2018.11.27
平成29(ワ)21145 損害賠償請求事件 不正競争 民事訴訟 平成30年8月17日 東京地方裁判所
漏れていたのでアップします。ソフトウェアの表\示画面について、不競法2条1項3号の商品の形態に該当すると判断されました。ただ、同一かという点では否定されています。被告はベネッセです。
不競法2条1項3号の「商品の形態」とは,「需要者が通常の用法に従った
使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状
並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感」をいうところ(同条4
項),原告ソフトウェアは,タブレットとは別個に経済的価値を有し,独立して取引の対象となるものであることから「商品」ということができ,また,これを起動する際にタブレットに表\示される画面や各機能を使用する際に表\示される画面の形状,模様,色彩等は「形態」に該当し得るというべきである。
(2) 実質的同一性の有無について
そこで,以下,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの形態が実質的に同一
であるかどうかについて検討する。
ア 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,フィールド領域に作成
されたカード及び連結したカードが表示される点で一致し(一致点1)),こ
の一致点は原告ソフトウェアの本質的部分に関するものであると主張する。しかし,学校において黒板等に貼\り付けられていたカードをタブレット上で表現し,複数のカードをプレゼンテーションの順序等に応じて連結することは,抽象的な特徴又はアイデアにすぎず,不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するものではない。\n原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアにおけるカード及び連結された
カードの具体的な画面表示を比較すると(別紙(3),乙5の21頁「カード
結合」欄2)),1)原告ソフトウェアには,カード右上に円で囲まれた黄色の矢印が表\示されるのに対し,被告ソフトウェアにはそのような表\示はない,2)連結されたカードは,原告ソフトウェアにおいては,フィールド領域各所に配置されたカードが曲線又は直線の矢印で連結されるのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては,フィールド領域に平行かつ一直線の形で各カードが直
線で連結される(相違点4)),3)原告ソフトウェアは,黄色の細い曲線等によりカードを結び,各カードを結んでいる線はそれぞれ独立し同一の線ではないのに対し,被告ソ\フトウェアは黒色の太い一つの直線でカード間を結んでいる,4)原告ソフトウェアは連結されたカードを2行で表\示することもで
きるのに対し,被告ソフトウェアでは,複数のカードを複数行で表\示するこ
とはできない,5)原告ソフトウェアではプレゼンテーション時に最初に表\示
されるカードの左横に黄色の丸で囲まれた「−」の表示があるのに対し,被告ソ\フトウェアでは黒色の○に白抜きで「start」と表示されている,6)原
告ソフトウェアではプレゼンテーションにおいて最後に表\示されるカード
の右上に黄色の丸で囲まれた矢印が表示されているのに対し,被告ソ\フトウ
ェアでは黒色の丸に白抜きで「−」の表示がされているなどの点で相違し,全体的な印象も類似していないということができる。以上によれば,原告ソ\フトウェア及び被告ソフトウェアでは,カード及び\n連結されたカードの画面表示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。
イ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,フィールド領域にラン
チャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域が表\示される点で一致する(一致点2))と主張する。
しかし,フィールド領域にランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域を設けることは,アイデア,抽象的な特徴又は機能\面の一致にすぎず,不競法2条1項3号の「商品の形態」に該当するものではない。
そして,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアのランチャーメニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の具体的な画面表\示を対比すると(別紙(3),乙5の3頁,4頁),1)ランチャーメニューは,
原告ソフトウェアにおいては,画面右に表\示されるタブをタップすることに
より画面右側に縦一列で表示されるのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては,
画面左上のボタンをタップすることで画面左側に縦一列で表示される(相違点3)),2)カード作成メニューボタンは,原告ソフトウェアでは画面左上部に縦一列で表\示されるのに対し,被告ソフトウェアではフィールド領域をタップすることにより,リング状の表\示がされる(相違点2)),3)カード送受
信領域については,原告ソフトウェアにおいては,メイン画面の左下に「資料箱」,「提出」,「送る」などの個別の提出先のアイコンが設けられているのに対し,被告ソ\フトウェアにおいては,提出先としてメイン画面の中央下に矢印を付した四角いアイコンが設けられているなどの点で相違している。
以上によれば,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアでは,ランチャー
メニュー表示ボタン,カード作成メニューボタン,カード送受信領域の画面表\示が実質的に同一であるということはできず,むしろ相当程度異なると認めるのが相当である。
ウ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,「カメラ」等の機能を使用すると画面全体に被写体が表\示され,撮影に必要な機能がボタンで表\示される点で一致する(一致点3))と主張する。
しかし,カメラ撮影のための機能を使用すれば,画面全体に被写体が表\示
されるのはその性質上当然であり,カメラ撮影のためにはシャッターボタン
など撮影に必要な機能を使用するための表\示が不可欠であるから,一致点3)
は機能を使用するために必要な表\示における一致にすぎない。
エ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,原告ソフトウェアの「テキスト」機能\及び被告ソフトウェアの「文字」機能\において,文字入力画面が表示される点で一致する(一致点4))と主張する。
しかし,一致点4)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアがいずれもカ
ードにテキストを入力する機能を有するという機能\面での一致をいうにす
ぎず,また,原告ソフトウェア及び被告ソ\フトウェアのテキスト作成画面の
表示(別紙(5))もありふれたものにすぎない。
オ 原告は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアは,描画領域及び各種描画
ツールが表示される点で一致する(一致点5))と主張する。
しかし,一致点5)は,原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアがいずれもカ
ードに描画する機能を有するという機能\面での一致をいうにすぎず,また,
原告ソフトウェアと被告ソ\フトウェアの描画作成画面の表示(別紙(6))も
ありふれたものにすぎない。
◆判決本文
◆原告被告の画面はこちらです。
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2018.11. 5
平成28(ワ)9003 意匠権等侵害差止等請求事件 平成30年9月7日 東京地方裁判所
意匠権侵害および不競法の商品形態模倣かが争われました。裁判所(40部)は、前者については無効、後者については商品の形態は実質的に同一ではないと判断しました。
原告は,原告商品の形態と被告商品の形態との間の他の共通点(形態
IV(ア),(オ)及び(コ))も創作的であると主張するが,これらの共通点に係る
形態は,女性用コートとして一般的なものであり,特に特徴的なもので
あるということはできない。
また,原告商品と被告商品は,いずれもビジューの付いた装身具が設
けられ,その装着位置,形状において共通すると認められるが,女性用
コートにおいてビジューの付いた装身具を設けること自体が特徴的であ
るということはできず,また,原告商品のビジューブローチは取り外し
可能であるのに対し,被告商品のビジューボタンがコートに縫い付けら\nれているという相違点も存在するので,この点をもって原告商品と被告
商品が実質的に同一であるということもできない。
以上によれば,原告商品と被告商品との間の上記各共通点をもって両
商品の実質的に同一であるということはできないというべきである。
ウ 原告商品と被告商品の相違点は,上記(3)イ記載のとおりであると認め
られるが,このうち,ポケットは,原告商品においては,コート胴部の
両側に水平状に形成され,略横長長方形状のフラップが取り付けられて
おり,コート前面において需要者の目を引くアクセントとなっていると
いうことができる。
これに対し,被告商品においては縦の切替え線に沿って布部材がコー
ト本体に縫い付けられ,フラップが形成されていないので,ポケットは
それほど目立たず,コート前面は比較的シンプルで縦に流れる線が需要
者の目を惹く態様となっているということができる。
以上によれば,原告商品と被告商品の前面については,ポケットの形
状の差異により,需要者が受ける印象が相当程度異なるというべきであ
る。
エ また,原告商品と被告商品とは,背面における飾りベルトの有無が相
違することは,前記のとおりである。
原告商品における飾りベルトは,腰部に水平方向に設けられ,その幅
も太い上,原告商品の背面には同ベルトに匹敵する目立つ構成部分は存\n在しないことから,当該飾りベルトは,コート背面において特に需要者
の注目を惹くものであるということができる。そして,この点において
は,原告自身も,そのウェブサイトにおいて,「バックスタイルのベル
トがポイント!!」(乙6),「バックウエストには飾りベルトを効か
せて,後ろ姿にもメリハリをプラス」(甲7の2)などと強調しており,
このことは,原告自身も飾りベルトが原告商品のデザイン上の特徴点で
あるとの認識を有していたことを示している。
これに対し,被告商品では,飾りベルトが設けられておらず,切替え
線が設けられているにとどまることから,その背面は比較的シンプルで
目立つ構成部分が存在せず,すっきりした印象を与えるということがで\nきる。
以上によると,原告商品は,その胴部のほぼ同じ高さに飾りベルトと
ポケットが取り付けられていることから,コートの正面視,側面視,背
面視ともに,横方向に流れる強い印象を与える構成が需要者の目を惹く\nのに対し,被告商品は,その前面及び背面ともに需要者の目を惹く態様
の構成が設けられていないため,全体としてシンプルな印象であり,身\n体のラインに沿った縦の線が需要者の目を惹く態様となっているという
ことができる。このため,原告商品と被告商品は,コートの正面視,側
面視,背面視ともに,需要者に異なる印象を与えるというべきである。
オ 原告商品と被告商品のフードとを対比すると,原告商品に取り付けら
れたフードは,背面視においてその横幅が肩口に及ばず,側面視におい
て膨らみの少ないものであるのに対し,被告商品に取り付けられたフー
ドは,背面視においてその横幅がが肩口まで及び,側面視において膨らみ
の多い大きさである点で異なると認められる。このようなフードの大き
IVさや形状の差違は,コート背面における美感に影響を与えるものであり,
飾りベルトの有無やフードとコート本体の色合いの違い(形態(サ))もあ
いまって,需要者に背面におけるデザインが異なるとの印象を与えるも
のであるということができる。
カ 以上のとおり,原告商品と被告商品との形態の相違点は,需要者の注
目を集める形態についての差違であり,その美感に対して異なる印象を
与えるものであるから,両者を実質的に同一の形態ということはできな
い。
(5) 原告の主張について
これに対し,原告は,被告商品のポケットやベルト等の形態は,女性用
コートとしてありふれたものにすぎず,原告商品の形態をこれに置き換え
ることは極めて容易である上,その相違点は,部分的かつ些細なものであ
り,全体の形態に影響を与えないと主張する。
しかし,被告商品のポケットやベルト等の形態が特に特徴的なものでな
く,置換が容易であるとしても,被告商品において飾りベルトやポケット
の形状が需要者の目を惹き,コート全体の美感に影響を及ぼすものである
ことは前記判示のとおりであり,その相違点が部分的かつ些細なものであ
るということはできない。
また,原告は,平成28年から平成29年にかけて雑誌に掲載された女
性用コートの説明文から着目点を抽出したところ,ベルトやポケット等に
注目した記載は非常に少ないとの結果を得たと主張する。
しかし,上記の結果においてもポケットやベルトが着目点として一定程
度挙げられているように,女性用コートのポケットやベルトはコートの胴
部という目につき易いところに配置され,そのデザインも多様であること
から,需要者がコートを選択する際の着目点となることは否定し難い。ま
た,商品の形態が実質的に同一かどうかは,事案ごとに個別的に判断すべ
IVきところ,本件においては,被告商品における飾りベルトやポケットの形
状が需要者の目を惹き,コート全体の美感に影響を及ぼすものであること
は前記判示のとおりである。
◆判決本文
前者の関連事件はこちらです。
◆平成29(行ケ)10234
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2018.10.30
平成28(ワ)6539 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成30年10月18日 大阪地方裁判所
ゴミ箱について、意匠権侵害、著作権侵害、不競法違反、不法行為などを主張しました。裁判所は、意匠権侵害については認め(被告自認)、差止・損害賠償を認めました。ただ、その他に請求は棄却しました。
被告ごみ箱の意匠は本件意匠に類似する(争いがない)から,被告ごみ箱を販売
する行為については,本件意匠権を侵害する行為である。
・・・
被告ごみ箱の形態が原告ごみ箱のそれと実質的に同一であり(争いがない),こ
の形態同一性は依拠の事実も推認させるところ,この推認を覆す事情は認められな
いから,被告ごみ箱は原告ごみ箱の形態を模倣した商品であると認められる。した
がって,被告が平成27年1月31日までに被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ
箱販売1)については,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たる。
他方,被告が同年2月1日以降に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2及
び3)については,原告ごみ箱が最初に販売された日から3年が経過しており,同
号所定の不正競争行為に当たらない(同法19条1項5号イ)。
上記(1)イのとおり,被告が平成27年2月1日から同年6月14日まで
の間に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2)については,不正競争行為
に当たらないし,本件意匠権侵害について過失があったとは認められないところ,
原告は,被告ごみ箱販売2については公正な自由競争秩序を著しく害するものであ
るから,一般不法行為を構成すると主張する。\nしかし,現行法上,創作されたデザインの利用に関しては,著作権法,
意匠法及び不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律がその排他的な使用権等の
及ぶ範囲,限界を明確にしていることに鑑みると,創作されたデザインの利用行為
は,各法律が規律の対象とする創作物の利用による利益とは異なる法的に保護され
た利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではない\nと解するのが相当である。
したがって,原告の主張が,被告が原告ごみ箱の商品形態を模倣した被告ごみ箱
を販売したことが不法行為を構成するという趣旨であれば,不正競争防止法で保護\nされた利益と同様の保護利益が侵害された旨を主張しているにすぎないから,採用
することはできない。
ウ また,これと異なり,原告の主張が,被告が被告ごみ箱を販売すること
によって原告の原告ごみ箱に係る営業が妨害され,その営業上の利益が侵害された
という趣旨であれば,上記の知的財産権関係の各法律が規律の対象とする創作物の
利用による利益とは異なる法的に保護された利益を主張するものであるということ
ができる。しかし,我が国では憲法上営業の自由が保障され,各人が自由競争原理
の下で営業活動を行うことが保障されていることからすると,他人の営業上の行為
によって自己の営業上の利益が害されたことをもって,直ちに不法行為上違法と評
価するのは相当ではなく,他人の行為が,殊更に相手方に損害を与えることのみを
目的としてなされた場合のように,自由競争の範囲を逸脱し,営業の自由を濫用し
たものといえるような特段の事情が認められる場合に限り,違法性を有するとして
不法行為の成立が認められると解するのが相当である。
そして,本件では,原告の主張を前提としても上記特段の事情があるとは認めら
れない。
・・・
被告は,上記(1)アのとおり,平成27年10月8日頃,原告から,被告ごみ箱を
輸入,販売する行為が本件意匠権を侵害するとの指摘を受けたことから,同月22
日付けで,被告に対し,被告ごみ箱を販売する行為は本件意匠権を侵害する可能性\nがあると判断して直ちに販売を中止した旨回答した(甲5)だけでなく,現に販売
を中止し,本件訴訟においても被告ごみ箱を販売する行為が本件意匠権を侵害する
ことになることを争っていない(弁論の全趣旨)。したがって,被告がさらに被告
ごみ箱を輸入するおそれは認められず,また,被告は中国の業者から被告ごみ箱を
輸入して販売しているにすぎない(乙19)から,被告ごみ箱を自ら製造するおそ
れも認められない。
しかし,被告は,被告ごみ箱を平成26年7月に合計3024個輸入し(乙1
6),それを平成27年10月22日の販売中止までに合計774個販売した(乙
10)と認められるから,多数の在庫を保有していると推認されるところ,被告が
それら在庫を廃棄したことをうかがわせる証拠はない。そうすると,被告は,現在
も被告ごみ箱の在庫を保有していると考えざるを得ず,そうである以上,被告が被
告ごみ箱を販売するおそれを否定することはできない。したがって,被告ごみ箱の
差止請求については,その販売及び広告宣伝の差止めを求める限度で理由がある。
・・・
a 被告の過失ある本件意匠権侵害行為の期間は,被告ごみ箱販売1に
係る平成27年6月15日から同年10月21日までと認められるところ,被告ご
み箱の単位数量当たりの仕入原価が205.543円であることは当事者間に争い
がなく,この期間の被告による被告ごみ箱の合計販売数量は前記のとおり666個
と認められる。そして,被告がこの期間に被告ごみ箱を666個販売して得た売上
高が16万0380円であること(乙11)に照らせば,被告ごみ箱の販売の単位
数量当たりの売上高は240.811円(小数点第4位以下四捨五入)である。した
がって,被告が被告ごみ箱を666個販売して得た利益は,2万3488円(1円
未満四捨五入)であると認められる。
(240.811−205.543)×666≒23,488
そうすると,2万3488円が意匠権者である原告の受けた損害の額と推定され
るところ,上記推定を覆滅する事由に関する主張,立証はないから,原告の損害額
は,2万3488円であると認められる。
b これに対し,原告は,被告の平成27年7月及び同年10月におけ
るインテリア計画メガマックス千葉NT店に対する販売については,販売額が仕入
原価を下回っており,独占禁止法第2条第9項に基づく不公正な取引方法第6項に
規定する不当廉売に当たるから,被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算
定するに当たっては,上記販売における売上額に基づくべきではなく,平成26年
8月における販売の売上額に基づくべきである(これに従えば,単位数量当たりの
売上高は540円となる。)と主張する。
しかし,販売額が仕入原価を下回るからといって直ちに独占禁止法が禁止する不
当廉売に当たるわけではない上,意匠法39条2項は,侵害者が実際に得た利益の
額をもって意匠権者の損害の額と推定する規定であるから,侵害者が原価以下で販
売した場合でも,それが実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視し得るといった事情
のない限り,実際の販売額に基づいて侵害者の利益を算定すべきものである(意匠
権者がそれにとどまらない損害額の賠償を求めるためには,同条1項による損害額
を主張立証する道が用意されている。)。そして,上記で原告が指摘するインテリ
ア計画メガマックス千葉NT店に対する販売のうち平成27年7月のものについて
は,被告が原告から通知書(甲4)を受領する前の時期であるから,通常の取引行
為によるものと見るべきであり,その販売単価と同年10月の販売単価は同額であ
る(甲10)から,それらの販売を実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視すること
はできない。
また,原告が被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算定するに当たって
基礎とすべきであるという平成26年10月における被告の販売(被告ごみ箱販売
1における販売)については,上記(1)イのとおり,被告が不法行為(本件意匠権侵
害)に基づく損害賠償責任を負うものではない。
◆判決本文
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2018.09.25
平成28(ワ)35026 損害賠償請求事件 平成30年8月30日 東京地方裁判所
被服について、不競法の商品形態模倣が認められました。判決文の最後に両当事者の商品が掲載されています。
不競法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を不正
競争行為とするところ,同号によって保護される「商品の形態」とは,「需要
者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商
品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質
感」(同条4項)をいい,商品の個々の構成要素を離れた商品全体の形態をい\nう。また,特段の資力や労力をかけることなく作り出すことができるありふ
れた形態は,同号により保護される「商品の形態」に該当しないと解すべき
である。
・・・
ア 原告各商品(14FW)と被告商品の形態を比較すると,別紙対比表の\nとおり,次の共通点があることが認められる(甲3,21,乙9)。
すなわち,基本的形態については,1)正面視において,全体が裾広がり
略Aライン形状であること(構成A),2)側面視において,全体が略Aライ
ン形状であるが,前丈より後ろ丈の方が長いため,ブルゾンの裾が前身頃
から後ろ身頃に向かって下り傾斜していること(構成B),3)背面視におい
て,全体が裾広がりの略Aライン形状であること(構成D)が,それぞれ\n共通している。
また,具体的形態については,1)前身頃において,比翼仕立てになって
いることから,裾部から襟部までにかけて,中央部やや左側に,縦に一本
線が入っており,中央部やや右側に,これに略平行な薄い一本線が入って
いること(構成E),2)フードにおいて,見頃部から取り外し可能なフード\nが襟部に沿って設けられ(構成F),当該フードの前部分略中央に,約11\ncm程度のファスナーが縦方向に付され(構成G),当該ファスナーを覆うよ\nうに縦長の比翼が設けられ,当該比翼の内側には,前記ファスナーの左わ
き上下に設けられた2つのドットボタンに対応する2つのドットボタンが
付されており(構成H),ファスナー引手の開口部には,平面状の黒色の紐\nが通され,フード左右端部から下方へ垂れており,紐の先端には略細長円
筒状の金色の金具が付され(構成I),フードの前側端部分において,三角\n形状が連続するステッチが施されていること(構成J),3)ポケットにおい
て,裾から少し上の部分より胴体部の中間あたりにかけて,縦長形状のポ
ケットのフラップが形成されていること(構成K),4)後身頃において,両
肩の内側部分に肩部から裾部へ向かって縦方向にダーツが施されることに
より,2本の縦線が生じており(構成L),裾は円弧を描き,円弧が最も膨\nらむ後裾の略中央部が略縦長三角形状に切欠かれ(構成M),当該切欠きの\n上に,横長長方形状のステッチが存在すること(構成N),5)袖部において,
端が三角形状のベルトが設けられ(構成O),当該ベルト三角形状部の裏側\nにはドットボタンが付され(構成P),袖部下方中央部の左側及び右側にも\nこれに対応するドットボタンが付されていること(構成Q)が,それぞれ\n共通している。
イ 原告各商品(14FW)と被告商品の形態を比較すると,次の2点にお
いて,一応相違すると認められる。
まず,原告各商品(14FW)のフードには,フード端に弾力のあるワイ
ヤーが縫い込まれているため,側面視において,同フードが身頃部分から
立ち上がって立体的な略正三角形状となるのに対し(構成C),被告商品の\nフードには,前記のワイヤーが使用されておらず,側面視において,同フ
ードが身頃部分に折り重なる形状となる(構成C’,甲1,2,乙9)。\n また,原告各商品(14FW)の素材はポリエステル65%及びナイロ
ン35%であるのに対し,被告商品の素材はポリエステル100%であり,
それぞれの素材や加工方法に応じた質感を有する(甲1,争いのない事実)。
(3)1960年代にアメリカ軍によって開発,使用された防寒服であるM65パ
ーカは,1)前身頃において比翼仕立てになっている点(構成E),2)身頃部か
ら取り外し可能なフードが設けられている点(構\成F),3)縦長形状のポケッ
トのフラップが形成されている点(構成K)において,原告各商品と共通し\nている(乙1)。
また,原告各商品が発売された平成26年より前から,M65パーカ等のア
メリカ軍が使用した防寒服の形態をベースにデザインされた,ミリタリーパ
ーカ,ミリタリージャケット,モッズコート等と呼ばれるファッションのカ
テゴリーが存在して,複数の製品が存在し,原告各商品もこれに含まれる(甲
1,9,15)。
(4) 以上を踏まえ,原告各商品(14FW)と被告商品の形態が実質的に同一と
いえるかどうかについて検討する。
ア 原告各商品(14FW)と被告商品とは,前記(2)アで述べたとおり,そ
の基本的な形態から具体的な細部の形態に至るまで多数の共通点が認めら
れ,その形状はほぼ同一であるといえる。
一方,原告各商品(14FW)と被告商品には,前記(2)イで述べた2つ
の点において一応相違すると認められるが,これらは,フードの立体感や
生地の質感に若干の相違を与えることがあったとしても,その違いは大き
いものではなく,需要者が通常の用法に従った使用に際してその違いを直
ちに認識することができるとまではいえないものであり,原告各商品(1
4FW)と被告商品の全体の印象を異なったものとするものとはいえない。
イ 前記(3)のとおり,原告各商品とM65パーカには複数の共通点があるが,
M65パーカが,兵士が野外における活動の際に身につける防寒着である
のに対し,原告各商品は,女性がファッションとして身につける上着とし
てデザインされたもので,基本的形態が略Aラインで,全体として女性的
かつ都会的な印象を与えるものであって,M65パーカと異なる形態を有
するものといえる。
また,原告各商品が発売された平成26年以前において,ミリタリーパー
カなどと呼ばれるファッションの一形態として複数の製品が販売されてお
り,原告各商品もその範疇に入る商品であると認められる。しかし,原告各
商品は,基本的な形態が略Aラインであること(構成AないしD),身頃部\n分から取り外し可能なフードがあること(構\成F),フードの右左端部から
黒色の紐が下方へ垂れ下がり,紐の先端に細長円筒状の金色の金具が付さ
れていること(構成I),フードの前側端部分に三角形状が連続するステッ\nチが施されていること(構成J),フード部分に本体と独立したファスナー\nが設けられていることにおいて特徴を有しているところ,ミリタリーパー
カなどと呼ばれる製品において,これら原告各商品の特徴的な形態を全て
備え,商品全体の形態において原告各商品と酷似する商品が他に存在した
ことを認めるに足りる証拠はない(甲2,乙13)。そうすると,原告各商
品の形態が,個々の形態の組み合わせとして個性を有しないということは
できず,他の商品に見られるありふれたものということはできない。
ウ 以上によれば,原告各商品の形態はありふれたものではなく,「商品の形
態」(不競法2条1項3号)に該当するところ,原告各商品(14FW)と
被告商品は,基本的な形態から具体的な細部の形態に至るまで多数の共通
点が認められる一方,相違する点は需要者が通常の用法に従った使用に際
してこれらの違いを直ちに認識することができるとまではいえないもので
あって,原告各商品(14FW)と被告商品の形態は実質的に同一であると
認められる。
2 争点(1)イ(被告商品の形態が原告各商品に依拠したものであるか)について
前記1のとおり,原告各商品のうち14FWと被告商品の形態は,実質的に同
一であるところ,同じミリタリーパーカに属するコートであっても,フード,襟
部,袖部といった相当数の個別の部分があり,全体的形態においても各個別的形
態においても,それぞれ相当数の選択肢が存在するのであるから,これらが偶然
に一致することは考えがたい。
また,前記前提事実(2)及び(3)のとおり,14FWが発売されたのは平成26
年8月から平成27年1月頃までであるのに対し,被告商品の発売は,それから
1年以上が経過した平成28年2月26日であり,被告商品の製造者において,
市場において14FWを入手するなどの何らかの方法によって,その形態を把
握することは十分に可能\であったといえる。
したがって,被告商品は,原告各商品のうち14FWの形態に依拠して製作さ
れたものと認めるのが相当である。
◆判決本文
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2018.08.10
平成29(ワ)30499 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成30年7月30日 東京地方裁判所
婦人服について、商品形態模倣を主張しましたが、模倣とは認められませんでした。判決文の最後に原告・被告のブラウスの写真が掲載されています。
上記イのとおり,原告各商品は,裾に向かって若干広がったノースリーブブラウス
にフリル袖を縫い付けたブラウスであるが,ノースリーブブラウスの部分には特徴的
な点はないから,原告各商品のうち,特徴的であり需要者の目を引く部分は,フリル
袖であるといえる。
そこで,袖について検討すると,原告各商品と被告各商品は,いずれもノースリー
ブに縫い付けられフリルを設けたものである点で共通するものの,上記相違点1)のと
おり,フリル袖の広がり及びフリルのボリュームの相違という袖形状の相違は,袖全
体の形状であり着用時も含めて需要者の印象を大きく左右するものであるから,その
相違の程度が些細なものであるとはいえず,形態の全体的な印象に影響を及ぼすもの
といえる。また,原告各商品と被告各商品には,黒いリボンの有無という相違がある。
原告各商品の黒いリボンは,正面から見たときに見える部分に付されており,袖の長
さからはみ出す長さであるから,ブラウスの装飾として存在感があり,フェミニンさ
を強調するものである。さらに,地色が淡い原告商品3(オフホワイト色)及び原告
商品4(白地に黒のギンガムチェック)においては,黒いリボンの存在は更に印象的
である。したがって,リボンの有無は,全体的な印象を左右するものであるといえる。
以上によれば,需要者の着目するフリル袖の部分に上記相違(相違点1))があるか
ら,商品全体の形態として対比した場合に,原告各商品と被告各商品が全体として酷
似しているということはできない。よって,被告各商品の形態は,原告各商品の形態
と実質的に同一であると認めることはできず,これに反する原告の主張はいずれも採
用できない。
◆判決本文
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2018.06.15
平成30(ネ)10009 損害賠償等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟 平成30年6月7日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
不競法の商品形態模倣、著作権侵害などが争われました。知財高裁は、不競法については特徴部分は異なる形状であり、また、著作物性なしとして、1審の判断を維持しました。
控訴人は,原告商品は,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端か
ら突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐ
に伸びている上,小型かつ軽量である点に特徴があるところ,被告各製品
もこの点において共通する形態及び構成を有していると主張する。\n この点につき検討するに,半田フィーダは,径の小さい半田(直径が1
ミリメートルに満たないものもある)を,半田付けしようとする位置に案
内するために用いられるものであるから,正確に位置決めをしたり,他の
機器との干渉を防いだりするために,供給する半田の出口に当たる出口ノ
ズルを細長い直針状の形態とすることは,半田フィーダとしての機能を確\n保するために不可欠な形態というべきである。このことは,他社の半田フ
ィーダが同様の形態を採用していることからも明らかである(乙11,1
2)。
また,出口ノズルに向けて半田を供給する際には,チューブ等の供給・
支持部材と半田とが接触して,半田が曲がったり,摩擦による抵抗が生じ
たりすることをできるだけ抑制し,安定して半田を供給する必要があると
考えられるところ,そのために,半田フィーダにおいて,半田の供給口に
当たる部材を出口ノズルの反対側の位置に出口ノズルに対してまっすぐに
取り付ける構成を採用することは,ごく自然な着想といえる。このことは,\n同様の構成を有する他社の半田フィーダが存在することによっても裏付け\nられているというべきである(乙12,15〜17)。
さらに,配線チューブがフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びてい
る点についても,ある機器に何らかのチューブが取り付けられている場合
に,取り回し等の観点から複数のチューブをまとめて同方向に取り出すこ
とは,他社の半田フィーダにおいても同様の構成が採用されていることが\n認められるように(乙15〜17),極めて容易に着想し得る一般的な構\n成というべきである。
なお,商品の重量そのものは,不競法2条4項が定める「商品の形態」
に当たるとはいえない。
以上によれば,控訴人が原告商品の特徴的形状であると主張する形態は,
いずれも半田フィーダという商品が通常有する形態にすぎないというべき
である。
・・・
著作権法上の美術の著作物として保護される
ためには,仮にそれが産業用の利用を目的とするものであったとしても,
美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞
の対象となり得るような創作的特性を備えていなければならないというべ
きである。
控訴人が主張するように,原告商品は,ステッピングモータの一部分が
飛び出している点を除き,出口ノズルから配線チューブ等に至るまで,各
構成が概ね直線状にコンパクトにまとめられた形態を有していることが認\nめられる。しかし,原告商品の外観からは,社会通念上,この機器を動作
させるために必要な部材を機能的観点に基づいて組み合わせたもの,すな\nわち技術的思想が表現されたものであるということ以上に,端整とか鋭敏,\n優雅といったような何かしらの審美的要素を見て取ることは困難であると
いわざるを得ず,原告商品が美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性
を備えているということはできない。
◆判決本文
原審はこちら。
◆平成27(ワ)33412
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2018.03.27
平成29(ワ)21107 不正競争行為差止等請求事件 平成30年3月19日 東京地方裁判所
不競法2条1項3号の商品形態模倣には該当しないと判断されました。なお、争点の1つとして、旧製品を変更した新製品について、販売開始時期は新製品の販売時期かが争われました。裁判所は新製品の販売時期と判断しました。新旧でどの程度違うのかについては、判決文の後ろに写真があります。
原告商品と旧原告商品のV型プレートは,中央下部の幅,4個の穴の位置,そ
れぞれの穴の距離,中央下部の窪みの位置・角度,両翼下部の角度,両翼の長さ,両
翼の穴の位置が共通するが,両翼の上部が削られてその形状及び幅が両翼にかけて細
長く変更されている。上記変更により,原告商品のV型プレートの美観から受ける印
象は旧原告商品のV型プレートとは相当に異なるものといえる。そうすると,上記変
更は,V型プレートの形態としてはその美観において実質的に変更されたと評価し得
る変更であって,しかも,V型プレートはサックス用ストラップの美観における特徴
的部分であり需要者が着目する部分であるといえるから,V型プレートの変更後の形
態は,美観の点において保護されるべき形態であると認められる。もっとも,V型プ
レートを有するサックス用ストラップは,旧原告商品はもとより他にも同種商品が存
在し(乙1,2),細長形状の形態も公開されているところであるから(乙4),ここ
で保護されるのは,V型プレートの中央部の形状や両翼の角度・形状等を総合した特
有の形状に限られるというべきである。
・・・
以上のとおり,原告商品のV型プレートの変更部分は,商品の形態において実
質的に変更されたものであり,その特有の形状が美観の点において保護されるべき形
態であると認められるから,原告商品が「日本国内において最初に販売された日」は,
旧原告商品が最初に販売された日ではなく,原告商品が最初に販売された日である平
成28年3月頃であると認められる。
◆判決本文
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