒体としてのものであって、
商品それ自体を紹介するものとは性質を異にするうえ、原告ソール1は掲載さ\nれておらず、掲載されている場合でも掲載範囲は小さく(甲24の1ないし2
4の4、26の1ないし26の4、28の1、28の2、30の1、30の2、
32)、需要者が原告ソール1の形態に着目するとは解し難い。\n上記3)については、原告の国内直営店舗数は10店舗にとどまる(甲53)。
また、複数のECサイトに原告ソール1を用いた商品が掲載されているが、原\n告ソール1の画像が掲載されていない例も多数存在するうえ、掲載されている\n場合も、複数の商品画像中の3枚目以降に掲載されているから、需要者が原告
ソール1の形態に着目するとはいえない。また、ECサイトに掲載された原告\nソール1を用いた商品は、原告とは異なる他社ブランド名で販売されているも\nのが多く、このような掲載方法によって、掲載されたソールが原告のソ\ールで
あると需要者が認識するとはいえない(甲44の1ないし47の6、弁論の全
趣旨)。
上記4)については、原告の主張を前提としても、業界内における売上高が
極めて上位にあるものとはいえない。
以上によれば、原告ソール1の形態が周知であると認めることはできず、\n他に、本件証拠上、原告ソール1の形態が周知性又は著名性を有すると認め\nるに足りる証拠はない。
◆判決本文
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2023.10.23
令和3(ワ)31529 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和5年9月28日 東京地方裁判所
イス「TRIPP TRAPP」について、デッドコピーではない場合に、商品等表示に該当するのか、著作権侵害かが争われました。東京地裁(40部)は、前者については、原告らの主張する本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、原告製品のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に特定するものとはいえないと判断しました。また、後者については、著作権侵害についても翻案ではないと判断されました。
最後に、原告製品と被告製品の写真があります。
ア 商品の形態に係る「商品等表示」の特定について\n
不競法2条1項1号又は2号は、他人の周知又は著名な商品等表示(人の\n業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品
又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表\示
を使用等することをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定
は、周知著名な商品等表示の有する出所表\示機能を保護するという観点から、\n周知著名な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤\n認混同させて顧客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保
するものと解される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的\n意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所
表示機能\を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態
が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\を発揮するよ
うな特段の事情がない限り、商品等表示には該当せず、仮にこれに該当した\n場合であっても、商品の形態は本来的には商品の出所表示機能\を有するもの
ではないのであるから、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表\n示部分は、取引の実情等によって時間的にも場所的にも変わり得るものとい
える。
そうすると、原告らが商品の形態の商品等表示該当性を主張する場合には、\n商品等表示として権利範囲を画する部分がそれ自体不明確であることに鑑\nみると、商品の形態のうち出所表示機能\を発揮する商品等表示部分を明確に\n特定する必要があるものと解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成
17年(ネ)第10068号同17年7月20日判決参照)。
これを本件についてみると、原告らは、主位的に、原告製品全体の形態が
商品等表示に該当する旨主張して、商品の形態のうち出所表\示機能を発揮す\nるという部分を明確に特定していないことからすると、原告らの主位的主張
は、上記において説示したところに照らし、主張自体失当というほかない。
他方、原告らは、予備的に、原告製品の形態のうち、出所表\示機能を発揮す\nるという部分が本件形態的特徴であるという限度で特定して主張している
ため、本件形態的特徴が商品等表示に該当するかどうか、以下検討する。\n
イ 本件形態的特徴の「商品等表示」該当性について\n
前記アのとおり、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有す\nる場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能\を
有するものではないから、不競法2条1項1号又は2号の規定の趣旨に鑑み
ると、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能\
を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないという\nべきである。
そうすると、商品の形態は、1)客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特
徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、2)特定の事業者に
よって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強力
な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表\n示するものとして周知であると認められる特段の事情がない限り、不競法2
条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当であ\nる。
そして、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると主張\nされた表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品の形態が\n商品等表示に該当しないときであっても、上記表\示が全体として商品等表示\nに該当するとして、上記一部の商品を販売等する行為まで不正競争に該当す
るとすれば、出所表示機能\を発揮しない商品形態までをも保護することにな
るから、上記規定の趣旨に照らし、かえって事業者間の公正な競争を阻害す
るというべきである。のみならず、不競法2条1項1号又は2号により使用
等が禁止される商品等表示は、登録商標とは異なり、公報等によって公開さ\nれるものではないから、その要件の該当性が不明確なものとなれば、表現、\n創作活動等の自由を大きく萎縮させるなど、社会経済の健全な発展を損なう
おそれがあるというべきである。
そうすると、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると\n主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態\nが商品等表示に該当しないときは、上記表\示は、全体として不競法2条1項
1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。\nこれを本件についてみると、前記認定事実、検証の結果(検証調書参照)
及び前記認定に係る子供用椅子の販売状況によれば、原告製品は、1)左右一
対の側木の2本脚であり、かつ、座面板及び足置板が左右一対の側木の間に
床面と平行に固定されている点(特徴1))、2)左右方向から見て、側木が床
面から斜めに立ち上がっており、側木の下端が、脚木の前方先端の斜めに切
断された端面でのみ結合されて直接床面に接していることによって、側木と
脚木が約66度の鋭角による略L字型の形状を形成している点(特徴2))と
いう本件形態的特徴のほか、3)座面板と足置板を側木内側にはめ込んで固定
することによって、これらの部材を直接固定し、その余の固定部材を省いた
点(特徴3))、4)前後方向からみて、座面板、足置板、横木及び背板と、側
木が垂直に交わっており、側木内側の小さな略半円形状の溝部分を除き、直
線的要素が強調されている点(特徴4))、5)左右方向からみて、側木につい
ては、これを一直線とし、その上端の2隅を直角とし、脚木についても、こ
れを一直線とし、その先端側と後端側の各2隅の角度を略左右対称とした点
(特徴5))、6)上下方向からみて、身体に接触する曲線状の背板並びにこれ
に対応する座面板及び足置板の後部波状部分を除き、座面板と足置板の前部
を直線状の形状とし、その2隅を直角とした点(特徴6))に特徴があるもの
と認められる。
そうすると、原告製品は、これらの各特徴を全て組み合わせることによっ
て、身体に接触する背板部分及びこれに対応する座面板及び足置板の後部波
状部分を除き、側木、脚木、横木、座面板、足置板及び背板という椅子を構\n成すべき最小限の要素を直線的に配置し、究極的にシンプルでシャープな印
象を与える直線的構成美を空間上に形成したという限度において、形態とし\nての特徴があるものと認められる。
他方、本件形態的特徴は、図面又は写真で特定されるものではなく(意匠
法6条、24条、意匠法施行規則3条各参照)、上記にいう特徴1)及び特徴
2)を文字で特定されるにとどまるものである。そのため、本件形態的特徴は、
それ自体複数の商品形態を含むところ、本件形態的特徴には、原告らが主張
するとおり被告各製品が含まれるほか、側木が曲線を含む形態、座面板や足
置板が曲線の形態その他の直線的構成美を欠く多種多様な形態を含むもの\nであるから、原告製品が形成する直線的構成美を欠く非類似の商品形態を広\n範かつ多数含むものである。しかも、原告らの主張によれば、本件形態的特
徴(特徴1)及び特徴2))は、本件形態的特徴のみに限るというのではなく、
例えば特徴3)が付加された形態も、本件形態的特徴に含むというものである
から、本件形態的特徴は、座面板と足置板を固定するための複雑な部材を採
用する形態その他の究極的にシンプルな構成美を欠く多種多様な形態を含\nむものである。
したがって、本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、
商品形態が商品等表示として認められる場合を限定する不競法2条1項1\n号又は2号の上記趣旨目的に鑑みると、原告らは、原告製品のうち出所表示\n機能を発揮する商品等表\示部分を明確に特定するものとはいえない。
のみならず、原告らにおいて本件形態的特徴をそのまま具備すると主張す
る被告各製品についてみても、被告各製品は、座面板及び足置板を固定する
ために、支持部材、丸みを帯びた固定部材及び略円形のネジ部材を設ける構\n成を採用し、特徴3)を有するものではない。そのため、被告各製品は、需要
者に対し、椅子全体として安定して使いやすい印象を与えるものの、複雑な
上記構成によって、究極的にシンプルな印象を与える直線的構\成美を欠くも
のといえる。しかも、被告各製品は、前後方向からみると、背板中央に楕円
形の大きな穴が形成されており、かつ、固定部材を側木にネジ止めするため、
側木には円形状の穴が多数形成されていることからすると、被告各製品は、
直線的でシャープな印象を明らかに損なうものである。さらに、被告各製品
は、左右方向からみても、側木上部が床面と略垂直方向に折れ曲がっており、
一直線の側木で構成される原告製品の直線的でシャープな印象とは、全体と\nして大きく異なる印象を与えている。加えて、被告各製品は、上下方向から
みても、座面板及び足置板の前部及び後部が端部から緩やかな曲線状に形成
されており、椅子全体として柔らかい印象を与えるものであるから、座面板
及び足置板の前部が直線で構成される原告製品の直線的でシャープな印象\nとは明らかに異なるものである。
これらの印象の相違を踏まえると、被告各製品は、座面板及び足置板の固
定において複数の部材を利用する点において、原告製品のような究極的にシ
ンプルな印象を与えるものではなく、かつ、曲線的形状を数多く含む点にお
いて、原告製品のような直線的でシャープな印象を与えるものではない。
したがって、直線的構成美を造形表\現する原告製品の高いデザイン性に鑑
みると、少なくとも被告各製品の形態は、究極的にシンプルでシャープな印
象を与える直線的構成美を欠くものであるから、原告らの出所を表\示するも
のであると認めることができないことは明らかである。
以上によれば、本件形態的特徴に含まれる被告各製品の形態は、明らかに
原告製品の商品等表示に該当しないことからすると、本件形態的特徴は、全\n体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと認\nめるのが相当である。
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2023.01.24
令和4(ネ)10051 不正競争行為差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 令和4年12月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
赤い靴底のハイヒールで有名なルブタンが赤い靴底の販売差止、損害賠償を求めました。1審は請求棄却、知財高裁も同じく、混同なし、です。
このように、被告商品と原告商品は、価格帯が大きく異なるものであ
って市場種別が異なる。また、女性用ハイヒールの需要者の多くは、実
店舗で靴を手に取り、試着の上で購入しているところ、路面店又は直営
店はいうまでもなく、百貨店内や靴の小売店等でも、その区画の商品の
ブランドを示すプレート等が置かれていることが多いので、ブランド名
が明確に表示されているといえ、しかも、それぞれの靴の中敷きにはブ\nランドロゴが付されていることから、仮に、被告商品の靴底に付されて
いる赤色が原告表示と類似するものであるとしても、こうした価格差や\n女性用ハイヒールの取引の実情に鑑みれば、被告商品を「ルブタン」ブ
ランドの商品であると誤認混同するおそれがあるといえないことは明
らかというべきである。
また、普段は被告商品のような手ごろな価格帯の女性用ハイヒールを
履く需要者の中には、場面に応じて原告商品のような高級ブランド品を
購入することもあると考えられるが、こうした需要者は、原告商品が高
級ブランド(控訴人らが主張するように「ルブタン」がラグジュアリー
ブランドであり、日本だけではなく世界中の著名人や芸能人が履くとい\nうイメージがあればなおさらである。)であることに着目し、試着の上で
慎重に購入するものと考えられるから、被告商品が原告商品とその商品
の出所を誤認混同されるおそれがあるとはいえない。
なお、原告商品及び被告商品ともに、公式オンラインショップだけで
はなく、二次流通品を含め、ECサイトで販売されていることもあり、
原告商品の二次流通品の中には価格帯が大きく下げられて販売される
こともあるが、公式オンラインショップでの売上げ実績は全体の売上げ
規模からして僅少であって(そのことは、需用者の多くが実際に商品を
試着して購入していることを示すものである。)、それぞれのブランド専
用のサイトであるし、また、公式オンラインショップ以外のサイトでは、
商品の画像だけではなく、商品の詳細な説明において、ブランドや靴の
状態が説明されているから、こうした流通形態があり、仮に、被告商品
の靴底に付されている赤色が原告表示と類似するものであるとしても、\n被告商品が原告商品と誤認混同のおそれがあるとはいえない。
エ 加えて、近時では、高価格帯のブランドが価格帯の異なるブランドとコ
ラボレーションした商品が販売されることもあるが、その商品にはそれぞ
れのブランドのロゴが付されており(前記1 エ)、その商品がコラボレー
ション商品であることが需用者にとって一目で分かるようになっている
(そうでなければ、コラボレーション商品として企画し、販売する意味は
ないともいえよう。)。そうすると、仮に、被告商品の靴底に付された赤色
が原告表示に類似するとしても、被告商品にはそうしたコラボレーション\n商品であることを示すようなロゴはないから、需要者が、被告商品が控訴
人らのライセンス商品又は控訴人らとの間で何らかの提携関係を有する
商品であると誤認混同するおそれがあるともいえない。
これに対して、控訴人らは、前記第2の3 ウ aのとおり、被告商品も
原告商品と同じ高価格帯の商品であることを前提として、店舗又はオンライ
ンショップで原告商品と被告商品の双方が販売されていることがあり得ると
し、ブランド毎に区別して展示されていない場合等では、需要者が販売され
ているブランド名を意識しないまま購入することがあり得る旨主張する。
しかし、原告商品は最低でも8万円、10万円を超えるものも少なくない
のに対して、被告商品は、1万6000円から1万7000円の価格帯であ
るから、これだけの価格差がある商品形態において、仮に店舗又はオンライ
ンショップで原告商品と被告商品が並べて陳列されており、一部店舗でブラ
ンド毎に区別して展示されていないことがあるとしても、実店舗では、靴の
デザイン性だけではなく、実際に手に取って試着することが多く、ECサイ
トでは、ブランド名や商品の状態が詳細に説明されているといった取引の実
情に鑑みれば、需要者が、被告商品の靴底に原告赤色と類似する色を使用し
ているからといって、被告商品の出所が「ルブタン」のブランドであると誤
認混同するとはいえない。したがって、控訴人らの主張は理由がない。
以上のとおり、仮に、被告商品の靴底に付された赤色が原告表示に類似す\nるとしても、原告表示を付した原告商品であると誤認混同するおそれ(広義\nの混同を含む。)があるとはいえないから、原告表示が不競法2条1項1号に\n規定する「他人の商品等表示」に該当するか否かについて判断するまでもな\nく、被告商品の販売等が同号の「不正競争」に当たるとはいえない。
そうすると、被告商品の販売等が不競法2条1項1号の「不正競争」に当
たることを前提とした控訴人らの請求は、その前提を欠くものであるから、
その他の争点について判断するまでもなく理由がない。
3 争点2(原告表示の周知著名性)について\n
前記1の認定事実によれば、控訴人Xは、会社を設立以後、全世界に店舗
を展開して、原告表示を付した高価格帯の女性用ハイヒール(原告商品)を\n販売し、数多くの著名人や芸能人に愛用され、また、日本でも、平成10年\n以降は路面店等のショップで販売が開始されて、年間30億円を超える売り
上げを誇り、数多くの雑誌、メディア等で原告表示は「レッドソ\ール」とし
て取り上げられ、一定の需要者には「靴底が赤い」女性用ハイヒールは「ル
ブタン」のブランドを指すものと認識されているといえる。
しかし他方で、靴底が赤色の女性用ハイヒールは、原告商品以外にも少な
からず我が国においては流通しており(前記1 )、女性用ハイヒールの靴底
に赤色を付した商品形態を控訴人らが独占的に使用してきたものとはいえな
い。
また、本件アンケートは、東京都、大阪府、愛知県に居住し、特定のショ
ッピングエリアでファッションテム又はグッズを購入し、ハイヒール靴を履
く習慣のある20歳から50歳までの女性を対象としたものであるが、本件
アンケート結果によると、靴底が赤いハイヒール靴を見たことがないものを
含め、原告表示を「ルブタン」ブランドであると想起した回答者は、自由回\n答と選択式回答を補正した結果で51.6%程度にとどまる(なお、本件ア
ンケート調査結果では、赤いハイヒール靴を見たことがある人に限定して認
識率を評価するのが適切であるとするが、本件アンケート調査は、主要都市
で、しかも、ファッション関係にそれなりに関心のあるハイヒール靴を履く
習慣のある女性を対象としたものであり、その当否についても疑義がある上、
そこから更にこうした限定を付すことは明らかに相当でない。)。この結果に
よれば、原告表示は、一定程度の需要者に商品出所を認識されているとはい\nえるが、それが著名なものに至っているとまでは評価することができない。
そうすると、原告表示が不正競争防止法2条1項2号に規定する「他人の\n著名な商品等表示」であるとはいえないから、そうであることを前提とした\n
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◆平成31(ワ)11108
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2021.09.22
令和1(ワ)11673 差止請求等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和3年9月3日 東京地方裁判所
女性用下着の形状について、周知著名商品等表示ではないと判断されましたが、不競法2条1項3号の形態模倣であるとして、約2億円の損害賠償が認められました。
原告は,原告商品は形態1)ないし7)を組み合わせたものであり,原告
商品全体の形態と同一又は類似の商品は見当たらないから,他の同種商
品と識別し得る特徴を有すると主張する。
しかし,原告商品の販売が開始された当時,原告商品が備える形態1)
ないし7)の全てを備えるブラジャー又はナイトブラが販売されていたこ
とを認めるに足りる証拠はないものの,前記(1)ウ(ア)のとおり,形態1)
ないし7)のうちの3つ又は4つを備える商品AないしGが存在していた。
そうすると,原告商品の販売開始時点では,既に,原告商品の形態に似
通った商品が複数販売されていたということができる。しかも,前記(ア)
のとおり,原告商品の形態1)ないし7)は,いずれも他の商品とは異なる
顕著な特徴とは認められないから,当該商品には認められないが原告商
品には認められる形態上の特徴により,需要者であるブラジャー又はナ
イトブラの購入に関心がある一般消費者が出所の違いを識別することが
できるとはいえない。そして,形態1)ないし7)を組み合わせることによ
り上記需要者の注意を特に惹くことになる事情も見当たらないことから
すると,形態1)ないし7)を組み合わせた原告商品の形態が他の同種の商
品とは異なる顕著な特徴を有していると認めることはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ 周知性について
前記(1)イ(ア)のとおり,原告商品は平成28年9月12日に販売が開始
されたところ,原告商品の形態につき周知性が確立したと原告が主張する
平成29年12月までに約1年4か月,被告商品1の販売が開始された平
成30年10月まででも約2年1か月しか経過していない。そして,前記
(1)ウ(ア)のとおり,原告商品の販売が開始される前から,原告商品が備え
る形態1)ないし7)のうち複数を有するブラジャー又はナイトブラが販売さ
れており,原告商品の形態が原告によって長期間独占的に利用されたとは
認められない。
・・・
商品の形態を比較した場合,問題とされている商品の形態に他
人の商品の形態と相違する部分があるとしても,当該相違部分についての
改変の内容・程度,改変の着想の難易,改変が商品全体の形態に与える効
果等を総合的に判断した上で,その相違がわずかな改変に基づくものであ
って,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な
相違にとどまると評価されるときには,当該商品は他人の商品と実質的に
同一の形態というべきである。
イ 被告商品1について
(ア) 前記(1)アのとおり,被告商品1は,原告商品が備える形態1)ないし7)
を全て備え,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,全体的なデザイ
ンはほぼ同一であるといえる。
被告商品1と原告商品の間には相違点1)が認められるが,別紙2原告
商品目録記載の写真のとおり,原告商品のカップ部の中央に付けられた
リボンはごく小さな装飾にすぎず,そのようなリボンを取り外すという
改変については,その程度はわずかであり,着想することが困難である
とはいえず,商品全体の形態に与える効果もほとんどないといえる。
また,被告商品1と原告商品の間には相違点2)が認められるが,別紙
1被告商品目録記載1の写真のとおり,左右の前身頃を構成する3枚の\n生地のうち最下部にある生地が被告商品全体に占める面積はそれほど大
きいものではなく,他の部分の布地と同系色であってレース生地の存在
が際立つものではない上,別紙3比較写真目録記載の写真のとおり,原
告商品と被告商品1とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成は同一といってよいことからすると,相違点2)は,需
要者であるブラジャー又はナイトブラの購入に関心がある一般消費者に
対し,原告商品よりもレース生地が比較的多いという印象を与えるにと
どまるから,被告商品1の上記部分をレース生地とすることが商品全体
の形態に与える効果は小さいといえる。さらに,前記1(2)イのとおり,
ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふれた形態であり,上記
部分を無地の生地からレース生地に置き換える着想が困難であるともい
えない。
そうすると,相違点1)及び2)は,いずれもわずかな改変に基づくもの
であり,商品の全体的形態に与える変化は乏しく,商品全体から見て些
細な相違にとどまるといえるから,被告商品1は原告商品と実質的に同
一の形態であると認めるのが相当である。
(イ) 前記(ア)のとおり,被告商品1と原告商品は実質的に同一の形態であり,
前記前提事実(2)及び(3)アのとおり,被告商品1の販売が開始された平
成30年10月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開
始されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品1を独自
に開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被
告は原告商品の形態に依拠して被告商品1を作り出したと推認するのが
相当である。
(ウ) 以上によれば,被告商品1は,原告商品の「商品の形態」を「模倣し
た商品」であると認められる。
・・・
また,被告商品2と原告商品の間には相違点5)が認められるが,別紙
1被告商品目録記載2の写真のとおり,被告商品2も,被告商品1と同
様,レース生地の色合いが他の部分の布地と同系色であって,レース生
地の存在が際立つものではなく,被告商品2では,被告商品1よりレー
ス生地が多く用いられているものの,そのレース生地が肩紐部や背部と
いった比較的注目することが多くないと考えられる部分に用いられてお
り,一方で,同写真と別紙2原告商品目録記載の写真を見比べると,原
告商品と被告商品2とで,ナイトブラとしての機能を成り立たせるパー\nツの形状及び構成はほぼ同一であるといえることからすると,この改変\nが商品全体の形態に与える効果は大きくないというべきである。さらに,
前記1(2)イのとおり,ブラジャーにレース生地を用いること自体ありふ
れた形態であり,被告商品2の相違点5)に係る部分を無地の生地からレ
ース生地に置き換える着想が困難であるとはいえない。
被告商品2と原告商品の間には相違点6)が認められるが,ホックが4
段階であるか3段階であるかの違いにすぎず,ホックを連結する段階数
を増やすという改変を着想することは容易であり,そのような改変が商
品全体の形態に与える効果は小さいといえる。
そうすると,相違点3)ないし6)は,いずれもわずかな改変に基づくも
のであり,商品の全体的形態に与える変化は大きくなく,商品全体から
見て些細な相違にとどまるといえるから,被告商品2は原告商品と実質
的に同一の形態であると認めるのが相当である。
(イ) 前記(ア)のとおり,被告商品2と原告商品は実質的に同一の形態であり,
前記前提事実(2)及び(3)イのとおり,被告商品2の販売が開始された平
成31年2月頃に先立つ平成28年9月12日に原告商品の販売が開始
されているところ,本件全証拠によっても,被告が被告商品2を独自に
開発したことをうかがわせる事情は認められないことからすると,被告
は原告商品の形態に依拠して被告商品2を作り出したと推認するのが相
当である。
・・・
不競法5条2項の侵害者が侵害行為により受けた利益の額は,侵害者の侵
害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製
造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額で
あると解するのが相当である。
辞任前の被告訴訟代理人が作成した一覧表(甲54)によれば,被告が被\n告商品1を販売したことにより,1億5794万円の売上げがあり,商品原
価として2650万円,カード決済料金として552万7900円及び送料
原価として2650万円を要したこと,被告が被告商品2を販売したことに
より,1億4254万5320円の売上げがあり,商品原価として2873
万7640円,カード決済料金として498万9086円及び送料原価とし
て2391万7000円を要したことが認められる。
そして,弁論の全趣旨
によれば,上記の商品原価,カード決済料金及び送料原価は,いずれも被告
各商品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認められる。
他方で,上記一覧表(甲54)には,被告商品1につき広告費として73\n20万5070円,人件費420万円及び販売システム費用789万700
0円,被告商品2につき広告費として7063万0834円,人件費630
万円及び販売システム費用712万7266円を要したかのような記載があ
る。しかし,被告が上記広告費を支出してどのような内容の広告をしたのか,
それが被告各商品に係るものであったかは,証拠上明らかではないし,上記
人件費及び販売システム費用がいかなる目的で支出されたかも証拠上明らか
でないから,これらの費用は,被告各商品の製造販売に直接関連して追加的
に必要となった経費とは認められない。
したがって,被告が被告商品1を販売したことによる利益の額は9941
万2100円(=1億5794万円−2650万円−552万7900円−
2650万円)であると,被告商品2を販売したことによる利益の額は84
90万1594円(=1億4254万5320円−2873万7640円−
498万9086円−2391万7000円)であると,それぞれ認められ
る。
(2) 本件訴訟に現れた全ての事情を勘案すると,本件訴訟の弁護士費用相当の
損害額は,被告商品1につき994万1210円,被告商品2につき849
万0159円と認めるのが相当である。
(3) したがって,被告が被告各商品を販売したことにより原告が被った損害額
は,合計2億0274万5063円である。
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2020.12.23
令和2(ネ)10040 損害賠償請求控訴事件 商標権 民事訴訟 令和2年12月17日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
バーキンタイプのバッグ販売について、不競法2条1項1,2号違反とした1審判断が維持されました。
c 取引の実情
控訴人は,被控訴人商標が付された被控訴人商品と,控訴人商品等
は,価格,品質,商品名及びロゴ等の点で異なるので,取引の実情に
照らして,控訴人商品等と被控訴人商標は誤認混同を生ずることはな
く,類似しない旨主張する。
しかし,被控訴人商標が付された被控訴人商品と,控訴人商品等が,
価格,品質,商品名及びロゴ等の点で異なるとしても,そのことから
直ちに,取引の実情に照らして,控訴人商品等の形状と被控訴人商標
が誤認混同を生ずることがないとはいえないし,類似性が否定される
ことはない。被控訴人商品の新品は,被控訴人の直営店舗や専門店等
を通じて店舗又はインターネット上で販売されており,それらの販路
の数は比較的限定されているものの(弁論の全趣旨),高級ブランド
バッグである被控訴人商品の中古品については,中古市場が成立して
おり,店舗及びインターネット上で活発に取引がされている一方で(公
知の事実),控訴人商品等も新品は店舗(甲1,2,弁論の全趣旨)
及びインターネット上で販売され(原判決第2の2(1)イ(原判決3頁
14行目ないし19行目)),中古品もインターネット上で取引され
ており(甲51〜61),このように,被控訴人商品と控訴人商品等
は,新品及び中古品のいずれについても市場に共通性があると認めら
れる。また,中古品については,被控訴人商品であっても品質は新品
に比べて劣化しており,価格も新品よりは低廉である上,一般に中古
品は,ある期間使用された後に譲渡されるため,出所や商品名が新品
のように明確にされていない場合や,品質,商品名及びロゴの有無等
を十分に確認することなく取引が行われている場合(特にインターネ\nット上の取引の場合)が少なくないから(弁論の全趣旨),価格,品
質,商品名及びロゴによって被控訴人商品と控訴人商品等が明確に区
別されるとはいい難く,被控訴人商品の中古品が市場において活発に
取引されていることからすると,被控訴人商品と控訴人商品等の混同
の可能性が具体的に存在すると認められる。そうすると,前記a,b\nのとおり,控訴人商品等(控訴人商品及びバーキンタイプのバッグ)
は被控訴人商標と外観上類似するから,価格,品質,商品名及びロゴ
に相違があることを考慮しても,被控訴人商標を付した被控訴人商品
と控訴人商品等は具体的な取引において誤認混同のおそれがあるもの
と認められる。したがって,取引の実情に照らして,控訴人商品等の
形状は被控訴人商標と誤認混同を生ずるおそれがあり,類似するもの
と認められる。
・・・
(4) 争点4(被控訴人の損害)について
ア 控訴人商品等の販売個数について
(ア) 控訴人は,遅くとも平成22年8月11日以降,バーキンタイプの
バッグを販売しており(甲41,弁論の全趣旨),平成30年2月14
日には,控訴人の店舗を訪問した被控訴人関係者に対して,控訴人商品
を販売した(甲1,乙34)ことからすると,控訴人は,対象期間(平
成22年8月11日から平成30年2月14日までの期間)において控
訴人商品等を販売していたものと認められる。そして,控訴人は,バー
キンタイプのバッグを平成22年夏か秋頃に中国の業者から100個仕
入れ,それがバーキンタイプのバッグの最後の仕入れであったこと,そ
の100個のバーキンタイプのバッグについて,被控訴人商標権の登録
がされた直後の平成23年10月頃の在庫は30個程度であったが,控
訴人はその頃からバザーに出品するなどして在庫処分を開始しており,
平成25年4月には在庫処分をほぼ終了し,平成26年1月か2月頃に,
最後の1点を販売したことを主張しており(本判決による補正後の原判
決第2の4(4)【被告の主張】ア(イ)(原判決13頁6行目ないし12行
目)),これらの控訴人の主張は,バーキンタイプのバッグの販売及び
その前提としての仕入れという,控訴人に不利益な事実に関する主張で
あるから,その主張に係る事実があったものと認めることができる。そ
うすると,控訴人は,対象期間中に,少なくとも100個の控訴人商品
等を販売したものと認めるのが相当である。
(イ) これに対し,控訴人は,平成22年8月11日の時点においてバー
キンタイプのハンドバッグが100個存在したという証拠はなく,平成
30年2月14日に誤って被控訴人関係者に有償譲渡したバッグは平
成22年頃に仕入れたバッグではなく,控訴人商品等をチャリティーバ
ザーで販売したのは販売利益を寄付するためであったから,対象期間中
に少なくとも100個の控訴人商品等を販売したことはないと主張す
る。
しかし,前記(ア)のとおり,控訴人は,バーキンタイプのバッグを平
成22年夏か秋頃に100個仕入れたことが認められ,仮に平成30年
2月14日に被控訴人関係者に有償譲渡した控訴人商品が平成22年
頃に仕入れたバッグではないとしても,控訴人が平成30年2月14日
時点において被控訴人商品に形態の類似した控訴人商品を譲渡してい
たことからすると,控訴人が対象期間(平成22年8月11日から平成
30年2月14日までの期間)において,平成22年に仕入れたバーキ
ンタイプのバッグや控訴人商品を含めて,控訴人商品等を,実際には1
00個を超えて販売した可能性があるとしても,少なくとも100個販\n売したことは,これを認めることができる。また,控訴人が控訴人商品
等の一部をチャリティーバザーで販売し,その利益の一部を寄付したと
しても,それは控訴人が利益を得たことを否定する事情にはならず(寄
付は,利益の処分と評価すべきものであって,利益そのものを否定する
事情には当たらない。),控訴人が販売利益を寄付したことを裏付ける
客観的な証拠もないから,いずれにせよ,控訴人は控訴人商品等を10
0個販売したことにより利益を得たものと推認される。
イ 控訴人商品等の販売に係る限界利益率について
控訴人は,控訴人商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず,
購入した際の領収証等の資料はないと主張し,また,バーキンタイプのバ
ッグの仕入れに関する資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みで
あると主張して,これを提出しない。さらに,控訴人は,バーキンタイプ
と同程度の販売価格のハンドバッグの仕入価格は販売価格の55%程度
であったから,バーキンタイプのバッグの仕入価格も販売価格の55%程
度であったと主張し,販売価格の55%の価格でハンドバッグの仕入れを
行ったことを裏付ける証拠として乙31(平成29年1月の取引の納品書)
を提出する。しかし,乙31は,どのような態様の商品の仕入れに係るも
のか明らかでなく,平成22年に中国の業者から100個仕入れたと認め
られるバーキンタイプのバッグとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異な
るから,乙31により,バーキンタイプのバッグの仕入価格が販売価格の
55%程度であったことは認められず,その他に,これを裏付ける証拠は
ない。控訴人がその他の経費として主張する梱包費用,送料については,
具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な証拠はない。
そこで限界利益率について検討すると,上記のとおり,控訴人の主張に
よっても,仕入価格が販売価格の55%を上回ることはない。また,控訴
人は,バッグ等の販売を業として行っており,控訴人商品等の仕入れ,販
売,経費等に関する資料を所持し,その内容を把握しているのが自然であ
ると解されるにもかかわらず,これらを提出せず,その内容を明らかにせ
ず,そのため,経費等も具体的に立証されていない。このように,控訴人
が,被控訴人主張の利益率(60%)を否認しながら,関連性の乏しい証
拠のほかは,本来提出されてもおかしくない証拠を含め,何ら証拠を提出
していないことからすると,控訴人は控訴人商品等の販売により相当高率
の利益を得たと疑われてもやむを得ない側面があること,及び60%とい
う利益率が有名ブランドを模したバッグの販売による利益率として不当
に高いとは考えられないことなどの事情を併せ考えると,控訴人商品等の
販売による限界利益率を60%と認定することについて,これが高率に過
ぎるとして不当とする根拠はない。これらの事情を考慮すると,控訴人商
品等の販売による控訴人の限界利益は,平均して販売価格の60%であっ
たものと認めるのが相当である。
◆判決本文
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◆平成31(ワ)9997
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2020.10.12
令和1(ワ)19889 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和2年3月18日 東京地方裁判所
fashionブランドのセレクトショップ「SHIPS」と同じマッチングサイトの名称を使用していた被告に対して、差止と20万円の損害賠償が認められました。
原告ブランドに係る商品の需要者は,衣料品を中心とするファッション全
般に関心を有する一般消費者であると解されるところ,前記認定のとおり,
1)原告の店舗数及びその展開地域,2)オンラインショップも運営しているこ
となど,その販売態様,3)原告の商品の売上高及び来店者数,4)セレクトシ
ョップ分野における原告の地位(三大ブランドの一つ),5)雑誌,カタログ,
フリーペーパー等における宣伝・広告の状況,6)フェイスブック,ツイッタ
ー,インスタグラムにおけるフォロワー数などの事情を総合すると,原告表\n示は,被告表示の使用が開始された平成31年4月時点において,需要者等\nの間において,原告の商品等表示に当たるものとして,周知であったと認め\nられる。
(2) これに対し,被告は,原告商品の売上高や店舗数,UNITED ARR
OWS,BEAMS,ユニクロ,しまむらなどの同業他社に比して少ないこ
とを指摘する。
しかし,原告商品の売上高や店舗数が,原告より更に規模が大きい同業他
社と比較して小さいとしても,そのことは原告ブランドが需要者等の間で周
知であるとの認定を妨げるものではない。前記認定のとおり,原告は,アパ
レルの一つの分野として確立しているセレクトショップ分野において,BE
AMS及びUNITED ARROWSとともに,三大セレクトショップの
一つと評価されており,その店舗は,著名百貨店,主要ターミナル駅の駅ビ
ル,大型路面店などを中心に,全国に展開され,売上高(平成31年2月期)
も245億7502万円に上ることなどを考慮すると,原告表示が周知であ\nると認められることは前記判示のとおりである。
(3) 被告は,「知恵蔵」の出版が10年以上前であることなどを指摘し,原告
が挙げる書籍は周知性を基礎付けるものではないと主張するが,前記1(2)
のとおり,アパレル業界に関する書籍及び「知恵蔵」などの一般書籍は,出
版時期を問わず,いずれも,原告がセレクトショップの大手であるとの認識
を示している上,上記1で認定した原告ブランドの宣伝・広告状況などにも
照らすと,原告がセレクトショップとして需要者等によく知られているとい
う「知恵蔵」に記載された状況は,平成31年4月時点においても変わりが
ないというべきである。
(4) 被告は,原告による広告宣伝について,他社の広告費との比較や実際の広
告効果の定量的な主張・立証がないと主張するが,前記1(3)(4)記載のとお
り,原告ブランドの雑誌等における紹介の状況,SNSにおけるフォロワー
の数,創業40周年の際の宣伝・広告状況(全国主要駅におけるポスター広
告,新聞における全面広告等),プロサッカーにおけるスポンサー企業とし
ての宣伝・広告状況など,原告による広告・宣伝の内容,量等に照らすと,
他企業の広告費との比較を要することなく,原告表示は需要者等の間で周知\nであると認めることができる。
(5) 被告は,被告サイトの利用者向けに実施したアンケート調査の結果によれ
ば,回答者341名のうち,原告表示を知らなかった者は297名に及ぶこ\nとを理由として,原告表示が周知ということはできないと主張する。\n しかし,被告の行ったアンケート調査調査は,その対象者が被告サイトの
利用者であり,被告サイトにより提供されるサービスの性質,内容等に照ら
すと,その利用者層は一定の限定された範囲にとどまるものと考えられ,そ
の調査結果が必ずしも原告ブランドに係る商品の需要者の認識を反映してい
るとはいい難い。そうすると,上記調査結果は,原告表示が需要者等の間で\n周知であるとの結論を左右しないというべきである。
(6) 以上のとおり,原告表示は,少なくとも周知性を有するものであって,不\n正競争防止法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されているもの」に当
たるというべきである。
3 争点2(混同のおそれの有無)について
(1) 不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」には,他人の周
知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と当該他人とを同一\n営業主体として誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会
社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業\nを営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含すると解さ
れる(最高裁平成7年(オ)第637号同10年9月10日第一小法廷判
決・集民189号857頁,最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年
5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,前記認定(5)及び(6)のとおり,1)原告は,原
告表示を含むブランド名を用いて,アパレル分野に限らず,自動車のメンテ\nナンスやカスタム,生活雑貨の販売などの事業も手掛けていること,2)原告
は,原告表示を用いて,異業種の他企業との間で,多数のコラボレーション\n企画を実施しており,そのことは需要者等に相応に認識されていたものと推
認されること,3)原告は,原告表示を用いて,福祉分野を始めとする社会的\nな活動にも参加しており,公式サイトにおいて,「コンプライアンス,LG
BT,ダイバーシティなどについての啓蒙」に取り組んでいる旨を表明して\nいることが認められる。
これによれば,被告サイトに原告表示と類似する被告表\示を使用すること
は,原告と被告との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列関係などの緊
密な営業上の関係があり,又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属\nする関係が存すると需要者等に誤信させる行為であって,原告の商品又は営
業と「混同を生じさせる行為」というべきである。
(3) これに対し,被告は,原告の属するアパレル分野と被告の属するマッチン
グサイトの分野とは,全くの異業種であり,業種の隔たりが大きいと主張す
るが,原告自身が,障害者を始めとするマイノリティや福祉に対する支援活
動を積極的に行っていることは前記判示のとおりであり,また,アパレルメ
ーカーがマッチングアプリとの協業プロジェクトを実施した事例や,セクシ
ャルマイノリティの間で人気の出会い系アプリがアパレルラインを発表した\n事例があると認められること(甲65)に照らすと,アパレル分野とマッチ
ングサイトの分野とが全くの異業種であるということはできない。
(4) また,被告は,原告は他の企業の知名度を借りたコラボレーションをして
いるにすぎないと主張するが,原告が他の分野で事業自体を展開していない
としても,他業種の企業とコラボレーションをし,原告表示の付された商品\n等を提供することとなれば,需要者等は,原告と被告との間に子会社等の関
係があるなどの誤信をするおそれがあることに変わりはないというべきであ
る。
(5) 被告は,被告の実施したアンケート調査結果も根拠として,被告サイトが
原告によって運営されていると誤信することはないと主張するが,前記判示
のとおり,被告の行ったアンケート調査結果が原告ブランドの需要者等の認
識を反映しているとは必ずしもいうことはできないので,同アンケート調査
結果を根拠にして混同のおそれがないということはできないが,同調査結果
によっても,セレクトショップ「SHIPS」を知っている者の2割以上に
混同が生じていることによれば,被告表示に接した需要者等が上記の混同を\nする可能性は高いというべきである。\n
(6) したがって,被告の行為は,原告の商品又は営業と「混同を生じさせる行
為」に当たる。
4 争点3(営業上の利益の侵害の有無)について
原告は,昭和52年に「SHIPS 銀座店」を開設して以来,その店舗を
拡大し,平成31年3月頃までに,全国19都道府県に約70店舗を展開する
に至っており,原告ブランドには長年にわたる使用により信用力が形成されて
いると解されるところ,被告による被告表示の使用は,原告ブランドの信用力\nに依拠し,その意に反してこれと類似の被告表示を使用するものであり,原告\nブランドの信用力を希釈化若しくは毀損するものであるということができる。
したがって,被告の行為は,原告の営業上の利益を侵害し,これを侵害する
おそれのある行為であると認められる。
5 争点4(故意・過失の有無及び損害額)について
(1) 被告は,被告以外にも「シップス」又は「SHIPS」の名称を用いる事
業者が存在することなどを理由として,被告には過失がなかったと主張する
が,「SHIP」等の名称を用いる業者が他に存在するとしても,そのこと
をもって過失の存在が否定されるものではない。被告は,原告表示の存在を\n知りつつ,被告サイトに被告表示を使用したものであり,原告表\示の周知性
や原告表示との類似性を容易に認識し得たものと認められるので,被告には\n少なくとも過失が存在したものというべきである。
(2) そして,本件訴訟の難易度,審理の経過,認容する請求の内容その他本件
において認められる諸般の事情を考慮すると,被告による不正競争行為と相
当因果関係にある弁護士費用相当額は20万円とするのが相当である。
◆判決本文
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2020.10. 7
平成31(ワ)9997 損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟 令和2年6月3日 東京地方裁判所
バーキンタイプのバッグについて、バーキンバックの立体商標に基づく商標権侵害、不競法違反として、約300万の損害賠償が認められました。信用毀損として100万円と残りは侵害者利益です。
原告は,被告において,対象期間中に,被告商品等を少なくとも100個販売し
たと主張するところ,前記第2の2(5)のとおり,被告は平成22年8月11日には
バーキンタイプのバッグを販売し,平成30年2月14日には被告商品を販売した
ことのほか,被告において,バーキンタイプのバッグは一度に100個単位で仕入
れ,最後の仕入れは平成22年夏ないし秋頃に100個仕入れたものであった,最
後に仕入れた商品は全て販売した旨主張していることからすれば,原告の主張する
とおり,被告は,対象期間中に,少なくとも100個の被告商品等を販売したもの
と認めるのが相当である。
イ 被告商品等の販売価格
前記第2の2(5)のとおり,被告商品は,平成30年2月に2万8080円(税抜
価格2万6000円)で販売されたものであることに加え,バーキンタイプのバッ
グの販売価格に関する当事者双方の主張,被告が保管期間の経過により廃棄済みと
してバーキンタイプのバッグの販売に関する資料を提出していないことなどの本件
の審理に現れた事情を総合すれば,被告商品等の1個当たりの販売価格は,平均す
ると,被告商品の販売価格と同じく税抜価格2万6000円程度であったものと認
めるのが相当である。
ウ 被告商品等の総販売額
被告は前記イの税抜価格に消費税を付して被告商品等を販売していたところ(甲
1,弁論の全趣旨),被告の総販売額を算定するに当たって適用すべき消費税率につ
いては,被告がバーキンタイプのバッグの販売を平成26年2月頃までに終了した
と主張していることや平成30年2月14日に販売された被告商品のほかに平成2
6年3月以降に被告商品等が販売されたことを示す証拠がないことを踏まえ,販売
に係る100個のうち99個については平成26年2月までの5%とし,1個につ
いては8%とすることが相当である。
そして,前記ア及びイによれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告
は,以下のとおり,合計273万0780円の売上を上げたものと認めるのが相当
である。
2万7300円(税抜価格2万6000円+5%の消費税分)×99個+2万8
080円(税抜価格2万6000円+8%の消費税分)×1個=273万0780
円
エ 被告商品等の販売に係る限界利益率
(ア) 仕入費用
被告は,被告商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず,購入した際
の領収証等の資料もないと主張し,また,バーキンタイプのバッグの仕入れに関す
る資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みであるとして,これを提出してい
ない。
被告は,バーキンタイプのバッグの仕入価格について,同程度の価格のハンドバ
ッグの仕入価格が販売価格の55%程度であったから,バーキンタイプのバッグの
仕入価格も同様であったと主張し,販売価格の55%の価格で仕入れを行った平成
29年1月の取引の納品書(乙31)を提出するが,被告が平成22年に中国のハ
ンドバッグ製造業者から100個単位で仕入れたと主張するバーキンタイプのバッ
グとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異なり,どのような商品の仕入れであった
かも明らかではないから,上記の納品書に係る取引は,バーキンタイプのバッグの
仕入価格が販売価格の55%であったことを裏付けるものとはいえず,その他,被
告が主張する仕入価格を裏付ける的確な証拠はない。
(イ) その他の経費
被告が,その他の経費として主張するバザーへの寄付金,梱包費用,送料につい
ては,具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な資料はない。
(ウ) 限界利益率
このような被告の主張立証の状況を含めた弁論の全趣旨によれば,被告商品等の
販売による被告の限界利益は,原告の主張するように,平均して販売価格の60%
程度であったものと認めるのが相当である。
オ 被告が賠償すべき利益の額
以上によれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告には,以下のとお
り,少なくとも163万8468円の限界利益が発生したものと認めるのが相当で
あり,同額が,不競法5条2項により被告が賠償すべき損害額となる。
273万0780円×60%=163万8468円
(2) 信用毀損による無形損害について
前記2及び前記(1)で検討したところからすれば,原告商品は,高級ブランドであ
る原告を代表する高級バッグとして著名なものであり,そのほとんどが1個100万円を超える価格で販売される高級品であったところ,被告は,原告商品と類似す\nる形態を持ちながら,原告商品には使用されない合成皮革等の安価な素材が使用さ
れた被告商品等を,原告商品と比べて著しい廉価の1個2万7300円程度で,平
成22年8月から平成30年2月までの期間に少なくとも100個販売したもので
ある。
したがって,被告商品等の販売という不正競争によって,原告は原告商品に係る
信用を毀損されたものというべきであり,原告商品の形態と類似する外見のハンド
バッグが被告以外の業者によっても販売されていること(乙1〜17)といった被
告の主張する事情を考慮しても,被告商品等の販売に係る,信用毀損による無形損
害の額は100万円を下らないというべきである。
◆判決本文
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2020.09. 7
令和1(ワ)7786 不正競争行為差止請求事件 不正競争 民事訴訟 令和2年8月27日 大阪地方裁判所
京都市立芸術大学が、「1 京都市立芸術大学、2京都芸術大学、3 京都芸大、4 京芸、5 Kyoto City University of Arts」が周知・著名であるとして、「京都造形芸術大学」から「京都芸術大学」への変更使用の中止を求めた事件で、大阪地裁は、1京都市立芸術大学については周知であるとは認めたものの、京都芸術大学とは混同しないと判断し、原告の請求を棄却しました。
ア 原告表示1について\n
前記(第2の2(1),第3の1)認定の各事実に加え,証拠(甲3,5,9の2
及び9の3,21,22,29,36)及び弁論の全趣旨によれば,原告大学は,
その母体の設立からは140年,現在の名称となってからでも50年以上という長
期にわたり,京都市に所在して芸術教育を実施し,文化勲章受章者を含む多数の芸
術家を輩出している。また,原告大学は,京都市内にギャラリー(@KCUA)を設
置し,同所にて展覧会等の催事を繰り返し実施するとともに,京都市内において,
案内チラシ等に原告表示1を付すなどして展覧会や演奏会を主催し,また,地下鉄\n駅構内その他京都市内の人目に付きやすい場所に,原告表\示1を付して作品を展示
し,さらに,京都市内において児童その他市民向けの芸術教育活動等を行ってきた
ことが認められる。
これらの事情のほか,京都府及びその近隣府県の範囲における交通や新聞等によ
る報道の実情等に鑑みると,京都府及びその近隣府県に居住する一般の者が,原告
大学を表示するものとして原告表\示1を目にする機会は,相当に多いものと合理的
に推認される。
そうすると,原告表示1は,原告大学を表\示するものとして需要者に広く認識さ
れており,周知のものといってよい。これに反する被告の主張は採用できない。
イ 原告表示2〜4について\n
(ア) 前記1認定の各事実によれば,原告表示2〜4については,例えば原告大\n学の卒業生や受験指導組織といった特定の属性を有する層で原告表示3又は4が比\n較的多数使用されているといった例もあるものの,程度の差こそあれ,原告表示1\nと比較してその使用頻度はいずれも少ないといえる。
しかも,原告大学を示す略称又は通称として,原告表示2〜4のほか,「京都市\n立芸大」,「市立芸大」,「市芸」その他様々なものが使用されている。原告大学
の正式名称(原告表示1と同一のもの)のうち,「京都」(又は「京」),「芸\n術」(又は「芸」)及び「大学」(又は「大」)は,大学の名称としては,所在
地,中核となる研究教育内容及び高等教育機関としての種類を示すものとして,い
ずれもありふれたものである。加えて,原告大学の中心的な活動場所等が京都市で
あること,このため,原告大学の略称等が使用される地域的範囲としても,京都市
又は京都府であることが必然的に多くなり,「京都」(又は「京」)は敢えて明示
せずとも文脈上暗黙の了解事項となりやすいと推察されることなどに鑑みると,略
称等に「市立」(又は「市」)が含まれ,「京都」(又は「京」)が省略されるこ
とも,当然起こり得ることといってよい。原告の設置主体である京都市及び京都市
長や原告大学関係者が,原告大学を示すものとして,自ら「市立」(又は「市」)
を含む略称等を使用する例が少なからず見られること,インターネット上又は書籍
としての地図においても,原告大学については「市立」が含まれる表示が使用され\nていることも,この文脈において合理的に理解し得る。
そもそも,このように多種多様な略称等を生じ,それぞれが一定程度使用されて
いること自体,原告大学の略称等として各表示それ自体が有する通用力がいずれも\nさほど高くないことをうかがわせる。同一の文書等の中で,原告表示1と共に使用\nされる例が多いことも,同様に,原告表示2〜4の略称等としての通用力の低さを\nうかがわせる。
しかも,原告表示2〜4と同一の表\示が,原告大学ではなく被告大学を示す表示\nとして使用される例も,相応に見受けられる。
他方,原告表示2〜4が,それぞれ,原告表\示1を想起させることを介して,又
はこれを介さずに,原告大学を想起させるものとして広く知られていることをうか
がわせるに足る具体的な証拠はない。
(イ) これに対し,原告は,原告表示2〜4についても原告大学の表\示として周
知であり,また,これらと同一の表示が被告大学を指すものとして使用される例は\n誤記であるなどと主張する。
しかし,上記(ア)の事情のほか,仮に原告表示2〜4が原告大学の略称等として\n周知であるとすれば,そのような誤記が多数生ずるはずはないし,そもそも,作成
主体を異にする者の間で同様の誤記が頻発すると考えることは合理性に乏しい。そ
の他原告が縷々指摘する事情を考慮しても,この点に関する原告の主張は採用でき
ない。
(ウ) 以上より,原告表示2〜4については,原告の商品等表\示として需要者の
間に広く知られたもの,すなわち周知のものということはできない。
・・・
イ 前記(3)イ(ア)のとおり,原告表示1のうち,「京都」,「芸術」及び「大\n学」の各部分は,大学の名称としては,所在地,中核となる研究教育内容及び高等
教育機関としての種類を示すものとして,いずれもありふれたものである。このた
め,これらの部分の自他識別機能又は出所表\示機能はいずれも乏しい。他方,\n「(京都)市立」の部分は,大学の設置主体を示すものであるところ,日本国内の
大学のうちその名称に「市立」を冠するものは原告大学を含め11大学,「市立」
ではなく「市」が含まれるものを含めても13大学にすぎず,しかも,京都市を設
置主体とする大学は原告大学のみである(乙2)。このような実情に鑑みると,原
告表示1のうち「(京都)市立」の部分の自他識別機能\又は出所表示機能\は高いと
いうべきである。
また,その名称に所在地名を冠する大学は多数あり,かつ,正式名称を構成する\n所在地名,設置主体,中核となる研究教育内容及び高等教育機関としての種類等の
うち一部のみが相違する大学も多い(乙1)。このため,需要者は,複数の大学の
名称が一部でも異なる場合,これらを異なる大学として識別するために,当該相違
部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しないのが取引の実情と見られる。
そうすると,原告表示1の要部は,その全体である「京都市立芸術大学」と把握\nするのが相当であり,殊更に「京都」と「芸術」の間にある「市立」の文言を無視
して「京都芸術大学」部分を要部とすることは相当ではない。この点に関する原告
の主張は採用できない。
また,本件表示の要部については,上記のとおり「京都」,「芸術」及び「大\n学」のいずれの部分も自他識別機能又は出所表\示機能が乏しいことから,これらを\n組み合わせた全体をもって要部と把握するのが適当である。
ウ 原告表示1と本件表\示とは,その要部を中心に離隔的に観察すると,「市
立」の有無によりその外観及び称呼を異にすることは明らかである。観念について
も,「市立」の部分により設置主体が京都市であることを想起させるか否かという
点で,原告表示1と本件表\示とは異なる。取引の実情としても,前記イのとおり,
需要者は,複数の大学の名称が一部でも異なる場合,これらを異なる大学として識
別するために,当該相違部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しない。
そうすると,原告表示1と本件表\示とは,取引の実情のもとにおいて,取引者又
は需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から全体的に
類似のものとして受け取るおそれがあるとはいえない。そうである以上,原告表示\n1と本件表示とは,類似するものということはできない。\n
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2020.03.25
平成29(ワ)3428 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 令和元年12月24日 東京地方裁判所
旧2CHの元管理人による新2CH(5チャンネル)に対する商標権侵害・不競法防止法事件です。裁判所は一部の商標について商標権侵害を認めました。
前記認定事実によれば,本件電子掲示板は,(1)平成11年に開設され,平
成12年に西鉄バスジャック事件の犯人とされる少年が同掲示板に犯行予告\nを書き込むなどの出来事もあって社会的に注目を集めるようになり,平成1
4年頃には利用者が急激に増加し(前記2(2)ア,ウ,エ),(2)平成16年及
び平成17年には本件電子掲示板に掲載された投稿をほぼそのまま出版した
「電車男」が話題となり,インターネットに係る複数の賞を受賞し,これが
ネットニュースで報道され(前記2(2)カ),(3)平成18年頃には,本件電子
掲示板の名称である「2ちゃんねる」という言葉がマスコミにおいて頻繁に
登場したり,本件電子掲示板内において使用される用語が一般の雑誌におい
ても使われたり,電子掲示板を利用しない一般人の間でも本件電子掲示板が
話題に上ったりするようになった(前記2(2)キ)。
これらによれば,本件電子掲示板のトップページ等に表示されていた被告\n標章1及び2は,遅くとも,平成18年には,本件電子掲示板に係る役務を
表示するものとして,全国の需要者の間に広く認識されるに至ったと認める\nことができる。そして,平成25年3月当時,本件電子掲示板の月間の閲覧
数が29億にのぼるとして「日本語圏最大級のネットコミュニティ」などと
宣伝されていたことに照らせば(前記2(2)ス),原告商標1及び2が出願さ
れた平成25年1月25日及び平成26年3月27日においても,上記周知
性が維持,継続していたものと認められる。
(4)ア
本件電子掲示板に係る役務を誰が提供していたかについてみると,原告
は,本件電子掲示板を開設した者であり,管理人と呼ばれたこともあり,
平成26年3月まで,本件電子掲示板の広告収入を間接又は直接に受領し
ていた(前記2(2)ア,カ,キ,セ)。また,そのように受領した広告収入
の一部をNTテクノロジー社に渡していた(前記2(2)エ)。他方,原告は,
平成21年以降,ブログや「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」と題する書
籍等において,自ら積極的に,本件電子掲示板を第三者に譲渡したとか,
本件電子掲示板の管理人を退き,アドバイザーか1ユーザーであるなどと
公言していた(前記2(2)ク,コ,シ)。また,平成21年1月2日以降,
本件ドメイン名に係るWhois 情報において,本件証拠上,原告に特に関係
が深いと考えられる会社(東京プラス社やブラジル社)や原告は,登録者
や運営名に関する連絡先,登録サービス提供者等のいずれにも登録されて
いない(前記2(3))。
NTテクノロジー社は,平成11年頃から本件電子掲示板のサーバの提
供や関係する掲示板の開設を新たに行うなどしており,その後も,利用者
が増大した本件電子掲示板のサーバの管理や関係するソフトウェアのプロ\nグラミング等を単独で又は被告と共にしていた(前記2(2)イ,エ,オ)。
また,NTテクノロジー社は,平成14年頃には本件電子掲示板の閲覧の
利便性を向上させるソフトウェアを開発してこれを本件電子掲示板の利用\n者に販売し,その多額の売上げを原告を介さずに自ら取得していた(前記
2(2)イ,エ)。NTテクノロジー社は東京プラス社を介して原告から本件
電子掲示板の広告料の一部の送金を受けていて,その送金額は平成14年
頃は少なくとも当面は月額2万ドルとされていたところ,それに関する契
約書はなく,送金額は変動し,実際に送金された総額は相当の多額であり,
また,NTテクノロジー社が求めた増額に任意に応じてその送金がされた
こともうかがわれる(前記2(2)エ,テ)。そして,少なくとも平成17年
5月以降,本件ドメイン名に係るWhois 情報において,NTテクノロジー
社(NTテクノロジー社の設立者のジムを含む。)は,単に技術面に関す
る連絡先としてだけでなく,継続して,運営面に関する連絡先や登録サー
ビス提供者として登録されていた(前記2(3))。被告は,平成16年頃よ
り,本件電子掲示板の管理に直接携わるソフトウェアのプログラミング等\nの業務を担うようになり(前記2(2)オ),平成24年5月3日に本件ドメ
イン名を取得して本件ドメイン名の登録者となり,遅くとも平成26年2
月19日から本件電子掲示板のトップページ等に被告標章1及び2を表示\nして使用し,その使用は平成29年9月30日まで継続し(前提事実(5),
前記2(3)カ),本件証拠上,平成26年3月5日には,本件電子掲示板の
トップページの下に会社名,所在地等が表示され,平成30年4月当時の\n「5ちゃんねる」と題する電子掲示板のトップページには,本件電子掲示
板を被告から譲り受けたと解される記載が表示されていた(前記2(2)タ,
ツ)。
本件電子掲示板は,多種の掲示板から構成された巨大掲示板サイトであ\nり,その性質上,サーバの管理,新たな掲示板や機能の導入,それらの維\n持,改善等の運営は極めて重要である。また,平成14年頃には利用者が
急激に増加していたのであり,遅くともその頃以降,それらの管理,運営
等が占める役割には非常に大きいものがあった。そして,それらの管理,
運営等は,平成11年以降,NTテクノロジー社が単独で又は被告と共に
担っていた。この点について,原告が前記2(2)テ記載の別件訴訟において
提出した陳述書中には,NTテクノロジー社は東京プラス社からサーバの
管理業務を受託したにすぎない旨の記載があるが(甲21),上記の事実
関係に照らせば,NTテクノロジー社が単に原告等の委託を受けてその指
示等に基づいて管理業務を行っていたのみであるというのは不合理という
ほかない。原告が平成26年2月19日まで本件電子掲示板の役務の提供
を行っていたといえるかは措くとして,少なくとも,NTテクノロジー社
は,遅くとも平成14年以降は,自ら主体的に本件電子掲示板に係る役務
の提供を行っており,本件電子掲示板に係る役務を自己の役務として提供
していたと認めるのが相当である。そして,被告も,平成16年以降,N
Tテクノロジー社とともに本件電子掲示板の役務の提供をしており,少な
くとも平成26年2月19日から平成29年9月30日までの間,本件電
子掲示板に係る役務を自己の役務として提供しており,遅くとも被告が本
件ドメイン名を取得した平成24年5月3日頃に,NTテクノロジー社か
ら,本件電子掲示板の運営に係る事業の譲渡等を受けるなどして,その地
位を承継したと認めるのが相当である。
イ 商標法32条の先使用権は,識別性を備えるに至った商標の先使用者に
よる使用状態を保護し,もって,先使用者が当該商標に蓄積した信用を同
人において享受することを可能にするものである。前記先使用権の趣旨に\n照らせば,当該商標を主体的に自己の業務として提供する役務を表示する\nものとして使用してその商標の持つ出所,品質等について信用を蓄積した
者やその者から当該事業の承継を受けた者は,先使用権の他の要件を満た
せば先使用権を有するといえる。
被告標章1及び2は,遅くとも平成14年頃以降は,少なくとも,NT
テクノロジー社において主体的に自己の業務として提供していたといえる
本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして使用され,遅くとも平成\n18年頃には周知性を獲得し,その後も,NTテクノロジー社は被告標章
1及び2を表示して同役務の提供を継続したため,上記周知性が維持・継\n続されたといえる。被告は,遅くとも平成24年5月3日頃に,NTテク
ノロジー社から本件電子掲示板の運営に係る事業の承継を受けるなどして
その地位を承継し,本件商標1及び2の登録出願当時(本件商標1につき
平成25年1月25日,本件商標2につき平成26年3月27日),継続
して被告標章1及び2を使用して本件電子掲示板に係る役務を自己の業務
として提供していたから,被告標章1及び2は,上記時点において,被告
の業務である本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして周知であっ\nたと認められる。また,被告は,平成29年9月30日まで,自己の業務
を行う意図で被告標章1及び2を表示した本件電子掲示板に係る役務を提\n供したと認めることが相当である。
ウ 不正競争の目的なくある特定の標章を表示する役務を複数の者が共同し\nて提供していた場合,その複数の者の間で紛争が生じた後であっても,少
なくとも,主体的に自己の役務として自ら役務を提供して当該表示の持つ\n出所,品質等について信用を蓄積するために果たした役割が主要といえる
者が,紛争後も提供した当該役務が従前と同様のものであった場合,その
者による当該標章の使用は,前記の先使用権の制度趣旨に照らし,不正競
争の目的なくされているとするのが相当である。そして,前記に照らせば,
NTテクノロジー社は,不正競争の目的なく本件電子掲示板に係る役務を
主体的に自らの役務として提供して,当該表示の持つ出所,品質等につい\nて信用を蓄積するために主要な役割を果たしたといえる。平成26年2月
19日にはそれまで本件電子掲示板に関与していた東京プラス社及び原告
が本件電子版のサーバにアクセスできなくなったところ,東京プラス社及
び原告の同時点までの本件電子掲示板への関与の内容には不明な部分もあ
るが,NTテクノロジー社と共に上記提供を行ったか,NTテクノロジー
社から本件電子掲示板に係る事業の承継を受けるなどしてその地位を承継
した被告は,平成26年2月19日以降も本件電子掲示板に係る役務をそ
れまでと同様に提供していたことがうかがえ,NTテクノロジー社の果た
した上記の役割に照らせば,同日以降平成29年9月30日までの間,被
告標章1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するものとして,不正\n競争の目的なく使用したと認めることが相当である。
エ 以上によれば,平成26年2月19日から平成29年9月30日までの
間,被告は,本件商標1及び2を本件電子掲示板に係る役務を表示するも\nのとして使用することについて,先使用権を主張することができる。
◆判決本文
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2019.12. 9
平成30(ネ)10064等 商標権侵害行為差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 令和元年10月10日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
ウェブサイトおけるタイトルタグ及びメタタグでの使用が不正競争行為であるかが争われた事件です。1審は、「平成28年11月1日から(タイトルタグ及びメタタグでの使用は15日から)平成29年3月22日までの間に被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグ並びに被告ウェブページに被告標章1及び2を記載した行為は,不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当するが,その他の被告標章1〜3の使用は,同号における商品等表\示の使用とはいえず,商標としての使用ともいえない」と判断しました。
これに対して、知財高裁(2部)は、「(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成30年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。」と判断しました。\n
ア 平成28年11月1日から平成29年3月22日まで
タイトルタグ及びメタタグにおける被告標章1及び2の使用
前提事実(4)アのとおり,一審被告グレイスランドが,平成28年11月15日
から平成29年3月22日までの間,被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及
びメタタグに原判決別紙1−1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載し
ていたこと,その結果,(1)グーグルや楽天市場でキーワード検索した場合に,検
索結果を表示する画面にタイトルとして被告標章1又は2が表\示され,空白部分
を挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ」として
商品の種類が表示され,(2)楽天市場では,タイトルの横に被告商品の画像が表示\nされ,さらに,(3)グーグルでは,場合によって,タイトルの下に被告標章2を含
む「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ 浄水
カートリッジ(標準タイプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確
認の上,お買い求めください。」などの表示がされていたことが認められる。\n上記のような態様で被告標章1及び2を使用した場合,需要者は,独立して表\n示された被告標章1及び2及びその後に空白を挟んで表示されている語句(「取付\n互換性のある交換用カートリッジ」,「浄水器カートリッジ」,「浄水カートリッジ」)や被告標章1及び2の近くにある被告商品の写真から,被告標章1及び2が被告
商品の出所を示していると認識するといえる。
そして,このような表示は,タイトルタグやメタタグの記載によって実現され\nているものであるから,タイトルタグやメタタグに被告標章1及び2を記載する
ことは,被告標章1及び2を,商品を表示する商品等表\示として使用(不競法2
条1項1号)するものと認められる。
被告ウェブページ1〜4における被告標章2の使用
前提事実(5)アのとおり,平成28年11月1日から平成29年3月22日まで
の間,被告ウェブページ1〜4の下方に,原判決別紙2−1のウェブサイトの記
載欄のとおり,上記 と同様に,「タカギ」との被告標章2が表示され,空白部分\nを挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ(標準タ
イプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確認の上,お買い求めく
ださい。」などの被告商品の種類に応じた被告標章2を含む表示(本件記載1)が\nされており,さらにその横には被告商品の写真が表示されていたものと認められ\nる。 本件記載1中に独立して表示された被告標章2\nは,被告標章2の後に空白を挟んで記載された語句や被告標章2の近くにある写
真が示す被告商品の出所を示すものとして用いられているものと認められ,商品
等表示に該当するものであると認められる。\n一審被告らは,「取付互換性のある交換用カートリッジ」や「当製品
はメーカー純正品ではございません」といった記載があること及び被告ウェブペ
ージ1〜4における被告商品の外観写真が一審原告の純正品とは異なるものであ
ることなどを挙げて,タイトルタグ,メタタグ及び被告ウェブページ1〜4にお
いて,被告標章1及び2は,商品の出所を表示するものとして使用されていない\nと主張する。
しかし,「互換性」という用語は,製造販売者が同じ商品間でも用いられるもの
(甲46)である上,「取付互換性」の語の意味は明確ではなく,需要者が「取付
互換性」という語から直ちに被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使
用されていないと認識するとはいえない。
また,「当製品はメーカー純正品ではございません」という記載については,被
告商品が一審原告の製品とは異なることを端的に述べたものではなく分かりにく
い記載となっている上,需要者がウェブサイトの記載を注意深く読むとは限らず,
当該記載が末尾に記載されていることからすると,それが常に認識されるとはい
えないし,被告商品と一審原告の製品との外観上の差異(乙10)についても,
本件浄水器に使用される交換用カートリッジが普段露出しているものではなく,
需要者が被告商品と一審原告製品との外観上の差異を明確に認識できるとは限ら
ないから,需要者が被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使用されて
いないと認識するとはいえない。
したがって,一審被告らの上記主張は上記 の判断を左右するものとはい
えない。
イ 平成29年3月23日以降
平成29年3月23日以降の被告ウェブページ並びにそのタイトルタグ及びメ
タタグにおける被告標章1及び2の使用は,以下のとおり,そのいずれもが出所
表示機能\,自他商品識別機能を有する態様での使用とはいえず,商品等表\示とし
ての使用に該当しない。
平成29年3月23日から同年4月12日まで
前提事実(4)イのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年3月23日か
ら同年4月12日までの間,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原
判決別紙1−2のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その
結果,楽天市場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギに
使用出来る取り付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトル\nが被告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていた
ことが認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場
合にも,「【楽天市場】タカギに使用できる出来る取り付け互換性のある交換用カ
ートリッジ」という被告標章1を含む記載のあるタイトルが表示されるなどして\nいたと認められる。さらに,前提事実(5)イのとおり,被告ウェブページにおいて
は,上記期間,その下方に「タカギに使用出来る取り付け互換性のある交換用カ
ートリッジ」との記載を含む表示がされていたことが認められる。\n上記各表示は,いずれも「タカギ」というカタカナ3文字の後に「に」という\n助詞が付加され,当該商品が一審原告製の本件浄水器に使用できるカートリッジ
であるという,被告商品の商品内容を説明するまとまりのある文章と理解できる
ものである。そうすると,需要者が上記各表示に接したとしても,「タカギ」との\n表示を,当該商品自体の出所を表\示するものとして認識するとは認められない。
したがって,上記各表示における被告標章1及び2の使用が,商品等表\示とし
ての使用に該当するとは認められない。
平成29年4月13日以降
前提事実(4)ウのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年4月13日以
降,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原判決別紙1−3及び1−
4のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その結果,楽天市
場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギの浄水器に使用
できる,取付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトルが被\n告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていること
が認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場合に
も,「【楽天市場】タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある交換用カー
トリッジ」という被告標章1を含む記載があるタイトルが表示されるなどしてい\nると認められる。さらに,前提事実(5)ウのとおり,平成29年4月13日以降,
被告ウェブページにおいては,その下方で「タカギの浄水器に使用できる,取付
け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含む表\示がされるようになって
いることが認められる。
と同様に,「タカギの浄水器に使用できる」という文章は,被告商品が一
審原告製の本件浄水器に使用可能であるという商品内容を説明するものであると\n需要者に理解されるものと認められ,被告商品の出所を表示するものとして使用\nされているとは認められないから,上記各表示における被告標章1及び2の使用\nが,商品等表示の使用に該当するとは認められない。\n
一審原告の主張について
一審原告は,(1)誤認を招きやすいインターネット取引において,キーワード検
索をする需要者は,「タカギ カートリッジ」というキーワードに着目して表示を\n理解してしまう上,検索結果を表示する画面で被告標章1及び2を用いた文章が\n一審原告の製品の写真と共に表示されることからすると,需要者は「タカギ」の\n「カートリッジ」であるという先入観をもって各表示を理解すること,(2)片仮名
で表記されているのが,「タカギ」と「カートリッジ」のみであるところ,片仮名\nは目立ち,語句の切れ目を表示する役割も果たすことからすると,平成29年3\n月23日以降の被告標章1及び2の使用も商品等表示としての使用に当たると主\n張する。
しかし,上記 , で検討した各表示(「タカギに使用出来る取り付け互換性の\nある交換用カートリッジ」,「タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある
交換用カートリッジ」)は,まとまりのある文章として,それが被告商品の説明で
あることが容易に理解できるものであるから,需要者の注意力がそれほど高くな
く,かつ「タカギ カートリッジ」というキーワード検索を経ていて,一審原告
の製品が共に表示されることがあるからといって,需要者が,「タカギ」と「カー\nトリッジ」のみに着目して,一審原告の主張するような先入観をもって上記各表\n示を理解するとは認められない。
また, 必ずしも片仮名が平仮名
や漢字に比して注意を引きつけるとまではいえない。
したがって,一審原告の上記主張は,上記 の判断を左右するものではな
い。
(2) 被告標章3について
ア 前提事実(6)のとおり,平成28年11月1日から平成30年12月2
8日までの間に,被告ウェブページ及び被告ウェブサイト2の冒頭部分には,被
告標章3を含む本件記載2がされていた。
被告標章3である「タカギ社製」は,それが修飾する商品が「タカギ社」の製
造に係るものであること,すなわち,当該商品が一審原告の出所に係ることを示
す語句であるといえる。
そして,被告標章3(タカギ社製)を含む本件記載2は,「タカギ社製 浄水蛇
口の交換用カートリッジを お探しのお客様へ」と3段に分けて記載されている
ものであって,文章の内容だけからしても,「タカギ社製」が,「浄水蛇口」では
なく,「交換用カートリッジ」を修飾していると理解することが可能なものである。\nまた,前提事実(6)のとおり,本件記載2の上方及び下方の2か所に,本件記載
2より明らかに大きなサイズの文字で,より目立つように「交換用カートリッジ」,
「交換用カートリッジ ついに発売!!」などと表示され,かつ,交換用のカー\nトリッジそのものである被告商品の写真画像も併せて表示されているから,それ\nらの表示に接した需要者は,冒頭に独立して記載された「タカギ社製」の文字を,\nカートリッジに結びつけて理解しやすいといえる。
以上に加えて,前記2で検討したとおり,被告標章3(タカギ社製)の要部で
あるタカギの文字部分が家庭用浄水器及びその関連商品の需要者の間で周知なも
のであること並びに需要者の注意力がそれほど高くないことといった事情も併せ
考えると,需要者が,本件記載2の中で独立して最上段に記載されている「タカ
ギ社製」が,本件記載2中の「交換用カートリッジ」を修飾する語句であると理
解することは十分にあり得るものと認められる。\nそうすると,本件記載2中の被告標章3(タカギ社製)は,被告商品について,
商品等表示として使用されているものと認められる。\n
イ 一審被告らは,(1)本件記載2が一連の呼びかけといえる文言であるこ
と,(2)本件記載2の2行目が「浄水蛇口」から始まり,かつ「浄水蛇口」の次に
「の」という助詞が付されていることからすると,需要者は,被告標章3(タカ
ギ社製)は「浄水蛇口」を修飾するものとして理解すると主張する。
しかし,上記(1)について,本件記載2が呼びかけといえる文言であるからとい
って,被告標章3が商品等表示として使用されていないということにはならない\nし,上記(2)についても,一審被告らの主張する事情を考慮しても,上記アのとお
り,需要者が,被告標章3(タカギ社製)が「交換用カートリッジ」を修飾する
語句であると理解することは十分にあり得るということができるから,一審被告\nらの上記主張は採用することができない。
(3) 小括
以上の検討のとおり,(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日ま
での間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ
及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から
平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブペー
ジ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成3
0年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した
行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。\n
・・・・
以上の検討のとおり,本件不競法該当行為がされた期間は,平成28年
11月1日から平成30年12月28日であるところ,一審原告はそのうち平成
28年11月1日から平成30年11月30日までの間の損害賠償を請求してい
る。
証拠(乙26の1〜6,乙27,28,乙29の1・2,乙30,乙31の1
〜7,乙32〜35,乙38の1〜22,乙39の1〜22,乙40の1〜20,
乙41の1〜3,乙43の1〜20)及び弁論の全趣旨によると,上記期間に対
応する各月ごとのパソコン等分利益,パソ\コン等分利益及びスマホ等分利益の合
計額は,別紙2〜4のとおりであると認められる。
また,上記期間に対応する(1)パソコン等分利益の合計額が228万6033円,\n
(2)パソコン等分利益及びスマホ等分利益の合計額が954万0740円であるこ\nとについては当事者間に争いがない。そして,上記パソコン等分利益228万6\n03円については不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当たるものと
認められる(なお,推定の覆滅については(2)で後述する。)。
イ 一審原告は,スマホ等分利益725万4707円(954万0740
円―228万6033円=725万4707円)のうち5%についても「侵害行為
による利益」に含まれると主張する。
しかし,前提事実(3)イのとおり,スマホ・タブレット向けサイト内のウェブペ
ージの最下部には,「表示モード:モバイル|PC」として被告ウェブサイトへの
リンクがあり,スマートフォンやタブレットから仮想店舗へとアクセスした者は,
上記リンクを利用することで,被告ウェブサイトを表示させることができ,また,\nスマホ・タブレット向けサイト内のウェブページの最上部にも「PC」という文
字を○で囲んだ記号が表示されており,同表\示も被告ウェブサイトへのリンクと
なっているものの,このようなスマホ・タブレット向けウェブサイトにおける被
告ウェブサイトへのリンクの表示位置や表\示の態様からすると,同リンクは需要
者が相当注意しないと気付かないような目立たないものである上,スマホ・タブ
レット向けサイトの下方にあるリンクについては,他の表示に隠れてタップでき\nない場合がある(甲87,弁論の全趣旨)。そして,スマホ・タブレット向けウェ
ブサイトと本件訴訟の対象となっている被告ウェブサイトとの間に見やすさや情
報量の点で差があることなどにより,スマートフォン及びタブレット経由で仮想
店舗にアクセスした需要者が敢えて被告ウェブサイトを表示させる積極的な要因\nがあるとも認められない。これらのことからすると,スマホ等分利益が,本件不
競法該当行為によって生じたものとは認められず,一審原告の上記主張は採用す
ることができない。
ウ 以上からすると,不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当
たるのはパソコン等分利益228万6033円のみであると認められる。\n
(2) 不競法5条2項における推定の覆滅については,侵害者が主張立証責任を
負うものであり,侵害者が得た利益と周知な商品等表示の主体が受けた損害との\n相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。
この点について,一審被告らは,(1)被告商品を2回以上購入したリピーターに
よる購入が全体の売上げの約15%を占めているところ,リピーターについては誤
認混同が生じていないこと,(2)被告標章3の表示回数が1回であり,注意書きや\n打ち消し表示が多数されていることからすると,不競法5条2項に基づく推定が\n全て覆滅されると主張する。
ア 上記(1)について,確かに証拠(乙42)によると,被告商品について
リピーターによる購入が一定割合あることは認められるが,リピーターであるか
らといって,そのことから直ちに本件不競法該当行為とは無関係に被告商品を購
入したということはできないから,リピーターによる購入であることを理由とし
て推定の覆滅を認めることはできない。
イ 次に,上記(2)について,前記4(1)ア及び(2)アのとおり,平成28年
11月1日から平成29年3月22日までは,被告ウェブページ1〜4において,
被告標章2が商品等表示として使用され,かつ被告ウェブページ1〜4及び被告\nウェブサイト2の冒頭部分に被告標章3が商品等表示として使用されていた上,\n平成28年11月15日から平成29年3月22日まではタイトルタグ及びメタ
タグにおいて,被告標章1及び2が商品等表示として使用されていたところ,こ\nれに対して,一審被告らが打ち消し表示と主張するものについては,前記5(2)〜
(5)のとおり決して十分なものということはできないから,需要者が本件不競法該\n当行為とは無関係に被告商品を購入したとはいい難く,推定の覆滅は認められな
い。
他方,前記4(1)イのとおり,平成29年3月23日以降,被告ウェブページ並
びにそのタイトルタグ及びメタタグにおいて,被告標章1及び2は,商品等表示\nとしては使用されておらず,前記4(2)アのとおり,被告標章3が被告ウェブペー
ジ1〜6及び被告ウェブサイト2において商品等表示として使用されたのみであ\nるから,本件不競法該当行為とは無関係に被告標章を購入した者も一定数存在し
たものと認められ,一定の推定の覆滅を認めることができる。その割合はこれま
で認定した諸般の事情に照らすと,5割と認めるのが相当である。
(3) 以上からすると,不競法5条2項により一審原告の損害として推定される
べき額は,以下の計算式とおり,119万1757円であると認められ,弁護士
費用としては,本件に表れた一切の事情を勘案して20万円を相当と認める。\nしたがって,一審被告らによる不正競争行為(本件不競法該当行為)によって
一審原告に生じた損害額の合計は,139万1757円(119万1757円+
20万円=139万1757円)であると認められる。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成29(ワ)14637
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2019.07.17
平成29(ワ)31572 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和元年6月18日 東京地方裁判所
イッセイミヤケデザインのバッグなどについて、周知商品等表示・著名商品等表\示であると判断されました。なお、あわせて、著作権侵害かも争われましたが、「実用目的で工業的に製作された製品について,その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,・・・上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合がある」と一般基準を述べましたが、本ケースでは著作物性無しと判断されました。
判決文の最後にバックなど形状を示す写真があります。
原告商品は, で述べたとおり,わずかな例外を除いて本件形態
1´を備え,メッシュ生地又は柔らかな織物生地に,相当多数の硬質な三角
形のピースが,2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるよ
うに配置されることにより,中に入れる荷物の形状に応じてピースに覆われ
た表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり,立体\n的で変化のある形状を作り出す。一般的な女性用の鞄等の表面は,布製の鞄\nのように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか,あるいは硬い革
製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないことから
すれば,原告商品の形態は,従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる
特徴を有していたといえる。このことは,新聞や雑誌といったメディアにおいて「画期的なデザインのバッグ」(前記(1)カウ),「シンプルなピースが集
まって 自在に変化するユニークな形」前記(1)カカ),「三角形のパーツをつなぎあわせたフューチャリスティックなデザイン(前記(1)カテ),「特徴
がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別でき」る
前記(1)カセ)などと,そのデザインの独特さ,斬新さが取り上げられ,平
成19年秋にはデザイン性と機能性を併せ持ったアイテムだけを厳選して\n掲載するニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に採\n用されたことからも裏付けられ,原告商品の形態は,これに接する需要者に
対し,強い印象を与えるものであったといえる。
したがって,原告商品の本件形態1´は,客観的に他の同種商品とは異な
る顕著な特徴を有していたといえ,特別顕著性が認められる。
・・・
原告商品1ないし6は,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュック
サック及びトートバッグであり,いずれも物品を持ち運ぶという実用に供され
る目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。
著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を
創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するも\nのをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ,その定義や著作権法の
目的(同法1条)等に照らし,実用目的で工業的に製作された製品について,
その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,その特徴と
は別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないもの
は,「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著\n作物として保護されないが,上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性
を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合
があると解される。
(3) これを原告商品1ないし6についてみるに, のとおり,原告商品1な
いし6は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作さ
れたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原
告商品1ないし6の本件形態1は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する\n三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰める
ように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折
れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変
形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形
が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に
応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状\nに応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き,
鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶ\nために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は,
著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特
徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するた
めの特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備\nえた部分を把握することはできないとするのが相当である。
したがって,原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一な
ものとみることができず,著作物性は認められないから,その余の点について
判断するまでもなく,原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。
◆判決本文
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2019.06.17
平成30(ネ)10081等 不正競争行為差止等請求控訴事件等 不正競争 民事訴訟 令和元年5月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁(2部)は、マリカー事件について、中間判決をしました。論点は色々ありますが、1審の判断がほぼそのままとなっています。
一審被告らは,一審被告会社は,「マリカー」の標準文字からなる本件商標を
有しており,「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから,仮に
被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても,差止請求や損害賠
償請求は認められない旨主張する。
しかし,本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ,
前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M
ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表\示マリカーも,
「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい
て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知\nっていたものと認められる。
これに加え,1)一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と
していたこと,2)平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて
いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状
態!!」と記載されていたこと(甲3,4),3)平成28年8月12日当時に品川
第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ
倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が
同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト
1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて
いたこと(甲6の1,甲35),4)平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト
に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」
と記載されていたこと(甲6の2),5)後記6認定のとおり,一審原告の著名な商
品等表示である原告表\現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行
為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月
2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時
点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ
オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は,
周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利\n用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと
推認することができる。
したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると
主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記
主張は理由がない。
なお,一審被告らは,原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間\nでは周知ではないと主張するが,これまで検討してきたとおり,本件需要者は訪日
外国人に限られないから,一審被告らの主張はその前提を欠いており,採用するこ
とができない。
◆判決本文
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◆平成29(ワ)6293
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2018.10.26
平成30(ネ)10042 損害賠償請求控訴事件 商標権 民事訴訟 平成30年10月23日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
不競法2条1項2号に該当するとした原審が維持されました。
控訴人は,被告各商品に被控訴人の著名表示が付されていることは認めつつ,\n需要者がその出所につき控訴人であり被控訴人ではないと認識し得る場合であり,
著名表示は商品のデザインとしてのみ使用されていることから,著名表\示が「商品
等表示」として使用されているとはいえないなどと主張する。\nしかし,不正競争防止法2条1項2号は,同項1号と異なり,「他人の商品又は
営業と混同を生じさせる行為」であることを要件としていない。これは,同項2号
の趣旨が,著名な商品等表示について,その顧客吸引力を利用するただ乗りを防止\nすると共に,その出所表示機能\及び品質表示機能\が希釈化により害されることを防
止するところにあることによるものである。このため,他人の著名な商品等表示と\n同一又は類似の表示が,商品の出所を表\示し,自他商品を識別する機能を果たす態\n様で用いられている場合には,商品等表示としての使用であると認められるのであ\nって,需要者が当該表示により示される出所の混同を生じるか否かが直ちにこの点\nを左右するものではない。
また,原告標章は著名性を有し,高い出所識別機能を有するものであること,原\n告モノグラム表示の使用態様として,商品に応じてその一部分のみを商品に付して\n使用されており,必ずしも「LOUIS VUITTON」との文字商標を必要と
はしていないことは,前記のとおりである(引用に係る原判決「事実及び理由」第
4の2(1)及び(2)。他方,被告標章1〜7は,原告標章を構成する原告記号a〜d\nと同一の記号により構成され,その配置も原告標章と同一の規則性に基づくものの\n一部分ということができ,また,被告標章8は,被告記号eの存在や配色において
原告標章と異なるものの,配置の規則性の点では原告標章と同一に配置されたもの
の一部分ということができる。このような原告標章の著名性や,原告標章と被告各
標章との構成要素及び使用態様の共通性に鑑みると,被告各標章は,いずれも,こ\nれを見た者の認識において,容易に著名表示である原告標章を想起させるものであ\nることは明らかである。このことは,控訴人が取引の実情として指摘する「REM
AKE」,「VINTAGEのLOUIS VUITTONの生地を…落とし込ん
だ」,「カスタム」,「CUSTOM」といったウェブ上の記載の存在や「JUN
KMANIA」という屋号の表示の存在等を考慮しても異ならない。\n以上より,被告各標章は,それがデザインとして認識されるか否かはさておき,
出所識別機能を有する態様で用いられているものと認められるのであって,この点\nに関し控訴人がるる指摘する事情を考慮しても,控訴人の主張は採用できない。
イ さらに,控訴人は,不正競争防止法2条1項2号に該当するには著名表示の\n主体の営業上の利益が侵害されるような場合でなければならないと主張する。
しかし,後記のとおり,表示希釈及び表\示汚染という観点をも含め,控訴人の行
為により被控訴人に現に損害を生じていると認められることから,仮に控訴人の主
張を前提としても,この点をもって不正競争防止法2条1項2号該当性が否定され
ることにはならない。
ウ したがって,控訴人の行為は,不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為
に該当する。
(2)損害の額について
ア 控訴人は,需要者は,被告各商品が被控訴人によって販売されていない商品
であることを認識しながら,敢えて控訴人の商品を購入しており,控訴人による被
告各商品の展示販売行為がなければ被控訴人が利益を得られたであろうという関係
にはないなどと主張する。
しかし,原告標章と被告各標章との類似性の程度,原告商品及び被告商品の販路
の共通性並びに需要者層の重なり合いの蓋然性に鑑みると,被控訴人には,控訴人
による侵害行為がなければ利益を得られたであろうという事情が認められることは,
前記のとおりである(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の3(1))。
イ 控訴人は,被告各商品の販売により受けた利益は12万3442円であり,
かつ,この利益額への原告標章の貢献の程度はその50%にとどまるなどと主張す
る。
不正競争防止法5条2項に基づく損害額は,侵害者の売上額から原材料の仕入価
格その他の変動経費を控除した限界利益と解すべきであって,売上高の多寡にかか
わらず発生し得る販売費及び一般管理費等は原則として控除されないと解される。
そして,控訴人は,経費の控除につき,その項目を区別することなく,決算書上
「経費」として計上したもの全額の控除を主張するにとどまり,変動経費の額に関
する具体的な主張立証はない。
また,推定覆滅事情は控訴人において主張立証すべきところ,控訴人主張の被告
各商品の売上げに対する原告標章の貢献の程度を裏付けるに足りる証拠はないから,
この点に関する控訴人の主張も採用し得ない。
ウ 控訴人は,被告各商品の展示販売により被控訴人の信用が毀損されることは
ないなどと主張する。
しかし,前記のとおり(引用に係る原判決「事実及び理由」第4の3(2)),原告
標章は著名性を獲得した商品等表示であり,また,被控訴人は,その商品の品質及\nびブランドイメージを維持管理するために多大な努力を払ってきたことが認められ
る。他方,被告各商品の中には,被告商品4のように,品質の点で原告商品と比較
して粗雑というべきものが含まれていると認められることに加え,控訴人自身,被
告各商品は,原告標章(ないし原告モノグラム表示)の著名性に便乗し,被控訴人\nの商品の「高級感を揶揄し風刺する意図」で製作販売された「チープな商品」と主
張しているものであり,客観的にも,その構成等から,そのような意図等で製作販\n売された商品であることが容易にうかがわれる。
このような被告各商品が市場に存在することが,原告商品の品質及びブランドイ
メージに悪影響を及ぼし得ることは明らかである。
そうすると,控訴人による不正競争行為は,被控訴人が長年の企業努力により獲
得した原告標章の著名性及びそれにより得られる顧客誘引力を不当に利用して利得
するものであり,被控訴人の企業努力の成果を実質的に減殺するものであって,著
名な原告標章を希釈化するのみならず,これを汚染するものというべきである。こ
れにより,需要者の原告商品又は原告標章に対する信用や価値が毀損され,被控訴
人は無形の損害を被ったものと認められる。
エ したがって,この点に関する控訴人の主張はいずれも採用できず,不正競争
防止法5条2項に基づく損害額は108万1490円,信用毀損等の無形損害の額
は50万円及び弁護士費用相当額15万円を,いずれも下回ることはない。
◆判決本文
原審はこちら。
◆平成29(ワ)5423
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2018.10.25
平成29(ワ)6293 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成30年9月27日 東京地方裁判所
任天堂のマリカー関連の判決です。原告表現物は周知の商品等表\示であるとして、差止および1000万円の損害賠償が認められました。
本件動画1ないし16は,インターネット上の動画共有サービスで
あるYouTubeにアップロードされたものであり,本件動画1ないし3,
5ないし12及び16については,その冒頭において被告会社が行う本
件レンタル事業に関する動画であることが表示されている。また,本件\n動画4は本件レンタル事業に係る利用者がコスチュームを着用して公道
カートを運転する様子が撮影された動画であり,本件動画13及び14
は本件レンタル事業について紹介するテレビ番組の当該紹介部分を切り
取って作成された動画であり,本件動画15は本件ロゴ等がペイントさ
れた公道カートを運転する本番組の当該部分を切り取って作成された動画であり,いずれも被告会社あるいは関係団体が,本件レンタル事業を広く紹介するために動画共有
サービスにアップロードしたものと認められる。
そして,被告がその役務である本件レンタル事業を紹介する動画にお
いて,原告の商品等表示といえる原告表\現物と類似の表示がされた場合,\nその表示は,少なくとも被告会社が提供している役務に関する広告にお\nいて営業の出所を示す表示としてされたということができる。\n 本件動画1ないし16においては,いずれも原告表現物の特徴の一部\nを備えたコスチューム(被告標章第2の1ないし10のいずれかのコス
チューム)を着用した人物が表示されていること,これらの人物はいず\nれも公道カートに乗車していること,「マリオ」,「ルイージ」,「ヨ
ッシー」,「クッパ」がカートの運転手となるゲームシリーズ「マリオ
カート」が日本及び全世界において相当の出荷本数を有すること(前記
2(1)イ(ア)),これらの動画の冒頭に「MARICAR」などという表示がさ\nれていたことからすれば,これらのコスチュームを着用した動画上の人
物は,本件レンタル事業の需要者をして,ゲームシリーズ「マリオカー
ト」のキャラクターである「マリオ」,「ルイージ」,「ヨッシー」,
「クッパ」を連想させ,上記各人物と,本件レンタル事業の需要者にお
いて周知の商品等表示である原告表\現物とを類似のものと受け取らせ,
その商品等表示と被告会社が行っている役務に関連性があると誤認させ,\n被告会社と原告との間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原
告から使用許諾を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。
(オ) コスチュームを着用した被告従業員
前記(イ)及び(ウ)のとおり,本件マリオコスチューム,本件ルイージコ
スチューム,本件ヨッシーコスチューム及び本件クッパコスチューム
(被告標章第2の1ないし10の各コスチューム)は原告表現物の特徴\nの一部を備えるところ,これらを着用し,カートツアーの先導者として
「MARICAR」「MariCar」といった被告標章第1を表示する公道カートに\n乗車することは,前記(ウ)と同様の理由により,需要者をして,ゲーム
シリーズ「マリオカート」のキャラクターである「マリオ」,「ルイー
ジ」,「ヨッシー」及び「クッパ」を連想させ,その先導者と,本件レ
ンタル事業の需要者の間において周知の商品等表示である原告表\現物と
を類似のものと受け取らせ,被告会社と原告との間に同一の営業を営む
グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存する
と誤信させるおそれがある。
(カ) 本件マリオ人形
本件マリオ人形(被告標章第2の11の人形)は,原告表現物マリオ\nの特徴を全て備えており,原告表現物マリオと類似するといえる。\n そして,本件マリオ人形が設置されている被告会社の店舗において本
件レンタル事業が行なわれていること,「マリオ」等がカートの運転手
となるゲームシリーズ「マリオカート」が日本及び全世界において相当
の出荷本数を有すること(前記2(1)イ(ア))からすると,同設置行為は,
少なくとも提供している役務に関する広告において営業の出所を示す表\n示としてされたものといえ,原告表現物マリオが本件レンタル事業の需\n要者において周知の原告の商品等表示であることから,被告会社と原告\nとの間に同一の営業を営むグループに属する関係又は原告から使用許諾
を受けている関係が存すると誤信させるおそれがある。
ウ 以上によれば,被告が,被告標章第2を使用して行った本件宣伝行為
(本件写真1の表示を除く,以下同じ。)は,原告の周知の商品等表\示と
類似する標章を商品等表示として使用しているものであり,これに接した\n需要者に対し,被告会社と原告との間に,原告と同一の商品化事業を営む
グループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存するも
のと誤信させるものと認められる。
・・・
4 不競法に基づく本件ドメイン名の使用差止及び登録抹消請求の可否
(1) 争点7(本件ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争
に該当するか否か)について
ア 本件ドメイン名と原告文字表示の類否
原告の特定商品等表示である原告文字表\示マリカーと,本件各ドメイン
名の類否について ,本件ドメイン名のうち「.jp」,「.co.jp」及び
「.com」部分は多くのドメイン名に共通して用いられるものであるから,
出所を表示する機能\を有する部分は「maricar」又は「fuji-maricar」であり,同部分が本件各ドメイン名の要部と認められる。このうち「maricar」部分については,前記2(1)イで述べたとおり,原告文字表示マリカーと類似すると認められる。\nまた,「fuji-maricar」について,前記のとおり「maricar」部分が原
告文字表示マリカーと類似し,「fuji-」の部分は「maricar」に付加され
たものと受け取ることができるものであり,「fuji-maricar」も,原告文
字表示マリカーと類似するものといえる。\n したがって,本件ドメイン名はいずれも原告文字表示マリカーと類似す\nる。
イ 図利加害目的の有無
前記2(1)イ(イ)で述べたとおり,原告文字表示マリカーは,被告会社が\n設立された平成27年6月4日の相当程度以前である平成22年頃から,
原告の販売するゲームシリーズ「マリオカート」の略称として,ゲームに
関心を有する需要者の間で全国的に知られており,被告会社がこれを認識
していなかったとは認め難いこと,被告会社は,本件訴訟提起前の平成2
9年2月23日当時,本件ドメイン名1ないし3を使用して開設したサイ
ト(被告会社サイト,品川店サイト1,河口湖店サイト)において,「マ
リオカート」シリーズに登場する主要キャラクターである「マリオ」「ル
イージ」等のコスチュームを着用した利用者が公道カートを運転するとい
う本件レンタル事業のサービス内容を写真等と共に宣伝し,「みんなでコ
スプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増。」と記載しており,被
告会社の意図が,原告の「マリオカート」シリーズにおけるゲームの世界
を現実世界で体験することを売りにして顧客を惹きつけようとするもので
あったと推認できることからすれば(甲6の1ないし3),被告会社は,
原告文字表示マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用することにより,\n同文字表示が有する高い知名度を利用し,原告の公認あるいは協力の下で\n本件レンタル事業を営んでいるかのような外観を作出し,不当に利益を上
げる目的があったものと認めることができる。
したがって,本件各ドメイン名の使用につき,「不正の利益を得る目的」
を有していたと認めることができる。
ウ 小括
以上によれば,被告会社は,本件レンタル事業の宣伝行為のために,不
正の利益を得る目的をもって,原告の特定商品等表示である原告文字表\示
マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用したと認められるから,同行
為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当する。
5 著作権法に基づく原告表現物の複製又は翻案の差止請求並びに本件写真等\nの抹消及び廃棄請求の可否
(1) 争点10(複製又は翻案の差止請求の可否及び範囲)について
原告は,請求の趣旨第4項において,原告表現物の複製又は翻案の差止\nめを求め,請求の趣旨第5項において,原告表現物の複製物又は翻案物の\n自動公衆送信又は送信可能化の差止めを求めている。\n 原告表現物を複製又は翻案する行為には,広範かつ多様な行為があると\nころ,原告の請求は,絵画の著作物である原告表現物を絵画上複製すると\nいう行為がされていない本件において,差止めの対象となる行為を具体的
に特定することなく,広範かつ多様な態様な行為のすべてを差止めの対象
とするものといえ,自動公衆送信又は送信可能化の差止めについても,そ\nの差止めの対象自体を複製物又は翻案物とすることから,同様のものとい
える。このような無限定な内容の行為について,被告会社がこれを行うお
それがあるものとして差止めの必要性を認めるに足りる立証はされていな
い。原告の前記請求には理由がない。
(2) 争点9(本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に\n当たるか否か)及び争点11(本件各コスチュームが原告表現物の複製物\n又は翻案物に当たるか否か)について
本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか\n否か(争点9)については,これらが複製物又は翻案物に当たることを前
提とする請求である請求の趣旨第4項,第5項に係る請求が前記3(1)の
理由により認められないため,判断するに及ばない。
また,原告は,請求の趣旨第11項において,本件各コスチュームが原
告表現物の複製物又は翻案物に当たることを前提として会社である被告会\n社にその貸与の禁止を求めている。本件各コスチュームである別紙貸与物
目録記載1ないし6の各コスチュームは,それぞれ,被告標章第2の2,
3,5,6,8,10のコスチュームである。ここで,不競法に基づく請
求の趣旨第6項に係る請求には被告会社がこれらのコスチュームを使用
(貸与)することの禁止を求める請求が含まれると解され,この部分は,
請求の趣旨第11項に係る請求と選択的併合の関係に立つと解される。前
記3のとおり,不競法に基づき被告会社がこれらのコスチュームの貸与を
することが禁止されることによって,請求の趣旨第11項に係る請求につ
いて判断をするに及ばなくなるから,本件各コスチュームが原告表現物の\n複製物又は翻案物に当たるか否か(争点11)は判断するには及ばない。
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2018.09.28
平成29(ワ)43698 商標権侵害行為差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成30年9月12日 東京地方裁判所
JALの文字部分が南急となっているJALマークと似た標章の使用について、不競法2条1項2号違反と判断されました。最後に両当事者の商標があります。
不競法2条1項2号の「類似」に該当するか否かは,取引の実情の下において,
需要者又は取引者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両
者を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準に判断すべきである。
イ これを本件についてみるに,原告表示と被告標章とは,外観において,いずれ\nも,円形に収まるように描かれた鶴ないし鳥類の頭部,首元及び翼から成り,正面か
らみて左を向いた鶴ないし鳥類の頭部及び首元を囲むような態様で,下部から頂点に
向かって円形の外周に沿うように翼が描かれた全体として円形の赤色の図形であり,
鶴ないし鳥類の頭部,首及び翼の形状や赤色の色彩が共通する。他方,被告標章の図
形には鶴ないし鳥類の頭部に目とみられる白抜きされた小さい円形様の部分が存在
するのに対して,原告表示にはそれが存在しない点,原告表\示と被告標章の円形の内
側下部には,円形の直径と比較して縦が5分の1ないし7分の1程度,横が2分の1
程度の大きさで白色の文字が記されているところ,原告表示には「JAL」との文字\nが,被告標章には「南急」との文字が記載されている点で相違する。また,原告表示\nのうち「JAL」との文字は,「ジャル」との称呼を有するのに対し,被告標章のうち
「南急」との文字は「ナンキュウ」との称呼を有し,これらの称呼は相違する。さら
に,原告表示と被告標章は,全体として鶴ないし鳥類の観念を生ずる点が共通する。\n以上の共通点及び相違点を総合すると,相違点である白抜きされた部分や文字部分
は,図形全体に占める割合がそれほど大きなものではなく,地の色と同じ色彩である
白色が用いられていること,文字部分は図形全体の下方に一般的なフォントで示され
ているにすぎないことからすれば,原告表示及び被告標章の図形全体及び各構\成部分
の形状や色彩の共通点は,上記相違点よりも需要者に強い印象を与えるものであると
評価することができる。したがって,原告表示と被告標章については,称呼が相違す\nるものではあるが,需要者が外観及び観念に基づく印象として,両者を全体的に類似
のものと受け取るおそれがあると認められる。
ウ これに対し,被告は,全体を観察すれば,原告表示と被告標章は役務の出所に\nつき誤認混同を生ずるおそれはなく,類似するとはいえない旨を主張するが,不競法
2条1項1号の不正競争においては,混同が発生する可能性があるのか否かが重視さ\nれるべきであるのに対し,同項2号の不正競争にあっては,著名な商品等表示とそれ\nを有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し,稀釈化を引き起こすような程度
に類似しているような表示か否か,すなわち,容易に著名な商品等表\示を想起させる
ほど類似しているような表示か否かを検討すべきものであるから,被告指摘の事情は\n類似性の判断に影響を与えるものではなく,失当である。
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2018.08.24
平成29(ワ)14637 商標権侵害行為差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成30年7月26日 東京地方裁判所
ウェブサイトにおけるタイトルタグ、メタタグとしての使用形態について、一部の使用形態は、商品を表示する商品等表\示であるとして、不正競争行為(2条1項1号)に該当すると判断されました。
平成28年11月1日から(タイトルタグ及びメタタグでの使用は15
日から)平成29年3月22日までの間の被告ウェブページのタイトルタ
グ及びメタタグ並びに被告ウェブページにおける被告標章1及び2の使用
)について
証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によれば,被告グレイスランドは,平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに別紙1−1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載したこと,その記載によって「楽天市場」のウェブサイトで「タカギ」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した場合の検索結果の表示画面において,被告商品の写真が表\示されるとともにその横に「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ浄水器カートリッジ 浄水カートリッジ(標準タイ...」といった,被告商品の種類に対応したタイトル(上記タイトルタグ冒頭の【楽天市場】を省略した記載の冒頭部分又は上記メタタグの記載の冒頭部分と同一内容のもの)が表示されたこと,それらのタイトルの下には「グレイスランド」,「楽天市場店」と表\示されたこと,それらのタイトル部分を選択することで当該種類の被告商品を販売する被告ウェブページに移動することができたこと,その検索結果の表示画面においては上記のほかにタイトルタグに記載された説明は表\示されず,メタタグに記載された説明も表示されなかったことの各事実が認められる。\n
また,証拠(甲18)及び弁論の全趣旨によれば,上記の平成28年1
1月15日から平成29年3月22日までのタイトルタグ及びメタタグの
記載により,一般の検索サイト(Google)において「タカギ」,「浄
水器」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した場合の検索
結果の表示画面に「【楽天市場】タカギ 取付互換性のある交換用カート
リッジ 浄水器カートリッジ..」といった被告商品の種類に対応したタイ
トルが表示され,その下に上記タイトルより小さい文字で被告商品の種類\nに対応して「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カー
トリッジ 浄水カートリッジ(高除去タイプ)※当製品はメーカー純正品
ではございません。ご理解の上,お買い求めください。」といった表示が\nされたこと,それらのタイトル部分を選択することで当該種類の被告商品
を販売する被告ウェブページに移動することができたこと,その検索結果
の表示画面のタイトル部分には上記表\示のほかにはタイトルタグに記載さ
れた説明は表示されなかったことの各事実が認められる。\n 以上のとおり,平成28年11月15日から平成29年3月22日まで
の間,タイトルタグ及びメタタグの記載によって,検索結果を表示するウ\nェブサイトにおいて,タイトルとして被告標章1又は2が表示され,その\n後に空白部分があり,さらにその後に商品の品名が表示されたり,説明と\nして被告標章2が表示され,その後に空白部分があり,さらにその後に商\n品の品名や説明が表示されたりした。このような態様での被告標章1及び\n2の使用は,写真や品名で説明される商品の出所を示すものであると認め
ることが相当である。そして,タイトルタグやメタタグにおける記載によ
って,ウェブサイトにおいて上記のような表示がされ,同サイトを閲覧し\nた者もその表示を見ることができることに照らすと,タイトルタグやメタ\nタグにおいて,被告標章1及び2は,商品を表示する商品等表\示として使
用(不競法2条1項1号)されたものと認められる。また,
とおり,被告ウェブページにおいて,被告商品を購入するために商品選択
をする部分にも,別紙2−1のウェブサイトの記載欄のとおり,上記と同
様に,「タカギ」との被告標章2が表示され,その後に空白部分があり,\nさらにその後に商品の品名や説明が表示されており,これらの表\示も商品
の出所を示すものであると解するのが相当である。
これに対し,被告らは,「取付互換性のある交換用カートリッジ」,「当
製品はメーカー純正品ではございません」等といった表示があることや被\n告ウェブページ上における被告商品の外観写真が原告の純正品とは異なる
ものであることなどを挙げて,タイトルタグ,メタタグ,被告ウェブペー
ジにおいて,被告標章1及び2は商品の出所を表示するものとして使用さ\nれていない旨主張する。しかし,上記のとおり,被告標章1及び2の後に
空白部分があり,さらにその後に商品の品名等が記載されているという表\n示の態様,「互換性」という用語は製造販売者が同じ商品間でも用いられ
ること(甲46),検索結果の表示画面において表\示される内容やそこで
の説明の文字の大きさ,当該商品の性質やウェブページでの表示であるこ\nとに鑑み需要者は全ての記載を注意深く観察しない可能性が相当程度ある\nことなどに照らし,被告らの主張は採用することができない。
イ 平成29年3月23日以降の被告ウェブページのタイトルタグ及びメタ
タグ並びに被告ウェブページにおける被告標章1及び2の使用(前提事実
及び 並びに証拠(甲20ないし22)及び弁論の全趣旨によれば,被告グレイスランドは,平成29年3月23日以降,被告ウェブ
ページのタイトルタグ及びメタタグに別紙1−2(同年4月12日まで)
並びに同1−3及び1−4(同月13日から)のタイトルタグ欄及びメタ
タグ欄のとおり記載したこと,その記載によって「楽天市場」のウェブサ
イトで「タカギ」,「カートリッジ」という語をキーワードとして検索した
場合の検索結果の表示画面に被告商品の写真及びその横に「タカギに使用\n出来る取り付け互換性のある交換用カートリッジ(標準タイプ)※
はメーカー純正...」,「【標準タイプ1本パック】タカギの浄水器に使用で
きる,取付け互換性のある交換用カートリッジ。...」といった被告商品
の種類に対応したタイトル(上記タイトルタグ冒頭の【楽天市場】を省略
した記載の冒頭部分又は上記メタタグの記載の冒頭部分と同一内容のもの)
が表示されたこと,それらのタイトルの下には「グレイスランド」,「楽天\n市場店」との表示がされたこと,それらのタイトル部分を選択することで\n当該種類の被告商品を販売する被告ウェブページに移動することができた
こと,その検索結果の表示画面には上記表\示のほかにはタイトルタグに記
載された説明は表示されず,メタタグに記載された説明も表\示されなかっ
たことの各事実が認められる。以上のとおり,平成29年3月23日以降,
タイトルタグ及びメタタグの記載によって,検索結果を示すウェブサイト
に上記のとおりの表示がされ,また,ウェブサイトによっては,検索結果\nの表示画面に別紙1−2,1−3,1−4のメタタグ欄記載の説明が表\示
されることになったと推認されるが,それらにおいては,いずれも「タカ
ギ」というカタカナ3文字の後に「に」又は「の」という助詞が付加され,
当該商品が原告商品に対応するものであるという,商品内容を説明するま
とまりのある文章が表示されている。\nそして,このような表示内容に照らせば,需要者が上記の表\示に接した場合には,それらにおける「タカギ」との表示は,当該商品が対応する商品を示すものであると受け取り,当該商品自体の出所を表\示するものであると受け取ることはないと認められる。
そうすると,平成29年3月23日以降のタイトルタグ及びメタタグにお
いて,被告標章1及び2は不競法2条1項1号にいう商品等表示として使\n用されたものとはいえない。
◆判決本文
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2018.07. 1
平成29(ワ)5423 損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟 平成30年3月26日 東京地方裁判所(29部)
少し前の判決ですが漏れていたのでアップします。中古購入した原告商品の一部を組み込んだ別の商品を製作しました。裁判所は、不競法の著名商品等表示であるとして、約170万円の存在賠償を認めました。判決文の最後に、被告商品が掲載されています。
被告は,被告は被告各商品に原告標章の一部を使用したが,それは飽くまでデザイ
ンとしての使用であり,原告標章と同一又は類似のものを商品等表示として使用した\n商品を販売等していない旨主張するので検討する。
不正競争防止法2条1項2号の趣旨は,著名な商品等表示について,その顧客吸引\n力を利用するただ乗りを防止するとともに,その出所表示機能\及び品質表示機能\が稀
釈化により害されることを防止するところにあると解されるから,同号の不正競争行
為というためには,単に他人の著名な商品等表示と同一又は類似の表\示を商品に付し
ているというだけでは足りず,それが商品の出所を表示し,自他商品を識別する機能\
を果たす態様で用いられていることを要するというべきである。
これを本件についてみるに,前記認定のとおり,原告はバッグ類,袋物及び被服等
で知られる世界的に著名な高級ブランドを擁するフランス法人であるところ,原告標
章は,1896年から現在まで原告商品に使用されて世界的に広く知られる標章であ
り,原告商品にのみ付され,大規模かつ継続的な宣伝広告により,著名性を有するも
のであることからすれば,高い出所識別機能を有する商品等表\示として使用されてい
るものである。そして,その使用態様は,商品に応じて原告モノグラム表示の一部を\n切り取って商品に付されて使用されるという特徴を有しており,必ずしも「LOUI
S VUITTON」との文字商標を必要とはしていない。
被告標章1ないし7は,原告標章を構成する原告記号aないしdと同一の記号によ\nり構成され,その配置も原告標章と同一なものの一部分であり,被告標章8は,被告\n記号eや,被告記号aないしdをカラーにした点が異なるが,それらの記号が原告標
章と同一の配置とされたものの一部分であり,被告各商品に応じて被告各標章の一部
を切り取って商品に付されて使用されている。
このような被告各標章の使用態様からすると,被告各標章は出所識別機能を有する\n態様で用いられているものと認められ,デザインとしての使用であり商品等表示とし\nて使用ではない旨の被告の主張は採用できない。
◆判決本文
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2014.09.17
平成25(ワ)28860 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成26年8月29日 東京地方裁判所
書籍の題号は、不競法2条1項2号の商品等表示は該当しないと判断されました。
書籍の題号は,普通は,出所の識別表示として用いられるものではなく,その書籍の内容を表\示するものとして用いられるものである。そして,需要者も,普通の場合は,書籍の題号を,その書籍の内容を表示するものとして認識するが,出所の識別表\示としては認識しないものと解される。
もっとも,書籍の題号として用いられている表示であっても,使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は営業であることを認識することができるような自他識別力又は出所識別機能\を備えるに至ったと認められるような特段の事情がある場合については,商品等表示性を認めることができ\n
ることもあり得ると解される(大阪高裁平成20年(ネ)第1700号・同年10月8日判決[「時効の管理」事件]参照)。
(2) 原告による「巻くだけダイエット」の使用について
これを本件についてみると,証拠によれば,原告書籍が出版される前から,「巻くだけダイエット」を題号に用いた・・・が出版されており,・・・が紹介されていること(甲17)が認められる。
◆判決本文
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2014.05.24
平成25(ワ)31446 商標権 民事訴訟 平成26年05月21日 東京地方裁判所
エルメスのバックの立体商標について商標権侵害が認定されました。不競法2条1項1,2号も認定されています。
原告商標は立体商標であるところ,上記類否の判断基準は立体商標においても同様にあてはまるものと解すべきであるが,被告標章は一部に平面標章を含むため,主にその立体的形状に自他商品役務識別機能を有するという立体商標の特殊性に鑑み,その外観の類否判断の方法につき検討する。立体商標は,立体的形状又は立体的形状と平面標章との結合により構\成されるものであり,見る方向によって視覚に映る姿が異なるという特殊性を有し,実際に使用される場合において,一時にその全体の形状を視認することができないものであるから,これを考案するに際しては,看者がこれを観察する場合に主として視認するであろう一又は二以上の特定の方向(所定方向)を想定し,所定方向からこれを見たときに看者の視覚に映る姿の特徴によって商品又は役務の出所を識別することができるものとすることが通常であると考えられる。そうであれば,立体商標においては,その全体の形状のみならず,所定方向から見たときの看者の視覚に映る外観(印象)が自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たすことになるから,当該所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似する場合には,原則として,当該立体商標と当該平面商標との間に外観類似の関係があるというべきであり,また,そのような所定方向が二方向以上ある場合には,いずれの所定方向から見たときの看者の視覚に映る姿にも,それぞれ独立に商品又は役務の出所識別機能\が付与されていることになるから,いずれか一方向の所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似していればこのような外観類似の関係があるというべきであるが,およそ所定方向には当たらない方向から立体商標を見た場合に看者の視覚に映る姿は,このような外観類似に係る類否判断の要素とはならないものと解するのが相当である。そして,いずれの方向が所定方向であるかは,当該立体商標の構成態様に基づき,個別的,客観的に判断されるべき事柄であるというべきである。
(2) これを本件について検討するに,原告標章,被告標章はいずれも,内部に物を収納し,ハンドルを持って携帯するハンドバックに係るものであるから,ハンドルを持って携帯した際の下部が底面となり,この台形状の底面の短辺と接続し,ハンドルが取り付けられていない縦長の二等辺三角形の形状を有する面が側面となることはそれぞれ明らかである。そして,その余の面のうち,蓋部,固定具が表示されている大きな台形状の面が正面部に該当し,かつこの正面部には,その対面側に相当する背面部とは異なり,装飾的要素をも備えた蓋部,ベルト,固定具が表\示されており,ハンドルを持って携帯した際に携帯者側に向かって隠れる背面部とは異なって外部に向き,他者の注意を惹くものであるから,この正面部は,少なくとも所定方向の一つに該当するものと解される。これは,被告の開設したインターネットショッピングサイトにおいて,いずれもこの正面部を含む写真が表示されていることのほか,各商品の紹介においては,全てこの正面部のみが表\示されていることも,正面部が所定方向であることを裏付けるものであるということができる。〔甲1〕そして,この正面部から観察した場合,原告標章と被告標章とは,本体正面の形状において底辺がやや長い台形状であり,上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する蓋部が表示されていること,前記蓋部上に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベルトが表\示されていること,前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央にて同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成した固定具が表示されていること,前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定する左右一対の補助固定具が表\示されていること,上部に円弧状をなす一対のハンドルが表示され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように表\示されていること,以上の点においていずれも共通しており,原告標章と被告標章とは,所定方向である正面から見たときに視覚に映る姿が,少なくとも近似しているというべきであり,両者は外観類似の関係にあるということができる。被告標章は,原告標章では立体的構成とされている蓋部,左右一対のベルトとこれを固定する左右一対の補助固定具,先端にリング状を形成した固定具,ハンドルの下部(正面部と重なりベルト付近まで至る部分)について,これらの質感を立体的に表\現した写真を印刷して表面に貼\付した平面上の構成とされているところ,これを正面から見た場合に上記共通点に係る視覚的特徴を看取できるものというべきである。一方,上部及び側面方向から被告標章を観察した場合には,原告標章では立体的に表\現された上記蓋部等が立体的でないことは看て取れるものの,上部及び側面は,いずれも所定方向には該当せず,上記所定方向から観察した場合の外観の類否に影響するものではない。
(3) そして,原告商標ないし被告標章において,何らかの観念ないし称呼が生じ,これらが著しく相違するものとも認められない。
(4) 以上によれば,被告標章は原告商標と類似しているということができ,被告につき,過失の存在の推定を覆すに足る事情も認められない(商標法39条,特許法103条)。
(5) この点に関して被告は,被告各商品につき,そのデザインは写真として似ているかもしれないが,素材や価格などで明確に区別できる等と主張するが,本件全証拠によっても,上記所定方向である正面から観察した場合に,被告標章が原告標章と類似するとの判断を覆すに足る事実は何ら認めることができないし,商品の出所の誤認混同をきたすおそれがないものとも認められない。
◆判決本文
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2013.12.27
平成25(ワ)18129 商号使用差止等請求事件 不正競争 平成25年12月19日 知的財産高等裁判所
商号「有限会社三菱合同丸漁業」の使用差し止めが認められました。
被告商号は,「有限会社三菱合同丸漁業」であるが,このうち「有限会社」の部分は会社の種類を表し,「漁業」の部分は事業分野を表\\す一般名詞で,特定の営業を識別する機能はない。そして,「三菱」の部分は,著名な原告ら営業表\\示と同一であり,「合同丸」の部分は漁業に関連する船舶の名称としてありふれたものであって,「三菱」の部分が営業を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから,被告商号を見る者は,「三菱」の部分だけを独立して感得するものと認められる。このことは,「三菱合同丸」等の被告営業表示についても同様であって,これを見る者は,「三菱」の部分だけを独立して感得するものと認められる。そうすると,原告ら営業表\\示と被告営業表示等との類否を判断するに当たっては,原告ら営業表\\示と被告営業表示等の構\\成中の「三菱」の部分を対比するのが相当である。そして,これらは,称呼及び観念が同一であるから,被告営業表示等は,原告ら営業表\\示に類似する。被告は,被告商号や「三菱合同丸」等の被告営業表示の由来等からしてその要部は「三菱合同丸」の部分であると主張するが,被告商号や被告営業表\\示を見る者は,「三菱」の部分を独立して感得するのであって,このことは被告営業表示等の由来や本件マークとともに用いられてきたことにかかわりがないから,被告の上記主張は,採用することができない。\n
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2012.11.16
平成23(ワ)5742 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月08日 大阪地方裁判所
不競法2条1項1号、2号(周知商品等表示、著名商品等表\示)による差止請求権は存在しないと認定されました。
本件ドイツ特許及び本件米国特許の各公報(乙20,21の各1・2)及び前記1で認定の事実経過によれば,被告製品の形態は,簡便かつ効果的に巻き爪などを矯正するという技術的な機能実現のために得られたものであることが認められ,かかる機能\的な意味合いを有しない特徴的部分は見当たらない。そのため,被告製品の形態は,機能実現のために他に選択の余地がないものとまでいえるかはともかく,需要者との関係で,巻き爪矯正具としての機能\という意味を超えて識別力を持ち得る余地の小さい形態であるといえる。また,被告製品は,店頭販売などされておらず,需要者が直接その形態を見て商品選択することは想定できない上,証拠として提出されている上記多数の宣伝媒体を精査しても,巻き爪矯正施術の過程や被告製品を爪に装着した状態,あるいは,被告製品の一部を写真や図面で表示したものはあるものの,別紙被告製品図のような被告製品全体の形態が分かるように表\\示されているものは見当たらない(「Derma」と題する医学雑誌の2004年5月号[乙32]本文には,被告製品の形態全体が写った写真が掲載されているが,あくまで爪矯正処置法の医学的解説の一環としての掲載であり,商品等表示性の根拠とすることは困難である。)。一方で,前記認定のとおり,被告製品については,もっぱら「VHO」の文字標章が「商品等表\示」として使用されてきた。これらの事情からすれば,被告製品の形態が,被告製品の出所表示として使用されてきたとはいえないし,そのような機能\を果たしている実態があるともいえない。以上を総合して考えれば,被告製品の形態が,巻き爪矯正具の機能の観点から選択されたという意味を超え,「商品等表\示」たり得るだけの識別力を有するに至ったとはいえないものである。
(2)小括
したがって,原告製品の形態は被告製品の形態と同一ではあるものの,そもそも被告製品の形態は,「商品等表示」に該当しないため,不正競争防止法2条1項1号(周知表\示混同惹起行為)に基づく被告の主張は採用できない。
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2012.10. 1
平成23(ワ)12566 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成24年09月20日 大阪地方裁判所
正露丸の包装について、著名商品等表示に該当するのかについて、裁判所は類似していないと判断しました。
正露丸の包装について、著名商品等表示に該当するのかについて、裁判所は類似していないと判断しました。\n 被告表示2のうち「下痢・食あたり・水あたり」,「正露丸」,「SEIROGAN」,「糖衣」,「飲みやすい」,「白い錠剤」,「第2類医薬品」及び「90錠」の各記載は,いずれも単に被告商品の効能,用途,数量について普通に用いられる方法で表\示したにすぎないことが明らかである。また,前記1(2)のとおり,本件医薬品の包装について,直方体で包装箱全体の地色が橙色であることは,同種商品に見られる,ありふれた一般的な構成である。医薬品において,医薬品名に続けてアルファベットで一文字を表\記することがありふれた一般的表記であることは当事者間に争いがないし,金色で大きく記載されたアルファベットの「S」の文字自体によって被告の営業又は被告商品を想起させるとする主張立証もない。被告も主張するとおり,「S」は本件医薬品の普通名称である「SEIROGAN」の頭文字であるほか,スーパー,スペシャルなど,「優れた」をイメージするアルファベットであることからしても,自他商品識別機能を有するとはいいがたい。これらのことからすると,被告表\示2のうち,原告が,原告表示3と類似すると主張する,正面及び右側面には,何ら自他商品識別機能\を有する部分はないというべきであり,被告表示2のうち自他商品識別機能\を有するのは,左側面及び背面に記載された被告商品の販売名,被告の社名であると認められる。
(ウ) 対比
前記1(2)のとおり,原告表示3のうち需要者に対する自他商品識別機能\を有するのは,原告表示2(ただし,正面は2段に分けて表\記されている。)及びラッパのマークの部分であるところ,前記イのとおり,被告表示2にはこれに類する表\示がない。したがって,被告表示2は,原告表\示3の類似の商品表示であるとは認められないというべきである。\n
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2010.12.28
平成21(ワ)6755 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成22年12月16日 大阪地方裁判所
原告の商品陳列デザインが、不競法2条1項1号、2号にいう周知又は著名な原告の営業表示であるかが争われました。裁判所は営業表\示ではないと判断しました。
商品陳列デザインは,売場という営業そのものが行われる場に置かれて来店した需要者である顧客によって必ず認識されるものであるから,本来的な営業表示ではないとしても,顧客によって当該営業主体との関連性において認識記憶され,やがて営業主体を想起させるようになる可能\性があることは一概に否定できないはずである。したがって,商品陳列デザインであるという一事によって営業表示性を取得することがあり得ないと直ちにいうことはできないと考えられる。
ウ ただ,商品購入のため来店する顧客は,売場において,まず目的とする商品を探すために商品群を中心として見ることによって,商品が商品陳列棚に陳列されている状態である商品陳列デザインも見ることになるが,売場に居る以上,それと同時に什器備品類の配置状況や売場に巡らされた通路の設置状況,外部からの採光の有無や照明の明暗及び照明設備の状況,売場そのものを形作る天井,壁面及び床面の材質や色合い,さらには売場の天井の高さや売場の幅や奥行きなど平面的な広がりなど,売場を構成する一般的な要素をすべて見るはずであるから,通常であれば,顧客は,これら見たもの全部を売場を構\成する一体のものとして認識し,これによって売場全体の視覚的イメージを記憶するはずである。そうすると,商品陳列デザインに少し特徴があるとしても,これを見る顧客が,それを売場における一般的な構成要素である商品陳列棚に商品が陳列されている状態であると認識するのであれば,それは売場全体の視覚的イメージの一要素として認識記憶されるにとどまるのが通常と考えられるから,商品陳列デザインだけが,売場の他の視覚的要素から切り離されて営業表\示性を取得するに至るということは考えにくいといわなければならない。したがって,もし商品陳列デザインだけで営業表示性を取得するような場合があるとするなら,それは商品陳列デザインそのものが,本来的な営業表\示である看板やサインマークと同様,それだけでも売場の他の視覚的要素から切り離されて認識記憶されるような極めて特徴的なものであることが少なくとも必要であると考えられる。
・・・
したがって,原告商品陳列デザイン1ないし3が顧客に認識記憶されるとしても,それは,売場全体に及んでいる原告店舗の特徴に調和し,売場全体のイメージを構成する要素の一つとして認識記憶されるものにとどまると見るのが相当であり,顧客が,これらだけを売場の他の構\成要素から切り離して看板ないしサインマークのような本来的な営業表示(原告における「西松屋」の文字看板や,デザインされた兎のマーク)と同様に捉えて認識記憶するとは認め難いから,原告商品陳列デザイン1ないし3が,いずれもそれだけで独立して営業表\示性を取得するという原告の主張は採用できないといわなければならない。またしたがって,この原告商品陳列デザイン1ないし3を,いくら組み合わせてみたとしても,同様のことがいえるから,原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザイン及び原告商品陳列デザイン1ないし3を全て組み合わせた商品陳列デザインについても,営業表示性を取得することはないというべきである。\n
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2010.12. 1
平成22(ネ)10015 輸入販売差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成22年11月29日 知的財産高等裁判所
不競法2条1項1号、2号違反について、1審は請求棄却、2審も原判決維持しました。原告はアディダスジャパン(株)です。
控訴人は,商品に付された状態の原告標章と被告各標章とを離隔的に観察すると,原告標章は,黒色の地の上に等間隔に配した白い複数の平行する直線と,当該直線と約60度の角度で交わる等間隔に配した白い複数の平行する直線とから成るなどといった構成であるのに対し,被告各標章は,褐色又は黒色の地の上に,等間隔に配した白い複数の平行する直線(直線1)と,直線1と約60度の角度で交わる等間隔に配した薄い緑がかった茶色の複数の平行する直線(直線2)とから成るなどといった構\成であるから,基本的な構成,すなわち,等間隔で平行に配した直線と,かかる直線と約60度の角度で交わる等間隔で平行に配した直線とから成るという点において共通し,また,各直線の輪郭がはっきりせず,にじんだ印象を与えるなどの共通点があるので,原告標章と被告各標章とは類似する旨主張する。しかし,原判決14頁9行目以下の(1)アでの認定のとおり,原告標章は,同じ大きさの3つの杉綾(ヘリンボーン)を組み合わせて「Y」字型としたモチーフ(一模様の単位)を連続して配して成り,各杉綾は白色,薄茶色,濃い茶色の色彩のものである。そして,これを付した商品(甲23の1〜7,11,12及び16〜18)を離隔的に観察した場合,確かに,色彩の組合せからして白色の杉綾部分が目立つが,あくまで,白色の杉綾が連続的に多数配されているとの印象を受けるにとどまり,白い複数の平行な直線同士が60度の角度で交わる模様であるとの印象は受けない。また,被告各標章は,原判決14頁26行目以下の(1)イ及び16頁20行目以下の(2)イでの認定のとおり,同じ大きさの3つの葉を配して扇形状としたモチーフを連続して配して成り,それぞれの葉は,白色,黄緑色,茶色の色彩のものである。そして,これを付した商品(甲21の1及び2,23の8〜18,乙30)を離隔的に観察した場合,白色と黄緑色の葉が目立ち,このうち複数の白色の葉は直線的に連続して配されているとの印象を受けるものの,複数の黄緑色の葉については,個々の葉の上端と下端とを結んだ線を仮定した場合,それらの線が少しずつずれており,これらが直線上に配されているとの印象は受けない。さらに,仮に原告標章の白色の杉綾部分が複数連なって直線を構\成しているとの印象を受けるとしても,原告標章では,直線を構成するのが長方形であって,同じ幅の線が続く印象を受けるのに対し,被告各標章では,白色の直線を構\成するのが葉であって,幅の変化(凹凸)が大きいので,控訴人が主張する「直線」から受ける印象も,原告標章と被告各標章とで異なっている。
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2010.03.29
平成21(ワ)9129 商号使用禁止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年01月29日 東京地方裁判所
著名な商品等表示である「三菱」と類似する商号を使用することにより,誤認混同が生ずる(不競法2条1項2号)と判断されました。
原告らがそれぞれ社名の一部や営業表示として使用する「三菱」の標章は,遅くとも被告が設立された昭和43年までには,企業グループである三菱グループ及びこれに属する原告らを始めとする企業を表\すものとして著名となり,その著名性は現在に至るまで継続しているものと認められ,不正競争防止法2条1項2号にいう著名な商品等表示に該当する。他方,被告が使用する被告商号「三菱信販株式会社」のうち,「信販」及び「株式会社」という事業分野を示す一般名詞部分には,商品又は役務の出所識別機能\がないことは明らかであるから,商品等表示の類否の判断の際の要部は「三菱」の部分というべきところ,これは原告らの商品等表\示である上記「三菱」と同一であるから,被告商号は原告らの商品等表示と類似するものと認められる。\n
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2009.11.22
平成21(ワ)657 商標使用差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成21年11月12日 東京地方裁判所
「朝バナナダイエット」を含む題号の本について、商標権侵害、不競法違反は成立しないと判断されました。
ところで,商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには,登録商標と同一又は類似の第三者の標章が,単に形式的に指定商品又はこれに類似する商品等に表示されているだけでは足りず,その商品の出所を表\示し自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されていることを要するものと解すべきである。前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表\示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表\示として不自然な印象を与えるとはいえない表示を用いて記載されているといえる。そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表\示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表示であると理解するものと解される。なお,被告書籍の題号のうち,「朝バナナ」の文字部分は,「ダイエット成功のコツ40」の部分に比べて大きく記載されており,被告書籍の題号中当該部分が強調されているといえる。しかしながら,「朝バナナ」という用語は,朝食時にバナナと水を摂取することを基本とするダイエット方法として知られる「朝バナナダイエット」を略称した用語として一般に知られていること(甲7ないし18,30,32,34ないし40,42),両部分は統一感のあるデザイン,色調で記載されていることに照らせば,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」という部分を,原告の出版活動と関連させて理解するというよりは,むしろ,被告書籍が「朝バナナダイエット」に関する内容の書籍であることを強調する部分であると理解するものと考えられる。(4)以上によれば,被告書籍のカバーや表\紙等における被告標章の表示は,被告標章を,単に書籍の内容を示す題号の一部として表\示したものであるにすぎず,自他商品識別機能ないし出所表\示機能を有する態様で使用されていると認めることはできないから,本件商標権を侵害するものであるとはいえない。・・・自己の商品表\示中に,他人の商品等表示が含まれていたとしても,その表\示の態様からみて,専ら,商品の内容・特徴等を叙述,表現するために用いられたにすぎない場合には,他人の商品等表\示と同一又は類似のものを使用したと評価することはできない。前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表\示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表示として不自然な印象を与えるとはいえない表\示を用いて記載されているといえる。そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表\示であると理解するものと解され,被告標章を含む被告書籍の題号は,専ら,被告書籍の内容を表現するために用いられたものであると認めるのが相当である。」\n
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2008.10. 2
◆平成19(ワ)35028 営業表示使用差止等請求事件 不正競争民事訴訟 平成20年09月30日 東京地方裁判所
営業表示「東急」が、営業表\示「TOKYU」、「tokyu」と類似するかが争われました。
「これに対し原告は,「東急」の営業表示が著名であることを考慮すれば,「とうきゅう」という称呼を通じて営業表\示として観念される語は「東急」だけであるから,「TOKYU」又は「tokyu」の営業表示と「東急」の営業表示とは,称呼を通じて観念的に類似している旨主張する。しかし,?@被告は,昭和51年8月30日に設立後,現在まで32年以上にわたり,「藤久建設株式会社」(読み方・「とうきゅうけんせつかぶしきかいしゃ」)の商号で,宮城県石巻市及びその周辺の地域において建物建築工事,ガーデニング工事等の請負等の取引を行っていること(前記(2)ア(ア))からすれば,石巻市及びその周辺の地域では,「とうきゅう」との称呼から営業主体としての被告を想起する者も相当数存在するものとうかがわれること,?A加えて,大分県大分市内では,東九興産株式会社が,約38年間営業活動を行い,その商号の「東九」の部分を「とうきゅう」と称していること(乙13,弁論の全趣旨),岩手県盛岡市内では,昭和63年に設立された株式会社とうきゅう商事が営業活動を行っていること(乙14,弁論の全趣旨),岡山県倉敷市内では,株式会社東久ストアが営業活動を行い,その商号の「東久」の部分を「とうきゅう」と称していること(弁論の全趣旨)に照らすならば,「とうきゅう」という称呼に基づいて想起し得る営業主体は,全国の各地域ごとの取引の実情に応じて,原告及び東急グループ以外のものも含まれることは明らかであるから,「とうきゅう」という称呼を通じて観念される営業表示が「東急」だけであるとの原告の主張は採用することができない。」
◆平成19(ワ)35028 営業表示使用差止等請求事件 不正競争民事訴訟 平成20年09月30日 東京地方裁判所
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2006.07.28
◆平成16(ワ)18090 不正競争行為差止等請求事件 平成18年07月26日 東京地方裁判所
腕時計(ROLEX)について、各要素の組合せからなる全体の形態は,不正競争防止法2条1項1号及び2号の商品等表示性を有すると判断されました。
「(ア) 前記認定の事実によれば,原告各製品の各要素の組合せからなる全体の形態は,形態自体が極めて特殊で独特であり,その形態だけで商品等表示性を認めることができる場合には当たらないが,同種製品と区別し得る形態的特徴を有しており,これに前記の原告各製品の販売状況及び雑誌等での紹介の実情等を考慮すると,上記の各要素の組合せからなる全体の形態は,原告各製品が原告の製造販売に係るものであることを示す商品等表\示に該当するということができる。
(イ) 原告は,原告各製品の形態のうち,共通形態A及び共通形態Bについても,原告の出所を示す商品等表示に当たる旨主張する。しかし,前記(2)エに認定した事実を考慮すると,共通形態A及び共通形態Bのみでは,いまだ原告の商品等表示に当たると認めることはできない。(ウ) 被告らは,原告各製品の各要素の形状はありふれた形状又は機能上通常選択される形状であり,特別顕著性がなく,各要素の組合せによる全体の形態も特徴がないので,商品等表\示性がない旨主張する。
しかしながら,ある機能を達成するために,いくつかの選択肢があるのが普通である。例えば,針には,時刻を示すという機能\から形態に制約があるといっても,いくつかの選択肢があるし,塗料がたれないようにするためには,ベンツ針以外の形態も選択が可能である。また,原告各製品から各要素を取り出せば,他社製品の中にそれと同一又は類似の形状を見いだすことができること(前記(2)エ(サ))からすると,原告各製品の各要素の形態はありふれた形状であるといわざるを得ないが,原告各製品の各要素の組合せからなる全体の形態と同一又は類似の組合せからなる他社製品はさほど見いだせないこと(前記(2)エ)からすると,数ある形状の中から選択された各要素の組合せからなる原告各製品の全体の形態は,形態的特徴を有するものというべきである。」
◆平成16(ワ)18090 不正競争行為差止等請求事件 平成18年07月26日 東京地方裁判所
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2004.07.20
◆H16. 7.15 大阪地裁 平成15(ワ)11512 不正競争 民事訴訟事件
マクセルの名称を用いて飲食店(風俗営業)をおこなった被告に対して、不競法2条1項2号の不正競争行為にあたるとして、損害賠償が認められました。一寸気になったのが、認定額です。原告は使用料は3%をくだらないと主張しましたが、裁判所は根拠がないとして、1%(一部0.5%)と認定しました。
「被告は、これを被告ドメイン名を使用して開設したインターネット上のウェブサイトで使用したことは認めるが、その他の場面、とりわけ被告が経営する店舗においては使用していないと主張し、原告も、これがインターネット上のウェブサイト以外で使用されたことまでは主張しない。そして、本件の全証拠によっても、被告が、被告営業表示を、被告ドメイン名を使用して開設したインターネット上のウェブサイト以外で使用したことはうかがわれない。このような事情を考慮すれば、被告による被告営業表\示の使用について原告が受けるべき使用料の率は、その使用期間における被告の売上の1パーセントと認めるのが相当である。」
◆H16. 7.15 大阪地裁 平成15(ワ)11512 不正競争 民事訴訟事件
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2004.01.30
◆H16. 1.29 大阪地裁 平成15(ワ)6624 不正競争 民事訴訟事件
被告の商品等表示「日本マクセル」の使用が、不競法2条1項2号の不正競争行為に該当するかが争われました。裁判所は、不正競争行為に該当すると判断しました。
なお、被告は、「不競法2条1項2号の要件に形式上該当してもダイリューション、ポリューション、フリーライドに該当しない場合は不正競争性はない」と主張していましたが、裁判所は、「仮にそのような立場に立つとしても、被告による被告商品等表示の使用は、ダイリューション、フリーライドに該当するから、不正競争に該当するというべきであり、被告の前記主張は採用することができない」と述べました。
◆H16. 1.29 大阪地裁 平成15(ワ)6624 不正競争 民事訴訟事件
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2003.11.19
◆H15.11.11 東京地裁 平成14(ヨ)22155 不正競争 民事仮処分事件
「マクロスゼロ」などの標章を付したアニメDVD,ビデオの販売差し止めの仮処分事件です。争点は、「超時空要塞マクロス」等の表示が商品等表\示(不競法2条1項1,2号)に該当するかです。裁判所は、「商品等表示」に該当しないと判断しました。
「(2) テレビ放映用映画ないし劇場用映画については,映画の題名(タイトル)は,不正競争防止法2条1項1号,2号所定の「商品等表示」に該当しないものと解するのが相当である。けだし,映画の題名は,あくまでも著作物たる映画を特定するものであって,商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体を識別する表\示として認識されるものではないから,特定の映画が人気を博し,その題名が視聴者等の間で広く知られるようになったとしても,当該題名により特定される著作物たる映画の存在が広く認識されるに至ったと評価することはできても,それにより特定の商品や営業主体が周知ないし著名となったと評価することはできないからである。本件において,債権者は,本件テレビアニメの題名「超時空要塞マクロス」及び本件劇場版アニメの題名「超時空要塞/マクロス」が周知ないし著名となり,その結果,本件各表示が債権者の商品等表\示として周知ないし著名となったと主張するが,これらの題名は,著作物であるアニメーション映画自体を特定するものであって,商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体としての映画製作者等を識別する機能を有するものではないから,不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「商品等表\示」に該当しない。」
◆H15.11.11 東京地裁 平成14(ヨ)22155 不正競争 民事仮処分事件
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2003.04.22
◆H15. 2.20 東京地裁 平成13(ワ)2721 不正競争 民事訴訟事件
登録商標「マイクロシルエット」の使用は、周知標章である「マイクロダイエット」との混同が生ずるとして不競法2条1項1号、2号にて、差止、損害賠償を求めていた事件で、その主張が認められました。
被告は登録商標の使用であると抗弁しましたが、裁判所は、「訴外Aは,原告サニーヘルスに従業員として在職中に,原告商品が好調な売れ行きを示し,原告標章が周知の商品等表示となっていることを認識しながら,これと類似する被告登録商標につき商標登録出願をしたものであり,原告標章の周知性にただ乗りする意図の下に上記商標登録出願をしたものと認められる。そして,被告ホルスは,原告標章が周知の商品等表\示となっていることを認識しながら,訴外Aからこれと類似する被告登録商標の商標登録を受ける権利を譲り受けたものであり,また,その際,同被告は,原告標章が周知の商品等表示となった後に被告登録商標が出願されたことを認識していたか,又は知り得べきものでありながら過失によって知らなかったものと認められる。上記のような各事情に照らせば,被告ホルスが商標権者として被告登録商標を使用する行為は権利濫用に該当するものであり,本件訴訟において,不正競争防止法2条1項1号,2号を理由とする原告らの請求に対し,登録商標使用の抗弁を主張することもまた,権利の濫用に当たるものとして許されないというべきである。」として、かかる抗弁を認めませんでした。
同じ様な判断が、
◆H12.10.12 大阪地裁 平成10(ワ)9655 商標権 民事訴訟事件 にありました。こちら4条1項11号違反です。
◆H15. 2.20 東京地裁 平成13(ワ)2721 不正競争 民事訴訟事件
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