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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

令和3(ワ)3824  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 令和4年3月4日  東京地方裁判所

 アフィリエイト報酬を目的とした紹介サイトの運営者が、競合関係にあると判断されました。原告商品はWiMAXではないにも関わらず、WiMAX競合社と比較して紹介されまていました。

 不正競争防止法2条1項21号は、競争関係にある者が他の事業者の営業上 の信用を害する虚偽の事実を告知するなどし、競争行為において有利な地位を 得ようとする行為を規定し、もって事業者間の公正な競争等を確保するもので ある。このような同号の趣旨、目的に鑑みると、不正競争防止法2条1項21 号に規定する「競争関係」とは、商品販売上の具体的な競争関係がある場合に 限定されるものではなく、虚偽の事実を告知又は流布した者が、他人の競争上 の地位を低下させることによって、不当な利益を得る場合をも含むと解するの が相当である。 これを本件についてみるに、前記前提事実によれば、原告はモバイルWiF iルーターという商品を自ら販売する事業者であるのに対し、被告はアフィリ エイターであり、原告商品と競合する商品を直接販売するものではない。 しかしながら、前記前提事実によれば、原告の需要者はモバイルWiFiル ーター等の契約を希望する者であるのに対し、本件サイトの需要者は、WiM AXの契約を希望する者であって、両商品は、いずれも携帯可能な無線通信の\nための規格であるという点において共通しているところ、本件サイトにおいて は、本件各商品のうち、原告商品及びBroad WiMAXを除いた本件W iMAX商品についてのみ、アフィリエイトリンクが設定されている。 そのため、本件サイトを閲覧した者が本件サイトを通じて商品を契約する場 合において、被告は、上記の者が原告商品を契約した場合には何らの経済的利 益を得られないのに対し、Broad WiMAXを除いた本件WiMAX商 品を契約した場合にはアフィリエイト報酬を得ることができることになる。 これらの事情の下においては、被告は、原告商品について虚偽の事実を告知 又は流布し、原告の競争上の地位を低下させることによって不当な利益を得る ことができる関係にあるものと認められる。 したがって、被告と原告は、「競争関係」にあるものと認めるのが相当であ る。 (2) これに対し、被告は、本件サイトにおいては、本件各商品の長所も指摘され ていること、本件各商品に関する原告の公式サイトへのリンクも紹介されてい ること、アフィリエイトリンクの設定されている本件WiMAX商品につき、 公式サイトを通じて契約することを強く推奨するような文章も記載されてい ないこと、以上の事情等を指摘して、原告と被告は競争関係にない旨主張する。 しかしながら、本件サイトを閲覧した者が本件サイトを通じて商品を契約す る場合において、被告は、原告商品が契約された場合よりも、Broad W iMAXを除いた他の本件WiMAX商品を契約された場合の方が、利益を得 られる関係にあるものと認められ、このことは、上記において説示したとおり である。そうすると、被告主張に係る事情を考慮しても、上記判断は左右され ないものというべきである。

◆判決本文

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平成31(ネ)10008 不正競争防止法に基づく差止・損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和3年3月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。 卵子及び胚の100%の生存率が達成できるとの記載が不競法2条1項20号の不正競争に当たるが争われました。1審は該当せずと判断しましたが、知財高裁は品質誤認を認めました。損害賠償額は、5条2項による被控訴人(1審被告)の利益額として推定がなされ、被控訴人が書類の提出を拒んだため、控訴人(1審原告)の主張がそのまま認められたものの、覆滅が95%として、5%が損害額です。

前記第2の2で判示したとおり被告サイト1には本件表示1〜6が記載されているほか,前記1(2)アで認定した記載がされている。 不妊治療において,治療用の器具を使用する際は,当該器具の使用方法に従うこ とは当然であることを考慮すると,被告サイト1の上記記載を閲覧した医療関係者 は,被告サイト1に記載された本件表示1〜6は,医療関係者が,クライオテック法のプロトコールを遵守して,被告製品を使用して正常な卵子,胚及び胚盤胞,す\nなわち,臨床において使用可能な卵子,胚及び胚盤胞(以下「正常な卵子」などという。)の凍結保存をした場合,融解後の生存率は100%となるという意味であ\nると認識するものと認められる。
・・・
ア 控訴人は,令和2年9月7日,法7条に基づき,平成30年7月26日 から令和2年7月31日までの間の1)貸借対照表・損益計算書・法人事業概況説明書を含む決算報告書,2)営業報告書,3)確定申告書控え(添付書類を含む),4)総 勘定元帳,5)売上元帳,6)仕入元帳を提出対象の書類とし,上記期間の被告製品に よって乳児が出生される年間の件数は2万8333件であること,乳児一人の出生 に必要な被告製品一式の販売価格は7733円であること及び被告製品の利益率は 70%であることを証すべき事実として,書類提出命令の申立てをしたところ,当裁判所は,同年10月9日,送達日から14日以内に上記申\立てに係る書類の提出を命じる旨の決定をしたが,被控訴人は,提出期限までに上記の各書類を提出しな かった。 そして,上記の各書類の記載に関して具体的な主張をすること及び上記の各書類 によって証明すべき事実を他の証拠によって証明することは,著しく困難であると 認められる。
したがって,民訴法224条3項により,控訴人が,被告広告によって受けた損 害の賠償請求期間として主張している平成27年7月26日から令和2年7月31 日までの間における被告製品によって乳児が出生される年間の件数は2万8333 件であること,乳児一人の出生に必要な被告製品一式の販売価格は7733円であ ること及び被告製品の利益率は70%であることは真実と認められる。 なお,前記2〜4のとおり,被告広告に本件記載部分を含む本件各表示を表\示す る行為は,法2条1項20号の不正競争に当たり,被控訴人は,同不正競争につい て,控訴人に対し損害賠償責任を負うものと認められるところ,上記の書類提出命 令に係る書類は,いずれも,被控訴人の上記不正競争によって控訴人の受けた損害 を算定するために必要であること,被控訴人は,上記書類の提出によって受ける損 害について特段の主張をしていないことからすると,上記の書類提出命令について, 被控訴人において,書類の提出を拒む正当な理由があるとは認められない。 イ 被控訴人は,被告製品を購入した者は,被告製品を実際に使用してみて 購入したのであり,被告広告に接したことによって被告製品を購入したのではない こと,被告製品の性能,品質は原告製品よりも優れていること,控訴人の売上げ,利益は減少していないことを理由に,被控訴人は,被告広告によって利益を受けた\n事実は認められないと主張する。 しかし,前記アのとおり,法5条2項の「侵害の行為により・・・受けてい る・・・利益の額」は,侵害行為と相当因果関係のある利益を意味するのではなく, 侵害者が得た利益の全額を意味するのであり,本件においては,上記「利益の額」 は,本件記載部分を含む本件各表示を掲載した被告広告を表\示している期間中に, 本件各表示によってその品質等が示されている被告製品を販売したことによって被控訴人が受けた利益の全額であるというべきであるから,被控訴人の上記主張は理\n由がない。
(3) 推定の覆滅について
ア 前記1(3)のとおり,被控訴人の営業活動は,主に,営業担当者が被告 製品の購入が見込まれる不妊治療施設を訪問して行うというものであるから,その ような営業活動において,被告広告が利用されることがあるとしても,被控訴人の 営業活動にとって,広告の占める程度は小さいといえる。 しかし,そうであるとしても,被告広告に記載された本件各表示に接することにより,被告製品の購入を検討するようになり,前記1(3)のとおり,所属の培養士 を技術講習会(ワークショップ)に参加させ,その結果,被告製品を購入する不妊 医療施設が存在するものと推認され,このような意味において,本件各表示は,被告製品の購入動機に影響を与えている場合があるというべきである。もっとも,そ\nの場合であっても,技術講習会(ワークショップ)における被告製品の使用感等が 被告製品を購入しようとの意思決定をするに当たって重視されるものと考えられる から,本件各表示の影響は相当程度限定的であるというべきである。また,本件製品は継続的に使用されるものであるから,原告製品や被告製品の販\n売の多くは,既に,同製品を購入して,同製品を使用している不妊医療施設に対す るものであると認められるところ,「生存率100%」が実現できるかは,客観的 に判明し,被告製品を使用している者にとっては,その真偽を比較的容易に認識し 得るといえることからすると,被告製品を継続的に購入し,使用している不妊医療 施設が購入の更なる継続をしようとの意思決定をするに当たっては,「生存率10 0%」などの本件記載部分に影響を受けることはないというべきである。 以上の事情を総合考慮すると,被告製品の売上げに対する被告広告の貢献の程度 は,かなり小さいといわざるを得ない。
また,前記1(9)のとおり,日本において販売されている本件製品のほとんどは, 原告製品又は被告製品であるが,海外においては,原告製品と被告製品が競合して いるインドのシェアは,被告製品が18%,原告製品が54%であり,原告製品と 被告製品が競合しているロシアのシェアは,被告製品が15%,原告製品が60% である。そうすると,法5条2項の推定が一部覆滅され,その割合は95%であると解するのが相当である。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成30(ワ)22646
以上によれば,研究報告1ないし5によっては,手順を厳密に遵守して被 告製品を用いて卵子を凍結保存し融解したとしても100%の生存率を達成 することができないとは認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠も ないから,被告から提出された証拠(乙4ないし10)の内容も考慮すれば, 本件記載部分を含む本件各表示が被告製品の需要者である医療関係者や研究者をしてその品質等を誤認させるおそれがあるとは認めるに足りない(なお,\n本件記載部分の表現については,紛争予\防の観点から,研究報告1ないし5 の内容も踏まえ,より慎重に検討することが望まれる。)。

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