2013.10. 8
不競法2条1項14号(営業誹謗行為)による損害賠償請求について、一審は棄却しましたが、控訴審は認めました。
控訴人は,平成24年11月5日付け控訴人準備書面(1)各別表及び控訴人執行役員経営企画室長σの報告書(甲222)を提出し,兼松については月額46万9233円,日本エイサーについては月額49万8737円,第一エージェンシーについては月額49万7316円,ファーストプロモーションについては月額266万7775円,KDDIについては月額94万8659円と主張する。確かに,σの報告書(甲222)には売上原価欄は各社ごとのスタッフ賃金等の内訳が記載されていないが,少なくともその合計額は記載されているし,同業他社と比較して高すぎるともいえず(甲242の2),平成20年10月当時の議事録で記載された相当高い利益率(乙132)に基づく数値を下回っている。また,粗利率が予\算と食い違っていても(乙132,137),結果的に予算を上回る利益を上げたのであれば,それは売上げが当初の予\定よりも大きかったないし経費を削減できたということを意味するだけで,σの報告書自体が直ちに不自然ということにはならないともいえる。しかしながら,売上原価が黒塗りされており,控訴人の平均粗利率の計算根拠が必ずしも明確でない部分が多々あるといわざるを得ない。また,控訴人が15〜17%程度の利益率を前提に予算を組んでいたという事情(乙137)自体は,取引先ごとに多少のばらつきがあるとしても,控訴人が利益を確保できる最低限のものと評価できる合理的な内容であったと推認するのが相当である。加えて,控訴人が原価から差し引いているのはスタッフ賃金,交通費,社会保険料,諸経費等のみであるところ,諸経費の内訳は不明であり,少なくとも営業経費が差し引かれている記載とはうかがわれないし,さらに通信費等の営業経費は差し引いた上で損害を算定するのが相当であるから,利益率は控訴人の主張を更に下回ると認めるのが相当である。このようにしてみると,取引先各社について平均利益率を15%とみるのが相当であり,かつ,各社の売上げについては,甲222における各月の売上げの平均や推移等を参考にすると,兼松については月額の売上げが180万円程度,日本エイサーは200万円程度,第一エージェンシーは180万円程度,NTTアドは1000万円程度,KDDIは350万円程度と認めるのが相当であり,各社の月額の利益は,兼松27万円,日本エイサー30万円,第一エージェンシー27万円,NTTアド150万円,KDDI52万5000円となる。\n
(3) 損害の算定兼松については,月額の利益27万円に,契約継続期間がそれぞれ4か月,7か月,10か月半,20か月と異なるから,月額の利益の4分の1ずつを乗ずることとし,日本エイサーについては,月額の利益30万円に契約継続期間7か月を乗じ,第一エージェンシーについては,月額の利益27万円に契約継続期間36か月を乗じ,NTTアドについては,月額の利益150万円に契約継続期間36か月を乗じ,KDDIについては,月額の利益52万5000円に契約継続期間21か月を乗ずると,合計額は7964万6250円となる。うち,原審での請求に当たる1年分の合計は3244万1250円である。控訴人は,平成21年8月11日,被控訴会社に対し,本件不正競争に基づく損害賠償請求権を自働債権とし,本件業務委託料の支払債務を受働債権として対当額で相殺するとの意思表示をしたが,被控訴会社の控訴人に対する債権額の元本額が1946万8170円であることに当事者間で争いがない。本件損害賠償請求権の弁済期が平成21年8月26日,本件業務委託料債権の弁済期が同年7月31日であり,相殺適状時期は遅い方の同年8月26日となる。まず,同日をもって,充当の順序として不利益を被る控訴人が指定したように双方の債権元本を対当額で充当すると,元本対当額は消滅し,それ以降の対応遅延損害金の発生はない。それまでの遅延損害金については,1946万8170円に対し,相殺適状の時点で,控訴人の本件業務委託料債務の遅延損害金として発生していた平成21年8月1日から同月26日までの商事法定利率年6分の8万3206円(1946万8170円×0.06×26/365≒8万3206円〔一円未満四捨五入〕)が発生しているが,これも相殺により消滅したことになる。したがって,第1事件の請求が認められるのは,本件業務委託料1946万8170円及び8万3206円を控除した額であり,全体の合計額は6009万4874円となり,原審での請求分は1288万9874円となる。\n
◆判決本文
2013.09. 5
1審では、特許権侵害として取引先に告知した行為について、先使用権が認められました。その結果、虚偽の事実の流布として、不正競争行為として差止および損害賠償が認められました。2審では損害額が減額されました。
控訴人らの前記信用毀損行為により被控訴人らが被った無形損害は,控訴人らの
信用毀損行為の態様,回数,内容に加えて,本件口紅は本件特許訂正発明の技術的
範囲に属するものの,被控訴人らに先使用権が発生する結果,本件特許権の侵害と
ならないことなど本件における諸般の事情を総合考慮し,被控訴人ら各自につき1
00万円と認めるのが相当である。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成23(ワ)7407
2013.04. 9
元社員による不競法の営業誹謗行為が認定されました。
前記前提事実によれば,1)平成15年5月に,原告の販売する植物ミネラル水(ロット番号2185B)について,福岡市城南区保健所に健康被害(下痢)の苦情が寄せられたことを端緒として,新宿区保健所が,調査を開始し,ロット番号2185Bの植物ミネラル水と同日にロックランド社から輸入されたロット番号2185Cの植物ミネラル水について成分規格及び細菌検査を実施した結果,「カドミウム」が検出されたことから,同年6月20日,ロット番号2185Cの商品について旧食品衛生法7条2項違反の認定をし,原告に対し,その旨を伝え,上記商品の回収指示をしたこと,2)原告は,上記回収指示を受けて,原告の会員に対し,ロット番号2185Cの商品について開封及び未開封の商品の本数を原告に連絡するよう求め,さらには,同年7月16日付け「商品回収のお願い」と題する書面(甲17の2)を送付し,同書面において,保健所から未開封商品の回収指示があったこと,会員の手持ちの未開封商品については代替商品と交換し,既に開封してある商品については新たな「飲み方のラベル」の記載に従って愛飲するようお願いする旨を述べていること,3)原告が新宿区保健所長に提出した答申書(甲17の1)によれば,新たな「飲み方のラベル」には,原液を「10倍程度希釈」して飲む旨の注意書きが記載されていること,4)原告が,同年10月ころ,原告の会員から,原告の販売するロット番号3109Aの植物ミネラル水の商品について,開封した後あまり時間が経過しないうちに,黒い浮遊物や濁りが出てくるという問合せを受け,製造元に確認し,それは酵母のようなものである旨の回答をし,また,原告による原因調査の結果,かびが検出されたこともあったので,その旨を原告の会員に伝えたこともあったが,この黒い浮遊物や濁りの問題について,原告が保健所から行政指導や行政処分を受けたことはなかったことが認められる。上記1)ないし4)によれば,甲5文書及び甲6文書に記載された,原告が黒かびをはじめバクテリアが原因と思われる汚染商品が出回ったことを理由に販売停止処分を受けたが,販売停止処分の対象となった汚染商品のロット商品番号を顧客に告知せず,隠蔽したという事実は,真実に反するものであり,「虚偽の事実」(不正競争防止法2条1項14号)に該当することが認められる。
◆判決本文
2013.02. 7
特許権侵害として取引先に告知した行為について、先使用権が認められました。その結果、虚偽の事実の流布として、不正競争行為として差止および損害賠償が認められました。
以上のとおり,原告らは,本件特許発明につき,「特許出願に係る発明を知らないでその発明をした者から知得して,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者」に当たるから,少なくとも本件容器の実施形式の範囲で先使用権を有するものである。したがって,原告らが本件口紅を販売等することは,被告P1の有する本件特許権の侵害にはあたらないというべきである。
・・・・
前記判断の基礎となる事実(第1の1(5))記載のとおり,被告P1は,原告らの取引先に書面を送付して,原告らによる本件口紅の販売等が被告P1の本件特許権を侵害する旨の事実を,それぞれ告げたものであり,被告atooは,これに沿う記事及び原告らと被告らの紛争の経過をそのウェブサイトに掲載したものである。しかし,前記のとおり,原告らによる本件口紅の販売等は,被告P1の本件特許権を侵害するものとは認められないのであるから,被告らの上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布」するものとして,不正競争防止法2条1項14号の定める不正競争行為(信用毀損行為)に該当するといえる。そして,上記書面の送付は被告P1の名によるもの,ウェブサイトへの掲載は被告atooによるものであるが,内容的に一体のものとして行われていること,前記第1の1(3)のとおり,原告らは「ロレアル」のブランドの下に一体で事業を行っていることを考慮すると,上記信用毀損行為は,被告らが共同して,原告ら各々に対し行ったものと認めるのが相当である。
◆判決本文