2024.02. 9
令和5(ワ)70056 差止等請求事件 その他 民事訴訟 令和5年11月30日 東京地方裁判所
パブリシティの権利に基づき、使用差止などが認められました。
被告らは、「エンリケ」という用語はスペイン語又はポルトガル語の男性名
に使用される一般用語であり、原告が著名であるとしてもキャバクラのホステ
スという狭い世界で著名性を有するにすぎないため、原告の名称には顧客吸引
力がない旨主張する。
しかしながら、前記前提事実並びに証拠(甲1、16ないし18,21、2
2)及び弁論の全趣旨によれば、1)原告は、キャバクラでホステスの仕事をし
ていたところ、次第に売上げを稼ぐことができるようになり、平成29年には
2日間で1億円以上、平成30年には3日間で2億5000万円以上、令和元
年には引退式4日間で5億円を、それぞれ売り上げた旨周知されたこと、2)原
告は、平成30年には「日本一売り上げるキャバ嬢の指名され続ける力」とい
う書籍を、平成31年には「日本一売り上げるキャバ嬢の億稼ぐ技術」という
書籍を、令和2年には「結局、賢く生きるより素直なバカが成功する 凡人が、
14年間の実践で身につけた億稼ぐ接客術」という書籍を、次々に出版し、令
和3年には著書累計15万部を突破したこと、3)さらに、原告は、あらゆる職
業に役立つコミック実用書として、令和3年には、上記「日本一売り上げるキ
ャバ嬢の億稼ぐ技術」をコミック実用書として出版し、全ての仕事に通じる稼
ぐ技術を広く紹介したこと、4)原告は、伝説のキャバクラ嬢として、テレビの
バラエティ番組にも出演するようになり、平成21年から令和4年にかけて2
0本以上のテレビ番組に出演したこと、5)原告のインスタグラムでは、令和5
年2月4日時点におけるフォロワー数が66万人を超えていること、以上の事
実が認められる。
上記認定事実によれば、原告は、被告らの主張するような一キャバクラ嬢に
とどまらず、書籍を多数出版しテレビにも多数出演しフォロワー数も極めて多
く、日本一稼いだ伝説のキャバクラ嬢として、世の中に広く認知されているこ
とが認められる。
これらの事情を踏まえると、原告名称又は原告肖像には、商品の販売等を促
進する顧客吸引力があるものと認めるのが相当である。
したがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。
(2) 被告らは、当裁判所の釈明にかかわらず、ピンク・レディー判決にいう3類
型該当性につき反論しないものの、念のため、以下検討する。
前記前提事実及び前記認定事実によれば、原告名称及び原告肖像には、商品
の販売等を促進する顧客吸引力があるところ、原告名称及び原告肖像の掲載態
様等を踏まえると、被告らが提供する全てのサービスに共通してエンリケとい
うブランド価値を全面に押し出していることからすれば、被告らは、エンリケ
空間にあっては内装の設計等の事業につき、エンリケスタイルにあってはエス
テティックサロンの経営等の事業につき、エンリケスタッフにあっては労働者
派遣事業等の事業につき、上記顧客吸引力により他の同種事業に係るサービス
との差別化を図るために、商号、標章、ウェブページ、ドメイン名において原
告名称又は原告肖像を付したものと認めるのが相当である。
したがって、被告らが原告名称又は原告肖像を使用する行為は、ピンク・レ
ディー判決の第2類型に該当するものとして、パブリシティ権を侵害するもの
といえる。
2 争点2(原告の同意の有無)について
被告らは、原告が被告らによる原告名称の使用に同意していた旨主張する。し
かしながら、被告らは、同意があった旨抽象的に主張するにとどまり、その同意
の時期、内容等を具体的に主張していないのであるから、その主張自体失当とい
うほかなく、被告らの提出に係る全証拠によっても、上記同意を裏付ける客観的
証拠はない。
仮に、少なくとも原告と訴外Bが婚姻中においては、原告名称の使用の合意を
していたとしても、被告らは、原告と訴外Bが離婚し、原告が被告エンリケ空間
の代表取締役を辞任した後でも、なお原告名称に係る使用の同意が継続する事実\nを具体的に主張立証するものではない。かえって、被告らの主張によっても、訴
外Bが原告と離婚した際に、原告名称を使用しない旨述べたことがうかがわれる
ことからすれば、被告らの主張を前提としても、現在まで上記同意が継続してい
る事実を認めるに足りないことは明らかである。したがって、被告らの主張は、
いずれも採用することができない。
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2024.02. 8
令和5(ワ)3171 損害賠償請求事件 その他 民事訴訟 令和5年12月11日 東京地方裁判所
芸能事務所が契約解除となったタレントの写真をホームページに掲載することは、\nパブリシティ権、肖像権の侵害とはならず、不競法2条1項1号の不正競争行為にも該当しないと判断されました。
1 争点1(パブリシティ権侵害の有無)について
(1)肖像等を無断で使用する行為は、1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象
となる商品等として使用し、2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等
に付し、3)肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する
顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害する
ものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である(最高裁平成
21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2
号89頁)。
これを本件についてみると、前提事実並びに証拠(甲11、乙1、7)及
び弁論の全趣旨によれば、芸能プロダクションである被告は、被告に所属す\nるタレントを紹介するために、そのホームページにおいて、他の所属タレン
トと併せて原告の氏名及び肖像写真(本件写真等1)をトップページに掲載
するとともに、原告のプロフィール及び肖像写真(本件写真等2)を所属タ
レントのページに掲載したことが認められる。
上記認定事実によれば、被告は、所属タレントを紹介する被告のホームペ
ージにおいて、原告が被告に所属する事実を示すとともに、原告に関する人
物情報を補足するために、本件写真等を使用したことが認められる。
そうすると、本件写真等は、商品等として使用されるものではなく、商品
等の差別化を図るものでもなく、商品等の広告として使用されるものともい
えない。
したがって、被告が本件写真等を使用する行為は、専ら原告の肖像等の有
する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず、パブリシティ権を侵害
するものと認めることはできない。
(2)これに対し、原告は、本件写真等の掲載は原告の肖像写真等を写真集等に
利用する行為と同視し得ると主張し、また、被告が取引先を介して原告の肖
像写真等を広告等に利用する行為と同視し得る旨主張する。
しかしながら、本件写真等は、被告が所属タレントを紹介するために使用
されたにすぎないことは、上記において説示したとおりである。
そうすると、本件写真等が写真集等や広告等に利用されたといえないこと
は明らかである。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができ
ない。
2 争点2(肖像権侵害の有無)について
(1)肖像は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するも
のとして、みだりに自己の容ぼう等を撮影等されず、又は自己の容ぼう等を
撮影等された写真等をみだりに公表されない権利を有すると解するのが相当\nである(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷
判決・刑集23巻12号1625頁、最高裁平成15年(受)第281号同
17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁、前掲最高
裁平成24年2月2日判決各参照)。他方、人の容ぼう等の撮影、公表が正\n当な表現行為、創作行為等として許されるべき場合もあるというべきである。\nそうすると、容ぼう等を無断で撮影、公表等する行為は、1)撮影等された
者(以下「被撮影者」という。)の私的領域において撮影し又は撮影された
情報を公表する場合において、当該情報が公共の利害に関する事項ではない\nとき、2)公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合におい\nて、当該情報が社会通念上受忍すべき限度を超えて被撮影者を侮辱するもの
であるとき、3)公的領域において撮影し又は撮影された情報を公表する場合\nにおいて、当該情報が公表されることによって社会通念上受忍すべき限度を\n超えて平穏に日常生活を送る被撮影者の利益を害するおそれがあるときなど、
被撮影者の被る精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超える場合に限り、
肖像権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当で
ある。
(2)これを本件についてみると、前記認定事実によれば、被告は、所属タレン
トを紹介する被告のホームページにおいて、原告が被告に所属する事実を示
すとともに、原告に関する人物情報を補足するために、本件写真を使用した
ものである。そして、証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば、本件写真
の内容は、白色無地の背景において、原告の容ぼうを中心として正面から美
しく原告を撮影したものであることが認められる。
そうすると、本件写真は、私的領域において撮影されたものではなく、原
告を侮辱するものでもなく、平穏に日常生活を送る原告の利益を害するもの
ともいえない。
したがって、被告が本件写真を使用する行為は、原告の肖像権を侵害する
ものと認めることはできない。
これに対し、原告は、自らの意思に反して芸能事務所の所属タレントとし\nて肖像が利用された場合には、精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超
える場合に当たる旨主張する。しかしながら、原告は、肖像権侵害を主張す
るものの、肖像に化体しこれに紐づけられた法律上保護される利益(民法7
09条参照)を具体的に特定して主張するものではなく、主張自体失当とい
うほかない。仮に、原告の主張を前提としても、前記前提事実によれば、本
件契約に係る解除が有効であるとする別件訴訟の棄却判決が、令和5年4月
18日に確定したところ、被告は、同日には、自社のホームページから、本
件写真を削除したことが認められる。そうすると、原告の主張を十分に斟酌\nしても、本件契約の解除の有効性が訴訟で争われていた事情を考慮すれば、
その間に本件写真を掲載した行為が、受忍限度を超える侮辱ということはで
きず、その他に、原告主張に係る精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を
超えることを裏付ける的確な証拠はない。したがって、原告の主張は、採用
することができない。
3 争点3(不正競争防止法2条1項1号該当性)について
不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」とは、人の業務に係る氏\n名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示\nするものをいう。
これを本件についてみると、原告の氏名又は肖像は、原告を示す人物識別情
報であり、本来的に商品又は営業の出所表示機能\を有するものではない。そし
て、前記前提事実によれば、原告は、芸能プロダクションである被告に所属す\nる一タレントであったにすぎず、原告自身がプロダクション業務等を行ってい
た事実を認めるに足りない。そして、本件全証拠をもっても、原告の氏名又は
肖像が、その人物識別情報を超えて、原告自身の営業等を表示する二次的意味\nを有するものと認めることはできず、まして、原告の氏名及び肖像が、タレン
トとしての原告自身の知名度とは別に、原告自身の営業等を表示するものとし\nて周知であるものとは、明らかに認めるに足りない。
したがって、原告の氏名又は肖像が周知な商品等表示に該当するものと認め\nることはできない。
これに対し、原告は、原告の氏名又は肖像が商品の出所又は営業の主体を示
す表示である旨主張するものの、原告は、芸能\プロダクションである被告に所
属する一タレントであったにすぎず、本件全証拠によっても、原告自身が営業
等の主体である事実を認めるに足りないことは、上記において説示したとおり
である。したがって、原告の主張は、不正競争防止法2条1項1号にいう「商
品等表示」を正解するものとはいえず、採用することができない。\n
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2023.10.31
令和4(ワ)7920 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年8月25日 東京地方裁判所
動画タイトルに被告Aの氏名を用いたYouTube動画が、被告AのGoogleへの申し立てで削除されました。原告は、著作権侵害ではないのに、著作権侵害申\し立てフォームで申し立てを行い、かつ原告への通知をしなかったとして、損害賠償を求めました。裁判所は、顧客吸引力等を利用するパブリシティ権侵害であることは明確として、請求を棄却しました。
他方、作成した動画をユーチューブに投稿し、これを公開して広くその内容
を伝える行為は、投稿者が行う表現活動や事業活動に関わり得るものであって、\nその動画が削除されることで表現活動や事業活動が制限され、投稿者の法律上\n保護される利益が害される場合があるといえる。ユーチューブの利用について
は、上記の規約があり、また、グーグルには著作権侵害についての前記のポリ
シーがあるところ、権利侵害の通知を行う者が著作権侵害がないにもかかわら
ず侵害がされているという情報をグーグルに通知して、それによってグーグル
が動画を削除した場合、権利侵害がないにもかかわらず動画を削除されるに至
った者は、本来動画を削除される理由がなくそれが削除され法律上保護される
利益を害されたといえる場合があるといえる。これらによれば、グーグルに対
して権利侵害の通知を行うことは、その内容や態様により、投稿者の法律上保
護される利益を害する違法な行為となる場合があるといえる。
本件通知は、著作権侵害を通知するためのフォームであり、フォームで用意
されていた文言である「私は侵害された著作権の所有者、または当該所有者の
正式な代理人です。」「私は、申し立てが行われたコンテンツの使用が、著作権\nの所有者、代理人、法律によって許可されていないことを確信しています。」と
いう記載があり、また、フォームで用意された「著作権者名」、「著作権対象物
のタイトル」についてもそれぞれ記載している。
もっとも、「権利を侵害された作品についての説明」について「その他」とし
た上で、「公演の種類」を「氏名」とし、「著作権対象物のタイトル」を「A(ひ
らがな併記)」としている。そして、「補足情報」として、権利侵害の内容とし
て「パブリシティ権侵害」と明記した上で、「顧客吸引力、宣伝、広告収益目的
のためにタイトルに無断で氏名を使用し、経済的利益を害している。」と記載
している。これらの記載のうち「著作権対象物のタイトル」が人の氏名そのも
のであることは明らかであり、「公演の種類」が「氏名」であることや「補足情
報」の記載内容から、これらの記載は、「著作権者名」とされる、Aの氏名その
ものを、対象動画のタイトルに用いることで、同人のパブリシティ権を侵害し
たと通知していると理解できるものである。
被告Aは、著作権侵害の通知のフォームを利用して本件通知をしたところ、
そのフォームでは、「著作権者名」や「著作権対象物のタイトル」に記入する欄
があり、また、通知をする者が著作権者やその代理人であることなどを表明す\nる定型の文言があるため、上記各欄の記載やその定型の文言が本件通知に含ま
れることとなっている。しかし、「著作権対象物のタイトル」や「補足情報」の
上記のような記載からすれば、被告Aは、ユーチューブにおいてパブリシティ
権侵害の通知をする専用のフォームがあったとは認められない状況において、
本件動画のタイトルに被告Aの氏名を用いたことがパブリシティ権侵害である
ことを通知する意図で、本件通知をグーグルに送付したと認められる。
本件で、原告は、本件通知は本件動画が通知者の著作権を侵害されている旨
の通知をするものであり、通知者である被告Aには、著作権侵害の有無を事前
に確認する義務があったにもかかわらず、被告Aは、これを怠って原告が著作
権を侵害している旨の虚偽の通知をしたことを請求の原因として主張する。
しかし、ユーチューブにおいてパブリシティ権侵害の通知をするフォームが
あったとは認められない状況において、前記 のとおり、被告Aは、本件動画
のタイトルに被告Aの氏名を用いたことが被告Aの顧客吸引力等を利用する
パブリシティ権侵害であることを通知する意図で、その旨の記載をするなどし
て、本件通知をグーグルに送付したと認められる。そして、本件通知は、著作
権侵害の通知をするフォームを利用したことに伴う記載はあるが、著作権対象
物のタイトルとして氏名のみが記載され、その補足情報の記載が上記のような
ものであることからすると、通知者が自らの氏名が対象動画のタイトルに利用
されていることによるパブリシティ権侵害があると通知するものであると理
解できるものである。
前記のとおり、ユーチューブにおいて、グーグルに対し権利侵害の通知を行
うことは、その内容や態様により、投稿者の法律上保護される利益を害する違
法な行為となる場合があるといえる。原告は、本件の請求の原因を上記のとお
り主張して被告Aが著作権侵害の有無を調査すべき義務があったと主張する
ところ、本件通知の内容や態様が上記のようなものであったことに照らせば、
通知者である被告Aに原告が主張するような著作権侵害の有無を事前に確認
する義務があったとは認められず、同義務違反により原告の法律上保護された
利益が侵害されたことを理由とする原告の請求には理由がない。
なお、グーグルは、本件通知に基づき本件動画を再生できないようにしたが、
被告Aに原告が主張する義務があったとはいえず、被告Aに原告が主張する義
務違反行為があったとは認められないから、同事実は、上記判断を左右するも
のではない。
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2023.09.24
令和5(ネ)10025 損害賠償請求控訴事件 その他 民事訴訟 令和5年9月13日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
パブリシティの権利侵害で1審では、各人、数万円の損害賠償でしたが、20万円程度に変更されました。
ウ 以上によると、控訴人らは、本件グループのファンクラブの関係者やファン
の混乱を招いたり、迷惑をかけたりすることを防ぐため、被控訴人に対し、同ファ
ンクラブの閉鎖時期を、課金システム上の理由から同ファンクラブの会員サービス
の課金を停止して同会員サービスの提供を終了することができる時期まで延期する
ことについて黙示の許諾をしたと認められ、また、同ファンクラブが存続する限り
は、会費を支払った会員に対し、本件グループのメンバーや活動内容等を紹介する
記事を閲覧させるために、本件ファンクラブサイト及び本件ファンクラブサイトに
リンクする本件被告サイトにも控訴人らの肖像等を掲載する必要があったといえる
ことからすると、控訴人らは、本件ファンクラブサイトの閉鎖が可能となる時期まで、本件被告サイト及び本件ファンクラブサイトに控訴人らの肖像等が掲載されることについても黙示の許諾をしていたと認められる。\n
他方、前記イ2)のとおり、控訴人らは、平成31年4月24日付けの書面におい
て、被控訴人に対し、被告が管理するウェブサイトから控訴人らの肖像等を削除す
るように求め、また、訂正して引用する原判決第3の1(7)のとおり、控訴人らが、
令和元年8月1日頃、東京地方裁判所に対して被控訴人を相手方として申し立てた仮処分申\立書において、「令和元年8月1日現在も、債務者管理の債権者らグループの旧ホームページが存在しており、契約終了以降も債権者らの肖像権が侵害され続
けている。…そのため、現在も債務者管理の旧ホームページが存在していること自
体も、債権者らの活動の妨害となるといえる。」と記載しており、本件専属契約が終
了したにもかかわらず、被控訴人がホームページ等で控訴人らの肖像等を使用し続
けることに負担を感じていたことなどに照らすと、前記イ4)の控訴人らから被控訴
人に対するファンクラブを閉鎖する旨の告知を延期する旨の通知は、控訴人らが、
課金システムにおける課金停止時期との兼ね合いで、関係者やファンたちのことを
考え、控訴人らにおいて、本件ファンクラブサイトの閉鎖が可能となる時期まで、やむなくファンクラブの閉鎖の時期を延期し、それに伴い本件被告サイト及び本件ファンクラブサイトに控訴人らの肖像等が掲載されることとの限りにおいて黙示の\n許諾をしたものと認められるが、そのようなやむを得ない事情を超えて、控訴人ら
において、本件専属契約終了後も、被控訴人が、本件グッズ販売サイトにおいて、
本件グループの公式ショップとして、控訴人らの肖像写真を表示した上で、控訴人らの肖像写真及び控訴人らの肖像等が転写されたグッズを撮影した写真を掲載するとともに当該グッズを販売し続けることを許諾していたと認めるに足りる合理的な\n理由はなく、また、同許諾をうかがわせる事情の存在も認められず、同許諾を認め
るに足りる証拠は存在しない。
エ 控訴人らは、被控訴人が、本件専属契約終了後において、控訴人らの肖像等
を利用した目的は、控訴人らの活動を妨害することにあったものであり、被控訴人
による控訴人らの肖像等の利用態様及び目的は不当なものであって、被控訴人が控
訴人らの肖像等を使用する必要性や相当性があったとはいえない旨を主張する。し
かしながら、前記ウのとおり、控訴人らも、本件専属契約終了後において、本件フ
ァンクラブサイトの突然の閉鎖に伴う混乱を回避する必要があると考えていたこと、
また、少なくともファンクラブが存続する限りはその会費を支払った会員に対し、
本件グループのメンバーや活動内容等を紹介する記事を閲覧させるため、本件ファ
ンクラブサイトのみならず、当該サイトに導く機能を有する本件被告サイトにも控訴人らの肖像等を掲載する必要があったことが認められることからすると、被控訴人による令和元年11月30日までの本件被告サイト及び本件ファンクラブサイト\nにおける控訴人らの肖像等の使用につき、控訴人らの黙示の許諾の下で行われたも
のといえるから、これらのサイトにおいては、被控訴人が控訴人らの肖像等を使用
する必要性や相当性があったとはいえないとの控訴人らの上記主張は採用できない。
また、控訴人らは、控訴人らが被控訴人を相手方として申し立てた地位保全仮処分命令申\立事件の申立書において、控訴人らの活動が妨害されるおそれがあるとして、「令和元年8月1日現在も、債務者管理の債権者らグループの旧ホームページが\n存在しており、契約終了以降も債権者らの肖像権が侵害され続けている。」などとの
記載をしていたことをもって、控訴人らの肖像等の掲載を黙示に許諾していたとは
いえない旨を主張する。しかしながら、同記載は、本件専属契約の6条及び9条(5)
に係る約定が無効であることなどの仮の確認を求める地位保全等仮処分の申立ての主張の一環として記載されているにとどまり、このような事実をもって、同年11月30日までの間、会員向けサービスの提供及び本件被告サイトにおける情報提供\nがされる旨が告知されていたことに対して、控訴人らが、被控訴人に対し、本件被
告サイト及び本件ファンクラブサイトの閉鎖時期に関して特段の異議を述べたとま
では評価できず、控訴人らの上記主張は採用できない。
オ 被控訴人は、本件専属契約終了後に、本件グッズ販売サイトにおいて控訴人
らの肖像等を利用したことについても、飽くまで会費を支払ったファンクラブ会員
に対してグッズの在庫を販売するためのものであり、控訴人らの肖像権等の侵害に
ならないと主張する。しかしながら、前記アのとおり、控訴人らの肖像権等の使用
に関する約定がされた本件専属契約が終了し、かつ、本件専属契約には契約終了後
の同使用の取扱いに関する約定がないのであるから、控訴人らから被控訴人に対し
て別に同使用についての許諾がない場合には、被控訴人による控訴人らの肖像等の
使用は無権原者による使用となるものであって、たとえ本件専属契約中に製造され
たグッズを販売するものであり、被控訴人が在庫をさばくために製造済みの同グッ
ズを販売して投下資金を回収しようとしたものであったとしても、本件専属契約終
了後には、控訴人らと被控訴人間において何らの取決めがない以上、本件グッズ販
売サイトにおいて控訴人らの肖像等を利用し、控訴人らの肖像等が転写されたグッ
ズを販売できるものではない。
カ そして、控訴人らは本件グループのメンバーとして、訂正して引用する原判
決第2の2(2)ウのとおり、アーティスト活動を行っていること、被控訴人において
グッズ販売による利益を得ることを目的としていたこと、被控訴人は、本件グッズ
販売サイトにおいて、本件グループの公式ショップとして、控訴人らの肖像写真を
表示した上で、控訴人らの肖像写真及び控訴人らの肖像をイラスト化した画像を転写したグッズを撮影した写真を掲載して、当該グッズを販売していたこと、被控訴人は、控訴人らからの肖像等の使用停止を求める要求があることを知りながら、本\n件専属契約終了後から令和3年12月31日までの相当長期間、控訴人らの許諾な
く利用し続けたものであることなどを総合考慮すると、これらは控訴人らの肖像権
等の侵害となるものであって、被控訴人による控訴人らの肖像権等の侵害が社会生
活上受忍の限度を超えるものではないとすることはできない。
(3) 小括
したがって、本件専属契約終了後から令和元年11月30日までの間、被控訴人
が本件被告サイト及び本件ファンクラブサイトにおいて控訴人らの肖像等を掲載し
た行為は、不法行為法上違法と評価すべきものとはいえない。他方、本件専属契約
終了後から令和3年12月31日までの間、被控訴人が本件グッズ販売サイトにお
いて控訴人らの肖像等を掲載し、控訴人らの肖像等が転写されたグッズを販売した
行為は、不法行為上違法と評価すべきものといえる。
・・・
6 争点4(損害の有無及びその額)について
(1) 控訴人らの肖像権等の侵害による損害について
前記2(2)のとおり、令和元年7月14日以降令和3年12月31日までの2年
5か月18日間という相当の長期間、継続して、被控訴人が本件グッズ販売サイト
において本件グループの公式ショップとして控訴人らの肖像等を掲載した行為によ
り、控訴人らの意思に反して、控訴人らの肖像等が利用されていたものであり、控
訴人らは精神的な苦痛を受けたものと推認されるところ、その慰謝料は、控訴人ら
の本件専属契約終了までの活動内容(訂正して引用する原判決第2の1(2)ウ)、控
訴人らの肖像等の使用が本件グッズ販売サイト及び販売グッズにおける利用という
営利目的によるものであったこと、上記の侵害態様や侵害期間などを考慮すると、
控訴人らそれぞれについて15万円を下らないと認めるのが相当である。
◆判決本文
1審はこちら。
◆令和元年(ワ)30204
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2023.05. 2
令和3(ワ)11118 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年1月26日 東京地方裁判所
ゲーム内のキャラクターを性玩具に見立てた内容等の記載された同人誌を頒布したことなどが、原告らの名誉を毀損すると共に、原告らのパブリシティ権、肖像権及び名誉感情を侵害するかが争われました。裁判所は、合わせて440万円の損害賠償およびマスクの廃棄などを認めました。
本件同人誌は、本件ゲームの愛好者向け同人誌即売会である本件即売会に
おいて販売された同人誌である。その内容も、本件ゲームそれ自体とは異な
り、本件キャラクターを性玩具として扱うなどの本件キャラクター描写のよ
うな卑猥なイラストやストーリーを含む漫画を主な内容とし、全体としては、
本件ゲームないし本件キャラクターを揶揄する趣旨も含むものと理解される。
しかも、本件同人誌は、随所に原告A個人を揶揄する趣旨のものと理解され
るイラストや文言による描写をも含む。本件クレジット表記に「TwiFemis」
として 3 つのツイッターアカウントが挙げられているところ、この語がツイ
ッター上でフェミニズムに関する言動を展開する人々又はその現象を指すイ
ンターネットスラングであることに鑑みても、本件同人誌は、本件クレジッ
ト表記に表\記された者を揶揄する趣旨を強く含むものであることがうかがわ
れる。
このような本件同人誌の性質及び内容に鑑みると、一般的な読者の注意と
読み方を基準とした場合に、本件ゲームの制作者である原告らが本件同人誌
の制作に協力したと理解されるとは考え難く、また、本件ゲームの設定が本
件同人誌の内容に沿うものと理解されるともいい難い。
しかし、他方で、本件ガイドラインの内容がやや抽象的なものであり、本
件ゲームに係る二次創作作品が本件ガイドラインにより許容される範囲が必
ずしも明確でないことを併せ考慮すると、上記基準によっても、本件同人誌
の頒布という行為それ自体をもって、このような内容の二次創作作品が本件
ガイドラインにより許容される範囲内に含まれ、許容されるものであるとい
う判断を原告会社が行ったという事実を摘示するものと理解されることは合
理的にあり得る。しかも、「SPECIAL THANKS」として本件クレジット表記\nに原告らの名称が明記され、原作として本件ゲームの名称が記されているこ
とは、このような理解を強めるものといえる。
この場合、原告会社は、自ら管理するコンテンツである本件キャラクター
に対する愛着や敬意の乏しい企業として、その社会的評価が低下すると見る
のが相当である。また、原告Aについても、本件ゲームのプロデューサーと
して本件ゲームのユーザーの間では著名な人物であることなどに鑑みると、
原告会社とは別に個人としての社会的評価が同様に低下すると見られる。
このことは、本件店舗描写に関しても同様である。
(3) 小括
以上の事情に鑑みると、一般的な読者の普通の注意と読み方を基準とすれ
ば、本件キャラクターに対する卑猥な描写をその内容とすると共に、クレジ
ット表記に「SPECIAL THANKS」と付して原告らの名称等を記載した本件同
人誌を頒布する行為及び本件店舗描写は、原告らそれぞれの名誉を毀損する
ものといえる。これに反する被告の主張は採用できない。
2 本件同人誌の頒布、本件マスクの着用等による原告Aのパブリシティ権侵害
の成否(争点 1-2)について
原告Aは、被告が本件マスクを着用しながら本件同人誌を頒布した行為及び
本件同人誌に本件マスクの写真を掲載した行為につき、原告Aのパブリシティ
権侵害を主張する。肖像等を無断で使用する行為については,1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商
品等に付し,3)肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有す
る顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害する
ものとして,不法行為法上違法となる(最高裁判所平成 24 年 2 月 2 日第一小
法廷判決・民集 66 巻 2 号 89 頁参照)。
本件の場合、そもそも、原告Aが本件ゲームの愛好者等の間で著名であると
しても、そのことから直ちに同原告の肖像等に顧客吸引力があることにはなら
ないところ、この点について、同原告は何ら具体的な主張立証をしない。
この点を措くとしても、本件マスクは、原告Aの写真を顔面に着用できるよ
うに山型に湾曲させただけの粗雑な作りのものにすぎない。そのため、本件マ
スクやこれを撮影した写真は、同原告の肖像の写真(甲 10)とは相応に異なる
印象を与えるものであり、同原告の肖像それ自体を独立して鑑賞の対象とする
目的で作成されたものとはいい難い。また、本件同人誌における本件マスクの
写真は全 頁程度のうちの 8 頁目にのみ掲載されている(甲 5)。しかも、同
頁の本件マスクの写真は、「本邦初公開!これが【神】のリアルマスクだ――\―\nッ!」との宣伝文句と共に、「古来より人は儀式や祭礼に際し、自らに神格を宿
すために仮面をまとったという・だとすれば神である(省略)のマスクが作ら
れるのは人間心理の必然的帰結であろう。」との説明文の記載と共に掲載され
ており、これらは、本件同人誌の本編である漫画の内容と直接的には無関係に、
主に原告Aを揶揄する文脈で掲載されているものと理解される。これを踏まえ
ると、本件即売会での本件同人誌の頒布にあたり被告が本件マスクを着用して
いた点についても、同様に原告Aを揶揄する趣旨で行われたものと理解するの
が相当である。
また、本件 3 コマ漫画における原告Aの氏名は、その素材となった別作品の
宣伝用画像(甲 148)の構図に擬して作成した最終コマに表\示されたものであ
り、著作者として表示されたものとは理解し得ないと共に、当該コマの上部に\n小さく配置されているに過ぎないこともあって、原告Aの氏名の顧客吸引力の
利用を目的としたものとはいい難い。
そうすると、本件マスクの写真の掲載及び本件即売会での本件同人誌頒布時
における着用並びに本件 3 コマ漫画の氏名の記載は、上記1)〜3)のいずれにも
当たらず、その他専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる
場合に当たるとは認めるに足りない。
したがって、これらの行為は原告Aのパブリシティ権を侵害する違法なもの
とはいえない。この点に関する原告Aの主張は採用できない。
3 本件同人誌の頒布、本件マスクの着用等による原告Aの肖像権及び名誉感情
の侵害の成否(争点 1-3)について
(1) 肖像権侵害の成否
人はみだりに自己の容貌,姿態を撮影されないことについて法律上保護さ
れるべき人格的利益を有するところ,ある者の容貌,姿態をその承諾なく撮
影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,
撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮
影の必要性等を総合的に考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会
生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決せられる
(最高裁平成 17 年 11 月 日第一小法廷判決・民集 59 巻 9 号 2428 頁参照)。
撮影された写真が雑誌等に掲載されるなどして公開された場合も,同様の判
断枠組みが妥当すると考えられる。
前記 2 のとおり、本件マスクは、原告Aの写真を粗雑な方法で加工したも
のであり、原告Aの肖像の写真(甲 10)とは相応に異なる印象を与えるもの
ではある。しかし、本件同人誌では本件マスクが原告Aの「リアルマスク」
と紹介されていること、原告Aが本件ゲームの愛好者等の間で著名であるこ
と等の事情に照らすと、被告が本件マスクの写真が掲載された本件同人誌を
本件マスクを着用しながら頒布した行為は、原告Aの写真を無断で公開した
場合と同様に理解することができる。また、本件同人誌の内容、とりわけ本
件マスクの紹介の仕方等に照らすと、被告は、専ら原告Aを揶揄する目的で
本件マスクを作成し、これを着用の上、その写真を掲載した本件同人誌を頒
布したといえる。
以上のような写真の使用目的及び使用態様等に照らすと、本件マスクに係
る被告の各行為は、自己の容貌等の写真をみだりに公開されないことについ
ての原告Aの人格的利益を侵害し、その侵害が社会生活上受忍すべき限度を
超えるものというべきであり、不法行為法上違法と認めるのが相当である。
これに反する被告の主張は採用できない。
(2) 名誉感情の侵害
前記のとおり、被告は、専ら原告Aを揶揄する目的で本件マスクを作成し、
これを着用の上、本件即売会にて本件同人誌を頒布した。加えて、本件同人
誌には、原告Aと同定される男性イラストに係る本件男性イラスト描写が掲
載されている(前提事実(3))。また、本件店舗描写についても、本件同人誌の
他の記載と合わせると、「(省略)」などの記載は原告Aを指すことが明確に理
解される。このような被告の行為は、原告Aに対する社会通念上許される限度を超える
侮辱行為であり、原告Aの人格的利益(名誉感情)を侵害する違法なものとし
て、不法行為に当たるとするのが相当である。これに反する被告の主張は採用
できない。
4 本件ツイートによる原告らの名誉毀損の成否(争点 2)について
(1) 本件店舗に関する投稿について
被告は、別紙 4 投稿目録(4)のとおり、原告会社の運営する本件店舗を「キ
ャバカレー」、「派遣型風俗キャバカ〇ー機関」などと呼んだ上、「キャバカレ
ー」が違法風俗店として摘発され、セクキャバ「キャバカレー」経営者であ
る「(省略)」が風営法違反の疑いで逮捕されたという内容の画像を、実在す
るニュース映像風の画像のように表現して投稿した(前提事実(2)ア)。
一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準とすれば、被告の上記各投稿は、
原告会社の経営する本件店舗が「違法風俗店」として捜査機関により摘発さ
れ、原告Aと同定される者が風営法違反の疑いで逮捕されたという事実を摘
示したものと理解される。これにより、上記各投稿は、これを閲覧した者に
おいて、原告らが違法な風俗店を経営し、その代表者である原告Aが逮捕さ\nれたという印象を与えるものであって、原告らの社会的評価をいずれも低下
させるものといえる。
したがって、被告の上記各投稿は、原告らそれぞれの名誉を毀損するもの
であり、原告らに対する不法行為に当たると認められる。これに反する被告
の主張は採用できない。
・・・
以上のとおり、被告による本件同人誌の頒布等による原告Aの名誉毀損並
びに本件マスクを着用して本件同人誌を頒布等した行為による同原告の肖像
に係る人格的利益及び名誉感情の侵害は、いずれも同原告に対する不法行為
を構成するものと認められる。また、被告のツイッターにおける本件店舗に\n関する投稿による原告Aの名誉毀損並びに同原告の顔写真等の投稿による同
原告の肖像に係る人格的利益及び名誉感情の侵害は、いずれも原告Aに対す
る不法行為を構成するものと認められる。\n他方、本件同人誌の頒布等による原告Aのパブリシティ権の侵害及び被告
のツイッターにおける被差別部落に関する投稿による同原告の名誉権の侵害
は認められない。
(2) 原告会社の請求について
以上のとおり、被告による本件同人誌の頒布等及び被告のツイッターにお
ける本件店舗に係る投稿による原告会社の名誉毀損は、いずれも原告会社に
対する不法行為を構成するものと認められる。\n他方、被告のツイッターにおける本件キャラクターの人権等に言及する投
稿、本件キャラクターに関する卑猥な投稿及び被差別部落に関する投稿につ
いては、いずれも原告会社の名誉を毀損するものとはいえず、原告会社に対
する不法行為を構成するものとは認められない。\n
◆判決本文
こちちに争点となった表記があります。\n
◆判決本文
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2023.01. 3
令和4(ネ)10024 映画上映禁止及び損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和4年9月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
インタビュー形式の映画「主戦場」について、著作権侵害(人格権を含む)に基づいて差止などを求めました。1審は、原告の請求棄却、知財高裁も同じ判断です。
ア 控訴人らは、同一性保持権侵害の被侵害利益は、著作者の名誉感情であ
るとし、被控訴人Yが、慰安婦問題というデリケートな問題を扱った本件
利用映像等5の一部を切り出し、音声を削除し、ナレーションを加えるこ
とは、控訴人X2が客観的証拠もなく偏った主張を述べているにすぎない
かのような印象を与えかねないし、また、本件利用映像等6は、控訴人X
2が著作者である本件外部映像等6のうち、日本における人種差別につい
てことさらに騒ぎ立てる者がいることを述べた部分のみが利用されてい
て、控訴人X2が、日本に人種差別が存在すると指摘すること自体を批判し
ているかのような印象を与えかねないから、いずれも通常の著作者であれ
ば名誉感情を害されるものであり、控訴人X2の同一性保持権を侵害する
旨主張する。
イ しかしながら、仮に同一性保持権侵害の被侵害利益に著作者の名誉感情
が含まれるとしても、それによっておよそ一切の改変が著作者の名誉感情
を侵害し、同一性保持権の侵害となると解すべき根拠はなく、著作物の性
質や利用行為の態様等を考慮して、同一性保持権侵害の有無を考慮すべき
である。
本件利用映像等5、6は、ユーチューブ上の映像である本件外部映像等
5、6の一部である。ユーチューブ上の映像は、無料でいつでもだれでも
閲覧することができ、どの映像を見るかはもとより、映像の全部を見るの
か一部を見るのか、映像のどの部分を見るのかを、閲覧者が自由に選択し
て見ることができるという性質を有する。
本件利用映像等5、6は、本件利用映像等2、3の後、本件利用映像等
4が3秒間表示された後に表\示されるものであるところ、本件利用映像等
2、3には、左上部に「YouTube」という表示があり、「X2´」という著作
者名が表示されており、被控訴人Yは、本件利用映像等5に先立って、イ\nンターネット上の投稿でビデオを見つけた旨のナレーションを入れてお
り、本件映画1のエンドクレジットの「利用した映像及び写真の出所」に、
控訴人X2の氏名、本件外部映像等5、6の題名、ユーチューブに投稿され
た動画であることの記載があるから、本件映画1を見る者にとって、本件
外部映像等5、6がユーチューブ上の映像の一部であることは明らかであ
り、著作者名や題名から本件外部映像等5、6を検索することは容易に可
能である(乙38)。\n
本件利用映像等5、6は、被控訴人Yが慰安婦問題に関心を有するよう
になったきっかけとなった動画を作成した人物であり、本件映画1中のイ
ンタビューの対象ともなっている控訴人X2がどのような人物であるかを
紹介することを目的とするものであり、控訴人X2の主張を誤って伝えるも
のであるとは認められない。
その他、原判決第3の9(1)イないしエ(原判決68頁19行目から70
頁14行目まで)、同(2)イないしエ(原判決70頁23行目から72頁9行
目まで)に記載された事情も考慮すると、被控訴人らが本件利用映像等5、
6を利用して本件映画1を製作、上映することは、控訴人X2の名誉感情を
害するとは認められず、本件利用映像等5、6の作成は、いずれも「やむ
を得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)であり、控訴人X
2の著作者人格権を侵害するものとは認められない。
◆判決本文
原審はこちら。
◆令和1(ワ)16040
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2022.08.24
令和1(ワ)16040 映画上映禁止及び損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 令和4年1月27日 東京地方裁判所
インタビュー形式の映画「主戦場」について、著作権侵害(人格権を含む)に基づいて差止などを求めました。パブリシティの権利の侵害、修士卒論と聞いて了承したが商業映画だったとか、修正主義者のように紹介されたなどの事情もあるようです。裁判所は、原告の請求を認めませんでした。
原告らは,被告Fは,政治プロパガンダ映画である本件映画1を制作し,
これを商業映画として有料で一般公開することを計画していたにも関わらず,
あたかも真摯な学術研究目的であるかのように装うなど前記第2の4(14)(原
告らの主張)のとおり欺罔行為を行い,原告らをその旨誤信させて原告らに\n取材に応じるという役務を提供させたと主張する(争点7)関係)。また,原
告らは,本件各許諾について,被告Fは,原告らに対する取材映像を利用し
て商用映画(本件映画1)を製作しようと考えていたが,原告らに対しては,
これを秘し,上智大学大学院の修士課程の一環である卒業制作のための真摯
な学術研究目的の活動であると説明して原告らを欺罔したため,原告らはそ\nの旨誤信して,本件各書面を作成したものであり,本件各書面による本件各
許諾は,詐欺取消し又は錯誤無効により存在しない旨主張する(争点1)−2
関係)。
以下,原告ら主張の被告Fの欺罔行為の有無について,検討する。\n
(2)ア 原告らは,大学院生である被告Fから,卒業制作として大学院に提出す
るドキュメンタリー映画の製作に協力してほしいと頼まれたことや,製作
された映画が商用映画になるとは説明を受けていなかったことから,取材
に協力し,また,本件各映像の利用について本件各許諾をした旨の供述等
をする(原告C,原告D,原告E,甲6,7,35〜38,41)。
イ 被告Fが,原告らに対して取材に協力するよう求めた際の説明の内容等
は,原告Eについて前記1(2)ア,原告Cについて同(3)ア,原告Dについて
同(4)ア,原告Bについて同(5)ア,原告Aについて同(6)アのとおりである。
被告Fは上記の際,上智大学大学院の学生であることを述べて,「歴史
問題の国際化」についてドキュメンタリーを作成していてそのために取
材をさせてほしいことを述べた。また,その際,それが学術研究である
こと,卒業プロジェクトであることを述べたりもしたこともあった。
(3) ここで,被告Fは,前記依頼の当時,実際に上智大学大学院の学生であっ
て,修士論文に代わる映像作品として従軍慰安婦問題に関する映画を作成す
ることとし,その映画ではこの問題において重要な役割を果たしていると考
えた者たちに対する取材映像を映画の主たる部分とすることを構想し(前記\n1(1)),この問題において重要な役割を果たしていると考える原告らへの取
材を行い,その際の映像である本件各映像を用いて,本件卒業制作映画を完
成して,これを修士論文に代わるものとして上智大学大学院に提出した(同
(7))。そして,被告Fは,本件卒業制作映画に,音楽,アニメーション,字
幕等を追加し,一部を訂正するなど,軽微な編集を加えて鑑賞性を高めて本
件映画1としたものであり,本件映画1は,本件卒業制作映画と,内容,構\n成において同じであって(前同),本件各書面にいう被告Fが製作する「歴
史問題の国際化に関するドキュメンタリー映画」(前記第2の2(2)イ)に該
当する。
被告Fは,当初から良い映画が製作できた場合には映画祭に応募すること
を視野に入れてはいたが(この点は後記(4)で検討する。),上記のとおり,
本件各映像を利用して被告Fが製作した映画である本件卒業制作映画は,実
際に修士論文に代わるものとして大学院に提出されたのであり,本件映画1
も本件卒業制作映画と内容,構成において同じものである。したがって,被\n告Fが,原告らに取材を依頼したり本件各書面の作成を求めたりした際に,
上智大学大学院の学生として行うものであり,学術研究として作成されるも
のであることを述べるなどしたこと自体は,被告Fが虚偽を述べたとはいえ
ない。
(4) 被告Fは,当初から良い映画が製作できた場合には映画祭等に応募するこ
とも視野に入れていた。もっとも,原告らに取材をした時点では,具体的な
映画の配給が決まっていたわけではなく,その後,本件映画1を応募したも
ののその上映を断った映画祭もあった(前記1(1),(7))。被告Fは,原告E及び原告Dに対しては,同原告らが,被告Fの開設するユーチューブチャンネルの登録者など欧米の視聴者や研究者,学術世論に対して意見を発信できる場所を提供したいなどとして取材を申し込んでおり(同(2)ア,(4)ア),本件映像が大学への提出以外にも使用されることがあることを述べていた。そして,被告Fは,原告E,原告B及び原告Aとの間では「被告F又はその指定する者が,日本国内外において,映画を配給,上映,展示若しくは公共に送信し,又は,映画の複製物を販売,貸与することができる」旨が記載されている書面を,原告C及び原告Dとの間では「映画の公開前に,同原告らに確認を求める」旨が記載されている書面を交わした(本件各書面)(前記第2の2(2)イ,前記1(2)〜(6))。
原告らが署名押印した本件各書面は,文言上,被告Fが製作する映画につ
いて,「配給」,「上映」,「販売」されることがあることや,「公開」さ
れることがあることを前提とするものである。原告C書面及び原告D書面は,
原告Cが当初被告Fが示した承諾書案への署名を留保したり,原告Dが過去
にメディアから特定の観点だけを切り取られたりしたことなどを述べて被告
Fと合意書案の修正についてのやりとりをした上で,原告C及び原告Dが署
名押印したものであり,映画が公開される場合における被告Fの義務等が具
体的に定められているものである。本件各書面の上映や公開が,商用として
の上映,公開を含まないことをうかがわせる記載はない。
そして,被告Fが,原告らに対して取材を申し込み,また,本件各書面へ\nの署名押印を求めるに当たって,本件各映像を利用して製作する映画が一般
に,場合によっては商用として,公開される可能性が排除されると述べたこ\nとは認められないし,被告Fがその可能性を秘匿したと認められる状況も認\nめられない。
また,その後,被告Fは,本件各映像を利用して製作した本件映画1が映
画祭で上映されたり,日本国内で上映されたりすることについて,自ら事前
に原告らに知らせていた。すなわち,被告Fは,平成30年9月30日には,
本件各映像を利用して製作した本件映画1が釜山国際映画祭において上映さ
れる予定であること,将来日本と韓国で更に上映される可能\性があることを
各原告に対して告知し,平成31年2月28日には,本件映画1が日本国内
において上映される予定であることを,各原告に対し事前に告知した(前記\n1(8))。そして,上記の告知に対して,いずれの原告らからも一般に又は商
用として公開されることについて許諾をしていないなどとの抗議がされるこ
とはなかった。むしろ,原告D及び原告Bは被告Fに対し祝意を表し,原告\nDは試写会に参加し(同ウ,エ),原告Aは,ツイッターに本件映画1の日
本国内における公開等を宣伝する好意的な投稿をしたほか,試写会に参加し
て毎日新聞社の取材に感想を述べるなどした(同オ)。その後,原告らは,
本件映画1の上映中止を求めるようになったが,それは,本件映画1が日本
国内において上映されるようになり,原告らがそれぞれ本件映画1を鑑賞し
その内容を認識した後,又は,その内容を認識してから少し経過した後であ
る平成31年4月から令和元年5月頃からである(同(8),(9))。
以上のとおり,被告Fは,原告らに取材を依頼した際,製作した映画を映
画祭に応募することも考えていたが,具体的な映画の配給についての話はな
かったところ,原告らとの間でも,取材の結果を一般に公開する話が出たこ
ともあった。また,原告らと被告Fとの間の本件各書面には,製作した映画
の配給,上映や公開についても記載されていた。本件各書面に記載された映
画の上映や公開が商用での公開を含まないことをうかがわせる記載もない。
被告Fが,取材の依頼の際や本件各書面への署名押印の依頼に当たり,商用
を含む公開の可能性を排除したり,その可能\性を秘していたりしたとは認め
られない。また,被告Fは,映画祭や日本国内での本件映画1の上映に先立
ち,その上映を原告らに告知し,原告らもそれに抗議をすることはなかった。
これらによれば, 被告Fが,製作した映画が原告らに対する取材の時点
から一般に,場合によっては商用として公開されることがあることを秘して
いたということはできず,被告Fが原告ら主張の欺罔行為を行ったとは認め\nられない。原告らは,本件各映像を利用して製作される映画が一般に,場合
によっては商用として公開される可能性をも認識した上で,被告Fに対し本\n件各許諾をしたものと認められる。
(5) 以上によれば,被告Fが,原告らに対して取材を申し込み,また,本件各\n書面への署名押印を求めるに当たって,原告らが主張する欺罔行為によって\n原告らを欺罔したとは認めるに足りず,本件各許諾をするに当たって原告ら\nに錯誤があったとも認めるに足りない。
したがって,本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であ\nるか(争点1)−3),及び,被告Fが,原告らを欺罔して取材に応じるとい\nう役務の提供をさせたか(争点7))について,原告らの主張には理由がない。
◆判決本文
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2020.02.25
平成31(ネ)10033 パブリシティ権侵害等差止等・著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和2年2月20日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
バブリシティー権に基づく請求として、1審が認定した額(100万円)が争われました。知財高裁3部は、原審の判断を維持しました。
(1)原判決を引用して認定した事実経過によれば,本件事案には,次のような
事情がある。
(2) 両当事者は,平成9年から平成25年までの間,本件ブランドを用いた日
本での婦人服販売事業のための契約関係にあり,本件ブランドの知名度の向
上について共通の利益を有していた。被告各表示の素材となった一審原告X\nの肖像写真及び紹介文並びに被告写真に複製された原告写真は,上記事業に
おける本件ブランドの宣伝広告の目的のために,一審原告側から提供された
素材である。そして,その提供に当たっては,当時の両当事者は協力関係に
あったという背景から,使用の目的,態様及び期間等について,文書等によ
る明確な取極めはなされていなかった。
平成25年の修正サービス契約の解除(本件解除)により両当事者間の契
約関係が解消された時点において,これらの素材は,被告ウェブサイト上及
び店舗内の被告各表示及び被告写真として現に用いられていた。そのことは,\n一審原告側においても了知していた可能性が高いし,仮に了知していなかっ\nたとしても,被告ウェブサイトの閲覧及び店舗の訪問によって容易に知りう
る状態にあった。
契約関係の解消後も,一審被告は,日本国内のJS商標を既に譲り受けて
いた以上,本件ブランドの下での婦人服販売事業をそれ以前とほぼ同じ態様
で継続することが可能であり,そのことは一審原告側も了知していた。また,\n乙7の終了合意書が締結された平成14年以降,同事業における商品のデザ
インや宣伝広告の手法等について,一審原告側は具体的に関与する権利を失
っていたから,本件解除によりすべての契約関係が解消されたからといって,
一審被告が被告ウェブサイトを改修するなどして宣伝広告の内容を改めるべ
き事業上の必然性はなかった。そうすると,契約関係の解消後も,被告各表\n示及び被告写真をそれまでと同様に使用し続けることを,一審被告は予定し\nており,一審原告側も,これを予想していたか少なくとも予\想し得たといえ
る。
また,JS商標は一審原告Xの氏名と同一であるから,JS商標及び各商
標に関連するグッドウィルを商標権譲渡契約によって譲り受けた上で行う一
審被告の事業活動は,その需要者層に,一審原告X個人がこれに関与してい
るとの認識又は印象を必然的に生じさせるものであったといえる。このよう
な状況は,契約関係の終了後においても直ちに変わるものではない。
(3) このように,本件事案は,長期間にわたり契約関係にあった当事者が,必
ずしも明確に定めてこなかった事柄が問題となり,それが原因となってパブ
リシティ侵害行為,著作権侵害行為及び不正競争行為(いずれも法的性質と
しては不法行為)として損害賠償等が請求されている,というものである。
そうすると,権利侵害の成否や損害額の算定の判断に当たっても,契約関係
にない権利者と侵害被疑者との間の訴訟におけるものとは異なり,契約関係
にあった当時の事情を踏まえた合理的な意思解釈が必要とされる。
(4) そして,当裁判所は,上記(3)のような観点に立った上で,原審の判断は是
認し得ると考え,原判決を引用して上記1のとおり判断するものである。
3 両当事者の当審における主張に対する判断
・・・
ア パブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害について
原判決の認定した100万円という損害額につき,一審原告会社は高額
に過ぎる旨主張し,一審被告は低額に過ぎる旨主張する。
そこで検討するに,本件においては,以下のような事情を考慮する必要
があると考えられる。すなわち,
(ア) 本件証拠中,例えば甲28には,一審原告Xについて,「世界12ヶ
国に進出。どの国でも高い人気を獲得している。」という記載がある一
方で,「日本は世界最大のマーケット」という記載もある(前者につい
ては甲27,後者については甲27,29,30にも同旨の記載があ
る。)。
そして,後掲各証拠(いずれも枝番含む)によれば,「世界12ヶ国
に進出」というその実態は,一審原告Xの生地である米国ニューヨーク
市のソーホー地区に平成5年ころから直営の実店舗を有している(乙1\n0)ほかは,米国を含む各国のデパート等に断続的に商品を卸したり
(甲134),ネットショップに商品が掲載されたり(甲117〜12
1,133)しているにとどまる。一審原告側が運営するウェブサイト
には,店舗の所在場所として18か国のデパート等が挙げられているが
(甲122),その中には商品の実際の取扱いを確認できないものが多
い上(乙39ないし45),取扱いがある場合でもデパートの店内に本
件ブランドを冠した売場を確保してはいない(乙11,48)。そして,
一審原告側が主要国の大都市の目抜き通りに独自の路面店を構えている\nこと等を示す証拠は見当たらない。
なお,一審原告Xの日本国外での活動に関する証拠(甲2〜7,10
1〜116)はいずれもウェブサイトへの掲載であるところ,ウェブサ
イトは,紙媒体と異なり,掲載可能な記事数が極めて多い媒体である。\nまた,一審原告Xが出展したファッションショー(甲103〜109,
111〜115)は,いわば「地元」であるニューヨーク市でのもので
ある上に,出展料を支払えば参加資格に制限はない(一審被告前代表者\n本人尋問)。
(イ) 一審原告Xの世界的な名声については上記(ア)のとおり一定の留保を付
けざるを得ないのに比して,日本国内での名声(特に被告商品の需要者
層におけるもの)は,それなりに高いと認められる。
もっとも,本件ブランドの日本での立上げ以前から一審原告Xが日本
の需要者層に広く知られていたことを示す証拠は見当たらないのに対し,
それ以降は一審被告を先駆けとする各ライセンシーが本件ブランドのビ
ジネスに深く関わってきたことからすれば,日本における一審原告Xの
名声には,各ライセンシーによるマーケティングの成果という側面が多
分にある。一審原告Xの日本国内での名声を示すものとして一審原告側
から提出されている証拠(甲8〜10,27〜34,83,84,16
2,214〜470等)も,各ライセンシーによる上記と同様のマーケ
ティングに影響されたものである可能性がある(例えば,外見上は出版\n社が編集したムックである甲8にも,Editorial cooperatorとして,複
数名の一審被告の関係者が関与している(5頁)。)
そして,各ライセンシーがそのマーケティングに当たり,一貫して,
一審原告Xを被告表示2〜4のとおりの容貌・経歴・信条を有する人物\nとして需要者層に印象付けようと努めてきたことは本件各証拠から明ら
かであるから,一審原告Xが「世界的に有名な」ファッションデザイナ
ーであるとの名声が日本において形成されるについては,各ライセンシ
ーの寄与,中でもその先駆けである一審被告の寄与が相当程度に大きか
ったと認められる。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)の事情によれば,一審原告Xの肖像等が顧客誘引力を有
し同人にはパブリシティ権が認められるとしても,それらは,いわゆる
超一流のファッションデザイナー(例えばB,C,Dにつき甲44,5
4,56)のものと同列ではないし,パブリシティ権の形成に当たって
一審被告がライセンシーとして寄与してきたという経緯を考慮すべきで
ある。
(エ) 一審原告らは,一審原告Xのパブリシティ権の価値が高く,その侵害
による損害が大きい旨の主張を裏付けるため,過去の裁判例及び文献の
記載を多数援用する(甲85,131,166〜169,194〜20
0,473等)。しかしながら,過去においてパブリシティ権の価値が
検討された事案の多くは,きわめて知名度が高い権利者(その多くは,
知名度の高さが「公知の事実」に近いような芸能人,運動選手等であ\nる。)の名称及び肖像等が有する顧客誘引力を,その知名度の形成に寄
与していない他者が利用した事案であるから,これらの事案を通じて形
成された法理論及びマーケティング理論並びに個別の事案における裁判
所の判断は,本件にそのまま適用できるものではない。もっとも,一審
原告Xの我が国における認知度は,それなりに高いことからすると,そ
の形成に当たって一審被告の貢献が大きいことを考慮しても,パブリシ
ティ権侵害に対する損害賠償の額を余りに少額とすることもまた相当で
はないというべきである。
上記(ア)〜(エ)で検討した点を踏まえると,一審原告Xのパブリシティ侵害
によって生じた使用料相当損害の額は,原判決が説示するとおり,100
万円と評価するのが相当であって,これに反する一審原告会社及び一審被
告の主張は,いずれも採用することができない。
◆判決本文
原審はこちら。
◆平成28(ワ)26612等
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2012.02. 2
平成21(受)2056 損害賠償請求事件 平成24年02月02日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 知的財産高等裁判所
パブリシティの権利が認められるか争われていた裁判で、最高裁は、知財高裁の判断を維持しました。
そして,肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は,肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。他方,肖像等に顧客吸引力を有する者は,社会の耳目を集めるなどして,その肖像等を時事報道,論説,創作物等に使用されることもあるのであって,その使用を正当な表\現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。そうすると,肖像等を無断で使用する行為は,i)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,ii)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,iii)肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,上告人らは,昭和50年代に子供から大人に至るまで幅広く支持を受け,その当時,その曲の振り付けをまねることが全国的に流行したというのであるから,本件各写真の上告人らの肖像は,顧客吸引力を有するものといえる。しかしながら,前記事実関係によれば,本件記事の内容は,ピンク・レディーそのものを紹介するものではなく,前年秋頃に流行していたピンク・レディーの曲の振り付けを利用したダイエット法につき,その効果を見出しに掲げ,イラストと文字によって,これを解説するとともに,子供の頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するというものである。そして,本件記事に使用された本件各写真は,約200頁の本件雑誌全体の3頁の中で使用されたにすぎない上,いずれも白黒写真であって,その大きさも,縦2.8cm,横3.6cmないし縦8cm,横10cm程度のものであったというのである。これらの事情に照らせば,本件各写真は,上記振り付けを利用したダイエット法を解説し,これに付随して子供の頃に上記振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するに当たって,読者の記憶を喚起するなど,本件記事の内容を補足する目的で使用されたものというべきである。したがって,被上告人が本件各写真を上告人らに無断で本件雑誌に掲載する行為は,専ら上告人らの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず,不法行為法上違法であるということはできない。
◆判決本文
原審はこちらです
◆平成20(ネ)10063
1審はこちらです
◆19(ワ)20986号
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2010.05. 7
平成21(ワ)25633 損害賠償請求事件 その他 民事訴訟 平成22年04月28日 東京地方裁判所
タレントAのパブリシティー権まで、専属契約には含まれないとして、損害賠償等が認められませんでした。なお、原告は専属契約に関する権利の譲受人です。
したがって,本件専属実演家契約の上記規定内容からすれば,Aがアップ・デイトに独占的に許諾した対象は,Aの実演に係る権利に関係するものであり,第6条によりアップ・デイトに帰属することとされる権利も,上記実演(i)〜v))及び実演家であるAの活動に関係する上記vi)〜x)の業務に関するものをいう趣旨と解するのが相当というべきであり,実演家の活動とは直接の関係を有しない店舗の経営にまで及ぶものと解することはできない。
◆判決本文
◆関連事件です。平成21年(ワ)第12902
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2006.08. 1
◆平成16(ワ)25672 営業行為差止等請求事件 平成18年07月25日 東京地方裁判所
プロ野球の選手が、肖像権に基づき、プロ野球ゲームソフト及びプロ野球カードについて,同各原告らの氏名及び肖像を第三者に対し使用許諾する権限を有しないことを確認を求めました。
裁判所は、球団側に宣伝目的の使用権限があると認めました。
「本件契約条項は,その1項において,具体的であれ包括的であれ球団が指示する場合に所属選手の撮影の応諾義務があることを定めるとともに,それにより撮影された選手の写真の肖像及び選手の氏名について,球団において,球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的である限りいかなる方法によって使用したとしても,選手は異議を述べない義務を定めたものと解される。また,その2項において,球団がライセンシーから使用の対価を受けた場合に選手が適当な対価の分配を受け得る権利を定め,その3項において,選手が球団の承諾なく公衆の面前に出演
しない等の不作為義務を定めたものである。
よって,本件契約条項により,商業的使用ないし商品化型使用の場合を含め,球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的の下で,選手が球団に対してその氏名及び肖像の使用を独占的に許諾したものと解するのが相当である。
そして,このように解することで,球団が多大な投資を行って自己及び所属選手の顧客吸引力を向上させている状況に適合し,投資に見合った利益の確保ができるよう,かかる顧客吸引力が低下して球団又は所属選手の商品価値が低下する事態の発生を防止すべく選手の氏名及び肖像の使用態様を管理するという球団側の合理的な必要性を満たし,交渉窓口を一元化してライセンシーの便宜を図り,ひいては選手の氏名及び肖像の使用の促進を図ることができるものである。」
なお、契約条項については「なお,長年にわたって変更されていない本件契約条項は,時代に即して再検討する余地のあるものであり,また,分配金についても各球団と選手らが協議することにより明確な定めを設ける必要があることを付言する。」と付け加えています。
◆平成16(ワ)25672 営業行為差止等請求事件 平成18年07月25日 東京地方裁判所
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