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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正競争(その他)

平成26(ワ)12570  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成29年1月31日  大阪地方裁判所

以前の判決ですが、漏れていたのでアップします。
使用済みのトナーカートリッジに、インクを詰めたリサイクル品の製造・販売等が,不正競争防止法の品質等誤認惹起行為に該当するとともに、商標権侵害となると判断されました。被告は、販売時に、RFIDをリセットすることで、トナー交換メッセージが表示されるのを解除していましたが、これにともない「シテイノトナーガソ\ウチャクサレテイマス」との表示がなされるようになり、これが品質誤認等に該当するとの判断です。\n

ア 被告は,経済常識によれば,原告京セラDSがリサイクル品を指定,すなわ ちお墨付きを与えることはあり得ないことから,需要者は,被告商品を原告プリン ターに装着したときにディスプレイに現れる「シテイノトナー」を原告京セラDS の主張するような意味に理解することはないと主張するが,原告京セラDSがいか なる場合にも他社の安価なリサイクル品を指定トナーとすることはあり得ないと断 定する根拠はないのであるから,当該表示が「誤認させるような表\示」であること は免れないというべきである。
イ 被告は,被告商品がリサイクル品であることが明らかとなるよう純正品であ ることを否定する打ち消し表示がされていること,プリンターメーカーの純正リサ\nイクル品であればその旨の表示があるはずであるのにそのような表\示がないこと, また,そもそも需要者はリサイクル品と純正品とを区別して購入しているものであ ること等を指摘し,本件指定表示が,「誤認させるような表\示」ではない旨主張する。 上記第2の2(3)ウのとおり,被告商品の包装や外箱には,被告商品がリサイクル 品であることが理解できる記載がされているが,プリンターメーカーが新品の純正 品だけでなく,リサイクル品を販売している例もあるし(甲10の1ないし3),プ リンターメーカーが定める品質が,プリンターメーカー以外が製造するリサイクル 品においてあり得ないとまで断定できない以上,需要者が,被告商品を原告プリン ターに装着することによりディスプレイに現れる本件指定表示によって,被告商品\nの品質,内容について誤認するおそれを完全に否定することはできない。そして, この点は,被告商品を原告らとは関係のない業者が製造したリサイクル品と明確に 認識して購入した需要者であっても同様であって,被告の上記主張は採用できない。
ウ 被告は,ステータスページのトナー残量を表示させるためRFIDをリセッ\nトすると,これに連動して本件指定表示が現れるようにする原告純正品にされた設\n定は,不正競争防止法の問題を生じさせるようあえて設定されたものであって,競 争者に対する取引妨害を禁止する独占禁止法の趣旨に反するとし,被告商品による 不正競争該当性を否定すべきである旨主張する。 確かに,原告純正品についてなされた設定が,使用済み原告純正品のカートリッ ジを再利用してリサイクル品とする場合に,商品として競争力を減殺するものであ れば独占禁止法上問題とされる余地はあると考えられる。しかし,そもそも,RF IDをリセットしない原告純正品のリサイクル品であっても,トナー残量が不足し てきた場合には,プリンターのディスプレイには,「トナーガスクナクナリマシタ」, 「トナーヲコウカンシテクダサイ」との表示がされ,業務上支障がないよう配慮さ\nれているのであるから,プリントする必要があるステータスページのトナー残量が 表示できるようRFIDのリセットをしなければ,原告純正品のリサイクル品の製\n造販売が阻害されるような前提でいう被告の主張は,その点で採用し難い。 また,原告純正品のステータスページにおけるトナー残量表示は,規定量の充填\nされた新品の「シテイノトナー」を前提に,各印刷物のドット量等から使用量を計 算するなどして表示しているというのであるから(弁論の全趣旨),そもそも原告京\nセラDSにおいて規定量が充填されているか否かを確認できないトナーカートリッ ジを前提にRFIDをリセットして使用することは想定されておらず,そのリセッ トを自由にさせるよう求めることになる被告の主張はこの点でも採用できない。 したがって,原告純正品にされた,本件指定表示とステータスページを関連づけ\nた設定が独占禁止法の趣旨に反する旨の被告の主張は採用できない。
・・・
(1) 被告商品2には,トナーカートリッジの底面に本件商標が付されており,そ の表示態様は,被告商品2において,商品の出所を識別表\示させるものといえる。 そして被告商品2は,本件商標の指定商品であるトナーカートリッジであるから, 被告商品2を製造販売する行為は,本件商標権の侵害行為を構成するといえる。\n
(2) これに対し,被告は,被告商品2には,原告らが流通に置いた商品であり, かつ,リサイクル品であることが一見して明らかな表示を幾重にも施しているから,\n需要者が被告商品2の出所を原告京セラ又はそのグループ会社であると誤認するこ とはあり得ないとして,被告の行為は本件商標権侵害の違法性を欠く旨主張する。 確かに,上記第2の2(3)ウ(ア)のとおり,被告商品2の本体及び梱包した箱には, 被告商品2がリサイクル品であることが明示されていることが認められる。また, 箱の中に入れられている,「ご使用前の注意」と題する書面,「リサイクルカートリ ッジトラブル調査票」によっても,被告商品2がリサイクル品であることは明らか にされていることも認められる。 しかしながら,被告商品2の本体には,製造元等の記載は全く存在しないから, 本体に付された上記のような表示ラベルだけでは,本件商品2の本体に付された本\n件商標の出所表示機能\を打ち消す表示として十\分なものとはいえない。

◆判決本文

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令和6(ネ)10014 投稿削除及び損害賠償の請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年8月8日 知的財産高等裁判所(原審・東京地裁 令和4年(ワ)13396号)

マッチングサイトにおける批判的投稿について、一審では、約50万円の損害賠償が認められましたが、知財高裁は、公共の利害に関するものであるとともに、目的の公益性が認められるとして、これを取り消しました。

3 争点4(不法行為の成否)について
(1) 被控訴人の主張 被控訴人は、控訴人による本件投稿が被控訴人に対する不法行為に当たる理由と して、不競法2条1項20号及び21号に該当する旨を主張する。これらのうち、前 者は本件投稿により控訴人の提供する役務の品質を誤認させて被控訴人の信用が毀 損された旨を、後者は本件投稿により被控訴人の信用が毀損された旨を、それぞれ 主張するものと解される。しかし、前者すなわち品質誤認を理由とする点について は、本件投稿は、控訴人の役務の質を誤認させるような表示に当たるとは認められ\nないから、これを不法行為に当たるということはできない。
(2) 信用毀損による不法行為について
本件投稿は、「被控訴人は、何度やり取りしても、控訴人担当者からの質問に明確に回答しない」、「被控訴人は、やり取りに際して、相手方の権限を確認した」、「被 控訴人は、「なんで答える必要あるの?」と、合理的な理由を示すことなく、質問へ の回答を拒否した」、「XDでモックを作成したのに、違うものが出来上がり、XD に合わせるには別料金が必要で、それが明らかに金額が高い」、「被控訴人が納品し た成果物は、仕様を満たさず、使用に耐えないものであった」等の事実を摘示し、ま た、控訴人の意見又は論評として、「引くに引けない状況で、この高額見積もりは、 守銭奴ビジネスとしては正解なのかも知れないが、人としてはどうなのかと思いま した。」、「いい勉強になりました。」と述べているものと認められる。 本件投稿のうち、事実を摘示する部分については、本件サイト(ランサーズ)を閲 覧する者の普通の注意と読み方とを基準とすると、被控訴人の社会的評価を低下さ せるものといえる。しかし、本件サイトは、社会において有用性のあるサービスとし て運営されている、インターネット上での個人間又は個人と法人との間での請負契 約に係るマッチングサイトであって、そこでされる投稿は、本件サイトを通じて契 約の申込みや締結等を行う者にとって、その相手方がどのような仕事をするか等の\n参考に供されるものであるから、そのような参考に供されるべき投稿の内容は公共 の利害に関するものであるとともに、目的の公益性が認められるというべきところ、 本件投稿につき特段これに反する事情はうかがわれない。そして、上記1で認定説 示したところに加え、控訴人は、本件サイネージ案件に関し、被控訴人に対して38 万円を支払ったのに十分な成果物を得られず(甲15、乙7、8、12)、被控訴人\nからは改修に要するとして合計40万9223円の見積りを提示され(甲21、乙 9)、結局は別業者に依頼して案件を完成させたこと(乙10の1・2)等、証拠上 認められる事実関係に照らすと、本件投稿により摘示された事実は、重要な部分に ついて真実であると認められる。
なお、被控訴人が、本件投稿部分1中の「なんで答える必要あるの?」との文言をそのまま記載し、又は発話した事実はないところ、同文言は、閲覧者において、やや 投げ遣りな感じを抱かせる言葉遣いであるといえる。しかし、前記1(1)ア(イ)のと おり、被控訴人は、控訴人担当者等からの複数回にわたる確認に対して、合理的な理 由を示すことなく、質問への回答を拒否し続けた状態であったことから、控訴人に おいて、このような被控訴人の対応を要約して同文言を使用したものであったこと に照らすと、本件投稿における同文言の記載をもって、いまだ不法行為が成立する ものと認めることはできない。 また、本件投稿のうち、意見又は論評にわたる部分については、「守銭奴ビジネ ス」との記載にやや穏当を欠く点があることは否定できないものの、既に認定説示 した事実経過等に照らし、いまだ意見又は論評としての域を逸脱したものとまでは 認められない。
(3) まとめ
以上によると、控訴人が本件投稿をしたことが、被控訴人に対する不法行為に当 たるということはできない。

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原審はこちら

◆令和4(ワ)13396

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令和4(ワ)19400    不正競争  民事訴訟 令和6年5月14日  東京地方裁判所

NHKvs個人の訴訟です。裁判所は、不正競争行為と認定し、約170万円の損害賠償を認めました。

少し気になるのは、この訴訟ではなく、仮処分の提訴にかかった弁護士費用を全額認めている点です(55万円)。同じ理由で、著作権侵害がなされている場合の発信者情報開示手続きの弁護士費用も認められるのでしょうか?

1 争点1(本件情報の営業秘密該当性)について
前提事実(2)アないしウのとおり、原告においては、権限を有しない者が本 件情報にアクセスすることが物理的に困難な態様で管理されており、かつ、本 件情報にアクセスする権限を持つ者は限定されていたものであり、また、原告 は、FF社との間で秘密保持契約を締結した上で、FF社に対し、本件情報に アクセスすることができるナビタンを貸与していたところ、FF社においても、 ナビタンを操作することにより受信契約者の情報にアクセスできる従業員の範 囲を限定し、同従業員に開示する受信契約者の情報の範囲を必要な限度に絞る ことが徹底されていた上、ナビタンの操作状況は高い頻度で保存され、従業員 による受信契約者の情報へのアクセスの状況を監視できるようにしており、ま た、業務終了後は施錠したロッカーでナビタンを保管することで、物理的にも ナビタンへの不正なアクセスを防止しており、情報の流出を防ぐ対策が十分に\n行われていたものである。さらに、前提事実(2)エのとおり、FF社において は、Biを含むFF社の従業員に対し、採用時に、情報の適切な管理に関する 研修を実施して、Biは、同社に対し、本件情報を含む営業上知り得た情報を 第三者に開示しない旨の誓約書を提出していたものである。これらの事実に照 らすと、本件情報は、客観的に秘密として管理されていると認識できる状態に あったと認められ、秘密管理性の要件を満たすといえる。加えて、弁論の全趣旨によれば、本件情報の内容は公表されていないと認められるから、非公知性の要件を満たし、また、その内容は原告との契約の種別を含む顧客情報であると認められ、客観的に有用であるといえるから、有用性の要件も満たす。したがって、本件情報は、不競法2条6項の「営業秘密」に該当する。\n
・・・
4 争点4(原告の損害の発生の有無及び損害額)について
(1) 本件取得行為による損害について
前提事実(2)オ及びカの経緯並びに前記2で認定した事実に照らせば、被 告は、Biによる営業秘密不正開示行為を知りながら、本件取得行為に及ん だものであるから、故意の不正競争行為により原告の営業上の利益を侵害し たといえる。
そして、本件取得行為がなければ、原告は、本件仮処分申立てをすること\nもなく、これに伴い弁護士費用を支出することもなかったといえ、この支出 に係る原告の損害は、通常の損害であるといえるから、原告が本件仮処分申\n立手続のために支払った弁護士費用55万円は、本件取得行為と相当因果関 係のある損害であると認められる。
これに対して、被告は、原告が本件仮処分申立てをする必要はなかったか\nら、本件仮処分申立手続のために支払った弁護士費用は本件取得行為と相当\n因果関係のある損害とはいえないと主張する。しかし、前提事実(2)キの本件動画の内容及び本件動画がアップロードされた際に本件動画に付されたタイトル並びに本件業務妨害行為における被告の言動に照らすと、少なくとも被告が本件情報を自ら又は第三者をして開示するおそれがあったと認めるのが相当であり、原告が本件仮処分申立てをす\nる必要はなかったとの被告の主張は採用できない。 また、被告は、原告が支払った着手金は高額にすぎるから、本件取得行為 と相当因果関係の認められる損害額は、(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬 基準に沿って24万5000円とすべきであるなどと主張する。 しかし、上記報酬基準が廃止された後は弁護士や事案の性質によって着手 金の額が異なり得ることは、当裁判所に顕著な事実である上、55万円とい う着手金の金額が上記報酬基準に照らして相当性を逸脱するほどに高額であ るとまではいい難いことから、被告の指摘する事情は相当因果関係を否定す るには足りず、被告の上記主張は採用できないというべきである。

◆判決本文

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令和5(ネ)10112  損害賠償請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年7月4日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

1審では、不競法の品質誤認表示に該当するとして、約1億4000万円の損害が認定されましたが、控訴審は、5割について覆滅を認めて、約7000万円の損害を認めました。

以上の各事情を総合すれば、控訴人が、控訴人商品の製造元を被控訴人 と表示し、控訴人商品の販売実績として実際よりも多い数値を表\示した品 質誤認表示によって、控訴人商品及び被控訴人商品の売上げに影響が及び、被控訴人の営業上の利益が侵害され、損害が発生したものと認められる。\nそして、控訴人の品質誤認表示による被控訴人の損害については、不正競争防止法5条2項が適用され、令和元年5月8日から令和5年4月30\n日までの期間において控訴人が控訴人表示によって受けた利益の額が被控訴人の受けた損害の額であると推定される。\n上記期間における控訴人の限界利益の額は1億2368万8021円 であると認められる(前提事実(4)。なお、被控訴人は、損害が発生した期 間を令和元年5月10日から令和5年4月30日と主張するが、この期間 としても限界利益の額は上記金額となる。)。この限界利益の額は、乙76 に基づくものであるが、乙76に記載された控訴人商品の売上日によれば、 上記限界利益のうち、令和4年2月2日(被控訴人の請求金額のうち49 28万円に対する遅延損害金の起算日)までに発生したものは6355万 9921円、同月3日以降に発生したものは6012万8100円となる。
イ 控訴人の主張について
控訴人は、前記第2の4(3)〔控訴人の主張〕アのとおり、被控訴人は控 訴人との取引終了後における被控訴人商品の販売実績を主張立証してお らず、被控訴人に売上減少等の逸失利益が生じているのか不明であるから、 損害額が不正競争防止法5条2項によって推定されるということはない と主張する。 しかし、被控訴人と控訴人との間の販売代理店契約が終了した後の被控 訴人商品の販売台数や売上高が明らかでないとしても、本件で認められる 前記アの各事情を総合すれば、控訴人が控訴人表示をしたことによって被控訴人の営業上の利益が侵害されたものと認定することができるという\nべきであり、被控訴人が上記販売台数や売上高を主張立証しないことをも って、被控訴人の利益が侵害されたと認められないことにはならず、その 他、上記認定を左右する事情は認められない。
また、控訴人は、前記第2の4(3)〔控訴人の主張〕イのとおり、被控訴 人商品には顧客吸引力はなく、控訴人ウェブページ上の記載によって、被 控訴人の販売実績の低下は生じないとか、仮に、被控訴人商品の売上げが 減少したとしても、それは被控訴人による一方的な出荷停止の必然的な結 果であり、控訴人が控訴人表示を掲載したこととの因果関係はないと主張する。\n
しかし、前記アのとおり、被控訴人商品は、被控訴人と控訴人が販売代 理店契約を締結していた時期において、長期にわたって一定程度の台数の 販売があり、ある程度の市場占有率を獲得していたのであって、被控訴人 商品についてこのような実績が形成されていたことからすれば、控訴人商 品の製造元が被控訴人であるとの表示及び控訴人商品の販売実績を実際よりも多い数値とした表\示を控訴人ウェブページに掲載し、控訴人商品の製造元及び販売実績に関する誤認混同を需要者に生じさせたことによっ て、被控訴人商品の売上げに影響が及んだと認められるのであり、これら の間に因果関係がないとは解されない。 したがって、控訴人の上記各主張は採用することができない。
(3) 推定の覆滅及び覆滅事由について
ア 不正競争防止法5条2項が適用されるためには、被侵害者に、侵害者に よる不正競争がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存 在することが必要と解されるから、そのような事情が認められない場合に は、同項による推定が覆滅されるものと解される。そして、同法2条1項 20号による不正競争においては、市場において競業他社が複数存在する 状況において、侵害者の品質誤認表示がなかったとした場合に、特定の被侵害者の売上げのみが増加するという定型的な関係を認めることは困難\nであるから、他の類型の不正競争の場合に比較して、推定の覆滅が広く認 められるべきであり、推定覆滅の事由としては、1)侵害者と被侵害者の業 務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)、2)市場における競合品 の存在及び被侵害者の市場占有率、3)侵害者の営業努力(ブランド力、宣 伝広告等)、4)侵害品の性能(機能\、デザイン等品質誤認表示以外の性能\) など、被侵害者の現実の損害が、侵害者の得た利益よりも少ない事情を考 慮すべきである。
イ 控訴人は、本件表示による被控訴人の損害につき、不正競争防止法5条2項による損害の推定が覆滅されると主張する。これに対し、被控訴人は、前記第2の4(3)〔被控訴人の主張〕ウ(ア)のとおり、控訴人は原審において不正競争防止法5条2項の損害の推定の覆滅の主張を撤回しており、当審における推定の覆滅の主張は時機に後れた攻撃防御方法に当たるとして、これを却下するよう申し立てている。
そこで検討するに、控訴人は、原審及び当審を通じ、第一次的には、被 控訴人に損害が発生したことを否認するとともに、損害が発生していると しても控訴人の行為によって生じたものではないとして、因果関係を否認 しており、不正競争防止法5条2項が適用されないとの主張もしていると 解されるが、原審で提出した令和5年2月9日付け「準備書面(兼求釈明 書)」と題する書面の第1の5の末尾(同書面6頁)において、「『抗弁事由』 というも『積極否認』というも、法定要件充足の主張・立証責任分配の問 題であり、どちらにせよ被告としてはこれを積極的に主張・立証する意思 であることに変わりはない。」と記載するなど、控訴人が原審で提出した準 備書面には、同項が適用されることを前提に、推定の覆滅を主張している ものと解される記載がある。原審で令和4年12月22日に行われた書面 による準備手続の協議について作成された経過表には、控訴人(第1審被告)の述べた内容として、準備書面(4)に主張した事実は、損害発生の否認 の理由であるとともに同項の推定を覆滅する事由である旨の記載がある
(当裁判所に顕著な事実)。
他方、原審で令和5年2月6日に行われた書面による準備手続の協議に ついて作成された経過表には、控訴人の述べた内容として、損害は発生していないので、被控訴人(第1審原告)の主張に対して覆滅事由は主張し\nていない旨の記載がある(当裁判所に顕著な事実)。 被控訴人が証拠として提出した、同日の協議に関して被控訴人代理人が 作成したものであるとする「期日報告書(7)」と題する書面(甲43)には、 覆滅事由については主張しない旨控訴人代理人が述べたことを示す記載 がある。 しかし、上記経過表は、口頭弁論期日又は弁論準備手続期日の期日調書と異なり、これに記載された当事者の陳述が法的効果を有することはない。\nまた、上記経過表及び上記甲43の書面のいずれにも、控訴人代理人が、同日以前における覆滅事由の主張を撤回すると述べた旨の記載は存在し\nない。 。 そして、上記甲43の記載によれば、控訴人代理人は、損害が発生して いるとの心証が開示されたら覆滅事由について主張したい旨述べ、受命裁 判官から、裁判所の心証次第で反論することは許されないと言われたのに 対し、それであれば覆滅事由については主張しないと述べたとされている。 そうすると、控訴人代理人としては、損害が発生していると認められるの であれば覆滅事由を主張したいとの考えを有しており、そのことを明らか にしていたと認められる。
さらに、前記令和5年2月9日付け「準備書面(兼求釈明書)」は、同月 6日の上記協議の後に提出されたものである。 これらの事情を総合すれば、控訴人代理人が、令和5年2月6日に行わ れた書面による準備手続の協議において、上記甲43の書面に記載された 内容の発言をしたとしても、控訴人が、原審において、不正競争防止法5 条2項による損害の推定の覆滅を主張していないとか、推定覆滅の主張を 撤回したということはできない。 そうすると、控訴人が当審でした推定覆滅の主張が、時機に後れて提出 した攻撃防御方法であるとは認められない。 また、控訴人は、当審において、令和6年4月11日付け準備書面(控 訴審第2)及び同年5月9日付け準備書面(控訴審第3)により推定覆滅 の主張をしているが、これらの準備書面が陳述された同月16日の第2回 口頭弁論期日において弁論が終結されているから(当裁判所に顕著な事 実)、上記各準備書面における推定覆滅の主張によって訴訟の完結が遅延 したとは認められない。以上によれば、控訴人が当審でした推定覆滅の主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下を求める被控訴人の申立ては、理由がないからこれを却下する。\n
ウ 控訴人が推定覆滅の事由として主張するのは、前記第2の4(3)〔控訴人 の主張〕イの1)ないし9)(主張1)ないし9))である(令和6年4月11日 付け準備書面(控訴審第2)第1)。
そこで検討するに、主張5)及び6)に関し、まず、控訴人商品及び被控訴 人商品の市場においては、前記(2)アのとおり、複数の競業他社が存在し、 被控訴人商品はある程度の市場占有率を獲得していると認められるもの の、その市場占有率は高いとはいえないから、推定覆滅事由にあたると認 められる。 また、控訴人代表者は保育園業界との人脈を有しており、控訴人は、被控訴人との間で被控訴人商品に関する販売代理店契約を締結していた時\n期において、この人脈を生かすとともに、保育関係の研修会等において被 控訴人商品を展示するなどして、保育園に被控訴人商品を販売するための 営業努力を行い、保育園に対して被控訴人商品を販売していたと認められ る(乙36、39、71、弁論の全趣旨)。そして、このような営業努力は、 被控訴人と控訴人との販売代理店契約が終了し、控訴人がテクノウェーブ 製の控訴人商品を取り扱うようになった後も行われており、控訴人が、保 育関係の研修会等において控訴人商品を展示したこともある(乙40〜4 4、71、弁論の全趣旨)。これらの事実によれば、控訴人による控訴人商 品の販売先には保育園が含まれることが推認される。 以上によれば、控訴人による控訴人商品の販売については、控訴人の営 業努力もこれに寄与したと認められるのであって、品質誤認表示(控訴人表\示)のみによってその販売が達成されたとは認められないから、推定覆滅事由にあたると認められる。
もっとも、控訴人が控訴人商品の販売についてした営業努力については、 保育関係の研修会等における控訴人商品の展示以外には、その具体的内容 の主張立証があるとはいえない。また、控訴人が営業努力を行った相手で ある保育園等において、控訴人商品を購入するか否かの判断に当たり、控 訴人ウェブページに掲載された控訴人商品に関する情報を確認し、控訴人 表示を認識した可能\性があるから、控訴人の営業努力があったからといっ て、控訴人表示が控訴人商品及び被控訴人商品の売上げに影響を与えなかったと認められることにはならない。そして、主張1)ないし4)及び7)ないし9)は、覆滅事由に当たるとは認められず、その他、不正競争防止法5条2項の損害の推定を覆滅する事由の主張立証があるとは認められない。以上の事情を総合すると、控訴人表示による損害額の算定における推定覆滅の割合は、5割と認めるのが相当である。
(4) 前記(2)アのとおり、令和元年5月8日から令和5年4月30日までの期間 における控訴人の限界利益の金額は1億2368万8021円であり、この うち令和4年2月2日までに発生した分が6355万9921円、同月3日 以降に発生した分が6012万8100円であるところ、上記(3)ウのとおり、 控訴人表示による損害額の算定における推定覆滅の割合を5割と認めるのが相当であるから、控訴人表\示による被控訴人の損害の金額は、同月2日までにつき3177万9960円(小数点以下切り捨て)、同月3日以降につき3 006万4050円となる。 また、控訴人の品質誤認表示と相当因果関係のある弁護士費用は、令和4年2月2日までの品質誤認行為に係るものとして317万円、同月3日以降\nの品質誤認行為に係るものとして300万円を認めるのが相当である。
したがって、被控訴人は、控訴人に対し、不正競争防止法4条に基づく損 害賠償請求として、6801万4010円及びうち3494万9960円に 対する令和4年2月2日から、うち3306万4050円に対する令和5年 5月27日から、各支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅 延損害金を請求することができると認められる。 4 その他、当事者が主張する内容を検討しても、当審における上記認定判断(原 判決引用部分を含む。)は左右されない。

◆判決本文

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◆令和4(ワ)2551

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令和3(ワ)29242  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年7月17日  東京地方裁判所

著名性は認められましたが、その時期が被告の使用時よりも後であるとされて、不正競争行為とは認定されませんでした。

2 争点1−4(原告表示等が著名になる前から被告表\示等を不正の目的でなく 使用しているか)について
(1) 前記1のとおり、原告表示等が著名な原告の商品等表\示となった時期は、 早くとも令和3年7月頃であったと認められる。 これに対し、前提事実(3)のとおり、被告が被告表示等の使用を始めたのは、令和2年4月以前であるから、被告は、原告表\示等が著名になる前から被告表示等を使用していると認められる。
(2) 不競法19条1項5号(令和6年3月31日以前の行為については令和5 年法律第51号による改正前の同項4号)所定の「不正の目的」とは、不正 の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう(同 項2号)。そこで、前記(1)の被告による被告表示等の使用について、このような目的でなくされたと認められるか否かが問題となる。\nア まず、被告は、被告表示等のうち使用開始が最も遅い被告表\示4の使用 を始めた令和2年4月時点においても、いまだ原告表示等を認識していなかったと主張するので、そのような事実が認められるか否かを検討する。\n
(ア) この点について、D及び被告の従業員であるE(以下「E」という。) は、上記被告の主張に沿う証言をする(証人D、証人E)。 そこで、上記各証言の信用性について検討すると、前提事実(3)及び前 記1のとおり、被告が被告表示4の使用を始めた令和2年4月時点で、原告表\示等が著名であったとは認められない上、前記1(1)ア(別紙原告 展示一覧表参照)のとおり、原告の作品の展示は、会場が美術館であったり、展示名に「芸術」、「アート」、“DESIGNERS”、“DESIGN”、「遊園地」 との文言が含まれていたりする展示が多く、美術、芸術の分野や遊園地 に関心を有しない者は、原告の作品の展示にも原告表示等にも注意を払わなかった可能\性があるところ、本件証拠上、D及びEが、これらの分野に特に関心を有していたことはうかがわれない。確かに、被告所在地 と同一都道府県内においても、平成27年7月から同年8月にかけて、 「京セラドーム大阪スカイホール」において“Learn & Play! teamLab Future Park”と題する展示、平成28年3月から同年6月にかけて、 「ひらかたパークイベントホール」において「チームラボアイランド 踊る!美術館と、学ぶ!未来の遊園地」と題する展示、平成30年7月 から同年9月にかけて、「あべのハルカス美術館」において「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」と題する展示がそれぞれされていることが認めら れる(前記1(1)ア(別紙原告展示一覧表参照))。しかし、最も来館者数の多い「あべのハルカス美術館」における展示についてみても、当該美\n術館は、被告所在地の至近にあるとはいえないし、来館者が●(省略) ●にとどまること、開催場所が美術館であること、展示名に「未来の遊 園地」とあることから、美術や遊園地に関心がない者は、当該展示に関 心を抱かず、注意を払わないと考えられるところ、D及びEも同様であ った可能性がある。
さらに、「チーム」は、競技・仕事などの分隊との意味を有する英単語 “team”の片仮名表記、「ラボ」は、医療に関わる実験室、研究室、薬品などの製造所の意味を有する英単語“laboratory”の片仮名表記を略したもの又は英単語“labo”の片仮名表記であって、“team”、“laboratory” 及び“labo”は、いずれもよく知られた英単語であること、予防医学支援、労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業等を目的とする会社であ\nる被告(前提事実(1)イ)の商号として、これらの英単語を利用すること は自然であるといえるから、Dが原告表示等を認識することなく被告表\ 示等に思い至ったとしても、特段不合理ではないというべきである。 以上の検討によれば、D及びEの上記各証言は信用することができ、他方、本件全証拠によっても、それらの信用性を否定するに足りる事情は認められない。
(イ) なお、証拠(甲1576)によれば、被告は、被告アカウントから原 告アカウントをフォローしたことが認められるから、その際、原告表示等を認識したと認められるものの、その時期を認めるに足りる証拠はな\nい。しかも、被告アカウントから原告アカウントをフォローするためには、 その前に被告アカウントを作成する必要があるから、被告が当該フォロ ーの際に原告表示等を認識したとしても、それは被告が被告表\示4の使 用を始めた後ということになる。
(ウ) このほか、被告アカウントから原告アカウントのフォローがされた時 点より前に、被告が原告表示等を認識していたことをうかがわせる証拠がないことを考慮すると、被告は、被告表\示等の使用を始めた時点において、原告表示等を認識していなかったと認めるのが相当である。\n

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令和3(ワ)22564等  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 知的財産裁判例 令和6年3月22日  東京地方裁判所

原告は、マザーズへの上場を控えていましたが、被告は、原告の主幹事会社に対して、「被告特許を侵害するとして、原告を提訴しました。上場は慎重にすべき」という旨の通知書を送付しました。実際に提訴自体はしましたが、印紙を貼らずの提訴で、その後、提訴は取り下げています。\n
原告はかかる行為は、不正競争行為(不競法2条1項21号)に該当すると提訴しました。被告も反訴しています。 裁判所は、特許は無効だが、不正競争行為には該当しないと判断しました。
なお、サブコンピネーション発明の「〜のための」という文言も発明を限定するのかが問題となっています。

ウ 甲32発明の各構成が本件発明の構\成要件JないしNの構成にそれぞれ\n相当するかを検討する前提として、構成要件Jの「請求項4記載の携帯電\n話との間で送受信するための」との記載の性質について検討する。 被告らは、構成要件Jの「請求項4記載の携帯電話との間で送受信す\nるための」との記載は、本件発明の受信装置の構造及び機能\を特定して いるから、請求項1ないし4の解釈を踏まえて請求項5に係る本件発明 の構成を認定すべきであると主張するものと解される。\n
そこで検討すると、本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の各記 載によれば、本件発明は、受信装置が、携帯電話との間で送受信するた めのRFIDインターフェースを介して同携帯電話に対して個別情報の 発信要求をし、これに対し、同携帯電話が、要求された個別情報を送信 し、受信装置が、同携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報 であるか否かを判断し、受信した判断情報が前記要求した個別情報であ ると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行うという、二つ 以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明に対し、それに組み合わ される受信装置の発明すなわちサブコンビネーション発明であって、本 件発明に係る特許請求の範囲の請求項5には、受信装置とは別の他の装 置すなわち他のサブコンビネーションである携帯電話に関する事項が記 載されているものと理解できる。
そして、サブコンビネーション発明においては、特許請求の範囲の請求 項中に記載された他の装置に関する事項が、形状、構造、構\成要素、組成、 作用、機能、性質、特性、行為又は動作、用途等の観点から当該請求項に\n係る発明の特定にどのような意味を有するかを把握し、発明の技術的範囲 を画する必要があるところ、他の装置に関する事項が、当該他の装置のみ を特定する事項であって、当該請求項に係る発明の構造、機能\等を何ら特 定していない場合には、他の装置に関する事項は当該請求項に係る発明を 特定するために意味を有しないことになるから,これを除外して当該請求 項に係る発明の要旨を認定することが相当であるといえる。
本件特許の特許請求の範囲において、構成要件Jの「RFIDインター\nフェースを有し、」との記載は、受信装置が「RFIDインターフェース を有し」ていることを、構成要件Kの記載は、受信装置が「個別情報の発\n信要求を前記携帯電話に発信する発信手段」を有していることを、構成要\n件Lの記載は、受信装置が「前記携帯電話から受信した個別情報が要求し た個別情報であるか否かを判断する判断手段」を有していることを、構成\n要件Mの記載は、受信装置が「前記判断手段で受信した判断情報が、前記 要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理 を行う」ことを、それぞれ特定していると認められるのに対し、構成要件\nJの「請求項4記載の携帯電話との間で送受信するための」との記載は 上記の構造、機能\等を有する受信装置と送受信をする携帯電話の構造、機\n能等を請求項4記載の構\成に限定するものにすぎず、受信装置の構造、機\n能等自体を何ら特定していないから、「請求項4記載の携帯電話」との記\n載は、受信装置に係る発明を特定するために意味を有するものであると認 めることはできない。
以上によれば、上記の「請求項4記載の携帯電話との間で送受信するた めの」を除外して請求項5に係る本件発明の要旨を認定することが相当で あるというべきであって、被告らの上記主張を採用することはできない。
・・・
(2) 小括
以上によれば、本件発明は、甲32発明と同一の構成を有しているから、\n新規性を欠いており、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの と認められ、被告モビリティは原告に対してその権利を行使することができ ない(特許法104条の3第1項、123条1項2号、29条1項3号)。
3 争点1−3(被告らによる虚偽告知の内容)について
前提事実(5)オのとおり、本件通知行為は、原告が被告モビリティの特許権 を侵害しているとの原告の営業上の信用を害する事実を告知するものであると ころ、前記2のとおり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの であり、原告が被告モビリティの特許権を侵害しているとの事実を通知した本 件通知行為は、不正競争防止法2条1項21号の「虚偽の事実を告知」するも のといえる。
他方で、前提事実(5)オのとおり、本件通知行為により、被告モビリティは、 岡三証券に対し、被告モビリティが別件訴訟を提起した旨も通知したものであ るが、実際に、本件通知行為の前日である令和3年6月23日、東京地方裁判 所に対し、別件訴訟を提起している以上(前提事実(5)エ)、別件訴訟について の通知内容は、同条の「虚偽の事実を告知」したものとはいえない。 なお、被告らは、原告の前訴訟代理人であった弁護士Ci作成に係る令和3 年7月26日付け意見書について、文書提出命令を申し立てているところ(東\n京地方裁判所令和4年(モ)第264号)、本訴のいずれの争点との関係でも 取調べの必要性が認められるとはいえないから、上記申立てを却下する。\n4 争点2(被告らと原告との間の競争関係の有無)について 事業者間の公正な競争を確保するという不正競争防止法の目的(不正競争防 止法1条)に照らすと、同法2条1項21号の「競争関係」は、現実の市場に おける競合が存在しなくとも、市場における競合が生じるおそれがあれば認め られると解するのが相当である。
そして、前提事実(2)及び(3)並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、決済 に利用される通信端末及びインターネットを利用した決済システムを開発して 販売していること、被告モビリティは、決済システムに利用され得る本件発明 に係る特許権を有し、同特許権について実施権を許諾してライセンス収入を得 ることを業としていることが認められ、被告モビリティ自身が決済端末の開発、 販売をしておらず、現実の市場における競合が存在しないとしても、市場にお ける競合が生じるおそれはあるといえる。
3 争点1−3(被告らによる虚偽告知の内容)について
前提事実(5)オのとおり、本件通知行為は、原告が被告モビリティの特許権 を侵害しているとの原告の営業上の信用を害する事実を告知するものであると ころ、前記2のとおり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの であり、原告が被告モビリティの特許権を侵害しているとの事実を通知した本 件通知行為は、不正競争防止法2条1項21号の「虚偽の事実を告知」するも のといえる。
他方で、前提事実(5)オのとおり、本件通知行為により、被告モビリティは、 岡三証券に対し、被告モビリティが別件訴訟を提起した旨も通知したものであ るが、実際に、本件通知行為の前日である令和3年6月23日、東京地方裁判 所に対し、別件訴訟を提起している以上(前提事実(5)エ)、別件訴訟について の通知内容は、同条の「虚偽の事実を告知」したものとはいえない。
(2) 不正競争行為に係る過失について
本件全証拠によっても、被告らにおいて本件通知行為時までに本件特許が 無効となることを具体的に認識し得たことを基礎付ける事情は認められない。 他方で、前提事実(5)のとおり、被告モビリティは、原告がマザーズ市場に 上場する約2週間前に、岡三証券に対して本件通知行為をしたものであると ころ、同時点においては、原告から本件特許が無効である旨の主張は一切さ れておらず、原告が初めて具体的な引用例を示した上で本件特許の新規性又 は進歩性欠如の主張をするに至ったのは、本件訴訟係属中に前訴訟代理人弁 護士らを解任して現在の訴訟代理人弁護士に本件を委任した後であった。以 上の事情に加え、一般に、特許権は特許庁においていったん特許要件ありと して特許査定を受けた権利であることを考慮すると、本件通知行為時点にお いて、被告らに本件特許の無効理由を調査する義務まで負わせることが相当 であるとはいい難い。したがって、被告らに不正競争行為につき過失があるとの原告の主張は理由がない。

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令和5(ワ)893  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年3月18日  大阪地方裁判所

 商標権侵害であるとAmazonに申告することは、不正競争行為に該当すると判断されました。\n

不競法2条1項21号の「虚偽」とは、客観的事実に反する事実であるところ、 本件各申告の内容は、原告各標章を付した原告各商品の販売が被告商標権を侵害\nするというものであるから、以下、当該内容が客観的事実に反するか、すなわち、 原告各標章の使用が被告商標権を侵害しないといえるかにつき検討する。
なお、商標権侵害の判断の前提となる商標の類否は、対比される両商標が同一 又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混 同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、使用され た商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、 連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品又は役務に係る取 引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断される (最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民 集22巻2号399頁参照)。また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と\n解されるものについて、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は\n役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、 それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場 合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると\n思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には、その構成部\n分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断する ことも許される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小 法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同 5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年 (行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号56 1頁参照)。
(1) 原告標章1ないし同10と被告商標との対比
ア 原告標章1ないし同10について
原告標章1ないし同10は、「Qbit」、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」 の文字(同1、4、5、7、8)及びこれらの文字と丸い絵柄(円の外から 中央右下に向けて濃紺から淡い青を経て白色にグラデーションが施され、円 の内部に「Q」の字を模した白抜きがされたもの)から構成される結合商標\nである。これらの標章のうち、「いつでも」、「簡単」の文字部分は、順に、商 品の使用の時期、使用の方法又は効能を表\示するものにすぎず、「トイレ」部 分は普通名称であるから、これらが「いつでも簡単トイレ」と一体として表\n示されていることを踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を\n有しているとはいえず、「Qbit」又は「Qbit」と上記丸い絵柄部分が 強い出所識別機能を有しているといえる。よって、被告商標との類否の判断\nにあたっては、文字部分を抽出するのは相当でなく、上記「Qbit」と丸 い絵柄の部分を抽出して対比することが相当である(なお、これらの標章の 中には、Qbitや上記絵柄部分と他の文字部分が、横並びになる構成のも\nのや上下の構成のものもあるが、これらの構\成の相違は、上記結論に影響し ないというべきである。)。 そして、「Qbit」及び丸い絵柄からは「きゅーびっと」との称呼が生 じ、特定の観念は生じない。
イ 被告商標について
被告商標は、片手で長い布様のものを所持する赤ちゃん様の絵柄と「いつ でも」、「どこでも」、「簡単」、「トイレ」との各文字部分から構成される。こ\nのうち、文字部分は、前記長い布様のものの上に「いつでもどこでも」と「簡 単トイレ」が2段に配置され、「いつ」「どこ」がロゴ化され、「トイレ」のレ の字には、用が足される様子を模式的に示す絵柄が付加されているものの、 商品の使用時期、提供の場所、使用の方法又は効能を表\示するものにすぎず、 「トイレ」部分は普通名称であるから、これらが一体として表示されている\nことをも踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を有している\nとはいえず、赤ちゃん様の絵柄部分が強い出所識別機能を有しているという\nべきである(仮に文字部分の識別力を考慮するとしても、前記の配置やロゴ 化、絵柄の付加といった要素を捨象して考えることはできない。)。よって、 原告標章1ないし同10との類否の判断にあたっては、(標準文字としての) 文字部分を抽出するのは相当でなく、上記赤ちゃん様の絵柄を抽出して対比 することが相当である。そして、当該部分からは特定の称呼、観念は生じない。
ウ 対比
原告標章1ないし同10の「Qbit」又は「Qbit」と丸い絵柄部分 と被告標章の赤ちゃん様の絵柄部分とを比較すると、外観、称呼、観念のい ずれにおいても類似しない(双方の標章の文字部分と上記図柄の組合せを全 体として観察しても同様である。)。この点、被告商標の商標登録後に出願さ れた原告商標1及び原告商標2がいずれも商標登録されるに至ったことは、 上記判断と整合する。
(2) 原告標章11ないし同15について
これらの標章は、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」の文字から構成されている\nが、上記のとおり、これらの文字部分は、商品の使用の方法や効能を表\示する ものや普通名称であり、出所識別機能を有しているとはいえないから、商標法\n26条1項2号の商標に該当すると認められる。よって、これらの標章に被告 商標権の効力は及ばない。
(3) 小括
したがって、原告各標章を付した商品の販売は、被告商標権を侵害する行為 に当たらないから、これに反する本件各申告の内容は「虚偽」であると認めら\nれる。
(4) 争点1のまとめ
以上に加え、前記1、2を総合すると、本件各申告は、不競法2条1項21\n号の不正競争に当たる。

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令和5(ネ)1384等  損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年1月26日  大阪高等裁判所

大阪高裁は、アマゾンに対してサイト上に掲載した画像等が被告の著作権を侵害する等の申告をした行為が不正競争防止法(不競法)2条1項21号の不正競争行為に該当すると判断されました。1審の判決維持です。なお、著作物性無しと判断されたのは、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面的な表\紙及び裏表紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影した画像です。\n

写真集及び卓上カレンダーに係る被告画像1、2及び4ないし10は、 インターネットショッピングサイトにおいて販売する商品がどのような ものかを紹介するために、芸能人を被写体とする写真が印刷された平面\n的な表紙及び裏表\紙を、できるだけ忠実に再現するため真正面から撮影 した画像であり、上記表紙及び裏表\紙以外に背景や余白はないのであっ て、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、背景\n等に選択の余地がなく、上記表紙及び裏表\紙ひいてはそこに印刷された 芸能人を被写体とする写真を忠実に再現する以外に、その画像の表\現自 体に何らかの形で撮影者の個性が表れているとは認められないから、上\n記各被告画像には創作性が認められない。したがって、上記各被告画像 は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)\nとはいえず、著作物とは認められないから、一審被告が上記各被告画像 について著作権を有するとは認められない。
(イ) 被告画像3について
単語帳に係る被告画像3も、インターネットショッピングサイトにお いて販売する商品がどのようなものかを紹介するための写真ではあるが、 芸能人を被写体とする写真が印刷された表\紙及び裏表紙を金具のリング\nから取り外し、各写真を表にして平面上に上下に並べ、その右側に一部\n裏表紙と重なる形で、63枚の単語カードを写真側を表\にして金具のリ ングを要として扇状に広げたものを撮影したものであり、正面から撮影 されたものではあるものの、上記単語カードを扇状に広げることによっ てその重なり合いによる陰影が表現され、また、2枚目以降の単語カー\nドの白い縁取りからわずかに各写真が垣間見えるように広げることによ って各単語カードにそれぞれ異なる写真が印刷されていることを表現し\nており、白い背景によって表紙及び裏表\紙の写真等を浮き立たせる効果 も生んでいるといえる。このような手法が商品としての単語帳を紹介す る際にまま見られるもの(乙62、63)であったとしても、その被写 体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、背景の選択には 複数の余地があり、被告画像3の表現自体に撮影者の個性が表\れている と認められる。したがって、被告画像3は、「思想又は感情を創作的に 表現したもの」といえ、著作物性が認められるから、その撮影者である\n一審被告は被告画像3について著作権を有すると認められる。
(ウ) 以上に対し、一審被告は、被告画像1、2及び4ないし10についても、 手ブレ補正、露出補正、ホワイトバランス等の細かい調整を行い、光の 入り方に気を配って撮影場所にこだわり、複数の写真を撮影してその中 の一番良い写真について彩度、色合いを編集するなどの独自の工夫を凝 らしている旨主張するが、一審被告が主張するそのような工夫は、商品 である写真集ないし卓上カレンダーの表紙及び裏表\紙、ひいてはそこに 印刷された芸能人を被写体とする写真を忠実に再現するためのものであ\nって、上記工夫の結果、それらが忠実に再現された各被告画像が得られ たとしても、その表現自体に何らかの形で撮影者である一審被告の個性\nが表れているとは認められない。したがって、上記一審被告の主張は上\n記(ア)の判断を左右しない。
・・・
ア 上記のとおり、被告サイト上の被告各画像及び商品名のうち、そもそも著 作物性が認められるのは被告画像3のみであり、その余については著作物性 自体が認められず、一審被告が著作権を有しないから、一審原告がその著作 権を侵害した事実はおよそ存在しない。そこで、原告画像3の掲載が被告画 像3についての一審被告の著作権侵害に当たるかにつき、以下検討する。
イ 被告画像3の表現上の本質的特徴は、前記(3)ア(イ)のとおり、本件商品3 を撮影する際の被写体の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、 背景の選択等を総合した表現に認められるところ、画像テンプレートを利用\nして作成された原告画像3は、単語帳から取り外した一部の表紙等を並べて\nその横に単語帳を扇状に広げて置くなどの点で商品の見せ方に関する基本的 なアイデアに被告画像3との共通点はあるが、取り外して並べられたのが表\n紙や裏表紙の写真面か、単語カードの韓国語単語が記載された面か、その枚\n数、色彩及び配置、金具のリングを要として扇状に広げられた単語帳がその 右側に配置されているか左側に配置されているか等の配置、同単語帳の1枚 目のカードに印刷された写真内容、同単語帳の単語カードの枚数、色彩、扇 状の広がり方及び陰影等で異なっていることが一見して明らかであって、そ の素材の選択・組合せ・配置、光線の調整・陰影の付け方、色彩の配合、素 材と背景のコントラスト等において被告画像3と異なるから、被告画像3の 表現上の本質的特徴を直接感得させるものとはいえない。なお、原告画像3\nで選択された素材のうち、本件商品3の表紙を正面から撮影した画像部分の\nみは被告画像3と共通するが、その画像自体は、被告画像1、2及び4ない し10について検討したと同様、平面的な上記表紙を忠実に再現したのみで\n創作性が認められない部分であるから、同画像部分が共通しているからとい って、原告画像3が被告画像3と類似しているとは到底認められない。した がって、一審原告が原告画像3を原告サイトに掲載したことが、被告画像3 に係る一審被告の著作権を侵害するものとは認められない。
以上によれば、一審被告が、本件各申告によってアマゾンに告知した、一\n審原告が被告サイト上の被告各画像及び商品名についての一審被告の著作権 を侵害しているとの本件各申告の内容は、全て虚偽の事実であったというこ\nとになる。そして、前記第2の2で原判決を補正した上で引用した前提事実 (1)によれば、一審原告と一審被告は競争関係にあるといえ、また、上記著 作権侵害の事実を申告する行為は一審原告の営業上の信用を害する虚偽の事\n実を告知する行為といえるから、本件各申告は、客観的に不競法2条1項2\n1号に該当するということになる。

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令和4(ワ)16072  不正競争防止法に基づく差止請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月21日  東京地方裁判所

非たばこ加熱式スティックに関する本件表示は、不競法2条1項20号の品質等誤認惹起行為に該当しないと判断されました。\n

(ア) 判断基準について
不競法2条1項20号は、商品や役務に、その品質や内容を誤認させ るような表示をし、又はその表\示をした商品を譲渡等することにより、 需要者の需要を不当に喚起するとともに競争上不当に優位に立とうとす ることを防止する趣旨の規定であるといえるから、本件表示が本件商品\nの品質及び内容について誤認させるような表示に当たるか否かは、本件\n表示によって、本件商品についての需要者の需要を不当に喚起し、被告\nらが不当に競争上優位に立つことになるか否かによって判断すべきと解 される。
(イ) 本件表示の目的について\n
本件商品は、一般消費者向けの茶葉を原料とする非たばこ加熱式ステ ィックであり(前提事実(2))、本件商品に係る広告においては、本件商 品はたばこであるか否か、有害な成分が入っているか否かについての質 問及び回答が掲載されている(前提事実(3))。このような事実に照らす と、本件表示の目的は、ニコチンの含有量を科学的な正確さをもって示\nすためのものではなく、本件商品が含有する成分は茶葉と同様であって、 たばこのように身体及び精神に悪影響を与えるような程度の量の成分を 含有していないことを示すためのものと認められる。
・・・・
(カ) まとめ
前記(イ)ないし(オ)のとおり、1)本件表示は、ニコチンの含有量を科学\n的な正確さをもって示す目的のものではなく、本件商品が含有する成分 は茶葉と同様であって、本件商品に身体及び精神に悪影響を与えるよう な程度の量の成分を含有していないことを示す目的のものと考えられる こと、2)本件商品が含有するニコチンは、茶葉そのものに含まれていた 内因性由来のものであって、その含有量は、人が摂取しても安全と評価 されており、生理活性がない可能性も指摘されている水準にとどまるこ\nと、3)茶葉を原料とする他の複数の非たばこ加熱式スティックに係る広 告においても、定量下限を1ppmとした分析によりニコチンが検出さ れなかったことを根拠として「ニコチン0」との記載がされているとこ ろ、これらの商品にも当該定量下限を下回る量の内因性由来のニコチン が含まれている可能性を当然に否定することはできないことを指摘する\nことができる。
以上の点に照らせば、本件表示に接した需要者は、本件商品が、ニコ\nチン含有の有無及びその量に関し、身体及び精神に与える影響との観点 から、他の非たばこ加熱式スティックと比較してより優れたものである と認識するものではないというべきである。 したがって、本件表示が、本件商品についての需要者の需要を不当に\n喚起し、被告らが不当に競争上優位に立つことになるものであるという ことはできず、よって、本件表示が本件商品の品質及び内容について誤\n認させるような表示に当たると認めることはできない。\n

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令和5(ネ)10097  営業侵害行為差止請求等控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

1審では、営業秘密、限定提供データのいずれではないと判断されました。知財高裁も同様です。利益分配に関する請求についても同様です。

ア 原告は、EL社が営業秘密又は限定提供データの保有者であり、被告AI及 び被告SAIはEL社から営業秘密又は限定提供データの開示を受けたと主張する が、そうであるとすれば、開示された営業秘密又は限定提供データが原告の営業秘 密又は限定提供データであるということはできないはずである。もともと、前記補 正の上引用した原判決のとおり、スマホ留学の顧客情報は各組合員に帰属するもの であり(本件組合契約5条1項)、被告AI及び被告SAIが自らに帰属する顧客 情報を使用することは、不正競争行為に当たるものではない。
イ さらに、本件組合契約は、スマホ留学以外の特定の商品又はサービスを「対 象案件」として、その紹介をするため、スマホ留学の顧客情報を用いることを予定\nしている(本件組合契約6条4項等)。したがって、被告らが、顧客情報をケンペ ネEnglishやオンライン留学の紹介に用いたことをもって、直ちに本件組合 契約に違反すると認めることはできない。
ウ 原告は、本件組合契約7条2項を文字通り解釈すると本件組合契約締結以前 に提供された情報は、同項の「機密情報」には該当しなくなるから不合理である旨 主張する。しかし、原告及び被告らとの間で平成29年3月1日に締結された業務 委託契約書(乙A102)によれば、本件組合契約締結前のスマホ留学事業に関す る機密情報については、上記業務委託契約書9条に本件組合契約7条2項と同じ内 容の機密保持に関する条項が設けられていることが認められ、本件組合契約の締結 により当該条項の効力が失われたと解すべき理由は見当たらない。したがって、当 事者の合理的意思解釈として、本件組合契約締結前の機密情報については前記業務 委託契約書9条に基づく保護の対象となると解するのが相当であるから、原告の主 張する点は、本件組合契約7条2項をその文言どおり解釈することの妨げとなるも のではない。

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◆令和2(ワ)23432

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令和5(ワ)70052  損害賠償請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月26日  東京地方裁判所

 囲碁将棋チャンネルは、YouTubeに、著作権侵害としてYouTuberの動画の削除申請しました。これが違法か否か争われました。争点は棋譜に著作権があるのか否かです。裁判所は約2万円の損害賠償を認めました。

原告は、本件において虚偽の事実を告知等されたことによって、経済的損害に つき不正競争防止法2条1項21号に基づく損害賠償請求権が発生するほかに、 併せて人格的利益を侵害するものとして、別途不法行為に基づく損害賠償請求権 が発生する旨主張する。そこで検討するに、人格権ないし人格的利益とは、明文上の根拠を有するものではなく、生命又は身体的価値を保護する人格権、名誉権、プライバシー権、肖像権、名誉感情、自己決定権、平穏生活権、リプロダクティブ権、パブリシティ 権その他憲法13条の法意に照らし判例法理上認められるに至った各種の権利 利益を総称するものであるから、人格的利益の侵害を主張するのみでは、特定の 被侵害利益に基づく請求を特定するものとはいえない。しかしながら、原告は、 裁判所の重ねての釈明にもかかわらず、単なる総称としての人格的利益をいうに とどまることからすると、原告の主張は、請求の特定を欠くものとして失当とい うほかない。
もっとも、原告は、原告主張に係る人格的利益とは、最高裁平成16年(受) 第930号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1569頁(平 成17年判決)にいう著作者の人格的利益と同趣旨のものであり、大阪高裁令和 4年(ネ)第265号、第599号同4年10月14日判決(令和4年判決)も、 その趣旨をいうものである旨主張する。
仮に、原告主張に係る人格的利益が、上記判例を引用する限度で特定されてい るものと善解したとしても、平成17年判決は、著作者の思想の自由,表現の自\n由が憲法により保障された基本的人権であることに鑑み、公立図書館において閲 覧に供された図書の著作者の思想、意見等伝達の利益を法的な利益として肯定す るものであり、その射程は、公立図書館の職員がその基本的義務に違反して独断 的評価や個人的好みに基づく不公平な取扱によって蔵書を廃棄した場合に限定 されるものである。そうすると、私立図書館その他の私企業における場合は、明 らかにその射程外というべきものであるから、平成17年判決は、私企業である YouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益が問題とされている本件に は、適切なものといえない。
また、原告が引用する大阪高裁令和4年(ネ)第265号、第599号同4年 10月14日判決(令和4年判決)は、人格的利益に関わるものと説示しつつも、 投稿者の営業活動を妨害するという側面をも踏まえたものであるから、精神的価 値という法益に限定して法的利益性が主張されている本件には、必ずしも適切で はない。のみならず、平成17年判決が、上記のとおり、伝達の利益を法的な利 益として肯定する場面を、公立図書館の職員による極めて不公平な取扱等の場合 に制限している趣旨に照らしても、憲法で保障されている表現の自由から、直ち\nにYouTubeにおける投稿動画に係る伝達の利益を肯定するのは相当では ない。その他に、原告は、著作権法、電気通信事業法その他の法令を縷々指摘して、 原告主張に係る人格的利益が重要性の高い法益である旨主張するものの、原告が 掲げる法令は、原告主張に係る人格的利益を保護するものとはいえず、上記にお いて説示したところに鑑みると、原告の主張は、その特定及び根拠を欠くもので あり、採用の限りではない。

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令和5(ネ)1657  実験装置使用差止等請求控訴事件  不正競争  民事訴訟 令和6年2月9日  大阪高等裁判所

科研費契約に付随する秘密保持義務違反かどうかについて争われました。1審は義務違反無しとし、大阪高裁は、これを維持しました。

1 争点(1)(被控訴人は本件科研費契約に付随する秘密保持義務に違反したか)に ついて
(1) 前記前提事実(4)アのとおり、本件物件は関係規定に基づき控訴人らから被 控訴人に寄付されたものであるところ、控訴人らは、上記寄付を受け入れた 研究機関である被控訴人としては、本件科研費契約上、補助事業者である研 究者に代わり本件物件を科研費の交付目的に従って適切に管理することが求 められるのであり、本件物件に化体している本件情報に関する権利について は、同契約に付随して、信義則上、上記目的外で自ら使用したり、第三者に 漏洩・開示等したりしてはならない義務(秘密保持義務)を負っている旨を 主張する。
(2) そこで検討するに、公金である補助金により購入された設備等の取り扱い については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律を始めとする\n関係各規定により詳細が定められ、本件物件もこれに従い控訴人らから被控 訴人に寄付されたものであるところ、まず寄付とは、一般的に、公共性、公 益性を有する事業や団体などに対し、財産を贈与することであり、その目的 が物であれば、その所有権の無償による譲渡を意味するものである。そして、 大学共同利用機関取扱要領22条によると、寄付を受けた設備等は、固定資 産管理規則に基づき管理するものとされているところ、同規則11条には、 「資産管理責任者は、固定資産等を寄附により取得する場合」との記載があ ること、平成18年12月26日付けで作成された文部科学省の「研究費の 不正対策検討会報告書」には、「現在の競争的資金等の制度においては、例え ば機器を購入した場合(中略)個人補助の科学研究費補助金の場合、所有権 はいったん研究者に帰属し、所属する研究機関に寄付することになっており」 との記載があること(甲63の1・2)、振興会作成の科研費ハンドブックに 掲載された「科研費FAQ」には、「直接経費により購入した設備等は、研究 代表者又は研究分担者が所属する研究機関に寄付しなければなりません。【Q\n4405】」、「科研費により購入した設備等は、購入後直ちに研究機関に寄付 することとしていますので、研究期間終了後も、研究機関の定めに従い、別 の研究等で使用することは差し支えありません。【Q44071】」との記載 があること(甲21)がそれぞれ認められ、これらの記載はいずれも、科研 費により設備等を購入した研究者がその所属する研究機関に行う寄付が、留 保を伴わない所有権の無償譲渡を意味するものであることを前提としている と解するのが相当である。これらに加え、平成23年に締結された被控訴人、 RCNP、TRIUMF及びウィニペグ大学の4研究機関によるUCNの共 同研究に係る合意(2011年覚書)には、被控訴人が本件物件の所有権を 有している旨の定めが置かれており(原文は英文)、本件情報に関して控訴人 らが主張する権利について特段の留保は付されていないことも認められる(甲 8)。
そうすると、そもそも控訴人らによる寄付を義務付けた関係各規定にいう 寄付は一般的な寄付と同様の意味に解されるし、本件物件の寄付を受けるこ とでその所有権を取得した被控訴人が寄付を受けた本件物件の使用、収益及 び処分について制約を受けるべき根拠は関係各規定中に見当たらないから、 控訴人ら主張に係る本件科研費契約なるものが科研費の交付決定に伴い関係 者間に成立するとしても、これに付随して、信義則上、被控訴人が、その一 方的負担となる秘密保持義務を控訴人らに対して負うことになると解する余 地はないというほかない。
(3) この点に関し、控訴人らは、科研費により取得される設備等に関し、設備 等の寄付を行った研究代表者等が他の研究機関に所属することとなる場合に\nおいて、当該研究代表者等に当該設備等の継続使用の希望があるときは、当\n該設備等を研究代表者等に返還しなければならない旨の「返還ルール」が定\nめられている旨を指摘し、同ルールは設備等(本件物件)の寄付を受けた被 控訴人において負担する上記制約の顕れである旨を主張する。
確かに、機関ルール2−3及び3−28には、上記趣旨の記載が存在する が、他方、上記科研費FAQには、補助事業期間中に他の研究機関に異動す る場合は、研究機関は研究機関の定めに基づき、当該設備等を当該研究者に 返還する旨【Q4405】、令和2年度以降に購入した設備等に関しては、研 究期間終了後(補助事業を廃止した場合を含む)5年以内の場合も同様に取 り扱う旨【Q4405、44071】、令和2年度以前に購入した設備等に関 しては、研究期間終了後も、研究機関の定めに従い、別の研究等で使用する ことも差し支えない旨【Q44071】がそれぞれ記載されている。 しかし、これらの記載からすると、少なくとも令和2年度以前において、 「返還ルール」は、補助事業期間中のルールであり、研究機関が異動する研 究者の返還請求に応じるべきであるのは、補助事業期間中に限られているこ とを前提としているものと解するのが相当であるところ、本件物件のうち、 本件物件1に係る基盤研究Aの補助事業期間は平成12年から同14年まで、 本件物件2に係る基盤研究Sの補助事業期間は平成21年から同25年まで、 本件物件3に係る基盤研究Bの補助事業期間は平成18年から同20年まで というのであって(甲4、16〜18、当審第1回口頭弁論調書)、本件物件 については、いずれも補助事業期間を経過している。
したがって、上記のような「返還ルール」の存在を斟酌しても、寄付によ り本件物件の所有権を取得した被控訴人が、その使用、収益及び処分に制約 を受けることになる秘密保持義務を、控訴人らに対して信義則上負うべきも のとは解されない。
(4) なお、本件科研費契約に付随する秘密保持義務違反にいう秘密とは、控訴 人らが本件において営業秘密と主張する本件情報と同じものと主張されてい るが(当審第1回口頭弁論調書)、後記3(2)でみるとおり、本件情報は、本 件物件の外観を見ただけでは解析が不可能であり、控訴人らの関与なしには\nこれを取得できないというのである。そうであるとすると、本件物件をトラ イアンフその他の第三者との共同研究の用に供しているとしても、控訴人ら 主張に係る秘密(本件情報)は明らかにされることはないことになる。まして や、第三者が本件物件を分解して主張に係る秘密(本件情報)を探索するこ とも想定できないから、仮に秘密保持義務を負うとしても、そもそも第三者 との共同研究の用に供されることをもって、秘密保持義務違反の状態が起き ることはあり得ないということが指摘できる。 また、控訴人らは、秘密保持義務を根拠づけるものとして、本件物件の所 有権の所在とそれに化体しているノウハウなどの技術情報の所在とは別次元 の問題であり、寄付により本件物件の所有権を被控訴人に無償譲渡したこと になるとしても、控訴人らにおいて本件情報に係る権利まで譲渡する意思は なかったから、被控訴人が本件物件に化体したノウハウを自由に使用してよ いことにはならないとも主張する。しかし、上記説示のとおり、本件物件を 研究の用に供することのみでは秘密保持義務違反の状態が起きないから、本 件物件が価値のあるノウハウを使用したものであるとしても、そのことを理 由に本件物件そのものの使用、収益及び処分に制限を及ぼすことは、結局、 設備等の寄付を無意味ならしめるものであるといわざるを得ず、控訴人らの 上記主張は採用することができない。

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◆令和2(ワ)12387

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令和4(ワ)13396    不正競争  民事訴訟 令和6年1月17日  東京地方裁判所

発注した業務に関してインターネット上で行った投稿が、営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するもので、不競法2条1項21号所定の不正競争に該当するかが争われました。
裁判所は、これを認めて50万円の損害賠償および投稿削除を命じました。

(イ) 前記(ア)の各事実を前提として、本件投稿部分1が摘示する「何度やり とりしても、原告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との 事実が客観的真実に反するものであるか否かについて検討する。 a 前記(ア)aのとおり、本件アナライザー案件において、被告が仕様の 確定を行うべきとされていたことについては、当事者間に争いがない。 また、本件全証拠によっても、原告が、被告の作成した仕様を評価す る立場にあったと認めることはできない。
そして、前記(ア)cの原告と被告担当者とのやりとりの内容に照らせ ば、原告は、被告担当者からの質問に対し、一貫して、原告が「課題 管理表」の項番13において指摘した事項の趣旨を説明しつつ、本件アナライザー案件において原告が受注していない業務である仕様の評\n価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を明確に 回答していると認めるのが相当である。
b また、原告が、被告担当者に対し、「なんで答える必要あるの?」と の文言どおりの回答をしていないことも当事者間に争いがない。 この点に関し、被告は、当該回答は、「今回当方へのご依頼は管理画 面の開発で、くじら IT サービス様でご用意される資料の評価は含まれ ていないという認識です。」との原告の回答を簡潔にまとめた表現であると主張する。\n
そこで検討すると、不競法2条1項21号所定の告知又は流布の内 容は、その相手方の普通の注意と読み方・聞き方を基準として判断す べきと解されるところ、本件サイトは、ソフトウェアやITシステムの開発業務を営んでいる者や、このような開発業務を依頼しようとす\nる者が専ら閲覧していると考えられる。そして、これらの者の普通の 注意と読み方を基準とすると、「なんで答える必要あるの?」との表現は、理由を一切説明することなく、回答を拒否したとの意味に理解で\nきるものである。これに対し、被告が指摘する原告の上記回答は、原 告が受注した業務の内容について説明した上、被告が用意する資料の 評価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を回答 するものといえる。 したがって、「なんで答える必要あるの?」との表現は、原告の上記回答を要約したものとはいえず、被告の上記主張を採用することはで\nきない。
(ウ) 以上によれば、本件投稿部分1が摘示する「何度やりとりしても、原 告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との事実は、客観的 真実に反するもの、すなわち虚偽のものと認められる。
・・・
(1) 無形損害について
前記1(2)のとおり、ソフトウェアやITシステムの開発において、受注者が、発注者との質疑応答に適切に対応できる資質や能\力を備えているか否かは、受注の可否にも直結する重要な事柄であると考えられるところ、本件投 稿部分1が摘示する事実は、これを閲覧した者に対し、原告がそのような資 質や能力を欠くとの印象を与えるといえるから、本件投稿は、原告の営業上の信用を大きく毀損するものと認められる。\nそして、前記1(1)イのとおり、原告の納品した成果物が、被告と合意した 仕様に合致するものであることについての立証がされているとはいえず、本 件投稿部分2及び3について不正競争及び不法行為が成立するとは認められ ないものの、被告は、成果物が仕様に合致していないことを意味する他の表現を採用することは極めて容易であると考えられるのに、「ゴミを納品され、\n捨てました。」と、原告による作業や成果物が有する価値のすべてを否定する かのような表現を敢えて用い、同業者が多数閲覧する可能\性のあるインター ネット上のマッチングサイトの評価画面に本件投稿をしたものであるところ、 不正競争に該当する本件投稿部分1と上記の表現とが一連一体のものとして本件投稿を構\成している以上、無形損害の額を算定するに当たり、この事情も考慮することができるというべきである。 以上の事情によれば、本件投稿によって原告に生じた無形損害の額につい ては、50万円と認めるのが相当である。

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令和4(ワ)11394  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年1月16日  大阪地方裁判所

棋譜情報をフリーライド利用された被告が、Googleに対して著作権侵害であると申告したことが、不競法2条1項21号の不正競争に当たるとして、争われました。大阪地裁は、「虚偽の事実の告知」に該当すると認定し、約120万円の損害賠償を認めました。\n

本件動画は被告の著作権を侵害するものではない(この点について被告は争って いない。)にもかかわらず、本件削除申請は、グーグル等に対し、本件動画が被告\nの著作権を侵害する旨を摘示するものであるから、客観的な真実に反する内容を告 知するものとして、「虚偽の事実の告知」に当たると認められる。 これに対し、被告は、本件動画は被告の営業上の利益その他何らかの権利を侵害 する旨を主張するが、本件削除申請が虚偽の事実の告知に当たるかどうかの判断と\nは無関係である上、本件動画により被告の何らかの権利が侵害された事実も明らか でないから、採用できない。
2 争点2(本件削除申請は原告の「営業上の利益」を侵害するか)について\n
前提事実に加え、証拠(枝番号があるものは各枝番号を含む。以下同じ。甲4〜 13、15、16)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、ユーチューブ及びツイキ ャスにおいて、本件動画を配信して収益を得ていたところ、本件削除申請は、グー\nグル等のプラットフォーマーに対し、本件動画が被告の著作権を侵害する違法なも のであることを摘示する内容であり、これによって、原告は、ユーチューブにおい ては、別紙「原告動画目録」の「配信停止期間」欄記載の期間、動画の配信が停止 されたことが、ツイキャスにおいては、動画配信によって収益を得ることが少なく とも一定期間停止されたことがそれぞれ認められる。そうすると、本件削除申請は、\n原告が本件動画の配信という営利事業を遂行していく上での信用を害するものとし て、原告の「営業上の利益」を侵害したと認められる。
これに対し、被告は、原告による本件動画の配信は、被告が配信する棋譜情報を フリーライドで利用するという著しく不公正な手段を用いて被告ら棋戦主催者の営 業活動上の利益を侵害するものとして不法行為を構成することを指摘して、本件動\n画の配信に係る営業上の利益は法律上保護される利益に当たらない旨を主張し、こ れを裏付ける証拠として「王将戦における棋譜利用ガイドライン」(乙2)を提出 する。しかし、棋譜は、公式戦対局の指し手進行を再現した「盤面図」及び符号・ 記号による「指し手順の文字情報」を含むものと認められるところ(乙2)、本件 動画で利用された棋譜等の情報は、被告が実況中継した対局における対局者の指し 手及び挙動(考慮中かどうか)であって、有償で配信されたものとはいえ、公表さ\nれた客観的事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であると解される。 同ガイドラインは、棋譜の利用権等を王将戦主催者が独占的に有する旨規定するが、 王将戦主催者が、原告を含めた被告の実況中継の閲覧者の関与なく一方的に定めた ものであり(乙2)、原告に対して法的拘束力を生じさせるものであるとはいえな い。また、前記1のとおり、本件動画は被告の著作権を侵害するものではなく、そ の他、原告が、被告の配信する棋譜情報を利用することが不法行為を構成すること\nを認めるに足りる事情はない。したがって、被告の前記主張は、その前提を欠き、 採用できない。

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