退職後の競合禁止条項について、裁判所は、一部公序良俗違反で無効と判断しました。
「原告技術に関して,3点決め作業(ただし,眉山の位置決めの仕方を除く。),描く作業及び仕上げ作業に関する技術については,その個々の作業で見る限り,被告らの退職時点(平成18年3月31日から同年5月15日までの間。ただし,被告H については同年12月15日。)において眉に関する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる技術であったといえる。これに対し,3点決め作業のうち眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業に関する技術については,同時点において容易に取得ないし習得できる技術であったとはいえない。したがって,甲5誓約書のうち,被告らに対し原告ピアス退職後3点決め作業(眉山の位置決めの仕方を除く。),描く作業及び仕上げ作業に関する原告技術の不使用を誓約させる部分は,その個々の作業に関する技術の使用を禁止する趣旨であれば,原告ピアスの正当な利益の保護を目的とするものとはいえず,被告らの職業選択の自由を不当に制約するものというべきであるから,公序良俗に違反するものというべきである。これに対し,甲5誓約書のうち,被告らに対し原告ピアス退職後に眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業に関する原告技術を使用しない旨誓約させる部分は,上記作業を含む全体としての原告技術の使用を禁止するものであるから,使用者である原告ピアスの正当な利益の保護を目的とするものであるといえる。そして,被告らに対し眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業を含む全体としての原告技術の不使用を誓約させたとしても,下記の事情を考慮すれば,被告らの職業選択の自由を不当に制約するものではないというべきであるから,甲5誓約書のうち,被告らに対し原告ピアス退職後に眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業を含む全体としての原告技術を使用しない旨誓約させる部分は,公序良俗に違反するものということはできない。」
◆平成18(ワ)7097等 損害賠償等請求事件 不正競争民事訴訟 平成21年04月14日 大阪地方裁判所
2009.03. 9
「マジコン」が、不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」に該当するか否か、不正競争防止法2条1項10号の技術的制限手段を無効化する機能「のみ」を有するのか等が争われ、裁判所は、”該当する”と判断しました。
「以上の不正競争防止法2条1項10号の立法趣旨と,無効化機器の1つであるMODチップを規制の対象としたという立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,コンテンツ提供事業者が,コンテンツの保護のために,コンテンツの無断複製や無断視聴等を防止するために視聴等機器が特定の反応を示す信号等をコンテンツとともに記録媒体に記録等することにより,コンテンツの無断複製や無断視聴等を制限する電磁的方法を意味するものと考えられ,検知→制限方式のものだけでなく,検知→可能方式のものも含むと解される。・・・・前記(3)イ(ア)及び(イ)のとおり,合同会議報告書や国会における審議においては,MODチップが存在し,そのプログラムの実行を制限する動作が原告仕組みによる制限の動作と同じ検知→可能方式のものであることが記載されており,前記(3)ア(イ)及びイ(ウ)のとおり,改正解説にも,国会における審議等ほどには明確ではないが,事業者が用いている技術的制限手段又は方式の例として,「○無許諾記録物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」や「MODチップ」が記載されている。しかも,平成11年改正法の立法過程で,自主制作ソフト等の実行を可能\とすることに意義を認めるなどして,検知→可能方式のものを規制の対象からはずし,検知→制限方式のもののみを規制の対象としたことをうかがわせる証拠は見いだせない。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。・・・・前記1(1)〜(3)及び上記(1)アの立法趣旨及び立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条1項10号の「のみ」は,必要最小限の規制という観点から,規制の対象となる機器等を,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し,別の目的で製造され提供されている装置等が偶然「妨げる機能\」を有している場合を除外していると解釈することができ,これを具体的機器等で説明すると,MODチップは「のみ」要件を満たし,パソコンのような汎用機器等及び無反応機器は「のみ」要件を満たさないと解釈することができる。」
◆平成20(ワ)20886等 不正競争行為差止請求事件 不正競争民事訴訟 平成21年02月27日 東京地方裁判所
仮処分における秘密保持の申立却下について、最高裁は、これを取り消しました。
「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において,提出を予定している準備書面や証拠の内容に営業秘密が含まれる場合には,当該営業秘密を保有する当事者が,相手方当事者によりこれを訴訟の追行の目的以外の目的で使用され,又は第三者に開示されることによって,これに基づく事業活動に支障を生ずるおそれがあることを危ぐして,当該営業秘密を訴訟に顕出することを差し控え,十\分な主張立証を尽くすことができないという事態が生じ得る。特許法が,秘密保持命令の制度(同法105条の4ないし105条の6,200条の2,201条)を設け,刑罰による制裁を伴う秘密保持命令により,当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用すること及び同命令を受けた者以外の者に開示することを禁ずることができるとしている趣旨は,上記のような事態を回避するためであると解される。特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,仮処分命令の必要性の有無という本案訴訟とは異なる争点が存するが,その他の点では本案訴訟と争点を共通にするものであるから,当該営業秘密を保有する当事者について,上記のような事態が生じ得ることは本案訴訟の場合と異なるところはなく,秘密保持命令の制度がこれを容認していると解することはできない。そして,上記仮処分事件において秘密保持命令の申立てをすることができると解しても,迅速な処理が求められるなどの仮処分事件の性質に反するということもできない。特許法においては,「訴訟」という文言が,本案訴訟のみならず,民事保全事件を含むものとして用いられる場合もあり(同法54条2項,168条2項),上記のような秘密保持命令の制度の趣旨に照らせば,特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し,上記仮処分事件においても,秘密保持命令の申\立てをすることが許されると解するのが相当である。」
◆平成20(許)36 秘密保持命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 平成21年01月27日 最高裁判所第三小法廷 決定 破棄自判 知的財産高等裁判所