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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

営業誹謗

令和3(ワ)22564等  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 知的財産裁判例 令和6年3月22日  東京地方裁判所

原告は、マザーズへの上場を控えていましたが、被告は、原告の主幹事会社に対して、「被告特許を侵害するとして、原告を提訴しました。上場は慎重にすべき」という旨の通知書を送付しました。実際に提訴自体はしましたが、印紙を貼らずの提訴で、その後、提訴は取り下げています。\n
原告はかかる行為は、不正競争行為(不競法2条1項21号)に該当すると提訴しました。被告も反訴しています。 裁判所は、特許は無効だが、不正競争行為には該当しないと判断しました。
なお、サブコンピネーション発明の「〜のための」という文言も発明を限定するのかが問題となっています。

ウ 甲32発明の各構成が本件発明の構\成要件JないしNの構成にそれぞれ\n相当するかを検討する前提として、構成要件Jの「請求項4記載の携帯電\n話との間で送受信するための」との記載の性質について検討する。 被告らは、構成要件Jの「請求項4記載の携帯電話との間で送受信す\nるための」との記載は、本件発明の受信装置の構造及び機能\を特定して いるから、請求項1ないし4の解釈を踏まえて請求項5に係る本件発明 の構成を認定すべきであると主張するものと解される。\n
そこで検討すると、本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の各記 載によれば、本件発明は、受信装置が、携帯電話との間で送受信するた めのRFIDインターフェースを介して同携帯電話に対して個別情報の 発信要求をし、これに対し、同携帯電話が、要求された個別情報を送信 し、受信装置が、同携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報 であるか否かを判断し、受信した判断情報が前記要求した個別情報であ ると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行うという、二つ 以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明に対し、それに組み合わ される受信装置の発明すなわちサブコンビネーション発明であって、本 件発明に係る特許請求の範囲の請求項5には、受信装置とは別の他の装 置すなわち他のサブコンビネーションである携帯電話に関する事項が記 載されているものと理解できる。
そして、サブコンビネーション発明においては、特許請求の範囲の請求 項中に記載された他の装置に関する事項が、形状、構造、構\成要素、組成、 作用、機能、性質、特性、行為又は動作、用途等の観点から当該請求項に\n係る発明の特定にどのような意味を有するかを把握し、発明の技術的範囲 を画する必要があるところ、他の装置に関する事項が、当該他の装置のみ を特定する事項であって、当該請求項に係る発明の構造、機能\等を何ら特 定していない場合には、他の装置に関する事項は当該請求項に係る発明を 特定するために意味を有しないことになるから,これを除外して当該請求 項に係る発明の要旨を認定することが相当であるといえる。
本件特許の特許請求の範囲において、構成要件Jの「RFIDインター\nフェースを有し、」との記載は、受信装置が「RFIDインターフェース を有し」ていることを、構成要件Kの記載は、受信装置が「個別情報の発\n信要求を前記携帯電話に発信する発信手段」を有していることを、構成要\n件Lの記載は、受信装置が「前記携帯電話から受信した個別情報が要求し た個別情報であるか否かを判断する判断手段」を有していることを、構成\n要件Mの記載は、受信装置が「前記判断手段で受信した判断情報が、前記 要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理 を行う」ことを、それぞれ特定していると認められるのに対し、構成要件\nJの「請求項4記載の携帯電話との間で送受信するための」との記載は 上記の構造、機能\等を有する受信装置と送受信をする携帯電話の構造、機\n能等を請求項4記載の構\成に限定するものにすぎず、受信装置の構造、機\n能等自体を何ら特定していないから、「請求項4記載の携帯電話」との記\n載は、受信装置に係る発明を特定するために意味を有するものであると認 めることはできない。
以上によれば、上記の「請求項4記載の携帯電話との間で送受信するた めの」を除外して請求項5に係る本件発明の要旨を認定することが相当で あるというべきであって、被告らの上記主張を採用することはできない。
・・・
(2) 小括
以上によれば、本件発明は、甲32発明と同一の構成を有しているから、\n新規性を欠いており、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの と認められ、被告モビリティは原告に対してその権利を行使することができ ない(特許法104条の3第1項、123条1項2号、29条1項3号)。
3 争点1−3(被告らによる虚偽告知の内容)について
前提事実(5)オのとおり、本件通知行為は、原告が被告モビリティの特許権 を侵害しているとの原告の営業上の信用を害する事実を告知するものであると ころ、前記2のとおり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの であり、原告が被告モビリティの特許権を侵害しているとの事実を通知した本 件通知行為は、不正競争防止法2条1項21号の「虚偽の事実を告知」するも のといえる。
他方で、前提事実(5)オのとおり、本件通知行為により、被告モビリティは、 岡三証券に対し、被告モビリティが別件訴訟を提起した旨も通知したものであ るが、実際に、本件通知行為の前日である令和3年6月23日、東京地方裁判 所に対し、別件訴訟を提起している以上(前提事実(5)エ)、別件訴訟について の通知内容は、同条の「虚偽の事実を告知」したものとはいえない。 なお、被告らは、原告の前訴訟代理人であった弁護士Ci作成に係る令和3 年7月26日付け意見書について、文書提出命令を申し立てているところ(東\n京地方裁判所令和4年(モ)第264号)、本訴のいずれの争点との関係でも 取調べの必要性が認められるとはいえないから、上記申立てを却下する。\n4 争点2(被告らと原告との間の競争関係の有無)について 事業者間の公正な競争を確保するという不正競争防止法の目的(不正競争防 止法1条)に照らすと、同法2条1項21号の「競争関係」は、現実の市場に おける競合が存在しなくとも、市場における競合が生じるおそれがあれば認め られると解するのが相当である。
そして、前提事実(2)及び(3)並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、決済 に利用される通信端末及びインターネットを利用した決済システムを開発して 販売していること、被告モビリティは、決済システムに利用され得る本件発明 に係る特許権を有し、同特許権について実施権を許諾してライセンス収入を得 ることを業としていることが認められ、被告モビリティ自身が決済端末の開発、 販売をしておらず、現実の市場における競合が存在しないとしても、市場にお ける競合が生じるおそれはあるといえる。
3 争点1−3(被告らによる虚偽告知の内容)について
前提事実(5)オのとおり、本件通知行為は、原告が被告モビリティの特許権 を侵害しているとの原告の営業上の信用を害する事実を告知するものであると ころ、前記2のとおり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの であり、原告が被告モビリティの特許権を侵害しているとの事実を通知した本 件通知行為は、不正競争防止法2条1項21号の「虚偽の事実を告知」するも のといえる。
他方で、前提事実(5)オのとおり、本件通知行為により、被告モビリティは、 岡三証券に対し、被告モビリティが別件訴訟を提起した旨も通知したものであ るが、実際に、本件通知行為の前日である令和3年6月23日、東京地方裁判 所に対し、別件訴訟を提起している以上(前提事実(5)エ)、別件訴訟について の通知内容は、同条の「虚偽の事実を告知」したものとはいえない。
(2) 不正競争行為に係る過失について
本件全証拠によっても、被告らにおいて本件通知行為時までに本件特許が 無効となることを具体的に認識し得たことを基礎付ける事情は認められない。 他方で、前提事実(5)のとおり、被告モビリティは、原告がマザーズ市場に 上場する約2週間前に、岡三証券に対して本件通知行為をしたものであると ころ、同時点においては、原告から本件特許が無効である旨の主張は一切さ れておらず、原告が初めて具体的な引用例を示した上で本件特許の新規性又 は進歩性欠如の主張をするに至ったのは、本件訴訟係属中に前訴訟代理人弁 護士らを解任して現在の訴訟代理人弁護士に本件を委任した後であった。以 上の事情に加え、一般に、特許権は特許庁においていったん特許要件ありと して特許査定を受けた権利であることを考慮すると、本件通知行為時点にお いて、被告らに本件特許の無効理由を調査する義務まで負わせることが相当 であるとはいい難い。したがって、被告らに不正競争行為につき過失があるとの原告の主張は理由がない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 技術的範囲
 >> 104条の3
 >> 営業誹謗
 >> 不正競争(その他)
 >> ピックアップ対象

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令和4(ワ)13396    不正競争  民事訴訟 令和6年1月17日  東京地方裁判所

発注した業務に関してインターネット上で行った投稿が、営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するもので、不競法2条1項21号所定の不正競争に該当するかが争われました。
裁判所は、これを認めて50万円の損害賠償および投稿削除を命じました。

(イ) 前記(ア)の各事実を前提として、本件投稿部分1が摘示する「何度やり とりしても、原告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との 事実が客観的真実に反するものであるか否かについて検討する。 a 前記(ア)aのとおり、本件アナライザー案件において、被告が仕様の 確定を行うべきとされていたことについては、当事者間に争いがない。 また、本件全証拠によっても、原告が、被告の作成した仕様を評価す る立場にあったと認めることはできない。
そして、前記(ア)cの原告と被告担当者とのやりとりの内容に照らせ ば、原告は、被告担当者からの質問に対し、一貫して、原告が「課題 管理表」の項番13において指摘した事項の趣旨を説明しつつ、本件アナライザー案件において原告が受注していない業務である仕様の評\n価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を明確に 回答していると認めるのが相当である。
b また、原告が、被告担当者に対し、「なんで答える必要あるの?」と の文言どおりの回答をしていないことも当事者間に争いがない。 この点に関し、被告は、当該回答は、「今回当方へのご依頼は管理画 面の開発で、くじら IT サービス様でご用意される資料の評価は含まれ ていないという認識です。」との原告の回答を簡潔にまとめた表現であると主張する。\n
そこで検討すると、不競法2条1項21号所定の告知又は流布の内 容は、その相手方の普通の注意と読み方・聞き方を基準として判断す べきと解されるところ、本件サイトは、ソフトウェアやITシステムの開発業務を営んでいる者や、このような開発業務を依頼しようとす\nる者が専ら閲覧していると考えられる。そして、これらの者の普通の 注意と読み方を基準とすると、「なんで答える必要あるの?」との表現は、理由を一切説明することなく、回答を拒否したとの意味に理解で\nきるものである。これに対し、被告が指摘する原告の上記回答は、原 告が受注した業務の内容について説明した上、被告が用意する資料の 評価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を回答 するものといえる。 したがって、「なんで答える必要あるの?」との表現は、原告の上記回答を要約したものとはいえず、被告の上記主張を採用することはで\nきない。
(ウ) 以上によれば、本件投稿部分1が摘示する「何度やりとりしても、原 告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との事実は、客観的 真実に反するもの、すなわち虚偽のものと認められる。
・・・
(1) 無形損害について
前記1(2)のとおり、ソフトウェアやITシステムの開発において、受注者が、発注者との質疑応答に適切に対応できる資質や能\力を備えているか否かは、受注の可否にも直結する重要な事柄であると考えられるところ、本件投 稿部分1が摘示する事実は、これを閲覧した者に対し、原告がそのような資 質や能力を欠くとの印象を与えるといえるから、本件投稿は、原告の営業上の信用を大きく毀損するものと認められる。\nそして、前記1(1)イのとおり、原告の納品した成果物が、被告と合意した 仕様に合致するものであることについての立証がされているとはいえず、本 件投稿部分2及び3について不正競争及び不法行為が成立するとは認められ ないものの、被告は、成果物が仕様に合致していないことを意味する他の表現を採用することは極めて容易であると考えられるのに、「ゴミを納品され、\n捨てました。」と、原告による作業や成果物が有する価値のすべてを否定する かのような表現を敢えて用い、同業者が多数閲覧する可能\性のあるインター ネット上のマッチングサイトの評価画面に本件投稿をしたものであるところ、 不正競争に該当する本件投稿部分1と上記の表現とが一連一体のものとして本件投稿を構\成している以上、無形損害の額を算定するに当たり、この事情も考慮することができるというべきである。 以上の事情によれば、本件投稿によって原告に生じた無形損害の額につい ては、50万円と認めるのが相当である。

◆判決本文

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 >> 営業誹謗
 >> 不正競争(その他)
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