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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業誹謗

平成27(ネ)10109  損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 平成28年2月9日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 不競法の信用毀損行為について、過失なしと判断されました。
 特許法2条3項1号は,物の発明について,その物の生産,譲渡,輸入又は譲渡 等の申出をする行為を,実施行為と定義している。\n本件においては,一審原告がE&E社等を経由してエバーライト社から本件製品 を輸入,販売したことを認めるに足りる証拠はない。また,上記認定事実によれば, 一審被告も,本件プレスリリース当時,一審原告による本件製品の輸入,販売を立 証し得る直接的な証拠を有していたわけではない。 しかし,譲渡等の申出については,製品のカタログやパンフレット等を示して販\n売の申出をする行為がその典型的な例であると解されており,製品のカタログ等に\nついては,商社や代理店等がこれを作成する場合があるとしても,製造メーカーが これを作成し,販売会社がそのカタログを利用して譲渡の申出をする場合等が多い\nと推認される。 そして,現代の社会においては,カタログだけではなく,インターネットのウェ ブサイトに製品を掲載してこれを宣伝広告し,販売することも多いことからすれば, 仮に一審原告のような商社が,自社のウェブサイトに,取扱製品と同製品の販売に 必要な情報を直接掲載し,その販売をする趣旨の記載をしていれば,同製品につい て,譲渡等の申出をしていることになると解されるところである。また,そうでな\nくとも,一審原告のような商社が,自社のホームページにおいて,特定の複数の製 造メーカーを紹介した上で,その製品を販売する旨を記載し,その趣旨で当該製造 メーカーのウェブサイトにリンクを貼り,同サイトにおいて各製品の種類と仕様等\nの販売に必要なデータが説明されている場合にも,製造メーカーのウェブサイトを 利用する形での同製品について譲渡の申出をしているものと解される。すなわち,\n商社がそのウェブサイトにおいて製造メーカーのウェブサイトにリンクを貼るだけ\nで,同メーカーのウェブサイトに掲載されている製品のすべてについて常に譲渡の 申出をしていると解することはできないけれども,その商社と製造メーカーとが取\n引関係にあることが記載され,当該商社に問い合わせれば当該製造メーカーの製品 を購入することができる趣旨の記載があり,かつ,製造メーカーのウェブサイトに は,製品の種類や仕様等の販売に必要な情報が開示されているなどの状況があれば, 製造メーカーのウェブサイトにリンクを貼り,これを利用している場合でも,製造\nメーカー作成のカタログを利用する場合と同様に,製造メーカーのウェブサイト掲 載の製品について,譲渡の申出をしていると解される。\nこれを本件についてみるに,一審原告のウェブサイトは,商社である一審原告が, 「半導体 規格品からユーザー仕様まで,ニーズに合わせた半導体やデバイス製品 を豊富な製品ラインアップから提供いたします。」との記載とともに,エバーライト 社を含めた複数の取扱メーカーの名称を列記し,これによりこれらの製造メーカー と一審原告とが取引関係にあることを示した上で,各メーカー紹介のページの中で で,エバーライト社の事業内容がLEDパッケージ等であること等を個別に紹介し, その上でエバーライト社のウェブサイトにリンクを貼り,そのウェブサイトにおい\nて同社が製造販売する各製品とその製品の詳しい仕様をみることができるようにな っているというものである。LEDパッケージは,製品の部品として購入されるも のであるから,これを購入するのは,製造メーカーやその代理店等の取引業者であ ると推認されるところ,一審原告のウェブサイトを見た取引業者は,一審原告が商 社としてエバーライト社の製品(その主力は,前記認定のとおり白色LED製品で あり,本件製品はその一部である。)を取り扱っており,一審原告に問い合わせれば, エバーライト社から白色LED製品等を購入することができると理解するものであ り,また,製品の詳細については,リンクが貼られているエバーライト社のウェブ\nサイトから,その詳しい仕様も見ることができるものである。そして,一審原告の ウェブサイトにおいては,エバーライト社の製品について,一部取扱ができない製 品がある等の記載はない。 上記の状況によれば,一審被告は,一審原告のウェブサイト及びこれとリンクさ れているエバーライト社のウェブサイトを見て,一審原告がエバーライト社のウェ ブサイトに掲載されている白色LED製品等を取り扱っており,取引業者からその 商品を購入したいとの申込みがあり,価格等の条件が合致すれば,これを販売する\nと理解したものであり,一審原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されてい る本件製品を含む白色LED製品について譲渡の申出をしていると理解したとして\nも,無理からぬところである。 そして,一審被告は,その後本件製品と本件製品に使用されているLEDチップ の構造,構\成材料等を分析し,本件特許発明の当時の請求項1の技術的範囲に属す ることなどを確認した上で,先行訴訟を提起し,本件プレスリリースを掲載したの であり,一審被告が本件プレスリリースを掲載したとしても,一審被告には過失が あったものとは認められない。 なお,本件特許発明の請求項1については,その後訂正がなされているものの, 一審原告は,本件訴訟において,仮に一審原告が本件製品の譲渡等をしていたとし ても,本件製品は本件特許権を侵害するものではないから,一審被告による本件プ レスリリースの掲載は,不正競争行為に当たる,等の主張はしていないのであるか ら,本件の不正競争行為の過失の判断において,本件製品が本件特許発明の訂正後 の請求項1の技術的範囲に属するか否かに関し,これ以上詳しく判断する必要はな い。
ウ 一審原告の主張について
一審原告は,単に商社がメーカーのカタログを店舗に備え置いているだけで,譲 渡の申出が認められるとは限らない(カタログの内容や備え置きの態様や利用態様\nにより個別に判断されるべき問題である。),第三者(エバーライト社)の行為や顧 客の行為(クリック行為)を,一審原告の行為と評価することができる法的・事実 的根拠など存在しない,と主張する。 確かに,商社がメーカーのカタログを店舗に備え置いただけで,常に譲渡の申出\nがあると認められるわけではなく,カタログの内容やその備え置きの態様及び利用 態様により,個別に決められるべきであるというのは,一審原告主張のとおりであ る。しかし,一審原告のウェブサイトの記載からは,一審原告がエバーライト社と 取引関係にあり,エバーライト社のウェブサイトに詳細に記載されているLED製 品を販売すると理解することができるのであるから,一審被告が,一審原告のウェ ブサイト及びこれとリンクされているエバーライト社のウェブサイトを見て,一審 原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されている白色LED製品等を取り扱 っており,取引業者からその商品を購入したいとの申込みがあれば,これを販売す\nると理解し,一審原告が,エバーライト社のウェブサイトに掲載されている本件製 品を含む白色LED製品について譲渡の申出をしていると判断したとしても,無理\nからぬところであるのは前記認定のとおりである。 また,一審原告は,一審被告が一審原告による本件製品の輸入,販売及び譲渡の 申出があったと主張することは,事実上先行訴訟の蒸し返しである,先行訴訟と本\n件訴訟とは訴訟物が異なるものの,訴訟経済の観点から,一審被告の上記主張は信 義則に反する,と主張する。 しかし,先行訴訟と本件訴訟とは訴訟物が異なるものであり,のみならず,先行 訴訟の被告であった一審原告が本件訴訟を提起しているものであって,先行訴訟の 原告であった一審被告は,本件訴訟において被告としてその防御活動をしているに すぎず,積極的に先行訴訟の蒸し返しを行っているわけではない。また,本件訴訟 では,一審被告の本件プレスリリースが不正競争行為に当たるか否かのみならず, その行為に過失があるのか,あるいは正当行為として違法性阻却事由があるのかな ども争点になるのであり,一審被告のこれらの主張が信義則に反するということも できない。
エ 結論
以上によれば,一審被告の本件プレスリリースの掲載については,一審被告が, 一審原告のウェブサイトから,一審原告が本件製品について譲渡等の申出をしてい\nると判断したことは無理からぬところである。そして,一審被告は,その後本件製 品と本件製品に使用されているLEDチップの構造,構\成材料等を分析し,本件特 許発明の当時の請求項1の技術的範囲に属することなどを確認した上で,先行訴訟 を提起し,本件プレスリリースを掲載したのであり,一審被告が本件プレスリリー スを掲載したとしても,一審被告には不正競争防止法4条の過失があったものとは 認められない。 よって,一審原告による同法4条に基づく損害賠償請求は理由がない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成26(ワ)3119

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