2019.12. 9
ウェブサイトおけるタイトルタグ及びメタタグでの使用が不正競争行為であるかが争われた事件です。1審は、「平成28年11月1日から(タイトルタグ及びメタタグでの使用は15日から)平成29年3月22日までの間に被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグ並びに被告ウェブページに被告標章1及び2を記載した行為は,不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当するが,その他の被告標章1〜3の使用は,同号における商品等表\示の使用とはいえず,商標としての使用ともいえない」と判断しました。
これに対して、知財高裁(2部)は、「(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日までの間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成30年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。」と判断しました。\n
ア 平成28年11月1日から平成29年3月22日まで
タイトルタグ及びメタタグにおける被告標章1及び2の使用
前提事実(4)アのとおり,一審被告グレイスランドが,平成28年11月15日
から平成29年3月22日までの間,被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ及
びメタタグに原判決別紙1−1のタイトルタグ欄及びメタタグ欄のとおり記載し
ていたこと,その結果,(1)グーグルや楽天市場でキーワード検索した場合に,検
索結果を表示する画面にタイトルとして被告標章1又は2が表\示され,空白部分
を挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ」として
商品の種類が表示され,(2)楽天市場では,タイトルの横に被告商品の画像が表示\nされ,さらに,(3)グーグルでは,場合によって,タイトルの下に被告標章2を含
む「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ 浄水
カートリッジ(標準タイプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確
認の上,お買い求めください。」などの表示がされていたことが認められる。\n上記のような態様で被告標章1及び2を使用した場合,需要者は,独立して表\n示された被告標章1及び2及びその後に空白を挟んで表示されている語句(「取付\n互換性のある交換用カートリッジ」,「浄水器カートリッジ」,「浄水カートリッジ」)や被告標章1及び2の近くにある被告商品の写真から,被告標章1及び2が被告
商品の出所を示していると認識するといえる。
そして,このような表示は,タイトルタグやメタタグの記載によって実現され\nているものであるから,タイトルタグやメタタグに被告標章1及び2を記載する
ことは,被告標章1及び2を,商品を表示する商品等表\示として使用(不競法2
条1項1号)するものと認められる。
被告ウェブページ1〜4における被告標章2の使用
前提事実(5)アのとおり,平成28年11月1日から平成29年3月22日まで
の間,被告ウェブページ1〜4の下方に,原判決別紙2−1のウェブサイトの記
載欄のとおり,上記 と同様に,「タカギ」との被告標章2が表示され,空白部分\nを挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ(標準タ
イプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確認の上,お買い求めく
ださい。」などの被告商品の種類に応じた被告標章2を含む表示(本件記載1)が\nされており,さらにその横には被告商品の写真が表示されていたものと認められ\nる。 本件記載1中に独立して表示された被告標章2\nは,被告標章2の後に空白を挟んで記載された語句や被告標章2の近くにある写
真が示す被告商品の出所を示すものとして用いられているものと認められ,商品
等表示に該当するものであると認められる。\n一審被告らは,「取付互換性のある交換用カートリッジ」や「当製品
はメーカー純正品ではございません」といった記載があること及び被告ウェブペ
ージ1〜4における被告商品の外観写真が一審原告の純正品とは異なるものであ
ることなどを挙げて,タイトルタグ,メタタグ及び被告ウェブページ1〜4にお
いて,被告標章1及び2は,商品の出所を表示するものとして使用されていない\nと主張する。
しかし,「互換性」という用語は,製造販売者が同じ商品間でも用いられるもの
(甲46)である上,「取付互換性」の語の意味は明確ではなく,需要者が「取付
互換性」という語から直ちに被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使
用されていないと認識するとはいえない。
また,「当製品はメーカー純正品ではございません」という記載については,被
告商品が一審原告の製品とは異なることを端的に述べたものではなく分かりにく
い記載となっている上,需要者がウェブサイトの記載を注意深く読むとは限らず,
当該記載が末尾に記載されていることからすると,それが常に認識されるとはい
えないし,被告商品と一審原告の製品との外観上の差異(乙10)についても,
本件浄水器に使用される交換用カートリッジが普段露出しているものではなく,
需要者が被告商品と一審原告製品との外観上の差異を明確に認識できるとは限ら
ないから,需要者が被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使用されて
いないと認識するとはいえない。
したがって,一審被告らの上記主張は上記 の判断を左右するものとはい
えない。
イ 平成29年3月23日以降
平成29年3月23日以降の被告ウェブページ並びにそのタイトルタグ及びメ
タタグにおける被告標章1及び2の使用は,以下のとおり,そのいずれもが出所
表示機能\,自他商品識別機能を有する態様での使用とはいえず,商品等表\示とし
ての使用に該当しない。
平成29年3月23日から同年4月12日まで
前提事実(4)イのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年3月23日か
ら同年4月12日までの間,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原
判決別紙1−2のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その
結果,楽天市場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギに
使用出来る取り付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトル\nが被告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていた
ことが認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場
合にも,「【楽天市場】タカギに使用できる出来る取り付け互換性のある交換用カ
ートリッジ」という被告標章1を含む記載のあるタイトルが表示されるなどして\nいたと認められる。さらに,前提事実(5)イのとおり,被告ウェブページにおいて
は,上記期間,その下方に「タカギに使用出来る取り付け互換性のある交換用カ
ートリッジ」との記載を含む表示がされていたことが認められる。\n上記各表示は,いずれも「タカギ」というカタカナ3文字の後に「に」という\n助詞が付加され,当該商品が一審原告製の本件浄水器に使用できるカートリッジ
であるという,被告商品の商品内容を説明するまとまりのある文章と理解できる
ものである。そうすると,需要者が上記各表示に接したとしても,「タカギ」との\n表示を,当該商品自体の出所を表\示するものとして認識するとは認められない。
したがって,上記各表示における被告標章1及び2の使用が,商品等表\示とし
ての使用に該当するとは認められない。
平成29年4月13日以降
前提事実(4)ウのとおり,一審被告グレイスランドは,平成29年4月13日以
降,被告ウェブページのタイトルタグ及びメタタグに原判決別紙1−3及び1−
4のタイトルタグ及びメタタグ欄のとおり記載していたこと,その結果,楽天市
場で「タカギ カートリッジ」とキーワード検索すると,「タカギの浄水器に使用
できる,取付け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含むタイトルが被\n告商品の写真と共に検索結果を表示する画面に表\示されるようになっていること
が認められる。また,弁論の全趣旨によると,グーグルで同様に検索した場合に
も,「【楽天市場】タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある交換用カー
トリッジ」という被告標章1を含む記載があるタイトルが表示されるなどしてい\nると認められる。さらに,前提事実(5)ウのとおり,平成29年4月13日以降,
被告ウェブページにおいては,その下方で「タカギの浄水器に使用できる,取付
け互換性のある交換用カートリッジ」との表現を含む表\示がされるようになって
いることが認められる。
と同様に,「タカギの浄水器に使用できる」という文章は,被告商品が一
審原告製の本件浄水器に使用可能であるという商品内容を説明するものであると\n需要者に理解されるものと認められ,被告商品の出所を表示するものとして使用\nされているとは認められないから,上記各表示における被告標章1及び2の使用\nが,商品等表示の使用に該当するとは認められない。\n
一審原告の主張について
一審原告は,(1)誤認を招きやすいインターネット取引において,キーワード検
索をする需要者は,「タカギ カートリッジ」というキーワードに着目して表示を\n理解してしまう上,検索結果を表示する画面で被告標章1及び2を用いた文章が\n一審原告の製品の写真と共に表示されることからすると,需要者は「タカギ」の\n「カートリッジ」であるという先入観をもって各表示を理解すること,(2)片仮名
で表記されているのが,「タカギ」と「カートリッジ」のみであるところ,片仮名\nは目立ち,語句の切れ目を表示する役割も果たすことからすると,平成29年3\n月23日以降の被告標章1及び2の使用も商品等表示としての使用に当たると主\n張する。
しかし,上記 , で検討した各表示(「タカギに使用出来る取り付け互換性の\nある交換用カートリッジ」,「タカギの浄水器に使用できる,取付け互換性のある
交換用カートリッジ」)は,まとまりのある文章として,それが被告商品の説明で
あることが容易に理解できるものであるから,需要者の注意力がそれほど高くな
く,かつ「タカギ カートリッジ」というキーワード検索を経ていて,一審原告
の製品が共に表示されることがあるからといって,需要者が,「タカギ」と「カー\nトリッジ」のみに着目して,一審原告の主張するような先入観をもって上記各表\n示を理解するとは認められない。
また, 必ずしも片仮名が平仮名
や漢字に比して注意を引きつけるとまではいえない。
したがって,一審原告の上記主張は,上記 の判断を左右するものではな
い。
(2) 被告標章3について
ア 前提事実(6)のとおり,平成28年11月1日から平成30年12月2
8日までの間に,被告ウェブページ及び被告ウェブサイト2の冒頭部分には,被
告標章3を含む本件記載2がされていた。
被告標章3である「タカギ社製」は,それが修飾する商品が「タカギ社」の製
造に係るものであること,すなわち,当該商品が一審原告の出所に係ることを示
す語句であるといえる。
そして,被告標章3(タカギ社製)を含む本件記載2は,「タカギ社製 浄水蛇
口の交換用カートリッジを お探しのお客様へ」と3段に分けて記載されている
ものであって,文章の内容だけからしても,「タカギ社製」が,「浄水蛇口」では
なく,「交換用カートリッジ」を修飾していると理解することが可能なものである。\nまた,前提事実(6)のとおり,本件記載2の上方及び下方の2か所に,本件記載
2より明らかに大きなサイズの文字で,より目立つように「交換用カートリッジ」,
「交換用カートリッジ ついに発売!!」などと表示され,かつ,交換用のカー\nトリッジそのものである被告商品の写真画像も併せて表示されているから,それ\nらの表示に接した需要者は,冒頭に独立して記載された「タカギ社製」の文字を,\nカートリッジに結びつけて理解しやすいといえる。
以上に加えて,前記2で検討したとおり,被告標章3(タカギ社製)の要部で
あるタカギの文字部分が家庭用浄水器及びその関連商品の需要者の間で周知なも
のであること並びに需要者の注意力がそれほど高くないことといった事情も併せ
考えると,需要者が,本件記載2の中で独立して最上段に記載されている「タカ
ギ社製」が,本件記載2中の「交換用カートリッジ」を修飾する語句であると理
解することは十分にあり得るものと認められる。\nそうすると,本件記載2中の被告標章3(タカギ社製)は,被告商品について,
商品等表示として使用されているものと認められる。\n
イ 一審被告らは,(1)本件記載2が一連の呼びかけといえる文言であるこ
と,(2)本件記載2の2行目が「浄水蛇口」から始まり,かつ「浄水蛇口」の次に
「の」という助詞が付されていることからすると,需要者は,被告標章3(タカ
ギ社製)は「浄水蛇口」を修飾するものとして理解すると主張する。
しかし,上記(1)について,本件記載2が呼びかけといえる文言であるからとい
って,被告標章3が商品等表示として使用されていないということにはならない\nし,上記(2)についても,一審被告らの主張する事情を考慮しても,上記アのとお
り,需要者が,被告標章3(タカギ社製)が「交換用カートリッジ」を修飾する
語句であると理解することは十分にあり得るということができるから,一審被告\nらの上記主張は採用することができない。
(3) 小括
以上の検討のとおり,(1)平成28年11月15日から平成29年3月22日ま
での間,前提事実(4)アで認定した態様で被告ウェブページ1〜4のタイトルタグ
及びメタタグで被告標章1及び2を使用した行為,(2)平成28年11月1日から
平成29年3月22日までの間,前提事実(5)アで認定した態様で被告ウェブペー
ジ1〜4で被告標章2を使用した行為並びに(3)平成28年11月1日から平成3
0年12月28日までの間,前提事実(6)で認定した態様で被告標章3を使用した
行為は,それぞれ不競法2条1項1号にいう商品等表示の使用に該当する。\n
・・・・
以上の検討のとおり,本件不競法該当行為がされた期間は,平成28年
11月1日から平成30年12月28日であるところ,一審原告はそのうち平成
28年11月1日から平成30年11月30日までの間の損害賠償を請求してい
る。
証拠(乙26の1〜6,乙27,28,乙29の1・2,乙30,乙31の1
〜7,乙32〜35,乙38の1〜22,乙39の1〜22,乙40の1〜20,
乙41の1〜3,乙43の1〜20)及び弁論の全趣旨によると,上記期間に対
応する各月ごとのパソコン等分利益,パソ\コン等分利益及びスマホ等分利益の合
計額は,別紙2〜4のとおりであると認められる。
また,上記期間に対応する(1)パソコン等分利益の合計額が228万6033円,\n
(2)パソコン等分利益及びスマホ等分利益の合計額が954万0740円であるこ\nとについては当事者間に争いがない。そして,上記パソコン等分利益228万6\n03円については不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当たるものと
認められる(なお,推定の覆滅については(2)で後述する。)。
イ 一審原告は,スマホ等分利益725万4707円(954万0740
円―228万6033円=725万4707円)のうち5%についても「侵害行為
による利益」に含まれると主張する。
しかし,前提事実(3)イのとおり,スマホ・タブレット向けサイト内のウェブペ
ージの最下部には,「表示モード:モバイル|PC」として被告ウェブサイトへの
リンクがあり,スマートフォンやタブレットから仮想店舗へとアクセスした者は,
上記リンクを利用することで,被告ウェブサイトを表示させることができ,また,\nスマホ・タブレット向けサイト内のウェブページの最上部にも「PC」という文
字を○で囲んだ記号が表示されており,同表\示も被告ウェブサイトへのリンクと
なっているものの,このようなスマホ・タブレット向けウェブサイトにおける被
告ウェブサイトへのリンクの表示位置や表\示の態様からすると,同リンクは需要
者が相当注意しないと気付かないような目立たないものである上,スマホ・タブ
レット向けサイトの下方にあるリンクについては,他の表示に隠れてタップでき\nない場合がある(甲87,弁論の全趣旨)。そして,スマホ・タブレット向けウェ
ブサイトと本件訴訟の対象となっている被告ウェブサイトとの間に見やすさや情
報量の点で差があることなどにより,スマートフォン及びタブレット経由で仮想
店舗にアクセスした需要者が敢えて被告ウェブサイトを表示させる積極的な要因\nがあるとも認められない。これらのことからすると,スマホ等分利益が,本件不
競法該当行為によって生じたものとは認められず,一審原告の上記主張は採用す
ることができない。
ウ 以上からすると,不競法5条2項にいう「侵害行為による利益」に当
たるのはパソコン等分利益228万6033円のみであると認められる。\n
(2) 不競法5条2項における推定の覆滅については,侵害者が主張立証責任を
負うものであり,侵害者が得た利益と周知な商品等表示の主体が受けた損害との\n相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。
この点について,一審被告らは,(1)被告商品を2回以上購入したリピーターに
よる購入が全体の売上げの約15%を占めているところ,リピーターについては誤
認混同が生じていないこと,(2)被告標章3の表示回数が1回であり,注意書きや\n打ち消し表示が多数されていることからすると,不競法5条2項に基づく推定が\n全て覆滅されると主張する。
ア 上記(1)について,確かに証拠(乙42)によると,被告商品について
リピーターによる購入が一定割合あることは認められるが,リピーターであるか
らといって,そのことから直ちに本件不競法該当行為とは無関係に被告商品を購
入したということはできないから,リピーターによる購入であることを理由とし
て推定の覆滅を認めることはできない。
イ 次に,上記(2)について,前記4(1)ア及び(2)アのとおり,平成28年
11月1日から平成29年3月22日までは,被告ウェブページ1〜4において,
被告標章2が商品等表示として使用され,かつ被告ウェブページ1〜4及び被告\nウェブサイト2の冒頭部分に被告標章3が商品等表示として使用されていた上,\n平成28年11月15日から平成29年3月22日まではタイトルタグ及びメタ
タグにおいて,被告標章1及び2が商品等表示として使用されていたところ,こ\nれに対して,一審被告らが打ち消し表示と主張するものについては,前記5(2)〜
(5)のとおり決して十分なものということはできないから,需要者が本件不競法該\n当行為とは無関係に被告商品を購入したとはいい難く,推定の覆滅は認められな
い。
他方,前記4(1)イのとおり,平成29年3月23日以降,被告ウェブページ並
びにそのタイトルタグ及びメタタグにおいて,被告標章1及び2は,商品等表示\nとしては使用されておらず,前記4(2)アのとおり,被告標章3が被告ウェブペー
ジ1〜6及び被告ウェブサイト2において商品等表示として使用されたのみであ\nるから,本件不競法該当行為とは無関係に被告標章を購入した者も一定数存在し
たものと認められ,一定の推定の覆滅を認めることができる。その割合はこれま
で認定した諸般の事情に照らすと,5割と認めるのが相当である。
(3) 以上からすると,不競法5条2項により一審原告の損害として推定される
べき額は,以下の計算式とおり,119万1757円であると認められ,弁護士
費用としては,本件に表れた一切の事情を勘案して20万円を相当と認める。\nしたがって,一審被告らによる不正競争行為(本件不競法該当行為)によって
一審原告に生じた損害額の合計は,139万1757円(119万1757円+
20万円=139万1757円)であると認められる。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成29(ワ)14637
イッセイミヤケデザインのバッグなどについて、周知商品等表示・著名商品等表\示であると判断されました。なお、あわせて、著作権侵害かも争われましたが、「実用目的で工業的に製作された製品について,その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,・・・上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合がある」と一般基準を述べましたが、本ケースでは著作物性無しと判断されました。
判決文の最後にバックなど形状を示す写真があります。
原告商品は, で述べたとおり,わずかな例外を除いて本件形態
1´を備え,メッシュ生地又は柔らかな織物生地に,相当多数の硬質な三角
形のピースが,2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰めるよ
うに配置されることにより,中に入れる荷物の形状に応じてピースに覆われ
た表面が基本的にピースの形を保った状態で様々な角度に折れ曲がり,立体\n的で変化のある形状を作り出す。一般的な女性用の鞄等の表面は,布製の鞄\nのように中に入れる荷物に応じてなめらかに形を変えるか,あるいは硬い革
製の鞄のように中に入れる荷物に応じてほとんど形が変わらないことから
すれば,原告商品の形態は,従来の女性用の鞄等の形態とは明らかに異なる
特徴を有していたといえる。このことは,新聞や雑誌といったメディアにおいて「画期的なデザインのバッグ」(前記(1)カウ),「シンプルなピースが集
まって 自在に変化するユニークな形」前記(1)カカ),「三角形のパーツをつなぎあわせたフューチャリスティックなデザイン(前記(1)カテ),「特徴
がはっきりしているので販売企業がイッセイミヤケだとすぐ判別でき」る
前記(1)カセ)などと,そのデザインの独特さ,斬新さが取り上げられ,平
成19年秋にはデザイン性と機能性を併せ持ったアイテムだけを厳選して\n掲載するニューヨーク近代美術館のデザインショップ・カタログの表紙に採\n用されたことからも裏付けられ,原告商品の形態は,これに接する需要者に
対し,強い印象を与えるものであったといえる。
したがって,原告商品の本件形態1´は,客観的に他の同種商品とは異な
る顕著な特徴を有していたといえ,特別顕著性が認められる。
・・・
原告商品1ないし6は,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,リュック
サック及びトートバッグであり,いずれも物品を持ち運ぶという実用に供され
る目的で同一の製品が多数製作されたものであると認められる。
著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を
創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するも\nのをいう」(同法2条1項1号)と規定しているところ,その定義や著作権法の
目的(同法1条)等に照らし,実用目的で工業的に製作された製品について,
その製品を実用目的で使用するためのものといえる特徴から離れ,その特徴と
は別に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないもの
は,「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」ということはできず著\n作物として保護されないが,上記特徴とは別に美的鑑賞の対象となる美的特性
を備えている部分を把握できる場合には,美術の著作物として保護される場合
があると解される。
(3) これを原告商品1ないし6についてみるに, のとおり,原告商品1な
いし6は,物品を持ち運ぶという実用に供されることが想定されて多数製作さ
れたものである。
そして,原告らが美的鑑賞の対象となる美的特性を備える部分と主張する原
告商品1ないし6の本件形態1は,鞄の表面に一定程度の硬質な質感を有する\n三角形のピースが2mmないし3mm程度の同一の間隔を空けて敷き詰める
ように配置され,これが中に入れる荷物の形状に応じてピースの境界部分が折
れ曲がることにより様々な角度がつき,荷物に合わせて鞄の外観が立体的に変
形するという特徴を有するものである。ここで,中に入れる荷物に応じて外形
が立体的に変形すること自体は物品を持ち運ぶという鞄としての実用目的に
応じた構成そのものといえるものであるところ,原告商品における荷物の形状\nに応じてピースの境界部分が折れ曲がることによってさまざまな角度が付き,
鞄の外観が変形する程度に照らせば,機能的にはその変化等は物品を持ち運ぶ\nために鞄が変形しているといえる範囲の変化であるといえる。上記の特徴は,
著作物性を判断するに当たっては,実用目的で使用するためのものといえる特
徴の範囲内というべきものであり,原告商品において,実用目的で使用するた
めの特徴から離れ,その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備\nえた部分を把握することはできないとするのが相当である。
したがって,原告商品1ないし6は美術の著作物又はそれと客観的に同一な
ものとみることができず,著作物性は認められないから,その余の点について
判断するまでもなく,原告らの著作権侵害に基づく請求には理由がない。
◆判決本文
知財高裁(2部)は、マリカー事件について、中間判決をしました。論点は色々ありますが、1審の判断がほぼそのままとなっています。
一審被告らは,一審被告会社は,「マリカー」の標準文字からなる本件商標を
有しており,「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから,仮に
被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても,差止請求や損害賠
償請求は認められない旨主張する。
しかし,本件商標の登録出願がされたのは平成27年5月13日であるところ,
前記4(2)で検討したとおり,その頃までには,原告文字表示マリオカート及び「M
ARIO KART」表示は日本国内で著名となっており,かつ原告文字表\示マリカーも,
「マリオカート」を示すものとして,日本国内の本件需要者の間で周知になってい
て,かつ後記8のとおり,一審被告会社の代表者である一審被告Yはそのことを知\nっていたものと認められる。
これに加え,1)一審被告会社が設立当初の商号を敢えて「株式会社マリカー」と
していたこと,2)平成28年11月15日当時に品川第1号店において配布されて
いた本件チラシには,「マリオのコスプレをして乗ればリアルマリオカート状
態!!」と記載されていたこと(甲3,4),3)平成28年8月12日当時に品川
第1号店サイト1には,「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ
倍増」と記載されるとともに,「マリオ」のコスチュームを着用した人物の写真が
同記載に併せて掲載され,また,平成29年2月23日当時に品川第1号店サイト
1に「みんなでコスプレして走れば,リアルマリカーで楽しさ倍増」と記載されて
いたこと(甲6の1,甲35),4)平成29年2月23日当時に,河口湖店サイト
に「スーパーマリオのコスプレをして乗れば,まさにリアルマリオカート状態!!」
と記載されていたこと(甲6の2),5)後記6認定のとおり,一審原告の著名な商
品等表示である原告表\現物に類似する被告標章第2のコスチュームを用いた宣伝行
為や本件各コスチュームを用いた本件貸与行為が行われ,特に,平成27年11月
2日にアップロードされた本件動画1(甲42の1,甲43の1)の0:05秒時
点には「MARIOKART」という英語の音声が収録され,かつ同音声について,「マリ
オカート」の日本語字幕が付けられていたことも考え併せると,一審被告会社は,
周知又は著名な原告文字表示及び「MARIO KART」表示が持つ顧客吸引力を不当に利\n用しようとする意図をもって本件商標に関する権利をゼント社より取得したものと
推認することができる。
したがって,一審被告会社が,一審原告に対し,本件商標に係る権利を有すると
主張することは権利の濫用として許されないというべきであり,一審被告らの上記
主張は理由がない。
なお,一審被告らは,原告文字表示マリカーは本件需要者である訪日外国人の間\nでは周知ではないと主張するが,これまで検討してきたとおり,本件需要者は訪日
外国人に限られないから,一審被告らの主張はその前提を欠いており,採用するこ
とができない。
◆判決本文
1審はこちらです。
◆平成29(ワ)6293