不競法2条1項3号の商品形態模倣について、原告は自ら開発・商品化して市場に置いた者ではないとして請求が棄却されました。
不競法2条1項3号が,他人の商品形態を模倣した商品の販売行為等を不正
競争とする趣旨は,先行者の商品形態を模倣した後行者は,先行者が商品開発に要
した時間,費用及び労力等を節約できる上,商品開発に伴うリスクを回避ないし軽
減することができる一方で,先行者の市場先行のメリットが著しく損なわれること
により,後行者と先行者との間に競業上著しい不公平が生じると共に,個性的な商
品開発や市場開拓への意欲が阻害されることになるため,このような行為を競争上
不正な行為として位置付け,先行者の開発利益を模倣者から保護することにあると
解される。
そうすると,同号所定の不正競争につき差止ないし損害賠償を請求することがで
きる者は,模倣されたとされる形態に係る商品を先行的に自ら開発・商品化して市
場に置いた者に限られるというべきである。
また,原告商品及び被告商品のような女性向け衣類は,欧米での新作商品や流行
等の影響を受けると共に,中国及び韓国の製造業者ないし仲介業者と日本の販売業
者等との間で多くの取引が行われていると認められる(甲18,19,弁論の全趣
旨)。これらの事情に鑑みると,上記「市場」は,本件の場合,日本国内に限定さ
れず,少なくとも欧米,中国及び韓国の市場を含むものと解される。
(2) 検討
ア 本件カタログ商品は,原告商品と同様の特徴(原告商品特徴)を有する(当
事者間に争いのない事実)。
また,本件カタログ(乙12)は,表裏の各表\紙のほか21頁からなる商品カタ
ログとして製本されたものであるところ,その表紙右下部に「2015年春季新\n品」との記載があるとともに,本件カタログ商品がその14頁に掲載されている。
さらに,本件カタログ1頁には,その作成者である「广州琼林服饰」(本件中国メ
ーカー)が例年韓国,日本,欧米等に輸出していることも記載されている。これら
の記載によれば,本件カタログは,本件中国メーカーが,遅くとも平成27年春頃
までに,韓国,日本,欧米等を市場とする2015年(平成27年)春季向けの新
製品として,本件カタログ商品を含む本件カタログ掲載商品を紹介する趣旨で作成
され,頒布されたものであることがうかがわれる。
そうすると,原告商品と同様に原告商品特徴の全てを備えるものである本件カタ
ログ商品は,平成27年春頃,本件中国メーカーにより市場に置かれたものといえ
るから,原告は,模倣されたとされる形態に係る商品を先行的に自ら開発・商品化
して市場に置いた者ということはできない。
◆判決本文