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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業誹謗

平成28(ワ)15812 不正競争 民事訴訟 平成30年8月17日 東京地方裁判所(40部)

 amazonで並行輸入品を販売していた並行輸入業者に対して、日本の総代理店はamazonに出品停止させました。このことが、営業誹謗行為として損害賠償請求をしました。裁判所は一部の記載について信用毀損行為であると判断しました。
 前記認定のとおり,アマゾン社は,平成27年12月4日に購入者 より本件商品1に関する真贋に関する連絡があったことを理由として, 原告商品の出品を停止し(甲20〜22),同月6日,複数の購入者か ら本件商品1及び3に関する真贋に関する連絡があったことなどを理 由として,原告の出品アカウントを停止した(甲5)。 他方,アマゾン社は,同様にジョレン本社から出品停止の要求を受け たセレブスタイルについては出品停止措置を採ったものの,出品アカ ウントの停止は行わず,カリフォルニアマートについては何らの措置 も採らなかったことは前記認定のとおりである。
原告商品の購入者のアマゾン社に対する連絡内容及び同社の調査内 容は明らかではないものの,前記のとおり,平成27年8月27日付 けのジョレン本社からアマゾン社への連絡文書(乙1の1)には本件 商品1(真正品)の外箱,容器等の写真が添付されており,アマゾン社 は真正品の外箱や容器等の外観を把握した上で原告商品に対する審査 を行ったと考えられることや,同種の製品を販売する上記三社のうち 原告に対して最も厳しい措置が採られていることを考慮すると,アマ ゾン社は,購入者からの連絡内容等を慎重に審査した上で原告商品が 真正品ではないとの判断に至ったものと考えられる。
 これに対し,原告は,アマゾン社は,被告又はジョレン本社からの通 知内容に依拠してアカウント停止に及んだと主張するが,アマゾン社 が自社の運営・管理する本件サイトの利用者に対して出品アカウント 停止という厳しい措置を講じるに当たって,被告又はジョレン本社の 通知内容にそのまま依拠したとは考え難く,その基準に照らして慎重 に審査を行ったと推認するのが相当である。  そうすると,アマゾン社が原告に対し原告のアカウント利用停止措 置を講じたとの事実も,原告商品が真正品ではないことを示す事情で あるということができる。
e 以上を総合すると,原告商品はジョレン本社が製造,販売する本件 商品の真正品ではないものと推認するのが相当であり,これを覆すに 足りる証拠はない。 したがって,原告商品がジョレン本社の販売している真正品ではな い旨の本件記載1の記載が虚偽であるということはできない。
・・・・
被告は,原告が厚生労働省から必要な許認可を得ることなく原告商品 の販売を行っている旨の記載が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事 実の摘示であると主張するところ,調査嘱託の結果によれば,カリフォ ルニア州法に基づいて設立された法人である原告が,日本国内の消費者 に対し,米国内で仕入れた医薬部外品である本件商品を直接送付するこ とにより販売する行為は,医薬品医療機器法2条13項所定の「製造販 売」に該当しないため,同法12条1項所定の医薬部外品製造販売業許 可を得る必要はないものと認められる。そうすると,上記記載は,虚偽 の事実を摘示したものであり,これに接した一般人は,原告が関連法令 に違反している業者であるとの印象を受けると考えられるので,原告の 営業上の信用を害するものであるということができる。 これに対し,被告は,調査嘱託先と原告が事前に折衝を行い,事実と 異なる情報が提供されたことから,これを前提とする回答内容の信用性 を低いと主張するが,上記調査嘱託の回答者は嘱託書に記載された事実 に基づき,所管法令の解釈に関する見解を示したものであり,原告との 事前の折衝が当該回答に影響を及ぼしたとの被告主張は理由がない。
ウ 競争関係の有無について
原告商品と被告の販売する商品は,原告商品が真正品であるかどうかに かかわらず,いずれも日本国内の消費者を対象とし,その内容はクリーム ブリーチであることから,競争関係にあることは明らかである。
エ 小括
以上によれば,上記イ1)〜4)の各事実のうち,原告が厚生労働省から必 要な許認可を得ることなく原告商品の販売を行っている旨の事実(上記4)) の摘示は不競法2条1項15号にいう「他人の営業上の信用を害する虚偽 の事実の流布」に該当するが,その余の事実の摘示は同号の不正競争行為 には該当しないというべきである。

◆判決本文

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平成29(ネ)10089  虚偽事実の告知・流布差止等本訴請求,特許権侵害差止等反訴請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年2月22日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 プロバイダー宛ての特許侵害であるとの通知書の送付が、営業誹謗行為かが争われました。知財高裁(3部)は公然実施の無効理由があるとして、営業誹謗行為であると判断しました。
 控訴人は,縷々理由を述べて,控訴人による本件ニフティ宛文書の送付は, 社会通念上必要と認められる範囲のものであり,正当な権利行使の一環とし て違法性が阻却されるべき行為であるとか,これについて控訴人に過失はな いなどと主張する。 しかしながら,控訴人が本件ニフティ宛文書の送付に当たり無効理由の有 無について何ら調査検討を行っていないことは,控訴人自身が認めていると ころ,本件特許権1等の出願の経緯や,NTTコムのプロジェクト(本件サ ービスの開発に係る本件プロジェクト)に控訴人自身が参画していた経緯に 照らせば,本件発明1については,本件サービスや甲11発明等の関係で拡 大先願(特許法29条の2)や公然実施(特許法29条1項2号)などの無 効理由が主張され得ることは容易に予測できることであって,たまたま被控\n訴人との間の事前交渉において,かかる無効主張がなされなかったとしても, そのことだけで直ちにかかる無効理由についての調査検討を全く行わなくて もよいということにはならないというべきである。 また,証拠(甲12の1,15の1,16の1,18等)及び弁論の全趣 旨によれば,控訴人は,本件ニフティ宛文書の送付に先立つ平成22年11 月頃から平成23年5月頃にかけて,数か月にわたり,被控訴人との間で, 弁護士・弁理士等の専門家を交えて,被控訴人製品の使用等が本件特許1等 に抵触するものであるか否かについて交渉を行っており,その後,抵触を否 定する被控訴人との間で交渉が暗礁に乗り上げていたにもかかわらず,被控 訴人に対して再度交渉を求めたり,あるいは,訴訟提起を行ったりすること なく,平成26年3月頃から,被控訴人の顧客等に対して控訴人とのライセ ンスを持ちかける文書を送付するようになり,被控訴人から同文書の送付を 直ちに中止するよう求められても,これを中止するどころか,ニフティに対 し,明示的な侵害警告文書である本件ニフティ宛文書を送付するに至ったも のと認められる。 上記のような事情に照らせば,本件ニフティ宛文書の送付は,特許権侵害 の有無について十分な法的検討を行った上でしたものとは認められず,その\n経過も,要するに,被控訴人との交渉では埒が明かないことから,その取引 先に対し警告文書を送ることによって,事態の打開を図ろうとした(すなわ ち,侵害の成否について公権的な判断を経ることなく,いわば既成事実化す ることによって,競争上優位に立とうとした)ものであるといえる(なお, 控訴人は,本件書状3を送った時点では,ニフティが被控訴人の取引先であ るとは知らなかったとも主張するが,事実経過に照らして直ちに信用するこ とはできないし,少なくとも,本件書状4及び本件メールを送った時点では, 既にこれを明確に認識していた〔甲16〕のであるから,かかる事由をもっ て,違法性がないとか,過失がないということもできない。)。 このような控訴人の行為が,社会通念上必要と認められる範囲のものであ り,正当な権利行使の一環として違法性が阻却されるべき行為であるといえ ないことは明らかであり,また,これについて控訴人に過失が認められるこ とも明らかである。 したがって,本件ニフティ宛文書の送付は違法であり,かつ,控訴人には 少なくとも過失が認められるというべきであるから,これに反する控訴人の 主張は採用できない。

◆判決本文

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 >> 104条の3
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