著作権侵害を理由として発信者情報の開示が認められました。被告は、動画の引用であると反論しましたが、裁判所はこれを否定しました。
被告は,本件発信者動画は本件楽曲の著作権を本件原告動画が侵害して
いることを示して批評する目的で本件原告動画の一部を引用したもので
あり,その引用は公正な慣行に合致し,正当な範囲内で行われたから,本
件投稿行為は著作権法32条1項の適法な引用であると主張する。
イ そこで,まず,本件発信者動画における本件原告動画の利用が被告の主
張する上記批評目的との関係で「正当な範囲内」(著作権法32条1項)
の利用であるという余地があるか否かにつき検討する。
前提事実 ア,イのとおり,1)本件発信者動画は冒頭から順に本件冒頭
部分(約3分38秒),本件楽曲使用部分(約2分18秒)及び本件楽曲
動画(約4分4秒)から構成され,2)本件楽曲使用部分以外に本件原告動
画において本件楽曲が使用された部分がない。ここで,本件原告動画にお
いて本件楽曲が使用されている事実を摘示するためには,本件楽曲使用部
分又はその一部を利用すれば足り
に照らしても,本件原告動画において本件楽曲が使用されている事実を摘
示するために本件冒頭部分を利用する必要はないし,上記の事実の摘示と
の関係で本件楽曲部分の背景等を理解するために本件冒頭部分が必要で
あるとも認められない。そうすると,仮に本件発信者に被告主張の批評目
的があったと認められるとしても,本件発信者動画における本件冒頭部分
も含む本件原告動画の上記利用は目的との関係において「正当な範囲内」
の利用であるという余地はない。
この点につき,被告は,本件楽曲使用部分が本件原告動画に含まれるこ
とを示すために本件冒頭部分を利用したと主張する。しかし,上記各部分
の内容(前提事実 ア)に照らせば,本件楽曲使用部分が本件原告動画に
含まれると判断するために本件冒頭部分の利用が必要であると認めるこ
とはできない。
◆判決本文